2020年8月14日 第4回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ 議事要旨

政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

令和2年8月14日(金)

場所

書面開催

出席者

構成員(五十音順、敬称略、○:主査)

臼井 恵美子、大久保 一郎、小塩 隆士、○加藤 久和、小山 泰代 、
津谷 典子、樋田 勉

構成員以外の関係者

西郷 浩(早稲田大学政治経済学術院教授)
土屋 隆裕(横浜市立大学データサイエンス学部教授)
大岩 洋(千葉県健康福祉部健康福祉指導課企画情報班班長)
川村 七海(埼玉県保健医療部保健医療政策課
     保健所・衛生研究所・県立大学担当主事)

議題

1.国民生活基礎調査におけるオンライン調査の導入について
2.国民生活基礎調査の推計方法の見直しについて

出席者からの提供資料

議事

 


議事1:国民生活基礎調査におけるオンライン調査の導入について(資料1)
 
(1)「現行の調査方法を基本としつつオンライン化を図る」という事務局案について

 オンライン調査の導入の方法に関する事務局案についてご了承いただいた。意見等は以下のとおり
 
(小塩委員)
 原則論としては、調査票の再編や調査時期・系統の一元化など調査方法を抜本的に見直した上でオンライン化を図る方がよいが、現実的な対応としては事務局案でよいと思う。
 
(小山委員)
 厚生労働行政の根幹を成すデータとしての役割や、公的統計としての品質を維持するという目的を踏まえ、調査票の大幅な改編を避け、現行に近い内容でオンライン化を図るという方針を選択することは合理的な判断である。
 
(津谷委員)
 厚生労働省の政策立案と施策のために必要不可欠な情報を当調査が収集していることを考慮すると、現行の調査方法をできる限り保持して、オンライン化を図るべきである。
 一方、調査票の再編や調査時期・系統を一元化するなど調査方法を抜本的に見直した上でオンライン化を図ることは、相当な調査項目の削減を伴うことが予想され、費用対効果の面からも期待できないのではないか。
 
(大岩千葉県健康福祉部健康福祉指導課企画情報班班長)
 新型コロナ感染拡大防止を図る観点から、調査員調査よりオンライン調査の方が適していることや、調査の周知が徹底できれば、都市部の若年・単独世帯の回収率の向上が見込まれることなどにより賛成である。
 
(西郷早稲田大学政治経済学術院教授)
 国勢調査など、他の世帯調査における先行例を参考にしながら当調査にもオンライン調査が浸透することを望む。
 
(川村埼玉県保健医療部保健医療政策課保健所・衛生研究所・県立大学担当主事)
 調査票の簡素化により、時系列データの連続性が損なわれる点は大きな課題ではあるが、現行の調査方法のままオンライン化を図ることとなれば調査員の負担が更に増え、結果、調査員が確保できない事態となることを懸念している。オンライン化を図りつつ調査を持続的に実施していくためには、調査票を簡素化し調査員の負担軽減を併せて行うことが不可欠ではないか。
 ⇒事務局からのコメント
 オンライン調査の導入に伴い、調査員の業務負担の増加が想定されることから、調査対象世帯からのオンライン回答に関する疑義はもちろんのこと、調査に関する一般的な質問に対しても対応できるようコールセンターの設置を併せて予定しており、これにより調査員の業務負担の軽減を図りたい。
 なお、オンライン調査は、現行の調査方法を基本として開始するが、導入後の状況も踏まえ、必要に応じて調査事項の削減など段階的な見直しも検討していきたい。
 
 
(2)議事1に関するその他意見等
 
 議事1について、その他意見等は以下のとおり
 
・オンライン調査の導入の際の懸念事項について
 
(小塩委員)
 現行の調査方法を基本としてオンライン化した場合のデメリットとして、「予算確保が困難」とあるが、オンライン調査を導入するにあたりこの点は大きな制約とはならないのか。
 ⇒事務局からのコメント
 当初案では、オンライン調査システムと電子調査票の2つの開発を視野に入れて検討していたが、概算要求時点においてオンライン調査システムについては、政府統計共同利用システムを活用することとし、コストカットを図った。
なお、電子調査票の開発に必要な経費は、予算確保に向け最善を尽くしたい。
 
(小山委員)
 調査のオンライン化に期待されるものは、実査に関わる者と回答する者双方の作業負担の軽減だと思う。これまでのワーキンググループの場でも、審議協力者として参画している自治体の代表者からも負担軽減に関する意見があった。その点も実現できるよう今後十分に検討するとともに、各自治体に対し調査へ協力していただけるよう丁寧な説明が必要
 
(津谷委員)
 現行の調査方法を基本とするということは、現行の調査票をできる限り踏襲することになると思うが、そのオンライン化については、十分に時間をかけ、慎重に準備することが必要であり、複雑かつ多岐にわたる調査票のオンライン化には多くの時間とコストとマンパワーが必要
 また、オンライン化を実施するに際し、できれば試験的な調査を事前に行うことが望ましいが、試験的な調査を実施することが難しいようであれば、令和4年調査は全調査地区をオンライン調査の対象とするのではなく、一部の調査地区を選定してオンライン調査を実施することも一つの選択肢ではないか。
 
・オンライン化した際の調査票の回収について
 
(臼井委員、小山委員)
 オンライン化とは、紙の調査票を一切用いず、調査すべてをオンラインで実施するということか。その場合、PCやスマホに使い慣れていない調査対象者へのサポートはどのようにするのか。高齢者世帯ではこの点が障害になる恐れがあり、結果的に調査員が「IDなどの配布」や「督促」などの業務に加え、高齢者に代わりPCやスマホの操作の手助けをすることも必要になるのではないか。高齢者世帯が調査対象から脱落しないよう支援が必要
 ⇒事務局からのコメント
 事務局案は、従来の紙の調査票に加えて、電子調査票によるオンラインでも回答できるよう、調査対象者の利便性の向上を図ることを目的とした調査方法の見直しである。PCやスマホで回答することが困難な者や、PCやスマホを持っていない者などについては、これまで通り紙の調査票により回答していただくことを想定している。
 なお、電子調査票によるオンラインでも正確に回答していただけるよう、①調査員が各世帯を訪問した際に、ID・パスワードの配布とともにオンライン回答の説明用紙も併せて配布、②コールセンターを設置し、操作方法などの問合せに対応するなどの対策を講じる予定でいる。

 
(小塩委員)
 若年層は、オンラインでの回答を選択する者が多いと思うが、オンライン調査を実施する際は、オンラインでの回答をメインとし、紙での回答はサブにするような意図的な誘導をしてもよいのではないか。
 
(大岩千葉県健康福祉部健康福祉指導課企画情報班班長)
 オンライン調査導入後も、都市部の若年・単独世帯の回収率が低い場合は、調査事項の削減など調査方法の見直しが必要ではないか。
 
・オンライン化した際の公表時期について
 
(小山委員)
 オンライン化によって、データ入力に要する時間が大幅に短縮されると思うが、それにより調査結果の公表時期が早まる可能性はあるのか。
 ⇒事務局からのコメント
 調査の回答は、紙の調査票か電子調査票のいずれかの選択になるので、引き続き、 紙の調査票の受付・審査やデータ入力は必要となる。今後、オンライン回答率が大半を占めるようになれば、受付・審査やデータ入力期間が短縮されることになるため、調査結果の公表の早期化も期待できると考えている。
 
議事2:国民生活基礎調査の推計方法の見直しについて(資料2)
 
 議事2について、主な質問等は以下のとおり
 
・新推計②と新推計③の違いについて
 
(小塩委員)
 新推計②と新推計③は、平成21年と26年で少し結果が異なっている。その理由は9~10頁で説明されており、内容も理解した。しかし、この両年の違いはたまたまなのか、それとも構造的要因によるものなのか。
 ⇒事務局からのコメント
 この2年分のデータだけでは判断ができないため、今後、他の年次データにより検証を行いたい。
 
(津谷委員)
 新推計③と新推計②の結果を比較検討して、これら2つの新推計方法には大きな違い・変化はみられないことから、どちらを採用しても問題ないのではないかと思う。いずれにしても、現行の推計方法と比較して相当な改善がみられることは評価できるのではないか。今回、新たに複数の推計方法を用いて再集計を行い、その結果を比較・検証したことは有意義なことであったと思う。
 
・現行の推計方法と新推計③の違いについて
 
(小山委員)
 表5、表6同様であるが、母子世帯の「増減③(l-j)」をみると、一部の区分で2ポイント程度変化があるが、これはどのような要因によるものか。
 ⇒事務局からのコメント
 母子世帯の拡大乗数を現行推計から新推計③への変化でみると、「30~34歳」「35~39歳」「40~44歳」(以下、「30~44歳」という。)は2倍以上大きくなっており、また、他の年齢階級と比べても変化が大きくなっている。
 表5の貯蓄額については、30~44歳の母子世帯が比較的貯蓄がある世帯が多いため、「貯蓄がある」が+1.9ポイントとなり、その影響により「貯蓄がない」が△2.0ポイントとなっている。
 また、表6の借入金については、30~44歳の母子世帯が比較的借入金がない世帯が多いため、「借入金がない」が+2.1ポイントとなり、その影響により「借入金がある」が△1.6ポイントとなっている。
 
・新推計による遡及について
 
(小塩委員)
 前回のワーキンググループでも意見しているが、この新推計方式を用いて平成21年以外の貧困率の値も遡及改訂をしていただきたい。1年分の集計でもかなり時間がかかるようであるが、方法論さえ確立できれば外部機関への委託も可能かと思う。
 
・新推計③に基づいた新たな推計方法の提案
 
(土屋横浜市立大学データサイエンス学部教授)
 新推計③の方法と同様の考え方に基づき、別紙の推計方法を考えてみたので検討してはどうか。
 
(西郷早稲田大学政治経済学術院教授)
 土屋教授の別紙推計方法のレイキングについてのご意見、試算してみてはどうか。土屋教授がプログラムか少なくともその骨組みをお持ちなので、実行しやすいと拝察する。
 ⇒事務局からのコメント
 土屋教授の御提案内容につきましては、今後検討させて頂きたい。

照会先

政策統括官付参事官付統計企画調整室

電話:03-5253-1111(内線7373)