第18回過労死等防止対策推進協議会 議事録

労働基準局総務課(過労死等防止対策推進室)

日時

令和3年1月26日(火) 17:00~19:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター ホール16E
(東京都千代田区内幸町1-3-1)

出席者

専門家委員
岩城穣委員、川人博委員、木下潮音委員、黒田兼一委員、中窪裕也委員、宮本俊明委員、戎野淑子委員
当事者代表委員
工藤祥子委員、髙橋幸美委員、寺西笑子委員、渡辺しのぶ委員
労働者代表委員
北野眞一委員、仁平章委員、則松佳子委員、八野正一委員
使用者代表委員
佐久間一浩委員、鈴木重也委員、湊元良明委員、山鼻恵子委員

議題

(1)今後の過労死等防止対策について
 

議事

議事内容
○中窪会長 それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから第18回「過労死等防止対策推進協議会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多用中にかかわらず御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 初めに、前回の協議会から本日までの間に委員の異動がありましたので、御報告いたします。資料の168ページ、一番最後になりますけれども、参考資料5の委員名簿を御覧ください。タブレットでは1回タップしますと、右下にコップの底のような印が出ますので、それを押していただくと出るかと思います。
 専門家委員の山崎喜比古委員が退任され、後任に戎野淑子委員が厚生労働大臣から任命されております。戎野委員は本日、オンラインで参加いただいておりますけれども、恐縮ですが、一言御挨拶をお願いできればと思います。
○戎野委員 戎野と申します。これからいろいろと勉強させていただきながら、何か貢献できればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○中窪会長 どうもありがとうございました。
 本日は、御都合より堤委員が御欠席でいらっしゃいます。
 それから、本日は、新型コロナウイルス感染症対策として、座席の間隔を空けさせていただいております。また、一部の委員につきましてはオンラインで御参加いただいております。
 オンライン参加の委員の皆様におかれましては、こちらの声が聞こえておりますでしょうか。ありがとうございます。何かございましたら、事務局に電話等で御連絡いただければと思います。
 それでは、カメラの撮影につきましては、ここまでとさせていただきます。御協力をよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
 本日は、会場にお越しの委員につきましてはタブレット、オンライン参加の委員につきましては、事前にお送りしました資料により御確認いただくこととしております。タブレットの操作が分からない場合には、随時職員をお呼びください。
 それでは議事に入ります。本日の議題は「今後の過労死等防止対策について」でございます。前回の協議会では、今後の過労死等防止対策の進め方について、様々な御意見をいただきました。いただきました御意見については、事務局である厚生労働省が中心となって、関係省庁と連携を図りながら内容の整理をお願いしたところです。
 本日の議論の進め方ですけれども、厚生労働省から資料を説明いただき、今後、過労死等を防止していく上でどのような対策が必要になるかについて御議論いただきたいと思います。その後で、大綱における数値目標について御議論をいただければと思います。
 それでは、まず最初に、厚生労働省から説明をお願いいたします。
○小島企画官 総務課企画官、小島と申します。よろしくお願いします。
 本日お手元に総ページ数168ページの事務局資料を用意させていただきました。そのページ数に従いまして、順を追って御説明申し上げます。
 1ページ、2ページ、資料1が、前回第17回の協議会におきまして、各委員よりいただいた主な御意見をまとめたものでございます。
 続きまして3ページ、資料2は大綱の構成になります。現在の大綱の構成、枠組みを基本としまして、その見直しの必要性も含めて御検討いただきたいと考えております。
 続きまして4ページ、資料3、大綱に係る数値目標の進捗状況を整理したものでございます。
 5ページが、大綱に記されております数値目標について、各項目の進捗状況を最新値で示しております。
 6ページが労働時間の状況、7ページが勤務間インターバル制度の周知・導入の状況、8ページが年次有給休暇の取得状況、9ページがメンタルヘルス対策に係る各取組の状況となります。いずれの目標も、緩やかながら改善が図られているところでございますが、まだ目標値に到達できていないものもありまして、社会情勢の変化等も考慮して、今後の取組に当たり、どのような目標設定が適切となるか御意見をいただきたいと存じます。
 続きまして、資料4は業種別の労災支給決定状況の推移です。こちらは、調査研究の重点業種等について、その追加の可否の検討に際しての参考資料として作成したものでございます。近年、過労死等が多く発生している業種等があるか、過去5年間の労災支給決定状況から確認しまして、その推移を整理しております。
 11ページが、脳・心臓疾患における労災支給決定状況の推移でございます。現在の重点業種以外の業種につきまして労災支給決定件数を確認しましたところ、件数自体は製造業、また卸売業、小売業が多かったところでございますが、適切に比較ができるように計算式としまして、労災支給決定件数に雇用者総数を乗じて見やすいように1,000倍している資料でございます。なお、全業種につきましては、オレンジの波線で比較しやすいように表示してございます。
 12ページは、精神障害に係る労災支給決定状況の推移となります。こちらも同様の計算式に当てはめて整理したものでございます。
 続きまして13ページです。こちらからメンタルヘルスや労働時間等の状況を整理した資料でございます。
 14ページより、メンタルヘルスの状況を示した資料となります。
 15ページが、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合です。平成30年は58%と依然として半数を超える状況となっております。
 16ページが、そのストレス等の内容を見ますと、「仕事の量・質」が約6割と最も多く、また「仕事の失敗、責任の発生等」「対人関係」と続きまして、これらはそれぞれ3割を超えております。
 17ページですが、それぞれ事業所規模別に見ますと、常用労働者100~299人の事業所が67.4%と最も多く、続いて500~999人、続いて50~99人、続いて300~499人となりまして、これらが全体平均よりも高くなっている事業所規模でございます。
 18ページですが、それぞれの内容を見ますと、全ての事業所規模において「仕事の量・質」を理由とするものが最も多かったところでございます。特に、常用労働者が1,000人以上の規模でその割合が高くなっているところでございます。また、おおむね事業所規模が小さくなるほど「顧客、取引先等からのクレーム」あるいは「会社の将来性」を理由とする割合が高くなっているところでございました。
 続きまして19ページは、業種別に見たものでございます。赤色の点線を超えるものが全体平均より高い業種となりますが、複合サービス事業が最も高く、次いで学術研究、専門・技術サービス業が高くなっているところでございます。
 20ページですが、その業種別の内容を見ますと、全ての業種において「仕事の量・資」を理由とするものが最も多かったところでございます。また、業種別の特徴としましては、学術研究、専門・技術サービス業においては「対人関係」が、また、生活関連サービス業、娯楽業においては「会社の将来性」が、他の業種と比べて、その割合が高くなっていたところでございます。
 21ページより、新型コロナウイルス感染症の発生に伴う労働時間等の状況を示した資料となります。
 22ページは、令和2年における所定外労働時間の状況を業種別に示したものですが、左上の表のとおり、主要業種(大分類)全体では、ほぼ全ての月で前年同月よりも減少していたところでございます。なお、製造業、卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業といった業種を見ましたところ、同じ業種(大分類)の中でもさらに細かく分類(中分類)してみますと、様々な状況の違いが見られたところでございます。
 続きまして23ページです。左の表は、業種別の週就業時間60時間以上の雇用者数を示したものです。令和2年1月から10月までの平均値は、前年同時期の平均値と比べて全ての業種において減少しておりました。また、右の表は、週就業時間80時間以上の雇用者数を示したものですが、こちらは「医療、福祉」において前年同時期の平均値と比べて増加していたところでございます。
 続きまして24ページですが、その80時間以上の雇用者数について、医療業を対象として抽出し、本年1月から11月までの月別の推移を示したものでございます。新型コロナ感染症の影響と思われるような傾向を示しておりまして、3月以降、前年同月を上回る月が増加しまして、特に2月から3月、あるいは10月から11月は増加の幅が大きくなっております。
 続きまして25ページですが、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」における新型コロナウイルス感染症に関する相談状況となります。昨年4月から11月の相談実績では、メール、電話、SNSを合わせて2,300件強の相談が寄せられております。コロナ感染に関する不安や、退職・収入面での不安などに加えまして、職場の人間関係の悪化や在宅勤務で意思疎通が取りにくいことストレスなど、相談内容も多岐にわたっておりました。
 26ページより、テレワークにおける労働時間等の状況を示した資料になります。
 27ページは、テレワークに関する従業員調査におきまして、テレワークのメリットとして感じることは「通勤時間を節約することができる」あるいは「通勤による心身の負担が少ない」といった回答が多かったところでございます。
 28ページですが、一方でデメリットとして感じることとしては「同僚や部下とのコミュニケーションがとりにくい」あるいは「上司とのコミュニケーションがとりくにい」といった回答が多かったところでございます。その他としまして「作業する場所の作業環境が整っていない」あるいは「健康管理が難しい」、また「長時間労働になりやすい」といった回答もあったところでございます。
 29ページですが、企業調査におきまして、オフィス勤務時と比べたテレワークでの法定時間外、深夜、法定休日労働の多さについて確認しましたところ、左の図ですが、一部にテレワークのほうが多い、あるいはテレワークのほうがやや多いとする回答が存在しました。これについて右の表になりますが、その理由としましては「他の社員とのコミュニケーションを取りづらいから」といった理由が多かったところでございます。
 30ページですが、従業員調査におきまして、テレワーク時の所定外労働、深夜労働、休日出勤の労働時間の報告について、左の表ですが、一部に「働いた時間よりも実際には短く報告することが多い」とする回答が存在しました。これについて右の表になりますが、その理由につきましては「働いた時間の中に作業に専念できない時間があったから」が最も多く、次いで「実際に働いた時間のとおりに報告しにくい社内の雰囲気があるから」といった回答が多かったところでございます。
 31ページから、副業・兼業における労働時間等の状況を示した資料です。
 32ページですが、副業・兼業している理由につきましては「収入を増やしたいから」が最も多く、次いで「1つの仕事では収入が少なすぎて、生活自体ができないから」とする回答が多かったところでございます。
 33ページですが、本業と副業・兼業を含めた1か月当たりの総実労働時間につきましては、副業・兼業していない方は「160時間以上200時間未満」が最も多い区分でございました。この区分に加え「120時間以上160時間未満」といった区分は、副業・兼業していない方の割合が多かったのですが、それ以外の時間区分につきましては、副業・兼業している方が、していない方よりやや多い状況でございました。
 34ページですが、本業・副業における強い不安、悩み、ストレスが「ある」と回答した割合は、副業している方が56.5%、副業していない方が58.2%でした。本業における強い不安、悩み、ストレスについては、副業している方もしていない方も、上位3つは「収入が低いこと」「仕事の量・質」あるいは「対人関係」でした。副業における強い不安、悩み、ストレスにつきましては「副業にはない」「収入が低いこと」とする回答が3割を超えていたところでございます。
 35ページより、フリーランスの就業状況を示した資料となります。
 36ページですが、フリーランスという働き方を選択した理由としましては「自分の仕事のスタイルで働きたいため」が最も多く、次いで「働く時間や場所を自由にするため」が多かったところでございます。
 37ページですが、7割以上のフリーランスの方が「仕事上の人間関係」、「就業環境」「プライベートとの両立」「達成感や充実感」に満足していたところでございます。なお、収入について満足しているフリーランスは4割程度でありました。
 38ページですが、フリーランスとして働く上での障壁は「収入が少ない・安定しない」が最も多かったところでございます。その他「仕事が原因で負傷した・疾病になった場合の補償がない」あるいは「就業時間や休日に関する規制がない」という回答も存在したところでございます。
 最後に39ページになります。フリーランスの一日当たりの就業時間、左の表になりますが「2時間以上4時間未満」が最も多く、次いで「6時間以上8時間未満」が多いところでございました。また、右の表になりますが、フリーランスの一月当たりの就業日数は「5日以内」が最も多く、次いで「21日以上25日以内」が多かったところでございます。
 以降のページとしまして、40ページから参考資料1としまして大綱の本文。74ページ以降は、メンタルヘルスや労働時間等の状況に関する参考となるデータを集約したもの。112ページから参考資料3としまして、過労死等に関する調査研究結果について参考となる各データについて集約したもの。134ページからは、過労死等防止に係る施策の実施状況につきまして、平成27年度以降の取組を取りまとめた資料を添付しておりますので、協議の参考としていただきたいと存じます。
 資料の説明は以上となります。よろしくお願いします。
○中窪会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に関して、まずは過労死等を防止する上での対策について、調査研究等を含めて御意見をいただきたいと思います。複数の委員の方の質問等について事務局からまとめて回答していただきたいと思います。
 それでは、どなたでも挙手の上、要点を簡潔にして御発言をお願いいたします。
 岩城委員が手を挙げられておりますか、お願いします。
○岩城委員 弁護士の岩城です。
 今、大綱の改定についての意見を申し上げてよろしいのでしょうか。
○中窪会長 結構だと思います。
○岩城委員 同じく弁護士の川人委員と一部重なっているところもあると思いますが、御容赦ください。私は、今回の大綱の改定に当たって、以下の3点について意見を申し上げたいと思います。
 1つは、コロナ禍における過重労働、感染リスクを含めた高ストレス労働を防止するということです。御存じのとおり、ちょうど1年前から始まったコロナ禍は、この冬から爆発的に拡大しており、ワクチンへの期待も高まっていますが、少なくともあと数年間は続くと言われております。そのような中で、医療従事者、販売従事者、運送従事者などに過重労働や感染リスクの中での強いストレスがかかっており、これらの方々の過重労働や高ストレスによる過労死を発生させないことは大変重要な課題となっていると考えます。
 具体的には、現在の大綱の第1の「2 現状と課題」の中に、コロナ禍における過重労働、感染リスクを含めた高ストレス労働を防止する必要性を書き込むとともに、「第4 国が取り組む重点対策」の「1 労働行政機関等における対策」「2 調査研究等」「3 啓発」「4 相談体制の整備等」の項目にも必要な記述をお願いしたいと思います。
 2つ目は、新しい働き方の下での過労死等の防止という点です。ここ数年、いわゆるリモートワーク(テレワーク)、ダブルワーク、雇用に寄らない働き方が、政府が積極的に推進していることもあって広がってきましたが、これが昨年からのコロナ禍の下で急速に広がりつつあります。リモートワークについては、通勤時間の節約、家事や介護などとの両立といったメリットもありますが、上司・同僚・部下とのコミュニケーションが取りにくい、OA機器や作業環境が整っていない、家族との関係などで仕事に集中しにくいなどのデメリットが指摘されています。
 特に過労死等との関係では、労働時間の把握が自己申告に頼りがちになるとか、仕事とプライベートのオン・オフの切り替えが難しく、本来心身の疲れを回復する場であるはずの家庭が、逆に心身の休まらない疲労とストレスの場になってしまう、メール等によるパワハラやセクハラが起こりやすいといったことが大きな問題です。
 ダブルワークについては、コロナ禍の下で経済的な理由からダブルワークをせざるを得ない人も増えてきており、雇用する側も働く側もまだ適切なルールが確立しているとは言えない状況です。
 複数就労者の労災保険給付については、昨年9月から労災保険法が改正され、労災認定において労働時間やストレス等の業務上の負荷を総合的に判断する、労災保険給付は全ての就業先の賃金額を合算した額を基礎とするという取扱いがなされることになりましたが、そもそも複数就労によって過労死等を発生させないことが重要です。
 雇用によらない働き方も広がっていますが、その多くは収入が少なく不安定であること、発注がなされた場合に事実上これを拒否できない場合も多く、長時間労働になりがちであることが指摘されています。その一方で、契約形式は委任・委託や請負となっていることが多く、労基法による労働時間や割増し賃金等の保護がなく、過重労働によって過労死等になっても労災補償の対象外となってしまいます。少なくとも厚労省の定める労働者性の判断基準を満たす労働者については、契約形式にかかわらず労働基準法による保護や、労災保険法の補償を行っていく必要がありますし、仮に労働者性を満たさないケースであっても、過労死防止法8条2項によって、事業を営む個人や法人の役員等についても過労死等を防止する必要があるのですから、国として必要な施策を講じていくべきであると考えます。
 これらのリモートワーク、ダブルワーク、雇用によらない働き方における過労死等の防止の必要性についても、第1の「1 はじめに」の「2 現状と課題」の中に記述を入れるとともに、「第4 国が取り組む重点対策」の中の労働行政機関等の対策、調査研究、啓発、相談体制の整備の各項目において、必要な対策を書き込んでいただきたいと思います。
 最後の3つ目ですが、労働環境の変化や最新の医学的知見等に対応して、脳・心臓疾患や精神障害の認定基準を不断に見直していく必要があるということです。現在使われている脳・心臓疾患の認定基準は、2001年に策定されたもので既に20年がたっています。また、精神障害の認定基準も最後に改定されたのは2011年で、これも10年がたっています。昨年、ハラスメント防止法の制定に伴って精神障害の認定基準の一部が改正され、また、現在、脳・心臓疾患の認定基準の見直し作業が行われているところですが、働く人々の就労環境はITの普及もあって急激に変わりつつあり、また、認定基準のよって立つ医学的知見や裁判例なども次々と新しいものが出てきています。
 過労死等の認定基準は、現に発生した過労死等に対して適切に補償を行っていくという点で大変重要なものですが、同時に、このような働き方をしたり、させたりすると過労死等と認定されるという物差しになるという点で、過労死等の防止対策に生かされたり、個々人の予防にもつながるものです。そこで、大綱の第1の「2 現状と課題」の中に、過労死等の認定基準を最新の労働環境の変化、医学的知見、裁判例などを踏まえて、不断に見直していくがあることを記述していただきたいと思います。
 私の意見は以上です。ありがとうございました。
○中窪会長 ありがとうございました。
 後で事務局にまとめてお願いしたいと思いますが、そのほかに委員の方いらっしゃいますでしょうか。
 寺西委員、お願いいたします。
○寺西委員 過労死家族会の寺西です。
 法律が成立し、大綱が施行されて6年経過しました。家族の会は啓発事業に参加しており、参加者の感想文から一定の評価をいただいています。しかしながら、相談に来られる方の労働現場や過労死等の現状を見れば、働く人の労働環境は悪化の一途をたどっていると思わざるを得ません。そこで、2度目の大綱の改正について、法律の理念にのっとり過労死防止を遂行するためには、必要なところに必要な取組を要望して、6点簡潔に意見を述べます。
 1点目は、大綱の取組の中に調査研究、啓発、相談体制の整備、民間団体の活動支援のほかに、対策を入れて5つ目の実効性ある取組が必要と考えます。理由は、これまでの調査分析によって、一定の実態把握が明らかになっています。その要因になっている課題に、必要な取組が指摘されていると考えているからです。
 2点目は、調査分析について。長時間労働させている事業所、36協定の特別条項で長時間労働を締結している事業所、是正した事業所、自主申告制を導入している事業所、ハラスメント被害を出した事業所への調査をお願いしたいです。そして、自殺者についても調査が必要と考えます。白書によれば、2019年の自殺者は2万169人のうち被雇用者・勤め人は6,202人、その中で遺書により勤務問題が原因・動機の一つの自殺者は1,949名とされています。しかし、その他の4,253人は遺書や情報がないだけで勤務以外の理由とは言えず、勤務の可能性があると思うからです。また、コロナ禍につき、過重性の高いエッセンシャルワーカー従事者の実態調査も必要と考えます。
 3点目は、啓発について。現行の啓発シンポジウムと学生の啓発授業に加えて、過労死等を出した企業の事業主と幹部、管理者、労働組合を含む労働者へ、労働条件、労働問題、過労死等に関する啓発セミナー実施の義務づけを求めます。厚生労働省の機関だけでなく、自治体と連携して周知することをお願いしたいです。
 4つ目は、周知について。大綱に掲載されている2020年及び2022年の数値目標が達成しない場合の6項目について、通達や告示、また省令に格上げして社会へ強く周知することを求めます。
 5つ目は、相談体制の整備について。特にハラスメント相談について大企業の取組だけでなく、中小企業、小規模の事業所、零細企業の労働者が利用しやすい相談体制を求めます。
 6つ目は、労災補償について。労災申請者数は年々増加しています。その現状を踏まえ、現在検討会で脳・心の労災認定基準の改定作業が行われています。脳・心については岩城先生もおっしゃっていましたが、20年前に改正されたもので、この20年間の雇用形態と労働環境の変化を見れば、長時間労働だけでなく不規則勤務や交代制、拘束の長い時間、出張や強いストレス問題、心理的負荷などの過重性を重視する適正な評価をした改正を求めます。
 また、関連して労災請求された事業主は、労働時間などの虚偽の報告をするところがありますので、本来、救済されるべき被災者が認定されないために、悪質な事業者、こうした虚偽の報告を禁止することを行政機関から徹底した指導をしていただくことを強く要望いたします。
 私からは以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
 工藤委員、お願いします。
○工藤委員 家族の会の工藤と申します。
 私からは、国家公務員、地方公務員の過労死等防止対策について、2点意見を申し上げたいと思います。
 まず、全体的に国家・地方公務員の大綱に係る数値の進捗状況や状況把握を示す分量が大変少ないように思います。現在、大綱に6項目の数値目標がありますけれども、その進捗状況について国家・地方公務員のものがほとんどなく、どれだけ目標に近づいているか分かりません。
 また、労災支給決定状況の推移についても、例えば、資料の106~111ページの統計を労災のように同じような表に表すこともできるかと思います。
 また、資料5-2のコロナ禍についてですけれども、これも民間だけではなく、例えば公務員でも保健所を初め、一般職、教育職、医療職、福祉職、消防など確実に労働時間が増えた職場もあるかと思いますので、それも示していただければと思います。
 いろいろと縦割り行政の中で難しさはあると思いますけれども、過労死等防止対策推進法の下では、達成すべき目標は民間・公務職場ともに同じはずです。なので、今後、国家公務員・地方公務員についても公務災害で分類されている職種につきましては、大綱の掲げる数値目標、また重点対策、啓発についても、労災と同じような状況の報告と白書への掲載をして、見える化をしていただくように各省庁で連携して取り組んでいただきたいと思います。それが公務職場の過労死等の意識がもっと高まって、防止策が進むことにつながると考えます。
 2点目は、統計の仕方の問題なのですけれども、厚生労働省が労災について請求件数と決定件数、支給件数としているのですが、国家公務員が協議件数と判断件数、地方公務員が受理件数と認定件数となっております。協議件数や受理件数ではどれだけ請求があったか分からなくて全体像がつかめないので、ぜひ請求件数も載せていただきたいと思います。
 以上となります。ありがとうございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
 仁平委員が先ほど手を挙げておられたと事務局からお伺いしましたけれども、仁平委員、よろしければお願いいたします。
○仁平委員 連合の仁平です。
 様々な資料を御準備いただき、事務局に感謝致します。私からは、過労死等ゼロの実現に向けた実効性ある取組を求める趣旨で発言致します。
 ほかの委員からもお話がございましたが、過労死等防止対策推進法の制定や大綱の策定以来、様々な取組を実施してきたものの、御説明いただいた資料のとおり過労死等の数は高止まりが続いております。現下のコロナ禍においては、深刻な社会情勢の中で様々な職場における働き方へ影響が及んでおりまして、過労死等防止や長時間労働の是正といった視点が、ややもすると漏れがちになることも懸念しております。ですから、今こそ実態をしっかりと把握して取組を徹底する必要があると考えております。
 具体的には、1つは取組の進め方なのですが、これまでの取組を見ますと、労働時間、メンタルヘルスについて数値目標が設けられ、複数の審議会などで検証されているわけですが、例えば、労働政策審議会の議論や意見がこの協議会に報告されることはほとんどなく、それぞれの連携が十分に行われているようには見受けられないと思っております。今回の大綱の議論は、大綱の内容だけではなく、大綱に基づく具体的な施策の進め方についても、検討する必要があるのではないかと考えます。
 また、参考資料3、131ページ以降で示されている疫学研究の結果も、この間の成果であり、その内容は非常に示唆に富む、過労死等防止につながる有益なものだと考えております。研究のみにとどめず、職場での取組にどう生かすことができるのかといった視点が重要だと思いますので、具体的な取組としてどのようなことが考えられるのか検討し提示することも必要ではないかということを、意見として申し上げます。
 以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
 いつもであれば何人かをまとめて事務局に回答いただいておりますけれども、今回は大綱に向けてそれぞれの方が御意見を述べていただいているという感じがしますが、事務局からこの段階で何かコメントあるいは回答等はございますか。
○人事院職員福祉局補償課長 先ほど工藤委員から、労災については請求件数、国家公務員の公務災害については協議件数となっており、国家公務員も請求件数を載せたほうがいいのではないかというご意見がありましたが、実は、一般職の国家公務員の公務災害の認定につきましては、労災のような法令上の請求権に基づくものではなく、いわゆる職権探知といいまして、各府省等の実施機関において公務上の災害と判断した場合には、被災職員などの請求を待たずに公務上の災害と認定できることになっております。このことから、請求件数という概念はないのですけれども、それに代わるものとして、実施機関が脳・心臓疾患あるいは精神疾患のような過労死等事案について、公務災害か否かの認定をするときには必ず人事院に協議していただくことになっておりますので、実施機関からの人事院への協議件数を記載しているものでございます。なので、国家公務員について請求件数がないというのは公務災害認定の法的な性格から来るものでございますけれども、そういうことで請求件数は載せていないということでございます。
 以上でございます。
○中窪会長 どうもありがとうございました。
 お願いします。
○石垣総務課長 基準局の総務課長でございます。
 座長からお話しいただきましたように、私どもとしては昨年11月にお出しさせていただいた全体のスケジュールといいますか流れの中で、今回、各委員の先生方の問題意識を幅広く多様な見地から伺えればありがたいと思っておりますので、よろしければ皆様それぞれお考えになっておられることをおっしゃっていただきまして、私どものほうから本日の時点で、今、実施しているものなど御回答できるものもあれば、本日は貴重な御意見として承りまして、今後どのように進めていくかという課題として受け止めさせていただくものもあると思いますので、引き続きいろいろと御意見をちょうだいできればありがたいと思います。
○中窪会長 そちらのほうで今、手を挙げていただきましたので、お願いいたします。
○総務省自治行政局公務員部安全厚生推進室長 総務省でございます。先ほど、工藤委員の御質問に対して人事院から国家公務員の場合についてお答えがありましたけれども、私からは地方公務員の場合につきましてもお答えさせていただきます。
 地方公務員の受理件数なのですが、これは厚労省の請求件数と同じ意味でございまして、請求されて受理した件数。請求があったものを受理しないということはありませんので、ここはイコールになります。ですから、当該年度内に請求を受理した件数ということになります。
 認定件数ですが、これも当該年度内に公務上と認定した件数ということですので、厚労省の支給決定件数と同じ意味になります。したがって、基本的には受理件数から認定件数を引いたものが公務外の認定件数となります。ただ、認定件数には当該年度以前に請求されて受理したものも含まれます。例えば、前年度末に請求があって受理して、その翌年度に認定した場合、若干ずれが出る場合がありますけれども、基本的には今言ったように、受理件数から認定件数を引いたものが公務外の認定件数になると御理解いただければいいと思います。
 以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
 よろしければ、ほかの委員の方から。では、黒田委員、お願いいたします。
○黒田委員 私からは、実は過労死防止学会で今回の大綱改定に向けて少し学会内部で議論したものがありまして、それについては事務局にメールでお知らせしてありますので、できれば今日以降なるべく早くそれを全委員に配付いただければと思っております。今日は、非常に細かくなってしまうので、また冒頭に岩城委員が述べられたものについても重複するものがありますので、それらについては省略させてもらいます。それ以外に3点、今度の改定に向けての要望2点と、1つ質問もしたいと思っております。
 1つは、前回の見直しが2018年に閣議決定されているものだろうと思うのですけれども、それ以降、働く環境もそうですし、法令も随分変わっているものもあります。今日の資料にもありましたけれども、1つは、ハラスメント防止法の制定です。この法律の内容は、私から見るといろいろと緩い面もあるのですけれども、ともあれハラスメントを防止していくという方向での法律が出来上がったわけです。各企業あるいは国家公務員も含めて、こうしたハラスメントに伴う様々な問題について防止することが義務付けられたわけです。したがいまして、前回とは違って法律化されておりますので、何らかの形でそれを社会全体に行き渡らせていくための基準づくりも含めて、この実態についての調査をやっていく必要があるのではないかと思います。
 過労死防止法ですので、そういう点からすると、実はハラスメントというのは公のところでなかなかオープンにならない面もあるのですけれども、この問題についてはこうしたハラスメント防止法以前からも雇用機会均等法においても出されていたのですが、一向になくならない。そのなくならない原因をどうしていくのかという視点から、ぜひ今度の大綱の中でもその辺について議論すべきではないかと思われます。
 もう一点は、同じく働き方改革関連法が施行されまして、労働時間の問題、有給休暇の問題など、働く側にとってみれば労働時間短縮に向けた幾つかの法律が出来上がってきています。これらについても2018年とは違って2021年からの問題については、そういう法律を意識しながら、より具体的な、またそれを遵守する方向へ向けた実態や目標を定めていく必要があるのではないかと思います。そういう点で、働き方改革関連法以降の問題についても、何らかの形で大綱の中に入れていく必要があるのではないかと思います。
 最後ですが、教えていただきたいのですけれども、今日の配付資料の中にもダブルワークの問題が出されておりました。ダブルワークというのは通常は「兼業」や「副業」という言葉が使われていますけれども、例えば、大学教員が本務校で教鞭を執りつつ、他大学に非常勤で行くというのも、恐らくダブルワークの中に入るのだろうと思うのですけれども、なかなか見えにくいダブルワークの問題として医者の問題があるのではないかと思います。これはダブルワークと言っていいのかどうかはなかなか判断しにくいのですが、お医者さんがA病院の仕事をしながら時間を変えてB病院に行く、しかも宿直等も含んだものもあるかもしれません。現状では両方の労働時間を合算するという形になるのだろうと思うのですが、医師の場合も同じ扱いだと思われますがいかがでしょうか。またこうした指針が出る前の段階についてはどのように取り扱ってきたのでしょうか。両方の病院での労働時間、勤務時間を合算した形で処理されるのであれば、これから以降はともあれ、これ以前の労災問題等についてはどのように扱うのかをお聞きしたいと思います。いずれにしても、この問題は、お医者さんの場合はなかなか見えにくい面もあろうかと思うし、先ほどのデータにあるように、副業が給与の問題とは関係なく、恐らくいろいろな中で複数の病院に勤めているのだろうと思うのですけれども、そのあたりどういう扱いになるのか。当然この間、そうした問題に伴って犠牲になったお医者さんは何人もいるだろうと思うのですけれども、このあたり現状はどうなっているか教えていただきたいと思います。
 以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。何人かからの御質問・御意見の後に、事務局にお願いしたいと思います。
 それでは、高橋委員、お願いいたします。
○高橋委員 ありがとうございます。高橋幸美でございます。私は、娘を過労自殺で亡くした母親の立場から意見を申し上げます。
 娘は、過労死等防止対策推進法が施行された翌年、過重労働が原因で自ら命を絶ちました。広告代理店に入社し、わずか9か月でした。防止法ができたのに、なぜ娘は亡くなったのでしょうか。労基署は娘の勤務先に対し、繰り返し是正勧告を行っていたにもかかわらず、なぜ娘を助けられなかったのでしょうか。防止法施行から6年、娘が亡くなって5年になりますが、いまだに勤務問題が原因で命を絶つ人は年間で分かっているだけでも約2,000人もおります。精神疾患の労災請求は年々増加しており、勤務問題で悩んでいる人が減らないこの状況に、悔しさとむなしさで心がいっぱいでいます。過労死は過重労働の対策が遅れている業界や職種、悪意ある経営者の下で起きており、過労死防止に一刻の猶予もありません。どうか娘の死を教訓に対策を講じ、過労死防止に実効性のある見直しになるように切にお願いします。
 大綱の見直しで強化していただきたい項目は5点あります。
 1点は、正確な労働時間の把握の義務づけと違反企業への対策です。労働時間の適正な把握のために、使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの遵守の義務づけと、義務を怠った企業への指導の強化です。理由は、娘の会社では残業隠しが常態化しており、社員の過労死が何人も起きておりました。悪質な残業隠しがある事業所で過労死の危険があるからです。
 第2に、監督の強化、違反企業の講習の義務、公表制度の強化です。36協定の特別条項の届出段階で危険な長時間労働を阻止すること、また悪質な事業所の監督強化、違反企業への講習を義務づけるなど、監督段階で過労死を防止していただきたいと思います。理由は、娘の勤務先に是正勧告を再三行っていたのに過労死を阻止できなかったからです。昨年度、地元の静岡労働局の労働者の相談や労災請求から、県内967企業の事業所を対象に行った監督指導の結果で、違法な長時間労働は475か所、前年比で134か所増加、率にして39%の増加でした。時間外・休日労働が過労死ラインの80時間以上の労働者がいた事業所は140か所、そのうち19か所は150時間を超えていたとの報告があります。是正指導の後に虚偽の是正報告をしていた事業所の公表事例もあり、是正の公表の義務づけなど、公表制度の強化も望みます。
 第3に、11時間の勤務間インターバル制度の導入目標を100%にすることです。娘は試用期間が終わり、10月に正社員に登用されると残業に際限がなくなりました。勤務間インターバル制度はなく、10月25日日曜日午後7時に出社し、27日火曜日の深夜0時まで約53時間も会社にいたこともありました。47時間連続勤務し、帰宅後40分後に出社したこともありました。11時間のインターバルが守れていたなら娘は救えたのではないかと思います。しかし、この11時間という時間は最低ラインです。一日の拘束時間が13時間では20日、月約80時間の時間外労働になり、過労死ラインになります。ワーク・ライフ・バランスの点からも不健全。帰宅後に家事をし、趣味の時間を持ち、子育てをするのは不可能です。労基法適用除外の職種においても、夜勤勤務、交代勤務の労働者も含め、最低でも11時間の100%導入を目標にしていただきたいと思います。
 第4に、週40時間のフルタイム労働者の週労働60時間以上の者の削減を目標にされていますが、フルタイム労働者、正社員総合職の業務の負担はパートタイムに比べ大変重いものです。大企業では時間外労働の削減への意識が高まっているとの報告もありますが、規模にかかわらず、全ての業種・職種の時間外労働の削減に取り組むよう望みます。
 第5に、若年労働者への特別な配慮を欠いた事業所の厳重措置を講ずることを望みます。娘は10月に正社員に登用されると残業に際限がなくなり、1週間に10時間しか寝ていないこともありました。若い社員を入社後間もなく店長に任命し、名ばかり管理職として重圧な責任を負わせ、過労死に至る事例も多くあります。若年労働者の長時間労働を禁止し、特別な安全配慮の義務づけを望みます。過労死を出した場合は、安全配慮義務違反として厳重な処置並びに公表がなされるよう望みます。過労死防止は個々の企業、商慣習改善の取組だけできるものではなく、政府、全経営者、全労働者、全国民の意識を変えていくことが必要です。過労死を1人も出さないという遺族の祈りに耳を傾け、勤務問題が原因で亡くなる人をゼロにするために妥協しない大綱にしていただけるように、切にお願いいたします。
 私からは以上です。ありがとうございました。
○中窪会長 ありがとうございました。
 その横で渡辺委員が手を挙げられておりまして、今、事務局からオンラインで則松委員と八野委員から挙手があったということですので、この順番でお話をいただいて、そこで一つ区切りにしたいと思いますので、まず、渡辺委員、お願いいたします。
○渡辺委員 東京過労死等を考える家族の会の渡辺と申します。私からは、私どもの会員さんのことや啓発事業に行かせていただいているのですけれども、その場で学生さんと話をした中で感じたことを述べさせていただきます。
 まず、白書でいろいろな調査研究データが出ているのですが、これを結果だけでなくて具体的な施策に盛り込んで、過労死防止に有効な対策をぜひ立てていただきたいと思います。例えば令和2年の白書では、精神疾患で発症から死亡まで29日以下が51.5%というデータが出ています。私たちの会員さんの中にお子さんの様子がおかしいなと思ってから、本当に短期間で亡くなってしまうという方もいらっしゃいます。長時間労働やハラスメントを受けている社員が、自分で相談に行くのを待っている時間は、もうかけられないというデータが出ておりますので、強制的に相談に行かせる対応を取るなどの支援策を整備して、社員の不調を見逃さずに命を助ける、何としてでも命を守るという手だてを考えていただきたいと思います。
 2つ目、調査研究についてですけれども、自営業者の過労死についても防止のために調査を行って対策を講じてほしいと思います。啓発事業で学生さんと話をすると、自分のこともそうなのですけれども、家族の長時間労働を心配している声をよく聞きます。どんな仕事をしていますかと聞くと自営業の方もいらっしゃいます。白書のデータでは、自営業者は4~5年前と比較しても、休日休暇の取得日数は変わらない、もしくは取得しづらいという回答が8割に上っていることが分かります。自営業者の労働環境はここ数年であまり変化していないと考えられます。今日の資料にもあるのですけれども、全体的な労働時間は減少傾向にあるという結果が出ています。年次有給休暇の取得率は56.3%まで高くなっておりますけれども、有給休暇が制度として保障されていない自営業者、どんな業種でも、どんな働き方でも過労死は絶対に防止していかなければならないと思います。今まであまりデータとして出てきていないのですけれども、自営業者の労働実態を調べて過労死防止のための手だてを講じていただきたいと思います。
 3つ目、啓発についてですが、過労死をなくすために働く当人もそうなのですけれども、周りの家族ができることを啓発や周知徹底していただきたいと思います。私たちの家族の会は、大切な人を長時間労働やハラスメントで失った御遺族がたくさんいらっしゃいます。亡くなる前に本人がとても疲れている、長時間労働している、ひどいハラスメントを受けていることが分かっていても、家族として見守るしかない。何もできないまま当事者が亡くなってしまい、自分を責め続けている御遺族も多いです。家族が過重労働やひどいハラスメントなどで苦しんでいるときにどうしたらいいか、相談窓口や取れる手だてなどの情報が必要な人に届くような仕組みをつくっていただきたいと思います。
 もう一つ、職場風土の改善のための啓発活動をやっていただきたいと思います。啓発事業で若い方と話をすると、年輩の方の意識を変えるにはどうしたらいいですかという質問を受けることがあります。自分の父親の世代や上司に当たる世代が、「自分の若いころは長時間労働やハラスメントは当たり前だった」とか、「会社のために自分の生活を犠牲にするのは当然」とか、「子どもの行事や病気で仕事を休むなんて考えられない」というようなことを口にすると。そういうことを聞いて自分は何ができるのだろうと若い人が考えていました。長時間労働やハラスメントを美化したり、家庭の生活を軽視するような職場風土を改善するために、社内や自治体、地域で啓発活動を行い、年輩の労働者の意識を変える取組をぜひ盛り込んでいただきたいと思います。
 4つ目は、相談体制の整備についてです。私たちの会では働き過ぎで体や心を壊し、退職した労働者の方がたくさんいます。そういう方は、再就職に当たってかなり厳しい体験をしております。こういう方たちのために、リハビリ期間を含めて段階を踏んだ社会復帰のための仕組みをつくっていただきたいと思います。御自身の体や心を壊して、解雇されたり離職せざるを得なかった当事者、こういう方は長時間労働に加えてハラスメントを受けていたりして、体調面や心理面のバランスを崩していることから、再就職はなかなか難しいのが現状です。ハラスメントを受けて離職した場合は、心理的なダメージが再就職やその後の対人関係、コミュニケーションに影響を及ぼしていることも多いです。例えば、休職した場合は職場の復職プログラムによって支援を受けられますけれども、離職に追い込まれた労働者は支援を受ける場がありません。過労やハラスメントで辞職せざるを得なかった人に対して、ダメージを受けた心理面でのケアを含めた職場復帰の仕組みをつくっていただきたいと思います。
 それから、若年労働者の自死を何としてでも防いでいただきたいと思います。私たちの会では、大変大切に育てたお子さんを過労死で失った御遺族がいらっしゃいます。これから社会のため、国のために働こうとしていた若い人が過労死や過労自死で亡くなる、この社会のおかしさを真摯に受け止めて、国として何としてでも若い人の命を守る、過労死、過労自死を絶対になくすという強い思いを持って、対策に取り組んでいただきたいと思います。例えば、社内や社外の相談窓口の周知徹底、家族と会社とが連携して若い命を支え見守る、若い人をフォローし休職しやすい仕組みをつくる、復職の保障等職場の理解を徹底する、過労死防止のために個人ができることを周知するなどの対策を考えていただきたいと思います。
 5つ目に、民間団体の活動に対する支援で、今、過労死遺児交流会をやっていただいておりますが、交流会以外にも子どもたち、子どもを育てる親たちの相談窓口を設置していただきたいと思います。今行われている過労死遺児交流会では、最近は未就学児から小学生ぐらいの参加者が増えております。これはこれで若い父親・母親が亡くなっているという非常に痛ましいことなのですけれども、小さい子どもが増えますと、中学生や高校生などはなかなか参加しづらくなります。過労死遺児で遺児交流会に参加しにくくなる年齢の思春期以降も、この子たちは生きづらさを抱えていることが多く、問題行動となって現れております。また、そのような子どもを育てる親も相談先を求めていることが多いです。しかし、従来の学校対応のスクールカウンセラーや相談先は、過労死ということに対して理解が浅いです。過労死遺児が就労に対して深い葛藤を抱えていることを理解していないと、個人の問題として片づけられてしまいます。過労死という特別な亡くなり方で親を亡くした子どもたちには、それなりの支援が必要です。遺児たちの健全な成長や親たちの育児の悩みをサポートするために、相談システムの設置をお願いしたいと思います。
 6つ目に、事業主が取り組むこととして、産業医との面接で長時間労働やハラスメントがあった場合、どのような対応をとるかを企業はあらかじめ決めておいて、それを公表して周知徹底していただいたらどうかと思います。長時間労働やハラスメントで産業医の面接を受ける労働者もおりますが、家族の会の御遺族の中には、産業医面接までしていた息子さんを、その後自死で亡くされた方もいらっしゃいます。産業医の対応や面接を受けた労働者のケアについて、どうするかを会社としてきちんと方針を立て、会社としてどんな制度が使えるかを事前に公表し、労働基準監督署からの指導も行って、メンタル、長時間労働で心身ともにダメージを受けている労働者を、ぜひ企業の仕組みとして守るような体制もとっていただきたいと思います。
 私からは以上です。ありがとうございました。
○中窪会長 ありがとうございました。
 続きまして、則松委員、お願いいたします。
○則松委員 日本教職員組合の則松です。私からは、大綱の見直しに向けて1点、メンタルヘルス対策について、特に、メンタル不調に陥る前の一次対策の強化について意見を述べさせていただきます。渡辺委員の御発言にも重なる部分があると思いますけれども、労働者の立場から改めて強調したい点ということで発言致します。
 メンタルヘルス対策において、先ほども御指摘のありました参考資料3の127ページ、自殺事案の半数が発病から死亡までの日数が29日以下であるという結果について、前回堤示されたときもかなりの衝撃を受けましたが、この結果を踏まえ有効な対策が講じられないかということです。医療機関への受診歴がない人が6割に上るという結果と併せて、広く共有されるべきデータではないかと思っています。
 これに関することとして、中小零細企業の一部では、労働者がメンタルヘルス不調となった場合でも医療機関にはかからず、また休職もせずに退職するという事例が少なくないと聞いています。こうなることを防ぐためには、深刻な状態になる前に適切な対応を図る、一次予防が機能するようにしていくことが、この数字を見れば特に重要であると思います。具体的には、ストレスチェックを実施し必要な対策を講じていくということ。そして、上司との関係性の中でメンタルヘルス不調を起こすこともあるかもしれませんが、職場全体として、同僚が不調に気づくことが一次対策として大変重要だと思っております。
 御家族も気づかれるとは思いますが、先ほどの渡辺委員の御発言にもありましたように、御家族は御自身を責めることもあることから、同じように日々共に過ごしている職場の同僚などが早く気づけるかどうかということが、御家族を孤立させないことにもつながると思います。
 大企業においては、ストレスチェックの実施、相談体制の整備等はこの間啓発が進みまして、一定程度行われてきておりますけれども、今後は中小零細企業も含めてこのようなことがしっかりと行われるようにしていくことを強調すべきだということ。そして、ストレスチェックの結果をきちんと職場環境の改善につなげられるように。結果が出たらそれで終わりとなっている実態があるならば、その点を見直す大綱の表記や、支援の仕組みが必要であろうと思います。
 精神面の不調について、上司や同僚、職場の皆さん、あるいは御家族も含めてですが、早く気づくことのできる環境づくりは、企業の大小にかかわらず社会全体の課題だと言えると思います。政府による周知啓発とともに、未然に防ぐ一次予防という観点での企業の研修へ、支援を進めていくことが必要だと感じています。
 メンタルヘルス不調が生じた後の対策も当然ながら引き続きやっていく必要があると思っていますけれども、その手前の一次予防の部分を強化し、個人の問題にせず職場全体で未然に防ぐ仕組みの確立が、メンタルヘルス対策では重要であるということを今回示された資料から改めて感じていますので、この点を大綱見直しに向けては強調しておきたいと思います。
 私からは以上です。
○中窪会長 どうもありがとうございました。
 それでは、八野委員、お願いいたします。
○八野委員 労働側のUAゼンセンの八野と申します。よろしくお願いいたします。
 私からは、長時間労働削減に向けた取組の徹底についてお話ししたいと思いますが、その前に、岩城委員からも冒頭ありましたように、コロナ禍の中で傷んだ労働環境をいかに是正していくのかということが非常に重要だと思っています。先ほどもありましたように、医療従事者や介護従事者、販売職など、不特定多数の方と関わる業務に従事している方たちの精神的なストレスは非常に高いものだと思っておりますので、緊急的な取組と大綱における取組が両輪として必要だと思っております。
 もう一点は、過労死等の防止のための対策に関する大綱を策定し、政労使、公労使で取り組みを進めてきておりますけれども、コロナ禍や今まで解決に至っていない問題を見たときに、過労死等防止対策を、労働政策全体の取組として、もう一度見つめ直していく必要があるのではないかと思っています。
 次に、長時間労働削減に向けた取組ですが、今回の過労死等の調査研究において、特定の業種・職種について様々な調査が行われており、その中で、ある程度の問題点が浮き彫りになってきています。資料には、パートタイム労働者を除く一般労働者の年間総実労働時間は2,000時間を下回ったと記載されていますが、私たちとしては1,978時間という年間総実労働時間にも、かなり長い労働時間が現状でも続いているという認識を持っています。産業別や、40歳代男性、30歳代男性において月末1週間の就業時間が週60時間以上の割合が高いなどといった年齢層別、または企業規模別というように、かなり具体的な課題が見えてきているのではないかと思っています。
 そうした中で、長時間労働の削減に向けた取組を進めていくには、例えば、36協定を締結している事業所の数や割合、特別条項付き36協定を締結している事業所の割合等について指標を設け、働き方改革関連法の施行状況について定期的に確認することが、より具体的な取り組みとして重要なのではないかと思っております。
 今回、大綱で6項目の数値目標を設定し、その中に令和2年を達成年限とする数値目標がありますが、皆様御承知のように、コロナ禍により、かなり異常な状態の中で労働時間の把握等が行われておりますので、こうした達成年限についてどうするのかは、もう一度議論しておく必要があるのではないかと思っています。
 次に、勤務間インターバル制度についてです。この制度を目標に挙げたときには、過労死等の防止に非常に効果的であるということを労働側としても認識し、目標として設けるべきということで進めてまいりました。しかし、2020年に当該制度を導入している企業の割合を10%にするという数値目標に対して、まだその割合は4.2%にとどまっています。これは労働組合にも責任があり、労使の協議がなかなか進んでいないという実態もあると思いますが、導入状況をみると、着実に少しずつは進んできているのですが、今回の参考資料にもある通り、制度は知っているが、超過勤務の実態がないために必要を感じないという回答が多くの業種で高い割合を占めておりました。超過勤務だけを是正するために導入するのではなくて、ワーク・ライフ・バランスなどを整えるためにも勤務間インターバル制度は非常に重要であり、長時間労働の是正に伴いこういった観点からも見ていく必要があると思います。現在、テレワークについての評価は様々ありますが、これからの働き方改革の一つとして、勤務間インターバル制度を導入していく必要があるのではないかと思っています。
 ただし、今回、目標を達成できなかったことについては、どこに原因があり、どういう課題があり、今後如何に進めていくのかを検討することが必要だと思います。企業が制度を知っているだけではなく、導入を検討し、実行していくところまで結びつけていく必要があるだろうと認識しております。
 以上、意見でございます。ありがとうございました。
○中窪会長 ありがとうございました。
 それでは、今5人の委員の方から御意見や質問も入っておりましたけれども、事務局からお願いします。
○黒澤労働条件政策課長 労働条件政策課長でございます。
 黒田委員から御質問がございました、ダブルワークの話でございます。黒田委員御指摘のとおり、医師の方に関しましては、一般的な本人が自由に副業・兼業をやっているというのとはやや異なる側面として、複数の医療機関で従事されている医師の方が大変多いということはよく存じ上げております。それも主に2つありまして、1つは、全く本人の自由にバイトをされている場合もありますし、もう一つは、関連病院などに派遣されていくというようなことと両方あると承知してございます。医師に関しましては、上限規制の適用などを見越しまして、労働時間の短縮、勤務環境の改善あるいはそれを実現するための地域医療提供体制の整備といったことを、医政局とともに議論をこの間重ねてきてございまして、現状に関しましては、本日の参考資料4の156ページに書いてございますけれども、医師の働き方改革の検討会で昨年12月に中間取りまとめが行われておりまして、今後これを基に必要な制度整備を進めていこうという状況になっております。なお、こういった医師の検討会には、本協議会の専門家委員の堤先生にも参加いいただいておりますし、労働者代表委員の仁平委員にも参加いただいております。また、家族の会の皆様からも様々お話を伺うような機会もこの間ありまして、そういった意味では過労死の問題も十分認識しながら、医師の長時間労働の問題について解決していこうということで今、議論を進めております。
 ダブルワークで、これまでどうだったのかということですが、私が分かる限りではありますが、実際に医療界の方々から教えていただいたり、データを見ますと、医療機関の中でも複数の医療機関でやっていることをきちんと把握して、健康に問題が出ないように管理されているような大学病院などもありますし、一方では、必ずしも実態が把握し切れていないということも伺っております。医師でありましても労働時間は通算して管理していく必要がございますので、先ほど申し上げました今後進めていく取組といたしまして、地域で複数の医療機関に従事されている時間も含めて、親元の医療機関で本人にもお話をして、きちんと報告を受けた上で健康に問題がないようにということで進めていこうとなっております。今現在そういった具体的な対策に向けて取組を進めているという状況でございます。
 
○中窪会長 ありがとうございました。そのほかには何かございますか。
 では、木下委員、お願いします。
○木下委員 弁護士の木下でございます。
 大綱の見直しも2回目になってまいりまして、過労死対策が重要だということは社会の中に当然広く知られるようになってきたと思いますが、今回いただいた調査資料を見ましても、大手企業と中小企業、特に小規模企業との間では、いろいろな取組や成果について大きな差があることが明らかになってきています。これについては労働基準法や労働安全衛生法が事業場における労働者の数を規制の要件にし、中小、特に小規模の事業主については、例えば産業医の選任の義務がないとか、ストレスチェックについてもまだ実施の義務がない、パワハラ対策も努力義務であるというように、その事業の規模からして労基法等の刑罰を伴う法律は実施の困難さを配慮したような体制になっていることは十分理解しておりますけれども、過労死対策という点からいえば刑罰を伴うような対策ではございませんので、どの大きさの事業主の下で働いても同じような安全が確保できるような調査をして実態を知って啓発していくことが必要だと思います。
 今日いただいた資料でも、例えばメンタルヘルス対策をしている事業所は大企業では9割を超えている、99%となっておりますけれども、小企業では50%。結局平均してしまうと約6割となってしまうのですが、その数値にはどうもあまり意味があるように思われません。今後は、大企業で達成できていても中小企業にまだ遅れがあることをよく知っていただくような調査や広報、啓発をしていただきたいと思います。
 特にその中で、過労死や過労自殺の申請や認定について、今まで毎年統計を拝見しておりますけれども、業種、職種、年齢別ということでは資料をいただいているのですが、事業所別というのがなかなかはっきりと分かっておりません。私の認識では事業所別でどの規模の事業所に過労死の申請が多いかというのも分からないので、事業所別の統計について明らかにするということは、ぜひ注目していただきたいと思っております。それは当然ながら対策に結びついていくと思います。
 これからも中小企業は日本の多くの労働者が働いて、多くの事業主がある数の上で多いのは中小企業ですので、今度の新しい大綱では、ぜひ過労死対策が中小規模の事業所にも行き渡るような視点を持っていただきたいと思っております。
 併せて、今日も最初に岩城委員からもありましたけれども、ダブルワークやテレワークなど新しい働き方に加えて、フリーランスという問題も出てきています。先ほど委員の方から自営業者というお話もありましたが、自営業者にまで至らない従属的な労働でありながら労働者でないという方たちをどう捉えていくかというのは重要な問題ではないかと思っております。ということで、今までの大綱になかった視点をぜひ追加していただいて、より過労死対策が広く行き渡るようにしていただきたいと思っております。
 以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
 宮本委員、お願いします。
○宮本委員 ありがとうございます、宮本です。
 大綱も2回改定がありまして、そのおかげでいろいろ調査研究も進みました、また特定業種の調査もありまして、言ってみればいろいろ逼迫しているところに手を入れる方法は得られてきたと思っております。ただ、コロナの影響もそうですけれども、いろいろなフェーズで多忙な業種が異なるようになってきているというのがありまして、今一番足らないのは、どこが逼迫していて、どこにすぐ手を入れる必要があるのか、あるいはどのような支援が必要なのか、周囲は何が提供できるのか、等を調べてサポートにつなげるという仕組みがないということではないかと思っております。その辺の仕組みがあれば、そしてそれが事業所単位あるいは職場単位で動くようになれば、自発的に過労死も減っていくのではなかろうかと、ちょっと夢物語かもしれませんが、そういったところがあるので仕組みが欲しいなと思うところです。これは今回の改定で間に合わなければ次回の課題でも結構なのですけれども、言ってみればかゆいところに手が届くという例えだと、孫の手はあるのだけれども、どこがかゆいのか、どういうかき方をすれば改善できるのかが分からないので、どこが調べるのか、あるいはどこが動くのかという仕組みが欲しいということです。
 もう一点、前回の意見でも調査研究の結果をどう生かすかというPDCAの仕組みが言われておりましたが、例えば、先ほど則松委員からお話があった、発症から亡くなるまで29日以下が半分以上だというデータがあるとなると、もちろん長時間労働という出来事あるいはハラスメントなども出来事から発症までの時間もあるとは思いますけれども、例えば、長時間労働でいくと産業医面談の仕組みがあるとして、これに至るまでの時間が今かかり過ぎるのではないかという点もございます。渡辺委員が言われたように、面談をすればいいというわけでもないのはもちろんなのですけれども、現状ですと長時間労働したら月に1回期日を決めて本人に通知して、期日から1か月以内に申出を受けて、申出を受けてから1か月以内に医師による面接をやり、面接から1か月以内に事業者が意見を聞いて、その後措置の実施をするという非常に長いスパンがかかっているということがあります。これをいかに短縮するかは各事業者に頑張って頂かないといけないところだとは思うのですけれども、例えば、これが今、厚生労働省令で規制されているわけですから、その通りにやっていると間に合わないかもしれないなどがありますと、こういった研究成果をもとに、措置の実施までの期間をできる限り短くするような規則改正や通達改正を行うことも必要になってくるのではないかと思います。大綱だけでなく、周辺の規則なども改定しつつ、国全体で過労死を減らしていくという仕組みづくりも必要ではないかと思う次第のですで、ぜひ取り入れていただければと思います。
 私からは以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
 川人委員、その後オンラインで湊元委員、鈴木委員から手が挙がっているとお聞きしておりますので、までは川人委員からお願いいたします。
○川人委員 私から2点、質問になります。
 まず、厚生労働省の労災補償部に対する質問です。過労死防止法ができて、これまで6年以上経過して様々な調査研究が進められた。この点は大変重要な成果だと思いますし、その調査研究の中で労災認定事案の調査分析がこの間行われてきたという点で、これも大変貴重な資料になっていると思います。今回の報告では127ページに「過労死等に関する調査研究(令和元年度)」ということで、全業種、労災認定事案の分析として脳・心臓疾患、精神障害事案の分析がされています。
 ただ、こういう実態があります。私ども労災の実務をたくさんやっておりますが、労災認定が出された場合に担当官からは、本件では労災認定を、時間外労働は150時間とか160時間という長時間労働があったので、それだけ認定しましたと。パワハラがあった、セクハラがあったという主張については、調査する必要がないので調査していませんという調査の結果を請求人に報告するわけです。ある労基署の担当官は、遺族が「パワハラがあったかどうか調べてくれなかったのですか」と聞いたことに対して、「いや、私たちは保険屋ですから、保険を出すか出さないかを決めるところですから」という説明をして、御遺族が啞然としたということがあります。
 この労災認定の認定理由の問題というのは、労災の被害者救済のみならず、社会統計としても非常に重要な意味を持ってきているわけです。だからこそ、こういう労災認定の理由分析を多くの方々が調査分析して報告いただいているわけです。ところが、実務の実情で労災認定できる理由が1つあれば、多くの場合は長時間労働が認定できれば、あとはパワハラがあったとかなかったとか、そういうことは調査もしないという事例がこの間目立って増えてきています。質問は、それは迅速な処理のために本省の指導によってそうなっているのか、そうではなくて、結果として実務がそういうことになっているのか。是正すべきことだと私は思うのですけれども、その点についてどうお考えなのか労災補償部にお聞きしたいと思います。
 それと関連して、調査統計の問題について申し上げますと、121ページで労災認定についての業種別の分析で医師の分析があるのですが、これは何を申し上げたいかというと、平成29年度と現在では明らかに事情が違ってきていると申し上げたいのです。というのは、「医療」の総括文の初めのところで、医師については脳・心臓疾患の事案の割合が多いと評価し、脳・心臓疾患で17件、精神障害で8件労災の認定をしたと記載されております。ところが、せんだって労災補償部からいただいた資料によりますと、最近5年間で脳・心臓疾患で医師は9件の労災認定ですが、精神疾患は20件労災認定されています。死亡事案についても脳・心は6件労災認定で、精神疾患による死亡、つまり自殺は9件労災認定されております。つまり、最近5年間で見ると明らかに様相が変わってきているのです。私は、脳・心臓疾患のほうが少ないことについては認定の在り方としても問題があると思うのですが、それはさておいて、この調査研究は平成29年度段階で行われたものですが、ぜひ状況がこの間違ってきているということを踏まえた新たな調査研究も必要だということで、この点についての調査研究は御予定が今あるのかお伺いしたいと思います。
 それから、若手の死亡について大変深刻だということは先ほどから多くの委員がおっしゃっている点ですが、残念ながら医師について研修医が何名かという統計はいただいておりません。私ども実務をやっている中では、労災認定された事案としても医師の中の研修医の自殺が大変多いですので、研修医の脳・心臓疾患、特に自殺の問題等についての統計も取って明らかにしていただいて、予防につなげていただきたいと思います。
 労災補償部に質問がたくさんあって申し訳ないのですが、もう一点、先ほどからフリーランスの問題が出ているのですが、フリーランスの中の一定の自営業者については特別労災に加入し、その結果、過労性の疾病や死亡によって労災認定されているケースがあるはずです。したがって、フリーランスの中で特別労災によって過労死、過労疾病の労災認定が出たケースがどれだけあるのか、申請がどれだけあったのか、これらについての調査研究をもし今までやっているのであれば、そう言っていただきたいし、今後予定があればお願いしたいと。
 次にもう一点、大きな公務員の問題で、これは内閣人事局あるいは人事院に対する御質問です。この間、日本経済新聞あるいは朝日新聞その他多くの新聞で、国家公務員の過剰な労働、長時間労働の問題について様々なアンケートや特集が行われています。多くの若手が病気になり、退職者が増加していることが指摘されています。その大きな原因として、いわゆる国会議員との関係、質問取りや国会対応が原因になっていると指摘されています。残念ながら、この問題については過労死防止法に基づく調査研究の対象としても、あるいは啓発の対象としても、これまでできてこなかったと思います。ぜひ、ここはタブー視をやめて、国会との関係でどのようにこの問題を改善していくのかを内閣人事局あるいは人事院等で行っていただきたいと思うし、現在そのようなことについて取組をされている可能性があると思いますので、その状況を教えていただきたいと思います。これだけ国家公務員の長時間労働が問題になっているときに、何の対策も講じないということになれば、その悪弊は民間にも大きく影響するということになると思います。この点、人事院や内閣人事局から現状の取組について御回答いただければありがたいと思います。
 以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
 御回答いただく前に、湊元委員と鈴木委員から御意見をいただきたいと思います。
 まず、湊元委員からお願いいたします。
○湊元委員 日本商工会議所の湊元でございます。意見を申し上げます。
 企業が円滑な事業活動を行うためには、労働者が健康で意欲的に働くことが必要不可欠ですので、企業としては時間外労働の抑制や有給休暇取得促進等を通じて、労働者の健康を確保する環境を整備していくことが大変重要だと認識いたしております。
 資料3を拝見しますと、目標値に達していない項目はあるものの、企業の働き方改革が着実に進捗している状況が見てとれます。一方で、経営資源が限られた中小企業が働き方改革と事業の存続、成長を両立していくためには、労働生産性をいかに高めていくかが重要と考えます。
 ついては、政府におかれましては、各都道府県に設置されている働き方改革推進支援センターを通じて、より多くの中小企業にきめ細かな支援が行き渡るようにしていただきますとともに、取引適正化支援も含めて生産性を高める環境の整備に御尽力をお願いいたします。商工会議所としましても、2019年4月から厚生労働省と連携して中小企業の働き方改革支援に取り組んでおりますので、引き続き進めてまいりたいと思います。
 また、コロナを契機として、テレワークの普及・拡大や異業種間での雇用シェア、いわゆる在籍型出向、業態転換等、雇用就業関係が大きく変化しています。加えて、デジタルトランスフォーメーションやIoT、AI、ロボット技術など、先端技術の進展、経済社会環境の変化に対応すべく高度化・専門化する知識、技術、技能取得の必要性が高まっています。
ついては、コロナ禍での新しい働き方や経済社会環境の変化に伴って、労働者の健康管理対策にも変化が生じることが予想されることから、今後、厚生労働省において作成される過労死防止対策大綱の中に、こうした視点も加えることが望ましいと考えております。
 企業としましても、テレワークなどの多様で柔軟な働き方が増加していく中にあって、労務管理や社員同士のコミュニケーションの確保等、労働者の心身の健康確保に今後とも適正に対処してまいります。また、いわゆる健康経営の一層の推進も図ってまいりたいと思っております。
 政府におかれましても、中小企業に対して、労働者の健康確保に関するノウハウの提供や相談、アドバイス機能の整備拡充等、必要な支援策を講じていただきますようお願いいたします。
 私からは以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
 それでは、鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 経団連の鈴木でございます。私からは、長時間労働につながる商慣行について申し上げたいと思います。
 この問題は、私どもも数年来いろいろと取り組んでいるところでございますけれども、まだまだ見直しの余地が大きく、問題点は多いと認識しておりますので、引き続き大綱への盛り込みをお願いできればと思っているところでございます。
 また、商慣行につきましては、民間同士の取引だけに限られるものではございません。昨年、経団連が実施した調査によりますと、行政機関等との取引で自社の社員の方が長時間労働につながっていると回答された企業が、建設業や製造業を中心に28%、約3割に上っているところでございます。例えば、行政機関から翌日朝一番での資料の提出が求められるという事案や、見積もりの提出期間が極めて短い事案、さらには契約外の説明資料が求められるというような実態があるということでございます。こうした行政機関等との取引における長時間労働につながる商慣行の見直しにつきましても、明確に大綱で取り上げ、対策を講じていただく方向で盛り込んでいただけるとありがたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○中窪会長 ありがとうございました。
 ここで区切ろうと思ったのですけれども、もう時間も少なくなっておりまして、かつ、まだ御発言いただいていない委員もいらっしゃいますので、その方々にこの機会ですから御意見をいただいて、その上で最後にまとめて事務局からと思います。
 それでは、佐久間委員、お願いいたします。
○佐久間委員 全国中央会の佐久間でございます。
 今日から大綱の本格的な審議を進めていくわけですけれども、実際、この大綱も今日を入れて3回で方向性を出していくことになりますので、非常にタイトなスケジュールになってくると思います。
 今回、提出賜りました資料の中では5ページに記載されている現在の数値目標、全体では7項目あって、そのうち2項目だけが達成しております。インターバルの認識率とストレスチェックの結果を集団分析だけが数値が一応達成となっていますけれども、もちろんこの数字ももっともっと高めていかなければいけないと思いますが、先ほど八野委員が言われたとおり、達成ができていない項目について、その要因が何なのか、これは労使含めての分析が必要なのではないかと、これが重要だと思っています。
 その上で、この目標の数値が高過ぎたのか、あるいは適切・適当な数値であったのかということは、これから作成していく大綱についてもこういう目標は重要になると思いますので、こちらを改めて認識していく必要があるのではないかと思っています。
 それから、7ページでインターバル制度が載っています。これは現在の目標の中にもあったわけでございますけれども、働き過ぎという言葉もおかしいのですが、その場合は仕事から一旦離れるということは重要なことだと思います。就業時間等の問題もありますけれども、これを新しい大綱の中にもある程度入れていく方向と考えております。
 それから、16ページ、17ページでは、ストレスの問題があります。先ほど中小企業に数が多いと言われていましたが、中小企業全体で見れば従業員数であれば68%、7割近くを占めていて、その中で企業別に見ればと差異があるかもしれませんけれども、中小企業は一人の担当者が業務を兼務して行っていたり、ようやく確立した組織ができたばかりだということで、その中でどれだけの物・人を充当できるか、担当者も全部が全部できるわけではないということで、そこでは甘えになるかもしれませんけれども、国からの支援も充実したものを図っていただきたいと思っています。
 また、16、17ページで、全体の労働者ということになっているのですが、その中には若年の方と役職に就かれている方がいると思います。これは難しいかもしれませんが、役職者別に程度区切ったもので、どういうストレスを感じることが多いのか、そういうものも、もしできたらいただければと思っています。
 副業・兼業の問題、そしてテレワークの問題がございます。厚生労働省では、ガイドラインをつくっていただいて、何とか過労を防ぐためにも、また労使で協調しながら話し合って進めていくことを基本に捉えたものが出ていると思います。ただ、実際に今、テレワークなどを進めていると、普通のリアルの職場ですと上司が黙認した場合はもちろん残業管理の対象になるわけですけれども、テレワークで自宅などで業務を行っている場合、「9時-5時なり、8時間で就業時間を区切ってください」と言っても、やらざるを得ないということで、黙認をしているわけではないのに、業務を実施しているというケースもでてくるのではないかと思われます。労使ともにその辺の弊害というか、管理をする立場と仕事をやらなければいけないという立場と二分化して見えていませんので、管理者側、労働者側の双方が区切ることをちゃんとやっていかないと、ずるずる過労になったりということがありますので、そこは両者側とも進めていくべきだと思います。
 以上の点、申し上げましたけれども、今度の大綱につきましても、現在の目標の数値をもう一度洗い直して、要因はどこなのかを見つけて、新しい大綱作成に向けて取り組んでいきたいと思っています。
 以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
 それでは、こちらからお名前を挙げて恐縮ですけれども、戎野委員、もし御意見をいただけましたらと思いますが。
○戎野委員 それでは、私からも、今回の大綱改正に当たって気になった点、今後注意していくべきではないかと思った点について、簡単にお話しさせていただきます。
 もう既に、コロナ禍による過重労働やリモートワーク等についての問題は、多くの委員から御指摘がございましたので私からは省かせていただきまして、私からはコロナの状況が今しばらく続いていくであろうということ、また、それによってコロナへの対応もしばらく続いていくであろうということ。これを踏まえた上での大綱改正が今求められていることから、データの読み方や、そこに書き込む内容について注意する必要があるのではないかと思っております。
 例えば、フリーランスのデータなど大変参考になるものを先ほど御説明いただきましたけれども、これは昨年2月ぐらいの調査であるということは、まだ今ほどコロナの影響がない中での意識調査になっているわけです。これが、コロナが継続し雇用状況が悪化していくとなると、もう少しネガティブな労働者の意識になっていくことも十分に考えられますし、そこにおいては問題も発生してくる可能性は十分にある。
 また、先ほどリモートワークによって、コミュニケーション不足を問題として指摘している方が最も多かったわけですけれども、コロナの状況が一次的な問題ならばコミュニケーションがなくて困ったとか、あるいは問題ではあっても何とか乗り越えられていくという程度かもしれませんが、これが2か月、3か月ではなく、半年になり、1年になりということになっていきますと、コミュニケーション不足の問題にとどまらず、今はまだまだ少ないかもしれませんが、孤独を感じている人、また、そこからメンタルの問題を抱えていく人というように、時間が少したってくると問題が進化していくこともこの先考えておく必要があるのではないかと思いました。
 さらに、現在新しい変化、働き方の変化や中には仕事も変わる方もたくさんいる中で、より一層、企業と労働者がともにコミュニケーションを取って問題に向かっていかなければならないときに、コロナへの対応というのは大変残念ながら、対策として密にならないために対面で会うことが少なくなり、どうしても会話が少なくなり、相手の状況がつかみにくくなるという問題を抱えやすい状態にならざるを得ない。そこの特質を十分に把握した上で、働くことについて対応していかないといけないのではないかと思います。企業側も社員の健康を考え、安全を考え、緊急にいろいろな対応を取ってくださっているのですけれども、先ほどの御意見にもありましたように、双方が見えにくくなってきている、これは簡単にいかないところがあるのではないか。そういったコロナ対策から生じやすい課題も注視して、大綱改正のときには、コロナが続くことよって進化していく問題、コロナへの対応によって危惧していかなければいけない問題も、ぜひ含めていただけたらと思います。
 以上です。
○中窪会長 ありがとうございました。
 続きまして、北野委員、お願いいたします。
○北野委員 労働側委員の北野でございます。多くの委員の皆さんと重複しているので発言は控えようかと思ったのですが、会長の御配慮に感謝申し上げて、申し上げたいと思います。
 御案内のとおり、情報通信や情報技術が進展して、シェアリングエコノミーの様に安易に請負や業務委託も可能とするような働き方が増えてきておりますし、従来も、この請負や業務委託という働き方においては、恐らくあまり統計で把握されてこなかった過労死もしくは過労自死等も含めて、事案が存在することは十分可能性としてはあり得ると思っております。新たな動きとして今後、労働時間の適正な管理や健康管理対策を講じることは不可欠だと思いますので、大綱に盛り込んでいくことは必要だと思っています。
 この点につきまして、政府でもフリーランスで働く就業者の環境整備のためのガイドラインを策定しており、これはどちらかというと公正取引や下請法に基づいた適正な契約という観点ではございますが、フリーランスに関しても長時間労働の是正、さらには過労死等の防止に向けた大綱への記載が必要だと思っておりますので、ぜひ大綱に反映していただければと思っています。
 ここからは意見なのですが、これも多くの委員の先生方がおっしゃっていましたが、コロナ禍においてテレワークが増えたのは間違いないと思っていますし、さらに今、コロナ禍の影響が相当継続しているなか、雇用環境は相当厳しさを増しているということもあり、そのような状況の中で副業・兼業をせざるを得ない方も増えていると思っていますので、ここはぜひ厚労省からも労働時間の適正な把握・管理の徹底に向けて、事業者への周知・監督指導の強化をぜひお願いしておきたいということでございます。
 以上でございます。
○中窪会長 ありがとうございました。
 それでは、最後に山鼻委員、お願いいたします。
○山鼻委員 東京経営者協会の山鼻です。ありがとうございます。
 3点ございまして、1点は、今テレワークを緊急避難的に私どもの会員企業さんも導入しておりますけれども、これがずっと常態という形でやる方向で進んでいます。テレワークを中心とした労働環境では、これまで考えられ、対策が取られてきたストレスの種類等も異なってきますので、今回の大綱が出る時期を勘案して、ストレス対策等も時代の変化に対応し、今までの調査と違うものに取り組んでいけたらと思います。
 もう一点は、数値目標に関してです。残念ながらまだ目標をクリアしていないところも多々ありますが、中小企業、特に零細企業等は大企業と違いまして目標達成が難しいところがございますので、新たな数値目標を立てる際には、現状に即し、目標数値だけが独り歩きをしないような形で、全ての企業が達成できるような数値を設定していただくとともに、それに対する援助等も考えていただければと思います。
 また、もう一点ございまして、今回の資料の中で疫学的調査でいろいろ過労死を防止できるようなところも分析されていますので、どのようなことをやったら過労死・過労自死がゼロになるかという観点で、今回の大綱に入れていただければと存じます。
 以上です。
○中窪会長 どうもありがとうございました。
 それでは、先ほどの質問につきまして事務局から簡単にお願いいたします。
○西村補償課長 補償課長の西村でございます。
 川人委員から何点か御質問をいただきました。まず、現場の労災認定の実情といいますか、やり方についてということでございますけれども、過労死の請求に当たって、労働時間やセクハラ、パワハラ、いろいろな原因を申し立てられる場合に、どういう認定をやっているのか、それは本省からの指示なのかということでございました。御案内のとおり、労災保険法の目的といいますのは、迅速・公正な被災労働者の救済ということでございます。そういう観点から、まず業務上外を決定するということが第一義的なことだと認識しております。その上で、仮に労働時間で業務上と認定し、労災保険給付をすることができるのであれば、それ以外の部分の申立てについては、必ずしも調査をする必要までも徹底しているところではございません。御案内のとおり、特に精神障害につきましては年々請求が増加している状況でございますので、こういう中でも迅速な処理のためには、できるだけそういう調査をしていきたいと思っております。ということで、これは本省からの指導でこのようなやり方を現場にさせているということでございまして、ぜひ御理解をいただきたいと思っておりますが、委員からの意見があったということは認識したいと思っております。
 それから、過労死の統計、毎年の公表の中で、医師にあっては研修医などは取れないのか、もう一つは、フリーランスや自営の中でも特別加入している人がいるということだと思うのですけれども、こういうデータは取れないのかという御質問ですが、これにつきましては、令和2年度の過労死等を公表する際に検討させていただきたいと思っております。
 以上でございます。
○人事院職員福祉局職員福祉課長 人事院でございます。
 川人委員から、国家公務員の国会対応に伴う長時間労働の問題について御指摘をいただきました。国家公務員につきましても、平成31年4月から民間と同様に超過勤務の上限規制を導入してございます。ただ、公務の場合は災害対応等やむを得ない場合もございますので、そういった場合には上限を超えて超過勤務を命ずることができる仕組みとしております。ただ、野放図にさせてよいということではございませんので、上限を超えて超過勤務を命じた場合の要因・理由については、各府省で整理、分析、検証するという仕組みになってございまして、現在、令和元年度の各府省の分析状況を人事院において取りまとめを行っているところでございます。そういった中で、例えば上限を超えた要因の中で、国会業務が占める割合を分析するとともに、どういった人がどういう場面で残業になっているのかという構造的な背景も併せて分析して、改善に役立てていきたいと思っています。
 また、人事院は人事院勧告を国会と内閣に提出する際に報告も行っておりますけれども、その中でも国会業務など行政側の対応で合理化が困難なものについては、国会などの理解と協力を求めるという旨も、ほぼ例年申し出ておりまして、今後も先ほどの分析結果も踏まえながら、必要な提言等を行っていきたいと考えております。
○内閣官房内閣参事官(働き方改革推進担当) 続きまして、今の同じ御質問に関しまして、内閣人事局からお答えいたします。
 国家公務員の若手の離職等について御指摘いただきましたけれども、そういった若手の離職者の増加等につきましては、我々といたしましても、公務の持続可能性の危機といった面、またもちろん個々人の過労に関する問題という面からも非常に問題だと考えております。この点を踏まえまして、霞が関全体の長時間労働の実態をまず把握するという趣旨で、昨年10月及び11月、本府省の職員が正規の勤務時間外に在庁した時間について悉皆調査を実施したところでございます。その結果、10月と11月を合わせた傾向といたしまして、全体として45時間を超えて在庁した者がおおむね3分の1、ただし、20代以下に限りますとその数値が5割に近づいてくると。それから、80時間超の在庁時間であった者につきましては、全体としては10%ちょっとなのですけれども、これも若手20代以下に限りますと20%近く、また20代かついわゆるⅠ種総合職、通例キャリアと呼ばれている職員については3分の1近くがそういった数字になるということで、全体の長時間労働、特に若手の負担が高いといった状況を把握したところでございます。
 このような点につきましては、働き方改革を通じて改善していくべきと考えておりまして、業務自体を縮減するための業務の見直しの徹底、効率化・デジタル化等の徹底を図るといった側面と、勤務時間を上司がきちんと管理して、長時間になろうとしている職員に対しては、適切に業務を調整するなり超過勤務について配慮していくといったマネジメントの面についても改善を図っていこうと考えております。
 それから、川人委員から御指摘がありました国会との関係でございますが、通告時間が遅いせいで国会対応のために遅くまで残る必要があるのではないかという御指摘もよくなされるところでございますけれども、それに関しましても、令和2年の臨時国会における最終通告時間を府省ごとに、何時に全ての質問が固まったかを調査したところ、平均の通告時間が18時46分、うち衆議院の所管委員会につきましては18時55分でありまして、霞が関のいわゆる定時は一般的に18時15分なのですけれども、それよりは遅い時間となっているという状況でございました。
 ただ、参考までに、平成30年にも同様の調査をしているのですが、この際の平均の衆議院の所管委員会の最終通告時間は20時19分でございましたので、1時間半近く早くはなっているということでございます。特に国会質問につきましては、国会議員の方のコアな業務ということもございまして、国会のことは国会でお決めになっていただくことではあるのですけれども、国会の御理解も進んできている状況ではあると思いますし、先ほどのような国家公務員の長時間労働の実態につきましていろいろ御説明等も申し上げる中で、今後一層御理解も賜っていきたいと思っております。
 実際に、現国会におきましても、コロナ対応という面もあると思いますが、質問取りといいますか、レクのオンライン化も進めていただいているところでございまして、このようなことも含めまして、今後も国家公務員の長時間労働対策に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○石垣総務課長 労働基準局総務課長でございます。時間も超過しておりますので、手短にさせていただきます。
 まず、川人委員から御質問のありました医師の分析についてでございます。これは川人先生も御案内のように、今まで過労死大綱では重点になる業種ということで毎年幾つか定めさせていただいて、そのときに調査をさせていただいておりまして、今後も重点分野という形、これもこれからの御議論かもしれませんけれども、そういった中で私どもその時々、何年かに一度調査をするという形でやってきておりますので、今の御意見も含めましてどうしていくのかを考えていくことになろうかと思います。
 それから、先ほど来各委員の方々から監督行政に係るものや、労働安全衛生のメンタルヘルス対策の状況などについても御意見をいただいておりまして、本来であれば現状やっているものなどについて、この場でしっかり御説明するところなのですが、本日は先生方からの幅広い問題意識を伺わせていただくということで、お時間も今このようになっておりますので、お答えはまた次回に向けて、資料なども含めて整理させていただく形で御容赦いただければと思っております。
 簡単でございますが、以上でございます。
○中窪会長 どうもありがとうございました。
 御意見も尽きないところではありますけれども、既に時間を過ぎておりますので、このぐらいにしたいと思います。
 本日は、委員の皆様から今後の対策について、それぞれの立場から貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。全体を通じて法や大綱に基づく施策に新たに盛り込むこと、それから、数値目標については本来別個に議論するつもりではあったのですけれども、時間もありませんでしたが、御意見の中にいろいろ入ったところもあります。そういうことを前提に、少なくともこれまで同様、基本的な大綱の枠組みを維持した上で、それを現在の状況に合わせて発展させて、今必要なものに見直していくということで皆さんの御理解をいただいていると思います。
 次回の協議会に向けましては、事務局である厚生労働省が中心となりまして、また関係省庁と連携を図りながら、本日の御意見を踏まえ、また数値目標を含めた形で今後の過労死等防止対策の見直し案の骨子、それから、そのように位置づけした素案を準備していただくことにしたいと思います。それに向けて今日は時間もありませんでしたけれども、もし残された御意見や、特に数値目標に関することについて補充的な御意見がありましたら、御遠慮なく事務局にお寄せいただければと思います。その過程で事務局についても、各委員から丁寧に御意見を伺いなから作業を進めていただくよう、お願い申し上げます。
 では、最後になりますけれども、今後の日程について事務局からお願いいたします。
○小島企画官 既に委員の皆様には御連絡を差し上げておりますが、次回は3月24日水曜日、次々回は5月25日火曜日の開催として調整させていただいております。よろしくお願いします。
○中窪会長 ありがとうございました。
 それでは、第18回過労死等防止対策推進協議会はこれで閉会といたします。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。