第143回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

日時

令和元年12月25日(水)18:00~20:00

場所

厚生労働省 専用第21会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 合同庁舎5号館17階)

議事

 
○阿部分科会長 御出席予定の委員の皆様がおそろいですので、ただいまから第143回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催したいと思います。
 皆様におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 議事に先立ちまして、新たに御就任された方を御紹介させていただきたいと思いますので、一言御挨拶をお願いしたいと思います。
 当分科会の労働者代表委員として、日本労働組合総連合会総合推進局長の仁平委員でございます。

○仁平委員 仁平です。よろしくお願いします。

○阿部分科会長 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の小畑委員、労働者代表の柴委員、髙松委員、久松委員、使用者代表の今木委員、河本委員、吉岡委員がそれぞれ御欠席と伺っております。
 カメラの撮影はここまでとさせていただきたいと思います。
 それでは、議題(1)「労働政策基本部会報告書について」を事務局から説明をお願いいたします。

○政策統括官付参事官 政策統括官室参事官の田中でございます。
 私から基本部会の報告書の概要につきまして、御説明をいたします。
 資料No.1-1に基づきまして、基本的に御説明をさせていただきます。
 まず、この基本部会の報告書でございますが、右肩につけておりますとおり9月11日の労働政策審議会において報告をし、御了承をいただいたものでございます。その中で、各分科会での御審議の参考になる点もあるのではないかという御指摘がございまして、各審議会におきまして概要を御説明させていただいているものでございます。
 まず「はじめに」とありますように、AI等の新技術に代表される第四次産業革命の進展によりまして、仕事のあり方が変化をしているというAIの側面、一方で、人口の構成の面で言えば、人口減少が加速化をし、かつ、長寿化が進んでいるということを考えれば、職業生涯は長期化をしてくるということが見込まれているわけでございまして、そういう中では、AI等を積極的に有用に活用するということで、労働生産性の向上を通じた経済成長の基盤となることが期待をされておりますし、同時に、働く側にとっても、みずからの力を発揮して仕事ができる環境をつくるということをより可能にするということが期待をされてございます。
 一方で、AI等に代替されるタスクから構成される仕事の減少をもたらす懸念がありますので、こういった懸念に対応する形で、スキルアップとかキャリアチェンジにどう対応していくのかといったようなことが課題として生じてくるということを「はじめに」のところでまとめております。
 1に移りまして「質の高い労働の実現のためのAI等の活用」ということで、AIを導入するということを相対的に見た場合の議論がここにまとまっております。
 (1)にありますように、人が減ってくるという中で、社会活力をそのまま維持していくためには、AI等の積極的な導入が不可欠であるということで、(2)ですけれども、足元の就業構造を見ますと、医療、福祉の就業者数が増加をしている、また、その職種別では事務従事者の割合が2割というような中で、今後の見通しを考えますと、人手不足基調でありながらも、やはり事務といったようなところの労働需要については減ってきて、専門的・技術的職業のニーズが高まるというようなことで、一定の人手不足基調の中ではありながらも、ミスマッチの問題は生じてくるということが見込まれるという民間での推計もございます。
 ここでAI等と言っておりますけれども、(2)の下の例のところにありますように、RPAという形で、事務部門についてのAIの導入で作業量が減ってくるというようなことが、今回のAIの導入では大きな面を占めております。
 事務部門のみならず、その下の介護職員、自動車運転というところでも書いておりますけれども、今までは人でなければできなかったものについて、よりAI等ということで、代替されるタスクが生じてくるというようなことが予想をされております。
 現在、こういう介護とか自動車運転の職種については、人手不足、労働者の心身についても負担が多いということを言われておりますので、こういったような人手不足とか心身の負担が改善をされるという形でのAI等の導入が望まれるところでございます。
 次のページに行っていただきまして1の(2)になりますけれども、業種、企業によってAIの導入状況はさまざま異なっております。やはり、どうしても大きいところのほうが進んでいると。そういうような中で、やはり、先ほど申し上げましたような人手不足とか負担が大きい分野での課題解決が必要、そういうような分野でのAI等の積極的な開発・実装が進むようにしていくということが求められております。
 当然のことながら(3)になりますが、AI等で生まれるイノベーションで、産業構造が変わってくるということが想定をされます。これは新しい産業が創出される可能性という面と、既存産業についても既存産業のあり方が大きく変化をするというようなことが想定をされますので、そういったような変化がどのように雇用・労働に影響を及ぼしていくのか、これについて、労使を含めた関係者による議論が必要ではないかということが、ここの(3)に書かれているところでございます。
 次のページに行っていただきまして、2の部分からは個別の労働環境にAI等を導入することによって何が変わってくるかということです。
 AI等によって業務の内容等々が変わってきます。(1)の2番目のポツにありますように、過去の例を見ますと、ME化とかIT化の際に、集団的労使関係のもとで、労使間で認識をすり合わせて、配置や職種の転換等と納得を得つつ対応してきた、こういうような過去の経験も参考にしながら、AI等の導入に当たっても、どのようなコミュニケーションを労使でとっていけばいいのかということについて、しっかり議論をしていく必要があるということを、ここでも提言をいただいてございます。
 今後は事務部門とか管理の部門にも特にAI等が導入されてくることが見込まれておりますので、今までそのようなものとは関係なかったような部門、それから、人事労務管理の部門につきましても、AI等についての基礎的なリテラシーについては必須になってくると考えております。
 次に行っていただきまして「AI等との協働に必要なスキル」ということで、基本的なITリテラシーについてはより多くの労働者に習得が求められ、現場の課題を解決していく、AIを設計していくというような技能についても、そうした人材について育成をしていく必要があろうかと思います。
 一方で(2)の一番下のポツにありますように、AIが全てを置きかえるかというと、そうではないということで、AI等を使いこなすスキル、AI等をどうデザインするか、人間にしかできない質の高いサービスを提供する、こういったような人間にしかできない、人間がやることによって付加価値が上がる業務、タスクがこれからも残ってくるだろうと想定をされております。そういう中で、そのようなスキルのある方についての適切な評価と処遇への反映ということも、また、同時に求められてくると考えております。
 次が「スキルアップ、キャリアチェンジ」に向けた支援ということで、政府におきましてもさまざまな教育訓練のプログラム、技能の見える化を図っていく必要があろうかと思います。そのようなことを(3)で提言をいただいております。
 (4)で「AI等の活用が進む中での労働者への支援」ということで、さまざまな要因から、やはりAI等の導入に、いわゆるついていけない労働者が生じる懸念も示されております。
 そういったような中でも、その人が労働市場から排除されないで、社会全体で包摂されるようにすることにも留意が必要でございまして、特にそういったような面では、教育訓練のみならず、福祉も念頭に置いた、しっかりとセーフティーネットの今後を考えていく必要があろうかと思います。
 次のページの3が全体の横断的な課題ということでございまして、AIの導入によって労働者のプライバシーの保護や情報セキュリティーの確保については、今まで以上に倫理感が必要になってこようかと思います。
 AIの判断によるバイアスの可能性も指摘をされます。
 一方で、人間のバイアスをAIで補正をするというようなことも考えられます。
 いずれについてもAIの判断に対しては、企業が責任・倫理を持って使い、また、説明をすることが重要になってまいります。
 また、(3)ですが「円滑な労働移動の実現や新しい働き方への対応」についても検討を進めていくことが期待をされております。
 (4)ですが、前段のところで申し上げましたが、AI等の発展がいろいろ影響を与えてくる中で、よりよい形で現場に導入されていくには、現場の労使がどのようにコミュニケーションをとっていくのか、同じ共通認識を持って進めていくということが重要でございまして、その点については、少し議論を深めていくことが必要であると、基本部会の中で提言をいただいております。
 これを受けまして、厚生労働省の政策統括官部門におきまして、26日、あした、第1回を開催いたしますが、現場を御存じの組合の方、企業の方にも入っていただきまして、検討会を立ち上げることにしてございます。
 そういったAI等が進展する中で、よりよいコミュニケーションをとるための具体例などを示していくことができれば、皆さんのこれからの御検討の中でも役に立つことかなと思っております。
 私からの説明は以上です。

○阿部分科会長 ありがとうございました。
 それでは、本件につきまして、御質問・御意見がございましたら、御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 では、梅田委員、どうぞ。

○梅田委員 御説明、ありがとうございました。
 現時点で考えられることは、今の御報告でほぼ網羅されているのかなと思いますけれども、3点ほど発言させていただければと思います。
 まず、1つはAI活用における責任の所在を明確にするルールなどの整備というのが必要ではないかと思いました。AIは画期的な技術ではありますけれども、まだまだ万能ではないところがあると思います。そういった意味では、万一不具合が生じたときの責任の所在を明確にするようなルールの整備が必要ではないかと感じております。そのための具体的な検討は必要であると思いますけれども、第三者によるAIの判断の妥当性などについて証明できる機関の整備なども必要なのではないかと感じました。これが1点目でございます。
 2点目は、スキルアップ、キャリアチェンジに向けた支援ということで、ごもっともだなと思って話を聞いておりましたけれども、働く者一人一人の意識改革というのも非常に重要だと思います。そのためには、新たに求められる人材像がどのようなものなのかを明確にするということが必要だと思いますし、それを踏まえた人材育成の環境整備について議論することが必要だと感じました。これが2点目でございます。
 3点目でございますけれども、考え過ぎなのかもしれませんが、AIが導入されるということで、業務の見える化が進むとも言えるのかと思います。これは裏返しになりますけれども、労働者の仕事への貢献度合いがデジタル化されるということを意味すると考えられますので、そういった見える化によって得られるデータの公正な活用や、個人データの保護、また、新たに生まれるデジタルストレスに対してどのように対処をしていったらいいのかといったようなことも検討する必要があると感じましたので、3点、発言をさせていただきます。

○阿部分科会長 ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 では、お願いします。

○中窪委員 現在の非常に重要な問題について、適切にまとめられていると思いますけれども、一番最後の適切に活用されるための課題のところの(1)(2)あたりが、倫理というものが非常に強調されている感じがして、少し気になりました。それは確かに重要なのですが、先日の神奈川県の業者のハードディスクの流出のように、本当に倫理だけでは対応できないものがあるのも確かです。だからといって法的義務にすればいいというわけでもないと思うのですけれども、何らかの形でそれが守られ、実効的に履行が確保されるような仕組みを考えることが必要だと思います。その点、御配慮いただければと思います。

○阿部分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 よろしいですか。
 これを踏まえて、各関係分科会等での必要な検討も求めたいと書いてありますので、当分科会としても、これからやってくるAIあるいはロボティクスに対応するような議論も少しずつ。「少しずつ」と言っていると時代におくれるかもしれませんが、何か議論できるものがあれば議論をして、それを政策に展開していくということが必要かもしれません。
 私は個人的に、今回はAIということで、労働者等の代替補完機会と労働の代替補完というところが主に出てきているのかなと思うのですが、今、別のところで議論されています雇用類似に関連して言いますと、やはりシェアリングビジネスがより発展して、今でも1日ごとにアルバイト先を変えられるマッチングビジネスというのも実際ありますので、非常に短期的にマッチングができるような技術というのが、当然、実装化されてくるだろうと。
 そうしますと、例えば、企業は長期的に雇う必要がなくなって、そのときそのときで専門知識を雇うということも、もしかしたら近い将来、可能になってくるかもしれない。そうすると、今までの雇用というものがどのように変わっていくかというのも、もしかしたら考えていく必要があるのかなと思いますし、それに対応して、例えば、職業安定分科会で所管しているハローワークのあり方とかあるいは雇用保険のあり方とか、非常にいろいろと関連してくる部分が、就業形態とかの変化にもかかわってくると思いますし、あるいは技術革新のスピードはやはり速いと思いますので、それにどのように対応していくかというのも考える必要があるかと個人的には思っていますので、またこういったAIやロボティクスあるいはこういった新しい働き方に関連して議論ができる場があれば、また議論してみたいと思っています。
 では、本件に関してはこうした形でよろしいでしょうか。

          (首肯する委員あり)

○阿部分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ここで田中参事官は所要により御退出ということになります。よろしくお願いいたします。

          (田中参事官退室)

○阿部分科会長 それでは、議題2の「雇用保険部会報告書について」です。
 本件につきましては、今月20日に開催されました雇用保険部会におきまして、報告が取りまとめられております。私が雇用保険部会長を兼ねておりますので、事務局から報告をお願いいたします。

○雇用保険課長 失礼いたします。事務局の雇用保険課長でございます。
 資料No.2に沿いまして御報告を申し上げたいと存じます。
 資料No.2をお開きください。下にページ数が振ってございます。各事項ごとに取りまとめ内容について御報告いたします。
 2ページの真ん中の2つの○でございます。雇用保険部会の報告として、自己都合離職者の給付制限期間について議論いたしました結果、自己都合(正当理由なし)により離職した者に対しては、3カ月間の給付制限期間が設定されております。
 これにつきまして「5年間のうち2回までに限り2箇月に短縮する措置を試行することとし、その効果等を施行後2年を目途として検証するべきである」という結論を頂戴しております。
 その次に(2)「被保険者期間について」でございます。
 3ページをお開きください。一番上の○でございますが「被保険者期間の算入に当たっては、日数だけではなく労働時間による基準も補完的に設定するよう見直すこととし、具体的には、従来の『賃金支払の基礎となった日数が11日以上である月』の条件が満たせない場合でも『当該月における労働時間が80時間以上』であることを満たす場合には、算入できるようにするべきである」という結論を頂戴しております。
 次は、マルチジョブホルダーの件でございます。
 4ページをお開きください。2つ目の○の第2段落です。
 「まずは、65歳以上の労働者を対象に、本人の申出を起点に2つの事業所の労働時間を合算して『週の所定労働時間が20時間以上である』ことを基準として適用する制度を試行することとし、その効果等を施行後5年を目途として検証すべきである」という結論でございます。
 さらに続きまして、5ページ。下から2つ目の○でございます。
 試行に当たっては事業主等の事務負担に十分配慮するとともに、逆選択の事象、また、モラルハザードの事象が起こる懸念に留意するべきである。その上で、試行結果について、適用による行動変化や財政的な影響等の視点から十分な検証を行った上で、必要に応じて、適用対象を含めた制度のあり方について検討していくべきであるとの御指摘でございました。
 次は高年齢雇用継続給付についてでございます。
 7ページお開きください。3行目からの○です。
 「令和6年度までは現状を維持した上で、65歳未満の継続雇用制度の経過措置が終了する令和7年度から新たに60歳となる高年齢労働者への同給付の給付率を半分程度に縮小することが適当である」。また「高年齢労働者の処遇の改善に向けて先行して取り組む事業主に対する支援策とともに、同給金の給付率の縮小後の激変緩和措置についても併せて講じていくべきである」。「その上で、高年齢雇用継続給付の在り方については、これらの状況も見つつ、廃止も含め、更に検討を行うべきである」との御指摘でございました。
 また、並行して議論されておりました、雇用対策基本問題部会におきまして議論が行われている、就業機会確保措置に取り組む事業主への支援について、雇用安定事業に位置づけるべきであるとの御指摘でございました。
 次に4の財政運営の関係でございます。8ページの下から2つ目の○部分です。
 「育児休業給付については、新たに『子を養育するために休業した労働者の雇用と生活安定を図る』給付として、必要等給付とは異なる給付体系に明確に位置づけるべきである」と。
 その収支についても失業等給付額の区分し、育児休業給付に充てるべき独自の保険料率、当面、1,000分の4相当を設けて財政運営を行うべきであると。
 最後の行ですけれども「一方で、育児休業給付の在り方について、中長期的な観点で議論していくべきである」との御指摘でございました。
 次に、弾力条項の考え方につきまして、ページは改まって9ページでございます。
 3つ目の○ですけれども「積立金の本来の役割を踏まえて弾力条項における各給付の取扱いの考え方を整理するべきである」。育児休業給付については、計算対象から除外することに加えまして、給付総額が景気変動によって影響を受けない給付については、積立金において1年分を保持することを前提としつつ、景気変動により給付が増減する求職者給付の給付額を基礎として、弾力倍率を算出することするべきであるというような御指摘でございました。
 次に(3)の雇用保険料率についてでございます。ページは改まって10ページでございます。
 1つ目の○ですが、雇用保険料率につきましては、暫定的な引下げ措置は、3年間に限るものと考えていたものであるが、2年間に限り、当該暫定措置を継続することもやむを得ない。
 また、(4)国庫負担につきまして、○の真ん中辺でございますが「平成28年部会報告に至る当部会での議論を踏まえれば、本来、こうした引下げ措置の継続は適当ではなく、雇用対策への国の責任に基づき、失業等給付の国庫負担を本則に戻すべきというのが労使双方の御意見であった」とされた上で、2年間に限り、失業等給付の保険料率の引き下げを継続することとあわせ、雇用保険の失業等給付と求職者支援制度にかかる国庫負担についても暫定措置を継続することは、いわば苦渋の決断ではあるが、やむを得ないものと考える。ただし、当該暫定措置の継続は厳に2年に限るとともに、令和4年度以降、できる限り速やかに、安定した財源を確保した上で、雇用保険法附則第13条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止するべきであるとの御指摘。
 また、求職者支援制度についても、同様の扱いとなることもやむを得ないが、引き続き、一般財源確保の努力を行っていくべきであるとの御指摘でございました。
 次に(5)の雇用保険二事業の財政運営につきまして、雇用安定資金の弾力倍率が1.5倍を上回っている場合には、労働政策審議会の議論の上で、さらに保険料率を1,000分の0.5引き下げることができる規定を整備し、保険料率を引き下げるべきであると。
 次の○ですけれども、その上で雇用保険二事業については、引き続き効率的な運営に努めていくべきであるとの御指摘でございました。
 最後に5の「その他」の関係で2点御指摘がございまして、11ページの(1)、立入検査でございます。
 雇用保険被保険者がいると認められる事業所も立入検査等の対象であることを明確化すべきであるという御指摘、また(2)、法令上の給付額に変更が生じた場合の給付に関しては、2年の消滅時効を援用しないこととすべきであるとの御指摘を頂戴しています。
 雇用保険部会につきましては、以上、12月20日の雇用保険部会にて取りまとめを頂戴いたしました。
 以上、御報告申し上げます。

○阿部分科会長 ありがとうございました。
 それでは、本件につきまして、御質問・御意見がございましたら、御発言をお願いいたします。
 梅田委員、どうぞ。

○梅田委員 たびたびすみません。梅田でございます。
 高年齢雇用継続給付について、要望を2点申し上げたいと思います。
 先ほど、7ページのところで御説明をいただいたとおりでございますけれども、私は電機連合の出身なのですが、産別で実施した60歳以降の雇用形態調査によると、98.6%が継続雇用制度を導入しております。さらにその多くが高年齢雇用継続給付を活用した制度立てになっているという実態がございます。したがいまして、この高年齢雇用継続給付は、まさに60歳以降の労働者に対するセーフティーネットということで、広く活用されていると認識をしています。
 報告書にも記載がございますとおり、十分な時間的な猶予の確保であったり、先行して処遇改善に取り組む事業主の支援であったり、給付率の縮小に伴う激変緩和措置、これらを確実に実施していただきたいというのが1点目の要望でございます。
 2点目でございますが、給付の縮小に当たりましては、来年4月から施行されます同一労働同一賃金に関する法律が、世の中に十分に浸透することが前提になると考えています。70歳までの就業確保を図る上でも、同一労働同一賃金への対応は大変重要になると考えていますので、政府としましても、法の遵守に向けた世論喚起を含めまして、全ての企業において、法の趣旨に沿った対応が図られるように、積極的な後押しをお願いできればと思います。
 以上、2点、よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 ありがとうございました。
 では、御意見として承っておきます。
 ほかにいかがでしょうか。
 正木委員、どうぞ。

○正木委員 ありがとうございます。
 本報告書につきましては、雇用保険部会での議論の結果、結論が得られたものと承知しておりまして、その結論を尊重したいと思います。
 特に注目しておりますのは松本課長もわざわざ読み上げられました、本報告の10ページの(4)の国庫負担のところでございます。最初の段落の末尾で、国庫負担について「雇用対策への国の責任に基づき、失業等給付の国庫負担を本則に戻すべきというのが労使双方の意見であった」と、この記述がされているというところでございます。今後、ぜひ、政府におかれましては、雇用保険料を負担する労使の意見を最大限尊重して、令和4年度以降、11ページの冒頭にございますように、国庫負担に関する暫定措置を廃止するべく、しっかりと検討をお願いいたします。

○阿部分科会長 ありがとうございました。
 では、御意見として承ります。
 ほかにいかがでしょうか。
 よろしいですか。
 これ以上、特にないようでしたら、当報告は雇用保険部会の報告として了承してもよろしいでしょうか。

          (首肯する委員あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。
 当分科会として、本件は了承したこととしたいと思います。
 それでは、事務局から今後の手続につきまして、説明をお願いいたします。

○雇用保険課長 失礼いたします。
 ただいま御了承いただきました雇用保険部会報告に基づきまして、今後、法案作業を進めてまいります。
 まずは要綱の作業から進めてまいりますけれども、これにつきましては、年明けの労働政策審議会で御議論いただく予定でございます。
 その際、あらかじめ雇用保険部会において、法律案要綱に関する御意見をいただいた上で、それらの御意見を踏まえ、職業安定分科会において御議論いただくことをお願いできればと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

○阿部分科会長 それでは、次の議題に移りたいと思います。
 次の議題ですが「雇用対策基本問題部会報告書について」です。
 こちらは、本日開催されました雇用対策基本問題部会において、報告が取りまとめられておりますので、こちらも事務局から報告をお願いいたします。

○雇用政策課長 雇用政策課長でございます。
 資料マル6、資料No.3「雇用対策基本問題部会報告書」を開いていただければと思います。こちらにつきましては私と高齢者雇用対策課長から御説明を申し上げたいと思います。
 ページが下のほうに振っておりますが、1ページのところまでスクロールしていただきまして「高年齢者の雇用・就業機会の確保及び中途採用に関する情報公表について」となっております。こちらにつきましては、成長戦略実行計画を踏まえまして、雇用対策基本問題部会におきまして御議論を深めていただいたところでございます。
 少子高齢化急速に進展しているといった中におきましては、全ての年代の方々が活躍できるような環境整備を進めることが必要であるということ。
 特に、人生100年時代を迎える中におきましては、高年齢者が活躍できる環境整備、また、中途採用に関する環境整備を図っていくことが重要であるとしております。
 (高年齢者の雇用・就業機会の確保)におきましては、高年齢者の労働力人口や就業率は近年増加傾向でございますけれども、今後、さらに個々の高齢者のニーズや状況に応じた活躍の場の整備を通じまして、年齢にかかわりなく活躍し続けることができる社会の実現を図ることが求められることとしております。
 高年齢者現状についての記載をしておりまして、そのうち「65歳以降の者については」という段落でございますけれども、就労に対する考え方とか、体力、健康状態、その他、本人を取り巻く状況が個人差が大きく、また、より多様なものとなるといったことにより、70歳までの就業機会の確保を求めるに当たっても、こうした事情に配慮した制度設計をすることが重要であるとしております。
 また、高年齢者の雇用・就業機会の確保を社会全体で推進するためには、国等による支援、また、地方自治体、シルバー人材センターなど、地域の関係者による多様な就業機会の確保・提供等についてもより一層取り組む必要があるとしております。
 (中途採用に関する環境整備)でございますけれども、職業生活の長期化が見込まれる中におきまして、労働者の主体的なキャリア形成を通じた職業生活のさらなる充実、また、再チャレンジが可能となる社会の実現を図ることが求められるとしております。
 また、技術革新は急速に進展するところでございますので、内部労働市場のみによって必要な人材を確保することは難しくなっているということで、中途採用を通じて外部労働市場から高度な技術や専門性、豊富な経験を有する人材を確保するニーズも高まっているとしております。
 現状としまして、中途採用につきましては、長期的には増加傾向、また、近年、大企業において増加しているといった状況ではございますけれども、中途採用比率で申し上げますと、企業規模が大きくなるほど低いといった状況。また、求職活動を行っていない方を含めますと転職希望者の方は643万人、無業者の方の就職を希望する方は862万人といった状況でございまして、中途採用に関する環境整備の推進、また、情報公表といったことを実施していくということが重要といったことを述べております。
 こうした中で、御議論いただきまして、厚生労働省におきまして、法的整備を含め所要の措置を講ずることが適当と考えるとしていただいているところでございます。

○高齢者雇用対策課長 続きまして、高齢者雇用対策課長でございます。
 「1.高年齢者の雇用・就業機会の確保について」というところで書かせていただいております。
 1といたしまして「65歳までの雇用機会の確保について」というところでございます。
 ここに書いてございますように、70歳までの就業機会の確保に関する施策を推進するに当たっては、65歳までの雇用機会が確保されているということを前提といたしまして、65歳までの希望者全員の雇用確保措置の導入に向けた取り組みを引き続き行うことが必要としていただいております。
 「また」ということで、正規関雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消するための規定の整備等に関する法制度が施行されることなども踏まえ、労働者の適正な待遇の確保などの環境整備も図る必要があるとしていただいております。
 2といたしまして「70歳までの就業機会の確保について」でございます。
 働く意欲がある高年齢者が、その能力を十分に発揮できるように、高年齢者の活躍の場を整備するに当たっては、事業主が一定の措置を講ずることを求める法制度の整備を初めとした環境整備が必要であるとしております。
 「なお」ということで、65歳までの雇用確保措置に関して、指針が定められていることを踏まえれば、70歳までの措置に関しても、その実施及び運用に関する指針を定めることが求められるとされております。
 (1)といたしまして「70歳までの就業機会の確保を図る措置として」ということで、定年廃止、定年延長、継続雇用制度の導入といった現行の高年齢者雇用確保措置と同様の措置に加えてということで、特殊関係事業主以外、他企業への再就職に関する制度の導入、フリーランスや企業による就業に関する制度の導入、社会貢献活動の従事に関する制度の導入といった新たな措置を設けて、これらの措置のいずれかを講ずることを事業者に対する努力義務とすることが適当であるとしていただいております。
 (2)につきましては「65歳までの雇用確保措置」については、就業継続の可能性と就業時の待遇の確保といった点が、労働関係法令による規制により担保されている。
 2段落目でございますが、70歳までの各措置に関しても、事業主の関与の具体的なあり方に関して、これらの点について均衡が求められるとした上で、70歳までの各措置のうち、雇用による部分については、65歳までと同様、労働関係法令及び規制により担保されているとした上で、努力義務について雇用によらない措置による場合には、事業主が制度の実施内容を明示して、労使で合意し、労働者に周知するよう努めることが適当であるとしていただいております。
 (3)は、制度対象者について言及されています。
 「現行の65歳までの雇用確保措置では、希望する高年齢者全員を対象とした制度を導入することが事業主の義務」とした上で、65歳以降の高年齢者については、体力、健康状態、その他、本人を取り巻く状況がより多様なものとなるということを踏まえた上で「今般の努力義務を設けるに当たり」ということで、事業主が講ずる措置について、対象者の限定を可能とすることが適当であるとしていただいております。
 「なお」ということで、対象者を限定する場合には、その基準について、労使で行為が図られることが望ましいことから、この点について、指針において明示することが適当であるとしていただいております。
 (4)については、1段落目のところで「70歳までの措置の適切な実施を図るためには、労使での十分な話し合いを行うことが求められる」とした上で「このため」ということで、まず、事業主がどのような措置を講ずるのかに関する話し合いについては、65歳まで雇用確保措置と同様に、話し合いについて指針に明示することが適当であるとしております。
 「また」ということで、事業主が努力義務について雇用によらない措置による場合の話し合いについては、過半数労働組合または過半数代表者との間で合意するよう努めることを法律で定めることが適当であるとされております。
 「さらに」ということで、今回、事業主が複数の措置を講ずる場合においてということで、個々の労働者にどの措置を適用するかについての話し合いということで、個々の労働者の希望を聴取することを指針において明示といったことが適当であるとされております。
 (5)につきましては、法的義務がどこにあるかということを書いていただいてございます。
 現行の65歳まで雇用確保措置については、60歳まで雇用されている高年齢者について。事業主が定年を65歳以上に定める等の措置を念頭に置いた制度とした上で、継続雇用制度では、65歳まで特殊関係事業主で雇用されることも可能とされておりますが、法律上は雇用確保措置の責務は、60歳まで雇用していた事業主にあるとされております。
 こういったことを踏まえまして「従って」ということで、70歳までの措置については、60歳まで雇用していた事業主が、法律上、措置を講ずる努力義務を負うと解することが適当であるとしております。
 (6)は各選択肢の内容を書いてございます。
 1つ目は「定年廃止」「定年延長」「継続雇用制度の導入」については、65歳までの雇用確保措置と同様のものとするとしております。
 2点目「他の企業への再就職の実現」につきましては、特殊関係事業主による継続雇用制度と同様に、事業主間で契約を締結するものとすることとされております。
 次の点「個人とのフリーランス契約への資金提供」及び「個人の起業支援」につきましては、定年後または65歳までの継続雇用終了後に元従業員との間で、業務委託契約を締結する制度を設けるものとするとされております。「なお」ということで、どのような事業を制度の対象とするかについては、事業主が制度の中で定めることができるとされております。
 次の点は「個人の社会貢献活動参加への資金提供」ということでございます。
 これも定年後、または65歳までの継続雇用終了後に元従業員が、事業主がみずから実施する事業あるいは事業主が委託、出資、その他の援助を行う団体が実施する事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものに係る業務について、70歳まで継続的に従事できる制度を設けるものとすることということとしております。
 2の場合には、以下においては、70歳まで引き続いて事業に従事させることを約する契約を、団体間で契約を締結するということとされております。
 また「併せて」ということで、事業の出資、その他の援助により高年齢者が従事する事業について、当該事業の円滑な実施に必要な出資(資金提供)その他の援助を要件とすることとされております。
 「また」ということで、事業主の関与の具体的なあり方に関する他の選択肢との均衡の観点からということで、制度の対象となる事業は高年齢者に役務の提供等の対価として金銭を支払う有償のものに限ることとするとされております。
 (7)は「多様で柔軟な働き方を踏まえて」ということで、1つの措置により、70歳までの就業機会を確保することだけではなくて、複数の措置を組み合わせることによって、70歳までの就業機会を確保することも、努力義務を満たす措置を講ずるものであると解することが適当であるとされております。
 (8)は「事業主の履行確保」ということで行政措置について書いていただいております。「厚生労働大臣は」ということで、基本方針に照らして必要があると認めるときに、措置の実施について必要な指導・助言、あるいは計画の作成・提出、計画の変更や適正な実施を求めることができるようにすることが適当であるとしていただいております。
 (9)のところでは、再就職援助措置、あるいは多数離職届出について書いてございますが、70歳までの措置を講ずることが事業主の努力義務であることを踏まえれば、措置の対象とならない労働者が生じる可能性があるということで、「このため」ということで、現行の規定にございます再就職援助措置に係る努力義務あるいは多数離職の届出に係る義務の対象者について、事業主が70歳までの措置を講じない場合に、70歳未満で退職する高年齢者及び事業者が対象者を限定した制度を導入した場合に、当該制度の利用を希望しつつもその対象とならなかった高年齢者を加えることが適当であるとしていただいております。
 (10)は「事業主による措置の実施状況等について」ということで、国に毎年1回報告いただいております「定年及び継続雇用制度の状況その他高年齢者雇用に関する状況」について、今回導入します措置の実施状況を、当該報告の内容に追加する。今回の措置の内容を追加するということが適当であるということとしていただいております。
 (11)は「新たな制度の円滑な施行を図るためには」ということで、65歳までとは異なる新たな措置が選択肢としても盛り込まれることに伴い、新たな制度について、国は十分な周知に努める必要がある。「また」ということで、措置の導入に向けた労使による話し合いや労働者への事前の周知に一定の期間を要することが見込まれるということで、このため、過去の高年齢者雇用安定法の改正時の例も参考としつつ、適切な準備期間を設けることが適当であるとされております。
 3番目といたしまして「高年齢者の活躍を促進するために必要な支援について」ということで、ここは支援策を中心にまとめていただいております。
 (1)といたしまして「事業主による雇用・就業機会の確保を促進するための支援について」ということで、国は以下の措置を講じるということで、70歳までの措置を講じる事業主に対する助成措置、相談体制の充実を図るほかということや、他社への再就職の措置に関する事業主間のマッチングを促進するための受け入れ企業の開拓確保の支援。
 2点目といたしましては、能力及び評価を重視する評価・報酬体系の構築を進める事業主に対する助成、相談・援助等を実施すること。
 さらに、高年齢者が安心して安全に働ける職場環境の構築を支援することとしていただいております。
 (2)といたしまして「高年齢者の再就職キャリア形成に関する支援について」ということで、1つはハローワークの生涯現役支援窓口、産業雇用安定センターによるマッチング機能の強化を図る。
 さらには、高齢期を見据えたキャリア形成支援・リカレント教育を推進するためにということで、労働者のキャリアプランの再設計等を支援する拠点の整備あるいはその企業の実情に応じた中高年齢層向け訓練の実施等に取り組むこととしていただいております。
 (3)として「地域における多様な雇用・就業機会の確保」ということで、1点目としては、生涯現役地域連携事業による、地方公共団体を中心と協議会による取り組みを引き続き推進すること。
 また、シルバー人材センターにおいて、人手不足分野等での就業機会の開拓・マッチング機能や、地域ごとの特色や実情を踏まえた積極的取り組みを強化することとしていただいております。

○雇用政策課長 「2.中途採用に関する情報公表について」でございますけれども、まず1の企業規模については、中小企業の中途採用が既に活発であることとか、企業負担を踏まえまして、労働者数301人以上の大企業についてのみ義務化することが適当であるとしています。
 2、公表項目については、正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合とすることが適当であるとしておりまして、また、直近3事業年度の割合を公表することが適当であるとしております。
 3の公表方法につきましては、企業のホームページ等の利用などによりまして、求職者の方が容易に閲覧できる方法によることが適当であるとしております。
 4の支援策ですけれども、企業におけるさらなる職場情報の自主的な公表が進むように、2段落目の「このため」以下ですが、大企業については法的義務を求める項目以外についても自主的な公表が進むように、中高年齢者等、定量的な情報、また、中途採用に関する企業の考え方などの定性的な情報の公表を支援することが適当であるとしております。
 「また」以下ですが、中小企業につきましても、大企業に法的義務を求める項目とあわせて、他の情報の公表が自主的に進むように支援を行うことが適当であるとしております。
 (2)につきましては、中途採用に関する情報公表に関する好事例の収集、周知を図ることが適当であるということ。
 (3)は、中途採用に関する環境整備としまして、職場情報の見える化とかハローワーク等におけるマッチング機能の充実、人材確保等により一層取り組んでいくことが必要であるとしております。
 (4)は、後段のほうから申し上げますと、国が求職者等の職業選択に資する職場や職業に関する情報提供のために必要な施策を充実させることを国の施策として、法律上も明確にすることが適当であるとしております。
 施行までの期間につきましては、適切な準備期間を設けることが適当であるとされているところでございます。
 以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございます。
 それでは、本件について、御質問・御意見がありましたら、御発言をお願いします。いかがでしょうか。
 では、林委員、お願いします。

○林委員 私のほうからは、2ページに書いてあります、1ポツの高年齢者の雇用・就業機会の確保について、2点、意見として述べさせていただきたいと思います。
 まず、フリーランスや起業などの「雇用によらない措置」のみを選択する場合には、労働関係法令が及ばないため、集団的労使関係による労使合意をその要件としていますが、労働組合がない職場などにおいて、この労使合意の実効性をどのように担保していくのかということは、今後、きちんと検討していくべきだろうと思いますし、ぜひ、このあたりの対応をお願いしたいと思います。
 もう一つは、就業者の保護の観点からの意見です。これは基本問題部会でも議論になったと聞いておりますけれども、雇用によらない働き方というのは、労働安全衛生法や労働基準法などの法的保護が及ばないということもありまして、65歳以上の高齢者に限らず、きちんとセーフティーネットの構築を図るべきだと考えています。
 また、こうした労働者保護の視点を抜きにして、このような働き方が、ほかの世代に安易に拡大されないように留意する必要があるとも考えておりますので、ぜひこのあたりもきちんと議論をしていっていただきたいと思います。
 以上です。

○阿部分科会長 御意見として承りたいと思います。ありがとうございます。
 ほかにいかがですか。
 では、正木委員お願いします。

○正木委員 ありがとうございます。
 本報告書について、内容的には大変広範なのでいろいろ思うところはあったわけですけれども、基本問題部会での議論の結果、結論が得られたものということで承知しておりまして、その結果をまず尊重したいと思います。
 ただ、今後の本報告の具体化に当たって、少し申し上げたいと思います。
 報告の5ページの(11)に、個別の労使による話し合いや事前の周知に一定の期間を要するので、適切な準備期間を設けることが適当という表現ございます。まさに記述のとおり十分な準備期間が必要だと認識しております。
 私は、ある65歳までの選択定年制を導入された会社さんにお話を伺ったことあるのですけれども、議論を始めてから導入するまでに3年以上かかったそうです。その間に労使委員会を20回以上、それから、労働組合の皆さんが組合員の皆さんとの職場懇談会を10回弱開催し、それからいろいろなニュース発信を組合員の方々がされ、さらに会社のほうは各事業所を回る従業員説明会を二百数十回開催したというこというお話を伺いました。65歳まで何らかの雇用継続が当たり前に近い状態になっている中で、それを選択定年制にするだけでも、それだけ丁寧な議論が必要だったということでございます。
 今回の措置は、今、林委員から御指摘ございましたように、雇用によらない選択肢もある非常に複雑な仕組みでございますので、理解することも、今までの仕組みと比べて簡単ではございません。働く期間を延ばすということは、単に就業規則のその条項を書きかえるというだけではなくて、賃金カーブのあり方をどうできるのかとか、職場の人員配置とか役割分担、さらには職場全体が停滞しないように活性化するにはどうしたらいいのか。林委員がおっしゃっていました、安全の確保をどう図るのかといった、議論すべき点が多数あります。
 一人一人、これを受けとめる働き手の方にとっても、キャリアプランのみならずライフプランにも大きな影響を与えることだと思っております。今回の仕組みは、さまざまな試行錯誤が必要ということで、努力義務にして、それぞれの労使の工夫を見守るという趣旨については賛成でございますけれども、もし、努力義務にすぎないから労使が新しい仕組みを議論する、準備期間など短くていいとか、あるいは、ともかくやってみろと、やらずに議論しているのであれば、5ページの(8)の行政措置をすぐにでも発動するぞとか、そういった乱暴なことになっては、せっかくのさまざまな選択肢を工夫された仕組みが台無しになるのではないかと危惧してございます。
 十分な準備期間と十分な周知、さらに、行政措置を振りかざすのではなくて、丁寧な議論を促すような運用ができるように、報告の具体化に向けた詰めをお願いしたいと思います。
 以上です。

○阿部分科会長 ありがとうございました。では、御意見として承りたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 では、杉崎委員、どうぞ。

○杉崎委員 ありがとうございます。
 高齢者、70歳までの就業機会の確保に関する政府案についてでございますが、全体的に非常にバランスがとれていると思いますし、現実的かつ納得性のある内容だと思ってございます。
 その上で意見を申し上げさせていただきますが、非雇用を含む措置の導入は、企業の人事戦略とか処遇体系に大きな影響を及ぼしますので、厚生労働省におかれましては、この努力義務の内容の幅広い周知とか、資料に記載の企業に対する支援策に、ぜひ力を入れていただきたいと思います。
 また、先日の報道で、企業を対象とした7つの選択肢に関するアンケート結果が公表されておりましたが、非雇用の選択肢については、多くの企業が具体的なイメージを持てていない状況であるかと思います。これはいたし方のないことだと思っております。
 今回のこの政策が有効に機能するためには、特に非雇用の選択肢について、企業が具体的なイメージを持つことが重要だと思いますので、ぜひ好事例の横展開などの取り組みについても力を入れていただきたいと思います。
 また再三の要望となり恐縮でございますが、中小企業に対する幅広い周知、相談体制の強化とか、今後、策定される指針が、企業の実態に即したものになるように、丁寧な議論をしていただくこと。また、施行時期につきましても、どの選択肢をとるかについてお話し合いに時間がかかるものだと思いますので、施行時期に関する配慮といったこともぜひお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございました。では、御意見として承ります。
 ほかにいかがですか。
 よろしいですか。
 それでは、本件に関して報告文案の配付をお願いしたいと思います。

          (報告文案配付)

○阿部分科会長 お手元に配付されました報告文案ですが、日付がきょうの日付で入ると思いますので、その点、御了解いただきまして、この報告文案によりまして労働政策審議会会長宛てに報告することとしてよろしいでしょうか。

          (「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。
 それでは、そのように報告をさせていただきます。
 これをもちまして、厚生労働大臣に対する建議となりますので、御了解いただければと思います。
 それでは事務局から、今後の手続について、説明をお願いいたします。

○高齢者雇用対策課長 ただいま御建議いただくことになりました「高年齢者の雇用・就業機会の確保及び中途採用に関する情報公表」につきましては、今後、事務局で法律案要綱を作成いたしまして、本分科会で御議論をお願いする予定としております。
 今後の進め方につきましては、雇用保険制度と同様に、あらかじめ雇用対策基本問題部会におきまして、法律案要綱について御意見を頂戴いたしまして、その意見を踏まえまして、職業安定分科会において御議論いただくようお願いしたいと思っております。

○阿部分科会長 では、次の議題に移りたいと思います。
 次の議題ですが「雇用保険法第十八条第四項に規定する自動変更対象額を変更する件及び雇用保険法第十八条第一項及び第二項の規定に基づき、同条第四項に規定する自動変更対象額を変更する件の一部を改正する告示案要綱」。「雇用保険法第十九条第一項第一号に規定する控除額を変更する件の一部を改正する件案要綱」及び「雇用保険法第六十一条第一項第二号に規定する支給限度額を変更する件等の一部を改正する告示案要綱」について、これは諮問案件となっております。
 本件につきましては、12月20日付で厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛て諮問を受けております。
 では、事務局から、本件につきまして、説明をお願いいたします。

○雇用保険課長 雇用保険課長でございます。
 資料のマルの7番、資料4-1が諮問告示案要綱。
 マルの8番、資料4-2が、その概要を御説明する資料でございます。
 マルの8番の資料4-2を用いまして御説明申し上げたいと思います。
 資料4-2を2つスクロールしていただいた、ページ数3枚目でございますが、今回の告示変更3件につきましては、毎月勤労統計について、大阪府及び奈良県において不適切事案が確認されまして、この毎月勤労統計の平均定期給与額の変動を基礎として算定している自動変更対象額、上限額等でございます。
 また、内職減額控除額、また、高年齢雇用継続給付の支給限度額について、次のページの(参考)でございますが、別紙の時期について、額の変更が生ずることとなりました。
 具体的には、その(参考)をご覧いただきたいのですけれども、マル1、マル2のように賃金日額の上限額が、本来あるべき数値よりも高くなっている。また、内職減額控除額、マル3につきましても、本来あるべき額よりも高くなっていた。マル4からマル8まで、高年齢雇用継続給付を支給限度額につきまして、プラスとマイナスが生じていたという件でございます。
 これは、具体的な支給実績に照らしてみますと、追加給付は本件については発生いたしません。本来あるべき額よりも多くお支払いした方はいらっしゃるのですが、既にお支払いした支給金について、回収はいたしません。
 システム上、これらを正しい数値に変更するには時間がかかるのでございますが、変更ができ次第、正しい額での給付を始めたいと存じます。
 内容は以上でございます。
 本件につきましては、12月20日の雇用保険部会で、これらの告示案要綱につきまして、妥当との結論を頂戴しております。
 以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございます。
 では、本件につきまして、御質問・御意見がございましたら御発言ください。
 いかがでしょうか。
 特段よろしいですか。
 では、特にないようでしたら、当分科会は厚生労働省案を妥当と認め、その旨を私から御報告申し上げたいと思いますがよろしいでしょうか。

          (「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 では、報告文案の配付をお願いいたします。

          (報告文案配付)

○阿部分科会長 それでは、ただいま配付されました報告文案ですが、日付は本日の日付にしまして、労働政策審議会会長宛てに報告したいと思いますが、よろしいでしょうか。

          (「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 では、そのように報告をさせていただきます。
 では、次の議題の「その他」ですが、事務局より説明をお願いいたします。

○総務課長 総務課長の宮本でございます。
 職業安定分科会につきまして、これから御説明いたします2件について、持ち回りにて開催させていただきましたので、御報告させていただきます。
 まず、雇用調整助成金の特例措置についてでございます。
 本年、10月21日付で、厚生労働大臣より労働政策審議会に諮問があり、第141回「職業安定分科会」を持ち回りにて開催いたしました。
 内容は、台風19号に伴い、雇用調整助成金の特例措置として、助成率の引き上げ等を行うものでございます。これにつきましては、10月25日付で、労働政策審議会より厚生労働省案は妥当であるとの答申を得て、10月30日に公布され、同日に施行されたところでございます。
 続きまして、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令案要綱等についてございます。
 本年12月10日付で、厚生労働大臣より労働政策審議会に諮問があり、職業安定法施行令及び職業安定法施行規則の一部改正部分について、第142回「職業安定分科会」を持ち回りにて開催いたしました。
 内容は職業安定法に基づく求人不受理の対象として、職場におけるパワーハラスメント防止に関する事業主の雇用管理上の措置義務の規定を追加する等といったものでございます。
 これにつきましては、12月13日付で、労働政策審議会より厚生労働省案は妥当であるとの答申を得て、今月末に公布された後、令和2年6月1日に施行される予定でございます。
 委員の皆様方におかれましては、御多用のところ、急な御依頼にもかかわらず、お時間を頂戴し、まことにありがとうございました。この場をかりてお礼申し上げます。
 御報告は以上でございます。

○阿部分科会長 ありがとうございます。
 これで、こちらで用意している議題は以上で終了いたしました。
 委員の皆様から何か御発言はございますでしょうか。
 よろしいですか。
 それでは、本日の分科会は、これにて終了させていただきます。
 本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規程第6条により、分科会長のほか、お二人の委員に署名をいただくことになっております。
 つきましては、労働者代表の仁平委員、使用者代表の森下委員にお願いしたいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。