第50回厚生科学審議会感染症部会 議事録

健康局 結核感染症課

日時

令和2年12月17日(木)18:00~20:00

場所

厚生労働省 専用第21会議室(17階)

議題

  1. (1)新型コロナウイルス感染症対策における今後の検討の方向性について(案)
  2. (2)新型コロナウイルス感染症における情報の公表に係る基本方針について(案)
  3. (3)その他の感染症対策について(風疹・訪日観光客の入院医療費)(案)

議事

議事内容
〇加藤エイズ対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第50回「感染症部会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、御多忙にもかかわらず御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の議事は公開でございますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
また、傍聴の皆様方におかれましては「傍聴に関しての留意事項」の遵守をよろしくお願いいたします。
なお、会議冒頭の頭撮りを除きまして、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので、御理解・御協力をよろしくお願いいたします。
また、本日は前回に引き続きまして、新型コロナウイルス感染症の状況を勘案いたしまして、ウェブ会議での開催となっております。ウェブ会議の開催に当たりまして、会議の進め方について御連絡をさせていただきます。
御発言される場合につきましては、まず、お名前をおっしゃっていただきまして、座長が御指名されますので、その後から御発言をお願いいたします。ウェブ会議でございますので、タイムラグが生じる場合もございますので、御了解いただければと思います。
また、会議の途中で長時間音声が聞こえないなど、トラブルがございましたら、あらかじめお知らせしております電話番号までお電話いただければと思います。
続きまして、今回から新しく感染症部会に加われた委員の御紹介をいたします。東京都福祉保健局田中敦子技監でございます。
○田中委員 田中でございます。よろしくお願いいたします。
○加藤エイズ対策推進室長 よろしくお願いいたします。
次に、委員の出席状況につきまして、御報告いたします。御出席の委員におかれましては、通信の確認も併せまして、こちらからお名前を申し上げますので、一言お返事をいただければと思います。
それでは、名簿順に、まずは今村委員。
続きまして、岩本委員。
大曲委員。
釜萢委員は、いらっしゃいますでしょうか。釜萢委員は今は御不在ですね。
菊地委員。
越田委員。
白井委員。
調委員。
菅原委員。
田中委員。
谷口委員。
戸部委員。
中野委員。
中山委員。
森田委員。
山田委員。
脇田委員。
なお、味澤委員と賀来委員からは御欠席の連絡を頂戴しております。
釜萢委員からは御欠席との御連絡は頂戴しておりませんので、また事務局からも連絡を取りながら随時御参加いただけると思っております。
また、今回はオブザーバーといたしまして、全国知事会より鳥取県健康医療局健康政策課感染症・新型インフルエンザ対策室室長の荒金様及び全国衛生部長会より中澤会長(神奈川県健康医療局医務監)の御参加をいただいております。各論点につきまして、オブザーバーのお二方からも御意見を賜れればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
現時点で委員19名のうち16名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会の規定によりまして、本日の会議は成立したことを御報告いたします。
それでは、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとなりますので、御協力をよろしくお願いいたします。
これ以降、写真撮影、ビデオ撮影、録音などはできませんので、御了承ください。
(報道関係者退室)
○加藤エイズ対策推進室長 それでは、議事に入る前に、資料の確認をさせていただきます。
お手元にある方は、お手元の資料としては議事次第、委員名簿、座席表、資料が資料1-1から資料1-4、そして資料2、資料3となっております。不備がございましたら、事務局までお申し出ください。
これからは進行を脇田座長にお願いしたいと思います。
○脇田座長 それでは、改めましてよろしくお願いいたします。
早速議事に入っていきたいと思います。今日は1から3までございますので、順番に進めていきたいと思います。
議題1から議題3まで、事務局からまとめて説明をしてください。よろしくお願いします。
○加藤エイズ対策推進室長 御挨拶が申し遅れました。結核感染症課の加藤でございます。それでは、資料1、資料2、資料3をまとめて説明させていただきます。
資料1を御覧いただければと思います。「新型コロナウイルス感染症対策における今後の検討の視点について」でございます。
おめくりいただきまして、1枚目でございますけれども、先般、臨時国会におきまして、新型コロナウイルス感染症の対応をするための緊急の措置が必要な事項につきまして、予防接種法・検疫法の改正法案を提出いたしまして、12月2日に成立、12月9日に公布・施行となったところでございます。
それ以外のコロナ感染症対策につきましても、以下の事項につきましては確実な取組を推進するための方策を検討することが必要ということで、4つの論点を挙げさせていただいております。これらにつきましては私権制約を伴うものもございますので、慎重な議論が必要ということで、幅広い関係者の皆様方から御意見を頂戴した上で、制度の改正も見据えて検討を進めたいと考えているところでございます。
次のページで論点を4つ挙げさせていただいております。
1つ目が「新型コロナウイルス感染症の位置づけ」です。感染症法上にどのように位置づけるのか。
続きまして「国や地方自治体間の情報連携」をどのように進めていくべきか。
3番目が「感染症の調査研究の推進」。
4つ目が、対策の実効性を確保するための措置などというところで、今後、この内容につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
次のページは表題がついておりますので、そこをさらにおめくりいただきまして、ページ番号としては4ページになるかと思います。まず、新型コロナウイルス感染症の感染症法上と検疫法の位置づけにつきまして、御説明させていただきたいと思います。
新型コロナウイルス感染症でございますけれども、現在、感染症法上の指定感染症及び検疫法上も政令で指定する感染症として対策を取っているところでございます。指定感染症の指定は原則1年間で、延長により最長2年までとなっておりまして、指定感染症としての指定を延長するかどうか、感染症法上の位置づけをどうするのか、また、検疫法の政令指定の指定を延長するかどうかといったことを検討する必要がございます。
この検討に当たりましては、新型コロナウイルス感染症の感染力とか、罹患した場合の重篤性を鑑みまして、現在行っている措置と感染症法、検疫法における一類から五類での感染症の取扱いとか、新型インフルエンザ等感染症といったそれぞれの類型の中で取り得る措置を比較し、また、今般もいろいろと柔軟性を持って対応を行ってきたところでございますので、その柔軟な対応を可能とする方策といったところを検討する必要があるかと思っております。
4ページの下のほうには、現在までに分かっているコロナウイルス感染症の特徴について記載しておりますが、感染力が高い、無症状の病原体保有者からも感染リスクがあるということ、一定の死亡の方が発生していること、高齢者の方、基礎疾患を有する方での重症化リスクが高いことなどを記載しております。
5ページ目でございます。そういった状況を踏まえて、現在では重症化リスクのある方とか、現在重症である方を中心に入院措置を可能にしております。
もう一つ、ポイントといたしましては、感染症法上及び検疫法には新型インフルエンザ等感染症がございます。こちらは、一部の措置につきましては、政令での準用可否を決定できるのですけれども、本来の新型インフルエンザ等感染症は、基本的にはインフルエンザのみが射程となっておりまして、このままでは新型コロナウイルス感染症は対応していないというところになっております。
そのほかの類型に関しましては、後ほど一覧表が出てきますけれども、必ずしも現在の対応に合致していない部分があるというところとか、柔軟性を持った対応がなかなか難しいのではないかと考えております。
もう一つ、水際の対策といたしまして、検疫法上、隔離・停留等できる権限も引き続き持つ必要があるのではないかと思っております。
その下に青枠で「検討の視点」と書かれてございますけれども、ここで事務局としての御提案を2点つくっております。
1つ目が、感染症法と検疫法に基づく政令の期限に関しまして、それぞれ1月と2月で切れてしまいますので、引き続き柔軟性を持って対応するために、これを1年間延長することとしてはどうかと考えております。この点につきましては、それぞれの政令の期限もあるところでございますので、本日御意見をおまとめいただければありがたいと思っております。
もう一つのポツでございますけれども、指定感染症の指定が最長2年間でございますので、その後の対応について、引き続き柔軟な対策を継続できる位置づけを念頭に置きつつ、検討を進めていけばどうかと考えております。
6ページ目が、先ほどの措置の一覧で、7ページ目が検疫法の措置の一覧の参考資料でございます。
8ページ目からが、次の点といたしまして、国や地方自治体との情報連携でございます。
9枚目でございますけれども、現在の情報連携といいますか、対策の現状につきましては、そもそも感染症対策が一定程度の広域性が必要であるということから、都道府県を主体としていただいていますが、保健所を設置していただいている市とか特別区にあっては、保健所設置市とか特別区が対応していただいているところでございます。都道府県、保健所設置市・特別区での情報の連携とか、保健所を設置していない市町村と都道府県との連携の在り方、また、都道府県をまたいだ場合での情報連携といった自治体間での情報連携を円滑化していく必要があるのではないかという点と、もう一つはデジタル化を進めていくべきではないかという御指摘をいただいているところでございます。
もう一方で、感染症対策は、HER-SYSといった取組を厚生労働省でも進めているところでございまして、これを改善するというところが目下の課題ではないかといった御指摘もございます。
それを踏まえました「検討の視点」といたしましては、まずは発生状況の届出が保健所設置市や区から国に来るというだけではなくて、都道府県にも共有されるような担保を検討する方向ではどうかということ。
もう一つは、積極的疫学調査の結果を自治体間でも共有できるような仕組みを検討してはどうかという点。
そして、情報集約の標準化とデジタル化を進めていく。ただ、これは事務軽減にならないと、そもそものデジタル化の意義が大きく失われることでございますので、事務作業の軽減になるような法令上の枠組みを念頭に検討するべきではないかということでございます。
2つ目の論点は以上でございまして、3つ目でございます。
3つ目は調査研究の推進でございまして、11ページ目になりますけれども、これまで様々な調査研究を行っておりまして、一つは病原体サーベイランスによる国立感染症研究所でのゲノム解析でのモニタリングとか、国立国際医療研究センターにおける患者レジストリ、患者さんの診療情報を入力していただいて、その内容を解析するといったところを行っているところでございます。
ただ、こういったところの課題といたしまして、新しい感染症の発生に伴って、今後、新しい感染症が発生した場合であっても、速やかにそういった取組を進める仕組みとか、それをさらに薬とか治療法、診断法といったものの開発スピードの加速にも応用していくといった基盤が求められているものと考えております。
そういったところで、対応方針といたしましては、臨床情報、また検体といったものを迅速に収集いたしまして、現在、厚生労働省で一元的に情報管理を行う基盤整備事業の準備を進めているところでございますので、こういったところの制度上の根拠を設けてはいかがかということでございます。
12ページ目に、現在、厚生労働省が進めている取組の概要がございますけれども、イメージ的には左側にありますように、それぞれの研究で蓄積されているデータとか検体を一元的なところに集めまして、集めたものを様々な人たちの中でシェアして、研究に生かしていただくといったものでございます。
以上が3番目の論点でございまして、引き続きまして4番目の対策の実効性担保のための措置などについてというところでございます。
14枚目をおめくりいただければと思いますけれども、現在、入院療養、宿泊療養、自宅療養といったところに関しまして、特に入院に関しては、もともと感染症法に入院勧告といったものがございます。他方、宿泊療養や自宅療養につきましては、そういった法律上の位置づけが明確にはなっていないというところもあります。
また、積極的疫学調査につきましても、聞き取りを各自治体のほうで行っていただいておりますが、これを拒否された場合とか、円滑な調査ができなかった事例があるといった御指摘もいただいているところでございます。
これに伴いまして、最後の「国や自治体の権限・役割分担」で、基本的には保健所設置自治体が対策を行っていただくわけでございますけれども、医療提供体制に関しては、基本的には都道府県が担っていただいているといったところで、そういった国・自治体それぞれの権限とか役割、指揮命令の部分が分かりづらいといいますか、調整が難航するケースがあるということも御指摘いただいているところでございますので「検討の視点」といたしましては、積極的疫学調査とか宿泊療養、自宅療養の実効性担保に関する方策を検討する。ただ、これは一定程度私権を制限しかねないものでございますので、もちろん個人等の権利も十分に配慮することが重要ではないかと考えております。
もう一方でございますけれども、国、都道府県、保健所設置市・特別区それぞれの権限や役割分担の整理は、情報共有の整理とも若干かぶる部分はあると思いますので、そういったところをしっかりと整理してはどうかというものでございます。
駆け足でございましたが、資料1は以上で終わります。
続きまして、資料2に移らせていただきます。情報公開に係る基本方針に関するものでございます。
これまで、厚生労働省では、今年の2月27日に発出いたしました「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針」に基づいて、各自治体のほうで患者さんの個人情報の保護及び公衆衛生上の感染対策との利点との比較考慮をいただいて、御対応いただいているものと考えております。また、7月28日にも追加的な事務連絡を出しております。
しかしながら、令和2年11月に新型コロナウイルス感染症の対策の分科会の偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループで、個人情報公開の在り方をもう少し検討する必要があるのではないかという御指摘をいただいておりまして、改めて国として、コロナ感染症に即した情報公表の考え方を示すことを行っていきたいと考えているところでございます。
その対応方針といたしまして、ここに3つ記載させていただいておりますけれども、まず、原則としてはこれまでお出ししております基本方針がございますので、それを基にした上で新型コロナウイルス感染症の特徴を踏まえて、特に留意するべき事項を追記するといった対応を取ってはいかがかと考えております。
続きまして、具体的な内容といたしましては、情報公開の主体となります自治体の在り方とそれ以外の自治体との連携を追記するというところ、あとは、具体的なケースの情報公開の在り方に関するQ&Aを作成するというところでございます。
あわせまして、個人情報の悪用、特定の方の誹謗中傷があった場合の在り方とか、そういった差別的な言動を防止するための周知・啓発の在り方なんかも追記してはどうかと考えております。
2ページ目で「本日ご議論いただきたい事項」を取りまとめておりますけれども、次のページに素案を設けてございますので、こういったものを踏まえまして、自治体が公表を求められる事項は何かというところ、また、そういったことを公表することによって、差別や偏見などにつながりかねないところについてどのように考えるのかといった御意見を頂戴したいと思っております。
特に先般のワーキンググループのほうでは、小さなコミュニティー、例えば事業所とか学校といった単位で感染者のことを報告する際に、年代や性別を公表すると、容易に個人に至りかねないという御指摘をいただいておりまして、自治体単位というよりは、どちらかというと、もう少し小さな事業所とか学校といった単位での情報公開に関して留意するべき点ということだと思っておりますけれども、そういうところの性別や年代の公表についてどう考えるかということも御意見を賜れればと思っております。
3ページ目がその素案で、素案自体は既にお出ししている基本方針の中にあるものをそのまま記載しておりますので、この中で付け加えるべきもの、また削除するべきもの、さらに留意するべき点があれば、御指摘をいただきたいと思っております。
4枚目も追記する事項のイメージということで、幾つか事例を出させていただいておりますので、こういったところに関しても御意見をいただければと思っております。
1つ目は、相互の連携で、例えば都道府県単位でまとめてやるべきではないかとか、それ以外の自治体の感染状況、要するに小さい単位で聞いていくと、感染者がいません、いません、言えません、言えませんとなったら、では、いませんと言わなかったところはいるのかなといった形で、いろいろなことが周辺の自治体との聞き込みで最終的に絞り込めてしまうということもありますので、そういったところにも留意するべきではないかということでございます。
2つ目は、ネットに関するものに関しては削除要求ができるということ、被害を受けた方は告発できるケースもあるということをお知らせするというやり方もあるのではないかということとか、そのほかの事例の提供を考えております。
もう一つのQ&Aに関しましては、こちらに10個ございますので、何か追記するべき点があるかどうかといった点で御意見をいただければと思っております。
5ページ目は参考資料でございます。
大分駆け足で恐縮なのですけれども、最後は資料3でございます。
資料1と資料2は特にコロナに特化したものでございましたけれども、資料3につきましては、コロナ以外のものになっております。特に前半は風疹対策で、後半は訪日観光客の入院医療費に関するものです。
おめくりいただきまして、1つ目が風疹でございます。
風疹の現状でございますけれども、2ページ目の右下のところにございますように、2019年までは年間2,300件あったものが、2020年、今年は100例ということで、大きく減少しております。
3ページ目が、感染状況が棒グラフになっているもので、恐らく感染対策を徹底していただいている点と、海外からの流入が極めて少ない状況にあるところもあって、報告数自体は大幅に減少しております。
4枚目が、都道府県別のもので、参考に御覧いただければと思いますが、基本的には都市部で多いというところでございます。
5ページ目は、性別、年齢階級別のグラフでございますが、基本的には男性が多く、特に40代に大きなピークがあるというところでございます。
この背景といたしまして、6ページ目でございますが、風疹の追加的対策が必要な方が、下にあります横長の表の「男性」と書いてあるところの赤く太く囲っているところの1979年4月1日生まれから1962年4月2日生まれまでの方につきまして、風疹の予防接種を接種される機会が一度もなかったというところでございまして、この世代の方につきましては、抗体の保有状況が80%弱とほかの年代に比べて低くなっております。こういった状況に対応するために、赤枠の方々を予防接種法に基づく定期接種の対象といたしまして、3年間、原則無料で定期接種を実施する。
とはいえ、8割の方は抗体をお持ちでおられますので、効率的な活用のために、まずは抗体検査を受けていただくというところで、抗体検査の無料実施、そして、こういったところの取組を進めるために、事業所健診での機会で抗体検査を受けていただけるようにすることとか、そのほかの体制整備を行ってきたというところがこれまでの状況でございます。
7ページ目と8ページ目は、昨年度、2019年度の追加的対策の実績でございまして、2019年度が大体124万件の抗体検査を行いまして、予防接種といたしましては27万件実施させていただきました。
9ページ目、10ページ目が、今年度、2020年度の状況でございますが、4月から10月までの半年間でございますけれども、実施件数といたしましては、昨年1年間分とおおむね同等の124万件。2019年が始まったのが遅かったというところもあると思うのですけれども、予防接種としては24万件の実績がございまして、前年よりも多い水準で来ているというところではございます。
11ページ目が実施状況なのですけれども、これよりも次のページを御覧いただいたほうが分かりやすいかもしれないです。12ページ目で、クーポンの送付状況と実施の見込みなどを記載しております。
クーポンですが、3年間に分けて実施しておりますので、それぞれ646万人、570万人、そしてまだ実施していない319万人にクーポンを配っていただいております。ただ、実施していない方々につきましても、市区町村の御判断で送付いただいているところもございます。
そして、実施の見込みといたしましては、先ほど初年度で120万件程度、今年度も現時点で120万人程度と申し上げましたが、抗体検査としてはもっと高い目標を掲げておりまして、今年度までに累計で700万人の抗体検査と、145万人の予防接種を見込みとして掲げていたところでございます。
13ページ目をおめくりいただければと思いますけれども、そういったところで、現状、なかなか目標に達していないところもございますので、引き続きましての対応といたしまして、まず、真ん中の「今後の実施方法」の(1)に記載しておりますとおり、クーポン券を送付した方に関して、未使用の方につきましては、再度受検を勧奨するとともに、今のクーポン券を来年度もまた使えるように期限を延長したいと考えております。基本的には年度で終了するクーポンになっているのですけれども、そこにつきまして、そのまま使えますということを周知するところになるかと思います。
また、追加の来年度分、2022年3月までに対象となっております約320万人の方々につきましては、クーポン券を配布するというところで、これもできるだけ早めに配布していただくところを進めたいと思っております。
大体の概略が、13ページ目の下に書いてある横棒のグラフでございます。右側のピンクの部分につきまして、319万人分を配布するというところになります。
もう一つ、14ページに記載しているところが、目標の達成についてでございます。
先ほどなかなか目標の人数に達していないところを御説明したところでございましたが、当初の目標は、今年はオリンピック・パラリンピックの開催が予定されていたところもありまして、2020年7月と2022年の3月という2つのポイントがあったところでございますが、そちらは初夏ぐらいに感染症部会のほうで一旦延期させていただきまして、現在、目標の1つ目といたしましては、来年度、2021年7月までに先ほど8割弱であった対象世代の抗体保有率を85%以上に引き上げるという点。もう一つが、来年度末、2022年3月までに抗体保有率を90%以上に引き上げるといった2つの目標を掲げていたところでございますが、新型コロナウイルスの感染拡大によりまして、健診が行われていないケースとか、外出がなかなか難しいケースといったところもございますので、これまでどおり、ただやってくださいと推進をし続けるのはなかなか難しいところがあるかと思っております。
もう一つ、そういった現状を踏まえまして、目標設定について再度対応案を考えたところが一番下の3つ目の箱でございまして、2021年夏頃をめどに改めて新型ウイルスの感染状況とか健診の実施状況、風疹対策の進捗状況等を勘案して、目標達成の目安の時期を見直すことを今回の部会で御議論いただきたいと思っております。ただ、実際に健康診断などが再開された場合はしっかり取り組んでいただけるように、引き続き多くの企業とか関係者の皆様方との関係性の構築には取り組んでまいりたいと考えております。
以上が来年度の風疹対策に関する内容で、この内容につきまして、本日、方向性について御議論いただいて、取りまとめができればと思っております。
15ページからが訪日観光客の感染症法上の公費負担医療に関する内容でございます。
16ページでございますけれども、現在、訪日観光客が新型コロナウイルス感染症の患者として入院した場合、入院にかかった費用は全額公費負担となっております。また、これにつきましては、追加的に通訳費用など特有の事情による費用もございます。こういったものにつきまして、何らかの対応をするべきではないかといった御意見があるところと、もう一つ、民間医療保険で対応できないのかというところにつきましては、民間医療保険は約款上、基本的には負担が発生した場合にその負担を保険で賄うものでございますので、実際に本人の負担が生じる必要がございます。この点、感染症法につきましては、規定として、本人に負担能力がある場合は、自治体側が負担を要しないという規定がございまして、そういったところの在り方について、本日は方向性を御議論いただきたいと考えております。
1つ目の方向性といたしましては、現状は、原則、民間医療保険に加入して入国していただいているところでございますので、そういった民間保険の加入を誓約した上で入国しているという状況におきましては、訪日観光客の皆様方には負担能力があるであろうということから、本人に自己負担を求めることが可能であることを技術的に助言してはいかがかというところでございます。併せて自治体から直接保険会社に請求を行えるキャッシュレスの仕組みがございまして、まだ導入自体が多いわけではないのですけれども、そういったものを奨励してはどうかというところでございます。
17枚目にそのイメージがございまして、自己負担でございますけれども、国内在住者につきまして、現状でも市町村民税の所得割の額の合計額に応じまして、自己負担を2万円求めていることが実態としてはございます。それに合わせたものがIIの案でございまして、もう一つのIは、それは関係なく、一旦全額自己負担で民間保険での資金確保をしていただいて、それを上回る場合につきまして、そこの部分を公的に負担するというのが案1でございます。
IIは先ほど申し上げたとおり、国内と同じで、2万円を超えた部分に関して、自己負担をするという案でございます。
もう一つ、参考といたしまして、通常の公的医療保険がある場合につきましては、まず公的医療保険を実施しているというのが現状であるというところも参考で御検討いただきたいと思っております。
ただ、18ページ目に記載しております、これを検討する上で留意するべき点も幾つかあると考えております。
1つは、医療機関が患者さんに徴収するということは、場合によっては徴収を逃すことも考え得るということとか、入院を拒むケースがあるのではないかというところもあります。あとは民間保険でコロナウイルス感染症が免責となっていることがあったり、自治体側でも事務負担が発生する可能性があることにも留意が必要だと考えております。
特に1点目の入院を拒むケースで、現状、外国人の中で、医療へのアクセスが妨げられていることによる感染拡大が話題になることもございます。そういった中で、感染予防の趣旨と反する事例にならないような留意は必ず必要ではないかと考えているところでございます。
19ページ目は参考の規定でございまして、飛ばさせていただきまして、20ページ目の現在の費用負担も参考でございます。21ページ目も費用負担の流れのイメージでございますので、割愛させていただきます。
長くなりましたが、説明は以上となります。
○脇田座長 説明ありがとうございました。
それでは、いろいろな議題がありますけれども、議題は3つで、それぞれ資料1から資料3ということなので、順番に議論をしていきたいと思います。
資料1に関しても、4つの論点があるということです。資料1の1番目が「新型コロナウイルス感染症の位置づけ」、2番目が「国や地方自治体間の情報連携」、3番目が「感染症の調査研究の推進」、4番目が「対策の実効性の確保のための措置等」ということです。
これはまとめて議論したいと思いますので、それでは、皆さんから御意見をいただきたいと思いますので、挙手していただければ。
まず、岩本先生の手が挙がっています。お願いします。
○岩本委員 今、30分ぐらい説明していただいたのですけれども、最初に申し上げたみたいに、音声が物すごく悪くて、聞いて理解するのに数倍努力が要るような感じがするので、説明する部屋の大きさとかマイクから見直していただく必要があるのではないかと思います。
1~4まで全部あるのですけれども、全部言うと質問がずっと終わらないと思いますけれども、どうしましょうか。
○脇田座長 先生、順番にいきましょう。
○岩本委員 1番の「新型コロナウイルス感染症の位置づけ」ですけれども、何回か部会で申し上げたとおりですが、隔離政策中心だった明治時代の伝染病予防法を感染症法に全面改正した時は、進歩した医療で伝染病引き取る、感染症としていい医療をやりましょうというのが骨子だったと思います。ところが、新型コロナではっきりしたのは、感染症法には医療ことがあまり記載されておらず、公衆衛生対策中心だということではないかと思っています。
公衆衛生から医療へのスムーズな橋渡しをお願いしたい、ということを感染症部会でも何度か申しあげてきたつもりです。法律の中に、こういう国を危機に陥れるような急性呼吸器感染症に対して、どのようなマインドで公衆衛生対策を行い、スムーズに医療と繋ぐという大きな視点が必要だと思います。新型コロナウイルス感染症を五分類のどこに位置づけるのかとか、新型インフルエンザ等感染症にも書き込んで対応しますというだけでは付け焼き刃に過ぎないと思います。これだけ国全体をぐちゃぐちゃに追い込んだ感染症に対して、厚労省の基本的な考え方を提示せず、来年の通常国会にあげたい非常に狭い項目のみが提示されている気がします。感染症部会は一体何をやるんだということが分からなくなりました。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
そうしましたら、まずは「新型コロナウイルス感染症の位置づけ」というところで皆さんから意見をいただいていきたいと思いますので、お願いいたします。
白井先生、お願いします。
○白井委員 白井です。よろしくお願いします。
多分、類型に当てはめられないというのが今の議論だと思いますので、それで柔軟に対応したらいいのではないかという提案だと思うのですが、その場合、1年延長することになったとしても、その間、方向性がなく、また1年、その間に何とか考えましょうというやり方ではもたないというか、私は保健所の立場なのですけれども、これ以上どのような方向性で、何をやっていったらいいのか。私たちも心が折れるという言い方をしたいと思うのですけれども、どんな条件を持ったら、どういう類型に当てはめられるのかという見通しを出していただきながら、それにはやはり時間が要るのだろうなということを考えないと、延長していいのですかということとか、柔軟でいいですよという話にはならないと思うのです。
今でも大分柔軟に対応できる形にはなっているのですけれども、柔軟だと言ったところを地方自治体というか、都道府県の範囲で運用していただいていると思うのですが、隣り合っているところでも対応が違ったりすると、生活圏は一緒なのに、対応が違うというところで住民の方々の不満もかなりありますし、私たちも情報連携を隣県でもある程度できたとしても、対応の違いがちぐはぐになっているなという印象があります。
そういう意味では、どのような見通しで、例えば五類にするのであるのだったら、どのような条件が要るのかとか、例えば2009年でしたら、どの都道府県でも患者の発生があった時点で、全数報告をやめましょうといったこととか、あとは全数報告でなくても、クラスター報告ではやってくださいよという話がありましたし、五類にしたところでも、その当時でもクラスター対策はやりましたので、集団感染対策ということで流行を抑えたということもありました。今はワクチンもないとか、治療法がはっきりしていないということで、それがどこまではっきりしたら類型を変えられるのかということも、要は見通しがない中、延長してもいいですかということについては判断がしにくいと思いました。
以上です。
○脇田座長 では、谷口先生まで意見を伺って、事務局に少しお答えをもらいましょう。
谷口先生、お願いします。
○谷口委員 谷口です。ありがとうございます。
岩本先生も言われていましたが、今回のことで、感染症法自体が感染症対策さえもきちんとできるようにはなっていないのだということが分かりました。対策本部に、今回のコロナをどのようにしたいのかという明確なゴールと、その戦略がないことに起因するのだろうと思います。
こういった飛沫感染を起こすような呼吸器感染症では、基本的に感染経路、感染源、感受性の3つを組み合わせた対策をしっかりやっていかない限りは、ワクチンができるまではこのままずっと広がっていきます。まず、本来の感染症法の理念に従って、スレット・アンド・リスクアセスメント(Threat and Risk Assessment)をきちんと行う。現在、国がこの疾患をどのように捉えているのか、どのように今後のモータリティーとモービディティ(Mortality and Morbidity)を考えるのか。実際、最近『ランセット』に出ていましたけれども、コロナに罹患した人の5人に1人が認知症とかも含めて何らかの新しい精神疾患と診断されるという論文が出てきているわけで、インパクトとしては極めて大きい疾患です。それを国家としてどのように評価しているのか、その上でこの疾患をどのようにしたいのかというのが明確ではないと思います。
そのように考えると、類型をどうのこうのということではなかなか考えにくいのかなと思ってしまいますし、もちろん、この中だけでやれと言うのであれば、麻疹のように五類だけれども即座に報告するとか、そういったことは多分できるのだろうとは思いますけれども、まず、感染症法の中で、日本としてこれをどうしたいのかという明確なビジョンと戦略が必要だろうと思いました。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
冒頭からなかなか厳しい意見をいただきまして、ありがとうございます。
今の3名の先生方の御意見に、事務局から何かございますか。
○江浪結核感染症課長 結核感染症課長の江浪でございます。
3点御意見をいただいております。
1点目は、この感染症部会で今何を議論してほしいと考えているのかという点でございます。このことに関しましては、まず、今般の新型コロナウイルス感染症の対策は今まさにオンゴーイングで行っておりまして、今も感染拡大がある中で、感染拡大をどうしていくのか、医療提供体制をどうしていくのかは専門家の先生方にも御相談しながら対策を進めているところです。こういった新型コロナウイルス感染症対策について、今回の対応を含めてどのように総括していくのかということになりますと、今回の新型コロナウイルス感染症対策がある程度落ち着いて、しっかりと検証した上でなければ、なかなかその議論ができにくいという側面があります。
本日御相談をしております視点は、そういった最終的な非常に総括的な評価あるいはそれに基づく今後の在り方は少し先にならざるを得ないとして、その間、この新型コロナウイルス感染症対策を進める上で、幾つか課題提供いただいているものがございますので、その点について、今、どういう対策をすることが必要なのか、制度上の対応が必要なものがあるのかどうかということについて議論をスタートしていきたいというものでございます。
そういった観点で、今回御相談さしあげている感染症法上の位置づけに関しては、先般の感染症部会においても御議論いただいたところで、新型コロナウイルス感染症に関しては、病気の性質をしっかり押さえながら制度上、柔軟に対応していくという観点からは、今般、引き続き指定感染症の枠組みの中で対応していくことができるような形で検疫法の関係の見直しが行われましたので、来年の初めに期限が到達するものについては、延長することによって、今の対応を続けることはもう一年間は可能であろうと考えております。
しかしながら、感染症法上も、指定感染症に関しては2年ということもございますので、最初の1年間は指定感染症で対応して、次の1年間も指定感染症で対応することができたとして、その先はどうしていくのかということに関しては、ある程度時間をかけて議論する必要がございますので、少し前倒しの議論になりますけれども、感染症法上の位置づけについてどう考えるのかということについて、議論をキックオフしておきたいということで、今日御相談を申し上げているところでございます。
谷口委員から御指摘いただきました新型コロナウイルス感染症対策について、国家としてどのように評価して、どのように対応していくのかということに関しましては、特措法に基づきます分科会の下で議論をして、今、新型コロナウイルス感染症そのものについての対応は日々行っているというところでございまして、それを踏まえた最終的な感染症対策全般の見直しということになりますと、この対策が一定程度落ち着いて、総合的な評価を行った上でということになるわけでございますけれども、今日御相談を申し上げたいと思っておりますのは、若干1点目の繰り返しになりますけれども、今、対策を進めている中で、幾つか課題として提起いただいている論点とか、あるいは先ほどの感染症法上の位置づけのように、少し先を見ながら議論をお願いしたい点がございましたので、本日は何点かのことについて、まずは御議論いただく機会を設けたということでございます。
私からは以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
さらにほかにございますか。
では、もう一度谷口先生、どうぞ。
○谷口委員 お話をお伺いしていて、しばらく落ち着くまで様子を見てというお話でしたけれども、私は今、この状況を見て、明日が見えないのです。新しい手を打たずにこのままやっていれば、早晩、医療体制は破綻に近づきますので、ロックダウンする以外に方法はなくなると思っています。悠長に最後の落ち着くところまでを見て評価をするのではなくて、走りながら評価をしていかないと、このままでいけるとは自分は思いません。
皆さんはどう思って見えるのかは知りません。皆さんが、このまま見ていて、そのうち収まるのだろうとこの審議会として思って見るのならば、僕はそれで結構ですが、私はそのように思っておりませんので、走りながら評価しつつ、対策を検討していかなければならないと思います。今の感染経路対策だけでは恐らくもちません。感染源対策をもう少し強力にしないともたないと思っています。
以上です。
○脇田座長 岩本先生、お願いします。
○岩本委員 基本的に谷口先生と同感ですけれども、国民が納得しないと思います。感染症部会は感染症法のことは考えなくてもいいということですか?それは分科会がやるということなら結構ですが、新型コロナウイルス感染症の指定がもうじき切れるので、それだけ延長しろというのがこの部会のミッションだということですか。
チャットに白井先生からの質問も入っています。
○脇田座長 では、今の御質問です。
○江浪結核感染症課長 結核感染症課長の江浪でございます。
私の説明が舌足らずで、大変失礼いたしました。
感染症部会に新型コロナウイルス感染症の関係で審議をお願いしている内容は、大きく分けますと2つあると思っております。
1点目は、感染症対策を進める上で、例えば入院の基準をどう考えるか、届出の範囲をどうするのか、あるいは指定感染症としての位置づけをどう考えるかというような、感染症対策を今進める上で必要な制度的な対応を行う際に御議論いただくと。そのことについては、前回も御相談申し上げましたし、これからも御相談を申し上げていくことになろうかと思っております。
先ほどの御説明の中では、もう一つの視点として、もう少し制度全般を考えましたときに、そういった対策、制度上さらに検討しておくべき視点をもうちょっと中長期といいますか、少し高いところから見たときに、あらかじめその議論をスタートしておきたいという点であったり、あるいは1点目にも少し関わりますけれども、今、対策を進める上で、制度的に対応しておくことが必要であろうということ、さらに法律とか制度面から対応していくものが必要な点があるのかということを少し御議論いただきたいというのが2点目でございます。
今日、岩本先生、谷口先生から御指摘いただいたのは、まさに1点目の視点で、今の新型コロナウイルス感染症対策のことについて、今、国がどういう考え方で対策しているのかとか、それについて感染症部会のほうでもう少し議論するべきではないかという御指摘だと思いますので、その点につきましても、これからもこの部会には御相談をしていきたいと考えてございます。
以上でございます。
○脇田座長 白井先生、先にどうぞ。
○白井委員 白井です。
柔軟に対応するようにと、ある程度指定感染症としてのメリットというお話があったのですが、私からは柔軟に対応している現状にも問題点があると御紹介したというか、お伝えしたつもりなのです。都道府県によって新型コロナの対応が変われば、国民というか、住民の方々の移動によってかなり対応が違うということになると、結局はどういう病気なのだということが国民は分からないと思うのです。
先ほど岩本先生も谷口先生もおっしゃいましたけれども、この国がどのようにこの感染症を捉えるか、落ち着かせるかというのは、落ち着いてからではなくて、どうするのかということも、私たちの感染症部会に委ねられているのであれば、逆に言えば私たちはもう少し資料を出さないといけないのかなと思いました。
○脇田座長 ありがとうございます。
岩本先生、どうぞ。
○岩本委員 さっき指摘した音声の問題で、おっしゃっていることがなかなか分からないように思います。結核感染症課が本当に大変な状況で頑張っているのはよく分かっています。しかし、2月頃から対策が打たれて、年末になっても感染者が増え、医療がますます逼迫してきている中で、今の状態を延長だけします、根本的には何も考えていませんというのでは国民が納得しないと僕は思います。
どこでなにをやるのかをきちんとしてもらって、感染症部会でやるべきことは何なんだということをはっきりして頂きたいと思います。
○脇田座長 ありがとうございます。
ほかに御意見はございますか。
調先生、どうぞ。
○調委員 保健所の代表として感染症部会に参加されている白井先生からそういう声が聞こえてくるということは、恐らく分科会で様々な議論がされているとは聞いていますけれども、本当に現場で一番大変な思いをされている保健所の声が十分に考慮されているのかということが心配になるようなお話だったので、そこは分科会での議論を公表といいますか、きちんと知らせていただいて、この感染症部会でもそういったことに関する議論ができるような形にしていただきたいと思います。
○脇田座長 ありがとうございます。
ほかにありますか。
今、分科会での議論というお話がありましたけれども、感染症法上の位置づけというか、その議論はもちろんアドバイザリーボードと分科会でもやっているのですが、必ずしも十分にできているわけではなくて、先ほど走りながら考えるというお話があったのですけれども、どうしてもそのときの対策をどうするかという議論が重心としてはかなり重くなっていて、感染症法における新型コロナの感染症の位置づけとか、全体的に新型コロナウイルス感染症をどう考えるかといった大きな議論は分科会においてもなかなかできていない。むしろ分科会は感染症の専門家ばかりではないので、アドバイザリーボードのほうがいいのかもしれないのですけれども、そういった議論はなかなか進んでいないというのが本音のところだと思います。
谷口先生、どうぞ。
○谷口委員 国民がこのコロナは風邪程度だと思っていたら、政府がいかに接触を減らしましょう、移動を減らしましょうと言っても、誰も減らしません。スレット・アンド・リスクアセスメント(Threat and Risk Assessment)は感染症対策の最初に来るべきものであって、そのコンセンサスが国民の間で取られていなければ、どんな対策も動かない。これは原則だと思います。そうすると、それをきちんと国家の声として国民に知らせていただく。その上で、こういった対策を取っていきましょう。
人を動かすのであれば、感染源を減らす以外の方法はないのです。感染症対策は感染源対策か、経路対策か、感受性対策の3つしかないのです。そんな画期的な方法なんてないわけです。そこをきちんとお話ししないと、いつまでたっても終わらないと思います。
以上です。
○脇田座長 そのほか。
越田先生、どうぞ。
○越田委員 現場を抱えている立場からお話しさせていただきますと、保健所は法に基づいて感染症への対応を行っている。この方に基づくという位置づけがすごく大事なのですけれども、これが揺らいでいる。今回の議論で出てくる自治体間の情報提供にしろ、調査研究にしろ、全て法の下で動いているわけです。ですから、そこでどうしましょうかと材料を提供されて、「さあ、議論してください。」ではなくて、ある一定の方向性を出していただいて、我々が意見を申し上げることにしていただけるといいかなとまずは思っております。
それから、新型コロナウイルス感染症はインフルエンザと同程度と簡単に考えてはいけない疾患であると思います。今、谷口先生がおっしゃっているように、感染者の年齢や基礎疾患の有無を考えると決して楽観視してはならない深刻な病気であるということを国民に対してわかりやすいメッセージとして伝えなくてはいけないと思っています。理解が曖昧なまま、新型コロナウイルス感染症を簡単な病気と考えていらっしゃる方が多いかなと。従って、感染者の予後など具体的なデータに基づく何らかの強いメッセージをわかりやすい表現で発信していかないと、個々人の自覚という意味で、感染制御がいつまでたっても堂々巡りかなという気がいたします。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
今、御意見をいただいていますけれども、事務局はいかがですか。
○江浪結核感染症課長 結核感染症課長でございます。
今般の新型コロナウイルス感染症のことに関しましては、この感染症の発生動向に関しては、アドバイザリーボードと呼んでおりますけれども、脇田先生の下に専門家の先生方にお集まりいただきまして、感染状況を踏まえながら、どういった対策が必要であるかということを週に1回程度御議論いただいております。そういった中で、例えばクラスター対策であれば、どういったところでクラスターが起こっているのかということも含めて、御提言をいただきながら対策をやっていくということになっております。
また、今般の新型コロナウイルス感染症に関しましては、特別措置法の対象ということになってございますので、特別措置法の下で設置されております分科会において、特別措置法に基づく措置といったことも含めて、幅広い専門家に御議論いただきながら進めているところでございます。
前回は、もともと新型コロナウイルス感染症対策についてということで、まず、どういった考え方で進めているかということも含めて御説明を申し上げた上で、指定感染症としての位置づけ、あるいは入院措置の対象のこととかを御議論していただいたところで、今回、この関係の議論を進めるときに、まず、我々がアドバイザリーボードとか分科会の下で、今どのように感染症について考えているのか、今どういった対策を行っているのかということに関しましても、この部会のほうにも御報告をしながら、今日の論点について御説明するべきだったかなと思っているところでございます。
この感染症の評価に関しましては、今日、前回お示しした資料よりも総括的なものではないところがございますが、参考資料として、発生動向、重症者の発生動向、亡くなられる方の動向、あるいは国民にこの感染症について一体どういうもので、どういった病原性があるのかということをお伝えする上で、例えば何枚かめくっていただきましたところに、新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人や死亡する方はどのぐらいいらっしゃいますかということをQ&Aのような形で少し整理した資料をホームページで出すなどして、コミュニケーションを図っているところでございます。
本日は議題もたくさんあったものですから、今、新型コロナウイルス感染症対策でどういったことをやっているかということについての御紹介の部分のアップデートを最初に少し入れておくべきところができていなかったことによって、議論が少し混乱したことをおわび申し上げたいと思います。
私からは以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
資料1の1番のところは本当に基本的なところですけれども、ここについての御意見をいただいていますが、そのほかはいかがですか。
そうしましたら、少しその先のお話もしたいと思いますので、国と地方自治体間の情報連携であったり、調査研究について、対策の実効性の確保のための措置といったところも御意見いただきたいと思います。
岩本先生、お願いします。
○岩本委員 1番も全然終わっていないと思いますけれども、2ですが、県はもともと明治時代に廃藩置県でできたわけですね。一方、保健所は昭和時代に厚生省が保健所法を元に国と市町村を繋ぐために作ったものですから、もともとのでき方が全然違う。要するに県と保健所はもともとつながっておらず、法律なりで縛らないと結びつかないものだと思います。この件は、過去にも結核感染症課の担当者と話してきましたが、平成6年(1994年)に地域保健法に改正したときに大体解決したという説明でした。自治体と保健所の連携を見直す必要があります。さらに、次の調査研究のところにも関係しますが、非常に重要な役割を担っている地方衛生研究所が法的に位置づけられておらず、ラインに入っていません。それでどうやって調査研究するのですかという気がします。
○脇田座長 では、谷口先生、どうぞ。
○谷口委員 ありがとうございます。
例えば、今、ここにもHER-SYSと書いてございますが、御存じだと思いますけれども、いろいろな雑誌、最近だと「情報処理」学会誌にも論文が出されていますが、細かいことは申し上げませんが、HER-SYSはデータベースを御存じない、感染症法も御存じない、サーベイランスもやったことがないといった方が作成されたのだろうと書いてありますし、これはほとんどの地方自治体の方が一度データをダウンロードしてみたら、分かったと言って見えました。つまり、これは最初の設計の時点でかなり問題のあるものになっていますので、これを何とかして直していくのは極めて難しいと思います。
2009年にパンデミックが起こったときに、あのときも同じことをしました。疑い症例調査支援システムというHER-SYSにそっくりなシステムを使いましたが、項目が多過ぎて途中で破綻しました。当時の結核感染症課長はすぐにそれを中止して、NESIDに戻しました。それで動くようになりました。恐らく、思い切ったことをしないと、今、このまま続けていって、HER-SYSのデータがどのようにどこに反映してくるのか。そもそもHER-SYSの中に地衛研が入っていないというのは、結局、感染症法のことを全然知らない方がつくったということなのです。
実際に対策をするのは現場です。現場が対策をするのに一番適したシステムの中で使われたデータがほかの地域、国に流れて、共有できるという形にしないと、現場の負担を増やすだけであって、対策につながりません。ゆえに、いかに現場の支援になるような、このデータが共有できるといったシステムにしていかないといけないのだろうと思います。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
そのほかはいかがですか。
○正林健康局長 脇田先生、一言というか、長めの演説になってしまうかもしれません。
健康局長の正林です。
先ほど来、先生方の御意見を聞いていて、かなりフラストレーションをためられているのを大分感じました。恐らく、現場で相当大変な思いをされていることを国の我々がきちんと受け止め切れていないことと、感染症部会をもうちょっと頻回に開いていればよかったという反省も感じました。
ちょっとコメントしたいのですけれども、まず、戦略がないという御意見もいただきましたが、1月、2月からスタートして、当時は基本方針とか、あるいは政府全体で基本的対処方針とか、いろいろな大きな方針を掲げてやってきたつもりです。特に厚労省だけではなくて、今回の新型コロナに対しては政府全体で取り組む必要があるということで、内閣官房にも新たな組織が立ち上がり、総理をトップとした政府全体の対策本部ができて、そこで基本的対処方針以降、いろいろな戦略を掲げて、公表して、それを各省庁が実践するという形をこの10か月間取ってきました。今、反省として、その情報が十分に先生方と共有できていなかったのではないかと私は思っています。
その上で、感染症部会で何を御議論いただきたいかは、感染症法という厚生労働省健康局、特に結核感染症課が所管する法律のありようについて議論する場は、コロナの分科会でもアドバイザリーボードでもなく、まさにこの感染症部会だと思っています。これまでも指定感染症にするか、しないかとか、指定した後にどういうことを行うかというのを政令で指定するに当たって、先生方の御意見をいただきながら進めてきました。それはまさに感染症法の中身をどうするかということだったので、それはこの部会で御議論いただきたいという思いからであります。
その上で、これまでいろいろな戦略を立ててやってきていますが、もちろん、その中で随時評価しながら対応をという御意見をいただきましたが、まさに全部が終わってからやるのではなくて、現在進行形のものも評価しながらやる必要があります。先生方にお願いしたいのは、これまでやってきた中で、特に感染症法をどうするかというのを見直したらどうかという御意見をいただきたいと思っています。
これまで岩本先生から何回か感染症法について議論しようという御提案をいただいていたのですが、今日は事実上のキックオフでありますので、本格的な議論は今日がスタートだと思っています。今日は幾つか論点を出していますけれども、ある程度フリーに先生方の御意見をいただきたいという思いがあって、あまり一つの方向性を示さずに御議論いただいています。
ただ、その中で、急いで結論を得ておきたいのが政令指定であります。これは今、何もしないと、1月末には期限が来てしまいますので、2月以降は、今、法に基づいて取っている入院勧告とか積極的疫学調査が一切法に基づいてできなくなってしまいますので、果たしてそれでいいのか。今回のこのコロナは風邪と同じだ、別に法に位置づける必要もないという御評価であれば、それはそれでしようがないのですが、今の致死率とか感染力を見る限り、少なくとも風邪と同等という感じではないのではないかと我々は評価しています。
ただ、では、一類から五類、あるいは新型インフルエンザのどれにするかというのをこれから議論する必要はもちろんあるのですけれども、差し当たってあと1か月ちょっとで期限が来てしまいますので、できれば今日で指定感染症を延長するかどうかだけは先生方から御意見をいただいて、ある程度のコンセンサスは得ておきたいと考えています。
その上で、仮に延長という御判断をいただければ、後はそれに応じて年明け以降も同様に、今回のこのコロナを感染症法上、どう位置づけるかという議論は引き続き続けていけると思っていますし、さらに幾つか示している論点、あるいはそれ以外の論点についても年明け以降も議論することができるかと思っています。
誠に申し訳ありませんが、指定感染症として政令指定を延長するかどうかだけは、今日何とか結論をいただけないでしょうか。
以上です。
○脇田座長 では、岩本先生、どうぞ。
○岩本委員 正林さんのおっしゃることはよく分かります。今求められていることも分かるのですけれども、恐らく、感染症部会がこの10か月置かれてきた立場は、まさに今のことの繰り返しです。最初に専門家委員会ができて、感染症部会は何をするのかなと思っていたら、専門家委員会は廃止します、分科会にしますという不思議な出来事があった。次には、厚労省の中にアドバイザリーボードができて、アドバイザリーボードと分科会はそれぞれ何をやるのかのミッションの説明もない。なおかつ、ほとんどデータの説明もなくこれを通さないと対策上困るから、まずこれを認めてくれという要請がずっと続いてきたわけです。
厚労省自体がまさに走りながら考えているのだろうということ、今日これだけは何とかお願いしますという請願も分かりましたが、指定感染症の延長問題の前に議論することがあるんじゃないか、と申し上げたいので発言しました。
○脇田座長 今村先生、どうぞ。
○今村委員 今村です。
実は感染症部会であまり発言していないのです。ずっと思ってきたことは、岩本先生と谷口先生がおっしゃったことと同じことを考えていて、僕は3つとも会議に入っているので、分科会とアドバイザリーボード、感染症部会の話は全部聞いています。
先ほどの正林さんの話を聞いて、なるほどなと思って納得したのですけれども、今日も実は話をしないでおこうかなと思ったのですが、一言で言えば役割が分からなかったのです。感染症部会の役割は何だろうというのが分からなかったので、役割が分からないのに発言はできないという形で僕は発言していなかったのです。今回の議題のIとIIの2つの部分で止まっていますけれども、この2つは1個だけでもそれぞれで2時間以上話をしないと、多分方向性さえも出てこない話題だと思うのです。その中で、今日のこのものに関しては、いつまでに何をやりたいのかがまず分からなかった。
先ほどの正林さんの話でここまでは決めてほしいというのがあったので、今回のはそうなのだなということで腑に落ちたわけですけれども、先ほど岩本先生がおっしゃっているとおり、感染症部会のメンバーを見ていて、すごいメンバーが集まっていると思うのです。だから、今、本当に本質的な話合いができるメンバーが集まっている会議体だと思います。だからこそその会議体を大切にして、本質の部分をしっかり並行して話を進めながら、いつまでにという部分が早く迫られているものに関しては、当然決めなくてはいけないので、それはそれで並行して決めていく道筋をしっかりとつくるのがすごく大切かなと思いました。大ざっぱな話になりますけれども、大切なことだと思うので、今述べさせてもらいました。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
ほかに御意見はいかがでしょうか。
谷口先生、どうぞ。
○谷口委員 現状を考えれば、指定感染症を外すということは到底考えられないと思っています。これを五類に落とすという話をどこかで聞いたことがあるのですけれども、少なくとも一定の法律下で対策を進めていかない限り感染者を減らしていくことはできませんので、とんでもないお話だというふうに聞いておりました。
実際、これまでも指定感染症の中で、いろいろな政令とか法律改正といったことで柔軟に対応されてきていると思うのです。今、走りながら考えるということがありましたが、現在、現場で困っていることはあるのです。実際に医療現場でもありますし、保健所の現場でもあると思うのですが、そういったところから今の指定感染症で柔軟に決める、そして変えていっていただけるのが一番いいのではないかと思います。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
越田先生、どうぞ。
○越田委員 私も今の谷口先生のご意見と全く同感でして、実は今日の議題は、例えば感染症法の14条は発生動向調査ですし、15条に関しては発生の状況と原因の調査、16条については情報公開。つまり、我々は感染症法にのっとって保健所の仕事を回しているわけなのです。ですから、ここが揺らいでは、我々は何をバイブルにして動けばいいかが分からない。
従って、先ほどもお話ししましたが、この新型コロナウイルス感染症は決して風邪ともインフルエンザとも異なり、決して予後を楽観視してはならない感染症であることを踏まえて、法的位置づけを無くしてしまうと、保健所や医療機関での現場対応のよりどころがなくなってしまうわけなのです。ですから、ある一定の法的位置づけをしていただかないと、我々が現場を守っていけないというのが現実だと思っております。もちろん一類感染症のようにガチガチではなくてある程度、運用面で柔軟に対応できるのりしろは必要です。
あと、細かい話になりますけれども、主な論点の3番目の調査研究についてです。臨床現場では抗原定性とか、PCRとか、いろいろな検体を採取して、いろんな方法で検査を行っています。そうすると、抗原定性検査ですと、臨床現場では診断がつけばそこまでですが、疫学調査のためにゲノム解析までしようと思ったら、地衛研の御協力によって、RNAを集めるとか、あるいはそれを集約するといった専門的な視点もすごく大事だと思っているので、そういったこともここできちんと決めておく必要があるのではないでしょうか。ゲノム解析のための検体を医療機関や検査機関に“お願い”の範囲で提供してくださいではなくて、疫学調査のために必要だから提供しましょうというルールがあると、臨床現場、病院も提供してくださるでしょう。またクラスター対応の際には、我々はゲノム解析から得られる有益な分子疫学情報によって、エビデンスに基づいた対策を立てることができると思います。先ほど地衛研のこともお話しになっていましたけれども、地衛研が主導でそういった対策ができるといいなと思っております。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
中野先生、お願いします。
○中野委員 中野でございます。
岩本先生には叱られるかもしれませんが、正林局長がおっしゃったように、指定感染症としての取りあえずの延長は絶対に必要だと私は思います。その理由は、感染伝播がどうとか、そんな話ではなくて、致命率が高くて、トータルの人口として合併症を起こす人が多い病気だから、延長が大切だと思います。
なおかつ、二類か五類かという議論もありますが、治療ができたから二類とか、ワクチンが開発されたから何類という話ではなくて、今の感染症法の類型を見ても、ワクチンがあるからどこに入っているかとか、治療があるからどこというのはあまり関係ないと思います。ですから、走りながら考えないといけないけれども、何が解決したから類型が決まるというものではなくて、この疾病の本質を考えつつ、どこに分類するかを決めていかなければならないと私は思っています。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
調先生の手が挙がっています。どうぞ。
○調委員 やはり指定感染症を継続すべきだと思います。
ただ、保健所長の中には、五類にして重症者だけにフォーカスを当てればいいと考えている方もいらっしゃると聞いていますので、指定感染症を続けるということについて、しっかりと理由づけをしていただいて、メッセージを出していただくということが非常に重要だろうと思います。
地方衛生研究所のことを言っていただいたので、2つ言わせていただきたいのですけれども、PCR検査は保健所でやっていると言われる厚労省の方がいらっしゃるのですが、保健所は検体採取をやっていて、PCR検査は地方衛生研究所でやっているということを一つ認識していただきたいと思います。
ゲノム解析が非常に大きなテーマにはなっていますけれども、今、1万1000件の検体について感染研ゲノム解析研究センターで解析がなされていまして、疫学上、非常に有益な分子疫学情報が得られています。そのほとんどの検体は、地方衛生研究所から検体を送ったのではなくて、抽出したRNAを送っています。ウイルス量の多い、専門的に言えばCt値32以下のものを選んで、非常にハイクオリティーのものを送っている。臨床現場から検体を送っても、感染研は困ると思います。脇田先生はどのように考えていらっしゃるかは分かりませんけれども、地方衛生研究所のコントリビューションなくして、コロナウイルスのゲノム研究はできないと思いますので、ここははっきりと記載していただきたいと思います。
以上です。
○脇田座長 また岩本先生ですね。お願いします。
○岩本委員 今、ゲノム研究の話題が出たので申しあげます。今年3月から4月に感染が増えた第1波といっているものがヨーロッパから来たのだと分かったのは、まさに感染研のゲノムセンターの黒田さんたちのデータで、あれは今までで最も大事なデータだと思っています。しかし、日本の状況に関する発信は極めて不調です。最近感染研が1万1000件のウイルスゲノムをGISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data)という国際的なデータベースに登録したそうですが、ウイルスの由来は全部「Japan」としか記述されていないそうです。例えば最近『サイエンス』に出た論文では、2月末にボストンである会社が開催した国際的なビジネス・ミーティングで起こった約30人のクラスターから10月までに世界中で少なくとも20万人以上の感染に繋がったという、従来とはスケールが全然違う分子疫学調査が示されています。そこには例えば倫理問題やいろいろなものがありますが、公衆衛生レベルでの調査ではなく、大学や研究室が積極的に行った研究活動です。
この前イギリスと電話会議で話しましたけれども、イギリスなんかもGenomics Englandというサンガー研究所をはじめとした研究所が公衆衛生対策にも貢献しなければいけないという議論をしていました。日本でも感染研がどのように検体を集めて、いかに国内の他機関の研究者たちもそれを使えるようにするかというのは非常に大事な話だと思っています。
また、さっき中野先生がちょっと誤解していたと思いますが、ぼくはやり方の問題を言っているだけで、指定感染症を延期しなくていいなどとは全然言っていません。
○脇田座長 ありがとうございます。
今、感染研の話が出てきたので、今、調先生がおっしゃったように、地衛研あるいは保健所、自治体のほうから送っていただいているということなのです。誰がそのデータを持っているのかという問題は常に大事だと我々も思っていて、「Japan」としかついていないというのはいろいろな理由があるわけです。そこはどこの自治体から来たかということも我々はもちろん分かっていますけれども、それをひもづけて公表するということは現状ではなかなか難しいということなので、我々はどういう方向性で研究をやるべきなのかということを考えていく必要があると私は思っています。
今村先生、白井先生、岩本先生の順番でお願いします。
○今村委員 今村です。
先ほど正林さんから課題の指定感染症の部分だけ意見をということなので、僕の意見を述べておきます。
指定感染症としての延期は必要かなと思っているというのが結論なのですが、理由としては、感染症としてはいろいろなことが大分分かってきましたけれども、不確定要素がまだかなり多くて、医療体制も含めたリスクはかなり不安定な状況が続いているということで、今のところを乗り越えていくためには指定感染症としてちょっと延ばさざるを得ないのだろうと思います。
ただし、外してほしいという意見の中で、保健所からの意見は結構載ってくると思うのですけれども、多分、それは走っている中で起こってきた課題を述べているのです。これに関しては、起こってきている中で解決しなくてはいけない解決課題となっていますので、そこの課題がどこにあって、走らせながらも解決する方法がないかということを考えつつやらなくてはいけないと思うので、そこは並行してやっていかなければいけないと思います。
以上です。
○脇田座長 白井先生、お願いします。
○白井委員 白井です。
一つは、ゲノム解析とかその検体のことなのですけれども、大阪府の地衛研というか、独立行政法人ですが、そこで検体を扱っているものはかなり少ないのです。民間でやっていただくことが多いので、民間から陽性になった検体はどこにも集められていません。流行地の検体をどうするかといった場合には、本当に欲しい情報がどこにも集まらないのではないかという残念なところがありますので、民間検査センターからどのような経路で可能か、RNAにした段階でということも含めて道筋をつけていただかないと、研究が進まないかなと思います。
あと、ちょうど保健所の立場でということなので、二類よりも五類にという意見は保健所長会の中でも本当にいろいろとあるのですけれども、指定感染症で運用が可能だという状況で、どこに当てはめるのかがこの1年間で決まらないというか、あと数か月でも決まらないわけですね。そうすると、やはり議論は続けないといけないと思うのですけれども、どういう形でやっていくかということの見通しをつけていかないといけないと思います。その議論を続けることについては賛成です。
ただ、今まで感染症法のどこかに当てはめるということで、例えば腸管出血性大腸菌なんかは二類だったのが三類に降りたりとか、いわゆる類型の変化も法律の改正の中でできていましたので、どこかに収めても、それを変えていくこともできると思うのです。
ただ、今、それを指定感染症の範囲でもう少し議論をしながらやるべきだということであれば、漫然とではなく、このようなどういった場合に医療を重視するのかとか、感染者数を重視するのかという議論の中で落としどころを考えて、類型に当てはめるのか、逆に新たな類型をつくるのかとか、そういうところまで議論が必要かなと思います。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
岩本先生、どうぞ。
○岩本委員 言いたいことはいっぱいあるのですが、さっきの脇田先生が言ったことだけ。
何で「Japan」しか出せないかというのは、僕は黒田さんと議論しているので分かります。しかし、感染研がオンリーワンになっているので、そういうことはちゃんと日本の研究者に説明しないと、要は日本の大学なりの感染症に関する研究力をそいでいる結果となっています。
○脇田座長 谷口先生、どうぞ。
○谷口委員 今の研究のお話ですけれども、いわゆるサーベイランスは、ホリゾンタルサーベイランスとバーティカルサーベイランスに大きく分けられます。全体をレプレゼンタティブに俯瞰するのがホリゾンタルとすれば、一定のテーマを深く、詳細なところをきちんと見るのがバーティカルサーベイランスであって、例えばアメリカは国のシステムの中でその2つのサーベイランスの枠組みを非常にうまく使い分けているのです。だから、例えば流行予測調査事業はいわゆるバーティカルサーベイランスに入ると思うのですけれども、特定の医療機関でもいいのですが、恐らく日本も、ああいった形でデータがきちんと集められて、検体もきちんと集められる病院のネットワークをつくったバーティカルサーベイランスシステムをつくっていけば、より詳細な研究につながるのではないかと思っています。
以上です。
○脇田座長 山田先生、どうぞ。
○山田委員 先ほどの類型の話に戻ってしまいますけれども、白井先生がおっしゃった新しい類型をつくったらどうかというのは、私は賛成です。今までのカテゴリーに無理やり押し込めようとしないで、新型コロナに必要な類型を設けて、それに基づいてやっていけばいいと思います。それができない間は指定感染症で対応する。1年間延長した間に、このコロナのためにどういう措置ができるような法体系を用意するのかという議論をしていくほうがはるかに建設的だと考えます。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
今、いろいろと意見をいただきましたけれども、先ほど正林さんからもありましたが、今日は指定感染症の政令指定の期限を1年間延長するかどうかということは結論を出してほしいということですので、今、多くの先生方から指定感染症の延長に関する意見はいただいています。それで結論を出したいと思いますけれども、さらにそれに関しての御意見があればと思います。
今、山田先生からもありましたけれども、新しい類型も考えていいので、それは検討しながら今後やっていくので、政令指定の期限は延長してもよい、その間に考えていくべきだろうというお話がありましたが、その辺りで御意見があれば。
岩本先生、どうぞ。
○岩本委員 感染症部会かどうかは覚えていないのですけれども、僕は前に幾つかのところで、コロナとインフルエンザの新型には「2.5類」か何かが要るのではないかと発言したことがあります。大抵はずっとばかにされて、今まで箸にも棒にもかかっていません。5類型の中でやるのかどうかというのは議論が必要だと思いますけれども、今のところは指定を外せないのではないかと思います。
○脇田座長 ありがとうございます。
そのほかはいかがですか
釜萢先生、どうぞ。
○釜萢委員 今日の大事なミッションは、指定を延長するかどうかという話で、今、先生方のお話の中に、指定を外すべきだという御意見は全然なかったですし、私もぜひ指定を続けるべきだと思います。
今、今村先生からもお話がありましたアドバイザリーボードと分科会に私も構成員として出ていますが、今振り返って、アドバイザリーボードも、分科会も直近の感染状況の評価・分析と、それに何で対応するかという議論で手いっぱいで、今日のようなかなり本質的な話をする時間的な余裕もなかったと感じます。1週間に1回はやっているのですけれども、非常に慌ただしく対応せざるを得ない中で、感染症部会は今回の新型コロナウイルスについてしっかりと本質的な議論をするのに非常に適当な場だと感じておりまして、今後は回数が多く開かれるかとは思いますけれども、ぜひ厚労省の担当のところにはこの会が適切に開かれるようにお願いするということと、先ほどの指定の件についてちょっと触れますと、私は指定を継続することにもちろん賛成ですが、いろいろと手を加えて、併せて新型コロナ独特の必要なものをいろいろと盛り込んで、現在の指定があると認識しています。
特に医療現場において、新型コロナウイルス感染症の治療に携わる立場とすると、今回、診療報酬上のいろいろな積み重ねなど、直近のことも含めていろいろと行われている中で、今、指定を短期に外すことはとてもできないだろうと感じておりまして、指定を延長するけれども、1年はあっという間にたってしまうので、ぜひしっかりと議論を深めて、新しい類型をつくるかどうかも含めて考えていく必要があると思います。分かってくることはどんどん増えてきますから、必要に応じて見直していくことが必要だと思っております。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
まずは指定の延長に関しての意見をまとめていきたいと思いますけれども、委員の皆様、そのほかはいかがでしょうか。
鳥取県、どうぞ。
○荒金参考人 鳥取県の荒金でございます。
知事会のほうからで、各幹事県のほうに今回についての意見をお聞きしたところですけれども、各県からも指定の継続はやはり必要だろうということで意見が上がってきております。この類型についてというか、柔軟な対応の検討を引き続きやっていかないといけないのではないかというところが各県の意見ですので、御紹介させていただきます。
○脇田座長 ありがとうございます。
皆さん、よろしいですか。さらに御意見はありますか。
そうしましたら、今の資料1の指定感染症の1年間の延長のところは、今日いろいろと御意見がありました。当然、延長するにしても、新しい類型をつくるのかどうか、あるいはどこかの類型にはめるのかどうかということも含めて、今後きちんと議論を深めていくべきであるということで、感染症部会としては指定感染症の延長を認めるということでまとめさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
その上で、今日はほかにも資料2と資料3がありますので、残りの時間はあと10分ぐらいしかないのですけれども、さらに御意見があれば伺っておきたいと思います。
どうぞ。
○江浪結核感染症課長 ありがとうございます。
指定感染症の延長のことにつきましては、結論をいただきまして、ありがとうございます。
感染症法上の今後の類型の在り方につきましては、今日お配りしている資料の6ページに類型の一覧をつけておりますけれども、一類感染症から五類感染症という類型のほかに、新型インフルエンザ等感染症という類型もございまして、感染症法上にありますいろいろな類型といったことを御説明申し上げながら、また位置づけについても御議論いただければと思っております。
本日はたくさん議題を並べてしまいまして、詰め込み過ぎたと反省しておりますけれども、もう一つ方向性として御議論いただきたいと思っております点が1点ございまして、そのことについて残りの時間で御議論いただければ、残りの点については、次回以降、できれば継続の審議の中で御議論いただければと考えております。
本日、もう一点だけ方向性について御議論いただきたいと思っておりますのは、新型コロナの関係ではございませんで、資料3の「その他の感染症対策について」のうちの風疹の予防接種のことでございます。資料3の中で、まず、風疹の予防接種について、来年度どのように進めていくかということと、風疹の目的の達成時期について、いつ頃、またそれを検討していくかという2点を御相談したいと思っています。
具体的には資料の13ページに「風しん追加的対策の今後の実施方法について」ということでお示ししておりますけれども、これまで昨年度1年間やってきて、今年もまた1年間やっている途中ということでございますが、来年度が3年目になります。
御相談するまでもないところなのかもしれませんけれども、3年計画のうちの3年目ということもございますので、3年目に向けまして、しっかりと風疹の予防接種のことにつきまして進めていきたいということで、13ページの今後の実施方法の(1)、(2)がございますけれども、(1)がクーポン券について、未使用の方に関して再勧奨したい。
また、今年度末で使用期限を迎えますクーポン券をお持ちの方がいらっしゃるのですけれども、その方については翌年度も使用できるように期限を延長して、この3年間で接種改革をしたいと思います。3年目につきましては、残りの世代の方々にしっかりとクーポン券を配布しながら、最終的にこの3年間でどこまでいけるかということをしっかり進めたいというのが御相談の1点目でございます。
14ページが目的達成の考え方についてということで、前回、既に感染症部会におきまして、もともとの目標に関しまして、少し期限の延長をしていただいておりまして、「目標1」「目標2」とあるわけですけれども「目標1」で抗体保有率を85%以上に引き上げるということに関しましては、もともと2020年7月が目標だったところを1年間延ばしていただいて2021年7月ということになってございます。この目標に関しましては、初年度よりも2年度のほうが接種率は少し伸びているのですが、このペースで伸ばしていければ目標を達成できる可能性があるというところでございます。
一方で「目標2」で抗体保有率を90%以上に引き上げるということに関しましては、2022年3月までにということで、3年目を使い切った後にどこまでいけるかということなのですけれども、今、新型コロナウイルス感染症の患者数もたくさん出ている中で、今年度にどこまで予防接種が進むのかという状況を見ながら「目標1」「目標2」の達成時期のことに関しまして「対応案」のところに書いてございますけれども、来年の夏をめどにまた目標の時期について御相談申し上げたいと考えておりまして、このように進めてよろしいかという2点について、今日、一定の方向性をいただければと考えてございます。
以上でございます。
○脇田座長 それでは、今、再度説明があった資料3の風疹の追加対策の今後の実施方法と目標の達成時期の考え方ですけれども、委員の先生方からの御意見はいかがでしょうか。
今村先生、どうぞ。
○今村委員 外来でいろいろな患者さんからクーポン券が届いてという話はよく聞くのです。コロナになってから、みんななかなか受診できなくて、本来だったら打っていそうな人が打っていないというのが現場で起こっています。恐らく、延ばしたりして本当にちゃんと広報すれば、受ける人は増えるという状況はベースに存在していると思うので、それはやっていいのかなと思います。
あと、未知数なところとして、今後、新型コロナのワクチンが出てきたときに、そのワクチンの接種が現場で始まると、またそれはそれでマイナス要因になったりすると思うのです。その辺もしっかり考慮しながら計画を立てたほうがいいかなと思いました。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
広報もしっかりやってほしいということですね。ありがとうございます。
そのほかはいかがでしょうか。
谷口先生、どうぞ。
○谷口委員 世界でもコロナのおかげで麻疹ワクチン接種が滞って、アウトブレイクが起こっている地域があります。実際にこの目標を考え直すのは致し方ないことです。現状では、このようにしていくべきだろうと思いますけれども、先ほど今村先生が言われたみたいに、少なくとも後退しないように、今やっていることは可能な限りきちんと持続できるようにということがまず考えていただくことかなと思います。
前も申し上げて、難しいということはよく存じ上げているのですが、来て頂いて抗体を測定してから、再度来て頂いてワクチン接種するよりは、来て頂いたときに接種していただくのが最も早道だと考えますので、再度申し上げました。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
ほかはいかがですか。
山田先生、お願いします。
○山田委員 ワクチンの接種率を上げるには、かなりハードルが高いと思うのです。以前もお話ししたかと思うのですけれども、対象の人たちの行動変容を促すような仕掛けをしない限り、ワクチンの接種率を上げていくのは非常に難しいと思うので、クーポンを配るだけではなくて、受けてもらうべき方たちの行動変容を促すような行動経済学的な手法になると思うのですが、そういうものを利用しながら、ぜひ目標値に近づけていただきたいと思っています。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
越田先生の手が挙がっています。お願いします。
○越田委員 私は基本的にはこの延長に対しては大賛成です。
それから、この対象世代の男性は何らかの職についていらっしゃる方が大半ですので、職域への積極的なアプローチを併せて行うことが大切ではないかと思っております。
以上です。
○脇田座長 ありがとうございます。
そのほかはよろしいですか。
では、今、いろいろな意見をいただきましたので、事務局のほうで今の御意見を踏まえていただいて、さらに検討を進めていただきたいと思いますので、感染症部会としては今の風疹対策の進め方について了承するということでよろしいでしょうか。
ありがとうございました。
それでは、先ほど事務局からこれとこれだけはまとめてほしいというところは、今日まとまったということだと思いますので、そのほかのところについては、引き続き感染症部会で議論していくということでお願いしたいと思います。
では、事務局にお返しします。
○加藤エイズ対策推進室長 御議論いただきまして、ありがとうございました。
それでは、本日十分に御議論いただけなかった点につきましては、また改めて準備をして、事務局からお諮りさせていただきたいと思っております。
会議後でございますけれども、当方で記者ブリーフィングの予定としておりますので、よろしくお願いいたします。
また、次回の会合につきましては、事務局より改めて御連絡させていただきます。
本日は、お忙しい中、お集まりいただき、また、御議論いただきまして、大変ありがとうございました。
これで終了とさせていただきたいと思います。
○脇田座長 ありがとうございました。