第161回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

日時

令和3年2月19日(金)14:00~15:00

場所

厚生労働省 厚生労働省職業安定局第1会議室(オンライン会議会場)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 合同庁舎5号館12階)
厚生労働省 専用第15会議室(傍聴会場)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館12階)

議事

議事内容
○阿部分科会長 皆さん、こんにちは。ただいまから第161回労働政策審議会職業安定分科会を開催いたします。皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席を賜りましてありがとうございます。本日の委員の出席状況ですが、労働者代表の勝野委員、柴委員、使用者代表の今木委員が御欠席と伺っております。なお、小阪委員は遅れて御参加されるということでございます。
本日の分科会ですが、今回もZoomによるオンラインでの開催となっております。発言方法等につきましては、事前に事務局より送付している職業安定分科会の開催参加方法についてに沿って、操作をいただきますようよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入りたいと思います。まず議題1です。雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱についてです。こちらは、本日付けで厚生労働大臣から諮問を受けております。それでは、資料について事務局より御説明をお願いいたします。
○雇用開発企画課長 では、資料No.1-2を用いて御説明します。コロナ禍での雇用調整助成金制度の特例措置に関する案の改正です。2.で改正の概要を3点掲げています。順次御説明しますが、1点目の➀、雇用調整助成金の特例措置につきましては、緊急事態解除宣言がされた日の属する月の翌月の末日までということにしており、現在、この宣言が3月7日までとされておりますので、その場合は4月末までということになります。この緊急事態宣言の期間が仮に令和3年2月中に前倒しで解除された場合につきましても、この特例措置につきましては4月30日まで行うこととするというのが1つ目です。年度末、年度始めが採用・退職等の人事管理の節目に当たるということに鑑みたものということです。なお、➀の1行目に書いてありますが、地域的な特例に関しては除くということにしております。
2点目の➁です。新型インフルエンザ等対策特別措置法が今般改正をされ、2月13日から施行されていますが、法律上、新たにまん延防止等重点措置というものが定められ、その重点措置を実施する区域のうち、職業安定局長の定める区域において知事から要請を受けて、飲食店等特別措置法施行令第11条に規定する施設における営業時間の変更等を行う事業主が行う休業等につきましては、大企業においても助成率を4/5、解雇等を行っていない場合は10/10とするというものです。申し遅れましたが、以下の➁及び➂につきましては、➀で御説明した現行の特例措置が続く期間中の措置ということで御理解をいただければと思います。まん延防止等重点実施区域に関する今回の措置ですが、事業活動の制約を受けるという点では、緊急事態措置実施地域と類似の状況にあるということで、特に負担の軽減を図る必要があるという観点から講ずるものということです。
3点目、➂は雇用維持要件に係るものです。コロナ禍の特例では、解雇等を行っていない場合につきまして、より高率の助成率、最大10/10で適用するということにしており、現在、昨年の1月24日以降、解雇等を行っていないということを求めているところです。コロナの影響が長期化、深刻化をする中で、一定の雇用維持努力は求めながら10/10の高率助成を適用されやすくし、雇調金の活用による雇用維持等を促していくという観点から、要件の緩和をこの度、図るということです。a~dで掲げておりますが、aは中小企業全部、b、c、dが大企業ですが、bとcが緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の実施区域の知事の要請を受けて営業時間の変更等を行う事業主です。dが特に業況が悪化している事業主です。これらの4つの類型に当たるものにつきましては、➂の最初の2行に書いていますが、令和3年1月8日以降、解雇等を行っていないという場合に助成率を10/10とするという内容です。御説明は以上です。
○阿部分科会長 それでは、本件につきまして、御質問や御意見がありましたら、手を挙げるボタンをクリックし、私が指名した後に、お名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。いかがでしょうか、仁平委員、お願いします。
○仁平委員 仁平です。省令案要綱については了解したいと思っておりますが、今回の改正によって、特例措置の対象や条件、期間というのが一段と複雑になっているわけです。制度を必要とする方に、こうした支援が行き届いてハローワークにおいても無理なく申請を処理していくことができるように、これまで以上の周知ときめ細かなフォローアップをお願いしておきたいと思います。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。続いて、杉崎委員お願いいたします。
○杉崎委員 商工会議所の杉崎でございます。緊急事態宣言の発出、延長に伴い、雇用調整助成金の特例措置の延長を希望する声が、全国の中小企業から非常に多く聞かれておりました。こうした中、特例措置に係る雇用維持要件の緩和等の措置を講じることについては、当然のことながら、趣旨は理解をいたすところです。助成率や要件等が段階的に拡充、緩和されておりますので、是非、分かりやすい周知に加えて申請から支給決定や入金に至るまで、迅速な処理に努めていただきたいと思います。
一方で、毎回発言しておりますが、雇用調整助成金の支給決定額は2兆8,000億円に達しており、財源の枯渇化は必至な状況です。また、要件の緩和も続いており、既に事業主のみが負担する共同連帯制度である雇用保険二事業の範疇を大きく超えて、もはや感染症対策としての性格が非常に強いと認識しております。したがいまして、再三の主張ではありますが、コロナ禍は国家の非常事態であるとの認識の下、一連の措置の財源は、雇用保険二事業ではなく一般会計による国費で負担していただきたいと思います。なお、雇用保険二事業や失業等給付に係る保険料は、事業主拠出金と同様に、業績に関係なく徴収されます。また、デジタル化の加速や産業構造の変化が予想されている中で、コロナ終息後に中小企業の状況や財務内容がすぐに回復することも考えにくい状況です。したがいまして、一般会計に国費を充当するなどをして、雇用保険二事業や失業等給付に係る保険料率は、将来にわたり引き上がることがないよう強く要望いたします。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。池田委員と森下委員が手が挙がっているようですが、まず、池田委員からお願いします。
○池田委員 まず、今回の新型インフルエンザ特措法におけるまん延防止等重点措置対象地域における飲食店等の支援については、感染症対策として本来実施すべきであって、全額事業主負担の雇用保険二事業ではなく、一般会計で措置すべきではないかと考えられますが、この点について、厚労省としてどのように考えているのかお考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 御質問ですので、事務局お願いします。
○雇用開発企画課長 お答えします。今般の省令改正案では、まん延防止等重点措置対象地域に指定された地域におきまして、都道府県知事の要請を受けて、インフル特措法施行令第11条に定める施設における営業時間の変更等に協力する大企業につきまして、助成率を中小企業並みの最大10/10とするというものです。これは、営業時間の変更等の要請により、事業活動の制約を受け、売上げ等が減少し、雇用にもマイナスが生じ得るということに着目をして、雇用対策として、休業等を支援することによる雇用の維持が期待されるものです。
他方、感染防止対策として施設の使用の制限等が行われた場合に、これに伴う労働者の休業手当分を補償の範囲に含めて雇用保険制度の外で対応するという考え方も、十分に成り立ち得る議論であると考えているところです。
加えて、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、雇用調整助成金の支給決定額は前例のない水準に達しており、かねて使用者側から頂いている、「今回の経済危機は全国規模の感染症拡大によるものであり、事業主連帯の考えの下、事業主負担により賄う雇用保険二事業の域を超えているのではないか。新たな仕組みを検討すべき。」との御意見につきましても、真摯に受け止めなければならないと考えております。
今後、以上の点を勘案しながら、雇用調整助成金をはじめとする雇用保険二事業を含めた雇用保険制度全体が安定的に運営できるよう、必要な財源の確保につきまして、政府部内でもしっかり議論をしてまいりたいと考えております。以上です。
○池田委員 ありがとうございます。厚労省様といたしましては、感染症対策のみならず、雇用対策としての効果も期待されると考えているということかと考えております。今回の措置について反対するものではございませんが、今回のコロナに係る一連の雇調金特例措置は、政府主導の緊急事態宣言が知事等の要請を起因する感染症対策であると強く認識をしております。また、コロナ禍の長期化と影響の甚大さにより、既に、現状では雇調金財政は枯渇化しており、これ以上の感染症対策を事業主負担だけで賄うということについては限界がございます。これまでも繰り返し述べているように、雇調金全体に要する費用として、一般財源を思い切って投入をしていただきたいとお願いする次第です。思い切った一般財源の投入がなされない場合、今後の雇用情勢によっては、失業等給付の積立金のほうも枯渇化する懸念もあります。また、2022年度の雇用保険料率の引き上げに伴う企業経営への悪影響なども懸念されるところです。何とぞ御理解をいただきたいと。よろしくお願いいたします。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、森下委員お願いします。
○森下委員 今、お二人からお話をいただきましたように、小規模や中小企業の経営をする立場として同じようなことになりますが、少しお話をしたいと思います。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、緊急事態宣言、そして期間延長。この間、国会や厚生労働省をはじめとする政府において議論を重ねていただき、各種の支援策の検討に御尽力を賜っていることについては、改めて感謝を申し上げる次第です。
実は3月に年度末を迎える多くの中小企業、コロナ禍における様々な事業活動の制約により、飲食業や観光業、それに関連する業種のみならず、多くの事業者が甚大な影響を受け続けています。およそ1年間に及ぶ営業自粛や制約により、もはや堪え忍ぶこともできない、いよいよ最終的な経営判断を迫られる時期にも差し迫ったという事業者は少なくないと推測できます。政府や地方公共団体の指示や要請に基づいて、多くの飲食店では、大企業・中小企業を問わず午後8時に店を閉め、また、緊急事態宣言中だからと自ら休業をする方もおいでになります。感染拡大を少しでも食い止めようと協力をしてきたわけです。
今回の雇用調整助成金の特例措置の再三にわたる延長、在籍出向による雇用維持の後押しをする産業構造安定助成金の創設などの議論は後になると思いますが、大企業の正規・非正規労働者を対象とした休業支援金の早期適用など、中小企業だけではなく、大企業で働く方の生活を守るということにも目を向けた措置と考えております。それだけ我が国の経済が置かれている状況の深刻さがここに物語られていると受け止めています。これだけの支援策を政府に御検討をいただいても、なお企業の経営状況や雇用維持には必要であるのか十分であるかどうかは、この感染状況の確かな終息が見通せない以上、未だ誰にも判断することはできない状況です。
先ほどもお話が出ておりましたが、もはや保険制度たる雇用保険の財政だけで対応できるものではないと思います。予備費だけではなく、一般会計を雇用保険財源へ充当するということを是非、国全体で対応していっていただきたいと思っております。更に、先ほどお話が出たように、雇用保険二事業から支出される等につきましては、令和4年度の予算を計画するに当たり、是非とも今回の措置でマイナスのあった予算を、予備費や一般財政から充当していただけるようお願いしたいと思っております。すみません。長くなりましたがよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、仁平委員お願いします。
○仁平委員 私も、財政のことも一言申し上げたいと思っております。宮原さんからもありましたが、雇調金の累計額は、やはり、かつてない水準に到達しております。更に、この先も必要な手当等をしていく必要があるのだろうと思っております。そういう意味で、雇用保険財政がちゃんと持つのかなというのは、非常に心配しているところです。労側としても、一般財源の投入ということについて是非政府内で調整をいただいて、やっていただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。以上です。ありがとうございます。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかに御意見や御質問はありませんか。それでは、特にないようでしたら、当分科会は、厚生労働省案をおおむね妥当と認め、その旨を私から御報告を申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
(異議なし)
○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、報告文案の表示をお願いいたします。
(報告文案表示)
○阿部分科会長 それでは、ただいま表示されている報告文案により、労働政策審議会会長宛報告することとしてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○阿部分科会長 ありがとうございます。では、そのように御報告をさせていただきます。
それでは、次の議題に移ります。次の議題は、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について」です。こちらは本日付けで厚生労働大臣から諮問を受けており、本日、先ほど行われた雇用保険部会において、あらかじめ議論を行っていただいております。では、資料及び部会での議論につきまして、事務局より説明をお願いします。
○長良雇用保険課長 資料2-1、2-2を御覧ください。説明は資料2-2に沿って行います。雇用保険臨時特例法施行規則の省令案です。この省令は、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金の支給要件などについて定めているところです。改正趣旨にありますように、この休業支援金については、特に中小企業において、人員面、資金繰りの面から雇用調整助成金の活用もままならない状況を踏まえた企業、労働者を対象としてきた制度趣旨の下で創設をしたものです。
今般、新型コロナウイルス感染症への対応が長期化していることに鑑み、緊急事態宣言下における大企業への雇用維持支援策の強化の一環として、大企業に雇用される労働者のうち、休業手当を受け取りづらいシフト制などの勤務形態で働く労働者について、対象とする形で考えているところです。
併せて、対象となる休業ですが、これは雇用調整助成金の特例措置とパラレルの関係で整理をしております。すなわち、令和3年2月中に仮に緊急事態宣言が解除された場合に関しても、4月30日までという取扱いとすることを定めたいというものです。
改正の内容ですが、先ほど申し上げたところを少し細かく整理をしているものです。休業支援金の支給の対象について、令和3年1月8日以後の期間を原則といたします。ただし、例外があります。※に書いてありますが、この期間について事業主が休業させ、休業手当を受け取っていない被保険者であって、大企業に雇用されるシフト労働者などを加えるという形を取っております。先ほどの期間の例外としては、都道府県知事が行った時短要請などがされた日です。具体的には、11月7日に北海道が先駆けて独自の時短要請を行っておりますが、それ以降、順次各都道府県において、独自の時短要請が行われているところです。この時短要請を行った日以後の休業に関しても、都道府県ごとに、区域、業種を問わず、今回の措置の対象としていくというものです。
また、加えて、令和2年4月1日から昨年の緊急事態宣言の解除月、これは5月ですが、その翌月である同年6月30日までの休業については、休業前賃金の6割の額を支給ということで考えております。休業支援金については、原則としては休業前賃金の8割。昨年4月から6月の期間に関して、雇用調整助成金の助成率は、大企業については3/4となっております。それを前提に、各企業において雇用調整助成金を使って休業手当の支払いが行われているところです。この助成率についてもいろいろな影響があり、当然のことながら必ずしも10/10で支払われているところではなく、多くの企業において法定の6割という水準が支払われている実態もあります。そういった、既に雇用調整助成金を使って休業手当を支払っている大企業とのバランスなどを踏まえて、この期間に関する休業については休業前賃金の6割という形で整理をしたいということです。先ほど申し上げました休業の期限については、4月30日までということで整理をするものです。
本日、先ほどの雇用保険部会で審議が行われ、「おおむね妥当」と報告を頂いているところです。併せて、その際に休業支援金の制度については、あくまでも雇用調整助成金の特例措置であるということに鑑みますと、その趣旨に関して長期化しているということや、制度の拡充が随時行われているということで、いささかバランスが失していくのではないかという御意見がありました。あるいは、これは雇用調整助成金の特例措置とも関連いたしますが、事業主の共同連帯、そもそもの枠組みというものを超えるような形になっているのではないかというような御意見などもありました。そういった御意見の中で、おおむね妥当とまとめられているところです。私からは以上です。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 本件について御質問、御意見がありましたら、手を挙げるボタンをクリックし、指名された後にお名前を名乗ってから御発言いただきますよう、お願いいたします。杉崎委員、お願いします。
○杉崎委員 日本「商工会議所の杉崎です。大企業のシフト労働者等に対して、休業支援金、給付金を適用することについて、こちらも趣旨自体は理解いたすところですが、企業、労働者双方が混乱しないように、対象となるシフト労働者の範囲や給付金額の算定等については、分かりやすく丁寧に周知をしていただきたいと思います。
また、先ほどの雇調金同様に再三の主張ではありますが、一連の措置の財源は雇用保険二事業ではなく、一般会計による国費で負担すべきであると考えます。また、雇用保険二事業に依存して雇用を支えるということは、もはや限界ではないかという認識を持っております。二事業への貸出し額が急増している失業等給付、年々支出額が増加している育児休業給付を含め、雇用保険制度全体の持続性が懸念されるところであり、思い切った対策を講じる必要があると思っております。したがって、この機会に雇用を支える枠組み全体を抜本的に見直すとともに、雇用保険制度等の再構築を検討すべきであると考えております。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。池田委員、お願いします。池田委員、マイクをオンにしてください。
○池田委員 失礼いたしました。昨年7月に創設された休業支援金・給付金は、本来、休業手当が支払われない、あるいは複雑な雇調金手続に慣れていない中小企業に雇われる労働者のために、あくまで特例的に創設されたものであるということかと思います。そうした中、そもそも特例的な措置であった休業支援金・給付金を、更に大企業のシフト労働者等にも適用を開始、対応するということは、特例の上に更に特例を重ねることになり、休業手当を支払う企業を支援するという雇調金の本来の趣旨から大きく外れることになると認識をしております。
個人向けの休業支援金・給付金の対象者が広がることで、不正受給というものも懸念されるところです。今回の措置を講じるに当たっては、引き続き事後チェックや不正受給が行われた場合の返還命令の厳格化など、不正防止の徹底に努めていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、当分科会は厚生労働省案をおおむね妥当と認め、その旨を私から御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、報告文案の表示をお願いいたします。
(報告文案表示)
○阿部分科会長 ただいま報告文案を表示しております。それでは、表示された報告文案により、労働政策審議会会長宛報告することとして、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告をさせていただきます。
では、次の議題に移ります。職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱についてです。本日付けで、厚生労働大臣から諮問を受けております。資料について、事務局から御説明をお願いいたします。
○訓練受講者支援室長 訓練受講者支援室長です。私からは、職業訓練の実施等による特定求職者の就職支援に関する法律施行規則の一部を改正する省令案、いわゆる求職者支援法施行規則の改正案について説明いたします。資料No.3-2の表紙の次、1枚目を御覧ください。趣旨の一番下の○に記載しておりますが、今般の改正は新型コロナウイルスの影響により、休業を余儀なくされている方や、シフトが減少したシフト制で働く方などが、仕事と訓練受講を両立しやすい環境整備を図ることで、自らの職業能力を向上させ、今後のステップアップに結び付けることを目的としています。そのために、求職者支援制度に特例措置を設けることにしています。また、求職者支援制度は、リーマンショックにより雇用情勢が大きく悪化していた平成23年度に、雇用保険を受給できない方の雇用の第2のセーフティーネット施策として創設された制度で、雇用保険を受給できない方が、月10万円の生活支援のための給付金を受けながら訓練を受講し、その後の再就職を目指していただくことを目的としています。
このため、求職者支援制度は、従来、主に離職した方の活用を想定して運営してまいりましたが、今般、休業されている方やシフト制などで働く方などの在職中の方が活用しやすいものとするために、求職者支援制度の月10万円の給付金、職業訓練受講給付金の支給対象者の要件としている収入要件に、特例を設けることとしています。
次ページの、2.の(2)を御覧ください。こちらに、収入要件の特例措置の内容を記載しております。訓練受講期間中に訓練受講者へ支給する職業訓練受講手当、こちらは職業訓練受講給付金の省令上の名称となっておりますが、それらは月の収入が8万円以下であることを支給の要件としており、それをシフト制で働く方などについては、月12万円以下に引き上げることにしています。シフト制などで働く月の収入が変動する方については、業務の繁閑によって月の収入が8万円を超えるおそれがあり、月によって10万円の給付金を受給できないおそれがあります。そして、そのことが10万円の給付金を受給できないおそれのある在職中ではなく、仕事をやめて収入がなくなった後に訓練を受けようと考えることにつながり、在職中の訓練受講の隘路になるものと考えております。このため、現在の収入要件の上限の8万円に、変動収入に対応する金額として4万円を積み上げさせていただいて、上限を12万円に引き上げることとしております。
そして省令に設ける特例措置は、収入要件の特例のみとさせていただいておりますが、通達で規定している出席要件にも特例措置を設けることとしております。具体的には、仕事をしながら訓練を受講しやすくするために、仕事の都合で訓練を欠席せざるを得ない日を、やむを得ない理由による欠席と見なし、訓練実施日の2割までの欠席を認めることとしています。現在は仕事で訓練を1日でも休むと、10万円の給付金は支給されない取扱いとしているのですが、それを緩和することにしています。以上の特例措置を、令和3年度の上期末までとなる9月末までの特例措置として設けることにしております。
1枚戻って、2.の(1)を御覧ください。こちらは、人材開発分科会で御議論いただく部分となります。在職者の方が仕事をしながら訓練を受講しやすくするために、訓練期間などの認定基準に関する特例措置を設けることにしております。具体的には、在職者の方が受講しやすい短い期間の訓練コースを設定できるようにするために、基準の見直しなどを行うことにしています。簡単ですが、私からは以上です。
○阿部分科会長 それでは本件について御質問、御意見がありましたら、手を挙げるボタンをクリックし、指名された後はお名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。森下委員、お願いします。森下委員、マイクが入っていないようです。
○森下委員 失礼しました。森下です。今回の省令改正は、雇用保険を受給できない求職者の方々に対する求職者支援制度や、職業訓練受講給付金について要件の緩和を行うという内容ですが、これによって即戦力となる人材の育成が促進され、企業にとっても優秀な人材の確保につながるなど、労使双方にメリットがあると承知しています。しかしながら、コロナ禍という特殊な状況下において、これだけ政府による支援策の拡充、また財政出動が図られる中、財源の逼迫というものが今後深刻化することが懸念されています。雇用保険財源も同様であると認識しているところです。
雇用保険は、あくまでも保険制度でありますし、いざというときのために加入者が連帯して保障を準備するものであって、特例の導入に当たっては、この点にくれぐれも留意していただきたいと考えています。出席要件の緩和、訓練期間、訓練内容の多様化、柔軟化を図るとのことですが、例えば出席要件の緩和であれば、やむを得ず欠席をした際の訓練内容などのフォローアップをしっかり行うなどして、質を確保する必要があると思います。給付を受ける方々に際しても、その意識付けをしっかり行っていただくことが重要であると考えています。
また、今回の特例措置の導入による効果検証を行っていただくことも必須であると思いますので、是非この点もよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
○阿部分科会長 ありがとうございました。仁平委員、お願いします。
○仁平委員 公的な職業訓練が適切に活用されるようにしていくことは重要なことであって、省令案の要綱については了解したいと思っております。その上で、幾つか申し上げたいことがあります。まず、総じて労働者の支援を拡充する内容であると受け止めているわけなのですが、この度ハローワークに新設されるコロナ対応のステップアップの相談窓口では、失業者の希望に沿うような対応を是非行っていただきたいと思っております。訓練の自己あっせんによる受講者数の目標達成を過度に追求することがないように、御留意いただきたいと思っております。
それと、訓練期間、内容の柔軟化、求職者支援制度の特例措置に、労働者が実際に魅力を感じて受講をするのかどうかというのは、未知数なのだと思っているのです。この柔軟化した講座の内容が公的な職業訓練として適切な内容なのかということについては、十分チェックを頂きたいと思っております。
さらに、ちょっと長い目になるかもしれませんが、制度を必要とする方にこの支援が行き届くような労働行政を目指していく必要があると思いますので、そのためにも今回の改正による効果の検証を適切に行って、そうした結果や教訓をいかしながら、次の政策を正に厚労使で審議できるような工夫も是非お願いしたいと思っております。以上、意見と要望も含めて申し上げました。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。特にないでしょうか。もし皆様からなければ、私から個人的な意見を申し上げます。先ほど森下委員から、雇用保険財政の観点からも無闇に特例を拡大することはどうなのだろうかというような趣旨の発言があったと思います。それは、そのとおりだと思います。ただ、今回教育訓練の拡充というのは、これまで雇用調整助成金で休業を中心に行ってきたと思いますが、休業ですと労働者の職業能力の開発といった面では、特に貢献がないと思われます。今回、このような教育訓練を在職者であっても、あるいは休業中の方であっても、求職者支援訓練等をうまく活用して職業能力の開発につながれば、それは休業で労働者がアイドリングしているよりも、むしろプラスになるところはあるのではないかと思います。
私の個人的な意見としては、今後もコロナが続いていって、例えば休業がどうしても必要だという場面もあるかと思いますが、できる限り単に休業ではなくて、労働者の方々の職業能力の開発にも資するような休業の在り方、あるいは在職者訓練の在り方なども含めて、この雇用保険の在り方みたいなことも考えたらいいのではないかと思っております。
それから、森下委員や仁平委員からありましたが、今回この教育訓練の拡充について、検証をすることは非常に重要だろうと思います。それは、今後の教育訓練開発においても非常に大きな貢献があると思いますので、是非厚生労働省におかれましては、今回の教育訓練の拡充、あるいは雇用調整助成金の在り方等についても、一段落したところで、できるだけ検証をしていただいて、審議会で議論させていただきたいと思っております。私は以上のように考えております。ありがとうございます。
それでは、ほかに御意見がなければ、当分科会は厚生労働省案を妥当と認め、その旨を私から報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、報告文案の表示をお願いいたします。
(報告文案表示)
○阿部分科会長 ただいま御覧いただいています報告文案により、労働政策審議会会長宛報告することとして、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○阿部分科会長 ありがとうございます。では、そのように報告をさせていただきます。予定されている議題は以上です。この際、委員の皆様から御発言があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特段よろしいでしょうか。それでは、お忙しいところ御参集いただきまして、ありがとうございました。本日の分科会は、これで終了いたします。どうもありがとうございました。