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第5回社会保障審議会年金部会 議事録
日時
令和5年6月26日(月)16:00~18:00
場所
東京都千代田区内幸町1-3-1幸ビルディング
TKPカンファレンスセンター15階(ホール15D)
TKPカンファレンスセンター15階(ホール15D)
出席者
- 会場出席委員
-
- 菊池部会長
- 玉木部会長代理
- 小野委員
- 駒村委員
- 是枝委員
- 島村委員
- たかまつ委員
- 永井委員
- 原委員
- 平田委員
- 百瀬委員
- 本多参考人(佐保委員代理)
- 福島様(外部有識者)
- オンライン出席委員
-
- 権丈委員
- 武田委員
- 嵩委員
- 堀委員
- 井上参考人(出口委員代理)
- 森参考人(小林委員代理)
議題
- (1)公的年金制度における次世代育成支援の取組について
- (2)障害年金制度について
議事
- 議事内容
- ○総務課長 ただいまより、第5回「社会保障審議会年金部会」を開催いたします。
皆様、お忙しいところ、お集まりいただき、ありがとうございます。
初めに、本日の委員の出欠状況を報告します。
出口委員、小林委員、佐保委員、深尾委員から、御欠席の連絡をいただいております。
また、平田委員、嵩委員が、遅れて参加されると伺っております。
御欠席の出口委員の代理として、日本経済団体連合会の井上様、小林委員の代理として日本商工会議所の森様、佐保委員の代理として日本労働組合総連合会の本多様に御出席いただいております。
井上様、森様、本多様の御出席につきまして、部会の御承認をいただければと思います。
いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○総務課長 ありがとうございます。
また、権丈委員、武田委員、嵩委員、堀委員、代理出席の井上様、森様は、オンラインで参加されています。
出席委員が3分の1を超えていますので、会議は成立しております。
また、本日は、外部有識者として関西大学法学部教授の福島様にオンラインで御参加いただいています。
続いて、資料の確認です。
本日の部会は、ペーパーレスで実施しております。傍聴者の方は、厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。
本日の資料としては、資料1「公的年金制度における次世代育成支援の取組」、資料2「障害年金制度」を事務局で用意しております。また、本日は、障害年金制度について、百瀬委員と福島教授に御説明をお願いすることとし、それぞれ、資料3、資料4を御提供いただいております。このほか、参考資料として、6月13日に閣議決定された「こども未来戦略方針」を御用意しております。
事務局からは、以上でございます。
以降の進行は、菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、こんにちは。どうぞよろしくお願いいたします。
カメラの方は、ここで御退室をお願いいたします。
(冒頭カメラ撮り終了)
○菊池部会長 それでは、早速、議事に入らせていただきます。
本日は、「公的年金制度における次世代育成支援の取組について」、「障害年金制度について」、以上、2つを議題といたします。
本日は、この2つの議題があり、後半の障害年金制度については、今、御紹介がありましたように、お二方のヒアリングをさせていただきますので、後半の時間が足りなくならないよう、御発言につきましてはできるだけ簡潔に御協力いただければ幸いでございます。
まず、議題1について、事務局から説明をお願いいたします。
○年金課長 年金課長でございます。
私からは、資料1について御説明します。
今日は、スケジュールが厳しいため、簡潔な説明を心がけたいと思っております。
資料1を御覧ください。これまで年金制度において行ってきた次世代育成支援の取組について、本日議論をお願いしたい今後の取組について資料をまとめています。
2ページは、国民年金の現在の取組で、第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除を平成31年4月から施行しています。この真ん中の赤い部分ですが、保険料負担が免除され、基礎年金給付は満額つきます。
3ページは、厚生年金における次世代育成支援の取組です。現行制度では3点行っており、真ん中の辺りですが、1つ目は、産前産後及び育児休業期間中の保険料免除。2つ目は、こういった休業が終了した後の標準報酬月額の改定の特例で、保険料負担を軽減しています。3つ目は、その期間における従前の標準報酬月額のみなし措置で年金給付を維持します。こうすることで厚生年金における負担の軽減と給付の維持の両方を、産前産後休業と育児休業期間中に行っています。
4ページは、今御説明した内容のイメージ図で、保険料負担の動きがオレンジ色、給付については灰色の点線になります。
以上のような現行制度の下、本日の検討議題が5ページ以降です。まず、一番上ですが、令和2年改正法で、第1号被保険者の育児期間に係る保険料負担に関する配慮の必要性について規定が置かれています。
その後、6ページになりますが、昨年の全世代型社会保障構築会議の報告書で、第1号被保険者である自営業者、フリーランス・ギグワーカーに対する育児期間中の給付の創設について検討するよう指摘がありました。
さらに子育て戦略会議等で議論があり、7ページ目は、6月13日に「こども未来戦略方針」として政府で閣議決定したものです。この中の抜粋で「自営業・フリーランス等の育児期間中の経済的給付に相当する支援措置として、第1号被保険者の育児期間に係る保険料免除措置を創設する。その際、現行の免除措置を参考としながら、免除期間あるいは給付水準の具体的な制度設計の検討を早急に進め、2026年度までの実施を目指す」とされています。本日は、この「具体的な制度設計の検討を早急に進める」という部分に対応して、この後の論点について議論いただきたいと思っております。
8ページは、これまでの御意見ですので、説明は省略します。
9ページが、今申し上げた論点として大きく3つ挙げています。対象者、対象期間、給付への反映で、それぞれこの後に1枚ずつ出てまいります。
まず10ページでは、「対象者」を論点として挙げています。上に「現状」とあって、一番下の「考え方」のところに、第1号被保険者の多くは、厚生年金のような明確な「休業」が発生せず、仮に休業した場合でも育児休業給付による所得保障を受けられないこと等を踏まえ、休業を要件とすべきかどうかということを挙げています。
続いて、11ページ目は同じく「対象者」についてですが、こちらは、親の範囲として、両親ともに免除を認めるかということです。一番下の「考え方」で、育児休業制度や厚生年金保険における保険料免除制度を踏まえ、両親ともに育児期間の国民年金保険料免除を認めるかどうかということを挙げています。
12ページは「対象期間」です。免除の対象期間をどのように定めるかです。現状の部分では、厚生年金あるいは産前産後の期間における免除の期間を紹介しており、一番下のところで、対象期間についてどのように考えるかとしています。
13ページは「給付への反映」です。国民年金の産前産後の保険料免除制度では基礎年金満額が保障されまた。厚生年金では従前みなし保障の仕組みがある中で、給付の在り方をどう考えるかということです。
以上について、制度設計をする際の主な論点として挙げており、本日御議論いただければと思います。
この後は参考資料が続きます。14ページは、平成28年改正で国民年金の産前産後の保険料免除が導入された際の年金部会の議論の整理です。
続いて、15ページ、16ページは、厚生年金において育児休業あるいは産前産後期間中の保険料免除が入った際の改正経過、導入経緯の紹介になります。
その後、17ページ以降は参考としてデータなどの紹介です。
18ページは、今実際に利用されている方の人数です。左側が、厚生年金の育児休業の保険料免除者数で約47万人にいらっしゃり、平成21年から大きく増えています。右側が、国民年金の産前産後の保険料免除者数で約1万人、この数字は年度末時点にかかっている方ですので、実際にはこの3倍いらっしゃると推計して、約3万人の方が利用されているということです。
続いて19ページは、左側の円グラフが第1号被保険者の就業状況で、自営業主・家族従業者、フルタイム、パート、無職、学生と多種多様な方がいらっしゃることが分かります。
20ページは、妊娠・出産・育児期の両立支援制度の紹介で、様々な制度があるわけですが、共通しているのは、いずれも労働者の方に対する措置ということです。労基法上あるいは育介法上の措置で労働者の方が対象になっており、「労働者」でない第1号被保険者は、この措置の対象外になっています。
続く21ページの育児休業給付も、雇用保険法の対象になっている労働者に出る措置です。
最後、22ページ、23ページは、諸外国の年金制度のうち、部会でも指摘があったフランスとドイツにおいて次世代育成支援に取り組んでいる仕組みの紹介です。細かい点は資料のとおりですが、いずれの国でも共通していることは、老齢年金額の算定における拠出期間の計算の際に、産前産後あるいは育児期間について何らかの考慮をする仕組みを導入しているということです。日本と同様の仕組みが取り入れられているということが言えると思います。1つだけ、フランスで特徴的なことは、22ページの一番下ですが、そういった拠出期間への考慮という形ではなく、3人以上の子を養育した場合に加算される仕組みがあり、これはフランス独自の仕組みと承知しています。
簡単ですが、私の説明は以上です。
○菊池部会長 どうもありがとうございました。
それでは、皆様から、御意見、御質問などがございましたら、お願いいたします。
まず、会場参加の皆様からお願いしたいと思いますが、私の左手、こちら側の皆様で、御意見がおありの方は挙手をお願いできますでしょうか。
お三方ですかね。駒村委員から、お願いできますでしょうか。
○駒村委員 ありがとうございます。
いきなり当たると思っていなくて、油断しておりました。
この免除制度の拡大は、賛成でございます。
ただ、期間や対象者や休業のチェックという点について、財源次第でこの組合せが変わってくるかと思っています。国民年金の拡大と考えれば、独自にやるという考え方に乗れば、あまり厚生年金との整合性を意識しないで、その保険料の中で調達できるように、ある種、設計の自由度が出てくると思うのですけれども、そうではなくて、基礎年金的な性格、共通的な的な部分を持たせて、別財源でやろうということになってくると、自営業者グループ、1号グループと2号グループで、休業要件や期間や対象者について整合性があるように、工夫をしなければいけないかと思っております。財源次第ではその議論の組合せが変わってくるのかなという感想を持っています。
取りあえず、以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
本多参考人、お願いします。
○本多参考人 本日は、佐保委員の代理として、出席させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
先ほど駒村先生からもご発言があった点と同様ですが、1点、意見を申し上げたいと思っております。
まずもって、同じ被用者でありながら、勤務先の規模あるいは業種によって保険料免除措置が変わることは不合理であり、第1号被保険者にも育児期間に係る保険料免除措置を創設する方向性には賛同いたします。
ただ、対象となる親の範囲や期間は、慎重な検討が必要であると認識しており、加速化プランを支える財源確保に関する議論動向については、適宜この年金部会に報告いただくとともに、それを踏まえて、公平な在り方について、丁寧に議論を進めるべきと考えております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
たかまつ委員、お願いします。
○たかまつ委員 全体的には賛成なのですけれども、12ページ、対象期間は、厚生年金の場合は、休業した場合、最長3歳までなので、同様に3歳までにするのはどうかと私は考えております。第1号被保険者の方は、賃金が低い、生活が苦しい方も多くいらっしゃると思います。厚生年金の場合は育児休業給付金が給付され、こういうものも第1号被保険者の方は適用されないため、子育てに対する給付や支援がない中で、対象期間を延ばすことをぜひ御検討いただきたいと思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、恐れ入りますが、逆側、私の右手の皆様から、おありでしたら、お手をお挙げいただけますでしょうか。
お三方ですね。平田委員から、お願いします。
○平田委員 ありがとうございます。
具体的なところに、一旦、ぐっと入って言ってみます。
まず、育休中の第1号被保険者の方の保険料免除は、原則、1歳まで免除にして、年金は満額支給でよろしいのではないかと思っています。また、両親とも認める、あるいは、少なくとも父母のどちらが免除になってもオーケーとする、つまり、母だけということではないようにすることが必要かと思っています。
また、育児短時間勤務期間、厚生年金は原則3歳までは標準報酬月額の改定の特例および休業前標準報酬月額での給付となっておりますけれども、1号の方に関しては、原則3歳までは保険料免除で、基礎年金の給付は国庫負担分のみ、あるいは、保険料を減免して基礎年金は給付満額ということではどうかと思っております。
このように考える理由なのですけれども、これから次世代育成はとても大切になってくると思います。また、1号の中に、フリーランスの方や新たな働き方の方がいっぱい含まれていると思うのですけれども、この働き方に制限をかけるような制度は未来にとって不利益ではないかと思っています。
一旦、これで終わらせていただきます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
島村委員、お願いします。
○島村委員 ありがとうございます。
私も、基本的に賛成で、基本的に育児は2人でするものかと思いますので、片方だけでなく、両親とも認めてよいのではないかと思っております。その上で、厚生年金の場合には、男性は出産日から育児休業が取れるのに対して、女性は産前産後休業の後で育休になるので、始点が異なるわけなのですけれども、今回、国民年金につくるときにはどういう始点になっているかについて、御質問させていただければと思います。
○年金課長 御指摘があった産前産後休業は、母体保護が理由ですので対象が女性のみとなっており、男性は取得できません。仮に育児期間について男女ともに対象に認める場合には、男性については、お子様が生まれた直後から育児期間がスタートすることになり、一方で、女性については、産前産後の休業期間が終わった後から育児期間がスタートすることになって、開始時点がずれる制度設計になるのではないかと考えています。
○島村委員 ありがとうございます。
○菊池部会長 よろしいですか。
それでは、是枝委員、お願いします。
○是枝委員 まず、国民年金の保険料免除制度について、新たなパッケージで財源が出るということだとするならば、厚生年金との比較においてどのぐらいかということを考えるべきかと思います。厳密な休業を判定しにくいところではあるものの、0歳の子供について絶対に手が要ることは事実ではあるので、ある程度の所得・稼得に制限があることを踏まえ、休業を要件とせず、対象期間については、被用者の平均的な父母合計の育休期間が大体12か月程度ですので、父母合計で12か月程度免除し、年金給付は減額しないという形がよいのではないかと思っております。
これに加えて、日本の年金制度の中でさらにできる子育て支援策として、厚生年金の出産・育児退職者への継続適用ができないか、提案させいただきます。現在、30歳前後の女性の約6割が厚生年金の被保険者で、まだ現状では出産を機に2割程度の方が退職して3号や1号に移行していますが、子供が成長すると再び労働市場に戻ってきまして、適用拡大の効果もあり、厚生年金に加入して働く方のほうが多数派になっていると言える状況でございます。これから子供を持つ世代においては、出産前後に女性が仮に厚生年金から一時離れたとしても、多くはいずれ厚生年金に加入して働くことが見込まれることを踏まえると、厚生年金の機能を延長して、厚生年金の枠内で保障することができないかと考えております。具体的には、出産直前まで、一定期間、厚生年金に加入していた方が退職した場合、子供が3歳になるまでなどの一定期間、引き続き厚生年金被保険者にとどめて保険料を免除し、従前報酬に基づく報酬比例年金もつけることができないかと考えております。現状でも、出産退職された女性の多くは第3号被保険者として保険料を免除されていますが、一度夫の扶養という立場に置かれますと、どうしてもその枠を超えてはいけないのではないか、枠内にとどまっていたほうが得なのではないかという意識も働いてしまいます。そうではなくて、出産後の数年間、本人の従前の報酬、拠出に基づいて、厚生年金被保険者の位置を維持させることによって、本来、これだけの報酬を得られるものであること、再びそれなりの報酬を得る形で働き続ければ厚生年金の保障を厚くしていけることを明確に示すことで、再び厚生年金に入って働きやすくなるのではないかと考えております。
私からは、以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
1点、確認ですが、その場合の財源についてもお考えはありますでしょうか。
○是枝委員 はい。財源については、被用者同士の連帯と考えて、厚生年金の被保険者内で賄うものとして、具体的には、給付の調整で賄い、マクロ経済スライド期間を調整するような形を考えております。
○菊池部会長 どうもありがとうございました。
それでは、オンライン参加の皆様、いかがでしょうか。合図をしていただければと思います。
井上参考人、お願いします。
○井上参考人 ありがとうございます。出口委員の代理で参加させていただいております。
この少子化・人口減少問題は、国の存続に関わる問題でありまして、私ども経済界としても、強い危機感を持って、政府のこども未来戦略会議の議論にも参画してまいりました。
今回の御提案は、このこども未来戦略方針に掲げられたものでございますので、基本的な方向性には賛同いたします。ただ、制度化に当たっては、他の制度との整合性や納得性が重要になってきますので、その関連で、2点だけ、申し上げたいと思います。
第1に、対象者について。厚生年金保険との関係ですけれども、資料の中で、育児期間を1歳までとして、両親ともに保険料免除という形で提案をなされております。最終的には、一定の割り切りはどうしても必要となることは理解いたします。一方で、自営業の方の実態として、両親が1年間全く休業しているということは、イメージとして、違和感を覚えます。この点について、もし何か自営業の方の育児の実態というものがあれば、教えていただきたいと思います。免除というよりも、どちらかというと、育児期間の支援措置ということを明確に打ち出したほうが納得しやすいのではないかと思います。
第2に、この資料から離れて他の制度について。産前産後期間については、先の国会で成立した「全社法案」で、国民健康保険料の免除も導入されました。育児期間中の国民健康保険料の免除という話が可能性としてあるのかどうか、何かあれば教えていただきたい。
その2点でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
最初に、何か資料があればということがあったかと思いますが、まとめて2点、事務局からお願いできますか。
○年金課長 1号被保険者の方の育児の実態を正面から捉えたものはなかなか難しいと思いますが、参考になるのは19ページの就業状況で、この中の「常用雇用(フルタイム)」あるいは「パート・アルバイト(週20時間以上)」というピンクの方々は、恐らく労働者として雇用保険に入って育児休業を取得していることが想像されます。他方で、自営業者あるいは無職の方については、その間、どのような形で生計を維持しながら育児をされているのかは、データとしては把握できていないところです。例えば、自営業者ですと、休業した場合には、その事業に従事できず、恐らく生計の手段が途絶えることになるので、実際には休業したくてもなかなかできないという状況があるのではないかと想像しています。
2つ目の国民健康保険については、実は今国会で産前産後期間の保険料免除措置を講ずる法律が成立したところです。その先の育児期間については、年金の方が先行して検討しており、また5ページの年金改正法の附帯決議では、衆・参ともに国民健康保険の保険料についても検討すべしと掲げられています。今回の年金の取扱い、あるいは、この附帯決議を踏まえて、医療保険部局でも検討していくことになると考えております。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。
○井上参考人 ありがとうございました。
○菊池部会長 それでは、堀委員、お願いします。
○堀委員 ありがとうございます。
ただいま御提案のありました育児期間の国民年金の免除制度の創設に、賛成であります。その際に、休業は要件としないという点につきましても、有業であることを証明することはやりやすいのですけれども、休業していることを証明することは非常に難しいので、休業を要件としないことは現実的ではないかと思います。
また、1歳まで満額支給ということにも賛成なのですけれども、両親ともということにつきましては、もちろん両親ともが望ましいと思うのですけれども、財源との兼ね合いで、主に育児を担当している人のみに限るか、両親とも含めるかにつきましては、御検討いただければと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、権丈委員、お願いします。
○権丈委員 将来のために言っておきますと、これは結構難易度が高い問題だということです。これまでの議論の流れからいくと、厚生年金被保険者のように明確な休業が発生しない第1号被保険者に対しても、次世代育成支援という観点から、厚生年金に類する制度を創設することになるのは理解できます。ただ、そうした制度を19ページにある図1に見るような様々な第1号被保険者の人たちのために創設することは難しいです。ここでドイツやフランスの話も出ましたけれども、ドイツやフランスは第1号被保険者に新しい制度をつくる話とは関係がないです。これは厚生年金の世界ですので、国民年金の実施を政治から求められたときに、小山進次郎さんが「我々役人の小ざかしい思慮や分別を乗り越えて生まれた制度」と言ったような側面がどうしても出てきます。仮に厚生年金に合わせて制度ができたとすると、経済学で仮定されているような合理的経済人が制度を利用する際には、出産とともに夫婦で申請することになると思うし、将来的には、役所がそうした申請を勧めなかったら裁判沙汰にさえなりかねない側面も出てくるかと思います。そうした状況は、育児休業という言葉が矛盾なく当てはまる厚生年金被保険者との間で公平性の問題が出てこないのかという心配もあるけれども、そういうものを乗り越えてつくらなければいけないということが今の課題になっているということがあります。
もう1つ、財源の在り方としては、これまでの国民年金の産前産後期間の保険料免除分、厚生年金の産前産後期間と育休期間の保険料免除分は、それぞれの年金保険が負担していたわけですけれども、国民年金で新設される次世代育成支援策として、保険料の免除分はどのように賄うのか。筋を通すとすれば、これまでの年金保険料免除分をこども家庭庁に責任をシフトして、新たにつくられる国民年金の保険料免除分も併せて、今日配付されているこども未来戦略方針の24ページから書かれている支援金制度で賄う方法がすっきりとするのですけれども、多分そうはいかないと思います。そうなれば、新しくつくられる制度と既存の制度を、整合性を持ってどのように説明していくのかは、かなり難問になりますので、今、そういう難問に取りかかっているということを、フロアにいるメディアの人たちに御理解いただいて、将来的に、きれいな制度ができないからといって、あまり批判をしないほうがいいと思います。
以上。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。追加でございませんでしょうか。よろしいですか。
様々な御意見をいただきましたが、今日は1巡目の議論でございます。最初に、駒村委員から、財源との兼ね合いだというお話があり、その後、数名の委員の皆様からも同様の御発言がございました。また、最後、権丈委員からは、難問であるというお話がございました。どうするかは結構難しいということは、私も感じているところでございます。財源のところがまだはっきりしていないということもあり、また追ってここで議論することになるかと思います。
今日のところはひとまずこの辺でということで、ありがとうございました。
引き続きまして、議題2「障害年金制度について」に移ります。
冒頭、事務局から説明がございましたとおり、障害年金の有識者として、本日は、福島教授に御参加いただいております。
お忙しいところ、御参加いただき、誠にありがとうございます。
まず、資料2につきまして、事務局から御説明いただき、引き続いて、百瀬委員と福島教授から、それぞれ、この議題につきまして、御説明、御意見を賜りたいと存じます。
まず、事務局から、御説明をお願いいたします。
○年金課長 資料2「障害年金制度」と書いてある資料になります。
本日のメインは、2人の先生から障害年金制度の課題についてプレゼンいただくことですが、その前提として、障害年金制度について基礎的な内容あるいはデータを集めた資料になります。
最初は3ページ、障害年金の目的です。一番上にあるとおり、障害年金は、日常生活能力あるいは労働能力が制限される障害状態になった場合に、生活の安定を図るための給付です。加えて、通常は加齢に伴って起こる稼得能力の喪失が現役期に早期に到来することにより、そういった保険事故の発生に対する一定の所得保障を行うという考え方をとっており、この点は障害と老齢、遺族について共通ということで、3制度一体となって運営しています。
4ページは、給付の全体像と受給権者数のデータです。基礎と厚生の2階建てであることは老齢年金と同じですが、1級、2級、3級という等級による差がございます。人数を赤字で書いていますが、障害基礎年金が多く、あわせて200万人を超える数になります。他方で、障害厚生年金は、厚生年金加入中の障害に対する給付ということで少ないという特徴があります。
5ページ以降は、各制度について、まず5ページは障害基礎年金です。支給要件は上にあるとおりで、「初診日」という概念があるのと、国民年金については、保険料納付要件が特に重要です。2番目の真ん中、障害基礎年金に特有の制度として、20歳前に初診日がある場合で、20歳時点で障害状態にあれば、障害基礎年金が支給されます。ただし、所得制限があります。所得制限がある障害年金はこれが唯一です。
年金額は、一番下ですが、老齢年金との一体的な運営という先ほどの考え方のもと、2級が老齢年金の満額と同額となっています。加えて、1級については、介護や日常生活費用がかかるという考え方から、制度発足当初より1.25倍の額になっています。
6ページは、障害厚生年金です。支給要件は上にあるとおりで、年金額については老齢年金から来ていて、報酬比例の年金額が基準になります。したがって、加入期間が長い場合には年金額が多くなりますが、他方で※にあるとおり、被保険者期間が短い方、300月未満の場合には300月とみなして計算されます。したがって、厚生年金に加入してすぐ障害になって加入期間が短い方でも、300月つまり25年とみなして計算するという配慮措置が入っています。
7ページは、受給の発生時期等です。こちらは、本日の先生方のプレゼンにも少し関わってくるものです。一番上が原則のパターンで、「初診日」とは障害に該当する傷病について初めてお医者様に診察を受けた日になり、この初診日時点でどの制度に入っていたかが、受給権が発生する年金に影響します。そして初診日から直ちに障害年金が出るわけではなく、1年6か月後あるいはそれより短い期間で「障害認定日」があります。病気やけがについては治る場合もあるわけですが、それがある程度の期間たって固定さているという状態から障害が認定され、ここから受給権が発生することになります。他方で、真ん中、事後重症という制度があり、近年これが増えているという指摘もありますが、障害認定日時点では障害の状態に該当しないが、その後徐々に悪化した場合には、事後重症、まさに事後的に重くなったとあるように、その請求日から受給権が発生するという仕組みがあります。例えば、精神障害、鬱病のような形で、最初はそれほど重くなかったけど、だんだん重くなった場合には、このような形での請求が可能になります。
最後は「初めて2級」とあります。これは2つの障害がある場合に、一つ一つでは3級程度の障害であっても、その2つを併せて見た場合には2級相当と認定する仕組みです。以上が障害基礎年金・厚生年金で共通したルールの紹介です。
続いて、8ページからが「障害等級表」で、障害の程度の認定に際しては、1級、2級、3級を障害等級表として政令で定めています。また、参考資料にありますが、障害等級表を基に「障害認定基準」を定めており、こちらも使って等級認定を行っています。
9ページの右のほうに等級の考え方があり、1級、2級については、日常生活の活動の制約の度合いに着目している一方で、障害厚生年金のみがある3級については、労働能力の喪失に着目しているという違いがあります。
10ページは、障害年金とはまた別にある全額公費による制度として、障害年金生活者支援給付金があり、そこにある要件の方に給付されます。年額6万1680円になります。
11ページ以降は、データになります。
12ページは、障害年金受給権者数の推移で、障害基礎年金のほうが多いと申し上げましたが、青い数字で増加傾向が続いています。薄いピンクは、障害基礎年金の内数としての20歳前の障害基礎年金の人数です。この数字が増加していることが、全体の増加要因を占める要素になっています。一番下は障害厚生年金で、人数は増えていますが、規模感という意味では障害基礎年金よりも少ない状況です。
続いて13ページは、年齢階級別の受給権者数です。障害基礎年金については、20歳前からも含めた若年からが多く、右の障害厚生年金については、働いて厚生年金に入られてからの障害で中高齢層が多いという特徴があります。
14ページは、受給者数が増加している要因を分析したもので、これは令和3年度に新しく裁定された方について、その診断書の種類で見たものですが、精神障害・知的障害が全体の約7割を占めています。右側の直近3年の推移を御覧いただいても、増加傾向があります。
15ページは、年齢階級別の受給者の就労状況で、点線が平成21年、実線が令和元年となっており、全ての年代で就業率が上昇しています。右側は、働かれた際の年間収入で、50万以下あるいは100万以下の方が大宗を占めている一方で、400万円、500万円と比較的高い収入を得ている方もいらっしゃいます。右下では、それぞれの就労率が高まっている傾向が見てとれます。
16ページは、世帯収支の状況です。左側、赤で囲っているのが全体の中央値で193万円となっています。全世帯の年間所得を中央値で見ると437万円ですので、やはり低い数字が見てとれます。
18ページは、障害年金制度に関する課題についてで、このあと百瀬委員、福島先生にお話しいただきます。
19ページは、これまでの部会で出た御意見になります。
20ページ以降は、参考資料ですが、先ほど申し上げた「障害認定基準」が21ページにあり、これに基づいて認定実務が行われています。
22ページは、その改正経緯で、23ページは審査の流れの資料です。
24ページ、25ページは、その実務を行う日本年金機構の体制についての資料です。年金部会は主に制度に関することを取り扱うということで、実務あるいは運営に関するものについては参考資料とさせていただきました。本日はこの部分の説明は省略いたします。
駆け足になりましたが、事務局からの説明は以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
引き続きまして、本日、百瀬委員と福島教授から御説明いただきますけれども、学界にいる研究者として、このお2人の先生は、いずれも、この障害年金に関して、近年、代表的な御論考、御業績を上げておられるお2人だと、私も認識しております。
まず、百瀬委員から、お願いいたします。
○百瀬委員 流通経済大学の百瀬です。
まずは、このような報告の機会をいただきましたことに、御礼を申し上げます。
本日は、資料3に沿って、「障害年金制度の見直しに係る課題と論点」という内容で報告をいたします。
冒頭の(注)と<前提>は、時間の関係で、省略いたします。この後も、ところどころ省略しながら、10分強で報告したいと思っております。
まずは、1ページ目、下のほうです。障害年金の<見直しを要する大きな背景>について、意見を述べます。障害年金の制度創設時と比較した場合、障害年金受給者の障害種別は、先ほども少し紹介がありましたけれども、外部障害の構成割合が低下して、内部障害や精神障害、特に精神障害の構成割合が増加しています。その結果、全体的な傾向として、次のようなことが指摘できます。1つは、症状が変動する可能性があるケースが増加していること。2つは、発病日と初診日が一致しないケースが増加していること。3つは、初診日時点での年齢が若い時期にあるケースが増加していること。4つは、初診日から障害の状態に至るまでの期間が長いケースが少なくないこと。5つは、障害等級1級に該当しない受給者が多いことになります。また、近年は、インターネットの普及により、様々な傷病で障害年金が受給できるという情報も入手しやすくなっています。結果として、障害の状態に至ってしばらくしてから制度の詳細を知り、その後に障害年金の請求をするケースも存在します。一方で、制度の詳細が若い世代に伝わることによって、かつてと比べれば若年層が障害年金の受給につながりやすくなったと考えられます。さらに、制度創設時と比較した場合、補装具の発達や障害者雇用の進展が見られています。その結果として、特に身体障害による受給者では、障害認定基準を満たして障害年金を受給する者であっても、同時に一般就労ができるケースが増加しています。その一方で、現在でも、障害種別によっては、特に精神障害による受給者では、一般就労をしている受給者の割合が低い水準にとどまっており、障害種別間の差が大きくなっています。以上、述べてきたことをまとめますと、過去の障害年金の受給者実態と今日の受給者実態には乖離が生じています。しかしながら、障害年金については、1985年改正以降、制度上では大幅な見直しは実施されていません。次回の改正では、この受給者実態の変化に合わせて、障害年金の見直しが必要になっているのではないかということが、私の考えになります。
具体的に、<現時点で議論が求められる課題と論点>を整理していきたいと思います。
まず、「1.初診日関連」の課題を取り上げます。初診日関連では、実務上の課題もございますが、それとは別に、制度上の課題として、厚生年金保険料の納付が障害厚生年金に結びつかないケースが生まれることが挙げられます。資料では、4つのケースを挙げております。説明は省略しますが、いずれのケースでも、厚生年金保険料を一定期間納付していたとしても、初診日が厚生年金保険の被保険者期間にないので、障害厚生年金は支給されません。次のページに記載してございますように、確かに保険制度では保険加入中に発生した保険事故に対して給付を行うことが原則です。ただし、社会保険においては、被保険者資格喪失後も、一定期間内であれば、保険加入中と同様に扱うことも容認されると考えられます。実際にそうした事例は海外の制度においても見られます。
また、障害厚生年金とは異なって、遺族厚生年金では、死亡という保険事故の発生時点で厚生年金の被保険者でなくても、長期要件を満たせば、遺族厚生年金が支給されます。これを参考に、厚生年金保険料を長期間にわたって納付してきた者については、被保険者資格喪失後に初診日がある場合でも障害厚生年金を支給してもいいのではないかという考え方もございます。
以上を踏まえまして、初診日に関する見直しとして、2つの論点が挙げられます。1つが、障害厚生年金において、延長保護、これは諸外国でも見られる例で、被保険者資格喪失後の一定期間内であれば、資格喪失後の保険事故発生も給付の対象にするという仕組みですが、これを認める余地があるか否かです。2つ目が、障害厚生年金において、遺族厚生年金と類似する長期要件を認める余地があるか否かということになります。これらの見直しによって、課題で挙げたマル1からマル3のケースについては、障害厚生年金の給付対象とすることができます。ただし、その一方で、延長保護や長期要件は、資料に詳しく書いたような理由から、社会保険の根幹を揺るがすものとして、その導入に反対する意見もあり得ます。また、遺族厚生年金では長期要件が認められてきたわけですが、次のページに書きましたように、この長期要件は、遺族厚生年金の性格や役割と強く結びついたものであり、障害厚生年金では長期要件を認めるべきではないという意見も当然に考えられます。
2つ目の課題と論点として、「2.障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱い」がございます。障害年金では、2級以上の場合、国民年金保険料が法定免除になります。65歳以降も多くの方は障害基礎年金をそのまま受給しますので、この点は特に大きな問題とはなりません。その一方で、近年は有期認定で障害年金を受給する方が少なくありません。この場合、障害の状態が65歳前に軽減すれば、65歳以降は、法定免除がされていた分、減額された老齢基礎年金を受給することになります。この老齢基礎年金の減額を避けるためには、法定免除が受けられる場合でも、保険料を自ら納付していく必要がございます。しかし、仮に保険料を納付した場合に、やはり老後も障害基礎年金を受給できることになれば、納付した保険料がどこにも反映されないことになります。そのため、見直しに係る論点として、障害年金受給者の法定免除期間について、納付済期間と同じ扱いにすべきか否かを挙げることができます。
3つ目の課題と論点が、「3.直近1年要件」です。現在、納付要件の特例措置として、令和8年4月1日前に初診日がある場合は、初診日の直近1年間に保険料未納期間がなければ、納付要件を満たしたものとして取り扱われます。この特例措置は、1985年改正時に、旧法の措置を引き継いだものです。期限つきの措置でしたが、その後、延長が繰り返されています。ただし、既に1985年改正から40年近く経過していますので、この特例措置は歴史的な役割を終えていると考えられます。その一方で、実態として、この特例措置によって障害年金の受給につながっているケースがあることにも、十分に留意する必要があります。そこで、論点として、直近1年要件につきまして、次回の改正でも10年間の延長をすべきか否かということがございます。
4つ目の課題が「4.障害基礎年金2級の年金額」になります。障害年金受給者では、かつてに比べて2級の受給者が多くなっています。この2級の障害基礎年金の水準は、老齢基礎年金の満額で設定されています。その一方で、老齢年金と障害年金では、資料に記載しましたように、様々な違いがあります。それゆえに、障害基礎年金の年金額は老齢基礎年金と切り離して考えるべきという主張もございます。ただし、両年金が同一の制度で運営されている以上、両者のバランスを考慮すべきという主張も当然あります。そこで、両者のバランスを崩さずに障害基礎年金の年金額を向上させる方法として、基礎年金拠出期間の45年化を満額の変更として、それに合わせて障害基礎年金2級の水準を上げていくという案がございます。これに関わる論点として、障害基礎年金2級の年金額を引き上げる方法として、この拠出期間の45年化による満額の変更が妥当か否かというものがございます。さらに、仮に満額の変更によって年金額を引き上げるとした場合は、施行日前に初診日がある受給者の年金額についてどのように対応すべきかを検討する必要があります。
「5.障害年金と就労収入の調整」についてです。詳しいことは資料に記載しておりますが、簡潔に申し上げますと、障害種別によっては、障害年金の受給者がどれだけ就労収入を得ても、障害年金は減額されません。その一方で、障害種別によっては、受給者の就労状況を基に、有期認定の更新時に障害年金の支給が打ち切られてしまうことがあります。次のページに記載しましたように、障害年金と就労収入の調整は、現在、全く行われないか、あるいは、急激に行われるかの両極端になっています。このような両極端な調整ではなく、所得額に応じて年金額を緩やかに調整する方法の導入も考えられます。ただし、拠出制年金に所得調査による年金額の調整を入れることには、理論的な観点や実務的な観点から慎重な検討を要することは言うまでもありません。これに関わる論点として、障害年金と就労収入の関係をどう考えるか、両者の間で一定の調整を行うべきか否か、行うとした場合、どのような方法で行うべきかが挙げられます。
最後に、「6.事後重症の場合の支給開始時期」を取り上げます。事後重症は、1966年の国民年金法改正で導入されています。この事後重症は、その導入前に生じていた問題を解消するために、言わば例外的に導入された仕組みでしたが、現在は、事後重症請求が多くなっています。一方で、事後重症の場合は、障害の状態が悪化して障害等級に該当するに至った日ではなくて、請求日の翌月から障害年金が支給される形になっています。例えば、請求日の1年前にそのような状態に至っていたとしても、そこまで遡って受給することはできない仕組みになっています。そのため、年金を受給できる障害の状態に至ったとしても、請求が遅れた場合に受給者に不利益が生じています。論点として、事後重症の場合でも、障害等級に該当するに至った日が確定できるのであれば、その翌月まで遡って障害年金を支給することを認めるべきか否かというものが挙げられます。ただし、制度導入時の説明を資料に記載しましたが、そこにもありますように、事後重症の支給開始時期を見直すことには技術的に困難な面もあると考えられます。
私からは、以上となります。
○菊池部会長 どうもありがとうございました。
続きまして、福島先生から御説明をお願いいたします。
○福島様 関西大学の福島と申します。
本日は、このような報告の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
私からは、画面共有をしながら報告させていただければと考えております。
私は、障害年金を法学の立場から研究してまいりました。このような立場から、障害年金の制度改正に向けた中長期的課題を提示します。私の資料を適宜割愛しながら報告したいと思います。
まず、障害年金は社会保険の給付として制度設計されていますので、障害年金には保険事故の定型性が要請されます。したがって、障害年金は、等級制を採用していると考えられます。障害年金は、3級制を採用しています。1985年の基礎年金改革により、障害基礎年金は障害を有する20歳以上の国内居住者に支給される年金給付となりましたので、1級と2級は日常生活能力の制限という観点から制度設計されています。これに対して、3級の障害厚生年金は、被用者にのみ支給される年金給付となりましたので、労働能力の制限という観点から制度設計されています。障害等級に該当する程度の障害の状態にあるかどうかの判断基準は、障害等級表で示されています。先ほど簡単な紹介がありましたけれども、障害等級表は、身体の外部障害については、各級の障害の状態を客観的な機能障害に着目して個別的に定めています。その上で、それ以外の障害、つまり、身体の内部障害及び精神の障害については、各級の障害の状態を日常生活能力または労働能力の制限に着目して包括的に定めています。結果として、身体の内部障害または精神の障害を有する者が障害年金を受給することができるかどうかは、日常生活能力または労働能力の制限に該当するかどうかによって判断されています。障害年金は、長期にわたり所得を失うリスクに備えるという公的年金保険の枠内において支給されています。そうしますと、障害年金は被保険者が障害によって所得を稼ぐことができない場合に代わりの所得を保障するものと考えることができます。しかし、障害年金の障害等級は、就労により所得を稼ぐ能力としての稼得能力の制限とどのような関係にあるのでしょうか。特に1級と2級は日常生活能力の制限という観点から制度設計されていますので、稼得能力の制限とどのような関係にあるのかがはっきりしません。現行制度の合理的な解釈として、日常生活に支障があることは労働に支障があることより重度であるという理解が考えられます。詳細につきましては、私の資料を御覧ください。
このような障害等級の解釈は、給付水準の制度設計と一定程度整合性を有するように思われます。このうち、2級と3級の給付水準の考え方については、私の資料を御覧ください。特に1級の給付水準ですけれども、こちらは2級の給付水準の1.25倍となっております。1級加算は、しばしば介護加算と説明されています。したがって、1級加算は、障害に伴う特別な費用を保障するものと考えられます。しかし、障害に伴う特別な費用を保障することは果たして障害年金の目的なのでしょうか。障害者の介護費用は、障害者総合支援法における自立支援給付によって保障されているからです。さらに、特別障害者手当も存在する中で1級加算を維持すること、ひいては障害年金の障害等級を基本的に日常生活能力の制限という観点から制度設計することの合理性は、改めて問われなければならないでしょう。
就労所得との調整について、先ほど百瀬委員からも少しお話がありましたけれども、20歳未満障害基礎年金は、無拠出制の年金ですので、所得に応じた支給制限が設けられています。これに対して、拠出制の障害年金は就労所得と調整されません。就労所得との調整が行われるかどうかは、障害年金の枠内では、無拠出制の年金であるかどうかによって整理されています。他方で、拠出制の老齢厚生年金には、御承知のように、在職老齢年金の仕組みがあり、老齢厚生年金は就労所得と調整されます。なぜなら、老齢厚生年金の受給権者が就労により所得を稼いでいる場合には、老齢厚生年金により所得を保障する必要がないからです。そうしますと、拠出制の障害年金が就労所得と調整されないのは、障害年金の保険事故が稼得能力の制限ではなく障害それ自体と捉えられているので、障害がある以上当然に受給できるはずの障害年金に所得制限を課すことはできないからだと説明することができます。その意味で、障害年金は、障害によって所得を稼ぐことができない場合に代わりの所得を保障することにとどまらない役割を担っていることになります。
障害年金は、一般的には、障害者の生活保障または所得保障を目的とすると説明されています。しかし、障害年金の制度を子細に見ますと、障害年金の目的は、障害によって所得を稼ぐことができない場合に代わりの所得を保障することにとどまらず、障害に伴う特別な費用を保障することも含んでいます。このことは、障害年金の障害等級が基本的に日常生活能力の制限という観点から制度設計されていることと無関係ではありません。結果として、障害年金の目的は、障害によって日常生活に支障がある場合に介護費用を保障することであると誤って理解されるおそれがあります。障害者の介護費用は、先ほども少し触れましたけれども、障害者総合支援法における自立支援給付によって保障されています。したがって、まずは障害年金の目的を障害によって所得を稼ぐことができない場合に一定の所得を保障することに明確化して、障害に伴う特別な費用の保障は障害年金の枠外で行うことに整理することが必要です。その上で、障害年金の保険事故を稼得能力の制限と捉えた上で、稼得能力の制限という観点から障害等級を見直すとともに、就労インセンティブに配慮しながら就労所得との調整を緩やかに行う必要があります。ここで、障害等級の見直しの方向性について、私見を述べたいと思います。まずは、法律上の障害要件を稼得能力の制限と定める選択肢が考えられます。しかし、稼得能力の制限度合いを、具体的に、例えば、働くことができる労働時間に着目して定めることには、解釈及び運用の難しさが伴うように考えられます。そうしますと、障害認定の客観性を担保するために、障害等級を稼得能力の制限という観点から見直す選択肢が考えられます。具体的には、現行の障害等級表を前提として、障害の種別によっては、機能障害の程度を個別的に定めるとともに、機能障害の程度を定めることが難しい障害については、稼得能力の制限度合いを、抽象的に、例えば、「稼得活動の著しい制限」と定めて、個別事情を考慮する余地を認めることが考えられます。その上で、今後の障害年金の方向性については、先ほども少し紹介がありましたように、精神の障害を理由とする障害年金受給者が増えていることを踏まえますと、稼得能力が永続的に制限されている場合に限られず、一時的に制限されている場合にも障害年金が支給される可能性を正面から認めるとともに、就労支援との連携を図ることが必要です。こうして、障害年金は労働市場への参加を支援することが可能になります。このように、障害年金の保険事故が稼得能力の一時的な制限と捉えられますと、稼得能力がある場合には、障害年金を原則有期年金として支給する選択肢が生じます。そうしますと、障害年金は、稼得活動からの永続的な離脱というより、稼得活動の一時的な中断に対して支給されることになると思われます。私は、どちらかというと、次期制度改正の先にある課題に言及しました。障害年金が、今後の制度改正によって、その目的に照らして見直されることを期待します。
私からは、以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
百瀬委員からは、現行障害年金制度の見直しに係る個別の論点を詳細におまとめいただきました。また、福島教授からは、中長期的な観点から、障害をどう捉えるかという非常に大きな視点も含めたお話をいただきました。どうもありがとうございます。
それでは、お2人から御説明いただいた内容につきましての御意見、御質問、あるいは、それ以外に何か御意見があれば、それも含めて委員の皆様からいただきたいと思います。ご質問の場合は、「○○委員に」、「○○先生に」あるいは「事務局へ」とか、その辺りも明確にしていただけるとありがたいです。
まず、会場から、さっきとは逆回りでいきたいと思いますが、いかがでしょうか。
お三方ですね。是枝委員から、お願いします。
○是枝委員 2点、申し上げます。
まず、百瀬先生からおっしゃられた初診日について、障害厚生年金において、延長保護と長期要件の両方を認めてよいのではないかと思います。先ほど百瀬先生より初診日と障害認定の時期がずれるケースが非常に多くなっているという御説明がありましたし、そもそも初診日以前の被用者として働いている期間における心身のダメージが累積しており、最後の傷病で障害に至ったということも考えられることからすると、保険期間中に初診日があることを厳密に捉えなくとも社会保険としての原理は成り立っているのではないかと思います。
2点目は、両先生の論点にはなかったのですが、障害厚生年金における配偶者加算の位置づけを改めて考える必要性があるのではないかと思います。こちらも、老齢厚生年金と同様に、旧来の夫が大黒柱となり妻が専業主婦であるようなモデルにおいて、配偶者を扶養しなければならないのだからその分保障を厚くしなければならないという考え方だったと思いますが、現在は、夫婦共働きの世帯が増えていて、配偶者に所得がある障害者は、配偶者がいない障害者に比べて、むしろ所得やケアを受けられるという点である程度優位な立場にいることを踏まえると、配偶者加算を現在においてもつける意義があるのかということを改めて検討する必要があるのではないかと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、島村委員、お願いします。
○島村委員 貴重な御報告をいただきまして、ありがとうございます。
障害年金の水準について、福島先生に御質問させていただければと思っております。1級について、1.25倍する必要はないのではないかという御趣旨だとお伺いしたのですけれども、2級の水準自体については十分という御意見なのか、障害年金にはマクロ経済スライドはかけないとかの方法もあり得るかと思いますが、そこの点についてはどのように考えていらっしゃるのかということをお伺いしたいです。
もう1点、福島先生に御教示いただきたいのですけれども、障害年金は何のためなのかというときに、障害が要保障事由なのかその障害による稼得能力の減退が要保障事由なのかという問題ですけれども、最後のほうで御説明いただいたところで、結局、等級だけを変えればよい話なのか、在老の障害者バージョンみたいなものを法律でつくる形で法律に書くことまで必要であるのかどうかというところについても、御意見をいただけますと大変ありがたいです。
よろしくお願いします。
○菊池部会長 ありがとうございます。
福島先生、いかがでしょうか。
○福島様 御質問をどうもありがとうございます。
まず、1点目の御質問について、先ほど私の報告の中で、仮に障害年金の保険事故を稼得能力の一時的な制限と捉えられるという話になりますと、老齢年金との関係が一定程度離れる、先ほどの事務局の方からの説明にもありましたように、障害が老齢の早期発生という考え方から一旦切り離されることとなりますので、これはあくまで一つの可能性ではありますけれども、マクロ経済スライドの適用を外す選択肢も出てくることになるのかなと、今のところは、考えております。その上で、どうしても足らざる部分はあると思うので、そちらは手当を拡充していく方向性になるのかなということが、現時点での私の見通しになります。
2点目の御質問について、結局のところ、私が最後に申したことは既存の障害等級の考え方を前提にしたものではないかという御質問かと思います。それは確かにそのとおりです。ただ、現行の障害等級表は特に身体の外部障害とそれ以外の障害との間の矛盾が大きくなり過ぎているのではないかと考えております。一度稼得能力の制限という観点から障害等級全体を見直す必要が高まっているのではないかと考えております。
差し当たっては、以上となります。
○島村委員 どうもありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、永井委員、お願いします。
○永井委員 御説明ありがとうございました。
私からは、労働組合の立場で、3点意見を申し上げたいと思います。
1点目は、前回も資料として示していただきました、企業規模要件や個人事業主に係る業種要件などによって、本来は第2号被保険者であるべき被用者が第1号被保険者となっている現状を踏まえると、全ての被用者に厚生年金保険の適用拡大を進めていくことと併せて、障害基礎年金と障害厚生年金の等級の違いについても議論すべきと考えております。歴史的な背景については先ほど御説明いただきましたが、同じ障害の程度であっても被用者間で受給できる障害年金に違いが生じているということです。稼得能力の低下や喪失が到来した者に対する所得保障という障害給付の目的に照らせば、同じ公的年金の枠組みの中で、障害給付の等級に差を設けることに必ずしも合理性や妥当性があるとは言えないのではないかと思います。雇用形態や働き方にかかわらず、障害を有する人が障害年金と就労収入で生活が保障される仕組みを構築するためにも、基礎年金の等級を厚生年金と同じく3級からとすべきと考えております。
2点目は、厚生年金の任意継続加入制度の創設の視点です。以前にこの部会において、初診日の取扱いに関して、保険事故の発生が厚生年金保険の被保険者期間中に存在しなくても、退職後、それほど期間が経過していなければ、障害厚生年金の給付の対象にすることも検討の余地があるのではないか、との意見がありました。転職の増加や働き方の多様化も踏まえると、仮に求職・失業中に初診日があったとしても障害厚生年金を受給できる仕組みとして、厚生年金保険の任意継続加入制度を創設することも検討すべきではないかと考えております。ただ、保険料負担については、いろいろな検討が必要と考えております。
最後に、広報の在り方についてです。2019年に内閣府が公表した老後の生活設計と公的年金に関する世論調査では、障害がある人や世帯の生計を支えている人を亡くした人も保障を受けられるという年金制度の仕組みを知っている人は約半数だったということです。ホームページ上で手話・字幕つきの動画を公開するなど、厚生労働省や日本年金機構が年金制度周知のために様々な努力を行っていただいていることは理解しておりますが、受給すべき人が確実に受給できるよう、例えば、精神障害を有する方への対応なども含め、引き続き、年金機構と連携した周知活動の強化をお願いしたいと思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、逆側の皆様から、何かおありの方はお手をお挙げいただきたいと思います。
4人の方ですね。まず、原委員から、お願いします。
○原委員 本日は、百瀬先生、福島先生、いろいろとご発表いただき、ありがとうございました。大変勉強になりました。
私からは、障害年金のところで、非常に難しい問題ではありますので、現時点でのコメントになりますが、お話しさせていただきます。
百瀬先生の発表について、延長保護と長期要件といった視点は、もちろん今の時代には出てくるかと思います。ただ、1つ、今後考慮して検討していかなければいけないこととしては、公的年金の制度全体で考えたときに、種別というのがありまして、種別変更という形で、例えば、会社を退職するなど、その人の状況が変わったときに、種別を変更するのが原則です。例えば、会社を退職し独立すると、国民年金第2号被保険者から第1号被保険者になって、制度でいえば、厚生年金加入から国民年金のみの加入に変わって、保険料の納付方法なども変わりますし、給付については、そのときに加入している制度の給付を受けるというのが原則になっているかと思います。つまり、社会保険制度では、保険加入中に発生した保険事故に対して、その制度から給付を受けることが原則だと思います。そういった中で、延長保護ですけれども、制度で考えたときに、ある意味、特例をつくるということに何となく思えてしまって、制度が複雑化してしまうのではないか、分かりにくさや不明瞭さをつくってしまう可能性があるのではないかという気持ちも一方ではあります。また、それによって、実務面や他の制度への影響も出てくるのではないかと感じられるので、そういった辺りの留意点を、今後、検討して、いい方向にいけばよいのではないかと思っております。
もう1つ、同じように、提案がありました長期要件は、遺族厚生年金の長期要件をということで挙げられていたと思うのですけれども、この遺族厚生年金の長期要件は2種類あると思うのですが、もちろん先生も御存じだと思うのですけれども、念のために言いますと、老齢厚生年金の受給者の死亡ではない方、もう1つの長期要件の遺族厚生年金のことかと思うのですけれども、例えば、25年以上という長期にわたって基本納付してきた人ということで、現役の中高齢者も入る遺族厚生年金の長期要件のほうだと思うのですが、この場合、厚生年金だけで25年ではないので、例えば、厚生年金に3年であとは国民年金に加入という人も入るわけです。そのときの長期要件の場合は、月数の最低保障がないので、そういう人は3年分の遺族厚生年金をもらうことになるということが長期要件の2つのうちの1つの遺族厚生年金なのですけれども、それと障害厚生年金を比べたときに、障害厚生年金は300月の保障があるわけで、月数のカウントが異なりますから、額はどうするのか、保障はつけるのかなどの留意点があると思います。同様に考えるのかどうかということもあると思いますが、いろいろとご研究された上でのご提案ということですので、さらなるお考えもあるかと思われます。ただ、繰り返しになりますが、2つのご提案に対して、今後の検討事項としては、初診日に国民年金の被保険者なのか厚生年金の被保険者なのかということを、障害年金の場合、原則をどうしていくか、そこに変更を加えた場合にどうなるのか、どういうことが起こり得るのかということに対しては、十分な議論、検討が必要ではないかと考えます。さらに、実務上の検討も必要かと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
たかまつ委員、お願いします。
○たかまつ委員 私は、障害年金については、正直、全然知識がなかったので、今日初めて知ることがたくさんあったのですけれども、そんな中でも、私がふだん若い人と関わっている中でこの点は問題ではないかと思った点を2つほど共有させていただければと思います。
先ほど発表していただいた中にもあったのですけれども、初診日によるという原則と保険料納付要件についても初診日の前日において判断されるというところは、私の周りにも、若い人でも、精神疾患とか、そういう人が増えている中で、こういう知識がもともとあるかというと、ない人が多い中で、自分が本当に働きたくても働けないという状況の中で、初診日が判断基準になってしまうことや、会社を辞めてしまってから、まだ精神科に行くことに対する偏見もある中で、これが、困っている方、利用者の方に寄り添っている制度設計になっていないなと、知識の差があるものにしてはいけないと思いますし、困っている中で、余裕がない中で、そういう方を助ける制度設計にしなければいけないのではないかと思いました。どのように解決すればいいかというところまでは分からなかったのですけれども、御指摘いただいた点は見直すべきだと思いました。
もう1点、年金は、学生の方は納付特例をして支払いを先延ばしにされている方が多いと思うのですけれども、その納付特例で手続をしないと障害年金がもらえないというところも、学生の方でそういうことを知らなくて、その手続を1つしていないからといってもらえない可能性があるということは、これは実態と大きくかけ離れているのではないかと思うので、この点も見直しを検討するべきではないかと思っています。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
本多参考人、お願いします。
○本多参考人 御説明、誠にありがとうございました。
私からは、2点の意見と、事務局に対して1点の質問を申し上げます。
まず、1点目です。先ほども御発言がありましたが、障害年金も老齢年金と同じくマクロ経済スライドの対象であり、将来的な所得代替率の低下が見込まれ、特に基礎年金のみの受給者にとって極めて影響が大きいと考えております。連合としては、以前に佐保委員から申し上げたとおり、国庫負担割合の引上げなど、幅広い選択肢の下で財政基盤を強化し、その上で基礎年金をマクロ経済スライドの対象から外すことを検討すべきと考えております。また、以前の部会において、基礎年金は老後の生活の何を保障するものなのかを整理した上で議論すべきという意見もありましたが、本日の資料の3ページに、一定の所得保障、生活の安定、所得の補填などの様々な言葉が出てきております。特に障害基礎年金について、現在年金を受給されている方々の生活実態を踏まえながら、障害を有する方の所得をどのように保障するものなのかを整理した上で、給付水準の在り方や引上げに向けた議論を進めるべきと考えております。
2点目は、障害認定についてです。本日は説明を省略されていた実務に関わる話かもしれませんが、障害等の認定については、日本年金機構の障害年金センターで、職員による事務的な事項の審査とともに、認定医による医学的な事項の審査が行われ、総合的な判断の下で等級が決定されていると理解しております。その中で、先ほど福島先生も触れられておりましたけれども、等級の決定に際しては、日常生活能力の程度の評価が大きな判定要素になっていると考えております。この間、連合が推薦する社会保険審査会の参与と意見交換をする機会があったのですが、その参与からは、例えば、精神障害における日常生活能力の程度と労働への従事の関連性が非常に曖昧であり、そのことを起因として審査請求に至ったと考えられる事案があると聞いております。障害年金の確実な支給に当たり、障害認定審査の客観性と透明性を高めるためにも、現行の認定基準や審査方法について、過去の審査請求事案や実際に障害を持たれている方との窓口を担う日本年金機構との情報連携に基づき、課題として考えられる点があれば資料として提示いただき、今後この部会で課題解決に向けた議論を行うべきと考えております。
最後に質問です。本日の資料の26ページに精神障害に係る等級判定ガイドラインの施行後、3年間で地域差が改善したとありますが、現在はほとんど地域差がないと理解してよいのか、伺いたいと思っております。なお、次回以降でも差し支えございませんので、その効果をはかるための最新の状況などを持ち合わせていれば、提示をいただきたいと思っております。
以上です。
○菊池部会長 事務局から、いかがでしょうか。お願いします。
○事業管理課給付事業室長 年金局給付事業室長でございます。
今の3点目の地域差の件でございますが、令和元年から障害年金業務統計というその年度の新規決定件数などのデータをまとめた資料を公表してきてございます。その令和元年から直近の令和3年度までの3年間を機械的に計算してみましたところ、平均で見たときに、正確な数字はまだ出ておりませんけれども、今の26ページの下のほうにも標準偏差10.9が3.5になったと書いていますが、今申し上げた直近3年間で見ますと、2点数%程度になろうかと考えております。したがって、標準偏差はさらに縮小していると考えてございます。また、平成29年4月に障害年金センターに審査を完全に全国集約したという経緯がございますので、現時点においては、この審査をするサイドから見て、地域差が生じる状況にはないのだろうと認識してございます。
以上です。
○菊池部会長 いかがでしょうか。よろしいですか。
○本多参考人 ありがとうございます。
○菊池部会長 それでは、駒村委員、お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。
まず、これから申し上げるのは、障害を抱える方の生活実態がどういう状況であるのかということについて、より詳しい研究・調査をした上でということで、当然それをやらないと現行障害年金の給付水準やマクロ経済スライドの意味は評価できませんので、そこはきちんとしたデータを見た上でということになりますけれども、障害年金への税制あるいは社会保険の扱いについて、念のため、現状でどうなっているのか、税制上の優遇の根拠は一体どういうものなのかということを、一つ、資料として事務局に出していただきたいと思います。
もう1つは、両先生の重なっている部分の一つとしては、就労所得の調整の部分があって、今、これは私も悩んでいるのですけれども、在職老齢年金が一方である。それに対して、お2人の話では、在職障害年金みたいな考え方になるのかもしれませんけれども、働きながら障害年金をもらっている方について、その給付をどう扱うのかというところについても言及があったと思います。20歳前障害については、拠出なので、全額支給停止ということになっていると、福島先生はおっしゃっている。一方、障害基礎年金についても国庫負担が2分の1で入っていると考えると、何らかの給付停止みたいなもの、在職障害年金みたいなものが考えられるのかどうなのかということは、両先生に聞いてみたいと思いました。
事務局にも、この話をする前提としては、今の20歳前障害で所得制限がかかっていると百瀬先生は指摘されていますけれども、そのことによって就業調整が現に起きているのかどうなのかということは確認した上で議論をしなければいけないと思いますので、もしそれに関して分かることがあれば、資料を見せていただければと思います。
福島先生のところで、現在支給停止が拠出型年金について行われていないことから、所得保障以上の意味があるのではという整理をされていたように読みましたけれども、現在、私はいろいろなところで見ているところですけれども、これから先、障害者雇用の促進は本当に充実していかなければいけないことになりますが、障害者雇用が非常に充実している中でもそういう考えなのか、たまたま現時点でやっていないという現象から所得保障以上の評価がされていると見ているのか、この辺は確認させていただきたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 最後のものはどなたに対してですか。
○駒村委員 最後のところは、福島先生のところですね。所得制限をしていないことから、所得を保障することにとどまらない役割になっていると解釈されているところであります。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、事務局は後回しにして、まず、百瀬先生、福島先生の順に、お願いできますでしょうか。
○百瀬委員 まず、拠出制の障害年金の場合、所得制限がないという話だったのですけれども、それは確かにそのとおりですので、身体障害の方で永久認定を受けている方の場合は、基本的に年収が2000万でも年収が3000万でも障害年金はフルに支給されます。ただし、実態として有期で認定を受けている方もいらっしゃって、特に精神の障害の方はそうですけれども、その方がもし一般就労ができて、ある程度の所得が獲得できるようになったのであれば、次の更新のときには等級が変更されて年金の支給が止まってしまうことがあります。全く行われていないわけではなくて、全く行われていないケースと更新のときに急激に一気に行われるケースの両極端になっているということが、私の言いたかったことです。両極端になっている状況からすれば、緩やかに調整するほうがベターなのではないかと考えられます。積極的に、所得調査や在職障害年金を入れていくべきだというわけではありません。
次に、これはそもそも論になるのですけれども、障害年金の支給対象とする保険事故とは何なのかと考えたときに、日本の場合ははっきりしないのですけれども、諸外国のように、障害が原因で所得が稼げないことと割り切れば、ある程度の就労収入がある人については、そもそも保険事故が発生していないことになります。つまり、年金自体が支給されないことになります。このように制度の目的を大きく見直すということも一つはあると思うのですが、今回の私の報告のテーマからはかなりずれてしまうので、現時点での障害年金の制度を大幅に変えない範囲内で何か改善ができないかとなると、先ほど言ったように、今は両極端の調整になっているので、それを緩やかにするということは、一つ、方向性としてはあるかと思います。ただし、これも繰り返しになりますけれども、拠出制の年金に所得制限を入れることは、理論的な観点からも難しいところはありますし、当然実務的なところでも毎年度所得を調査していかないといけないので、それが本当にできるのかどうかということは疑問に思っています。
私からは、以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
福島先生、どうでしょうか。
○福島様 まず、1点目の御質問について、すなわち、就労所得との調整については、先ほど百瀬委員から御回答があって、私も基本的には同趣旨ということになります。
1点、付け加えるとすると、国庫負担という財源が入っているから就労所得との調整が行えるのではないかという御指摘については、私自身の考え方としては、財源が国庫負担かどうかといことよりは、むしろ障害年金の目的をどう捉えるか、すなわち、障害によって働くことができない場合に一定の所得を保障するという目的であると考えれば、就労所得との調整は行われると考えることができるのではないかということになります。その意味では、百瀬委員の先ほどの御発言と基本的に同趣旨になります。
2点目、就労所得との調整で、現行の制度が、障害によって所得を稼ぐことができない場合に、代わりの所得を保障するという役割を超える部分を担っているのではないかと触れた点ですけれども、結局のところ、まさにそうした目的が曖昧になっているというところを私は言いたかったということになります。そうした目的を言わば明確化することが、今後の中長期的に見たときの課題ではないかと考えているところです。
私からは、以上となります。
○菊池部会長 駒村委員、いかがでしょうか。よろしいですか。
ありがとうございます。
会場は、よろしいですね。
それでは、オンライン参加の皆様から、お手をお挙げいただければと思いますが、いかがでしょうか。
嵩委員、お願いします。
○嵩委員 よろしくお願いいたします。遅くなって、申し訳ございませんでした。
本日は、御説明いただきまして、ありがとうございました。大変勉強になりました。
私からは、1点、まず、百瀬委員が御提起されたところですけれども、事後重症について、請求日の翌月から支給するという点について、当時の議論について御紹介いただき、どうもありがとうございました。こちらについて、社会保険は、一般的には、客観的に受給要件を満たした時点で受給権が発生するという仕組みが多いと思いますが、当時と現在とでは、カルテの保存の状況など、デジタル技術の進展などによっていろいろと変化があると思いますので、現在において技術的な障壁がどの程度あるのかということを精査して、ぜひ事後重症の場合の受給要件の発生時期について再検討する必要があるかと思いました。それが1点です。
もう1つは、今の議論にも関係してくるのですけれども、在老と似ている点、在老的なものを入れるかというお話がありましたけれども、今回お配りしていただいた資料2の19ページで、障害になった後に就労をしても障害基礎年金のみを受給することになると書いてありまして、この理解が正しいとしますと、今後、労働市場に障害者の方の参加を支援していくときに、今、在職老齢年金では、定期的に改訂をして、そのときに支払った保険料をすぐ受給に結びつけるという仕組みがあって、就労促進という観点からの仕組みが導入されていると思いますけれども、障害年金についてもそういう仕組みの導入が考えられるのかというところをお聞きしたいと思います。これは福島先生と百瀬委員の両方かもしれませんが、そういう仕組みがあり得るのかということをお聞きしたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
いかがでしょうか。まず福島先生から、いかがでしょうか。
○福島様 御質問をどうもありがとうございます。
嵩委員がおっしゃるように、確かに、就労インセンティブを持たせるという趣旨で、例えば、その都度、納めた保険料の納付実績を年金額に反映する仕組み、もう一歩踏み込んで、就労に向けた形で加算を行う仕組みを導入する余地はあるかと考えています。その意味では、多分1級加算をどうするのかということと併せて考えないといけない点かと思いますけれども、就労インセンティブを持たせる形での年金枠内での対応も考えられる余地はあるのではないかと考えております。
私からは、以上です。
○百瀬委員 私はむしろ逆でして、日本の障害年金の場合は、保険事故の発生時点を、今の制度では、初診日に置いています。その時点で保険事故が発生したと捉えていますので、障害基礎年金のみの受給者がその後に保険料を払ったとしても、障害厚生年金を支給することは、保険事故の発生時点に関する考え方を変えない限り、難しいと思います。また、障害厚生年金では、障害認定日までの被保険者期間が年金額の計算の基礎とされていますが、基本的には保険事故発生後の保険料納付で年金額を上げていくことは、保険の考え方から言えば、難しいと考えています。
○菊池部会長 嵩委員、いかがでしょうか。
○嵩委員 ありがとうございます。
確かに、先ほど百瀬委員がおっしゃった長期要件とかにも少し関係してくるのかなと思っていまして、積み立てたものを受給するという考え方を障害年金にも入れていくということが長期要件の導入のところの議論なのかなと考えたときに、初診日があって、既に保険事故が発生した後でも、そういう積み立てたものを受給するという考え方も、発想としてはあり得るかと思いましたけれども、確かに保険事故発生後については保険の原理からは難しいかと思いましたので、引き続き検討していきたいと思います。
○菊池部会長 ありがとうございます。
さらに、百瀬委員から、何かありますか。
○百瀬委員 今回、延長保護と長期要件の話をしましたけれども、お示ししたのはあくまでも論点です。私の資料でも反対する意見はあり得ると書きましたし、原委員のおっしゃったような意見もありますので、必ずこれを入れるべきと主張しているわけではありません。議論をしていただきたいと思っています。ただし、私個人としては、できる限り導入する方向が望ましいという思いはあります。
○菊池部会長 ありがとうございます。
今日の御報告は、福島先生は割と御自身のお考えを明確にお示しいただいたと思いますが、百瀬委員は、論点のご提示という形に重きを置かれたご報告でしたね。
○百瀬委員 事前に依頼をいただいた報告内容が課題と論点の整理ということでしたので、そのような形で今回は報告をさせていただきました。
○菊池部会長 そういうことでございます。
ほかには、オンラインの皆様から特にございませんか。
会場から、平田委員、お願いします。
○平田委員 どうもありがとうございました。
具体的な何かということではなくて、視点でとても大切だと思ったことがあったので、最後に申し述べさせていただきます。
福島先生が最後におっしゃいました就労支援との連携を図ることが、とても大切だということです。実際に障害者の支援をされている方にヒアリングなどをさせていただいて、よく聞くことなのですが、障害を持って、働いて、何がしかの収入を得て、自立に近づいていけることが、ものすごくその人に生きる力を与えていく、目の光が変わったり、発言が変わったりすることがよくあると伺っています。そうやって社会参加を促してみんなで支えていく世の中をつくるという観点で、とても大切だと思いました。
同様の意味合いから、基礎年金の3級の創設のお話が永井委員からあったと思うのですけれども、被用者が1号になっていることを考え、より軽い障害でも年金が支給されることによって、自分の収入と合わせ自立に近づいていけることを促すという点において、私も賛同いたします。緩やかに就労につながっていく仕組みを今後取り入れていけたらいいなと思いました。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
ほかにはよろしいですか。
是枝委員。
○是枝委員 永井委員から、具体的な提案として、厚生年金の任意継続という御提案があったのですが、これが百瀬委員の提案している延長保護の具体的な手段としてかなり有効な方法なのではないかと思いました。恐らく、永井委員が検討されているのは、老齢の部分だけではなくて、遺族と障害の機能の部分につき、一時的に被用者から離れる期間について保護を与えるものとして、厚生年金の任意継続被保険者というものを考えているのだと思うのですが、遺族と障害の機能だけであれば、月数百円程度の保険料でこの機能を保障することが可能だと思いますし、一時的に離職している期間について民間の生命保険会社に加入しましょうというのもかなり難しいので、公的年金として、例えば、健保の任意継続被保険者で申し込むのと同時に厚生年金の継続被保険者として申し込んで、月数百円の保険料を払って、遺族と障害の機能を引き続き持ったまま次の転職に備えるという制度は、非常によくできた制度設計なのではないかと思いました。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかには、委員の皆様からはよろしいですか。
今日は、お2人の先生から様々な課題についてお話しいただきまして、ありがとうございました。
最後に、お2人の先生から、今日出てきた発言に言い足りなかったことがあれば、ちょっと時間がありますので、1~2分でお話しいただければと思います。
まず、百瀬委員から、よろしければ。
○百瀬委員 最後にお時間をいただけることは予測しておりませんでした。
○菊池部会長 今、何か言おうとされたことでも。
○百瀬委員 今言おうとしたことは任意継続についてです。任意継続となった場合は、当然任意ですので、それに加入しない人が出てくる可能性は十分にあります。延長保護は、諸外国で実際に行われている例で、退職した後の一定期間に関しては、いわゆる被保険状態を継続するものであって、任意ではなくて、自動的に継続されていきます。この趣旨は、被保険者資格喪失後に保険事故が発生した場合でも、その時期が資格喪失からそれほど離れていなければ、社会保険の観点から保険給付の対象にするものです。任意継続を入れてしまうと、どうしてもそこに入らなかった人が、結局、今と同じように、例えば、発病が厚生年金被保険者期間中であるけれども、実際の初診日が退職後になってしまった場合に、やはり障害厚生年金の対象にならないので、任意継続を入れるよりは延長保護のほうが望ましいと思っています。
以上です。
○菊池部会長 ほかにはよろしいですか。
○百瀬委員 ございません。
○菊池部会長 ありがとうございます。
福島先生から、何かございますか。
○福島様 私からは、私の報告で最後に触れたところと関係しますけれども、確かに、障害要件を本格的に改めることが本来的には望ましい在り方で、例えば、稼得能力の具体的な制限度合いに着目して定める選択肢が望ましいとは考えておるのですけれども、なかなかそういうところに手をつけることは難しいので、もう1つの選択肢として、障害等級表の見直しに触れたということになります。これもなかなか難しいということは十分承知しておるのですけれども、ぜひ今後の見直しの検討をしていただけると幸いです。
私からは、以上となります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
2つ目の論点、障害年金でしたけれども、公的年金といいますと、どうしても老齢年金あるいは遺族年金に議論あるいは関心が行きがちで、障害年金は専門性が高いという面もあって、老齢年金に比べて関心は必ずしも高くないのかなと思いますが、今日、お2人の先生からいただきましたように、様々な検討課題があるということは皆さんで共有できたかと思います。
今回の改正議論の中で、遺族年金に関しては、既に各委員から様々な改正に向けた御議論がなされておりますが、それは社会の在り方や家族の在り方などが変化してきていることも背景にあります。今日の百瀬委員のお話で、障害年金を考えるに当たっても、そういった背景の変化を踏まえた議論が必要だというお話もございましたので、何らかの見直し、議論は必要という気がいたします。今日も、お2人で役割分担をしていただいたのかなと思いますが、今回の改正に向けた議論でやるべき部分とその後の中期的な見直しの議論でやるべき部分を、今後、仕分けをしながら、本質的な議論になると、当事者のいないところで決めてはいけないという大きな流れもございますので、場合によってはそういった場も設ける必要があるかと思いますが、今回どこまでやるのかということにも関わるとは思いますが、いずれにしても、本日の議論が障害年金の見直しに向けてのキックオフになるのかなと思います。引き続き、議論してまいりたいと存じます。
今日の全体を通じまして、玉木部会長代理から、何かございますか。
○玉木部会長代理 本日は、福島先生、百瀬先生、濃密な御報告をいただきまして、誠にありがとうございます。
今日の2つのテーマ、次世代育成支援の取組と障害年金の今日の議論を振り返ってみますと、公的年金保険という制度がいかに間口の広い制度であるかということがよく分かるかと思います。前者は、年金保険料を使った次世代育成支援の議論でした。これに対しまして、障害年金の議論は、優れて保険に関する議論という印象を強く持ったところでございます。特に、最近増えております精神疾患は、ゆっくり発生します。稼得能力の低下、その他、困ったことが、長い時間をかけて、しかも他人からはなかなか分からない形で発生していって、他人から分かるようになったときには、場合によっては、初診日の話であるように、手遅れということもあるかもしれない、助けることができないかもしれないというわけです。非常にきめ細かな配慮を要するという政策的ニーズのあるものだと、強く思ったところでございます。
また、今日やった2つのテーマが世の中において実際に意味を持つためには、お子さんをつくろうかどうかという判断をなさる方々に対して、こういった支援があるんだということのインパクトがどれぐらいになるかという情報、定量的な情報が伝わらないと、なかなか意味を持ちませんし、障害年金につきましては、非常に込み入った制度になっている部分が今は少なくともあるわけでございまして、この辺がいかにうまく伝わって、弱い立場の皆様に何らかの安心感を提供できるかどうかということになってくるわけでございます。一部の委員から広報についての言及がございましたし、事務局からも広報の現場の方が出てきておられますけれども、この辺の重要性を特に感じたところでございます。
以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
1点、忘れておりました。先ほど、駒村委員から、資料のお求め、あるいは、今分かることがあればといったことがございましたので、事務局から、お願いできますか。
○年金課長 幾つかお話がありましたので、議事録をもう一回精査して、対応させていただきたいと思います。
○菊池部会長 そういうことにさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、予定してございます議事は以上でございます。
今後の予定につきまして、事務局から、お願いいたします。
○総務課長 次回の議題や開催日程につきましては、追って連絡をいたします。
○菊池部会長 それでは、本日の審議はこれにて終了といたします。
時間内に終わりました。進行に向けた御協力を皆様から賜りまして、本当にありがとうございました。
本日は、どうもありがとうございます。