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第6回社会保障審議会年金部会 議事録
日時
令和5年7月28日(金)15:00~17:00
場所
東京都千代田区平河町2-4-2
全国都市会館 2階 大ホール
全国都市会館 2階 大ホール
出席者
- 会場出席委員
-
- 菊池部会長
- 玉木部会長代理
- 小野委員
- 小林委員
- 是枝委員
- 島村委員
- たかまつ委員
- 原委員
- 百瀬委員
- オンライン出席委員
-
- 権丈委員
- 駒村委員
- 佐保委員
- 嵩委員
- 深尾委員
- 堀委員
- 井上参考人(出口委員代理)
議題
- (1)遺族年金制度について
- (2)加給年金制度について
議事
- 議事内容
- ○総務課長 ただいまより、第6回「社会保障審議会年金部会」を開催いたします。
皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。
初めに、本日の委員の出欠状況を報告します。
出口委員、武田委員、永井委員、平田委員から、御欠席の連絡をいただいております。
駒村委員、堀委員は、遅れて参加される旨の御連絡をいただいております。
権丈委員は、途中退席される御予定と伺っております。
御欠席の出口委員の代理として、日本経済団体連合会の井上様に御出席いただいております。
井上様の御出席につきまして、部会の御承認をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○総務課長 ありがとうございます。
なお、権丈委員、駒村委員、佐保委員、嵩委員、深尾委員、堀委員、代理出席の井上様は、オンラインでの参加となります。
出席委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しております。
次に、事務方の異動がございましたので報告いたします。
7月4日付で大臣官房審議官に着任した、泉でございます。
○泉審議官 どうぞよろしくお願いいたします。
○総務課長 続いて資料の確認をいたします。
本日の部会は、ペーパーレスで開催しております。傍聴者の方は厚生労働省ホームページから資料を御覧ください。
本日の資料は、資料1「遺族年金制度」、資料2「加給年金制度」となっております。
事務局からは以上でございます。以降の進行は、菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、お忙しいところ、また、会場の皆様、大変お暑い中御参集いただきまして、どうもありがとうございます。
カメラの方は、ここで退室をお願いいたします。
(冒頭カメラ撮り終了)
○菊池部会長 それでは、早速、本日の議事に入らせていただきます。
本日は「遺族年金制度について」「加給年金制度について」、以上の2つを議題とさせていただきます。
それでは、この2つの議題につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○年金課長 年金課長です。私からは資料の1と2を併せて御説明します。
議論の時間をなるべく多く取るため、簡潔に説明することをお許しください。
これまで、第4回でお配りした「次期改正に向けた検討事項」に沿って検討を進めてきました。その中の「家族と年金制度の関わり」にある4つの項目のうち、本日は遺族年金と加給年金を取り上げます。残りの第3号被保険者制度といわゆる年収の壁等は別の回で議論する予定です。
資料右下のページ番号の3ページは、遺族基礎年金の目的についてで、遺族基礎年金は、国民年金の被保険者が死亡したという場合に、お子様がいる配偶者、あるいはお子様自身の生活の安定を図る制度になっています。
4ページは、遺族厚生年金の目的についてで、厚生年金の被保険者が死亡した場合に、その遺族に対して従前の生活を保障する目的になっています。
5ページは、遺族基礎年金の概要で、支給要件は1にあるとおりです。2の対象者は、子がある配偶者またはお子様自身ということで、受給権自体はこの二人に発生しますが、生計を同じくする父母がいる間は、お子様の遺族基礎年金は支給停止になります。年金額はその下にあるとおりです。
6ページは、遺族厚生年金の概要で、支給要件は1にあるとおりです。対象者は、最初のマルは遺族基礎年金と同じで、子のある妻または子となっています。それ以降が遺族厚生年金独自の支給対象者でマルの2から4まであります。補足として、子のない妻のうち夫の死亡時に30歳未満の場合は、5年間の有期給付となっています。※にあるとおりです。また、マル4の「夫、父母、祖父母」については55歳以上という年齢のルールがあります。年金額は報酬比例の額の4分の3が基準になります。
7ページは、厚生年金独自の加算である中高齢寡婦加算についてです。遺族基礎年金は、お子様がいない妻には支給されないため、遺族厚生年金のみが支給されている場合で、特に中高齢であって就労が困難であるという寡婦の方を念頭に給付を行う加算です。支給要件は2番にありますが、夫の死亡時に40歳以上である、お子様のいない妻になります。加算額については一番下のとおりです。
続いて国民年金独自の給付が8ページに2つあり、1つは寡婦年金、もう一つは死亡一時金です。寡婦年金は、掛け捨て防止という観点から、60歳から65歳までの有期給付として支給されます。死亡一時金は、第1号被保険者としての保険料納付済期間がある方が亡くなられた場合に、納付済期間に応じて定額が支給されます。
9ページは、遺族年金の支給対象者の範囲について、子のない妻、子のある配偶者、子など表の形で整理し直したもので、○は支給対象、×は支給対象外となっています。
10ページは、遺族年金に共通する仕組みである生計維持要件についてです。遺族になった際の支給対象者は、亡くなられた方との関係で生計維持の関係にあることが必要です。これは法律上の発生要件となっておりまして、この判定によって支給される、されないというのが決まることになります。
生計維持要件は2つの要素があって、1つは生計が同一であるということと、もう一つは収入要件で年収が850万円未満であることです。この額についての考え方は、社会通念上、高額の収入がある方は除外しようということで、現在の厚生年金の報酬月額の上位10%に当たる方々の水準を採用しています。
11ページが実際の標準報酬の分布で、赤い線を引いていますが、そこから上の層が10%になります。
12ページですが、この生計維持要件は遺族年金以外でも使っており、例えば加給年金、振替加算等でもこのルールを採用しています。
13ページは遺族年金の支給状況と人数で、厚生年金では妻が573万人と多いのが特徴です。
14ページは、年齢階級別の構成割合で「厚生年金のみ」の場合、一番上の赤で囲ったところですが、60歳以上の受給者が全体の9割以上となっています。ほとんどの方は高齢の御夫婦でどちらかが亡くなられた場合の遺族という形が多いのが特徴です。
他方で、遺族基礎年金については18歳未満のお子様がいるのが条件のため、年齢層は40代が全体の半数以上を占めています。このように遺族厚生年金と遺族基礎年金では受給されている方の特徴が異なっています。
ここからは改正経緯、それから課題についてです。
16ページは歴史で、両制度ともそれぞれ母体となっている旧法の仕組みがあり、60年改正で基礎年金が導入された際、遺族年金についても共通の仕組みが導入されて現在に至ります。
それからいくつか改正がありまして、平成16年改正では、先ほど申し上げた30歳未満でお子様がいない妻に対する遺族厚生年金の有期給付化が入りました。それから平成24年改正では、遺族基礎年金の対象について、それまで母子家庭のみだったのが父子家庭に拡大しています。
17ページは、平成27年1月に出された年金部会における議論の整理について事務局でまとめたものです。これまでの年金部会において、遺族年金に関する議論としてまとまったものとなっており、実際の意見書は18ページに載せています。
平成27年当時の整理では、論点としてそこにあるような指摘がされています。また主な指摘事項が4点あり、制度上の男女差の解消、養育する子がいない家庭での有期化または廃止、その際には現に生計を立てている方への配慮が必要とあって、4番目は遺族基礎年金の話です。本日の資料もこれを念頭に用意しています。
19ページは、令和2年改正時の年金部会での整理です。
20ページからは、年金部会でいただいた御意見をまとめています。
総論としては、社会の変化に合わせて制度を見直すことの必要性。その際には、時間をかけて基本的な考え方の整理から行うのが良い、また、時間軸の視点を持ってやるべきではないかということが挙げられておりますし、将来の在り方を検討する際にはコーホート別の見通しに基づいた議論が重要という指摘もいただいています。
20ページの下は、男女差について、21ページは遺族厚生年金の有期化、遺族基礎年金の支給停止、生計維持要件などについて頂いたものです。
24ページからは、遺族厚生年金、遺族基礎年金のそれぞれに関する資料になりますが、まず24ページは、先ほどご紹介した平成27年の議論の整理を改めて載せており、このうち遺族厚生年金に関連するところを赤で囲っています。
25ページは、遺族年金の男女の要件の違いについて整理したもので、遺族基礎年金は、平成24年改正後は父子家庭も給付対象として制度上の男女差はない一方で、遺族厚生年金については要件に違いがあって、繰り返しになりますが、夫については妻の死亡時55歳以上という年齢要件があります。また中高齢寡婦加算のような形で給付内容についても差が存在しています。
26ページ以降は、遺族年金受給者の実態に関するデータです。
27ページは、65歳未満の受給者数についてで、夫と妻では大きく差があり、妻が非常に多くなっています。また妻については、緑色のところですが中高齢寡婦加算を受給している方が、年齢が高い層を中心にいらっしゃいます。
28ページは、平均年金月額で、受給の状況によって分けていますが、遺族基礎年金では大きな差はない一方で、緑の部分の中高齢寡婦加算の受給資格がある妻の年金額は高くなっています。右側は遺族厚生年金のみの場合の平均年金額のデータです。
29ページは、同じく65歳未満の夫と妻の年金額の分布で、緑の層が中高齢寡婦加算を受給している妻となっており、8万円から12万円をピークとして多くいらっしゃいます。
30ページ、31ページは、これまでご紹介した数値の元データで、30ページは65歳未満の夫の受給者数と平均年金月額、31ページは同じく妻についての数字です。
32ページは、遺族厚生年金の受給者について、被保険者が死亡した当時の年齢を見ています。赤で囲っていますが、全体の25%が60歳未満で死別しており、残りの方はそれ以降になっています。
33ページからは、65歳未満の受給者の方の就業状況で、33ページは各年齢階層別に見ていますが、一番上の赤い数字部分では、全体的に各年齢層でおおむね8割の方が就業されています。一方で仕事の内容は下の表になり、パート(常勤)が一番多くなっています。さらにその下に夫と妻の内訳がありますが、夫については正規職員が多くなります。
一番下は年間収入についてで、全体では約6割の方が200万円未満ですが、これも夫と妻で見ると、夫が受給者の場合には300万円から500万円の層が多くなっています。
34ページは、遺族年金受給者のうち働いていない方について、その理由を伺ったものです。理由として幾つかありますが、働く場がない、あるいは育児、病気によって働くことができない、そういう非自発的な理由が7割程度いらっしゃいます。理由別では、20代から30代では「育児」を挙げる方が多く、40代以降は「病気、その他」の割合が多くなっています。
また左側の欄に人数を載せており、29歳未満だと130人、30から34歳ですと450人という数字で、母数としては非常に少ないということがいえます。
35ページは、同じく遺族厚生年金のみを受給する妻、この場合はお子様がいないことが想定されますが、この方々に、被保険者が亡くなって遺族になった際に、就業状況に変化があったかを聞いています。
死亡前に働いていた方は、引き続き就労している方が多数になっている一方で、死亡前に仕事がなかった方について見ると、若い世代では就職した方が多いですが、45歳を超えると無職のままの方が上回っています。この表は、被保険者死亡時の受給者の年齢で作成しており、現在の年齢ではありません。遺族になった時点の年齢になるので、記載の年齢階層はコーホートを表していない点は注意して見る必要があります。
36ページは、65歳以上の受給者の平均年金月額で、妻については自分の老齢年金と遺族年金を併給すると「老齢厚生年金のみの夫」と同じぐらいの水準になっています。
37ページは、年金額の分布で、妻については遺族年金、遺族厚生年金を併せて受給されている方が多くいらっしゃいます。
39ページ以降は、基礎年金ができてからの社会経済状況の変化を主に見たものです。
39ページは、女性の就業率で20代、30代と大きく上昇しています。
40ページは、同じく女性の就業率の推移ですが、こちらは、若い世代になるほど各年齢層における就業率が高くなっています。
41ページは、左側がいわゆるM字カーブで、Mが底上げされて台形に近づきつつあります。右側は、同じ労働力率について「有配偶」と「未婚」で分けており、有配偶の方について平成24年と令和4年を比較したのが赤い丸の部分です。
42ページは、世帯数の推移で専業主婦世帯が減少しているのは御案内のとおりです。
43ページは、共働き世帯の内訳になりますが、妻がパートタイムという層が増えています。他方でこの617万世帯の内訳を年齢階層で見ると、中高齢層が多くなっています。
44ページは、いわゆるL字カーブで、各年齢層の正規雇用比率になります。
45ページは、既婚女性の就業状況で、全体の状況が一番右にあり、非労働力人口が約3割弱いらっしゃいます。残り7割の就業されている方について赤で囲っていますが、5割強は非正規の方になっています。他方で黄色い部分ですが、年齢階層で見ると20代、30代では正規、40代以降は非正規の方が多くなっています。
46ページは、男女の賃金格差で、長期的には格差が縮小する傾向にあるものの依然として開きがあります。
47ページは、年齢階級別の賃金差について平成14年と令和4年で比較したものです。30歳未満の子がいない妻の有期給付化を行った平成16年改正の際にこの平成14年のデータを利用している関係で平成14年と令和4年を比較しました。各年齢層で格差は縮まっていますが、40代、50代で見ると7割前後というデータです。
48ページは、ひとり親世帯における就業状況で、母の死別世帯ではパート、アルバイトあるいは不就業が多くなります。
49ページは、死別世帯における年間収入ですが、父と母の場合で違っています。
続いて遺族基礎年金についてで、51ページに平成27年の議論の整理を再掲しています。
52ページは、配偶者とお子様それぞれの受給者数です。
53ページは、平成27年の指摘に関係する部分です。遺族基礎年金については、遺族厚生年金にないルールとして、生計を同じくする父もしくは母があるときは子ども自身に支給される遺族基礎年金が支給停止になります。このルールに基づくと、下にあるAからDのケースでお子様の遺族基礎年金が支給停止になります。Aは、離婚後に引き取ったパターン、Bは再婚したパターン、Cは養子になったパターン、Dは生計維持要件のパターンです。それぞれ左側ではお子様自身に遺族基礎年金が支給されていたものが、右側の場合には生計同一の父母がいるということで支給停止になります。
54ページは、支給停止事由についての要件をまとめたものです。
55ページ以降は、関連するデータで、1985年と2020年を比較し男女ともに未婚や離別が増えています。
56ページは、離婚件数の推移で、子供あり世帯の離婚が増えています。
そこから先は諸外国の制度での紹介で58ページは一覧です。
59ページは、厚労科研で遺族年金の給付の性格を4つに整理したものです。
60ページは、この4つの形に沿って先進諸国における遺族年金制度の見直しの内容を整理したものです。
61ページは、男女差が解消された年についての諸外国の状況です。
62ページは、最近の改正としてフィンランドの事例になります。
それから先は、先進諸国における各種データの比較です。
最後は参考としていくつか資料を並べていますが、1つは先ほどご紹介した研究で整理された論点を事務局でまとめたものです。
2つめは、遺族年金に関して行われた国会質疑について紹介しています。
資料1は以上で続いて資料2の「加給年金制度」になります。
1ページは、この制度の概要で、加給年金は、主に老齢厚生年金の受給権が発生した際に生計を維持する65歳未満の配偶者またはお子さんがいる場合に、厚生年金に加算される厚生年金独自の制度です。加算される老齢厚生年金の受給権自体が20年以上の被保険者期間をもつこと、加給年金の対象となる配偶者の方々自身の厚生年金は20年未満であること、といった条件があります。老齢厚生年金の受給権は多くの場合65歳に発生するので、その時点で65歳未満の配偶者がいらっしゃる方が対象の中心になります。
2ページが、加給年金の額です、生まれた年によって違いますが、現在受給されている方は特別加算も加えた年間39万7500円になります。
3ページは、制度の変遷で、昭和29年にできた後、現在の形になったのが昭和60年の改正で、この時に配偶者自身が65歳で老齢基礎年金を受給するまでの有期給付とされました。
4ページが実際の支給状況で、老齢厚生年金への配偶者加給では92.7万人で、制度上では男女の差はありませんが、実態としては支給されている方のほとんどが男性です。
5ページは、加給年金受給者の平均年金額です。
6ページは、男性の年金額別の人数分布で、期間が20年以上の老齢厚生年金が受給されている方が206万人いて、老齢年金額が月額平均で15.8万円となっており、そのうち配偶者加給を受給されている方が65.7万人で年金額は18.8万円になっています。加給年金額が加わる分、平均で3万円程度多くなっています。女性については7ページですが、配偶者加給の受給者数は1.6万人と少ない状況です。
8ページは、6ページでは65歳から69歳のデータで見たものを65歳の一時点で見たものです。33.6万人の老齢厚生年金の受給者のうち、加給を「受給されている方」が15.7万人となっています。他方で「受給していない方」には、単身者が含まれているなど様々な方が入っています。
9ページは、配偶者加給年金の年齢別の受給者数です。加給年金では、配偶者である妻が加給対象となって、夫の老齢厚生年金に加算されるのが一般的です。この表は、左側の縦が夫を想定した受給者の年齢構成で、横は妻を想定した加給対象者の年齢構成になります。右上から左下に行くほど、夫と妻の年齢差が大きくなるという構造になっており、赤い四角で囲った25.3万人は、少なくとも夫と妻の年齢差が5歳以上ある人数になります。この年齢差が大きくなると、加給年金の受給期間も長くなるという特徴があります。
10ページは、加給年金に関する年金部会での御意見で、夫婦の年齢差によって支給の有無や支給期間の長短が決まるものについて、公平性の観点から見直しの検討の必要があるではないかという指摘がありました。それから過去の年金部会での意見もつけており、繰下げをためらわせる要因になっているのではないか、在職老齢年金あるいは加給年金が繰下げの選択の邪魔していないか、といった指摘もいただいています。
11ページ以降は参考資料ですが、11ページは支給開始年齢の引上げのスケジュールで、加給年金は女性の支給開始年齢との関係があるためつけています。
12ページ、13ページは、振替加算についての資料で、加給年金は配偶者自身が65歳までの給付ですが、65歳からは加給年金に代わるものとして、生まれ年に応じた振替加算が配偶者の老齢基礎年金につきます。13ページにあるとおり、生まれ年によって加算額が低減していき、昭和41年4月2日以降の方はなくなる経過的な制度です。
14ページは、遺族年金や加給年金あるいは様々な加算について、対象者や給付規模などをまとめた資料です。
駆け足になりましたが資料の説明は以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
○菊池部会長 どうもありがとうございました。
それでは、ご説明いただきました議題1の遺族年金制度及び議題2の加給年金制度につきまして、委員の皆様から御意見等をいただきたいと思います。
いつもどおり、まず、会場からお願いしたいと思いますが、本日は、権丈委員が途中退席と伺っておりますので、よろしければ、御発言があれば、最初に権丈委員からお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
○権丈委員 後でいいですよ、途中退席と言っても、4時50分ぐらいの退席だから。
○菊池部会長 よろしいですか、では、通常どおりの進行で進めさせていただきます。
○権丈委員 お願いします。
○菊池部会長 それでは、まず、会場から、私の左手側の皆様、お手を挙げていただけますか、全員ですね。
それでは、まず、たかまつ委員から順番にお願いします。
○たかまつ委員 まず、遺族年金についてからです。
遺族年金は、私は子供の権利の観点で見直すべきではないかと考えています。
それは、自分の親が再婚するかどうかとか、誰の養子縁組になるかどうかというのは、子供たちが自分たちで決められるものではないからです。
ですが、遺族年金のもらえる権利がなくなって、それにより進学などができなくなる可能性があるというのは、私はおかしいと考えています。
子供が親や周囲の大人の意向で権利を失うということがないといいのではないかなと思っております。
もう一つ、再婚すると遺族年金が停止するという制度は、遺族の方にとって再婚を阻害する要因になっているのではないかなと考えています。子供まで、先ほどと同様もらえなくなるというのは、少なくともおかしいと考えています。多様な生き方に対して、制度が阻害していると思うので、見直しが必要だと思っています。
加給年金についても。
○菊池部会長 まとめてお願いします。
○たかまつ委員 加給年金は、私は時代に合っていない制度だと思っています。そもそも制度設計がされたときは、専業主婦で働けないことを想定されてできた制度だとは思うのですけれども、やはり今の時代の観点から見ると、不公平な制度ではないかなと思います。
それは、年の差の夫婦ほど支給期間が長かったりとか、独身者の人というのは、そもそも出ない制度なので、不公平ではないかと考えています。
また、支給要件についても、年下のパートナーの方の収入が850万以下というのは、金額が高過ぎて、社会の実態に合っていないのではないかと思います。
女性が社会進出して、独身者の人も増える中で、年下パートナーがいるということだけで、年額40万円ぐらい出るというのは、時代に合っていないと思います。
ただし、現在利用されている方というのは、既に加給年金を想定して生活されていらっしゃる方もいらっしゃると思うので、制度移行の議論というのは、慎重に行われるべきではないかなと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、島村委員、お願いします。
○島村委員 よろしくお願いいたします。
私からは、遺族年金について発言させていただきたいと思います。
遺族年金に関しては、厚労科研のほうで詳細に分析いただいているとおり、幾つかの趣旨が考えられるかと思います。
遺族の生活変化に対する一時的な支援なのか、中長期的な所得保障なのかという整理かと思いますけれども、どれに着目するかというところを明確にして、共通理解をしたほうがよいのではないかと思っております。
私個人は、基本的には、死亡後の生活の変化に対する一時的な支援にしていいのではないかと思っているわけですけれども、そうすると、850万円の基準だとかは、大金持ちの人だとしても、配偶者が亡くなることで生活は一変する可能性がありますし、そこをカバーするものであってもよいのではないかと思っております。
他方で、一時的なものを補填ということなので、有期というのもセットでよいのではないかと思っています。
ただ、そうすると、女性の就労問題、高齢だと特に正社員にはつきづらく、パートでも賃金が低いという問題があるかと思います。
これを遺族年金で見るべきなのか、労働政策市場のほうで見るべきなのかなというような気もしておりまして、それでも、ここまでずっと遺族年金で見てきたということも踏まえると、ドラスティックな改正というのも少し難しいのかなと思っております。十分な経過措置規定ということは、不可欠だと思っています。
この間の新司法試験でも、経過措置を含めて、この遺族年金関連の問題も出ていたようですので、そこでの趣旨とかも参考にしながら考えていきたいと思っております。
それと、たかまつ委員からも御発言がありましたか、遺族基礎年金にある子供に対する支給停止の要件については、そもそもこの規定が入った趣旨が何なのかというのを、質問をさせていただきたく思います。
再婚することによって、妻の失権というのは分かるのですけれども、どうしてそのときに子供も支給停止をされてしまうのかというところで、死別ではなくて離婚の場合ですと、母親が再婚したとしても父親の養育費は続くという話もありますし、そこら辺との整合性から考えても、遺族基礎年金の支給は続いてもよいのではないかと考えております。
長くなって申し訳ありません。以上になります。
○菊池部会長 今の点、事務局で立法趣旨を把握されているかという点は、いかがですか。
○年金課長 遺族基礎年金には、生計同一父母の支給停止規定があって、一方で遺族厚生年金はないという点については、制度的な趣旨の違いというよりは、もともとの立てつけや制度改正の経緯による影響が大きいと見ております。
遺族基礎年金の前身は旧国年法ですが、そこに遺児年金というのがありまして、その遺児年金では、生計同一の父母がいる場合はそもそも受給権が発生しないという規定がありました。
そうした経緯がある中で、旧法が遺族基礎年金に引き継がれて、こういう規定があるのだと思っておりまして、もう一度精査する必要がありますが、経緯によるものなのか、それとも制度の趣旨で何か違いがあるのか、考えていきたいと思います。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。
ちなみに司法試験は、もう一問は社会福祉法で、2問とも社会保障法分野という、社会保障がいかに重要かということですね。
すみません、関係なくて、同業者の話でした。失礼しました。
是枝委員、どうぞ。
○是枝委員 お話をさせていただきます。
まず、遺族年金についてですが、大きな方向性としては、島村委員と考えが同じでございます。遺族厚生年金については、やはり配偶者の死亡後の激変緩和と、あと子供が未成年の間の給付という形に整理するとよいかと思います。
また、たかまつ委員から子供の権利という視点からの御指摘がありましたが、遺族基礎年金については、特に18歳未満の子供がいる間の給付ということですので、受給権を妻よりも、むしろ子のほうを優先させて、子に第一に受給権を発生して、妻や夫がいる場合は、その親権者として子供の遺族基礎年金を正しく管理していく形にしたほうがよいのではないかと思っております。
このように整理しますと、53ページに記載されているA、B、C、Dの場合のいずれでも、受給権が維持されるものと考えております。
遺族年金の男女差についてもコメントをさせていただきます。本日の資料の61ページにありますが、諸外国において、遺族給付の支給要件における男女差は、受給権が認められない男性遺族のみならず、女性の保険料拠出者への差別的な取扱いであるという理解のもと、男女平等の理念に重きが置かれ、就労環境における男女差が残存する中で、遺族給付における男女差の解消が実現したとしており、こちらを重視する必要があるかと思います。
日本は、ジェンダーギャップ指数に表れていますように、経済面での男女不平等が大きい国です。しかし、この61ページに書かれている年、つまり諸外国において就労環境の男女差がある程度残りながらも、男女平等に向けて、かじを切った年ほどの格差が、なお残っているかという観点で、日本が遺族年金の男女差を解消できる段階にあるのかということを評価するとよいと思います。
つまり、1983年当時のアメリカ、1985年当時のドイツ、1999年当時のイギリスなどと比べても、なお、日本の今の男女の経済格差が大きいかということを評価すべきかと思います。
63ページに掲載されている女性の労働参加率で比較しますと、2020年の日本は、現在のアメリカよりも高く、イギリスやドイツよりは、現時点ではまだ低いものの、2010年頃のドイツやイギリスの水準を上回っている状況にあります。
63ページに掲載されている男女間の賃金格差については、日本は2019年時点でも23.5%残っており、諸外国と比べると20年ほどの遅れがあります。
しかし、40年も遅れているわけではなく、63ページの表では2000年までしかさかのぼっておりませんが、これをさらにさかのぼると、1983年のアメリカは34.3%、ドイツは東西統一のため92年までしかさかのぼれませんが、92年時点で27.1%、1999年のイギリスは26.1%ありました。
総じて日本の労働市場は、現時点で比べると男女の格差が大きく残っております。しかし、諸外国において遺族年金の男女差を解消したときよりも、もう既に男女間の格差が小さい状況になっております。
したがって、私は、今の日本は既に遺族年金の男女差を解消できる段階にあると考えております。
最後に、加給年金に少し述べますが、遺族障害というのは別に考える必要があるものの、老齢厚生年金の加給年金は、将来に向かって廃止すべきと考えております。
配偶者の加算については、60代前半の女性の労働力率も6割を超えていて、50代以下では75%を超えていることを踏まえて、夫が65歳に達しているとしても、65歳未満の妻を働けないものとみなして、加給年金を支給する必要性は薄れているように思います。
この加算につきましても、ライフステージのうち、比較的遅い時期、47歳以上になってから子供を持った世帯に対して、特別な支援を行うという形になっておりますが、ライフサイクルのうち、お金を支払う時期が異なるというだけで、生涯賃金が同じで支払う保険料が同じであれば、給付も原則として同じという形を崩すべきではないものと考えております。
高齢になってから子供を持った世帯で、もし、十分な貯蓄がないとするならば、やはり65歳を超えても可能な限りなるべく長く就労するべきであり、老齢年金を繰下げ支給し、働けなくなった際の保障を手厚くすることが重要かと思いますが、今の制度だと、かえってそれを阻害する形になっているかと思います。
もし、就労が困難なのだとしても、それは子供のいる低所得世帯の1つの類型という形になりますので、拠出制の年金の中で救うべき課題ではなく、子供のいる低所得世帯全般に対する給付の在り方の中で考えるべきではないかと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、小林委員、お願いします。
○小林委員 御説明、ありがとうございました。
まずは、本部会において、客観的事実に基づいた議論を行いたいと思い、たびたび、データの御提供を事務局にお願いしておりますけれども、今回の配付資料として、参考データをかなり掲載していただきましたことを、感謝申し上げたいと思います。
配付資料のデータに関して、本日、1点だけ、事務局に要望をさせていただきます。
かねて申し上げているとおり、中小企業は人手不足に苦慮しており、働く意欲を持つ女性には、ぜひ働いていただきたいと考えております。
その意味で、資料1の33ページから35ページに掲載されている就業状況のデータ部分を、高い関心を持って、拝見させていただきました。
このうち、33ページを御覧になっていただくと、60歳未満の遺族年金受給者は、約8割が就業しているのですけれども、雇用形態は常勤のパートが多く、年間の収入も、おおよそ6割程度が200万円未満とのことであります。
このような状況にある方々が、人材を必要としている企業において、正社員として働くならば、生活の安定確保と人材獲得の両方の実現が可能になるのではないかと思っております。
もし、働けるのに働かない背景に、遺族年金の受給要件、例えば、生計維持要件の存在があるならば、就業を後押しする方向で、制度の見直しの議論を進めていただくのが良いと考えております。
そのためには、もう少し詳しいデータをお願いできればありがたいと思っております。具体的には、34ページに「働いていない」理由の構成割合が掲載されているのですが、この中で、「働く必要がない(遺族年金)」及び「その他」と答えた方を対象として、もう少し詳細に、働かない理由を調べていただくことは可能でしょうか。この辺のデータの絡みになりますけれども、事務局に御回答をいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 ありがとうございます。
今のおまとめにつきましては、いかがでしょうか。
○数理課長 数理課長です。
このデータは、書いてあるように、遺族年金受給者実態調査、令和3年に実施しましたけれども、その調査結果からでありますが、その調査結果の調査の選択項目が、ここに載っている項目になっておりまして、この調査では、これ以上のデータを取ることはできないことになっております。ほかに何かあるかどうか、引き続き探してみたいと思います。
○小林委員 やはり、働いていない、働く必要がないという感覚のところが、どういった状況にあるかというのを、もう少し詳細にお願いしたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
2点、コメントをさせていただきます。
既に御指摘がありましたけれども、遺族年金や加給年金というのは、繰下げ受給とか、就労意欲に影響することがないように設計していただきたいと考えております。
これに関連しまして、社労士さんのサイトなどを拝見していますと、例えば、注意すべき点として、配偶者の死亡により、遺族厚生年金の受給者になった場合で、本人が請求手続を行わなかったとしても、本人の老齢厚生年金の繰下げの受給ができないという指摘がなされているようでございます。これは、注意すべき点のままでよいのかどうかということがあるかと思います。
また、加給年金について申し上げますと、これは、実は私自身の経験からということなのですけれども、加給年金は、やはり繰下げ受給の判断を相当鈍らせるということを、実感をさせていただきました。
子や障害の場合に配慮しつつ、廃止の方向でよいのではないかと考えております。これが1点目です。
2点目は、この資料の中にも書いてありましたけれども、現在の民法で認められていない同性パートナーにつきまして、年金制度上、配偶者として扱うことも検討課題ではないかということです。
性自認の問題というのは、昨今、急速に理解が進んでおりまして、裁判所も一部について、違憲とか違憲状態との判断を示しておりまして、法的枠組みを整えるように促していると認識しております。
公的年金は、民法規範を超えて遺族給付の資格を判断している面もあるという指摘もありますので、急速に変化している社会の意識を踏まえまして、今回の財政検証の中で、少なくとも議論の痕跡は残しておいたほうがよろしいのではないかと、私は感じました。
以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、百瀬委員、お願いできますでしょうか。
○百瀬委員 3点あります。
1点目は、遺族厚生年金の男女差についてです。遺族厚生年金の男女差については、次回の改正で解消すべきだと思っております。
是枝委員も同じことをおっしゃっていましたが、欧米諸国において、遺族年金の男女差が解消されたのは、1980年代、90年代ですので、これから遺族年金の男女差を解消しようという日本から見ると、比較すべきは、今の欧米の労働市場の状況ではなくて、80年代、90年代の欧米の労働市場の状況であろうと、私も思います。
少なくとも、現在の日本における労働市場の男女間格差は、80年代、90年代の欧米諸国の状況とほぼ変わらないところまでは縮小しています。
欧米諸国も、現在の日本と同程度の男女間格差が残っている段階で、将来の女性の労働力率や賃金水準の高まりを見越して、遺族年金の男女差を解消しております。
確かに、日本では、女性の非正規雇用の多さなど、労働力率や賃金格差だけでは測れない男女差があることには注意が必要ですが、今後も男女間格差は縮小していくということが見込まれていますので、日本も遺族年金の男女差を解消する時期に来たと考えております。
さらに、これも是枝委員がおっしゃっていましたが、男女平等という理念から見ても、男女差の解消が求められます。
特に男女差がある場合、女性労働者の拠出した保険料というのが、男性労働者の拠出した保険料に比べて、遺族年金に結びつきにくくなります。女性の拠出した保険料が、不利益に取り扱われていると捉えることもできます。
厚生年金に加入する女性が増えていますので、こうした不利益の解消という観点からも、次の改正で男女差の解消が必要になっています。
2点目は寡婦年金についてです。今日の資料では、説明がほとんどなかったのですが、少し問題提起をしたいと思います。
寡婦年金は、夫の保険料の掛け捨て防止と、60代前半の寡婦に対する所得保障という2つの目的を持っていると指摘されています。このうち、制度の創設過程において重視されたのは、掛け捨て防止でした。
ただし、国民年金が1961年にスタートして、それ以降、働き方や世帯構成が多様化する中で、同じ第1号被保険者において、妻がいる男性の納付した保険料だけを寡婦年金という形で掛け捨て防止の対象にすることは、正当化が難しくなっています。
そもそも、公的年金保険である国民年金において、掛け捨て防止の仕組みが必要なのかというと、必要ないのではないかという意見もあり得るとは思いますが、仮に掛け捨て防止が必要だとすれば、死亡一時金という仕組みがございます。男女差解消という観点から見ても、死亡一時金で一元的に対応すべきなのではないかと思います。
もう一点、寡婦年金というのは、60歳から65歳の間が支給期間になっています。つまり、60歳までという被保険者期間の上限と、65歳という年金の支給開始年齢の間をつなぐ年金になっています。
ところが、今回の年金部会では、次回の年金改正において、国民年金の被保険者期間を65歳まで延長するという案が議論の対象になっています。
もし、この被保険者期間を65歳まで延長することになった場合、60代前半も国民年金の被保険者期間になるので、寡婦年金の位置づけというのが非常に不明瞭になります。
また、次回の改正で遺族厚生年金の男女差を解消するのであれば、国民年金における遺族年金の男女差は、遺族基礎年金では解消されていますが、寡婦年金では残っていますので、この男女差もあわせて解消する必要があると思います。
以上で述べた複数の理由から、寡婦年金については、次回の改正前のタイミングで、廃止も含めて見直しの議論をする必要があると思っております。。
3点目として、これは、ほかの委員の方もおっしゃっていましたが、経過措置の重要性を強調しておきたいと思います。
遺族年金や加給年金については、現行制度を前提として、生活設計を立てている方が多くいます。
また、女性の働き方が変化してきましたが、現在の20代の方と現在の40代、50代の方では、状況が大きく異なります。ですので、これらの仕組みの見直しを行う場合は、こうしたことにも配慮して、十分な経過措置を設けていただきたいと思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、原委員、お願いします。
○原委員 原でございます。ご説明いただき、ありがとうございました。
私も遺族年金と加給年金について、コメントをさせていただきます。
遺族年金については、子のいない現役期の遺族配偶者に対する遺族厚生年金を有期化していくということが、これまでにも、いろいろな委員の方から出ていますけれども、その可能性は探っていくべきだろうと思っております。
ただ、一方で、ライフスタイルや働き方の違いで、個別の老齢厚生年金が低額となってしまうケースも考えられますので、現役期に死別した遺族配偶者への高齢期の保障をどうするのかという検討も、別途必要ではないかと思います。
老齢だけでという御意見もありましたけれども、例えば、65歳以降は、老齢厚生年金と、それまで支給停止等をしていた遺族厚生年金との差額支給を行うということも考えられるかと思われます。
もう一つは、男女差の解消ということについては、いろいろな場面であると思いますが、現在の遺族厚生年金について、妻は実質30歳から、夫は55歳から、支給は、例外はありますけれども、60歳からという無期給付があります。
これに対しては、例えば、中高齢期の一定年齢以上については、無期給付を残すか、残さないか、ということも検討事項として考えられるかと思います。
その際に、段階的に時間をかけて、男女差を解消していくことも、1つあるのではないのかと思います。例えば、男女間の現在の賃金差などを参考に、今日出していただいた47ページなどは、現在のデータなので、この先10年後、20年後、そういった将来の姿を想定して、何歳が妥当かとか、その場合は、どういう方法でやっていくのかなどの十分な議論、検討は必要かと思います。
そういった意味では、その無期給付の部分を、今、ばらばらですけれども、それをどうするか、中高齢期の一定年齢以上については、無期給付を残すかどうかということも、1つポイントになるかと思います。
あと、加給年金については、これまで私から割と発言させていただいたので、簡単にいたしますが、やはり公的年金制度というのは、賦課方式ですので、保険料収入がメインというのは、意義とか役割ということで、ほぼほぼ広く知れ渡っているところかと思います。その中で、公的年金への信頼が将来的にもずっと続いていかなければならないですし、そして特に今の若い人たちにも理解していただかないと、保険料を払っていただくということもありますし、信頼してもらえる制度をずっと続けていかなければなりません。
そういった中で、若い人たちが理解しにくいような制度というのは、やはり、きちんと整理しないといけないのではないかと思います。そして、若い人達が理解しにくいような制度が、10年後、20年後もそのまま残っているようですと、大げさに言えば、公的年金の持続性など、そういったところにも、影響を与えるかもしれないのではないかと心配しております。やはり信頼を得て、保険料を払っていただくということを第一に考えたときに、気になる制度はいくつかあります。その1つが加給年金という制度です。14ページの図が非常に興味深い資料を出していただいたのですけれども、この中で額が大きいものというのは、生年月日によって、振替加算は下にありますけれども、自然と対象者がいなくなるといいますか、対象者が決まっているので、時間が経てば支給されなくなるものになります。
それらの次に額が大きいのが、老齢の加給年金ということが分かります。これは、有期年金ですが、生年月日等で区切られているわけではないので、将来的に自然となくなるわけではないのです。
共働きが増えると減るだろうというかもしれませんが、ただ、実は夫婦ともに20年以上の共働き世帯でも、生計維持要件に該当すれば、年の差があれば、どちらかが受給するまで、夫婦で先に65歳になって受給権が発生するほうに、要は、配偶者が65歳になって年金を受給するまでは加算される制度です。ですので、共働きが増えると自然に減るというものではないということで、やはり夫婦の年齢差、その長さというところで決まるという部分があります。
あと、是枝委員が先ほどおっしゃっていただいたので、次の点は簡単に済ませますが、65歳になったときに、必ずしも年下の配偶者が扶養になるのかといったところは、同感です。
共働き世帯が、今、多くなって、むしろ現役で働いている配偶者の方も増えていますし、適用拡大が進んで、今後ますます増えていくものと思います。
ですので、20年以上勤めてきた人全員に支給されるというものではなくて、夫婦の形、もちろん単身ではなくて、夫婦世帯で年齢差でというようなものであり、さらに年齢差が大きいほど、トータルで支給額が大きくなって、該当しない夫婦との差がさらについてしまうと思われますので、今の時代の考え方、これからの時代の考え方に合っているのかというところがございます。
あと、2ページのところの下にもありましたけれども、金額が大きいというのも、実はありまして、特別加算は、今のほとんどの方はつきますので、39万7500円でしたか、2ページの下の表にもありますけれども、配偶者の加給年金は約40万円という金額になります。大体令和3年度の厚生年金保険国民年金事業の概況の数字を参考に見てみたときに、大体25万円ぐらいで働いても、20年間で、老齢厚生年金の額が概算で、本当に概算ですが33万円位なので、39万円に届かないということがございます。
こういった意味からも、配偶者加給年金額というのは額が意外に大きいということがあります。以前は特に、20年働かないで辞めてしまうとか、そういう方もおりました。
もちろん経過措置をきちんと設けることは必要だと思いますが、今の時代や将来の時代に合っているのかどうか、今の若い方を含めた人たちを念頭にして、制度の在り方を考えていくべきではないかと思います。
また、この加給年金には、子が対象のものがあります。まず、やはり14ページの表を見ると、金額が少ないのが1つ挙げられます。
これは、65歳時に高校生以下の子がいるという人に支給されるわけですが、それよりも前に子育てが終了して、独立したという世帯もありますが、そういう人たちには加算されないわけです。そういう人たちは、若いとき経済的に大変なときに、苦労して育てたという人もいるわけで、結局やはり年齢によるというところに戻ってしまうのかなと思います。
そういった意味では、基礎年金でなくて、厚生年金にあるというのも、また、疑問に思っているところなのですけれども、これは、結局のところは、配偶者の場合と同じなのではないかと思います。
あと、障害等級の1級、2級の方への配偶者加給年金については、もちろん現役期でも支給されるものですので、老齢の65歳というところとは、少し性格が異なると思われます。
ですので、これは、どちらかというと、1級、2級の障害等級の方への加算というか、そういった意味でも捉えられますし、そういったことで、ここは別なのかなと思っています。ぜひ第2ラウンドの障害年金があれば、そこは、また、少し性格が違うものなので、別途検討が必要で、考えたほうがよろしいのではないかと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
会場の皆様は、一通り御発言いただきましたので、ここから、オンライン参加の委員に御発言をいただければと思います。挙手ボタンでお示しいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず、佐保委員からお願いします。
○佐保委員 ありがとうございます。
オンラインで失礼いたします。
私からは、簡潔に4点、意見を述べたいと思います。
1点目です。障害年金制度の議論の際にも述べましたが、マクロ経済スライドによる将来的な基礎年金の給付水準の低下は、遺族である配偶者や子供にとって極めて影響が大きいと考えます。
繰り返しになりますが、国庫負担割合引き上げなど、幅広い選択肢のもとで、基礎年金の財政基盤を強化し、基礎年金の給付水準を底上げすべきと考えます。
2点目は、遺族厚生年金についてです。
遺族厚生年金の男女差については、社会の変化に対応した公平な制度とは言い難く、早期に解消すべきであり、まずは男性のみに設けられた年齢制限を撤廃することを検討すべきと考えます。
その上で、支給対象や金額も含め、遺族年金の在り方そのものについて、現在の家族類型や働き方、生活スタイルなどに照らし、幅広い視点での議論が必要と考えます。
その際には、現在遺族年金を受給しながら生活している人たちの家計収入に占める年金収入の割合などを可能な限り調査し、実態を踏まえた議論を行うべきと考えます。
3点目は、生計維持条件についてです。
850万円は権利発生要件であるため、要件を満たさなければ、遺族年金そのものが支給対象外となり、壁の1つとなっていると考えられます。
昨今の物価上昇や賃金上昇などを踏まえ、850万円という水準の妥当性を議論するとともに、権利発生要件として一律的に区切るのではなく、一定水準以上の収入から段階的に年金額を調整する仕組みとすることを検討すべきと考えます。
最後は、同性パートナーへの遺族年金についてです。
残念ながら日本において、同性婚は法律上認められておりませんが、これは、公的年金制度、ひいては社会保険制度だけにとどまらない大きなテーマとして検討すべきであると考えます。
私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、嵩委員、お願いします。
○嵩委員 嵩でございます。御説明どうもありがとうございました。
遺族年金と加給年金の現状について、理解できました。
既に多くの委員の方の意見と重なってしまうのですけれども、主に遺族厚生年金について、意見を述べさせていただきます。
まず、年金に限らず社会保障については、現在のニーズをそのまま捉えて保障するという考え方と、憲法などの理念に沿って、あるべき社会を見据えて、それに向けて制度設計をするという考え方と、2つあるかと思いますけれども、年金制度については、現状ニーズをベースに捉えた制度設計だけですと、社会が徐々に変化していく中で、制度が硬直的になりがちになってしまうと思われますので、あるべき社会を見据えた制度設計という視点も必要だと思っております。
とりわけ遺族年金については、加給年金もそうだと思いますけれども、そうした視点は重要だと思いますが、当然、現在ニーズを抱えている方々に予期せぬ変更を強いることは望ましくないので、十分な経過措置を設ける必要があると思います。
その上で、遺族年金の在り方ですけれども、遺族年金をめぐる議論は多くの場合、その女性の就労の進展との関係で、遺族配偶者にいかに支給するかという形で、議論されていると思います。
ただ、遺族厚生年金については、配偶者のほか、父母や祖父母も受給権者たる遺族の範囲に含まれておりまして、配偶者とその他の遺族とで同じ制度設計とすべきなのか、あるいは異なる制度設計とすべきかという点で、まず、議論が分かれていくように思います。
まず、現行制度を見ますと、配偶者とその他の遺族とでは、優先順位において違いがありますけれども、大まかに見れば、同じ趣旨で遺族厚生年金の対象としていると思います。
現行制度をベースとして考えますと、現在は、原則として生計維持要件と年齢要件で受給権者たる遺族を画していますことから、これまで被保険者により生計維持されており、かつ自活能力が低い者に、従前の所得の保障ニーズというのを見いだして、受給権者としてくくり出すという仕組みかと思います。
もっとも、既に御指摘がありましたように、現行制度では、妻については、年齢要件を課しておらず、年齢にかかわらず、自活能力が低い者と、制度は一律に扱っております。
この点は、性別に基づく明確な区別で憲法上の問題があり得ますし、また、現状では、女性について所得保障ニーズが男性に比べて相対的に高いとしましても、女性の就労が進展しているという社会背景を踏まえまして、妻についても将来的には、十分な経過措置をとった上で、年齢要件を課すという方向で、夫にそろえていくことが、現在の制度をベースにした場合には、考えられます。
もっとも、被保険者の死亡は、自活能力のある者にも一定の経済的影響を与えると考えられますので、特に配偶者については、現役時であるとしても、所得要件や年齢要件を課さずに、一定の有期給付を行うことが望ましいと思われます。
なお、配偶者とその他の遺族との違いですけれども、遺族の優先順位において、配偶者は優先順位が高く設定されており、他の遺族と比べて影響を受けやすいカテゴリーと、制度が捉えているように思われますので、配偶者について、とりわけ現役時代も一定の給付を行う必要性はあるように思われます。
また、子供がいる場合には、正規雇用への転職が難しいなど、経済的影響が長引くことが考えられますので、有期給付の延長などというのも考えられます。
他方で、こういった現行制度をベースに、今、考えました制度設計の場合、被保険者の死亡が、遺族にとって現役時に生じますと、老後に遺族年金を受給するということができなくなります。
これは、老齢年金が低いという問題や、あるいは女性をめぐる雇用政策の問題として整理することも可能かと思います。
他方で、年金制度において、こういった問題に対応することを考えますと、特に配偶者についてですけれども、離婚時年金分割の考えと近接するのですが、保険料を共同で拠出しているという擬制に基づき、配偶者の死後で、かつ、遺族配偶者の老後に保険料負担分を回収するという発想に、遺族年金を転換して支給するという選択肢も考えられます。
そうしますと、論理的には生計維持要件は、その場合は不要となると思いますけれども、他方で、こうした仕組みの場合には、ほかの遺族類型については、採用し難いかなと思いますので、配偶者と、他の遺族との遺族年金の制度を、この場合には区別していくということもあり得るかと思っております。
雑駁な意見で恐縮ですけれども、全体的には、今までの委員の先生方の御意見と賛同するところが多く、特に配偶者とその他の遺族類型等の区別をどうするのかというところを、意見として述べさせていただいたところになります。
以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、井上参考人、お願いいたします。
○井上参考人 井上でございます。御説明ありがとうございました。
過去の議論の整理と、また、今日の各委員からの御発言でも指摘がございますけれども、遺族年金、加給年金それぞれについて、経済社会の構造変化に対応した見直しを、今回、実現する必要があると思います。
特に、女性の就業率の上昇でありますとか、夫婦共働き世帯の増大、また、家族の多様化ということを考えると、やはり男女差の解消が1つの大きなテーマになってくると思います。
また、健康寿命の延伸でありますとか、就労期間の長期化、また、片や労働人口が減少しますので、働く意欲のある方には、なるべく労働市場に参画していただくということが必要になってきます。その中で、やはり年齢についてどう考えていくのかというところが、主なポイントで、こういう社会環境の変化にできるだけ即した仕組みにアップデートして、中立で公正公平な制度設計をしていただきたいと思います。
こうした各論の制度の前に、基本的な考え方の整理というのが必要ではないか。今後、例えば第3号被保険者制度の在り方を考える上でも非常に重要になってくると思います。
制度設計に当たりましては、ほかの委員からも御指摘がありましたけれども、現行の制度で生活をしている方々への配慮あるいは時間的な手当を支援していく必要があると思っております。
以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
次に、順番としては、権丈委員から先にお手が挙がっておりましたので、お願いできればと思います。
○権丈委員 今日の議題は、昔は仕方なかったとしても、今の若い人たちから見ると、もう全く笑いの出るような話で、改革は当たり前なのですけれども、改革の最大の障害は、世の中の関心の薄さゆえに、制度を動かしてくれる政治家がいないところにあると思っています。
その辺りは、どれだけ効果があるか分からないけれども、この年金部会で繰り返し大いに議論して盛り上げていくと同時に、年金局は、雇均局とか男女共同参画局にも、あまりおかしな方向を向いていないで、こっちのほうを向いてくれと声をかけて、協力を求めていくことが大事ではないかと思っています。
将来的には、遺族年金の男女平等化、そして有期化、子供のところははじめから有期ですが、配偶者の有期化。
そして、有期なのだから、今ある支給停止、失権規定という実にうっとうしいルールは全部なくす。
加えて、繰り下げ受給に物すごい悪影響を与えている加給年金というのは、女性の特老厚の年齢の引上げとともに、この制度の矛盾が、これから加速していくわけですね。加給年金の改革は、時間との戦いでもあります。問題は、どのように改革していくかに絞られていると思っている。
昨年末の全世代型社会保障構築会議の報告書のキーワードの1つに、時間軸というのがあります。この言葉は、第2回の会議での、「政策を考える際には、コーホートでビヘイビアが全く変わるのだから、時間軸を持って考える必要がある。例えば、遺族年金は、現在、受給している人たちに影響を与えることなく、将来のコーホートに最適な制度に向けて、20年ぐらいかければ、移行を完成することができる」という発言の中で出てきます。
要するに、時間軸をもって20年かければ、不利益変更という批判をかわしながら、20年後のコーホートに最適な制度に移行することができる事例として、遺族年金の話を私はしているわけです。
遺族年金について言えば、共働きというのは一種の所得保障のための保険制度になっているわけで、共働きが増えていくと民間の生命保険需要が減っていくし、遺族年金への需要も小さくなります。
共働き世帯にとって遺族年金は終身である必要はなく、子供は別ですけれども、ほかにもある様々な理由から、今や配偶者の遺族年金は有期であることが重要になってきている。
有期であれば、家族形成の判断にわずらわしい影響を与えている今のルールをなくして、配偶者にも子供にも、家族形成に中立である制度に変えることは簡単にできるし、この段階で有期になったところで所得制限もなくしていく。社会保険の中で、あそこに妙な所得制限が入っているんですね。
もっとも、この国は労働市場での男女差が今もあるから、これが遺族年金改革の足を引っ張っている側面はある。だから私が長く言っていることは、20年後の改革の遺族年金の完成形を年金サイドから労働市場に先に示す。そして、労働市場の改革を促す。
この方法は、2000年改革の支給開始年齢の引上げのときにやったわけですけれども、年金が労働市場の改革を促していく方法を取っていくこと、要するに20年後の完成形を先に示すこと自体が重要になる。
幸い前回の年金改革では、与野党共同提出の修正案が共産党を除いた与野党賛成で成立しているので、年金周りの政治は大分静かに鎮まってきているということで、もしかすると、年金局が持っているエネルギーを、この問題に割くことができるかもしれない。ただ、政治力学的には、改革の牽引者がいないという難易度の高い領域の話なので難しい。だけれども、意味のある仕事なので、時間軸を持ったコーホート戦略で労働市場の改革を促しながら、今の若い人たちから見れば、全くばかばかしい制度の改革を成功させることを、年金局の人たちに強く期待していますということで、終えたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、駒村委員、お願いします。
○駒村委員 すみません、遅れての参加で恐縮でございます。
資料の説明を見ますと、かつては、それなりの合理的な根拠があったようですけれども、現在、これら加給年金、遺族年金の仕組みには、かなり合理的な根拠があり、これを漫然と守るのは、既得権に寄り添ってしまうような感じがしました。
今までも多くの委員がおっしゃっていたように、どのような社会を展望するのかということを考えた上で、段階的に改革をしていく必要があると思います。加給年金の存在意義、それから遺族年金の有期あるいは先ほど嵩先生がおっしゃったような遺族年金の考え方の変更といったことはあるかと思います。
現状の制度を漫然と守れば、この制度自身が、女性の社会進出の障害になっていくということになると思います。
次に、今日は資料で触れていませんでしたけれども、遺族年金に対する課税と社会保険の扱いといったことも、この際、議論をしておく必要あるのではないかと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかに、オンラインの皆様は、よろしいでしょうか。
それでは、会場から玉木部会長代理からお願いしてよろしいですか。
○玉木部会長代理 今日の皆様の御発言を聞いてしみじみ思うのは、今日話題の2つの制度が、昭和の家族の在り方、昭和の女性の就労、そういうものに、あまりに合い過ぎている制度だなということでございます。
その後、平成を経て、令和に入って、昭和との距離が広がるにつれて、この制度の分かりにくさも増しているなと思います。
こういうものを国民にアピールする形で、国民の信任を高める形で変えていこうとするとした場合、いろいろな改革のピースがあって、それぞれに理由があるし、それぞれ説明の仕方があると思うのですけれども、やはり何か横串を刺すような概念を言葉として出したほうがいいのかなとも思います。
恐らく、そういう言葉の1つの候補は、中立性という概念ではないかと思うのです。中立性というのは、要するに社会保障あるいは年金のことは忘れて、就労の判断をするとかいうことと思うのですけれども、そういうことができるような制度、年金制度について、あまり細かく考えなくてもいいような、あまり考えないで自分の幸福を追求していくようなことが可能になるような制度がよろしいのだろうと思います。
特に、こういうことを強く感じる理由は、若い人に対して年金制度の広報を進めていくときに、やはり広報を受けて勉強したけれども、分かりにくいところがあったとなると、若い方々、20代、30代、40代の、まだ自分の老後について、あまり現実感のない方々の公的年金制度への信頼感、信認といったものについて、マイナスの影響があるのだろうと思います。これは昭和に合い過ぎているということの大きな弊害の具体的な現れではないかなと思います。
したがって、この部会におきましても、国民にアピールしやすい大きな概念をつくりながら、若い方々への広報の支援になるような打ち出し方をしていくことが、必要なのではないかと思ったところでございます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
一通り御意見をいただいたところですが、さらに何か追加で御発言のおありの方はいらっしゃいますでしょうか。会場は、いかがですか。よろしいですか。
百瀬委員。
○百瀬委員 もし時間があるのであれば、少し発言をさせてください。
今回、事務局の資料の中でも御紹介をいただいた厚生労働科研費の研究で取りまとめ役をしておりました。
先ほど日本の遺族厚生年金では、父、母、祖父母まで、場合によっては支給対象となるという説明がございましたが、海外のいくつかの国の制度を見る限り、亡くなった方の父、母や祖父母まで遺族年金の対象にしている国というのは、ほとんどありません。
なぜ日本で父や母も対象にしていたのかというと、その一つの理由として、制度ができたときの状況が考えられます。つまり、高齢者の老齢年金が十分に整備されていない時代には、息子が亡くなったときに、亡くなった息子の保険料拠出に基づいて、父、母に遺族年金を出す必要があったかもしれません。しかし、年金制度ができてから、もう何十年も経過し、年金制度が成熟化してきた中で、父、母、祖父母にまで遺族厚生年金を支給する制度が必要なのかは、次回の改正にあわせて、議論をしても良いと思います。
もう一つが、これは、海外の制度との比較ではないのですが、子の加算についてです。遺族基礎年金については、子の加算がつきます。その金額は、第一子、第二子については20万円以上ですが、第三子になると、一気にその3分の1に減少します。
これについて、歴史的な経緯を見ていくと、もともと子の加算や加給年金の金額というのは、国家公務員の扶養手当の金額を参考にしていました。この扶養手当というのが、これも歴史的な経緯で、第三子以降、手当額が極端に減らされていました。
ところが、今、国家公務員の扶養手当というのは見直しがされて、第三子以降、極端に金額を下げるという措置はとられていません。
ですので、かつて参照していた制度が変わっているのですが、年金制度はそのまま第三子以降の子の加算額が、非常に少ないという状態が続いています。第三子以降に極端に加算額を下げるというのが、現在においても合理的と言えるのか、今後、議論をする必要があると思います。
○菊池部会長 ありがとうございます。
障害年金のみならず、遺族年金についても、鋭い御知見を披露していただきまして、新しい論点を御提示いただけたと思いますので、ありがとうございます。
ほかには、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
私から1点、これは感想めいたことですが、私も30年前に博士論文を提出した際、アメリカ法の年金の研究を中心にやりましたが、そこで、今日の百瀬委員、それから是枝委員から御指摘がございましたように、私はアメリカだけですけれども、嵩委員は、アメリカだけではなくて、イギリス、フランスもやっておられますけれども、まさに、女性労働者差別ということで、アメリカ合衆国憲法の修正14条違反という違憲判決が出て、83年の法改正につながったと。だから、恐らく80年代でもできたのですね。
それに比べますと、日本は、女性差別という発想は、ほぼないまま今日に至っているという、そこの視点が日本にはないのかなというお話を、先ほど是枝委員、百瀬委員のお話を伺っていて、改めて感じた次第でありました。
それで、今日は、かなり予定より早く、皆様の御協力もあって終わることができましたが、遺族年金については、平成24年改正で、遺族基礎年金の父子家庭拡大があった後、年金改正自体は、平成27年、令和元年と議論の場がありましたけれども、私も委員を拝命しておりましたが、かなりその際も、委員からの議論はあったように記憶しているのですが、実際には、先ほど御紹介いただいたような議論の整理の段階に収まってしまったという状況がございまして、それに引き換えといいますか、今回はかなり熱い議論、熱いというのは、酷暑の熱いというだけではなくて、分厚いというか、そういった議論が重ねられておりますので、これは事務局と全然相談をしていませんけれども、一定の改革につながるものではないのかなと、そのぐらい非常に充実した御議論をいただいているなという気がしてございます。
今後、また、2巡目以降で議論をしていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、よろしいでしょうか。
それでは、予定しておりました議事は、以上でございますので、今後の予定につきまして、事務局からお願いいたします。
○総務課長 次回の議題や日程につきましては、追って御連絡をいたします。
○菊池部会長 御連絡させていただくということでございます。
会場の皆様、今日はマイクの不具合があって、オンラインの皆様には、お聞きづらかったかと思いますが、大変失礼いたしました。
それでは、本日の審議は、これにて終了いたします。お忙しい中、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。