令和2年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録

日時

令和2年12月10日(木)15:00~

場所

TKP新橋カンファレンスセンター12D

議事

○医薬安全対策課長 定刻になりましたので、令和2年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開催いたします。本日御出席の委員、参考人の先生方におかれましては、お忙しい中御出席いただきまして、どうもありがとうございます。本日の調査会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から一般傍聴は制限させていただき、報道関係者の皆様に限り傍聴可としておりますが、カメラ撮りは冒頭から禁止とさせていただいております。御理解、御協力のほどお願い申し上げます。議事録については、後日、厚生労働省のホームページに掲載いたします。また、審議のほうにつきましても、対面ではなくWeb開催としており、委員及び参考人の先生方には、外部より御審議に御参加いただくことになります。そのため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、これまでのWeb開催と同様ではありますが、議事に先立ちまして、審議の進行方法について事務局より説明させていただきたいと思います。
○事務局 御説明申し上げます。まず、ハウリング防止のため、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御意見、御質問を賜る際にはミュートを解除し、初めにお名前をお知らせください。発言のタイミングが重なった場合には、一度発言を控えていただき、調査会長から御指名いただくことがございます。その他、システムの動作不良等がございましたら、会議の途中でも結構ですので、事前にお伝えしている事務局の電話番号まで御連絡をお願いいたします。また、万が一事務局のサーバーがダウンするなどのトラブルがあった場合には、事務局から一斉にメールにて御連絡することがございますので、その際は御確認いただけますと幸いでございます。御不便等お掛けするかもしれませんが、何卒、御理解、御協力のほどをお願い申し上げます。
それでは、ここからの議事進行につきましては調査会長の五十嵐委員にお願いいたします。
○五十嵐安全対策調査会長 座長の五十嵐です。今日はどうぞよろしくお願いいたします。Web開催ですのでいろいろとトラブルがあるかもしれませんが、御協力よろしくお願いいたします。まず、事務局から御説明がありましたが、何か御質問等はございますか。よろしいですか。
では、初めに委員の出欠状況等について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 本日の委員の出欠状況ですが、6名中6名、全員の委員に御出席いただいております。薬事・食品衛生審議会の規程により、本日の会議は成立することを御報告申し上げます。
続きまして、参考人の先生を御紹介いたします。議題1『リドカイン塩酸塩・アドレナリン注射剤の伝達麻酔・浸潤麻酔における禁忌「耳又は指趾の麻酔を目的とする患者」等に係る「使用上の注意」の改訂について』の関係で、日本足の外科学会より神戸大学医学部附属病院整形外科の神崎至幸先生、また日本耳鼻咽喉科学会より奥村耳鼻咽喉科院長の奥村隆司先生、そして防衛医科大学耳鼻咽喉科学講座教授の塩谷彰浩先生、日本手外科学会より医療法人財団窪荻病院整形外科医長/手外科センター長/リハビリテーション科部長の岡﨑真人先生、東京都済生会中央病院整形外科の亀山真先生に御出席いただいております。
○五十嵐安全対策調査会長 聞き取りにくいという御意見があるのですが、大丈夫ですか。
○舟越委員 若干、聞き取りにくいときがあります。
○五十嵐安全対策調査会長 そうですか。できるだけ大きな声で司会をいたします。
続きまして、審議参加に関する遵守事項につきまして、御説明をお願いします。
○事務局 本日御出席の委員及び参考人の方々につきまして、議題1の対象品目・競合品目の製造販売業者からの過去3年度における寄附金・契約金などの受取状況を報告いたします。対象品目・対象企業及び競合品目・競合企業については、事前にリストを各委員・参考人にお送りして、確認を頂いております。
その結果、五十嵐委員より、マイランEPD合同会社より50万円以下のお受取り、柿崎委員より第一三共株式会社より50万円以下のお受取り、舟越委員より丸石製薬株式会社、第一三共株式会社より50万円以下のお受取り、塩谷参考人より杏林製薬株式会社より50万円以下のお受取り、第一三共株式会社より50万円超500万円以下のお受取りと御申告を頂いたほか、受取りの申告はございませんでした。
よって、全ての委員におかれましては、意見陳述、議決のいずれにも参加いただくことが可能です。また、参考人につきましても、御意見の陳述が可能なことを確認しているところです。なお、これらの申告状況につきましては、追ってホームページで公表させていただきます。
続きまして、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員、又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には辞任しなければならない」と規定してございます。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規定第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告申し上げます。
○五十嵐安全対策調査会長 それでは、ただいま事務局から御説明のありました審議参加に関する遵守事項について、皆さん、御了解いただけますでしょうか。
ありがとうございます。特に御異議がないようですので、競合品目・競合企業の妥当性を含めて、御了解を頂いたものとします。
では、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。
○事務局 本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。あらかじめ資料をお送りさせていただいておりますが、議題1に関して、資料1-1から資料1-7、議題2に関して、資料2-1から資料2-2、参考資料2-1をお送りしているところです。また、これに加えて、本日は急遽報告事項ということで、当日配布の資料がございます。委員の先生方には先ほどメールで配信いたしましたが、「小林化工(株)のイトラコナゾール回収事案について」をお送りさせていただいているところです。
このほか、議事次第・資料一覧、委員・参考人一覧及び競合品目・競合企業リストをあらかじめお送しております。
○五十嵐安全対策調査会長 皆さん、よろしいでしょうか。
それでは、議題1、リドカイン塩酸塩・アドレナリン注射剤の伝達麻酔・浸潤麻酔における禁忌[耳又は指趾の麻酔を目的とする患者]等に係る使用上の注意の改訂について、審議を行いたいと思います。初めに事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 議題1、リドカイン塩酸塩・アドレナリン注射剤の伝達麻酔・浸潤麻酔における禁忌「耳又は指趾の麻酔を目的とする患者」等に係る「使用上の注意」の改訂について御説明いたします。資料1-1を御覧ください。資料1-1の経緯にありますとおり、リドカイン塩酸塩・アドレナリン注射剤(以下、本剤と言う)につきましては、現在、禁忌の[伝達麻酔、浸潤麻酔]の項に、「耳、指趾又は陰茎の麻酔を目的とする患者[壊死状態になるおそれがある]」が設定されております。日本耳鼻咽喉科学会、日本手外科学会、日本足の外科学会より、それぞれ耳、手趾、足趾の禁忌解除を求める要望書が提出されております。
各学会からの要望理由を資料1-1に列挙しておりますが、主に、臨床においてアドレナリンは局所麻酔薬の作用時間延長や術野の出血低減の目的で使用されていることや、国内外の文献において壊死の報告は認められないこと等が要望理由として挙げられています。
資料1-1の調査結果を御覧ください。国内外の標準的教科書や公表文献等を調査いたしまして、代表的な国内外の標準的教科書及び米国ガイドラインにおいて、アドレナリン含有局所麻酔薬は、耳、指趾への投与が推奨、又は麻酔方法の1つとして示されていること、耳については複数の血管により血流が保たれており、本剤投与後に虚血が生じることは考えにくいこと、指趾については、一定時間経過後には血流が回復し、後遺症を認めないとの報告があることから、禁忌から耳及び指趾を削除して差し支えないと判断いたしました。
一方で、アドレナリンの薬理学的機序により局所の血流減少が想定されること、血行障害や低血流量が想定される患者において、指趾の壊死がみられた症例報告の文献があることから、一定の注意喚起が必要と考えております。
資料1-1の対応方針を御覧ください。以上の調査結果を踏まえ、本剤の添付文書について、禁忌の項の耳、指趾に係る記載を削除し、血行障害や低血流量が想定される患者について、慎重投与の項にて注意喚起することとしてはどうかと考えております。
改訂案は資料1-2を御覧ください。16ページにお示ししております。慎重投与の項に、全身性又は末梢性の血行障害のある患者、複数の指趾へ同時投与を行う患者、小児を追記する案です。複数の指趾へ同時投与を行う患者については、単一指趾の場合よりも総投与量として多くなることから、小児については、血管径と指の直径が小さいので低血流量が想定されることから、慎重投与に設定しています。
また、資料1-7を御覧ください。
○事務局 ちょっと音声が途切れ途切れということですので、少しゆっくり説明させていただくようにしたいと思いますが、どうしてもお聞き取りづらいようであればまたお知らせください。
○事務局 続けます。資料1-7は局所麻酔薬の作用延長、手術時の局所出血の予防と治療の効能・効果を有するアドレナリン注射剤の添付文書です。資料1-7の3ページ目の左下の適用上の注意の項の(4)局所麻酔薬添加時の部分に本剤と同様の記載がございますので、こちらについても、本剤と同様の改訂を行ってはどうかと考えております。御説明は以上です。
○五十嵐安全対策調査会長 それでは、続きまして参考人の先生方から御意見を頂きたいと思います。初めに塩谷参考人から御意見を頂けますでしょうか。
○塩谷参考人 日本耳鼻咽喉科学会から説明させていただきます。この度、日本耳鼻咽喉科学会は、エピレナミン含有キシロカイン注射0.5%、1%、2%(以下、本剤と言う)の添付文書の禁忌事項のうちの耳の部位への浸潤麻酔・伝達麻酔の使用禁忌の解除を要望いたします。現在、本剤の添付文書において、禁忌項目で、耳、指趾又は陰茎の浸潤麻酔・伝達麻酔を目的とする患者には投与しないとなっております。
その理由として、医薬品インタビューフォーム(2017年7月改訂第10版)ですが、ここに「指、趾、陰茎などの終末動脈から血液を受けている組織ではアドレナリンの血管収縮作用により血流障害を起こし壊死状態になるおそれがある」と解説されておりますが、ここに耳の文言が抜けていることや、そのような報告は国内外の文献からも確認できておりません。また、2017年当時の製造販売元のアストラゼネカ社に禁忌の理由を問い合わせても、明確な回答は得られませんでした。
耳介部先端におきましては、終動脈から血流を受けていると言われておりますが、実際には耳介においては側副血行路は旺盛であり、壊死が生じにくいということが論文でもエビデンスとして証明されておりまして、承認用量の範囲での使用量であれば、壊死にはなり得ないと考えられます。
また、本剤は実臨床の場では、耳鼻科手術において、局所麻酔薬の作用時間の延長や術野からの出血の抑制などの目的で、以前から長く頻用されておりまして、出血が多いと手術を円滑に進めることができないため、不可欠な薬剤と言えます。
多くの手術の教科書の中でも、アドレナリン含有の局所麻酔薬の使用が推奨されております。実臨床の場においても、本剤の使用により、成人例も小児例も、耳介の壊死が生じた報告は聞いたことがありませんし、日本耳鼻咽喉科学会にも、そのような報告は上がってきておりません。海外の文献では、アドレナリン含有の局所麻酔薬の耳鼻科手術での使用で、壊死の発生はないというエビデンスもございます。
以上により、添付文書の禁忌事項と実臨床での使用の重要性や使用頻度との間に乖離があること、医療安全が最重視される今日において、禁忌事項のまま使用するのは医事紛争のトラブルの一因になる可能性があること、また、もし本剤が耳鼻科手術に使えないとしますと、術中の出血予防のための代用薬としてボスミン注1mgを10万倍に希釈して使用することになりますが、希釈間違いの危険性があり、また、既に事例報告などもありますことから、これらのことを踏まえ、本学会として本剤の耳の部位への浸潤麻酔・伝達麻酔の使用禁忌項目の解除を強く要望する次第です。
○五十嵐安全対策調査会長 どうもありがとうございました。続きまして、亀山参考人から御意見をお願いいたします。亀山参考人、聞こえますか。
○亀山参考人 ミュートを解除しました。説明させて頂きます。10万倍希釈のエピレナミン含有1%リドカイン注射剤を用いることは、エピレナミンの持つ血管収縮作用での血流障害、組織壊死が懸念され、禁忌とされてきました一方で、手の外科領域では細かい組織を扱う必要上、術野を無血野に確保するために、患部に駆血帯を巻いて手術を行っております。症例によっては、駆血部での神経麻痺の遺残という問題を生じることがあります。幾つかの施設では、駆血をせずに麻酔の量や濃度、投与部位を限定し、エピレナミン含有リドカインを用いて手術をしていますが、指麻酔を目的とした投与が禁忌とされている現状で、治療後に不具合を生じれば、その結果責任を問われかねません。
しかし、参考文献2でお示ししていますとおり、10万倍希釈のエピレナミン含有リドカインを使用した3,110例の大規模多施設前向き研究では、壊死例の発生がなかったことが示されています。この研究で注目すべきは、投与部位や投与量を統一していないことと、同一指の複数箇所に投与した例があること、それから指神経の近傍に浸潤麻酔を行ったという例が大半であったということで、これは私どもが提示している条件である固有指部への投与は指基部の正中で、3ccに限定というものよりも甘い基準であったにもかかわらず、壊死例の発生がなかったということになります。また、壊死の危険がある場合には、血管拡張剤であるフェントラミンを投与するように定められていましたが、これを投与した例はなかったとされています。
また、アメリカ皮膚科学会のガイドラインでは、大半が局所浸潤麻酔として我々の基準以上の量が投与されていますが、これは推奨度Aで問題がなかったとされています。
それでは、過去に禁忌とされてきた原因ですが、1952年前の壊死例の報告が根拠となっているようです。これらはエピレナミン含有として用いた麻酔剤が、今ではめったに使用されないプロカインやコカインであったことやエピレナミンが不用意に高濃度で投与されたことが指摘されています。参考文献5でお示ししておりますが、健常時にエピレナミンの投与をした場合の血流低下の効果は60~90分は継続するとされています。これは我々が腋窩部に駆血を行って手術を行う時間とほぼ同様で、60~90分の血流が低下する状態は、現行の治療でも許容されております。
一方、1950年以降でも指壊死例の報告は渉猟した限り、海外ですが5例認めております。これらは背景にある血行障害や投与部位、投与量が過剰で壊死を起こしたものと考えられております。
以上をまとめますと、10万倍希釈のエピレナミン含有キシロカインを用いた手術は、血行障害の疑われるケースを厳格に除外して、投与量や投与部位を限定して行う限り、ほとんど安全であると考えております。以上です。
○五十嵐安全対策調査会長 どうもありがとうございました。続きまして、神崎参考人から御意見を頂きたいと思います。
○神崎参考人 我々の足の外科学会からの要望も、基本的には手外科学会と同様となっております。局所麻酔や伝達麻酔に使用するキシロカイン製剤にアドレナリンを含有することによって、沈痛効果の増強、効果時間の延長が可能です。そして、結果的には麻酔薬の使用量を減らすことが可能となり、医療費の削減に寄与できるのではないかと考えております。
また、麻酔薬の使用量が減らせることにより、麻酔中毒などのものが高齢者、小さい患者に使用する際のリスクが軽減することが期待できると思います。
我々の学会からは、基本的には足趾の挫創や軽度の屈趾症や、いわゆる陥入爪という巻爪など、そういった外来で簡単にできるような処置などに、このアドレナリン含有のキシロカイン製剤を使用したいと考えております。
以上のようなことから、本学会は足趾へのアドレナリン含有キシロカイン製剤の投与の可能となるように要望いたします。
○五十嵐安全対策調査会長 どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方は本件につきまして、何か御意見、御質問等はありますでしょうか。
○柿崎委員 今回、耳鼻科、整形外科領域で、添付文書が禁忌から慎重投与に変更の審議をしているわけですが、泌尿器科領域でも使われることがあるようですが、泌尿器科からは特に要望はなかった、あるいは余り改訂する必要性がないという理解でよろしいのでしょうか。
○事務局 小児の尿道下裂手術等は全身麻酔下で行うことが大半ということで、アドレナリン含有の局所麻酔が必要な長時間の手術はないということですとか、包茎手術等では、血流障害を避けるためにアドレナリン含有製剤を使用しないという御意見があり、学会から陰茎に係る禁忌は特に解除が要望されている状況ではありません。
○柿崎委員 分かりました。
○五十嵐安全対策調査会長 そのほかはいかがでしょうか。
○望月委員 今回、禁忌から慎重投与に変わるということで、禁忌を外すことについては、今の各先生方からの御説明で理解をしました。ただ、添付文書の様式が昨年から除々に変更されるという中で、慎重投与という項目がなくなる形になっていくのですが、今回、慎重投与に変更していくとした場合に、次の段階の新しい様式の添付文書では、どこにどのような形で書き込まれるかについて、事務局に御説明いただければと思います。
○事務局 こちらに関しては、「特定の背景を有する患者に関する注意」の項に、記載されることになると思います。小児に関しても「特定の背景を有する患者に関する注意」に「小児等」の項がございますので、そちらに記載されることになると思います。
○望月委員 特定の背景を有する患者の所の記載というのは、何々麻酔を施行される患者みたいな形で書かれるのでしょうか。
○事務局 そのように、効能を限定した形で注意喚起することになると思います。
○望月委員 分かりました。ありがとうございます。
○五十嵐安全対策調査会長 そのほかはいかがでしょうか。特にございませんか。それでは、議決を取りたいと思います。リドカイン塩酸塩・アドレナリン注射剤及びアドレナリン注射剤の添付文書については、事務局の提案どおり、使用上の注意を改訂するという方向で変更したいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
特に御異議がないようですので、そのようにしたいと思います。では、この議題に関する今後の進め方について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 御議論いただき、ありがとうございました。ただいまの議決を踏まえまして、リドカイン塩酸塩・アドレナリン注射剤及びアドレナリン注射剤の製造販売業者に対して、使用上の注意を改訂するよう指示をいたします。また、本調査会での議論につきましては、安全対策部会に報告いたします。
○五十嵐安全対策調査会長 ここまでのところで、何か委員の先生方から御意見、御質問はございますでしょうか。
また、本日御出席いただきました参考人の先生方におかれましては、貴重な御意見を頂きまして、誠にありがとうございました。これ以降の議題につきましては先生方に御意見を頂く予定はございませんので、御退席いただいて差し支えございません。今日はどうもありがとうございました。
それでは、議題2の報告事項に入りたいと思います。抗インフルエンザウイルス薬の安全性について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 議題2について御説明いたします。抗インフルエンザウイルス薬と異常行動の関係については、一昨年の調査会において一定の結論が得られ、昨年度の調査会において、今後は特段の必要がなければこの委員会では報告しないということで御了承いただきました。しかしながら、抗インフルエンザウイルス薬の副作用発現状況に関して、重篤副作用報告症例数や死亡症例数が昨年度は増加していたことから、何らかの形で引き続き報告をしていただきたいとの御意見を頂戴いたしました。また、その際には、併せて乳糖含有製剤におけるアナフィラキシーの発生状況についても報告いただきたい旨の御意見を頂いておりました。これらの御意見を踏まえて2019/2020シーズンの副作用発現状況を御報告いたします。
資料2-1を御覧ください。2010/2011シーズン以降、安全対策調査会に報告されているシーズンごとの重篤副作用報告症例数と死亡症例数の推移を示したものです。2019/2020シーズンについて、重篤副作用症例数と死亡症例数は前シーズンより減少しており、推定処方患者数に対する報告割合も2018/2019シーズンより低くなっております。なお、2018/2019シーズンで抗インフルエンザウイルス薬全体の重篤副作用報告症例数と死亡症例数が多かったことについては、その大半がゾフルーザでの報告であり、ゾフルーザで報告が多かった理由は明らかではありませんが、新薬ということで副作用報告が多数あげられた可能性が考えられます。
次に、資料2-2は、乳糖を賦形剤として含有する抗インフルエンザウイルス薬のアナフィラキシーが疑われる症例の報告状況を示したものです。抗インフルエンザウイルス薬のうち乳糖が含まれるのは、オセルタミビルドライシロップ、リレンザ、イナビル吸入粉末剤、ゾフルーザ錠です。これらの製剤の副作用報告のうち、症状名がアナフィラキシー反応、アナフィラキシーショック、アナフィラキシー様反応、アナフィラキシー様ショックとして報告された症例を、アナフィラキシーが疑われる症例として集計いたしました。また、これらの症例を専門家に御評価いただいた上で、専門家の評価を踏まえてアナフィラキシーと考えられる症例の数も示しています。こちらについても報告症例数は減少しております。
また、参考資料2-1として、令和2年度日本医療研究開発機構委託事業におけるインフルエンザ様疾患罹患時の異常行動に係る全国的な動向に関する研究班の2019/2020シーズンの速報結果をお示ししております。なお、当該研究班代表の岡部先生からは、2019/2020シーズンの異常行動についても例年と同様の傾向であった旨、及び研究班による精査中のため今回結果はお示しできておりませんが、異常行動に加え出血に関しても調査している旨伺っています。
抗インフルエンザウイルス薬に限らず、医薬品については重篤副作用報告の数だけでなく、個々の報告症例の内容、既知の副作用なのか未知の副作用なのか、因果関係の強さ、諸外国における注意喚起情報等を踏まえ総合的に判断し、安全対策上の措置の必要性を随時検討しております。
アナフィラキシーを含め、抗インフルエンザウイルス薬の副作用についても、そうした枠組みの中で必要な評価・検討がなされており、現時点で抗インフルエンザウイルス薬に限った特別な懸念事項は認められておりません。以上のことから、今後、特段の懸念事項がある場合を除き、本調査会において抗インフルエンザウイルス薬についてのみ個別に重篤副作用報告症例数や死亡症例数について報告することはせず、他の医薬品と同様、安全対策上の措置を講じたものについては、医薬品安全対策部会に報告することにしたいと考えております。御報告は以上です。
○五十嵐安全対策調査会長 それでは、ただいまの御報告について何か御意見、御質問はございますか。
○舟越委員 確認です。
○五十嵐安全対策調査会長 どうぞ。
○舟越委員 資料2-2なのですが、乳糖を賦形剤として含有する製剤のアナフィラキシーが疑われ、専門家の評価でゾフルーザとイナビルの3例ずつが疑われる症例として記録がありますけれども、賦形剤の乳糖ということよりは、主成分の可能性もあるということでいいですよね。
○事務局 事務局よりお答えいたします。そこについては、主成分によるのか賦形剤によるものかどちらなのかというのは分かりませんので、御指摘のように主成分による可能性もあるのではないかと考えております。
○舟越委員 ありがとうございます。
○五十嵐安全対策調査会長 ほかにいかがでしょうか。特にございませんね。ありがとうございます。それでは、この報告はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
続いて事務局から御報告がありますので、御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局から、先ほど冒頭にメールでお送りしたと御説明させていただいた当日配布資料について御説明させていただきます。小林化工(株)のイトラコナゾール回収事例についてということで、当日配布資料と右肩に書いてある資料をお配りさせていただきました。まず1番、端緒としてですが、12月1日以降、岐阜、大阪、佐賀の薬局より小林化工株式会社に対し、同社が製造販売する抗真菌剤服用後、ふらつき、めまい等の副作用情報が複数寄せられたところです。同社において製造記録を確認したところ、当該抗真菌剤に睡眠誘導剤の混入が発覚いたしました。非常に大きな事例ですので、12月4日、同社にすぐ報告いただき、同日夕方に該当品1ロットに対してクラスⅠという一番高いレベルでの自主回収を発表いたしました。併せて同社は同時刻、福井県庁において記者会見を実施し、注意喚起及び混ざった当該ロットについて使用していただかないように呼び掛けをしたところです。
2番、回収概要ですが、詳細は別添に添付文書を付けさせていただきましたけれども、同社のイトラコナゾール錠50「MEEK」というもののうち、回収対象ロットがここに記載のある1ロット、100錠包装で929箱がクラスⅠ回収の対象となっているものです。
下に行って3番、健康被害等の概要ですが、同錠に対して睡眠誘導剤の成分であるリルマザホン塩酸塩水和物が混入して、混入量が1錠当たり5mgということです。混入した影響によると考えられる患者の健康被害事例が今まで、昨日11時時点ですが84症例、企業側に来ていると御報告いただいております。中身としてはそこの下にありますように、ふらつき、めまい、意識消失等が生じているほか、これに伴う自動車事故等についても報告があるという状況になっています。
次ページをお願いいたします。4番、対応状況等ですが、12月5日に、同社は販売会社等を通じて該当ロットが納入された全ての医療機関・薬局に対して情報提供をするとともに、該当ロットを交付された全ての患者さんに連絡を依頼し、併せて、医療機関と患者に対する案内等を同社ホームページに記載したということです。これについては先ほど御説明いたしましたが、意図しない形で眠気が強いという症状が出る可能性が高いということですので、特に自動車の運転等を中止いただいて、健康被害の発生状況についても併せて御案内するなど、強い注意喚起等を行っていただいたところです。同日、国から医療機関に対してメディナビの仕組みを使って情報発信をさせていただいたところです。さらに、翌12月6日においては、国から同社に対して徹底した情報提供及び患者連絡について再注意するとともに、患者の情報提供の状況報告をするよう指示しているところです。
下へ行って12月7日、今週頭ですが、クラスⅠとした1ロット以外の全てのイトラコナゾール製剤、つまり、50のクラスⅠ回収以外の全ロット及び100と200についても、こちらは混入は認められませんでしたけれども、承認書にない製造行程を実施していたということが判明したと企業から報告があり、クラスⅡの回収をしていただいているところです。翌日12月8日、情報提供の一環として同社が全国紙を含めて38紙の新聞に社告を掲載して、改めて該当ロットの服用を中止するとともに、患者向けFAQをホームページに掲載する等、丁寧な情報提供に努めていただいたところです。
なお、資料には記載しておりませんが、12月9日、昨日、販売業者に当たるMeiji Seikaファルマから患者様に対して全て情報提供が完了し、使用を中止いただくということの事実関係が取れたということで、これ以上の被害は広がらないだろうと期待しているところです。本件一連の対応については、併せて日本薬剤師会からもファックス等で会員の方々を含め広く情報提供いただいて、患者様が誤って使う被害が拡大しないことに協力いただきました。また、冒頭に書かせていただいていますが、同案件の発端が岐阜、大阪、佐賀の薬局から情報提供いただいたということで、非常に難しい気付きにくい案件だと思いますが、このような形で怪しい案件について御報告いただいたことで早めにキャッチすることができ、対応できたものと理解しております。報告内容について事務局からの説明は以上です。
○五十嵐安全対策調査会長 それでは、何か御質問等はございますか。
○望月委員 望月ですが、御質問よろしいでしょうか。
○五十嵐安全対策調査会長 どうぞ。
○望月委員 実際にお使いになられた患者さんたちには通知がされたということですが、実際に交通事故が起こってしまっていたり、健康被害で重いものとかが起こっている可能性があると今の御報告で聞いたのですけれども、そういう重いものとか交通事故を起こしたことは、会社として何か補償をするとか、そういうことは検討されているのでしょうか。
○事務局 事務局からお答えいたします。各事案に対する補償については、会社のほうで適切に個別の患者様との間で今後進めていくと聞いておりますので、被害を被った方々においては、適切に企業のほうで対応いただけるものと理解しております。以上です。
○望月委員 ありがとうございます。
○五十嵐安全対策調査会長 そのほか、いかがでしょうか。
○伊藤委員 伊藤ですが、よろしいでしょうか。
○五十嵐安全対策調査会長 どうぞ。
○伊藤委員 混入したということなのですが、イトラコナゾールも入っていたのでしょうか。それは分からないですか。何か原因とか対策とか、その辺りについては、今後起きないための対策のようなことは何か検討されているのでしょうか。
○事務局 事務局からお答えさせていただきます。企業側からの説明によると、イトラコナゾールも入っていたけれども、余分な形でリルマザホンも間違ってプラスで混入してしまったという状況を聞いております。発生原因及びそれの改善については非常に重要なことで、私どもも指導していきたいと思うのですが、まずは流通してしまった患者さんに対するフォローということで最速で対応させていただいて、今後、企業に対して原因究明等をさせていただくとともに、改善なり指導なりを企業と国と県の間で議論をして、進めていきたいと思います。ありがとうございます。
○五十嵐安全対策調査会長 よろしいですか。
○伊藤委員 今も。
○佐藤委員 すみません。あ、ごめんなさい、どうぞ。
○伊藤委員 ごめんなさい。現時点でも製造されているわけですよね。原因を究明するのも早いほうがいいのかなとちょっと思いまして、作業記録を確認して分かったということですので、理由は分かっているのかなと思うのですが。
○事務局 まず、1つ補足させていただきたいのですが、当該会社において当該イトラコナゾールの品目については、全部回収になり出荷も止まっているので、新しいものを製造して出荷されているということはない状況というのが1つです。原因究明というのは、混ざってしまった原因というのは職員が間違えて混入してしまったということですが、単なるヒューマンエラーなのか、組織的な問題で何かしらそういうのを見逃してしまうような体制になっていたのではないかという問題があろうかなと思います。そこの本質的な原因が何かというのを検証した上で、適切に対応と改善を今後、早急にさせていただきたいと思います。以上です。
○伊藤委員 ありがとうございます。
○五十嵐安全対策調査会長 佐藤先生ですか。
○佐藤委員 はい。
○五十嵐安全対策調査会長 どうぞ。
○佐藤委員 リルマザホンとイトラコナゾールは、小林化工株式会社が両方作っているという、要するにヒューマンエラーか何かは分からないのですが、同じ場所で作っていたための混入ということでいいのですよね。今ちょっと見たのですが、両方とも同じ会社で作っていますよね。
○事務局 後ろに添付文書を付けさせていただいていますが、御指摘いただいたとおり同じ会社で作っており、同じ工場で作っていたところ、違う医薬品の原薬をこちらに持ってきて入れてしまったという状況のようです。以上です。
○佐藤委員 なるほど、ありました。ごめんなさい、後ろに付いていたのですね。これは両方、この「MEEK」というのはどういう意味ですか。
○事務局 実際どういった理由でこの名前を付けているかは分かりませんが、一般に屋号を付ける形になっており、小林化工さんでは「MEEK」という形でお付けになっているようです。
○佐藤委員 この会社の薬には「MEEK」と書いてあるのですね。イトラコナゾールにも書いてあって、製造ラインとかで何か共通の過程があるのかなとちょっと思ったものですから、何か意味があって書いているのかなと思ったので、ちょっと気になっただけなのですが。
○事務局 当該品目は後発医薬品でして、後発医薬品の商品名のルールとして成分名プラス屋号という形でさせていただいていて、小林化工さんはこの屋号で統一していると。
○佐藤委員 これがここの会社の屋号として、ここの会社の薬にはこの表記が付くということですね。
○事務局 然様です。
○佐藤委員 分かりました。ありがとうございます。
○事務局) ほかにどなたかございますか。
○望月委員 望月です。もう一点よろしいでしょうか。
○事務局 お願いいたします。
○望月委員 イトラコナゾールを使っていらっしゃる患者さんたちというのは結構、長期で使われる方が多いと思うのですが、今回混ざってしまったロットを使わないということは、それはそれで早急な対処でいいのですけれども、その後どのようになるのでしょうか。きちんとしたイトラコナゾール製剤が何らかの形で医療機関で無償で提供されるとか、そういった辺りのことはどう対処されているのでしょうか。
○事務局 先ほど言いましたように、当該品目は後発医薬品で、同じイトラコナゾール錠については科研製薬や日医工等、別会社から販売されているものです。なので、これを使っていらっしゃった方は止めていただいて、ほかの会社のものに無償で交換させていただいていると理解しておりますので、治療自体については別の薬に切り替えて、適切に継続いただけるという状況です。以上です。
○望月委員 使った期間によるとは思うのですが、ある意味で治療効果が出なかったという形になってしまっていた可能性はないのでしょうか。混入のされ方が単なる賦形剤として間違えてリルマザホンを入れたのか、そうではなくて、正規の主成分と取り違えて入れたのかによっては主成分の含有量がその分減ってしまうとか、いろいろ起こると思うのです。そうすると、効果が出ないという被害も出ているのではないかと思ったり、いろいろな質疑を聞いていて感じたのですが、その辺りはいかがなのでしょうか。
○事務局 御指摘のとおり、イトラコナゾールの当該ロットに本当の有効成分がどの程度入っていたのかという話については、今後、企業等から解明して情報提供がされるものと理解しております。一方で、もしかしたら効いていない被害がという懸念はごもっともでして、当該回収の御案内に合わせて、病気に対して薬が効いていないかもしれないけれども、どうしたらという話については、医療機関に御相談いただいてということで御案内をさせていただいているところですので、先ほどの新しい薬の投与と併せて医療機関で御相談いただいて、適切な治療効果が得られるような今後の対応というのは、個別の患者さんごとに御相談していただけるものかなと理解しております。以上です。
○望月委員 ありがとうございました。
○柿崎委員 柿崎です。
○五十嵐安全対策調査会長 どうぞ。
○柿崎委員 薬局からの報告から気付かれたようですが、医療機関とか主治医側からの報告というのは1つも上がってこなかったのでしょうか。
○事務局 ちょっとお待ちください。事務局です。発端で薬局からという御案内をさせていただきましたが、その後、全部で84件ということで各機関からいただいており、その中には病院側からも御連絡いただいておりますので、発端は薬局でありつつ、問題の報告というのは広く病院、薬局両方から頂いているという状況です。以上です。
○柿崎委員 ありがとうございます。
○五十嵐安全対策調査会長 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○舟越委員 よろしいでしょうか。
○五十嵐安全対策調査会長 どうぞ。
○舟越委員 地域の薬局と地域から相談を受けているものがありまして、今回の事例について、保険薬局側で副作用報告等があって早期に発見と対応できたことはいいと思うのですが、こちらのロットを使った患者さんが、患者さんは自費で病院に掛かって新たに処方箋を書いてもらって、自費対応で行ってあとは企業で補償してもらってくださいという保険薬局の対応もあるらしいのです。こちらはそういうルールなのでしょうか。小林化工のプレスリリースの資料を全部見ますと、代替処方が必要になる際は、薬代の補償等が全部終わった後に企業で補償するような形なのでしょうか。ちょっとここら辺が先ほどの車の運転等とは別で、薬の代替処方のときのルールというのがもし国のほうであるようでしたら、ちょっと教えていただきたいのですが。
○事務局 事務局です。今、御質問いただいたお薬そのものについての補償ということで、代替処方のような対応はこちらとしてルールはありません。基本的には先ほども御説明させていただきましたが、代わりのお薬に交換していただいてということで、新しいお薬を手に入れて使っていただくというのが、基本的な対応の形になろうかなと思います。以上です。
○舟越委員 なので、保険薬局側でほかの薬にそのまま切り替えてあげるということなのですね。
○事務局 御指摘のとおり、そういうやり方でやっていただくということになっております。
○舟越委員 そうですか。分かりました。それから、保険薬局によっては、会社の方針として代替の交換はできないと病院、医療機関にファックスが届いている所もあるそうです。なので、ちょっとそこら辺のことを当局としても情報を集めていただきたいと思います。
○事務局 ありがとうございます。そのような対応をされている所があるようでしたら、ちょっとこちらでも把握して、適切な対応になるよう企業から御連絡をさせていただきたいと思います。もし、具体的にこういう所でやっていただいているというようなお話、情報をお持ちでしたら、また後で別途御連絡いただければなと思います。ありがとうございます。
○舟越委員 後ほど送らせていただきます。
○事務局 ほかにございますか。
○五十嵐安全対策調査会長 よろしいですか。なかなかめったに起きない大きな事件ですので、いろいろな所から注目はされていると思いますので、今後の適切な対応をお願いしたいと思います。それでは、この議題は終了したいと思いますが、よろしいですか。ありがとうございます。
では、事務局からほかに報告事項等はございますか。
○事務局 事務局です。本日の報告事項は以上です。本日は、冒頭、事務局の声が非常に聞き取りづらいということで御迷惑をお掛けしたこと、申し訳ございませんでした。回線の都合だったようですが、今後このようなことがないよう留意してまいりたいと思っております。本会議の次回の開催ですが、また改めて御連絡申し上げますので、よろしくお願いしたいと思います。事務局からは以上です。
○五十嵐安全対策調査会長 それでは、本日の調査会はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。