第1回がん全ゲノム解析等連絡調整会議(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和2年9月25日(金) 18:00~20:00

場所

AP虎ノ門 NS虎ノ門ビル(日本酒造虎ノ門ビル)11階 室名A

議題

  1. (1)「がん全ゲノム解析等連絡調整会議」の設置について
  2. (2)「全ゲノム解析等実行計画(第1 版)」を推進するための体制および進め方について
  3. (3)その他

議事

議事内容
○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、「第1回がん全ゲノム解析等連絡調整会議」を開催いたします。
構成員、参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
私、本日、事務局を務めます健康局がん・疾病対策課の岩佐と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それではまず初めに、正林督章健康局長より御挨拶申し上げます。
○健康局長 健康局長の正林でございます。
最初に、構成員の先生方におかれましては、日頃より、がん対策を初め健康行政全般にわたり御支援・御指導を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。
また、この会に御参加いただきまして、大変ありがとうございます。
簡単に自己紹介をしたいと思いますが、私、この8月11日付で健康局長を拝命いたしました。遡ると、平成13年に、当時、生活習慣病対策室という部屋があって、そこでがん対策を所管していましたが、そこの室長補佐として、当時は、第3次の対がん10か年戦略の策定や、それから、がん診療拠点病院をスタートしたときにちょうど担当しておりました。さらに、健康増進法の策定作業もやらせていただきました。
そして、平成28年に、がん対策健康増進課長としてがん対策に携わり、その後は、健康課長も拝命して、専ら健康増進法の改正作業をしておりました。受動喫煙防止対策の強化という仕事をやらせていただいています。
その後、がんセンターに異動になりまして、理事長特任補佐として全ゲノムを担当させていただきました。このように、がん対策とは非常に深いつながりでこれまでやらせていただき、再び、健康局長として、このがん対策に携わらせていただくことに大変喜びを感じております。
さて、がんの全ゲノム解析に関しては、昨年12月に全ゲノム解析等実行計画第1版が策定されました。がん患者の方々に対し、さらに良質でかつ適切な医療を提供するためには、日本人の遺伝的背景等を含めた包括的な病態解明が必要とされており、全ゲノム情報の活用等が重要であると考えております。
本年7月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」でも全ゲノム解析等実行計画を着実に推進し、治療法のない患者に新たな個別化医療を提供するべく、産官学の関係者が幅広く分析・活用できる体制整備を進めるとされ、昨年12月に策定した全ゲノム解析等実行計画に基づき、まずは先行解析を進めることとしております。
この全ゲノム解析を進めるために、専門的な見地から、専門的な観点から御意見をいただくために、このたびがん全ゲノム解析等連絡調整会議を立ち上げることとした次第であります。
構成員の皆様方におかれましては、がんの全ゲノム解析等実行計画の推進に向け、全ゲノム解析等の体制整備・人材育成について、先行解析について、本格解析について、などに関して、ぜひ忌憚のない御意見をいただければと思っております。
2時間弱ではありますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 会場におけるカメラの撮影は、これまでとさせていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
また、ウェブ会議、皆様既にいろいろなところでされているかとは思いますが、簡単に少しだけルールを御説明させていただきます。会議の最中は、基本的には、カメラをオンにし、ミュートの状態にしておいてください。また、御発言の際は、基本的には挙手をいただきまして、こちらから指名をいたしますので、指名されましたら、ミュートを解除し、氏名を名乗った上で御発言いただければと思います。御発言終了後にはミュートにしていただければと思っております。
続きまして、資料の確認でございます。資料につきましてはホームページに掲載しておりますけれども、資料1、2、それから、資料3-1から3-5、資料4から6までがございます。また、参考資料1がございますので、お手元に御用意・御確認のほどお願いいたします。
早速ですが、議題1(1)「がん全ゲノム解析等連絡調整会議」の設置についてに移らせていただきます。資料1を御覧ください。
本調整会議につきましては、開催要綱の「1.目的」にございますとおり、「全ゲノム解析等実行計画(第1版)」に基づきまして、必要な事項を具体的に検討をするため開催するものとされております。本会議の議論を取りまとめまして、「がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」に報告をすることになっております。
また、開催要綱の3.及び参考資料1で名簿を示しておりますとおり、22名の構成員及び3名のオブザーバーに今回はお声がけをさせていただきまして、残念ながら、加藤健構成員からは御欠席の連絡をいただいているところですが、残りの24名の方に御出席をいただいているところでございます。
本来ですと、お一人お一人御紹介させていただくところではございますが、お時間限られているところでございますので、大変申し訳ございませんが、名簿での紹介とさせていただきます。
また、開催要綱3.の(2)にございますとおり、本会議には主査を置くこととしておりまして、構成員の中から、健康局長が指名することになっております。健康局長にはあらかじめお伺いしまして、主査としまして、中釜斉構成員を指名するというところで指示をいただいているところですので、よろしくお願いいたします。
事務局からは、一旦は以上ということにいたしまして、これ以降の進行につきまして、中釜主査にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中釜主査 それでは、これ以降の進行を務めさせていただきます中釜です。本日は、よろしくお願いいたします。
この調整会議の設置要綱について、今、説明がありましたとおりですし、冒頭に健康局長から御説明がありましたけれども、このがんの全ゲノム解析を推進するに当たり、本日の議題2になりますが、この実行計画をスムーズに推進するために必要な事項・事案について十分議論した上で、効率的にこのがん全ゲノムを進めていきたい、そのための意見を交わす、そういう会だと認識をしております。がんの全ゲノム解析による成果をアカデミアあるいは企業等々と共有する仕組みをつくり込んでいきながら、最終的にがん患者さんに裨益するような成果を上げていくことが求められていると思いますので、構成員の方々には、施策の推進のために重要な案件について忌憚のない御意見をいただければと思います。本日は、よろしくお願いいたします。
それでは早速、議題に移らせていただきます。議題2の「「全ゲノム解析等実行計画(第1版)」を推進するための体制および進め方について」に移ります。
事務局より、資料の説明をお願いいたします。
○がん対策推進官 事務局岩佐より、再び資料の説明をさせていただきます。資料2について御説明をさせていただきます。
こちらの資料につきましては、本会議の前提に当たるような部分でございますので、内容につきましては、ある程度先生方既に御存じのことかと思いますので、簡略化して御説明させていただきます。
1ページおめくりいただきまして、2ページ目、「全ゲノム解析等実行計画(第1版)」ということで昨年の12月につくられたものの概要をお示ししております。
また、次のページ、3ページ目には、「全ゲノム解析等に関する実行計画の実行について」ということで、「経済財政運営と改革の基本方針2020」であったり、「成長戦略のフォローアップ」というところにも、全ゲノム計画について位置づけをしまして、着実に推進していくという方針を立てております。
ページをおめくりいただきまして、4ページ目でございますが、全ゲノム解析等につきましては、まずは先行解析として、約1.6万症例を先に進めていくという形で進めるものとしております。
また、5ページ目でございますが、最大3年程度をめどに当面の間、先行解析を進め、また、その3年を待たず、その前からできるところからは本格解析を実施していくという形で進める計画にしており、それらを進めるための様々な検討をここの会議で実施していくということでございます。
ページをおめくりいただきまして、6ページ目になります。こちら、「がん全ゲノム解析等の推進に関する体制」ということで、全体像を一つにまとめさせていただいております。一番上に「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議」がございまして、こちらは全体の方向性を決めていくものでございますが、その下に部会がございます。その部会に検討事項を報告する立場としてこの連絡調整会議があるという状況でございます。
また、「がん全ゲノム体制班」、本日、様々な御発表もいただきますが、がん全ゲノム体制班におかれてそれぞれ検討した内容が今回の連絡調整会議に上げられ、共有をし、一定の結論を得ながら進めていくということで考えているものでございます。
ページをおめくりいただきまして、7ページ目でございますが、具体的にどういった内容について検討をしていかなければならないのかということで、私たち厚生労働省からがん全ゲノム体制班にお願いしている内容について示しております。4つのカテゴリーがあり、それぞれがん全ゲノム体制班においてワーキンググループをつくっていただき、それぞれにおいて御活動をいただいているというところでございます。
詳しい内容につきましては、次の8ページにございますので、8ページで簡単に御説明をさせていただきます。8ページ目が、それぞれのワーキンググループ及び全ゲノム体制班に厚生労働省からお願いをしている検討事項の一覧となっております。
また、報告時期の目安という形で示させていただいているものが、時期としてそれぞれございます。
がん全ゲノム体制班におきましては、全体の方向性、方針の決定や役割分担の明確化等を進めていただき、各ワーキンググループの間での調整などを進めていただくような形で考えております。
また、バイオバンクワーキンググループにおかれましては、臨床情報等の内容、収集方法、そういった立てつけについて御検討をいただき、また、検体の収集等のワークフローを確立することを進めていただいております。
また、解析ワーキンググループにおきましては、シークエンス等の実施、収集したデータの管理の在り方などの検討を進めていただく。
データ共有ワーキンググループにおきましては、データ等の管理・運営体制の在り方であったり、データの二次利活用の制度等についての御検討をいただくものと考えております。
また、ELSIワーキンググループにおきましては、新薬開発への活用や将来の追加解析等に耐え得る包括的な同意取得のフォームなどを検討していただく。その他、患者等へのリコンタクトも可能とする仕組みの構築等の検討などの項目について御検討をいただくことを考えております。
既に、こういった役割については、各ワーキングの先生方にお示しした上で、今回、それぞれの御検討状況について御説明をいただくという状況でございます。
続きまして、9ページ目でございます。今後の検討の進め方(案)、今年度中の案というところでございます。本日、第1回の会議を開催しております。まだ予定ではございますが、今年中には一定の結論を得る項目も幾つかございますので、10月、12月と、第2回、第3回を開催し、第4回にはある程度今年度中の取りまとめをしていきたいと考えております。
また、これらの検討状況につきましては、部会、それから、コンソーシアム運営会議、また、厚生科学審議会であったり、ゲノム医療協議会等へ、適宜、報告を行うような形で進めさせていただければと考えております。
事務局からは、以上でございます。
○中釜主査 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明について、何か御質問・御意見がありましたら、お願いいたします。
では、天野構成員お願いいたします。
○天野構成員
御説明ありがとうございました。
私からは2点ございます。
1点目ですが、全ゲノム解析は、もちろん将来の研究のために行われている部分が多いかと思いますが、一方で現在の患者のための視点も重要かと考えています。今までの検討の過程で、例えば、患者説明文書とか、そういった患者さんに直接関わる部分について、がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議等に最終段階でお示しいただくことが多かったように思います。
そうなりますと、細かい部分の修正などに対して、患者や一般市民の声がなかなか反映し難いという部分があるかと思いますので、今後は、検討をするに当たりまして、限られた時間だとは思いますが、ワーキンググループ等においても必要に応じて、適宜、患者や一般市民の意見を反映する場を設けていただきたいというのが1点目でございます。
2点目ですが、これは後で御説明いただくかとは思うのですが、いわゆるELSIの部分ですね。この部分が全体の流れの中で、先の12月の運営方針の中でも引き続き検討していくというふうに示されてはいるのですが、全体の中で必ずしもそれがメインストリームになってないというか、十分に反映されてない部分がまだあるかと思います。昨年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」においても、ゲノム医療の推進に当たっては、国民がゲノム遺伝子情報により不利益を被ることがない社会をつくるため必要な施策を進めるという一文が明記されていまして、この部分については具体的なアクションプランも策定していかないといけない部分だと思います。今回、全ゲノム解析に関しての部会ということですが、この部分についてもぜひ御留意いただきたいと思います。
私からは以上です。
○中釜主査 ありがとうございます。
今、御指摘の点について、例えばELSIについては、後ほどELSIワーキンググループからのこれまでの検討事項についてお話しさせていただきますので、それを踏まえた上で、また、改めて、不足分あるいは考慮すべき点があれば、御意見をいただければと思います。
今後、共通ICの作成に当たって、患者さんからのあるいは国民の意見を取り入れる、そういう点に関しても十分に対応を考えていきたいと思いますが、それも、また、後ほどのワーキンググループの発表をお聞きになっていただいて、また、改めて御議論いただければと思います。
よろしいでしょうか。
ほかに、御質問・御意見はございますか。
よろしいですかね。
ありがとうございます。
それでは、続いて、私から提出させていただきました資料3-1を御覧ください。こちらについては私から説明させていただきます。
今の厚労省の説明と重複する部分もありますが、がん全ゲノム体制班についての説明であります。先ほど説明がありましたように、がん全ゲノム解析を進めるに当たりまして、検討をすべき重要事項があるというお話がありました。収集する検体のほか、臨床情報の収集の在り方、それから、解析のプラットフォーム、加えて、データ共有の在り方ですね。それから、その利活用の方針、そして、ELSIの重要な問題、これらの大きな問題についてワーキンググループをつくって検討し、御意見をお伺いしながらスムーズに進めていく必要があるということで、このがん全ゲノム体制班を構築しています。
班長は私が務めており、メンバーとしまして、ここにお示しの先生方に加わっていただきます。
設置目的は、がん全ゲノムの本格解析の実行及び体制整備に向けて、先行解析を効率的に推進するための専門ワーキンググループを設置し、その意見を集約し、検体や情報収集、解析方法、データの共有、それから、ELSI等について検討を行う。また、各研究班、バイオバンク間の連絡調整を行うことを目的としています。
重要な事項について議論する専門のワーキンググループとして、具体的には4つの視点からワーキンググループを設置しています。1つはバイオバンクワーキンググループ。こちらに関しては、間野先生がワーキンググループ長として、検討事項としては、全ゲノム情報に付随して保管する検体や臨床情報等についての検討。2つ目が解析ワーキンググループで、これは京大の小川先生にワーキンググループ長を務めていただきますが、効率的かつ統一的なシークエンスや解析方法等についての検討。3つ目のデータ共有ワーキンググループ。こちらは東大の油谷先生がワーキンググループ長で、データを共有・活用するための考え方、インフラ等についての検討。それから、ELSIワーキンググループは、武藤先生にワーキンググループ長ということで、倫理面や幅広い利活用を可能とするためのICの在り方等について検討を行っていただいております。
また、このワーキンググループには、5~10名程度のメンバーに加わっていただき、それから、バイオバンクとデータ共有、それから、ELSI等については、製薬協からの皆様にも加わっていただいているという状況であります。
めくっていただきまして、「がん全ゲノム体制班の活動報告」。これまでの活動について簡単にお話しします。
がん全ゲノム体制班は、全体班ですが、これに関しては6月22日から、これまでに5回のウェブ会議を繰り返してきました。様々な構成員からの意見をお伺いしています。
それから、2番目のバイオバンクワーキンググループも、同じく7月頃より、どのような試料が保管されていて、全ゲノムの解析に資するのかというところで、臨床情報を含めての収集項目案等で既に検討を行っています。
解析ワーキンググループは非常に重要なグループで、どのような解析プラットフォームを取り入れて、日本全体で取り組んでいくか、解析するデータが広く使えるような共通のプラットフォームをつくることが非常に重要ですので、その辺りのことを今年の7月から議論して検討をしていただいています。
データ共有ワーキンググループも、国家プロジェクトとして進めるがん全ゲノム解析においては、収集するデータをいかに広くアカデミア及び企業等を含めて利活用していただくかについて検討を行っています。成果を最終的には国民・患者さんに裨益することが求められているわけで、これは非常に重要であり、こちらも7月からこれまで4回にわたって会議を行って、検討を行っております。
最後のELSIワーキンググループも、6月30日より、既存ICFを収集し、その検体の中で、実際に全ゲノム解析で利活用するという視点から、どのくらいの検体が使えるのか、その辺をICの観点から検討していただいていて、包括的な統一化ICF作成に係る課題抽出に着手しています。これを踏まえて、天野構成員からの御指摘を受けて、広く国民・患者さんの目線からも納得できる共通ICの構築に努めたいと考えているところであります。
簡単に各ワーキンググループで精査した内容は、資料3-2以降に示しておりますが、詳細な数字等については御覧いただければと思います。
3ページ目が現在の進捗で、固形腫瘍、造血器腫瘍、大きく2つの視点から、臨床情報の収集項目について議論を進めてきているところであります。
以上が、がん全ゲノム体制班及びそのワーキンググループについて説明であります。
これまでの私の説明で、何か御不明な点、御意見等はございますか。
よろしいですかね。
それでは、具体的に各ワーキンググループの検討事項を御説明していただき
ます。最初、4つのワーキンググループの説明を聞いていただき、それから、皆さんの御意見をお伺いしたいと思います。各構成員、各ワーキンググループ長は各々5分、時間厳守で説明をお願いいたします。
 
○間野構成員 国立がん研究センターの間野でございます。
バイオバンクワーキンググループについて簡単に御紹介します。資料3-2のページ1を御覧ください。
バイオバンクワーキンググループの使命としましては、既存検体の精査をELSIワーキンググループとともに行い、また、そこで得られる検体の品質管理あるいはクオリティコントロールをどのようにするかを確定し、さらには、検体送付の解析のためのロジスティクスの確定することが求められています。さらには、検体に付随する実際の患者さんの臨床情報の収集項目は、どのような情報を集めればいいのか。さらには、どうやって集めればいいのかということも確定する必要があります。また、検体シークエンスの全体の進捗管理もここのワーキンググループが仰せつかっております。それから、これから始まると思われる検体の前向き収集の際には、収集・保存ロジスティクスを確立する必要があります。
バイオバンクワーキンググループは、そこにありますように、今日の構成員の野田先生、武藤先生を初めとする13名のメンバーから成っております。
ページをおめくりください。これまでの進捗、検討事項ですけれども、まず1番として、既存のバイオバンクの現状調査を行いました。ここに書いてありますのは、東京大学、京都大学、がん研有明病院、国立がん研究センター、静岡がんセンターにおいて、ペアの正常部がある腫瘍部の凍結検体の総数であります。全体で約64,000の検体が保存されています。ただし、がん種とか施設によって網羅的遺伝子解析の可否や、解析結果の公的データベースへの登録の可否、あるいは企業の利活用の可否等はIRBによって異なりますので、これが全部すぐ使えるわけではなくて、まずは、IRBが整備されているものから実際の既存検体の解析を行っていくという形になります。
ページをめくっていただいてページ3。現在までの進捗の2番目です。収集する臨床情報の項目を決定する必要があります。
固形腫瘍に関しては、臨床情報の収集案v1を作成して、ワーキンググループメンバー内で審議を行いました。また、このv1は製薬協にも審議していただいて、その結果を受理しております。
また造血器腫瘍は、骨髄移植の有無とか特殊な検査・治療がありますので、固形腫瘍の案とは別に造血器腫瘍の臨床情報を収集のための検討サブワーキンググループを組織していただきました。サブワーキンググループ長を京都大学の南谷先生にお務めいただいて、JALSGとか日本血液学会、JCOGとか様々なステークホルダーの先生方に参加していただいてサブワーキンググループを組織していただきました。その結果、造血器腫瘍の臨床情報収集項目案v1ができましたので、それを受理しています。現在、その両者を統合する臨床情報収集システムの案をv2として作成しているところで、恐らく来週にはその結果を、関連する皆様にはお送りできるのではないかと思います。
ページをめくっていただいて、実際の臨床情報の収集のスキームとしては、今回は研究ですので、時系列のサンプルも恐らく解析することがありますから、それを想定して様々なタイミングのサンプルと、それぞれにおける治療の経過とかいう形の全体の情報を収集すると考えられます。
ページをめくっていただいてページ5です。先ほどまでは収集項目でしたけれども、今度はどうやって収集するかということを検討しました。現在、保険で行われているがんのゲノム医療の病院においては、がんゲノム検査ポータルのPCが設置されています。そこのPCの画面に、全ゲノム研究(仮)というバナーを設置して、そこをクリックすると、クラウドにあるEDCに飛んで臨床情報を入力できるようにすることがいいだろうとなりました。これまで、EDCの開発ベンダーとヒアリングを行って、1社に確定しましたので、先ほど申し上げた収集情報項目が確定すれば、実際にそれで開発を行ってもらうという形になっています。
ページをめくっていただいてページ6。これが最後のページですけれども、これまでのがん全ゲノム体制班での議論や外国でのICGCやTCGAの体制を鑑みて、臨床情報の収集システムを含んだ全体の流れ図をここで書いてみました。様々な胃がん解析グループあるいは肺がん解析グループといったがん種ごとの解析グループがこのプロジェクトに参加して、そこから検体がシークエンスをする検査室に送られることになります。異なったシークエンサーは様々な特性を持っていますので、基本的には1つのプラットフォームのシークエンサーを使って解析することになるのではないかと思います。それについては、解析ワーキンググループが現在検討してくださっています。
その検査室からゲノムのデータが出ますと、諸外国のプロジェクトにおいても共通の変異Callerを用いて解析することが行われていますので、ここにおいても解析ワーキンググループによって、日本のスタンダードな標準Callerをつくっていただいて、それで変異リストを生成します。ここまでは共通のパイプラインで行うべきであると考えています。そこで得られたデータを研究用のデータ共有システムを用いて、胃がんであれば胃がんのグループに、肺がんであれば肺がんのグループに戻ることになると考えられています。またそのデータは最終的には利活用システムに流れて、企業あるいは他のアカデミアに利用できるようなシステムをつくらなくてはいけないと思っています。
また、一定期間の後に、研究用データ共有システムからは、公的データベースに公開して、世界の医療の発展に役立てたいと考えています。セントラルなところは、かなり人のリソースも必要ですし、日本でこれだけの数の全ゲノムをやったことはかつてありませんから、そのための人材育成も必要なために、かなりのリソースはここでは要求されるのではないかと考えています。
バイオバンクワーキンググループからは以上です。ありがとうございました。
○中釜主査 ありがとうございました。
それでは、続きまして、解析ワーキンググループに関して、小川構成員からお願いいたします。
○小川構成員 承知いたしました。京大の小川でございます。よろしくお願いいたします。
ちなみに、先ほど間野先生から御説明のあった最後の6ページ目の体制図も参照しながらお聞きいただきたいと思います。
解析ワーキンググループの役割ですけれども、これは先ほど間野先生から一部説明がされてしまったものですから、1つはシークエンスプラットフォームを統一しましょうと。シークエンスプラットフォームが違うだけでデータが大きく異なってきますから、それで、現在、どんなプラットフォームでシークエンスするかというのを検討中です。これは7月からずっと検討しておりまして、恐らく10月いっぱいにはほぼ片がつくだろうと思います。
それから、もう一つは、データ共有システムの構築ですね。これは、間野先生の図の一番左側のいろいろな人たちが関係するのですけれども、その基礎となるようなゲノムにはどのようなものがあるのかということをまず共通を決めて、それを基に解析するということで、これは非常に重要な部分を構築します。
それから、ゲノム変異がどんなふうなゲノムの異常があるかというのを解析しなければいけません。これは間野先生がおっしゃったように、日本の標準的なパイプラインを使って解析する。それから、この標準パイプラインの中には、左の各グループの先生方が共通に使えるようなツールがあります。これは技術的詳細になるので割愛しますけれども、様々なツールをばらばらに解析するのは全くもって効率が悪いわけですから、非常に高度なテクニックや技術を要求するようなことに関しては、解析ワーキンググループでこれを整理するということが、このワーキンググループの役割と考えております。
それから、もう一つ、データ解析全体にある、解析をして、我々はプランニングをして患者さんの役に立つようなデータを見い出さなければいけないわけですが、これをこのプロジェクト全体を通じて解析のサポートをすることが、我々の非常に重要なミッションということになります。
各方法について簡単にお話ししますと、シークエンスプラットフォームの検討ですが、これに関しては、現在、3枚目のページをめくっていただいて、この検討には大腸がんの5検体、それから膵がんのオルガノイド5検体ずつ採ってきて、これを腫瘍と正常のDNAを採って、これを使って様々なプラットフォームで解析して比較するということをやります。抽出はほぼ完了していて、オルガノイドは倍の時間がかかるので10月にちょっとずれ込むと思いますけれども、そのほかは順調に終了していて、来週中にもシークエンスセンターに外注することになります。
それから、バイサルファイトシークエンス解析をします。これは九州大学の三浦先生にお願いして、ライブラリー設定等々をお願いしているところです。これも来週中ぐらいにできます。これは順調に進んでおりまして、12月までにこの解析は終了して、プラットフォームを決定すると考えています。
そのほかには、現在、ワーキンググループ内で検討中であります。一番最初にお話ししました1番から4番の解析項目は、恐らくこういったことが解析の対象になるということでありますが、その技術的詳細仕様については、解析ワーキンググループで詳細な議論が必要だと思います。第1回の議論を先般行ったのですが、そのときに議論になったのは、何せこういう解析を始める上で、一回どんなコンピュータリソースを使って解析するのか、具体的に申し上げますと。クラウドコンピューティングにするのか、それともスパコン連携でやるのか、あるいは、それを併用していくのかといったことを今後決めていかなければ動きが取れないと。
共有システムの構築に関しては、これは4ページ目を参照していただいて、これは間野先生から御説明ありましたが、ここでは我々は最初に基礎的な変異コールあるいはsvコールをやって、その結果を共有する。これを基に各解析ワーキンググループで、これも重要なミッションで、ただ、これをどのように構築するかということはコンピュータのプラットフォームを検討中です。
標準パイプラインですけれども、これは技術的な仕様になるので詳細は割愛しますが、なぜこれが必要かというと、様々な人が全然違うミューテーションコーラーでコールをすると、患者さんにどんな変化があったか微妙に異なってきます。そうすると、解析の最終的な結果が必ずしも統一的に理解できなくなってしまうので、まず基礎的な変異コール、svコールについては統一してこれを我々が解析して提供するということがあります。
それから、変異コールですが、6ページ目になります。これは最新のミューテーションコーラー、具体的に言うと、標準的なミューテーションコーラーを決定します。それがアップデートされるたびに、このような変異コールをアップデートして皆さんに提供します。
最後に、データ解析拠点の構築ということで、これは各ワーキンググループを我々ができるだけサポートするシステムを構築するということです。
こういった解析は、データをシークエンスするということよりも本当に大変だと思います。これは、我々の日本のがんコミュニティが経験したことのない未曾有な量のシークエンス解析です。10万件ということですから、これは恐らく世界でも経験したことがないわけでありまして。こういうところをやるためには人材の育成が必須であります。それから、今の解析の問題は、今のところどのくらいの予算を我々は使えるのか。どれくらいのコンピュータリソースができるのかが全く決まらないので、ぜひとも、これに関しては国のほうで早急にそういうことのサポート体制を構築していただければと思います。
以上であります。
○中釜主査 ありがとうございました。
続きまして、資料3-4、データ共有ワーキンググループから、ワーキンググループ長の油谷構成員から説明をお願いいたします。
○油谷構成員 ただいま御紹介いただきました東大の油谷でございます。
データ共有ワーキンググループは、私を含めて11名で構成されております。
検討事項といたしましては、1、2、3とございまして、データの管理・運営体制の在り方の検討。具体的には、どのようなデータがあるかということで、まずゲノムデータがあることはもちろんでございますが、それに加えて、このプロジェクトを成功させるためには、付随する臨床情報を充実させることが極めて大切であります。ただ一方で、もちろん個人情報保護の兼ね合いもございますので、その辺りのルールづくりは、このデータ共有ワーキンググループの大きなトピックでございます。
2.のデータの二次利活用。この利活用というものは、従来の単なる研究プロジェクトであれば、アカデミアの利用というところで止まっているわけでございますが、このプロジェクトにおきましては、どのようなデータに対してニーズがあるかということから逆に遡って、プロジェクトの体制を決めようということで、あらかじめ、このデータ共有ワーキンググループの中でも、企業からの代表、具体的には製薬協からの構成員にも加わっていただきまして、企業からのニーズをくみ上げながら体制を構築していこうというところを目指しております。
こういうところを踏まえまして、項目事項2、産学連携体制ということで、情報をどのように解析段階からさらにプロジェクトの外にいる方あるいは国際的な共有に対しての検討を行っていくということで、そうなりますと、既に、間野構成員、小川構成員からも御紹介がありましたように、どこに情報を置くのかということが大きな問題になってくるわけでございまして。そうしたときに、クラウドに置くのか、スパコンに置くのかというようなこと。さらには、成果をどのように分かりやすく、最初に天野構成員からも御依頼がありましたけれども、分かりやすく患者様あるいは一般国民にも見えるように情報を発信していく必要がある。これは最後にもお話しいたしますが、そういう情報のポータルをつくって、そのポータルから今このようにプロジェクトが進んでいるのだということを提供していくことも重要であろうということで、具体的にはまだ協議ができているわけではございませんが、2のところではそういうことを考えたいと思います。
3は、昨今、ドコモ何とかとかいろいろなセキュリティの問題が上がっております。これまで、例えば日本国内でのゲノムの情報の管理は、インターネットにつながっていない鍵のかかった部屋で云々ということが言われていたわけでありますが、そういうセキュリティを固めようとすればいくらでも固くできるわけでありますが、それはまさに利便性とのバランスでございますので、その辺りをどのようにセキュリティを担保した中で利便性をどこまで上げていくかということを、これはグローバルなスタンダードにも合う形でルールの策定を行っていきたいと考えております。
都合、これまでにワーキンググループの会合を2回ほど行いまして、その内容につきましては、既に、先ほどの体制班の会合の中でも議論してまいったわけですが、ワーキンググループとして以下の6つぐらいの国際動向、国内の取組という情報のこれまでにある情報を共有した後に、製薬協の構成員から創薬の視点からどういうデータが必要だと。あるいは、スパコン連携、クラウドの環境についての国内の現状、そして、現在、ゲノム医療には厚労省の推進によって昨年からいわゆるゲノム医療がパネル検査によるものが始まったわけでございますので、その情報が今C-CATというセンターに集められています。そういう前例が一つのプロトタイプもございますので、あくまでもこの全ゲノム事業は研究事業ではありますが、将来的にそれは全ゲノムデータをベースにした医療への連携というものも当然このプロジェクトの中で検討していく必要がありますので、その臨床情報をどのように、検体が採取された時点のみならず、その後の経時的に集めていく、サンプルも経時的に収集するというようなことが非常に価値を高めていくものではないかと考えているところでございます。
1枚めくっていただきまして、もうすでにお話ししたことでありますが、現在までの進捗。どういうデータがあるかということは、既にバイオバンクワーキンググループで御検討いただいておりまして、このプロジェクトでは、何らかの制限のついたサンプル・検体を使うのではなく、企業利用までも可能としているようなサンプル・検体を先行解析においても使っていこうということで、ほぼ同意を取りつつあるところでございます。
クラウド及びスパコン上でのどこにデータを保管するかということに関しましては、既に小川構成員からも詳しい御説明がありましたが、これは国際的にもクラウドに行ったり、クライアント側に行ったり、非常にダイナミックに変わっておりますので、その辺りを見据えて、先ほどの繰り返しになりますが、セキュリティをどういうふうに保つ、あるいは、この後、吉田先生からの御発表もあると思うのですが、家族性腫瘍検体の解析データなどにつきましては、また、別の格納なども必要ではないかという意見も出ております。
ですので、これも繰り返しになりますが、治療前後の情報なども含めた豊富な臨床情報の収集が重要になると思います。
最後に、3枚目でございますが、今後の論点といたしましては、これは先ほどの間野先生の資料を見ながら体制を考えていただけたらいいと思うのでありますが、プロジェクトの体制班の充実が非常に重要であります。全ゲノム解析の検体の数を幾つにするかというところに実行計画等でも多くのことが議論されてきておったわけでございますが、いざ実際に実行に移すとなりますと、その進捗の管理を誰がするのか、そして、小川構成員からも御発言がありましたが、バイオインフォマティシャンを含めたデータ解析の担当者、これはメディカルの知識、がんの知識も必要となります。ただし、研究者だけではできないわけでございまして、データ管理のために安定的な人員、つまり、データサイエンティスト、プログラミングを行うエンジニアとかが必要となります。政府のほうではデジタル庁とかができると、この辺りの人材は枯渇する可能性がありますので、早めの確保をお願いしたいところであります。
データ公開の有無の策定。例えば、*印で下に小さく書いてありますが、米国で10年ぐらい前から始まりましたTCGA:The Cancer Genome Atlas Projectにおきましては、これは研究のプロジェクトでございますので、データを最初に解析するグループには2年間の優先権があるわけです。ただ、データそのものはグループ以外にもちろん公開するわけでありますが、論文化をするというところに限っては2年間の優先権があると。それ以降はどなたも使える、発表ができるということで、小川先生のグループや、私どもと柴田先生のグループでも、単一のオミックスデータの利用は自由に行うことができました。この辺りは、一つの研究プロジェクトとしてはプロトタイプになりますが、今回、医療情報を伴ってきますので、そこについては、医療情報公開のルールとゲノム情報の公開のルールは、別途、定めていく必要があるのではないかと考えるところであります。
データ二次利活用。こちらもアカデミアに対する活用、産業界に対する。ただ、産業界もこのデータが3年も4年もたってから公開されることになりますと、全く価値のないものになってしまいますので、これをタイムリーに公開していく、共有していくことが非常に重要であろうと考えている次第でございます。
最後に書いてありますポータルですね。これは、どういうデータが収集されているのだろうかということを分かりやすく国民や患者様に公開していくことが重要ですので、さきほども御紹介したTCGAのcBioPortalが提供されています。例えば肺がんではこの遺伝子変異が日本人では何%あるのだというようなことが提供されますので、既に進行中であるゲノム医療においても貴重な情報になり得るだろうと考えるところでございます。
 以上です。
○中釜主査 ありがとうございました。
では、続きまして、資料3-5にあります、4つ目のワーキンググループ、ELSIワーキンググループでの検討状況について、横野ワーキンググループ長からお願いいたします。
○横野構成員 横野です。よろしくお願いいたします。
資料に関してですが、当日修正版資料3-5、資料一覧のウェブサイトですと、一番下の参考資料の下にあるものを御参照いただければと思います。また、今回のワーキングの代表は武藤先生ですが、本来、本日は内閣官房のコロナ分科会に御出席の御予定があったということで、私のほうで発表の準備をさせていただきましたが、武藤先生、今回、御出席かなっておりますので、後で、何かありましたら、また、補足をしていただければと思います。
では、資料3-5の当日修正版で進めていきたいと思います。
ELSIワーキングですが、9名で構成されています。
今年度の検討項目としましては、既存ICF(説明同意文書)の確認ですね。これは、既存検体の解析に関して必要になってくるものの確認に関しては、実際に文書を収集して確認を行っています。
それから、新規検体の開始期解析に向けて、包括的な統一化ICFの作成も、これは厚労省から項目として上げていただいていまして、これに関しても課題抽出を行っています。 いずれに関しても、がんのほかに難病の計画も走っていますので、そちらの計画との整合を図りながら、課題抽出・対応を行っていく必要があると考えています。
そのほかに幾つか論点を上げていただいているのですが、今回、体制班ということですので、そもそもELSIワーキングの立ち位置とか、先ほど冒頭に天野構成員からも御指摘がありましたように、全体としてはELSIの体制・課題といったことを抽出していくことがまずは必要ではないかと考えています。
スライド3番目です。そのような観点から、ELSIワーキングでの検討の前提としましては、計画全体を通して計画的にELSIを検討し、対応していく体制を当初からしっかりと構想して構築していくことが必要不可欠であると考えています。
その際に、セントラルとローカルの機能をどうやって分担していくかということとか、ELSI対応のために適切な経費や人材を配置していくこと。それから、ほかのワーキングでも課題とされていますが、人材の育成も必要になってくると思います。
当面は、先行解析のための必要な対応を整理しつつ、プロジェクト全体の課題抽出と論点整理を行っていくことにはなりますが、全体としてどのような取組をしていくのか。現在の体制では、国家プロジェクトという話が何度か出ていましたが、そのような観点から考えて非常に手薄であると感じていますので、しっかりとしたELSI対応体制を備える必要があるという情報発信を我々としてしていく必要があると思っています。
一方で、解析を実際に計画される先生方に御配慮いただきたいと考えているのは、ELSI対応が難しそうだからといった理由で計画自体を縮小するのではなくて、ゼロベースでどのような研究計画が望ましいかということを考えていただくことです。必要なELSIのリソースをそこに投入して、可能な限り実現するといったようなスタンスが望ましいのではないかと考えています。
次に、個別の論点についてですが、先ほどの既存検体の利用に関わるELSIの課題ですが、新規検体と比較した場合に、既存検体に係る課題は非常に難しく複雑な部分があります。あるものを有効活用しようという発想が見受けられるようにも思いますが、その発想のみが先走らないように留意をする必要があると思います。
手続としては、ICFの確認、指針上の整理、倫理審査が最低限の部分ですが、それだけでは到底不十分であると考えています。包括的な視点からのELSI対応が必要であることと、また、検体のソースが多様になればなるほど、複雑な対応が必要とされますので、その点、どれだけELSI対応のリソースとコストを割けるのかという観点は必要だと思います。それだけ複雑なELSIの課題を伴った形で利用する既存検体ですが、新規採取の検体と比べれば利用上の制約も当然大きくなりますので、そういった点も含め全体的な観点でどこまでできるかといったことを検討する必要があると思います。
既存検体に関しては、実際にそれを提供してくださった方とのコミュニケーションが難しいものになりますので、ELSI上の問題が生じた場合には、計画全体に関して社会との信頼関係に大きく影響するようなことも考えられます。
具体的に、既存ICF確認に際してどういった点が重要になってくるかということですが、1つは、文書に記載をされて、説明された内容の確認です。提供いただいた、その同意の取得時にどのような研究利用の範囲・要件が説明されていたのかということ。さらに、ICFのバージョンとかオプトアウトの対応によって、それぞれ差分がありますので、それを確認することが必要になってきます。実際に、各機関から取り寄せたICFを確認してみますと、記載項目とか、記載の粒度、バージョンごとの違いなど、かなり差があることが確認されています。具体的な対応としては、情報公開文書の作成等を通じて、各施設での倫理審査申請を支援することだけでなく、プロジェクト全体としての取組が必要であると考えています。
それ以外にも、記載内容を超えて、同意撤回の有無とか、オプトアウトによる事後の変更の有無や範囲、それから、小児の段階で提供していただいた、その当時代諾であったものを、御本人が成人している場合にどう取り扱うかといった課題が考えられます。
6枚目、具体的に既存検体の解析に資するために必要な最低限の手続ですが、これは難病のほうでも同様の方針を示されておりまして、1つは全ゲノム解析の実施、国内外のデータベースでの制限公開について、各プロジェクトで倫理審査の変更申請をしてはどうかということです。ただ、この倫理審査の変更申請に関しては、その変更が当初の同意いただいた内容の合理的な変更の範囲内に該当するとされるかどうかというのは、各委員会の判断によって異なってくる可能性があるということです。
それから、タイムラインに合わせて同意撤回の機会、オプトアウトの機会を保障することと、本プロジェクトとしての活動、それから、その過程で患者や市民の立場からの助言を受けて、懸念を拾い上げていくという視点も重要であると考えます。
先ほども出ました小児の段階で提供していただいた方への対応については、各プロジェクトの方針を尊重していくことが必要であろうということ。
それから、営利目的での利用に関しては、当初の明示的な同意が重要になりますので、これは基本的には新規収集の検体の問題として考えていく必要があると考えています。
それから、今後の新規採取する検体の統一化ICFに関しては、あくまでも、ICFはミニマム要件です。今後、電子的ICが前提になってくると思いますので、再コンタクトとか、情報の収集・追加といったことも想定して、全体としてのシステムを設計する必要があると思います。
それから、その中で患者・市民・社会との間の信頼関係の構築など、様々な形での倫理性確保の取り組みを組み込んでいく。ICを取るという点(契約)ではなくて、線(コミュニケーション)での取り組みといったものが必要になってくると思います。
プロジェクトの中のお話だけではなくて、社会環境整備という観点からもたびたび話題に出ていることですが、例えばICFの中で、「ゲノムデータを不利益な取扱いのために用いることは、このような法令の中で禁止されています」というようなことが、現状、日本の制度下では書くことができない、説明できない状況ですので、そういった点での制度整備も働きかけていく必要があると考えています。
最後、「その他」がありますが、これは今までの内容と重複していますので、割愛させていただきます。
それでは、ELSIワーキングからは以上です。
○中釜主査 ありがとうございました。
それでは、これまで4つのワーキンググループから、各ワーキンググループからの課題の抽出と、その課題に対する検討状況についての説明がありましたが、この報告に関して、御質問・御意見はございますか。
御質問の方は、挙手をしてお願いいたします。
安中構成員お願いいたします。
○安中構成員 製薬協の安中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
昨年の部会におきましても、当協会の安川からお願いしておりますが、企業といたしましては、ゲノムデータにつきましては、FASTQ、BAM、VCF、臨床情報につきましては、時系列かつ標準化されていて充実した項目、さらには、オミックスデータ、これをタイムリーに利活用させていただきたいと考えています。
間野先生から御説明いただきました資料3-2の6ページを拝見させていただきましたところ、黄色の研究用データ共有システム、それから、ピンク色の利活用システムが分かれているということでございまして、それぞれに格納されるデータの項目に差が出るのではないか、利活用システムに入るデータが少なくなるのではないかと、そういった懸念の声が製薬協の中にもございました。先ほど油谷先生からのタイムラグはなくすべきだという御意見がありまして、それは大変ありがたくお聞きいたしましたけれども、データ項目につきまして、先ほどの内容につきまして、引き続き御検討いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜主査 ありがとうございます。
ほかに、御意見・御質問はございますか。
白神構成員。
○白神構成員 製薬協の白神と申します。よろしくお願いいたします。
立て続けに製薬協で恐縮ですけれども、先ほど横野構成員から御説明がありましたけれが、先行解析ということで、既存検体を中心に解析が進むものと考えております。その場合に、今後、検討が進むと御説明がありましたけれども、企業による利活用が既存検体だとICFに縛られますので、そこが難しいとなった場合は、企業としては本当に産業利用で利活用できるのかそうでないのかみたいなところが、検証データがありませんので難しいということになっています。我々としましては、厚労省様の御説明がありましたような先行解析1.6万症例+βの+βのところに期待をしつつ、横野構成員もおっしゃられたような新規検体を先行解析でもとって、そこから何かしら企業の利活用もできるような仕組みも検討いただきたいなと思っています。
もう一点、英国のGenomics Englandでは、こうした全ゲノム解析の取組が進んでおりまして、日本企業も既に利用を始めております。そこによりますと、2023年には100万全ゲノムの解析が終了予定ということで、それは日本の取組にしますと、先行解析が終わるぐらいのタイミングであるということで、各国で比較しますと、英国が大きく先行する状況になるのは否めないかなと思っております。ですので、少しでも早く新規検体の収集とか、本格解析のほうに速やかに移行できるように予算の手当てを行い、先ほど上がった課題がいろいろありましたけれども、その辺も御検討いただければと思っております。
以上です。よろしくお願いします。
○中釜主査 ありがとうございます。
今の御質問に関して、バイオバンクの間野先生いかがですか。
○○間野構成員 バイオバンクに関しては、ICFを確認して、また検討をしたいと思いますけれども、企業の利活用まで含めたICが取れているものとしては、少なくとも数万検体はありますので、十分な数の解析が既存検体でもできるのではないかと考えています。
以上です。
○中釜主査 武藤先生お願いします。
○武藤(香)参考人 ありがとうございました。
企業との学術面での共同研究に関しては、ほとんどのものが同意を得られております。これは単体で学術研究以外の目的に利用されるときは、御指摘のとおり、新規サンプルの収集が待たれるところと思いますので、学術研究の共同研究の範囲でどこまでおやりになれるかということをぜひ御検討いただきたいなと思っております。
以上です。
○中釜主査 ありがとうございました。
小川構成員お願いいたします。
○小川構成員 京大の小川です。
先ほど製薬協の方からも、プロジェクトの進捗の速度感に関する懸念について少しお話ししたいと思いますが、我々もできるだけ一刻も早く前に進めたいと思いつつ、予備的な検討を進めている次第でありますが、これはぜひとも厚労省の方々にも要望として聞いていただきたいのですが、我々が今、直面している一番大きな問題は、我々は解析していくけれども、使えるコンピュータリソースがない。人員は本質的な問題だけれども、これに関しても、今のところ全くめどが立っていない。先ほど油谷構成員からもお話があったように、データをシークエンスすること自体よりも、恐らくその10倍以上この解析に労力と時間とお金を要すると思います。特に解析する学術的なアカデミアの研究員、MDだけではなくて、そこにはコンピュータ回りのエンジニア、それからプログラマー、様々な人たちのサポートがなければ全く進めないという話でありまして。10万というとんでもない規模感のことをやるのに、それに対する手当ても全くめどが立っていないので、プランを構築しようとか開発計画でも、我々にどんなリソースが与えられるのかということが分からないので、我々は非常に当惑をしているところでございます。解析ワーキンググループでも、今、盛んに議論されているのですが、我々は一体何が使えて、何が、いつから、どれぐらいのものが使えるのかということが明示されないので非常に困っているということで、これに関しては、できるだけ早急にお答えをいただければ大変ありがたいかなと考えています。
それから、コンピュータリソースをクラウドでやるか、スパコン連携を使うのか、両方でやるのか、あるいは、別のコンピュータを使うのか、こういったことについても、これが決まらないことには我々は動きがとれないのです。プログラムを書くにも、どこでこれを書けばいいのか、そんなことも分からないですから。その点も含めて、くれぐれも御配慮をいただけますよう、切にお願い申し上げる次第です。
○中釜主査 ありがとうございます。
海外とのスピード感の問題に関しては、小川構成員が御指摘のように、各ワーキンググループで現状の課題を抽出して、検討項目を検討している段階ですので、それをいち早く集約をして、どのようなリソースを投入し、どのくらいできるかというところを、より具体的なプログラムとして構築していく必要があると、今、お話をお聞きして思いました。
間野構成員から追加がございますか。
よろしいですか。
この全ゲノムプロジェクトは、国民の負託に応える、そういう大きなものですので、リソースの適正な配分も含めて、御指摘の点を踏まえながら、より迅速に取り組んでいければと思います。よろしくお願いいたします。
ほかに、御意見・御質問はございますか。
油谷構成員。
○油谷構成員 データ共有のプラットフォームについて御質問がありましたので、私なりの考えですけれども、企業からの利用をされるということになりますと、何をサーチしているのかということを知られたくないということもあるでしょうし、ある程度クラウドの中でもセパレートしたところで、そこだけを切り分けてデータを見ていただくというような形になっていくのかなと。恐らく、スパコンでもうまくやればできるのかもしれませんが、そこはクラウドのほうが計算資源をある程度フレキシブルに膨らませるので、クラウドのほうがやりやすいのかなと素人では考えておりますが、その辺りの、恐らく企業様がデータを、自分たちのものをアップロードして、そこで何らかの形で一緒に解析できるとか、いろいろとやりたいことはたくさんあると思いますので、恐らくその辺りのプラットフォームを実際につくっていく段階では、企業の方々にも実際にワーキンググループのメンバーとして加わっていただいて進めていくのが、一番ベストなのではないかなと考えております。
○中釜主査 ありがとうございました。
ほかに、御質問はございますか。
よろしいですかね。
また、もしありましたら、最後のほうでもう一度お伺いしたいと思います。
続きまして、がん全ゲノム解析等研究班から、その概要と進捗状況について説明いただきたいと思います。各研究班からの説明は連続でお話しいただき、それぞれ5分厳守でお願いいたします。また、質疑応答は、各研究班の説明終了後にまとめて行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
では、資料4について、柴田構成員からお願いいたします。
○柴田構成員 東京大学の柴田と申します。
では、資料4を御覧ください。難治がん検体を用いた先行解析の進捗状況の報告をいたします。
ページめくっていただきまして、難治がん検体を用いた先行解析ですけれども、Step1といたしまして、まず最初に着手するがん種といたしまして、先ほど間野先生がバイオバンクワーキンググループでお話がありましたように、例えば固形腫瘍と造血器腫瘍とか、あるいは、経時的なサンプルといったものをコールいたしまして、生物学的あるいはゲノム特性の異なる難治がんといたしまして、膵がん並びに白血病を経時的採取検体を含むのですけれども、これについて研究グループを構成し、DNA並びにRNAの抽出を行うことを考えております。
それから、Step2といたしまして、これは現在、議論されていますけれども、解析ワーキンググループで検討されて推奨されるようなシークエンスプラットフォーム・解析条件に従い、全ゲノム解析並びにRNAseqを行います。
それから、これも解析ワーキンググループで現在検証されていますけれども、標準パイプラインによる1次解析を行った後、得られたデータはデータ共有ワーキンググループで議論されております研究用データ共有システムに登録する。こういった流れで研究する予定であります。
次をめくっていただきますと、これは現在の進捗です。難治がん検体を用いた先行解析ですけれども、まず、Step1として、膵がんに関しては、国立がん研究センターバイオバンクからT/Nペアサンプルを払い出しいたしまして、DNA/RNAの抽出を行いました。現在、この各検体につきまして、膵がんでは非常に高頻度にKRASという遺伝子変異がありますが、このKRAS変異を調べることによって、そこに含まれている腫瘍のがん量が測定できます。こういった指標を用いて各サンプルの腫瘍率を現在算定しているところであります。
こういった腫瘍の含有率を考慮しながら、全ゲノム並びにRNAseqを開始する予定であります。また、がんセンターのみならず、ほかの施設のバイオバンクとも連携し、症例数の追加を目指しておのります。
白血病に関しましては、様々なサンプルにつきまして、時系列解析可能なサンプルを研究対象として考えております。現在、京都大学の小川先生、先ほど解析ワーキンググループ長として発表をされましたけれども、研究室においてこういった白血病の時系列サンプルを公表されているということをお聞きしていますので、そのサンプル数の確認を行っております。今後、このサンプルにつきまして、DNA抽出、シークエンス解析を進める予定です。
以上です。
○中釜主査 ありがとうございます。
それでは続きまして、資料5について、吉田構成員にお願いいたします。
○吉田構成員 国立がん研究センター、吉田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
お手元の資料と同じですけれども、スライドを出させていただきます。
めくっていただきまして2枚目、これが基本的な研究の目的・内容となります。がんのゲノム医療は、いわば治療のためのゲノム医療と予防のためのゲノム医療の2つがあるわけですけれども、こちらの研究事業は予防のためのゲノム医療ということになります。まず、ここに書かれているように、全ゲノム解析により、ある程度遺伝性腫瘍がはっきり臨床的には疑われるにもかかわらず、今までの通常の遺伝学的検査では原因変異が見つかっていないもの、こういう症例の解析を行いたい。
もう一つは、明らかな典型的な遺伝性腫瘍と、それから、いわゆる二人に一人がなる普通のがんの間に、典型的な遺伝性腫瘍にはぴったり当てはまらないけれども、普通のがんよりは遺伝性が強く疑われる。例えば、一人で多くのがんになられたり、若年性のがんであったり、こういう例が少子化・核家族化の中では、家族歴がはっきりしないということなどもあり、そういう相談が遺伝診療の中で増えております。そのような場合は今までの、言わば教科書的な候補遺伝子解析だけでは見つからないことが考えられます。そのような部分の一つの代表として、若年性のがん、AYA世代のがんを対象にして全ゲノム解析を行うことを計画しています。特に重要なのは、データを集めるだけではなく、それらを解析するサステイナブルな体制をつくることが非常に重要な課題となってきます。
したがいまして、この今年度の予算となっているがんゲノムの調整費の研究内容として、遺伝性腫瘍が疑われる患者さん、血縁者、それから、若年がん、合わせて合計約3,000症例を対象にして、生殖細胞系列の全ゲノム解析を行う。そのデータを、AMEDによる研究費として、AMEDが指定する公的なデータベースに登録するということが今年度末の目標となっております。
資料の3枚目は、今回の調整費で実際に行う部分、今年度目標としている部分です。遺伝性腫瘍はいわば希少がんに相当する症候群が多いので、例えば我々国立がん研究センター担当の遺伝性腫瘍等は、過去5年間かけて集めてきた症例になります。そういった意味では既存の検体・情報に対する研究であるのですけれども、倫理指針的には既存試料・情報ではなくて、この研究のために用いる本人同意が得られているサンプルになっております。
資料3枚目にありますように、ICの確認をしていただいた後、臨床情報の収集、キュレーションを行うとともに、全ゲノム解析のシークエンスデータの収集を行います。これも統一したプラットフォーム、別途の解析を統一したシークエンサーで行うわけですけれども、さらに、先ほどもお話がありましたように、データ解析のパイプラインを共通化することが必要ですので、1か所の拠点で集めて、統一化解析パイプラインにより、全ゲノムデータの解析をすることを考えております。
遺伝性腫瘍等の場合には、その後、例えば、普通のがんの場合の症例対照研究のように、遺伝統計学的な計算などだけでなかなか結論がつかずに、様々な情報、家族歴とか臨床情報とか、機能解析の論文とか、家系の中のバリアントの分離とか、そういった複数の条件を組み合わせて病的バリアントかどうかを決めるということになっております。そのためには、一部自動化したアノテーションツールや商用データベースも使いますが、基本的には、エキスパートパネルによる多施設・多職種による合同の会議が必要になります。したがいまして、このアノテーション・キュレーションの部分は、今回、症例全てについて、今年度内に終わらせることはできないと思いますけれども、基本的な元データについては、今年度末までに公的データベースに登録することになっております。
こういったことについても、がん全ゲノム体制班とよく連携をしながら進めていきたいと思っております。
資料4枚目が大体のスケジュールでありまして、今回の遺伝性腫瘍等の解析を3,000例行うために、がん研と静岡がんセンターにも新たに加わっていただきまして、外部検査会社への出検が今月終了し、そして、順次、データが返ってきている状況です。この後、解析、それから、臨床情報の統合解析などを並行して進めながら、最終的にデータベースに登録を行うことになっております。
資料5枚目が最後のスライドですが、シークエンスを外注する解析企業は、一般競争入札で1か所に決めまして、静がん、がん研を研究開発分担者に追加する承認をいただいて、外部シークエンス解析企業に出す検体は全て終了したという状況です。
このように、今後とも、がん全ゲノム体制班と連携しながら進めていきたいと考えております。
以上です。
○中釜主査 ありがとうございました。
それでは、2つの研究班からの進捗状況について説明がありましたが、何か御質問・御意見はございますか。
古川構成員。
○古川構成員 東大医科研の古川です。
吉田先生が遺伝性がんの解析について御説明いただきましたけれども、今回の解析の中では、Germlineの解析だけという御予定なのでしょうか。それとも、遺伝性腫瘍の患者さんに発生した腫瘍も解析するという考えはないのでしょうか。
○吉田構成員 一部の症例については、例えば静岡がんセンターなどの症例については、ぺアとなる腫瘍部分の解析が行われる予定です。
しかし、遺伝性腫瘍等の研究のインフォームド・コンセントを得る段階では、既に数年前に手術が終わられていて、それは凍結検体もないと、そのような方も多いので、Germlineの解析を中心としたいと考えております。
実際、最近のClinGenの報告などでも、2ndヒットの情報を確実に得ることはなかなか難しいということもあるので、遺伝性腫瘍の原因変異の評価には必須とはされておりません。しかし、腫瘍組織から得られる情報としては、例えばmutation signatureとか、microsatellite instabilityがあるとか、そういうsomaticな情報はACMG分類の判定指標の一つとして使う予定にしております。
○古川構成員 ありがとうございました。
○中釜主査 ありがとうございました。
ほかに御質問はございますか。
よろしいですか。
ありがとうございます。
それでは最後に、「がんの全ゲノム解析等に関する体制整備等に係る調査事業」の進捗について御説明をお願いいたします。資料6になります。
こちらについては、梁瀬参考人にお願いいたします。
○梁瀬参考人 三菱総合研究所の梁瀬です。よろしくお願いいたします。
資料6を御覧ください。
がんの全ゲノム解析等に関する体制整備に係る調査事業の中間報告をさせていただきます。
2ページ目を御覧ください。先ほど来、皆様方から出ているお言葉としては、産官学の幅広い利活用とか、企業の自由な参画を促すプラットフォームとか、それから、産学連携体制という言葉が出てきましたが、我々が今、検討をしておりますのは、民間の資金をいかに利活用、そして、やっていくのかと、そのための体制はどういうものであるかということについて検討をしております。
今回、上のほうにありますが、製薬企業・CRO・受託解析企業もございますが、実は商社の方とか、結構幅広く聞いているということと、恐らくこれからGenomics Japanができたときの資金の収益としては3つあるだろうと。1つは、データ等の利活用料の収益。これは従前からあるものでございますが、それ以外に、こういった研究基盤への投資とか、研究事業のプレイヤーとして企業が参画する可能性があるのではないかと、今、仮説を立てています。データ等の利用料という収益は、既に、今の公的機関でいろいろされているわけでございますので、どうしてもそれは一定程度の収益限界があるのではないかと我々は考えています。ですので、研究基盤の投資とか、プレイヤーとしての参画の可能性があるかどうかという仮説の下に、これから提起したいと思っています。
こういう考えに至った理由を下の表に載せておきました。今まで出てきましたが、企業の方とお話をすると、情報のニーズとか機能性・利便性の追求ですが、一番大きいのは臨床情報ですね。豊富なメガデータを収集してもらいたい。先ほど来、時系列の臨床データという話が出ていますが、第一の要望がそうです。
あと、柔軟性。様々な情報を短期間にもらいたい。分散したデータの集約。これは企業からすると、がんだけではなく難病も同じプラットフォームでワンストップでもらえるようにしたいという要望がございます。
これは当然、公的基盤で全てやっていただけるのであれば、それは全く問題ないのですが、我々の考えでは、それは一定の限界があるだろうと。1つは、研究という目的と企業としての利用目的のところで、明らかに目的が違うということと。先ほど出ていますが、リソースの問題です。先生方が、これだけしか人数がいないのに、これだけの検体を扱って、企業のほうに対応できるかというと、これは一定の限界が出てくるのではないか。
あと、臨床情報の収集についても、今でも、先生方は非常に御苦労なさって入力なさっているわけですが、それを全部できるのかということが問題だと伺っています。先ほど間野先生からも、バイオバンクワーキングで臨床情報の収集について御議論なさっていますが、これがフィックスしたとしても、それが将来、恒常的に追加的な情報が追加できるかどうかとなると、それはなかなか難しいのではないかというのが我々の今のところの仮説です。
右のほうにありますが、プレイヤーとしての参画可能性としては、これは全ての情報の追加収集を研究基盤に任せるのではなくて、企業のニーズに応じてそれを担う企業が、共同研究とか、もしくはいろいろな形で入っていって一緒にできないか。
それから、利用者起点による情報収集ということで、研究基盤だけが情報収集するのではなくて、アカデミアとか企業両方が望む情報収集を実現できるような体制をつくらなければいけないのではないかと考えています。
あと、機能性。例えば先ほどプラットフォームの中で、いろいろな企業への自由な利活用ということで、分析についてはいろいろと出ていますけれども、いろいろなサポートシステムをつくっていただきたいとか、あと、リクルーティングの話があります。これについても、先ほど来、小川先生がおっしゃっていますが、その全てのいろいろな解析自体を先生方にお願いするのは果たしてできるのかどうかということです。これについては、右側にありますが、データの分析とか検体のアーカイブ、いろいろ公的基盤が今まで担われてきたものだったものを企業に委ねて、企業側が事業としてやれないかというのを考えております。
最後に利便性。表の下のほうにありますが、今まで公的研究基盤が共同研究契約とか、知財、IRBとかいろいろやっていますが、これはもう一回見直しをして、本当にやりやすい方法を考えるべきだろうと考えております。
次のページを御覧ください。結論的なところはまだ出すわけにはいきませんが、あくまでも仮説でございますけれども、上のほうにありますが、公的基盤が担うのは、収益が困難で、初期投資が必要な情報だけに限ってやってはどうか。それから、付加的な情報をつける解析・サービスなどは、民間企業が自社事業として実施する。要は、赤字で書いてありますけれども、公的研究基盤と民間企業が双方共同するようなプラットフォームが実現できないかと。こういうことを考えて、この1か月これから頑張って検討をしていきたいと思っています。
下のほうに絵柄がございます。今までですと、全ゲノム基盤には研究基盤があって、企業からこのデータをくださいねと言ったら、「はい、利用料ですよ」と言ってもらうのが大きいと。もちろんこれでも大きな収益がGenomicsでも出てくるというのは製薬協の方からも承っておりますが、それ以外に、解析の受託とか、バイオインフォマティクスの企業とか、CROの方ともタイアップをして、例えば、先生方のリソースだけではできないようなものの解析とか様々な解析を企業に委ねてしまって、後でそれを共有する。同時に、インフォマティクシャンとかいろいろ技術者が必要になりますが、これは、アカデミア側の育成も重要でございますけれども、企業側も併せてそれは必要になってまいりますので、こういった仕組みをつくって、研究者、企業側も両方ともそういった人材を育成していくことが非常に求められてくるのではないかなと考えております。
今後、我々のほうでこういった仮説を基に市場規模とかビジネスプランを考えて、2つ目のポツでありますが、国内企業、銀行とか保険会社とか商社とかペンチャーキャピタルとか、いろいろと投資を考えていらっしゃるところを回りながら、この全ゲノム基盤の投資可能性とか、こういったモデルができるかどうかについて検討をしたいと思っております。
次のページを御覧ください。今後の検討事項でございますけれども、体制整備につきましては、まず海外における運営体制状況を調査していこうと思っております。ゲノミックスイングランドにつきましては、局長も昨年行っていただいたと思いますが、国営企業になっているということで、今のCEOについては、銀行出身者とか、そういったAI解析をやっている企業の人間が来ている。様々な民間企業が、ゲノミックスイングランドに入っておりますが、そういった状況を鑑みながら、我々としては、市場規模とかビジネスモデル仮説とか、あとは、民間利活用を加速する要因を検討し、まず1つは、いろいろと研究者の先生方も聞きたいことはあろうかと思うのですが、これは、後で皆様の情報を集約させていただきますが、10月に一度、英国のゲノミックスイングランドにいろいろと聞いてみようと考えております。それを踏まえて、国内銀行とか保険会社等へのインタビュー調査を行いながら、二次利用加速に向けたインタビュー。これは例えば、ToMMoとか、NCBNの方々にもちょっと御検討いただきたいと思っているのですが、何が課題かというのを確認して、最後に、本事業における体制整備の在り方を、厚労省の方々とディスカッションをしながら、この会に報告していきたいと考えております。
それから、人材育成の目標試算も我々がするミッションになっております。これにつきましては、アンケート調査ですね。今、どの程度の検体を扱っていらっしゃいますか、それから、どの程度の人材が必要になっていますかといったアンケート調査を実は来週から配付させていただきたいと思っております。これは、先行解析をなさっている施設の方々、それから、ToMMoとか、今のバイオバンク基盤の方たちにアンケート票をお配りしますので、1か月ぐらいアンケートを収集させていただきましたら、当社で人材育成目標の試算をさせていただいて、その結果を踏まえて、厚生労働省の方々と検討内容を調整していきたいと考えております。
以上です。
○中釜主査 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問・御意見等ございますか。
中村構成員お願いします。
○中村構成員 まず第1に、この会議のミッションは何で、何を決めて、それに対して誰が責任を持つのかということをもう少し明確にしていただきたいと思います。先ほど、三菱総研の方から、本事業における体制の答申が11月に出るというお話がありましたけれども、今、この場で検討している内容と11月に出る答申とはどのような関係になっているのかがいま一つ見えませんし、それから、ワーキンググループの発表、私も参画していますけれども、何となく重複しているような気がして、例えば解析グループで、解析するためのパイプラインをどうするのか。逆に、コンピュータで解析する人の側からどんな形で情報を集めるのかという視点との整合性をどう取るのかがよく分かりませんし。
全ゲノム解析をやる上でいろいろなレイヤーがあって、最後は細かいワーキンググループに分かれているわけですけれども、責任が何となく分からなくて、我々は何をするのか。今、全ゲノム解析をするための体制づくりをここで議論するのだとずっと思っていましたけれども、最後に、11月に三菱総研から体制整備の案が出てくると。何となく誰が何に対して責任を持ってどんな提案をするのか。それから、論点がどこにあるのか、この会議の論点は何なのかということが、申し訳ないですけれども、最後の話を聞いていて、いま一つよく分からなくなりましたので、主査から整理して、この会議の論点は何なのか。ワーキンググループの考えはどう反映するのかという、その仕組みについて明確にお話しいただければと思います。
もう一点あるのが、企業に利用するための仕組みづくりという話が出ていますけれども、最初に天野さんがお話しされたように、もし、患者さんにベネフィットがあるようなデータが見つかった、情報が見つかったときに、それを還元するのかしないのか。例え研究であっても、これだけ世の中大きな動きがあるわけですから、患者さんに有用な情報が見つかったときに、それを還元する仕組みをELSIのほうでも考えていただきたいと思いますし、国民目線というか、患者さん目線で考えたときに、このアウトプットがどう還元されるのかという議論がもう少しあってもいいように思いますので、よろしくお願いします。
以上です。
○中釜主査 ありがとうございます。
まず最初の御指摘について、主査としての考えを述べさせていただきますが、この調整会議については、最初の開催要綱にありましたが、今日、ワーキンググループから御提示がありましたように、全ゲノムの解析において様々な論点・課題があると。それを4つのワーキンググループに分轄をして議論をしていただいたと。この結果を本日の連絡調整会議によって共有し、それで、最終的な取りまとめを、がんに関する最終的な全ゲノム解析の推進に関する部会に報告すると、そういうふうに位置づけております。
本日の議論でも明らかになりましたように、これをアカデミアの研究目的に使い、最終的にはそれを患者さんに裨益するような形で提供する。その道筋については様々な要因があることも、今日のお話、特に最後の梁瀬参考人からの御報告で分かったと思うのですけれども、同時に、非常にダイナミックに捉える必要があるのかなというのは、今日の議論の中でも理解できたかと思います。それに伴いまして、ICのありようも非常にダイナミックに変えていく必要があるだろうと。そのために先行解析と本格解析が2つ分かれていて、先行解析の中でダイナミックにゲノム利活用の方向を目指したものをより有効に利活用するための仕組みをどうやってダイナミックにつくっていくのかという視点は非常に重要かなと思います。最初に形をぱちっと決めて、それで全てがずっと流れていくというよりは、企業側の利活用を含めた意味でのこの課題を動的に変えていく、その必要性があることが感じられたかと思います。最終的な報告のタイミング、それをいかにこの先行解析の中でうまく有機的に取り込んでいくかというのは、各ワーキンググループにまたもう一度ブレークダウンしながら検討をしていただいて、それを集約する。その繰り返しの結果として、あるスキームができ上がるのかなと。それをワーキンググループの中で検討していただいて、この連絡調整会議の中でその大きなダイナミックな枠組みを承認していただき、それを全体として部会に報告する。そういうふうな位置づけではないかと、私自身は考えております。
最初の質問に対しては、それでよろしいですかね。
○中村構成員 ちょっと私、個人的には、利活用というときに、何かを見つけて、企業が創薬するという観点ではなくて、患者さんに利益のある情報は例え研究であっても見つかると思いますけれども、その利活用の先に、もう少し患者さんに対してどんな情報が提供できるのか。恐らく一定の割合で分子標的治療薬が見つかるかもしれませんけれども、そのときにどうするのか。見つかった際に、薬剤に対して保険診療としての利用がなかなか認めていただけない。患者さんにどう利用できるのかということは、私は非常に重要なテーマだと思いますので、中釜先生の御説明はよく分かりましたけれども、二次利活用の先が何となく企業だけかなという印象を持ちましたので、ちょっとコメントをさせていただきます。
○中釜主査 ありがとうございます。
重要な御指摘だと思います。それも恐らくデータ利活用の中で、一次的な利活用の図式を示すというよりは、その都度、利活用の在り方もダイナミックに変わってくる。あるいは、副次的に対応して行くのかなというのは、今日のお話からも伺えました。今の中村構成員からの御指摘された点も非常に重要だと思いますので、データ利活用のグループでは、それを含めてつくり込んでいくのがいいのかなと。そういうことによって、グローバルな視点と、冒頭にご指摘があったスピード感を持って、有機的でダイナミックな仕組みをこのメンバーの中でつくり込んでいけることができれば、日本としては非常に特徴的な、かつ利活用という視点からも有用なものがつくれていくのかなと。これは、私、主査としての夢でもありますけれども、そういうものを感じた次第です。
重要な御指摘ありがとうございました。
油谷構成員お願いします。
○油谷構成員 今の中村先生の御指摘ありがとうございました。患者さんへの還元は、もちろんここにいる皆様同じ思いだと思うのですが、全ゲノム解析のプラットフォームがそもそもはない国内の現状で、拙速を求めるのは極めて危険だと思うのですね。ですので、恐らくこのプロジェクトのフェーズを考えて、研究のフェーズと、それと遅れることなく、全ゲノムデータをベースにした今のパネル検査による医療に準じたような形でのきちんとした形を整える必要があります。このプロジェクトの場合には、検体を研究としての解析プラットフォームに送ってということになりますので、そこでのデータの正確性への担保が不十分だと思います。もちろん、そこは次のフェーズといっても、それほど遅れることなく、5年、10年先というのではなく、パイロット的にまず全ゲノムデータを返すということを、また、一つのパイロット研究としてデザインしていく必要があるのかなと考えました。
また、御相談させていただければと思います。
○中釜主査 中村構成員お願いします。
○中村構成員 確かに、全ゲノム解析の精度が高くないのは事実かもしれませんけれども、それはPCRで確認すれば、十分すぐに使えるわけで、そこは検査室レベルでできると思います。5年、10年たったときに、進行がん患者さんがまだ御存命かどうかという点を考えれば、今、有用な情報が見つかれば、PCRという検査室で確認して患者さんに還元するということが私はできると思いますし、時間が限られているので、これ以上議論はしませんけれども、5年、10年先の話ではなくて、困っている患者さんが目の前にいる状況で、ちょっと油谷先生のコメントには違和感があります。
○油谷構成員 いやいや、5年、10年先ではないのですが、今すぐにということでは、それは事故が起きるだろうということです。
○中村構成員 今分かったものをPCRで確認すれば、別に事故にはつながらないと思いますし、それは患者さん目線で考えれば、いろいろな利活用の仕方があると思います。時間も限られておりますので、もうこれ以上は。
○中釜主査 ありがとうございます。
恐らく中村先生の御指摘は、有用なデータが出たときに、その臨床的な有用性をいかにスピーディに検証し、企業のところに持っていけるかというところの視点が重要だというところで、非常に重要な御指摘だと思います。その辺りはできるだけタイムリーに、スピーディに患者さんに返せるようなスキームも同時に考えていく必要があるのかなと、御意見をお伺いしてそう思いました。その辺もぜひ利活用グループでは検討をしていただければと思います。
ありがとうございます。
ほかに。
小川構成員。
○小川構成員 京都大学の小川でございます。
先ほどの中村先生の御意見にちょっと関係することでありますが、我々が今困っているのは、誰が最終的に責任を負うというか、リーダーシップを取って、どこで何がどういうふうに確定するのかという部分が分からないまま、何かワーキンググループ会議も4回もやって、結局、決まってて、実行に移すといったって、お金も予算も全くなく、安全につくろうと思えば、それはお金をかけるレベルです。お金はどれくらい予算があるのかということもさっぱり分からないまま我々は進めていかなければいけないということは、このプロジェクト全体の著しい遅延をもたらすと思いますので、これは厚労省の方々にということではないのですけれども、先ほどの議論に戻りますが、予算はどれくらいあって、予算的な背景はどれくらいあるのか。これは先ほどの三菱総研の方から、民間からも一部資金を調達するということも含めて、その辺の仕組み的な基盤をどれぐらいあって、だから我々はどれくらいのことができるという、その規模感も分からなければ、計画の立てようもないと思うのですね。その辺を早急に、このプロジェクトには国としてはこれくらいの予算を見込んでいますと、その中で我々ができることを考えてくださいということでないと、我々はこういうやり方がいい、こういうやり方がいいと、理想論で、この辺は三菱総研からリコメンドが出るとして、それを実際にできるのかという問題もあるわけですから、その辺は我々が関われることではなくて、これは国の側が予算を取ってやるものですから、そこのところが明確にならないと我々は前に進めないので、その点、よろしくお願いします。
○中釜主査 ありがとうございます。
財政的な基盤、裏づけがあってこその話だと思うのですけれども、その意味でも、私の理解では、先行解析1.6万症例というところ、まずこの中で、今、構成員から御指摘の様々な非常に複合的な面をいかに我々が有機的に議論し、解決するかということが求められているのだろうと思います。そのためにワーキンググループの議論をどうやって責任を持って討議するかというところが必要かなと思いました。
小川先生。
○小川構成員 中釜先生、先行解析で1万6000やると言っても、まだ、予算がないのですよ。先行解析を検討する、それすらできない状況に我々は立ち止まっているわけです。だから、これは何とかしてほしいと。
○中釜主査 分かりました。
○小川構成員 前に進めたいのですけれども、ぜひ三菱総研と本当に腹を割って話し合うべきだと僕は思うのですけれども、物事を実行するということをやらなければいけないわけですから、我々はもっと深刻にならないといけないと思います。ここで議論ばかりしていても、実際、お金がなければできません。
○中釜主査 了解です。小川構成員の思いが厚生労働省に伝わったと思いますので、よろしくお願いします。
○間野構成員 間野でございます。
今、いろいろな先生方からお話があったように、予算の面はすごく大きな問題だと思っています。今日のワーキンググループのメンバー表を見ていただいても、本当に日本のベストの人たちが集まってこのワーキンググループを形成して、いわば手弁当で一生懸命参加してくださっています。がん研究で、本当に世界を多少リードできるラストチャンスではないかというふうに我々は思っていて、それで、小川先生にしろ、油谷先生にしろ献身的に参加してくださっていると思います。
シークエンスも最新の技術を取り入れていく一方、例えばさっき小川先生がおっしゃった情報解析のインフラとか、さらに言えば、実際に病院で臨床情報を入力するのは、恐らくCRCさんとかそういう医師ではない方に入力していただくことになると思いますけれども、それを何万人とやるときの予算をどうするのか。さらには、病院で検体を収集するロジ、保存するロジ、それを管理するロジ、さらに言えば、本当に全体で何万人という解析を遅滞なく、あるいは、トラブルなく、あるいは、サンプルの間違いなく回すことが、例えば我々研究者だけでは少し無理があるのではないかという気も内心ではしています。
ですので、さっき三菱総研の方がいみじくもおっしゃっていたように、例えば、運営を企業に一部委託するようなことさえも可能性としては十分に考えないといけないのではないかと思います。シークエンス費は、恐らく全体のプロジェクトの中で実は2割とか3割とかぐらいにしかならなくて、それ以外のところに多分予算が大きく関わってくると思うので、そういうものも含めた実行計画を具体的に検討していく必要があるのだと思います。
ありがとうございました。
○中釜主査 ありがとうございました。
安中構成員お願いいたします。
○安中構成員 製薬協の安中でございます。
本日は、がんの中での検討課題がたくさん出てきたところでございますが、全ゲノム解析等実行計画では、がん以外にも難病あるいは健常人のコントロール部分の解析も進めることになっております。例えば今日ありましたけれども、プロトコルとか解析パイプラインを併せていくのかどうか。さらに、もうちょっと大きな話になりますと、がんと難病、健常人のコントロール、これらのデータベースを統一していくのか。さらには、推進体制をどうするのか。こういった議論は、これは厚労省さんへの御質問になりますけれども、検討は行われているのでしょうか。それとも、これから行われるのでしょうか。
○中釜主査 今の御質問に関して、厚労省からお答えできますか。
○がん対策推進官 厚生労働省でございます。
それらのプラットフォーム等をそろえていく、そういったことは非常に重要だと考えております。そういった中で、まず健常人のものにつきましては、既に幾つかのバンクの中でも進めているところでございますけれども、そういったところでどういう形で情報を集めているかということを、ワーキングの中にも情報を提供しながら進めていると考えております。
また、難病との間の整合性につきましても、難病のほうでどのような形でやっているのかなどを、先日も打ち合わせ等をさせていただきながら進めているところでございます。基本的には、統一的な形で進めていけるようにということで考えているところです。ちょっと具体的な形はまだ明確にお示しできるところまで来ておりませんけれども、考え方としてはそのように進めていきたいと思っております。
○安中構成員 ありがとうございます。ぜひ、よろしくお願いいたします。
○中釜主査 ありがとうございます。
ほかに御意見はございますか。
松本構成員。
○松本構成員 成育の松本でございます。
先ほどの中村先生の患者目線という言葉に非常に感銘を受けました。そして、三菱総研の梁瀬さんから今後の展開ということで、市場規模とかビジネスプランとかそういうお話がいっぱい出てきたと思うのですけれども、私、小児がんを診療しております。希少がん・小児がんにも、ぜひ光を当てていただきたいということを強く求めたいので、お願いしたいと思います。
小児がんに関しましては、年間たかだか2,500~3,000例しかいません。その患者さんの全てで全ゲノムをやるとしたら、これで小児がん全てなのです。しかも、私たち、臨床と研究が非常に同心円状に並んでおりますので、例えば、小児がんの中央診断に関しては、ほぼ9割以上の患者さんでできています。臨床情報も非常に豊富です。オールジャパン体制でやっておりますので、そういう意味では非常にいい対象であると思っております。ただ、そこに市場規模だのビジネスプランだのという話が出てくると、どうしても後回しになってしまうのではないかということを非常に危惧しておりますので、ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。
以上です。
○中釜主査 小川構成員お願いいたします。
○小川構成員 松本構成員の御意見に大賛成で、小児がんは3,000例しかいないのですから、これは全例の全ゲノム施設に当たればいいのではないかと思います。それで、新たな患者が出れば、それが子供たちがもっと救われる可能性があるのであれば、それは効果があると思います。子供さんと大人と差別するわけではありませんけれども、これは先ほどの油谷先生の懸念もあるのですけれども、小児がんの先生方は非常にモチベーションが高いですし、検体管理についても非常に高い意識を持たれているし、親御さんたちも非常に理解がありますから、そういう観点でも非常に重要だと思います。できれば、これから5年間、たかだか1万6000ですから、それは結構現実的なのではないかと私は思います。
○中釜主査 ありがとうございます。
このがん全ゲノム解析は研究的な基盤のところからいかに開発研究につなげ、それを患者さんに臨床展開するかということも同時に視野に入れながら検討をしていく必要があるかなというのは、これまでの何人かの構成員の先生方のご意見でもあるかと思いますので、そういった意味では小児がんも非常に重要な疾患、がん種だと認識しているところであります。
ほかに御意見はございますか。
南谷構成員。
○南谷構成員 京都大学の南谷です。
三菱総研さんのお話は本日初めて伺ったのですが、全ゲノム体制班とのすり合わせが今までちょっと希薄過ぎたのではないかと考えています。結局、三菱総研さんは、体制班が決めたことを実現することを主体的にやっていただけるのか。それとも、三菱総研さんが出したモデルが、アカデミア研究者がデータアクセスなどがしにくいものになりはしないかというところを少し懸念しますので、三菱総研さんの考えていること、及びゲノム体制班が考えていることを、一枚岩で組み立てていくような仕組みを今後の議論の中ではつくっていくことが必要なのではないかと思います。
以上です。
○中釜主査 ありがとうございます。
御指摘のスピード感については、ぜひ、この全体班と歩調を合わせて調整しながら、先ほど三菱総研さんから提案があったタイムラインというところは、できるだけ有機的に短くできるような形の検討は必要かなと私も感じた次第です。よろしくお願いいたします。
ほかによろしいですか。
横野構成員。
○横野構成員 横野です。
先ほどELSIワーキングからの報告をさせていただきましたが、この計画の規模に見合ったELSIの底上げが必要だと思っています。しつこいようですが、経費と人材ということも、ほかの分野と同様に必要です。
先ほど三菱総研さんで、人材育成に関する調査をされるということがありましたので、ELSIに関しての深刻な人材不足についても御検討いただきたいと思います。
それから、ELSIの底上げに関しては、いろいろ指針もありますし、個人情報保護法に関しても、今後5年間に恐らく2回の改正があります。そこに我々がインプットしていくことも必要になると思いますので、ぜひ、先生方からも御意見をお寄せいただいて、それをきちんと形にできるだけのバックアップが必要かなと私としては考えています。
それから、最初に天野構成員から御指摘ありました、患者・市民参画に関しましては、製薬企業の方々も国際的に非常にいろいろな取組をされていたり、海外でのいろいろなネットワークとか、取組の支援をされたりしているようなところもお見受けしますので、そういったことで御支援いただくといったことも考えられるのではないかなと思います。
以上です。
○中釜主査 ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
山口構成員お願いします。
○山口構成員 3点簡単に。まず、小児がんのことが出てきましたけれども、実行計画では、希少がんと小児がんを併せて重要なグループと整理していますので、その分野も進めていければと思っています。
それから、2番目に、臨床にすぐ生かせるかという話ですけれども、私どもが対象にしようとしているサンプルは、全てマルチオミックスの検討が済んでいる検体を用いようとしています。ですので、約28%がマルチオミックス解析ではドライバーが決められないのですね。ですから、その28%を中心に全ゲノムを解析していくことによって、何か出てきたことは即患者に還元できる。もちろんPCR等で確認した上での話です。この点は、全ゲノム実行計画を書くに当たって、厚労から強く、あるいは、政府から強く言われていた、患者に還元することというのが明確に指示されていましたので、それが含まれていると思います。
3番目の企業利用に関しては、発想をちょっと変えなければいけないのではないかなと思うのですね。前もって臨床データをくっつけた上で解析をするという仕組みを、発想を変えて、すぐに企業が利用できるような形を整えることは、多分、私たちの経験では可能ですので、それを追求していく必要があろうかなと思っています。
以上申し上げました。
○中釜主査 ありがとうございます。
ほかにございますか。
そろそろ所定の時間が近づいてまいりましたが、構成員の先生方から様々な御意見をいただきました。途中、御指摘があったように、これが議論に終わるのではなくて、この課題をお互いにうまくピースを組み合わせていって、より前に具体的に進んでいく、そのスキームを、今日の会議を踏まえた上で早速取り組んでいく必要があると思います。より前進をするようなもの見せながら、それをさらに先に進めるには財政的な基盤が重要であるということ。
それから、今日御指摘のあった三菱総研さんからの報告とこの4つのワーキンググループをうまく整合性を取りながら、それを組み合わせるというところでは御協力いただきたいなと思った次第です。これによって、当初の先行解析のタイムラインをいかに実効性を持ったものとしてつくり上げていくのかというのが大きな課題だというところは、改めて、認識したわけです。今日、構成員の先生方からいただいた様々な意見は非常に重要だと恐らくみんなが認識したと思いますので、これをしっかりとしたピース、前に向かうピースとして、具体的に組み立てていって、今日の議論の結果、何が先に進んだのかというのが見える形にして、そこに必要な財政的なバックアップを厚労省に期待するということかと思いました。 そろそろ時間になりましたが、また、追加意見等がございましたら、メール等で適宜、事務局に御意見をいただければと思いますが、最後にこれだけは言っておきたいということがありましたら、お聞きしますが、よろしいですかね。
武藤構成員。
○武藤構成員 京都大学の武藤です。
国家プロジェクト的な重要なゲノム情報と臨床情報を活用することに関して、現行の個人情報保護法制の法律が結構邪魔になるのではないかと思うので、こういうものを利活用できるような法改正を同時にしたほうがいいかなと思うので、法的なこういう検討部会があったほうがより活用しやすく、患者さん側にも利活用できるし、企業側にも、アカデミアも使えるという、そういう何か法的なものの緩和というか、もう少し使いやすくするような検討があってもいいのかなと思って聞いておりました。
○中釜主査 ありがとうございます。
御指摘の点に関しては、現状でも共同研究であればかなりできることがあると。さらに、そこを越えて、より利活用を活性化させるために法的な整備も必要だというところだとは思います。
○武藤(香)参考人 今、医療情報全体の利活用については、今、武藤先生がおっしゃったのと同じような問題意識を持っているグループがたくさんありまして、議員連盟にも働きかけて活動をされていますので、そことも連携するということが大事かなと思っております。
ありがとうございます。
○中釜主査 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。
それでは、本日の連絡調整会議は、以上をもって終了したいと思います。
構成員の皆様には、非常に活発な御議論をいただいてありがとうございました。
最後に、事務局より何かありますか。
○健康局長 健康局長の正林です。最後にちょっと感想めいたことを幾つかコメントしたいと思います。
まず中村先生から、これは一体何のためにやっているかという点ですけれども、我々、何のためにやっているのか。患者のためであります。この全ゲノムプロジェクトがうまくいって、それがきちんと創薬の開発とか、場合によっては新しい予防法の開発につながっていくとか、これは究極患者さんのためであり、それは製薬企業のためでもなければ、研究者のためでもない。あくまでも研究者がいい研究をし、それを活用しながら製薬企業は新しい薬をつくっていく。それが最終的に患者さんに還元される。まさに患者さんのために我々は仕事をしていると考えています。
責任は誰が取るのか。当然、このプロジェクトは厚生労働省が主導してやっているものですので、責任は厚生労働省にあると思っています。
それから、お金の話が何度か出ました。今日この時点では、来年度予算の数字をちょっと申し上げることはできないのですが、もうちょっとすると閣議決定して、来年度、厚労省は幾らで要求しているのかというのが明白になると思います。さらに年末に、政府決定がされれば、日本政府として、この全ゲノムについてはどう考えているのかというのが数字上分かると思います。
今、この先行解析を行いながら、一歩でも二歩でも、特に解析の糸口がつかめて、それが結果的に、例えばこれが10万人集まればこんないいことがあるというような、そういう結果なりデータが出てくると、我々、予算要求はしやすくなります。そのためにも、こういった調整会議でいろいろ御検討いただいて、きちんと我々に提供してくださると、最終的な予算は確保しやすくなるかなと感じています。
人材育成についても多数御意見をいただきました。これもがんセンターにいたときに痛感したことであります。特に、このゲノムのプロジェクトは医療系の方々は最先端でもあり、非常に面白い分野なので、どんどんやり手が増えていくわけですけれども、まだまだなかなか数が増えていないなと思うのは、バイオインフォマティシャンとか、バイオ関係の統計処理あるいはコンピュータ上の処理ができる、そういった方々についてはまだまだ数的にも少ないなと感じています。行く行くはこのプロジェクトの一つの成果として、あるいは、成果を得るための過程として人材育成も非常に重要なポイントかなと感じています。このプロジェクトを進めながら、そうした人材の育成、最終的にはきちんと予算も確保し、そして、全ゲノムの解析がきちんと進んで、さらには、それが創薬につながり、あるいは、新たな予防法とか、究極患者さんあるいは日本国民全体に還元できればと考えながら、この仕事を進めていきたいと思いますので、ぜひ先生方に御理解と御指導、御協力をいただけたらと思います。
どうも、今日はありがとうございました。
○中釜主査 ありがとうございました。
正林局長から非常に力強いお言葉をいただいたと思います。厚生労働省と我々研究者が一体となってこのがん全ゲノムプロジェクトを実効性の高いものとして進めていくということが求められているという御指摘だと思いますし、ぜひ、構成員の方々、あるいは、ワーキンググループの方々、あるいは、その担当の実際の実務者の方々が一体となって取り組んでいければと、改めて思った次第です。
最後に、事務局から事務的な連絡等がございましたら、お願いします。
○がん対策推進官 次回の会議の開催につきましては、追って連絡をさせていただきますので、また、よろしくお願いいたします。
○中釜主査 それでは、構成員の皆様、本当に長時間にわたりましてありがとうございました。
本日の会議は、以上で終了としたいと思います。どうもありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線3826)