第76回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会

日時

令和2年7月13日(月)15:00~17:00

場所

労働委員会会館 講堂

議事

 
○内藤部会長 定刻より少し早いですが、委員の先生方おそろいになりましたので、ただいまから、第76回「労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会」を開催いたします。
 本日は、公益代表委員の清水委員、高木委員、山本委員、使用者代表委員の友利委員は御欠席になります。
 本日の議題に入る前に、委員の定足数につきまして事務局から御説明いただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○村上勤労者生活課長補佐 それでは、事務局より申し上げます。
 定足数の確認でございます。労働政策審議会令第9条の規定によりますと、定足数は全委員の3分の2以上、または公労使委員の各3分の1以上とされているところでございますが、本日、定足数を満たしております。
 以上でございます。
○内藤部会長 ありがとうございます。
 それでは、本日の議題でございますが、議題1「中小企業退職金共済制度の現況及び令和元事業年度決算について」、議題2「特定業種退職金共済制度の財政検証について」でございます。
 それでは、最初に事務局からタブレットの使用方法の御説明をお願いいたします。
○村上勤労者生活課長補佐 今回はペーパーレスでの開催となりますので、タブレットの使用方法を事務局より説明いたします。
 お手元のタブレット、右側にございます丸いホームボタンを押していただきますと、本日の会議の資料一覧が表示されます。
 資料は、議事次第、資料1から3、参考資料1から5を用意しております。
 画面の表示は参考1から5、議事次第、そして、資料1から3と表示されていると思います。御覧になりたい資料をタッチしていただきますとファイルが開きます。ファイルを閉じたい場合には、もう一度タッチしていただきますと左上に労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会、あるいはマイプライベートファイルという表示がされると思いますが、これをタッチしていただきますと資料一覧が表示されます。また、次の資料をタッチしていただくという形でそれぞれ資料を御覧いただければと思います。
御使用方法を示しました説明書も御用意しております。また、うまく操作できない場合には事務局までお申しつけいただければと思います。
 以上でございます。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 それでは、次第に沿って議事を進めてまいります。
 議題1「中小企業退職金共済制度の現況及び令和元事業年度決算について」に入ります。
 では、事務局から御説明をお願いいたします。
○中條勤労者生活課長 それでは、議題1の「中小企業退職金共済制度の現況及び令和元事業年度決算について」、御報告をさせていただきます。
 資料1をお開きいただきたいと思います。
 まず、資料1の1ページでございますけれども「中小企業退職金共済制度の現況」をお示ししております。
 まず、上段の「1 新規加入状況」について御説明します。
 一番下の段が令和元年度の実績でございますが、左側の共済契約者数、つまり加入事業主の数で見ますと、新規加入は合計で1万9,898件となっており、右側の被共済者数、つまり従業員の新規加入数は合計で49万8,441人となっております。前年度と比較いたしますと、共済契約者数は一般中退の増加が大きかったこと、被共済者数は一般中退と建設業の増加が大きかったことにより、全体としては増加となりました。
 次に、下段の「2 在籍状況」についてです。
 令和元年度末現在、左側の共済契約者数は合計で54万8,049件となっており、また、右側の被共済者数につきましては合計で570万1,167人となっております。中を見ていただきたいのですが、平成28年度以降、建設業につきまして被共済者数が大きく減少しております。こちらは表の下の(注3)にございますとおり、平成28年度から被共済者数について制度加入の実態と乖離が生じないよう、退職金の受給資格がない掛金納付月数12月未満の被共済者のうち、加入後10年間退職金共済手帳が未更新となっている者について統計から除外したためでございます。
 また、平成30年度以降、平成29年から平成30年度にかけて清酒製造業の被共済者数が大きく減少しておりますが、こちらも同様に(注4)にございますように、平成30年度から退職金の受給資格がない掛金納付月数24月未満の被共済者のうち、加入後10年間退職金共済手帳が未更新となっている方について統計から除外したためでございます。
 2ページを御覧いただきたいと思います。「3 退職金等支給状況」についてです。
 令和元年度の支給件数は合計で33万2,069件、支給総額は合計4,242億6,700万円となっております。中を見ていただきますと、まず建設業につきまして支給件数が平成28年度以降、大幅に増加をしております。こちらは、この年度から退職金の不支給期間を掛金納付月数24月未満から12月未満に緩和したことが要因であると考えております。
 また、その隣の清酒製造業、平成29年度におきまして1件当たりの支給金額が大幅に減少しておりますが、これは同年度におきまして3年以上手帳更新がない被共済者に対して調査を実施し、退職金受給資格のある方への退職金の請求を促した結果、退職金支給件数が前年度比で大幅に増加し、その多くが短期間加入者からの請求であり、受給者の平均掛金納付月数が前年度に比べ大幅に減少したことが要因と考えられます。
 続きまして、3ページを御覧いただきたいと思います。
 左上が、一般中退の平均掛金月額の状況でございます。
 掛金月額の設定は5,000円以上3万円以下の中から選択できることとなっております。また、短時間労働者は2,000円、3,000円、4,000円となっておりますが、短時間労働者の掛金も含めた令和元年度の平均掛金月額は9,505円となっておりまして、近年は一貫して増加傾向にございます。
 右上の表は、特退共の掛金日額の状況でございます。それぞれ日額で表のように決まっておりまして、林業の掛金日額につきましては、平成26年度に行われた特定業種退職金共済制度の財政検証の結果を踏まえ、平成27年10月から470円に変更されております。
 下の表でございますが、資産運用高状況についてです。令和元年度の運用資産高は合計で約5兆9,730億円となっており、そのうち一般中退が約4兆9,362億円を占めております。建退共は約1兆円、清退共は約42億円、林退共は約151億円でございます。
 資産運用の状況につきましては、4ページ以降に詳しい内訳を載せておりますので、4ページを御覧いただきたいと思います。
 まず4ページ、一般中退における資産運用の状況です。
 一番右側が、令和元年度末の数字です。自家運用につきましては、国債等の満期保有を行っておりますが、令和元年度の自家運用の利回りはプラス0.49%となっております。国債の低金利傾向を反映いたしまして、利回りが低下傾向にございます。委託運用につきましては、新型コロナウイルス感染症を背景といたします国内株式及び外国株式の急落による影響もあり、マイナス1.31%でございました。このため、一般中退の運用全体といたしましては、資料の一番右下にございますように、マイナス0.32%となっております。
 5ページを御覧いただきたいと思います。建退共における資産運用状況についてです。
 建退共では、中小企業に対する事業を給付経理、附帯的に実施している中小企業以外の企業に対する事業を特別給付経理に区分しておりますが、上段の表が給付経理、下段の表が特別給付経理となっております。上段の給付経理について御覧いただきたいと思いますが、右側にございますように、令和元年度の自家運用の利回りはプラス0.69%、委託運用の利回りはマイナス2.09%となり、全体の運用利回りはマイナス0.32%となっております。
 6ページでございます。清退共についてです。
 清退共におきましても給付経理と特別給付経理に区分しておりまして、上の給付経理におけます利回りの状況は、令和元年度の自家運用の利回りはプラス0.23%、委託運用の利回りはマイナス3.09%となり、全体の運用利回りではマイナス0.53%となっております。
 7ページは林退共でございます。
 令和元年度の自家運用の利回りはプラス0.48%、委託運用の利回りはマイナス1.52%となり、合計ではマイナス0.25%となっております。
 続きまして、令和元事業年度決算について御説明します。
 資料2を御覧いただきたいと思います。資料2ですが、こちらには勤退機構の貸借対照表及び損益計算書の要旨をお示ししております。
 なお、これまで勤退機構の決算資料につきましては給付経理及び業務経理を一くくりにしてお示しをしてきたところでございます。このたび、各事業の給付経理及び業務経理の内訳を分かりやすくするため、参考資料1として貸借対照表及び損益計算書を御用意いたしましたので、後ほど御参照いただければと存じます。
 それでは、まず資料2の1ページから御説明します。
 こちらは勤退機構全体の決算でございますが、下段の損益計算書の中身を見ていただきたいと思います。下の「臨時損失」の区分に「前期損益修正損」という項目がございまして、5億8,200万円が計上されております。これは昨年度の中退部会でも御説明しましたが、平成30事業年度決算の処理で中退共事業におけます責任準備金の計上に誤りがあったことから、令和元事業年度決算において修正を行ったものでございます。
 次に、一番下から3番目の数値でございますが「当期純損失」として令和元事業年度は機構全体で772億5,500万円を計上いたしております。このため、独立行政法人通則法にのっとりまして利益剰余金から780億7,000万円を取り崩し、当期総利益は一番下の段でございますが8億1,500万円となっております。
 個々の事業につきましては2ページ以降となります。
 2ページを御覧いただきたきたいと思います。2ページは一般中退の勘定についてです。
 下段の損益計算書を御覧いただきたいと思いますが、先ほど御説明しましたとおり、平成30事業年度決算において責任準備金の決算数値に誤りがございましたので、下段の損益計算書の臨時損失の区分に前期損益修正損として5億8,200万円を計上いたしております。また、令和元年度につきましては、金銭信託の評価損によって運用費用等が314億円と前年比310億円増となったことに加えて、運用収入等が156億円と前年比207億円減となったことで、558億4,000万円の当期純損失を計上しております。
 上段の貸借対照表を御覧いただきたいのですが、こちらの利益剰余金合計といたしましては3,741億円ということで、前年比558億円減でございます。
 3ページを御覧いただきたいと思います。建退共事業等勘定についてです。
 同様に下段の損益計算書を御覧いただきたいのですが、こちらにつきましても金銭信託の評価損によって運用費用が82億円と前年比81億円増となったことに加えて、運用収入等が48億円で前年比39億円減となったことで、令和元事業年度は218億5,100万円の当期純損失を計上しております。上段の貸借対照表を御覧いただきますと、利益剰余金合計が768億円と前年比218億円減でございます。
 4ページを御覧ください。清退共事業等勘定についてです。
 下段の損益計算書を御覧いただきますと、令和元事業年度は、責任準備金戻入として7,400万円を計上しており、前年比で2億7,400万円減となったことで9,500万円の当期純損失となりました。上段の貸借対照表を御覧いただきますと、利益剰余金合計は27億円と前年比1億円減でございます。
 5ページが、林退共事業等勘定についてです。
 同様に、下段の損益計算書を御覧いただきたいと思います。林退共は累積欠損金の解消を目指しているところでございますが、運用収入等が4,600万円と前年比6,000万円減となったことが主な要因となり、当期純損失として9,000万円を計上しております。これによりまして、上段の貸借対照表の繰越欠損金でございますが、前年度の6億2,300万円から7億1,300万円と悪化しております。
 6ページを御覧いただきたいと思います。こちらは決算確定までの流れを示したものでございます。
 令和元事業年度決算につきましては、独立行政法人通則法に基づきまして、令和2年6月30日に機構から厚生労働大臣に財務諸表が提出され、同年7月6日に大臣が承認いたしました。
 以上、簡単ではございますが「中小企業退職金共済制度の現況及び令和元事業年度決算について」の御報告です。よろしくお願いいたします。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 ただいま、事務局から議題1についての御説明がございましたが、諸委員の方々、御意見や御質問などがございましたら、よろしくお願いいたします。
○須永委員 ありがとうございます。
 資料を拝見しますと、共済契約者数や被共済者数ともに増加していますが、今般の新型コロナウイルス感染症の影響に伴う運用損失の結果として、多額の純損失が計上されております。やはり、この中退制度は長期にわたって安定的に運営されることが不可欠でありますので、必要な積立金の確保をはじめ、長期的視点で財政計画や運用計画の策定と検証を徹底していただきたいと思います。
 以上でございます。
○内藤部会長 須永委員、ありがとうございました。
 ほかに同様の御意見などございませんでしょうか。
 何か事務局からございますか。
○中條勤労者生活課長 御意見、どうもありがとうございました。
 須永委員のおっしゃるように、中長期的な視点で必要な累積剰余金の額等を確保していくということは非常に重要な点だと考えております。次の議題でも財政検証について御議論いただくことになっておりますが、そうした観点からも中長期の観点で安定的な運営を図っていくことが非常に重要だと考えております。続いての財政検証の議題でもそういったところを踏まえて御議論頂きたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 ほかの委員の方からは、御意見あるいは御質問はございませんでしょうか。
 それでは、続きまして、議題2「特定業種退職金共済制度の財政検証について」に進みます。
 この件につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○中條勤労者生活課長 それでは、次に議題2の特定業種退職金共済制度の財政検証につきまして、資料3に基づいて御説明します。
 資料3をご覧ください。
 まず、この議題2につきましては、昨年12月の第73回中退部会において御議論いただきました特定業種退職金共済制度の財政検証に続くものでございます。
 先の財政検証に係ります中退部会終了時には、部会長から委員の皆様の御意見を踏まえ、次回の財政検証に係る議論の際に事務局にて取りまとめ案を作成し、さらに議論を重ねていくようにという御発言がございました。しかし、昨年度末ごろから新型コロナウイルス感染症拡大の影響による金融市場の大幅な変動がございましたので、その状況を踏まえるため、令和元事業年度決算を基に再度計算をいたしましたので、これを基に御議論を頂ければと考えております。再度の御議論となってしまい申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
 それでは、資料3の1ページの目次を御覧いただきたいと思います。
 昨年12月と同様の資料構成となっておりますが、初めに昨年12月の財政検証における業種ごとの対応案、新型コロナウイルス感染症による金融市場への影響、また、その影響により昨年12月の将来推計と実績の乖離状況等をお示しした後で、各業種における退職金共済制度の財政状況について御説明します。
 3ページを御覧いただきたいと思います。昨年12月の中退部会でお示しした財政検証における業種ごとの対応案ですが、簡単に御説明します。
 建設業につきましては、5年後に累積欠損金が生じる可能性があり、今後、単年度で100億円程度減少していく見込みであるため、予定運用利回りを引き下げつつ、制度の魅力を損なわないように掛金日額の引上げを提示させていただきました。当時の建設業界からの御意見といたしましては、掛金日額を310円から320円に、予定運用利回りについては財務状況の悪化を軽減しつつ退職金の水準を確保することが必要である点も考慮し、1.6%以上1.8%以下とすることが適当とされておりました。
 清酒製造業につきましては、潤沢な累積剰余金があるため、制度の当面の運営には支障は生じないものと考え、予定運用利回りの見直しはしないものの、資産運用面の課題に対応するため、委託運用部分の一般中退との合同運用を開始することを提示させていただきました。
 唯一、累積欠損金が生じております林業につきましては、累積欠損金を着実に解消するため、予定運用利回りの引下げ、業務費用の削減等の更なる対策を講ずることを提示させていただき、一般社団法人日本林業協会からの御意見を踏まえた対策といたしまして、予定運用利回りの引下げ、毎年度1,000万円の業務経費の削減、自家運用から委託運用に1億円移すということをお示ししたところでございます。
 その際いただいた御意見を4ページから5ページに記載しております。
 4ページを御覧いただきたいと思います。
 建設業退職金共済制度についてですが、昨年12月の部会におきましては、公益代表委員の方々から、「現在の低金利の状況においては将来的な財政悪化要因はできるだけ回避する手立てを講じておくことが必要。予定運用利回りは一旦引き下げたとしても、その後の環境が変われば引き上げることも可能であり、大胆な引下げも躊躇不要と考える。」という御意見をいただきました。
 労働者代表委員の方々からは「予定運用利回りの引下げは仕方ないが、可能な限り下げ幅を抑えていただき、建退共の優位性を確保して欲しい。」という御意見や「今までの中退部会での議論を踏まえると、制度の安定的運用に向けた検証をすることが必要。ただ、建設業界においてしっかりと御議論され、このような合意をされた背景があることを考ええれば、その合意された内容の中で一番ふさわしい状況にもっていくことが必要。また、一般中退と違い累積剰余金を還元する制度がないため、1.6%か1.8%か1.7%とするのかについては、もう少し中長期的な観点を持って議論する必要があるのではないか。」といった御意見をいただきました。
 使用者代表委員の方々からは「業界で話し合いもなされており、基本的に提案のとおりでよいのではないか。3%から一定程度引き下げて、きちんと安定性を担保するというのが非常に大事ではないか。」という御意見や「制度の安定的運用の観点から、予定運用利回りを引き下げ、また掛金負担能力を考えると、掛金日額を320円に引き上げるべきと考える。」といった御意見をいただきました。
 5ページが清退共でございます。
 清退共につきましては、公益代表委員の方々から「合同運用について分散投資効果が効いていないということは問題であり、合同運用の提案を支持する」という御意見をいただき、使用者代表委員の方々からは、「業界で話し合いもなされており、基本的に提案のとおりでよいのではないか」という御意見をいただきました。
 林業退職金共済制度につきましては、公益代表委員の方々から「累積欠損金の解消ないし増加の抑制には一層の対策が必要と考えるため、事務局の案を支持したい。」という御意見を、労働者代表委員の方々からは「安定的な運用に向けて事務局が示した方向で対策を取っていくべき。」という御意見を、使用者代表委員の方々からは「業界で話し合いもなされており、基本的に提案のとおりでよいのではないか。」といった御意見をいただきました。
 さらに、今後に向けてということで、公益代表委員の方々からは「事業規模や将来見通し、運営の効率性等を考えると、制度のあり方を検討する時期に来ているのではないか。」といった御意見を、労働者代表委員の方々からは「人材の確保という観点からも、退職金制度は大変重要。5年に一度の財政検証だけではなく、そろそろ制度の見直しという時期に来ているのではないか。」といった御意見をいただきました。
 以上が昨年12月の中退部会での御議論でございます。
 6ページを御覧いただきたいと思います。6ページには新型コロナウイルス感染症による金融市場への影響をお示ししております。
 日経平均やニューヨークダウでございますが、新型コロナウイルス感染症の問題が生じるまでは堅調に推移をしておりまして、日経平均は令和2年1月20日に2万4,084円、ニューヨークダウは令和2年2月12日に2万9,551ドルと、年度当初よりも高い水準となっておりました。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりまして、日経平均は令和2年3月19日に1万6,500円台、ニューヨークダウは令和2年3月23日に1万8,500ドル台まで下落しました。その後、少し値を戻してはおりますが、最終的には年度当初の水準には及んでおりません。
 なお、金融市場の変動を受けまして、機構において資産運用委員への照会や資産運用委員会の臨時開催など、適宜、専門家と連携しつつ対応しておりまして、資産運用委員からは、金融市場に大幅な変動があったときは流動性の確保、倒産リスクの回避は重要であるが、短期的な動向で資産運用の方針や基本ポートフォリオを変更するなど、右往左往すべきではないとの御助言をいただいているものと報告を受けているところでございます。
 7ページを御覧いただきたいと思います。
 議題1の現況決算でも御説明しましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりまして委託運用が振るわず、令和元年度におけます累積剰余金は建退共で約630億円、清退共で約25億円、林退共で約マイナス7億円と、昨年12月に将来推計としてお示しした令和元年度の累積剰余金と比較すると、全ての業種で減少しています。
 こうした影響を踏まえた将来推計を再度実施するに当たって、財政検証に用いた将来の財政見通しの推計におけます前提を8ページに記載しております。青色で囲んだところが、昨年12月のものから変更したところです。
 この後は、各業種におけます退職金共済制度を再度計算した結果について御説明します。
 まず、建退共についてです。10ページを御覧いただきたいと思います。10ページは昨年12月にお示しした将来推計を再掲しております。
 昨年12月の御説明と重複しますが、昨年12月の将来推計では単年度収支で約100億円の赤字が見込まれ、モンテカルロ・シミュレーションによると、右下の表の一番右下にございますように、令和5年度には15.6%の確率で累積欠損金が発生する可能性があったところでございます。
 続いて、11ページが令和元事業年度決算を踏まえて再計算した将来推計の結果でございます。単年度収支では約120億円の赤字が見込まれ、モンテカルロ・シミュレーションによると、令和5年度には30.3%、令和6年度には50%の確率で累積欠損金が発生する可能性があり、累積剰余金が昨年12月の推計時よりも減少したこと等により、財政状況が悪化をしております。
 再計算後の将来推計の結果を踏まえた対応案を12ページにお示ししております。
 昨年12月の財政検証時よりも財政状況が悪化していることに加えまして、今後、単年度で約120億円減少していくことが見込まれますので、予定運用利回りを引き下げることが適当ではないか、といった内容や、制度の魅力を損なわないように、掛金日額を引き上げることが適当ではないか、といった内容を対応案としております。
 また、資料には記載しておりませんが、業務経費の削減も対応案に追加しております。
 昨年12月と同様に、これらの推計結果や対応案を踏まえた建設業業界からの御意見として、ページの真ん中から線で囲んでいる部分がございますが、機構に設置しております建退共制度全般に係る所要の検討を行うための委員会である「財務問題・基本問題検討委員会」において、今年の6月30日に取りまとめられた報告書の内容を記載しております。
 ここでは、新型コロナウイルス問題の発生に伴う諸情勢の変化を受け、制度の安定的な運営、退職金の水準及び共済契約者の掛金負担能力の視点から、1の掛金日額につきましては310円から320円へ引上げ、2の予定運用利回りにつきましては3%から引き下げることとし、建設労働者の処遇改善を図っていることや、民間工事での建退共制度の普及と建退共制度の適正履行の実現に向けた具体的な取組を進める中で、財政状況の悪化を軽減しつつも、建退共制度の魅力を維持し、退職金の水準を確保する必要があることを考慮し、1.3%以上1.5%以下とすることが適当である、とまとめられています。また、昨年度は1.6%以上1.8%以下としておりましたが、更なる引下げをすることが適当とされたところでございます。
 また、同日行われました建退共の運営委員会でも財政検証について御議論いただき、この報告書のとおり了承されているところです。
 なお、資産運用委員会といたしましても、「現在の累積剰余金の水準は必要な累積剰余金の水準を大きく下回っており、現状は過剰なリスクを取っている状況にある。リターン予測値が採算利回りを大きく下回るとともに過剰なリスクを抱えている状況は資産運用だけでは解決できない状況にあるものを示すものであり、基本ポートフォリオに加えて予定運用利回り等の制度面も含めた見直しが必要である」との意見がございまして、資産運用の観点からも予定運用利回りの見直しについて言及されているところでございます。
 13ページを御覧いただきたいと思います。昨年12月と同様に、予定運用利回りを引き下げた場合の予定運用利回り別の累積剰余金の推移をまとめたものでございます。
 予定運用利回り3%のままでは、令和6年度には累積剰余金は12億円となる見込みであり、また、令和3年10月に予定運用利回りの引下げを実施した場合、単年度の収支見通しが赤字から黒字に転じる予定運用利回りの水準は、昨年12月の推計では1.2%でございましたが、今回の推計では1.1%となっております。
 14ページを御覧いただきたいと思います。昨年12月と同様になりますが、累積欠損金が生じない安定的な運営のために必要な累積剰余金の水準はどの程度かという資料でございます。
 前回、平成26年度の財政検証におきまして、建退共制度の安定的な運営を図るために必要な累積剰余金の水準として計算いたしましたものでは、リーマンショック時の金融情勢の急速な悪化が生じた場合にも対応できるものとして、責任準備金に対して4.8%の水準とされたところでございます。今回、同様の方法で計算をいたしますと、責任準備金に対し6.8%がその水準ということになりまして、令和6年度には688億円が必要な累積剰余金となります。
 一方で、13ページで見ていただきました予定運用利回り3.0%におけます令和6年度の累積剰余金は12億円と見込まれますので、制度の安定的な運営に必要な累積剰余金の水準を大きく下回っている状況でございます。ただし、この必要な累積剰余金の水準は予定運用利回りに応じて変動いたします。例えば予定運用利回り1.6%ですと令和6年度で486億円、1.5%では令和6年度で471億円、1.3%では令和6年度で446億円、1.1%ですと418億円が必要となる見込みでございます。13ページの表と見比べていただきますと、令和6年度の累積剰余金が短期的な金融ショックに耐え得る累積剰余金の水準を上回っているのは、予定運用利回りを1.2%以下とした場合となる見込みでございます。
 その一方で、14ページの下段になりますけれども、平成29年度の一般中退の財政検証におきまして、制度の安定のために必要な累積剰余金の水準は、財政検証の最長サイクルである5年間の財政シミュレーションであるモンテカルロ・シミュレーションにおきまして下位1%の確率で想定される損失額とされておりまして、同様の考え方で算出した値がこの表になります。
 こちらを御覧いただきますと、予定運用利回りが3%では1,311億円、単年度収支が赤字から黒字に転じる見込みである1.1%でも870億円が必要となる見込みでございます。
 次の15ページから20ページまでは、予定運用利回りを引き下げた場合の推計結果をお示ししております。
 15ページが予定運用利回りを1.6%にした場合でございまして、令和6年度の累積剰余金の額は約353億円で、累積欠損金が発生する確率は13%となります。
 16ページが1.5%にした場合でございまして、令和6年度の累積剰余金は約375億円、累積欠損金が発生する確率は11.5%となります。
 17ページが1.4%にした場合でございまして、令和6年度の累積剰余金は約391億円、累積欠損金が発生する確率は10.5%となります。
 18ページが1.3%にした場合でございまして、令和6年度の累積剰余金は約413億円、累積欠損金が発生する確率は9.2%となります。
 19ページが1.2%にした場合でございまして、令和6年度の累積剰余金は約437億円、累積欠損金が発生する確率は7.9%となります。
 20ページが予定運用利回りを1.1%まで引き下げた場合でございまして、令和6年度の累積剰余金は約457億円、累積欠損金が発生する確率は6.9%となっております。
 21ページから22ページにつきましては、それぞれの予定運用利回り及び掛金日額における退職金の額がどうなるかというものでございます。建退共におけます令和元年度の退職金受給者の平均掛金納付月数が103月でございますので、それに近い掛金納付月数でございます120月の水準を見てまいりますと、現行3%での退職金額は94万6,000円となってございますが、これを予定運用利回り1.6%から1.1%までそれぞれ引き下げ、掛金日額が310円の場合には、120月のところを横に見ていただきますと、順に87万8,000円、87万2,000円、87万円、次のページで86万6,000円、86万円、85万5,000円となります。
 21ページに戻っていただきまして、掛金日額を10円引き上げ320円とした場合には、予定運用利回り1.6%での退職金額は順に90万7,000円、1.5%では90万円、1.4%では89万8,000円、次のページの1.3%では89万4,000円、1.2%では88万7,000円、1.1%では88万3,000円となります。
一般中退の財政検証での議論を踏まえますと、建退共におけます必要な累積剰余金の水準は5年間の財政シミュレーションにおいて下位1%の確率で想定される損失額と考えられますので、累積剰余金が足りていないという状況でございます。
 こういった状況の中で、本来であれば単年度収支が赤字とならないように予定運用利回りを引き下げる必要があり、その利回りは1.1%となります。
 ただ、この場合におきましても、令和6年度の累積剰余金は20ページで見ましたように約457億円となる見込みでございますが、必要な累積剰余金の水準である870億円を大きく下回っている状況です。
 また、前回の財政検証において必要な累積剰余金の水準としておりました、短期的な金融ショックが生じた場合に耐え得る累積剰余金の水準を令和6年度に上回るのは予定運用利回りが1.2%以下の場合でございます。1.3%の場合ですと若干足りなくなります。
 ただし、現行の予定運用利回りからそのような利回りまで引き下げた場合、大幅な引下げとなることに加え、建退共におきましては一般中退の付加退職金制度のような被共済者へ利益を還元する制度がなく、累積剰余金が増加していく可能性もあることに加え、特退共制度は業界の退職金制度であり、業界としては建設労働者の処遇改善を図っていることや民間工事での建退共制度の普及と建退共制度の適正履行の実現に向けた具体的な取組を進める中で、財政状況の悪化を軽減しつつも建退共制度の魅力を維持し退職金の水準を確保する必要があることを考慮し、予定運用利回り1.3%以上1.5%以下という要望がとりまとめられております。
 以上の点を踏まえて、御議論いただければと考えております。
 続きまして、清退共についてです。
 24ページですが、建退共と同様に、昨年12月における将来推計の結果をお示ししております。
 25ページに、令和元事業年度決算を踏まえた将来推計をお示ししております。
 令和元事業年度決算を踏まえた結果を御覧いただきますと、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、引き続き責任準備金を大きく超える累積剰余金が存在し、かつ今後も存在し続ける見込みでございますので、令和6年度においても累積欠損金が生じる可能性がないなど、制度の安定的な運用には問題がない状況でございます。
 26ページを御覧いただきたいと思います。このため対応策といたしましては、昨年12月と同様に、予定運用利回りの見直しは行わないことが適当ではないかとしております。
 なお、もう一つの課題でございます資産運用面の課題に対処するため、委託運用部分における一般中退との合同運用を開始することにつきましては、昨年12月の御議論におきまして特段の反対意見はなく、賛成意見のみであったことに加えて、業界及び資産運用委員会においても了承されたため、令和2年4月から実施をしているところでございます。
 最後に、林退共についてです。
 28ページを御覧いただきたいと思います。累積欠損金解消計画の進捗状況を示したものでございます。
 ページの中央の表を御覧いただきたいと思いますが、令和元年度のところ、下から2つ目が累積欠損金の実績値、一番下が累積欠損金解消計画上の目標値となっておりますが、令和元年度におきましては実績値が7億400万円に対して目標値は2億6,900万円となり、目標との差額は4億3,500万円程度ございまして、計画の進捗は目標よりも遅れているという状況にございます。
 29ページに昨年12月の将来推計の結果、30ページに令和元事業年度決算を踏まえた将来推計の結果をお示ししております。
 30ページの令和元事業年度決算を踏まえた将来推計の結果を御覧いただきますと、昨年12月のときと変わらず、累積欠損金解消計画の解消年限である令和4年度までには解消せず、引き続き累積欠損が続く見込みとなっております。
 今後5年間よりも長期で推計したものが次の31ページになります。
 こちらは先ほどの将来推計を令和30年度まで延ばした推計になりますが、昨年12月のときと変わらず、累積欠損金は解消せず、むしろ増加していくということが見込まれております。これは今後購入する国債の利回りがゼロという仮定を置いているため、次第に自家運用利回りが低下し、それに伴いまして全体の運用利回りが低下するためでございます。
 これらを踏まえて、次のページに対応案を記載しております。
 32ページを御覧ください。
 累積欠損金を着実に解消するため、前回財政検証時の対策と同様に、予定運用利回りの引下げや業務費用の削減等の更なる対策を講ずる必要があると考えております。ページの下に囲んでいる部分に林業業界からの御意見を記載しておりますが、その御意見の内容を踏まえ、具体的な対応案をページの真ん中に①から③と記載しております。予定運用利回りの引下げ、毎年度1,000万円の業務経費の削減、退職金支給に備えるための余剰資金のうち1億円を自家運用から委託運用に移す、といったことを掲げております。
 このうち、業務費用の削減の一部と資産運用の1億円を移すという点につきましては既に実施しております。委託運用に1億円移すという点につきましては、資産運用委員会において流動性の観点を含め資産運用上問題がないかをお諮りした上で実施をしているところでございます。
 33ページを御覧ください。対応案を実施した場合の令和30年度までの将来推計を記載しています。
 予定運用利回りを0.1%まで引き下げれば、令和30年度に累積欠損金が解消する見込みとなってございます。
 なお、35ページを御覧いただきたいのですが、予定運用利回りを0.1%に引き下げて掛金日額を470円に据え置いた場合と、10円引き上げ480円とした場合と、20円引き上げ490円とした場合の退職金の額を記載しておりますが、業界からは掛金日額につきましては据え置くよう強く要望されているところでございます。
 資料3に関する説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見あるいは御質問等ございましたら、お願い申し上げます。
 久保委員、どうぞ。
○久保委員 建退共でございますけれども、業界で大分お話をなさっておりますし、中長期的、長期的な安定を目指すということを考えますと、この数値も致し方ないのかなと感じております。
 以上でございます。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 ほか、御意見ございませんでしょうか。
 お願いいたします。長谷部委員。
○長谷部委員 長谷部です。
 建退共制度につきまして、昨年の12月の中退部会で予定運用利回りの引下げ案として示されました1.8%から1.6%の範囲より今回さらに引き下げるという案が示されておりますけれども、私としては賛同いたしかねる立場でございます。
 新型コロナウイルス感染症の影響が主な要因ということでありますけれども、国においては各種給付金や助成金の支給、国民年金や社会保険制度の社会保険料の免除や納税の猶予など救済的な措置が実施されています。
 建退共制度を含む特退共制度というのは、そもそも他産業と比較して労働福祉政策の基盤が弱い産業を補う趣旨で創設された制度であると認識しておりまして、まさに国がつくった制度なので安心安全を前面に出して加入促進に取り組ませていただいておりますけれども、建退共でいいますと、現行の3%の運用利回りが新型コロナウイルス感染症の影響で最悪1.3%ということで、半分以下に急激に運用利回りが下がるということになりますと、景気や金融市場、経済動向に大きく左右されてしまい、民間の制度と何ら変わりがないのではないかということで被共済者にも大きな不安を与えますし、退職金の受給総額が減少するという金銭的な不利益も生じます。また、新規の加入を呼びかける際にも制度の魅力を伝えにくくなるのではないかと非常に懸念しております。
 また、一般中退との利率の差も縮まっていくということになりますと、建退共制度としての優位性も失われてきてしまうのではないかと大変懸念しております。
 国の関係では、新型コロナウイルス感染症の影響に対しては救済的措置を打ち出しているということも考慮していただきまして、特に特退共、建退共制度におきましても、予定運用利回りの更なる引下げということではなくて、国による救済的な観点での施策や財政出動等を打ち出すことを検討していただきたいと思います。
 建退共でいえば、来年度より電子申請化等も開始予定であり、制度としてさらに拡充され普及が見込まれるタイミングでもありますので、最低でも昨年12月の部会で示されました内容案を前提として検討できないかということでお願いをさせていただきたいと思います。
 以上です。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 ほかに御意見はございませんでしょうか。
 お願いいたします。南部委員。
○南部委員 ありがとうございます。
 今ほどありました特定業種退職金制度における予定運用利回りの見直しについてですが、先ほどもございましたように、本来昨年12月の中退部会において提案された財政検証結果を踏まえ、予定運用利回りを判断すべきところではあったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、時期がずれてきたことで今回の予定運用利回りとなり、悪化した原因ということになります。仮に昨年12月の財政検証結果で進んでいれば予定運用利回りは、今より高かったという結果になります。
 コロナ禍での特殊な事情ということで捉えるということもできるのですけれども、先ほどありました救済制度等の検討は是非していただきながらも、もし仮にやむを得ない結果となった場合も、今後の運用実績が高まり大幅な利益が確保されるのであれば、期間途中であっても再検討するということを是非この場で御確認いただけたらと思っております。
 併せまして、結果として報告書の中にはそういった経過もしっかりとお書きいただくようにお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 ただいまの点につきまして、ほかに御意見はございませんでしょうか。
 新田委員、どうぞ。
○新田委員 今、南部委員がおっしゃったとおり、本来であればもう少し早い段階で今回のこの財政検証もまとまっていたと推測されるところではございます。ただ、皆さん御承知のように、これほど急速かつ幅広い業種、あるいは企業、あるいは地域に対して経済的な影響が非常に大きく、加えて、まだ非常に先行きが見えないという、今はまさに緊急事態と認識しております。したがいまして、今回の財政検証のとりまとめの時期がこのようにずれたことについてはやむを得ないと私は考えております。
 さて、その上で今回改めて示されているとりまとめの内容についてですが、関係の団体あるいは業界の中でお話し合いもなされているということで承知をしております。確かに状況が悪くなって利率等の引下げという提案にはなっておりますけれども、やはり何度もこの部会で申し上げていますが、一番優先すべきはこの共済制度の安定的な運営だと私は考えております。経営的な基盤が弱く、自社でなかなか退職金制度を確立できない中小零細企業に対して、この共済制度、まさに国が安全性を担保しながら、そして全額事業主の拠出の下でこの制度が確立されているわけでございますので、やはり優先すべきは安定的な運用と考えております。
 したがって結論といたしましては、まだ詳細の数字等々についてはここに記載されている中で少し幅があるものもございますけれども、今回出されている内容で、この一定の幅の中でさらに議論を深めていきながら、おそらく次回以降、とりまとめに向かっていければいいのかなと思います。また、状況が変わったときにはその時々の状況に応じて、こういう見直しの議論も当然やることになると思いますので、そのような前提の下で今回、このようなとりまとめに向けて、この部会で審議をしていければいいと考えているところでございます。
 私からは以上でございます。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 ほかに御意見はございませんでしょうか。
 小野委員、どうぞ。
○小野委員 ありがとうございます。
 今の財政的な枠組みというのを前提にした議論になると思いますけれども、例えば財政出動とか救済措置とかというものが入ってくるとすれば、それは別の話になると思います。したがいまして、それを一旦除外した上でお話を申し上げたいと思います。
 建退共につきましては、今回の提案では1.3%から1.5%とされておりますけれども、資産運用委員会の資料を拝見しますと1年分の証紙は252枚でしたか、これを貼り付けるまでに要する平均的な期間は大体20か月という報告があります。つまり、1年半以上の期間を要して証紙が1年分になる。これは何を言っているかというと、年単位の必要な収益率に換算すると約0.6掛けぐらいの数字になるということで、例えば1.3%から1.5%に0.6掛けをすると、実効的には年0.8%から0.9%ぐらいの運用収益が必要になるというような構造になると思います。今回のシミュレーションはこれを踏まえたものと思われますけれども、名目金利がゼロとかマイナスとかといった運用環境の中ではこういった予定利率でも結構厳しいという結果が示されていると理解しております。
 中長期的な考え方が必要だというのは、これはもっともです。ただし、意思決定にあたりまして、今回提示されましたモデルに依存せざるを得ないわけですけれども、昨今、想定外という言葉がほぼ日常的に使われてございます。社会経済というのは不確実であるということは御認識いただいたほうがよろしいのではないかなと思います。
 個人的には、金額基準は幾つか出されておりますけれども、それを度外視したとしても、シミュレーション結果の読み方としては、50%tile値で見まして累積剰余金が減少し続けるシナリオというのは、5年後の財政検証の検討がかなり厳しくなるのではないかと思います。ただ、このようなことを踏まえて御検討いただいているということでございますので、清酒と林業も含めまして、今の御検討の方向性で進めていただければよろしいかと思います。
 以上でございます。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 ほかの委員から御意見ございませんでしょうか。
 では、事務局からお願いできましょうか。
○中條勤労者生活課長 御意見いただきまして、どうもありがとうございました。事務局として、幾つかお答えさせていただきたいと思います。
 まず、建退共の予定運用利回りについてですけれども、やはり今般、令和元事業年度決算を踏まえました推計結果によりますと、累積剰余金が単年度平均で約120億円ずつ減少いたしますので、予定運用利回り3.0%のままでは令和6年度末には約12億円まで累積剰余金が減ってしまうという見込みでございます。
 また、モンテカルロ・シミュレーションの下位1%の確率で想定される損失額ですとか、リーマンショック時の金融情勢の急速な悪化が生じた場合にも対応できるとされる688億円を大幅に下回る累積剰余金となりますので、やはり安定的な運営といったところを考えますと、事務局といたしましては予定運用利回りの引下げはやむを得ないと考えているところでございます。
 また、予定運用利回りにつきましては、一般中退の財政検証時の議論やモンテカルロ・シミュレーションの結果を踏まえますと、単年度収支が黒字となる水準が財政上望ましいと考えておりますが、特退共制度は業界の退職金制度という性格を有しておりますので、先ほど業界の御意見のとりまとめにもございましたけれども、業界からは建設労働者の処遇改善を図っていること、また、民間工事での建退共制度の普及や建退共制度の適正履行の実現に向けた具体的な取組を進める中で、財政悪化を軽減しつつも制度の魅力を維持して退職金の水準を確保する必要があることを考慮して、1.3%以上1.5%以下とすることが適当であるという意見がとりまとめられている点を考慮いたしますと、その中でも50%tileで累積剰余金がどんどん下がっていかないという点が重要ではないかといったような御意見をいただきましたけれども、業界の御意見の中でできる限り財政悪化しないような予定運用利回りとしていくことが必要ではないかなと考えているところでございます。
 そういった中で、国の補助といったことが考えられないかといった点について御意見をいただいたところでございます。昨年12月の中退部会でも御意見をいただいたところでございますけれども、やはり今、掛金助成等を実施しておりますが、この退職金共済契約の加入促進等を図ることによって労働者の福祉の向上及び雇用の安定を図るために国から掛金助成や補助金等々の予算措置をしているところでございます。
 こういった補助の増額にあたりましては財源の裏づけというものが必要になっておりますけれども、現下の大変厳しい国の財政状況におきましては、こういった補助を増額することは難しい状況にあることにつきまして、御理解をいただければと考えております。
また、状況が変わったときの見直し等について御意見をいただいたところでございます。この財政検証につきましては、通常5年をめどに財政検証を行っております。中退法上は少なくとも5年ごとに検討することとされておりますので、少なくともというところなので、前倒しで検討していくということは可能であると考えております。
 このため、今回御議論をいただきました前提となる経済情勢に大きな変化があれば5年を待たずに財政検証を行いまして、そのときの経済情勢や今後の見通しを踏まえつつ、必要に応じて予定運用利回りの見直しについて御議論していただくこととしたいと考えているところでございます。
 事務局からは以上です。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の御説明をお聞きいただいて、ほかに何か御意見はございましょうか。
 お願いいたします。長谷部委員。
○長谷部委員 ありがとうございました。重ねての意見、要望となりますが、予定運用利回りにつきましては、5年を待たずに税制運営に改善見込みが出た段階で、早急な検討の実施をお願いしたいと思います。
 今のお話の中であったのですけれども、資料3の12ページの財務問題・基本問題検討委員会の検討報告書の4番目の①のところで建退共につきまして「建設労働者の処遇改善が図られるように建退共制度の見直しを進めること」ということで検討会でも御意見をいただいております。
こうした御意見をいただいていることも踏まえまして、現行の制度運用のままではなかなか財政状況も厳しい、建設労働者の処遇改善が図れないということもありますので、その4の②のところで「建設キャリアアップシステムを活用しつつ」という文言もいただいておりまして、是非、この建設キャリアアップシステムというのは、今、建設業界全体で国交省も含めて、業界団体も含めて取り組ませていただいておりますけれども、このシステムでは4段階の技能評価をレベル分けによって建設技能労働者の処遇改善を目指している制度でありますけれども、以前、建退共でも掛金の高額掛金等の検討というのもしていただきましたけれども、例えばこの建設キャリアアップシステムで、いわゆるレベル3、4と言われる熟練の技能者に関しては建退共制度の掛金として、高額の掛金が適用できるということなど、複数の掛金制度、掛金選択制度等の検討というものも併せてお願いをさせていただきたいと思います。
 以上です。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 事務局から何か、ただいまのキャリアアップシステム等についての御説明あるいは御回答はおありになりますか。
○中條勤労者生活課長 御意見どうもありがとうございます。
 今後の特退共制度のあり方につきましては、昨年12月の部会でも御意見をいただいたところでございます。特退共制度の魅力を維持しながら安定的に持続させていくために今後、こういった制度のあり方についても検討していく必要があると認識しているところでございます。
 また、今、長谷部委員から具体的にいただきました高額の掛金制度、複数の掛金制度について検討できないかといったような御要望でございますが、現行の掛金制度におきまして業種ごとに単一の掛金日額が法律上定められているところでございます。なぜこういった単一の掛金日額とされているかというところですが、複数の掛金日額を設定することによりまして、事務が複雑化して制度の円滑な運営に支障をきたすことがないようにするためという趣旨であると考えております。
現在、建設キャリアアップシステムとも連携をいたしますが、電磁的方法による掛金納付方法の導入という大きな制度見直しを建退共におきましては行っているところでございます。まずは電磁的方法による掛金納付方法の導入を図るということが重要であると考えているところでございますが、今申し上げました複数の掛金日額の導入を求める背景または必要性につきましては理解できるところがあると考えておりますので、今後の制度の検討に当たりましては論点の一つとして検討してまいりたいと考えているところでございます。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 長谷部委員、よろしいでしょうか。
○長谷部委員 はい。
○内藤部会長 ほかに御意見はよろしいでしょうか。
 よろしくお願いいたします。藤川委員。
○藤川委員 ありがとうございます。
 今の意見の中で、建退共の制度見直しということはあったのですが、事務局もおっしゃったように、特退共全体の見直しというのもそろそろそういう時期ではないのかと思っています。
 これはシミュレーションもございますけれども、資産の合同運用の問題であるとか、いろいろな募集の問題、そして、この退職金制度というのは本当に働く者にとって大変重要な制度でございますので、そういった意味ではそういう周知活動なども含めまして、5年に一度の財政検証を待たずに、見直しができればと思います。事務局のほうで、これは各省庁にまたがるようなお話ということもございますので、連携を持っていただきながら進めていただければ大変ありがたいと思っています。少し補足的に申し上げました。
 よろしくお願いします。
○内藤部会長 ありがとうございました。
 事務局からお願いいたします。
○中條勤労者生活課長 御意見、どうもありがとうございます。
 昨年12月の御意見のところでも紹介させていただきましたが、資料3の5ページにございますように、今後に向けてということで、建退共制度に限らず特退共全体についてそろそろ見直す時期に来ているのではないかといったような御意見もいただいたところでございます。
 藤川委員がおっしゃるように、今回、建設、清酒、林業ということで関係省庁も複数にわたるところでございますので、関係省庁、関係団体等とも連携をしながら、今後の制度全体のあり方についても、どういった形で検討を進めていくかはこれからでございますけれども、何らか検討を行っていきたいと考えているところでございます。
○内藤部会長 ありがとうございました。是非、よろしくお願いいたします。
 ほかに御意見はよろしいでしょうか。
 それでは、委員の皆様の御意見を踏まえまして、次回の特退共の財政検証に係る議論に際しては事務局にてとりまとめ案を作成していただき、それを基に議論をしていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。
 (首肯する委員あり)
○内藤部会長 それでは、本日の議題につきまして御意見が出尽くしたと思われますので、本日の部会はこれで終了といたします。
 本日の議事録の署名委員といたしましては、橋本委員と新田委員にお願いしたいと存じます。
 では、本日は少し早いですが、これにて散会させていただきます。
 ありがとうございました。