令和2年度第5回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録

日時

令和2年7月27日(月)15:00~

場所

田中田村町ビル5D会議室

議事

 

○医薬品安全対策課長 それでは、定刻を若干過ぎておりますが、令和2年度第5回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開会いたします。本日御出席の先生方におかれましては、お忙しいところ、どうもありがとうございます。本日の調査会についても、新型コロナウイルスの感染拡大の防止の観点から、一般傍聴は制限ということで、また、報道関係者の皆様に限り傍聴可としております。カメラ撮りについては、冒頭から禁止とさせていただいております。御理解、御協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。議事録については、後日、ホームページに掲載いたします。また、審議の方法についても、対面ではなく、Web開催としており、委員及び参考人の先生方は、外部より審議に御参加いただくこととなります。そのため、(前回の調査会で音声が)若干遅れたということもありますし、対面での進行と一部異なる部分がありますので、議事に先立ち、議事の進行方法について事務局より事前に説明させていただきたいと思います。

○事務局 それでは、事務局より御説明申し上げます。基本的には前回の調査会と同様ですが、改めて御案内させていただきます。まず、ハウリング防止のために御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますよう、お願いいたします。御意見、御質問をする際にはミュートを解除し、初めに御自身のお名前をお知らせください。発言のタイミングが重なったり、あるいは音声のみでの判別が難しいほど混雑した場合には一度発言を控えていただき、調査会長から順に発言者を御指名いただきます。会議中、マイクの調子が悪くなるなど、ほかの出席者にとって聞きづらい状況が続く先生におかれましては、音声の代わりにメッセージにて御意見等を記入していただくよう、お願いする場合があります。その他、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事前にお伝えしております事務局の電話番号まで、御連絡をお願いいたします。また、前回、事務局のサーバのダウンがありましたけれども、このような事態が発生した場合には、事務局から一斉にメールにて御連絡を申し上げますので、メールの御確認をお願いいたします。御不便等をお掛けするかもしれませんが、御協力のほど、よろしくお願いいたします。

それでは、ここからの議事進行については、調査会長の五十嵐先生にお願いいたします。

○五十嵐座長 皆さん、こんにちは。調査会長の五十嵐です。今日の座長を務めますので、どうぞよろしくお願いいたします。議事に入る前に委員の出欠状況等について、事務局から説明をお願いします。

○事務局 本日の委員の出欠状況ですが、6名中6名全員に御出席いただいております。薬事・食品衛生審議会の規程により、本日の会議が成立することを御報告申し上げます。

続いて、本日の参考人の先生方を御紹介申し上げます。議題1、一般用医薬品ロラタジンのリスク区分については、日本耳鼻咽喉科学会を代表しまして、京都第二赤十字病院副院長・耳鼻咽喉科部長の出島健司先生、議題2、ラニチジン塩酸塩又はニザチジン製剤の使用による健康影響評価について、国立医薬品食品衛生研究所安全性予測評価部長の広瀬明彦先生に御出席いただいております。

○五十嵐座長 続いて、審議参加に関する遵守事項について、引き続き御説明をお願いします。

○事務局 本日御出席の委員及び参考人の方々について、議題1の対象品目、競合品目の製造販売業者からの過去3年度における寄附金・契約金などの受取状況を御報告いたします。対象品目・対象企業及び競合品目・競合企業については、事前にリストを各委員、参考人にお送りして、確認を頂いているところです。柿崎委員より、サノフィ株式会社より50万円以下のお受取り、出島参考人より、サノフィ株式会社より50万円以下のお受取りとの御申告を頂いております。よって、全ての委員におかれましては、意見陳述、議決いずれにも加わることができます。また、参考人についても、意見陳述が可能ということを確認しております。なお、これらの申告について、追ってホームページにて公表させていただきます。

続いて、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告申し上げます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告を申し上げます。委員の皆様には、会議の都度、お手数をお掛けしておりますけれども、引き続き、よろしくお願いいたします。御報告は以上でございます。

○五十嵐座長 ただいま事務局から御説明いただきました審議参加に関する遵守事項についてはよろしいでしょうか。特にないようですので、競合品目・競合企業の妥当性を含めて了解を頂いたものといたします。次に、事務局から今日の資料の確認をお願いします。

○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。資料はあらかじめメール等でお送りさせていただいておりますが、議題1に関しては、資料1-1と資料1-2、当日配布資料として、ファイルを2つお送りしております。「抗ヒスタミン作用を有する一般用医薬品の重篤副作用症例について」というものと、この「別紙」の2つのものです。委員の方々にはメールでお送りしておりますけれども、恐縮ですが、傍聴の方々におかれましては、ホームページに掲載しておりますので、そちらを御確認ください。議題2に関しては資料2-1、議題3に関しては資料3-1から資料3-3となります。お手元にない先生方がいらっしゃいましたら、お知らせをお願いいたします。また、資料としては、このほか、議事次第、資料一覧、委員・参考人一覧及び競合品目・競合企業リストをあらかじめお送りさせていただいております。以上でございます。

○五十嵐座長 委員の先生方、参考人の先生方から何かありますか。よろしいでしょうか。

では、議題に入りたいと思います。議題1、一般用医薬品ロラタジンのリスク区分について審議をしたいと思います。事務局から御説明をお願いします。

○事務局 事務局より御説明させていただきます。まず、資料1-1「製造販売後調査の終了に伴うリスク区分の検討について」を御覧ください。表に記載されている品目は、現在、第1類医薬品に区分されており、この度、製造販売後調査の終了に伴い、一般用医薬品としてリスク区分の検討をお願いするものです。

まず、一般用医薬品のリスク区分の移行の流れについて御説明いたします。7ページ目を御覧ください。図の左から順に御説明いたします。販売開始後原則3年間は製造販売後調査が行われ、その期間は要指導医薬品に区分されます。製造販売開始後2年以降で、特別調査の目標症例数を集めた時点で中間報告書が提出されます。中間報告書をもって安全対策調査会で一般用医薬品としての販売の可否について評価いたします。

次に、製造販売後調査終了から1年間は第1類医薬品として区分されます。現在、ロラタジンはこの段階にあり、第1類医薬品に分類されています。この1年間に一般用医薬品としてのリスク区分を決定することとなります。本日は図の2、リスク区分の判断の安全対策調査会に当たります。リスク区分の検討手順としては、まず安全対策調査会の調査審議に当たり、必要に応じ関係学会等の有識者等の出席を求め、意見を聴取し、事前整理を行います。その結果、厚生労働省では、変更案についてパブリックコメントを行います。

次に、医薬品等安全対策部会において、安全対策調査会における事前整理やパブリックコメントの結果等を踏まえ、調査審議を行い、リスク区分の変更の要否について答申を得るといった手続をすることとなっております。

続いて、一般用医薬品のリスク区分を説明させていただきます。6ページ目を御覧ください。第1類医薬品は、その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害を生ずるおそれがある医薬品であって、その使用に関し特に注意が必要なものとして、厚生労働大臣が指定するもの又は新一般用医薬品として承認を受けてから厚生労働省令で定める期間を経過しないものとされており、薬剤師により販売され、患者に対する文書により情報提供の義務があります。

第2類医薬品については、その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害を生ずるおそれがある医薬品で、第1類医薬品を除くもので、厚生労働大臣が指定するものとされています。薬剤師又は登録販売者によって販売され、情報提供については努力義務とされています。第2類医薬品のうち、特別な注意を要するものとして、厚生労働大臣が指定するものについては、指定第2類医薬品とされており、販売は第2類医薬品と同様、薬剤師又は登録販売者により行われ、情報提供についても努力義務ですが、薬局開設者等は情報提供するための設備から7m以内の範囲に陳列する。指定第2類医薬品を購入する場合は、禁忌を確認すること及び専門家に相談することを勧める旨を購入者が確実に認識できるようにするなどの措置を取ることとされております。

第3類医薬品は、第1類医薬品、第2類医薬品に分類されないもので、薬剤師又は登録販売者により販売されます。

続いて、今回、御審議いただくロラタジンについて説明いたします。資料1-2を御覧ください。販売名はクラリチンEX、クラリチンEX OD錠で、効能・効果は、花粉、ハウスダストなどによる鼻みず、鼻づまり、くしゃみのような症状の緩和です。用法・用量は、成人15歳以上、1回1錠、1日1回食後で、毎回同じ時間帯に服用します。

同じページの下のほうにある製造販売後調査概要を御覧ください。特別調査とは、個別に薬局と契約して、モニター店舗でアンケート調査票を配り、アンケートによる調査を実施するものです。この特別調査では、調査症例数3,128症例で、副作用が69102件でした。内訳は、傾眠16件、口渇13件、倦怠感10件等でした。このうち重篤と判断された症例は、血便排泄1件でした。使用者若しくは薬剤師からの自発報告という形での一般調査では、報告された副作用は98153件でした。内訳は、頭痛17件、口腔咽頭痛10件、浮動性めまい8件等でした。このうち重篤と判断された症例は、難聴、アナフィラキシー反応、アナフィラキシーショック、各1件でした。重篤と判断された症例については、2ページ目にリストを記載しており、22ページ目以降に、各症例の詳細があります。

3ページ目を御覧ください。これまで御説明した副作用発現状況をまとめたものとなります。本剤で報告された副作用及び類薬の副作用発現状況を、その種類別にまとめております。また、同一有効成分を含有する医療用医薬品のデータも参考に掲載しております。

4ページ目以降は製造販売後調査報告書、25ページ目以降に添付文書、29ページ目以降に適正使用のためのチェックシートを添付しております。

また、委員及び参考人の先生方には、本日午前に当日配布資料としてファイルを2通お送りしております。こちらの資料では、本剤ロラタジンと、いずれも現在第2類医薬品に区分されている、類薬であるフェキソフェナジン塩酸塩及びエピナスチン塩酸塩との製造販売後調査における重篤副作用症例の発現状況の比較、及びそれぞれの調査会や部会での議論を記載しております。こちらも踏まえ、御審議のほど、よろしくお願いいたします。説明は以上です。

○五十嵐座長 続いて、本日、出島参考人においでいただいておりますので、御意見を頂きたいと思います。出島先生、お願いいたします。

○出島参考人 こんにちは。出島でございます。よろしくお願いします。ロラタジンに関しては、重篤な副作用として血便排泄がありますが、潰瘍性大腸炎合併症例ということで、ロラタジンによる副作用かどうかということについては、明確な因果関係については、はっきりしたものがないと考えて、医学的に矛盾しないと考えております。

一般調査において、アナフィラキシー反応、アナフィラキシーショック、難聴というものがありますが、いずれも重篤ではなく、かつ、既知の副作用ということですので、本ロラタジンに関しては類薬であるフェキソフェナジンあるいはエピナスチンなどと同等で、第2類に分類することが妥当ではないかと考えます。意見は以上です。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。それでは、本件について委員の先生方から御意見、御質問を頂きたいと思います。いかがでしょうか。特にありませんか。

○舟越委員 確認したいことがあります。

○五十嵐座長 舟越委員、どうぞ。

○舟越委員 亀田総合病院の舟越です。アナフィラキシーや今回の血便等で、ほかの副作用の報告の項目一覧を見ると、薬剤師が医療機関への受診が必要か必要ではないかを適切に記載で判断して、受診勧奨しているものもあれば、不要と判断しているものもありますけれども、今回のアナフィラキシーと血便関係のことに関しては、保険薬局の薬剤師のほうの受診勧奨等は、医療機関への勧奨はどうされていたのかが記載が見られないので、どうでしょうか。

○五十嵐座長 これは事務局への御質問ですね。

○舟越委員 はい、事務局への。

○五十嵐座長 何か情報はありますか。

○事務局 事務局でございます。我々のほうでも、ここに書いてある以上の情報はつかんでおりません。恐縮ですけれども、これ以上のところは分かりません。申し訳ございません。

○五十嵐座長 2ページに一般調査のNo.1とNo.2が、アナフィラキシー反応あるいはアナフィラキシーショックとなっています。1例目の方は薬剤師からの報告、のどの痛み、頭痛、吐き気ということで、これは本当のアナフィラキシーだったのかどうか分かりません。2例目は使用者からの報告で、アナフィラキシーとして治療、経過観察のために1日入院しています。舟越先生がおっしゃるような薬剤師の関与については分からないようです。舟越先生、それでよろしいですか。

○舟越委員 今回の件は承知しました。ただ、OTCは今後も薬剤師のほうの受診勧奨等が適切にされているかどうかが記載されていると、リスク回避にも非常によろしいのかなと思いました。以上です。

○五十嵐座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。特にありませんか。そうしますと、一般用医薬品ロラタジンのリスク区分については、ほかの類薬と同じように第2類医薬品とすることでよろしいでしょうか。特に反対の意見はありませんか。それでは、皆さん、御了解いただいたものと思います。では、この議題に関する今後の進め方について、事務局から説明をお願いします。

○事務局 御議論いただき、ありがとうございました。本日御審議いただいた結果に基づいて、パブリックコメント実施のための手続を進めさせていただきます。どうもありがとうございました。

○五十嵐座長 この議題について、何か追加で御意見、御質問はありますか。よろしいでしょうか。では、出島参考人におかれましては、本日は貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございました。これ以降の議題については、先生から御意見を求める予定はありませんので、途中で御退席いただいても差し支えありません。本日はどうもありがとうございました。

○出島参考人 出島でございます。それでは、退席させていただきます。ありがとうございました。

(出島参考人退席)

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。それでは、次の報告事項に入りたいと思います。議題2、ラニチジン塩酸塩及びニザチジン製剤の使用による健康影響評価、議題3、メトホルミン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について、いずれもニトロソアミンの検出に関するものですので、議題2と議題3を続けて事務局から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○事務局 それでは、まず資料2-1について事務局より御説明差し上げます。事案の概要ですが、令和元年9月13日、欧州のEMA及び米国のFDAにおいて、ラニチジンの原薬及びその製剤から微量のNDMAが検出された旨の発表がなされております。これを受けまして厚生労働省では、令和元年9月17日に日本国内におけるラニチジンと、ラニチジンに類似の化学構造を有するニザチジンについて、日本国内における製造販売業者に対し、ラニチジン及びニザチジンの原薬及び製剤について、NDMAの含量の分析を指示しております。

ラニチジンについては、製剤において暫定基準値を上回ることが否定できないことが明らかになったこと等に伴い、10月4日までに全てのラニチジン製剤の製造販売業者により自主回収が着手されており、現在、新たな出荷はされておりません。

ニザチジンについては、2社のニザチジン製剤の一部のロットにおいて、基準値を上回るNDMAが検出されたことから、当該製造販売業者は、1023日以降、当該ロットに限定した自主回収を行っております。なお、その他のニザチジンの製造販売業者のニザチジン製剤では、全て暫定基準値以下であることが確認されています。

ラニチジン製剤を使用された方への対応としては、国内外ともにラニチジンから他の製剤への切り替えを行う場合においては、他の治療選択肢について、医療関係者に相談いただくようアナウンスしているところです。

NDMAが検出された原因ですが、ラニチジン及びニザチジン製剤においてNDMAが検出された原因は、まだ解明されていません。しかしながら、EMAによると、ラニチジンについては、ラニチジン自体の分解によりNDMAが生成された可能性があると推定されております。

ラニチジンとニザチジンの使用による健康への影響評価を行いました。ラニチジン及びニザチジン製剤中に含まれるNDMAの分析結果を基に、国立医薬品食品衛生研究所において、これらの製剤の使用による健康への影響評価が行われています。

その評価においては、次のような前提があります。1点目としては、ラニチジン及びニザチジンの経口製剤の発がんリスク評価については、使用実態調査の結果から使用期間に大きなばらつきが認められたため、学会のガイドラインを参考に標準的な使用期間として、短期間の使用と長期間の使用の2つの場合に分けて評価を行っております。また、リスク評価に用いるNDMAの含量は、短期間の使用については、全ての分析結果のうち最大の値を用いております。一方、長期の使用については、複数のロットが使用されることが想定されるため、製造販売業者ごとの分析結果の平均値のうち最大の値を用いることとしております。

また、こちらの評価については、発がんリスクは、ばく露期間に比例して増加するという考えに基づき行っておりますが、1年未満の短期的な使用については、定量的な評価に限界があることに留意が必要です。そのため、短期間の使用については、シナリオのほかに、評価の限界となる1年間毎日使用した場合の理論上のリスクも合わせて評価しております。

それでは、各製剤についてのリスクの評価結果について御説明いたします。まず、ラニチジンの経口製剤です。短期間の使用を想定した場合については、ラニチジン経口製剤300mgを8週間毎日服用したときの理論上の発がんリスクを計算しております。その結果、およそ50万人に1人の発がんリスクと計算されています。しかしながら、こちらには、先ほど述べたような短期間の評価に伴う限界があることを考慮しまして、1年間毎日服用した場合の理論上のリスクが、およそ8万人に1人となりますので、それより小さいと結論するのが妥当というように結論づけられております。

次に、ラニチジン経口製剤を長期間使用した場合については、ラニチジン経口製剤300mgを2年間毎日服用したときの理論上の発がんリスクは、およそ20万人に1人と計算されています。

次に、ラニチジン注射製剤について、発がんリスクを計算しています。ラニチジン注射製剤については、200mgを7日間毎日使用したときの理論上の発がんリスクとしては、およそ1億5,000万人に1人と計算されますが、こちらについても定量的なリスク評価の限界がありますので、1年間毎日使用した場合の発がんリスクを計算しますと、300万人に1人となりますので、それより小さいと結論するのが妥当と考えられます。

続いて、ニザチジン経口製剤です。短期間の使用を想定した場合としては、ニザチジン経口製剤300mgを8週間毎日服用したときの発がんリスクを計算しますと、およそ2,500万人に1人の発がんリスクと計算されます。こちらについても定量的なリスク評価の限界がありますので、1年間毎日服用した場合の理論上のリスクを計算すると、およそ380万人に1人となりますので、それより小さいと結論することが妥当と考えられます。

一方、長期間の使用を想定した場合としては、ニザチジン経口製剤300mgを2年間毎日服用したときの理論上の発がんリスクを計算しており、およそ560万人に1人と計算されます。

その他の参考情報として、4点挙げさせていただいております。まず、ラニチジンとニザチジンの年間使用患者数ですが、各製造販売業者が算出した使用患者数に基づきますと、2018年では、ラニチジン製剤は約63万人、ニザチジン製剤では約53万人と推定されております。2020年6月末時点での国内副作用報告症例の状況ですが、因果関係は明確ではありませんが、がんに関連する国内副作用報告症例がラニチジン製剤で報告されております。一方、ニザチジン製剤については、これまでのところ、報告はありません。

2020年6月末時点で、PMDAに報告されたラニチジン製剤及びニザチジン製剤の研究報告のうち、発がんに関連するものとしては動物試験の結果が1件報告されていますが、ヒトにおいて発がん性を示す疫学研究の報告はありません。動物試験に係る報告については、高用量のラニチジンを投与したラットにおいて、胃の神経内分泌細胞の過形成に加え、腫瘍性病変として胃カルチノイドを認めたとするものでした。また、NDMAに関連するものとして、ラニチジン服用後に尿中NDMAが増加したとの報告が1件報告されています。

また、欧州のEMAの報告書において、ニトロソアミンと発がんの関連性を検討した疫学研究についての文献調査が行われております。その結果においては、ラニチジン又はニザチジンの疫学研究は確認されていない状況です。資料2-1についての御報告は以上になります。

○事務局 引き続き資料3-1、メトホルミン製剤に関して説明をさせていただきます。ラニチジン、ニザチジンより遅れて動きがありますので、まだこちらは健康評価のほうまで来ておりませんが、開始までの動きがありますので、御説明をさせていただきます。資料3-1を御覧ください。

昨年12月にシンガポール保健科学庁より、メトホルミン製剤からNDMAが検出されたことに伴い、事業者が自主回収に着手した旨公表されました。これを踏まえ、ラニチジン、ニザチジンと同様に、厚生労働省として、同年12月9日にメトホルミン製剤の製造販売業者15社に対して、製剤及び原薬についてのNDMAの分析を実施するよう指示したところです。これを受け、今年4月27日、メトホルミン製剤の一部のロットから基準値を上回るNDMAが検出されたとして、国内の製販業者2社、大日本住友製薬株式会社と日本ジェネリック株式会社が自主回収に着手をしたところです。

2番、海外におけるこれまでの対応ですが、先ほど御説明したとおり、シンガポールに加えEMA、FDA等々で回収に関するアナウンスがされているところです。また、令和2年2月にはカナダ、5月には韓国、米国において、やはり許容摂取量を上回るNDMAが検出されたため、自主回収が実施をされたということです。

これら海外規制当局は、製剤を服用している患者に向けた情報として、低レベルのNDMAは食品にも含まれていること、さらには服用の中止によるリスクは微量のNDMAによる影響より重大であること等から、自己判断による服用を中止すべきではないということをアナウンスしているところです。

2ページの3番、NDMAが検出された原因です。これについては、やはりラニチジン、ニザチジンと同じように、まだ原因不明であり、各国規制当局と協力し、調査を進めておりますが、一部先ほどの日本の製造販売業者による分析の中で、NDMAが原薬からは検出されておらず、製剤からのみ検出されていることが判明し、原因の1つとして、PTPシートに印刷されたインクが原因で、NDMAが製剤後に、成型した後に生成してくる可能性が示唆されたところです。この事実を踏まえ、今年4月27日、こうではないかという示唆された企業以外の方々を含め、メトホルミン製剤のシートのインク成分を確認し、必要に応じてインク成分を変更するといったような指示をしたところです。

4番、他のメトホルミン製剤の分析結果ですが、現時点については、2社以外の製造業者からメトホルミン製剤については検出をされていないところです。今後の対応として、各国の当局と協力し、引き続き原因の特定を進めるとともに、現在、製剤を服用中の方に対しては、引き続き自己判断で製剤の服用を中止しないよう注意喚起を行うこととしております。

また、メトホルミン製剤の分析結果を踏まえ、メトホルミン製剤の服用による健康影響について、リスク評価を行うとともに、医療関係者や患者様に対して必要な情報提供を行うこととする予定です。事務局から説明は以上です。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。本日は広瀬参考人においでいただいておりますので、御説明、コメントをお願いします。

○広瀬参考人 国立衛研の広瀬です。概要については、事務局から説明していたことに特に付け足すことはありません。本件に対するリスク評価については、2年前にサルタン系の製剤に対してのリスク評価を行ったわけですが、今回はその例にならって評価を行ったことになります。

前回の評価のときには、リスク評価は細かい手法で2通りの手法、ベンチマークドーズ、あるいはTD50という方法があったのですが、今回は安全側の評価ということにし、幾つも数字があってもといったことがありますので、前回、安全側に評価であったTD50を使った手法、これはICH M7でも標準的に使われている方法ですが、それに基づいて計算を行いました。

前回も、サルタン系の場合は数年単位のばく露をしたときのリスク評価を行ったわけですが、今回はそれよりも更に短いばく露での評価の依頼ということで受けたわけです。この発がん物質に対してのリスク評価ということになると、これは遺伝毒性、DNA傷害性による発がん性ということもあり、メカニズムの観点から、理論的なことではありますが、DNA傷害を受ける機会が、すなわち発がんのリスクに比例するであろうと。そういった考え方がリスク評価、こういう遺伝毒性、発がん性物質については一般的に利用されていますので、そういった観点でばく露時間がリスクに比例するといった観点でリスク評価を行っています。

ただ、一生涯、70年から80年に対して1年未満という短い期間のばく露についてリスクはどうかということになりますと、それほど短い期間と傷害リスクの大きさについて、もちろん詳細な知見があるわけではありません。それは理論的な確率の推測がどの辺まで説明できるかということに掛かってくるわけですが、その辺に関してもICH M7においては、遺伝毒性、不純物質のリスクの短期間への補正に関しては、約80倍ぐらいまで、年数にすると大体、一生涯が70から80年だとすると、1年単位ぐらいまでのばく露というところまでは補正した許容値を示している。そういったことも推測して、報告書にも書きましたが、外国のリスク評価機関で一般的に短期間の発がん性物質のリスク評価を行う際には、数年単位までは行う例は知っているのですが、それより短い例で使われることはないといったこともありますので、また1年未満の短い期間まで補正するのは、ばく露量にすると100~1万倍高いという、1万倍にまでなってしまうと動物のばく露実験用量と同じぐらいになってしまいますので、それはやはり高すぎるであろうということを考慮して、1年単位までのところが評価できる限界であろうといったことで、今回は1年より短いばく露についても1年間ばく露したものとしてリスク評価を見積もりました。ただ、より短期間ではそれよりはどのぐらいリスクが低いかが分からないので、現時点での表現としては1年間ばく露したリスクよりは低いであろうと、そういったことで今回はリスク評価させていただきました。

数字の導き方に関しての解説は以上になります。あとは、短期については最大ばく露量、長期については平均的なばく露量、そういったことでばく露評価をさせていただきました。以上です。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。それでは、まず議題2について御意見、御質問等はありますか。よろしいですか。

○伊藤委員 ラニチジンとニザチジンの構造が類似しているということで、今回その両方を確認されたということだと思うのですが、構造が類似ということでしたら、Hブロッカーはほかにも幾つかある中で、化学構造上、NDMAが生成する可能性がどのぐらいあるのかといいますか、理論的にこういう理由で生成の可能性があるというような化学式とかを示していただくと、ほかのは大丈夫というような安心が持てるのかと思うのです。

議題3にも関わってしまうかもしれないのですが、NDMAに関して昨年辺りから結構さみだれ式にいろいろな化合物で、いろいろな医薬品で問題が出てきているわけですが、メトホルミンのほうはそのものではなくて包装ではないかということではあるのですが、何かこういったもので今後も可能性があるとかいうようなことを、少し系統だった研究とかができたらいいのではないかと思うのですが、いかがですか。

○事務局 事務局よりお答えさせていただきます。まず構造式の件ですが、Hブロッカーの中でもラニチジン、ニザチジンに関しては、構造の中にジメチルアミノ基又はニトロ基を有しています。ほかのHブロッカーについてはそういった特徴はありませんので、構造上大きく違うというところはあります。ただ、資料の提示の仕方としては、先生から御指摘があったように、化学構造上の特徴という話であれば、そういった資料の見せ方も今後検討していきたいと思っております。

その他の、これまでサルタン系やHブロッカー又はメトホルミンというような、ポロポロこういった件が出てきておりますので、その他の医薬品については、優先順位も付けながら国際的な議論も踏まえつつ検討してまいりたいと考えているところです。以上です。

○伊藤委員 ありがとうございました。

○五十嵐座長 私から質問ですが、このインクに関しては、ほかの薬剤でも使っている可能性があるわけですよね。そういうチェックはされたのでしょうか、あるいはこれからする予定などはあるのでしょうか。

○事務局 資料3-1の2ページの3番の2の下に※があり、印字インクの関係が書いてありますが、印字インク中のニトロセルロースと原薬由来のジメチルアミンとが反応してということになっており、この印字インクの中にニトロセルロースを使っているのが、全てに使っているわけではなくて、一部特殊な用途で使っているインクのときに使われていると。

原薬由来のジメチルアミンとしても、ロットや原薬製造所においての多分、残存のジメチルアミンの量によって反応するしないがあるのではないかみたいな話があるので、一律的にインクが全てというわけではないところです。

具体的にどれぐらいの条件があればということがまだまだ不明なところではありますが、基本的には通知等で広く情報提供を各製造販売業者にさせていただいておりますので、それも踏まえて自社製造販売承認品のリスク評価は、各社進めていただいているという状況かとは思います。以上です。

○五十嵐座長 分かりました。ありがとうございます。そのほか委員の先生方、御質問等はありますか。

○舟越委員 事務局に質問があります。ラニチジン、ニザチジンの対応ですが、ニザチジンはOTCも販売していると思いますが、今回、医療用医薬品の部分でいろいろ評価されていると思いますが、OTCの販売状況やOTCに対する注意喚起等は、今回OTCのニザチジンは特に原薬のレベルで問題がないということであれば、それを明記しておいたほうが分かりやすいかと思うのですが、いかがですか。

○事務局 事務局よりお答えさせていただきます。御指摘ありがとうございます。ニザチジンについては、先生が御指摘のとおりOTCがあります。ただ、分析結果については基準値以下でしたので、その辺が分かるような資料にはしたいと思います。あと、ラニチジンについてはOTCはありません。状況としては以上のような状況です。

○舟越委員 医療関係者ほうには十分対応等は伝わっているのですが、薬局、消費者の方へそういったものが情報提供されているといいと思いましたので、コメントさせていただきました。ありがとうございます。

○事務局 ありがとうございます。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。ほかはいかがですか。

○望月委員 今回ラニチジン、ニザチジンのリスク評価をしていただいて、先ほど御説明も頂き、このリスク評価の結果をどう解釈するのかがとても難しいと感じたのですが、実際、今回のリスク評価結果が医療関係者に連絡されて通知されたときに、患者さんに対してどのようにこれをリスクコミュニケーションしていくのかという辺りが、とても難しいのではないかという感じを受けまして、厚生労働省として、リスクコミュニケーションをこういう場合にどのようにしていくのか。諸外国では、食品中の含量とか、いろいろ例示を出しながらやっていくとかがあると思うのですが、どのように考えていらっしゃるのかをお聞きしたいと思います。

○事務局 御質問ありがとうございます。今回、医療現場へ還元する情報としては、バルサルタンのときの議論を参考にし、まずリスク評価の計算値を出させていただきました。諸外国のように食品と比べるというような議論もバルサルタンのときにもありましたが、全くバックグラウンドが違うものの比較はなかなか厳しいのではないかというような議論もありましたので、海外では、食品に比べて低いというようなアナウンスがされているというところの情報提供でとどめているような状況です。

また、今回のリスク計算の結果について、リスクは低いとか、高いとかと、なかなか主観的な表現も難しいのかと思い、まずは定量的な情報を医療現場の医療従事者に御提供させていただくことで、患者さんの背景情報等も含めて丁寧に御説明いただくのがいいのかと、事務局としては考えているところです。

○望月委員 ありがとうございます。これから先、ますますリスクコミュニケーションはとても重要になっていく時代かと思うのです。その情報提供の在り方について、医療の専門家あるいは化学の専門家、それから消費者、患者さんなどの代表みたいな人たちで、このリスクコミュニケーションの在り方とかをひとつ検討いただけるといいと思いました。

○事務局 御指摘ありがとうございました。

○五十嵐座長 ほかにいかがですか。私のミスで、議題3について先ほど私が質問してしまいました。改めまして、議題3についてはいかがですか。

○柿崎委員 メトホルミンは配合薬が幾つか発売されているかと思うのですが、今回の調査対象として配合薬もカバーされているという理解でよろしいでしょうか。

○事務局 事務局より回答します。はい、今回メトホルミンを含有する配合剤は4剤ありますが、そちらも評価に含まれております。

○柿崎委員 分かりました。

○五十嵐座長 ありがとうございました。ほかはいかがですか。よろしいですか。それでは、議題2と議題3については、これで終了したいと思います。本日、予定をしていました議題は以上で終了ですが、事務局から何かありますか。

○事務局 事務局からです。特にありませんが、次回の開催については改めて御連絡申し上げたいと思います。以上です。

○五十嵐座長 それでは、本日の調査会はこれで閉会にします。どうもありがとうございました。