第3回社会保障審議会年金部会 議事録

日時

令和5年5月8日(月)16:00~18:00

場所

東京都港区新橋1-12-9新橋プレイス
AP新橋 4F D+Eルーム

出席者

会場出席委員
オンライン出席委員

議題

(1)第1回及び第2回年金部会における主なご意見について
(2)令和2年年金制度改正法等において指摘された課題について

議事

議事内容
○総務課長 定刻になりましたので、ただいまより第3回「社会保障審議会年金部会」を開催いたします。
 皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。
 最初に恐縮ですけれども、事務方の異動がございましたので報告いたします。
 私は、4月1日付けで年金局総務課長に着任しました小野でございます。よろしくお願いいたします。
 次に、本日の委員の出欠状況について報告します。
 深尾委員から御欠席の連絡をいただいております。
 また、武田委員、玉木委員、平田委員、堀委員、百瀬委員はオンラインでの御参加になります。
 御出席いただいている委員が3分の1を超えておりますので、本日の会議は成立しておりますことを報告いたします。
 続いて、資料の確認をお願いいたします。
 厚生労働省では、審議会等のペーパーレス化を推進しており、本日の部会もペーパーレスで実施いたします。傍聴される方には、あらかじめお知らせしておりますとおり、御自身のタブレットや携帯端末などを使用して、厚生労働省ホームページから資料をダウンロードして御覧いただくこととしております。
 本日の資料といたしましては
 資料1 第1回及び第2回年金部会における主な御意見
 資料2 令和2年年金制度改正法等において指摘された課題
 資料3 将来推計人口(令和5年推計)の概要
 を御用意しております。
 また、参考資料として、令和3年度公的年金財政状況報告のポイントと概要をお配りしております。こちらの参考資料につきましては、本日はお時間の都合で御説明いたしませんが、年金数理部会で公的年金の各実施機関などからの報告に基づき、公的年金の毎年度の財政状況を横断的に分析・評価し、その結果を取りまとめたものでございます。後ほど御参照ください。
 最後に、オンライン会議における発言方法について確認します。
 オンラインで御参加される委員におかれましては、会議中、御発言される際は「手を挙げる」ボタンをクリックし、部会長の指名を受けてからマイクのミュートを解除し御発言をお願いいたします。御発言終了後は、再度マイクをミュートにしていただくようお願いいたします。
 なお、本日の会議は、傍聴希望者向けに動画配信システムでライブ配信を行っております。
 私からは以上でございます。以降の進行は、菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、こんにちは。
 本日もお忙しいところ御参集いただきまして、ありがとうございます。本日は第3回となります。どうぞよろしくお願いいたします。
 カメラの方は、ここで退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○菊池部会長 それでは、本日の議事に入らせていただきます。
 本日は「第1回及び第2回年金部会における主なご意見について」、そして「令和2年年金制度改正法等において指摘された課題について」、以上2つを議題としております。
 まず、資料についてまとめて事務局から御説明いただき、その後、皆様から御意見をいただくという流れで進めさせていただければと思ってございます。
 順番が前後しますが、まず、資料3について先に御説明をお願いしたいと思います。その上で本日の御意見・御発言についてですが、先ほど事務局からマイクをミュートにして云々という御説明がございましたけれども、本日も特定の論点について詰めた議論というよりは、全体にわたる御意見を賜るという会でございますし、また、座席の配置につきましても、私と同じ並びの委員の皆様に挙手をいただいてもすぐに把握できないという事情がございまして、これは前回から事務局にはお願いしておったのですが、これは次回ぜひお考えいただきたいということで、委員の皆様と部会長、部会長代理が全体を見渡せるような配置をお考えいただきたいとお願いいたしまして、本日のところは順番に前回同様、御発言をお願いできればと思ってございます。前回は、あいうえお順の「あ」から参りましたので、今日は恐縮ですが、会場の原委員からお願いできればと思いますので、心積もりをしておいていただければ幸いでございます。
 それでは、お待たせいたしました、まず資料3から御説明をお願いいたします。
○審議官 順番が前後して恐縮ですが、資料3をお開きいただければと思います。
 左下の※にありますとおり、先月の26日に新しい将来推計人口を国立社会保障・人口問題研究所から推計して公表いたしました。その概要についての御説明です。
 上のオレンジ色の箱を見ていただきますとエッセンスが書いてありますが、この将来推計人口は2020年の直近の国勢調査を出発点とした推計になっております。5年ごとに実施しておりますが、今回はコロナ禍の影響がありまして、将来推計人口自体は1年遅れの6年ぶりの推計になっています。
 出生率につきましては、前回推計よりも下がっておりまして、1.44から1.36に低下しています。
 一方、前回推計よりも平均寿命が延伸して、外国人の入国超過数も増加するということで、後で見ていただきますが、総人口の人口減少は緩和しているという結果になっております。
 左側、推計結果を見ていただくと、人口・総人口については2020年の1億2615万人から、50年後の2070年には8,700万人に減少。高齢化も進行しまして、高齢化率は2020年の28.6%から一貫して上昇して、50年後の2070年には38.7%へと増加するという推計になっています。
 前回推計との比較でございますが、1つ目の○です。出生率については、先ほど見ていただいたように1.44から1.36に低下です。「一方で」と書いてあります、この概要版に数値が書いてございませんで恐縮ですけれども、平均寿命は前回、男性が84.95年だったものが85.89年、約1歳弱延伸していまして、女性は91.35年から91.94年に延伸しています。
 外国人の入国超過数の増加ですけれども、今回の推計では年当たり16万人入国超過する、毎年毎年16万人超過で入ってくるという推計になっています。前回はこの数字が7万人ですので、大きく増加するという見込みになっています。
 なお、一番下にあります※ですけれども、今回の推計に当たりまして、実績値は足元の数字を使って出発点にしていますが、長期の投影に際しましては、コロナ禍におけるデータは除外しております。
 右側ですが、その結果、日本の総人口について、前回推計と見比べますと前回が8,323万人ですので増えています。これは出生率が低下しているものの、主に外国人の入国超過数が増加していることによる影響で増えているものでございます。
 65歳以上人口、高齢化率についてはおおむね同水準ということでございます。
 生産年齢人口と言われています15~64歳人口も増加している。
 0~14歳人口は853万人から797万人に減少しているという結果になっています。
 2ページは、今回の推計結果を基に将来に向けて棒グラフで総人口の数をお示しし、折れ線グラフでそれぞれの高齢化率や割合をお示ししております。
 3ページが出生率についてですけれども、中位推計は先ほど申し上げた1.36ですが、高位推計と低位推計も推計しておりまして、それぞれ1.64と1.13で、薄いラインが前回の中位推計ですので、そこから今回の中位推計は下がっているというものでございます。
 最後の4ページ、出生数の動向ですが、近年かなり速いペースで低下が進んできております。今年の初めのころに80万人を割ったという数字が報道されていたと思いますが、それが昨年の数字です。ここで言うと76.6万人に相当する数字でございますが、外国のお子さんの数を入れたり入れなかったりで、数字が若干異なっています。
 大きいトレンドとしましては、足元もうちょっと下がった後なだらかに下がっていく。50年後には50万人を切って45.3万人まで減るという推計になってございます。
 説明は簡単ですが、以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、続きまして資料1及び2の説明をお願いいたします。
○年金課長 年金課長でございます。私のほうから資料1と2について御説明します。本日は、全般的な事項について御議論いただくということで、その参考となるようなものを御用意させていただきました。
 資料1をお開きください。第1回及び第2回、これまでいただいた主な御意見を取りまとめたものです。
 2ページが目次になります。様々な御意見をいただきましたので、私どものほうで何らか整理が必要だろうということで、事務局の責任で整理させていただいたものです。
 1点、事前に送付したものと異なっている部分がございまして、最初に「総論的な事項」を立てて項目を置いております。それ以外は「○○と年金制度の関わり」ということで整理しました。ある意味、年金受給者というのは高齢期に集約してまいりますので、受給という意味では全てが高齢期と関わってくるわけですが、特に現役期あるいは家族との関わりという視点でマル2、それから、マル3の項目を特出しして、それ以外も含めた形ということで「その他の高齢期と年金制度の関わり」ということで今回整理しております。
 どういう項目を挙げるか、あるいは表現や順番については、一つの整理でございまして、御意見があればまたアップデートしてまいりたいと思っております。
 それでは、以下内容に入ってまいります。3ページ以降です。
 ここでは今の目次の項目に従って置いております。なるべく先生方の御意見を生かすということで、重複等の意見もそのまま残した形で要約して挙げています。第1回、第2回の御発言が全て基になっておりますので、先生方も御存じの内容かと思っておりまして、本日は項目プラス簡単な御紹介にとどめてまいります。
 3ページは公的年金の役割、総論的な事項ですけれども、年金というのは給付の老後生活の柱になっている。特に、基礎年金についての御発言・御指摘が多かったので載せております。
 4ページ、公的年金と私的年金の連携について御意見をいただきましたので、そちらを載せております。
 その下は「制度の周知、広報」ということで、特に若い方の年金に対する不安や知識の不足、そこに分かりやすく伝える方法といった御指摘をいただいております。
 6ページは現役期と年金制度の関わりということで、まず最初に被用者保険の適用拡大(勤労者皆保険)でいただいた意見を載せております。企業規模要件であったり、非適用業種の見直しという指摘をいただきました。
 それから、真ん中から下ですが、その際に留意すべき事項ということで幾つかいただいていますので載せております。企業経営に与える影響であったり、適用業務の実効性あるいはデータを見ながら、ということでいただいております。
 7ページは続きでして、少し異なる意見になります。例えば、上から2つ目、3つ目は、週の労働時間20時間未満の短時間労働者への適用拡大ということでいただいております。
 それから一番下、マルチワーカー、副業という様々な働き方への対応ということで載せております。
 8ページは、現役期と年金制度の関わりですが、最初は子育て支援の関係ということで、国民年金の保険料免除の話あるいは諸外国の取組も載せております。
 その下、障害年金ということで御意見をいただいたものを載せております。
 9ページ、今度は家族と年金制度の関わりということで、遺族年金については多くの御意見をいただいたので分量も多くなっております。前回の年金部会ではそれほど深く取り上げていないこともありまして、一度時間をかけて基本的考え等の整理等の整理から行っていくべきではないか。時間軸の視点を持って実現してほしいという意見をいただいております。
 真ん中あたりは、遺族厚生年金の受給要件であるいわゆる男女差についてのご意見をいただいております。
 下のほうは、現在終身の支給についてどう考えるかというところ、あるいは家族形成をしやすくなるような制度設計の検討ということでいただいております。
 10ページは、女性の就労の制約と指摘される制度、いわゆる年収の壁でいただいた意見を載せております。女性の就労促進の観点から見直しが必要、年収の壁の問題には制度の誤解があるのではないかといった指摘をいただいております。
 それらの対応案ということで幾つか報道もされておりますけれども、それに対する御意見も下のほうにいただいております。
 11ページ、家族と年金制度の関わりのうち第3号被保険者制度についての御意見を載せております。真ん中あたりですが、育児や介護といった労働時間の制約を受け、低収入となっている方に限定してはどうかというような具体的な提案もいただいております。
 その他ということで、昔の旧法時代の給付や加給年金についての見直しについて指摘もいただいております。
 12ページからはその他の高齢期と年金制度の関わりということで、最初は高齢期の働き方です。年金制度は就業継続を後押しするような制度にすべきではないか、長期就労を促進する仕組みの拡充といった観点をいただいております。
 それから、在職老齢年金についての指摘もいただいております。
 その下、基礎年金の拠出期間延長ということで、拠出期間の45年化という点について載せております。
 13ページは、マクロ経済スライドの調整期間の一致ということで、これは後ほど資料2にも出てまいりますけれども、いただいております。
 年金生活者支援給付金については、基礎年金との関係、役割分担の検討ということでいただいております。
 以上、簡単ではありますが、資料1の御紹介になります。
 続きまして、資料2についてです。「これまで指摘された課題等」ということで、様々の資料についてこれまで既にお出ししたものも含めて、もう一度整理しております。
 1枚おめくりいただきまして目次ですが、大きく6点ございます。このうち半分ほどは第2回までの年金部会に提出させていただいたものですので、説明は割愛します。
 まず3ページから、最初は令和元年12月、前回の制度改正時に年金部会で整理いただいた議論の整理から抜いております。こちらは第1回の年金部会でお出ししたもので、3ページから6ページまでが、それぞれ項目について御指摘いただいたもので、これがいわば前回の年金部会からの宿題事項といいますか、引き継ぎ事項という形で位置づけられるのではないかと思っております。
 7ページは、新しい資料で平成27年の年金部会のもので、前々回の制度改正における整理になります。これを挙げた理由は、第3号被保険者制度について資料1にあったように様々な御意見をいただいた中で、これまでの年金部会はどう考えてきたのかという点で、一番まとまっているのが平成27年の整理でございます。その関係でお出ししました。
 内容はそこにあるとおりで、まず年金制度では、1人当たり賃金水準が同じであれば、世帯類型が異なっても負担・給付は同じ構造であるという前提の上で、どう考えるかということが書いてあります。
 次に、趨勢としては共働き世帯が増加しており、女性の就労促進が重要な課題である、そういう意味では、第3号被保険者を将来的に縮小していく方向性は共有したということで2番目の○の最後に記載がございます。
 他方で、その後の○ですけれども、多様な属性の方がいらっしゃるという意味では、まずは被用者保険の適用拡大を進めることで、最終的には被保険者制度の縮小・見直しに向けたステップを踏んでいくことが4番目の○に書かれております。
 その上で、下から2番目の○ですが、最後に純粋な無就業の専業主婦が残る。この方々に対してどうするかについては、そこにあるような幾つかの意見がございました。
 最後、いずれにしても年金制度を正しく理解してもらうための普及・啓発が必要だということでまとめられております。こういったものが今後議論する際には出発点として考えられると思っております。
 それから8ページ、ここも同じような趣旨で載せております。これも平成27年の報告書ですが、遺族年金の在り方についてまとめられております。遺族年金については前回の年金部会ではそれほど触れられておりませんので、これがいわば議論の到達点といいますか、これまでの整理と考えております。
内容ですが、遺族年金というのは、そもそも残された遺族の所得保障を行うものであるが、依然として男性が主たる家計の担い手であるという考え方を内包した給付設計となっていると。一方で、男女が共に就労していくことが一般化される中で、こういう社会の変化に合わせた制度見直しが必要であるという整理が前段にあります。
 真ん中あたり、共働きが一般化することを前提とした場合の在り方ということで、○が5つほど書かれております。例えば、先ほどもありました男女差はなくすということ、あるいは若い時代に養育する子がない家庭については、有期もしくは廃止するというのが将来的な制度の有様として考えられるという指摘がございます。
 他方で、直ちになくなると今それによって生計を立てている方がたちまち困るということもあるので、時間をかけて基本的な考え方の整理から行っていくのがよいのではないかという指摘をいただいております。
 遺族年金については資料1にあったとおり、たくさんの意見をいただいております。その議論をする上での一つの出発点になるのではないかということで御紹介させていただいたものです。
 続きまして、9ページは第1回の年金部会でお配りしたもので、前回の令和2年の改正法の検討規定、附帯決議の内容です。ご説明は割愛します。
 同様に13ページからは、前回の財政検証結果及びオプション試算の結果になります。これも第1回の年金部会でお配りさせていただきました。
 14ページが財政検証の見通しの結果の1枚でして、ケースIIIで2047年に50.8%に到達するというのが、このときの報告になります。
 15ページからはオプション試算についてです。オプション試算は、ここ何回かの財政検証で本体の検証とともに行っており、仮にこういう施策を行った場合にどういう影響があるかという試算になります。このときはオプションAとBを行っており、内容は記載のとおりです。
 結果について、16ページはまずオプションA、適用拡大を行った場合です。一番上ですが、適用拡大は年金の給付水準を確保する上でプラス、特に基礎年金にプラスであることを確認という結論が出ております。どれくらいプラスになるのかの結果は右に出ているとおりです。
 オプションBについては、18ページの一番上ですが、拠出期間の延長あるいは受給開始時期の繰り下げ選択、こういうものは年金の給付水準を確保する上でプラスであることを確認となっております。結果については真ん中のとおりです。これが前回の検証、オプション試算の結果です。
 19ページからは、財政検証後に行った「追加試算」についてです。21ページの右上にあるとおり、これは年金数理部会の資料として前回改正後の2020年12月に提出されたものですが、年金部会としては初めての配付になるので、少し御説明させていただきます。
 試算内容については、追加試算①から③まであり、追加試算①は、マクロ経済スライドの調整期間を一致させた場合、追加試算②はそれに加えて基礎年金の加入期間を45年に延長して、延長期間に係る給付に2分の1国庫負担がある場合、追加試算③は国庫負担がない場合ということです。結果はその下ですけれども、一番左の61.7%が2019年の現状です。その横の現行制度51.0%というのは、前回の財政検証時の50.8%に相当する数字で、2046年時点での所得代替率の見込みです。それが追加試算①となると55.6%、②の場合62.5%となって所得代替率が高まるという結果になります。
 その要因としては、数字の下に内訳で比例と基礎とありますけれども、いずれも基礎年金部分の代替率の数字が上がっている。26.5%が32.9%、37.0%と上がっていることが要因となって合計の増加にも寄与しています。
 22ページ、その際、積立金がどう変化するかの資料です。追加試算いずれの場合でも、積立比率は今の制度より上昇するという結果が出ております。そして積立金財源が増加が、将来の給付水準の確保に活用につながるという結論になっています。
 23ページは追加試算①について、賃金水準別に見た場合に、試算の前後で代替率にどういう影響があるかということを見たものです。縦に青い線が2本入っておりますが、左側の縦の線はいわゆるモデル年金の賃金でして、2019年の賃金水準で言うと矢印の右に記載のとおり、夫婦2人で44万円、1人当たり年収260万円になっており、これが、所得代替率51%のラインになります。
 右側のラインはそれが3.4倍になったところ、賃金で言うと夫婦2人150万円、年収で言うと890万円にあたりですが、先ほどの数字から3.4倍になっておりまして、このラインの方より左側、つまりほとんどの方については追加試算①の場合に所得代替率が上昇するという結論になっています。
 24ページは、同じように追加試算②あるいは③についても計算したもので、拠出期間の45年への延長が追加試算②では新しく加わる部分ですけれども、この場合には全ての世帯で所得代替率が上昇するという試算になっています。
 25ページ以降は、参考資料として幾つかつけられているもので、25ページは、マクロ経済スライドの調整期間の一致とはどういうものかという資料です。
 真ん中の2019年ケースIIIが今の状況でして、基礎年金と報酬比例部分でスライド調整期間がずれていますが、これを一番下のように一致させるということになります。
 26ページ、その効果ということで2つ挙げております。1つめは、厚生年金の所得再分配機能の低下を防止するということ、2つめは、基礎年金の水準が低下すると国家負担が低下するわけですが、それを防止することで総給付費の低下が防止される効果があるという資料になります。
 27ページも参考ということで、直接この試算に関係するものではありませんが、基礎年金部分の加入履歴を見たものです。基礎年金部分というのは1号、2号、3号全ての期間を合算して給付に反映されるわけですが、黄色いあるいは赤で囲っておりますけれども、様々な期間を有する方の集まりであるということです。例えば、学生のときは1号だった方は働くと2号被保険者になり、あるいは被扶養配偶者になると3号になるように、どんどん変わってまいりますので、様々な期間を持っているということです。そういう意味では、基礎年金を受給されている方の履歴は被保険者全体にまたがっていると言えるということで用意されたものでございます。
 28ページ以降は、全世代型社会保障構築会議の報告書です。これは前回の年金部会で報告させていただいたので本日は割愛します。
 最後32ページから33ページは新しい資料で、今年3月31日にこども・子育て政策の強化ついて試案が公表されています。これは全体的には子育て・少子化対策に関するものですが、その一部に年金に関する記載があるので御紹介として載せました。
 1つ目は、基本理念の「所得を増やす」という文脈の中で「いわゆる106万円・130万円の壁を意識せずに働くことが可能となるよう」ということでの表現が入っております。
 それから、多様な働き方、子育て両立支援という文脈の中で、「自営業・フリーランス等の国民年金の第1号被保険者について、被用者保険の取扱いも踏まえながら、現行の産前・産後期間の保険料免除制度に加えて、育児期間に係る保険料免除措置の創設に向けた検討を進める」ということでいただいております。こちらは前回改正法の附則でも指摘いただいており、そちらも踏まえながら、今後こども未来戦略会議で議論され取扱いも検討されると考えております。
 駆け足になりましたけれども、資料1と2についての説明は以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、先ほど申しましたように、本日全般的な事項について取り扱わせていただくということで、よろしければ順に御発言をお願いできれば幸いでございます。資料の内容でももちろん結構ですし、それ以外の事項でも結構でございます。例えばですけれども、遺族年金に比べて障害年金が取り上げられていないではないかという事項でも結構ですし、皆様から忌憚のない御意見を伺えればと思ってございます。
 それでは、早速恐縮でございますが、原委員からお願いしてよろしいでしょうか。
○原委員 御説明いただきまして、ありがとうございます。私からは資料1につきまして、前回の自分の意見の補足を主にさせていただきたいと思います。
 まず、2ページに項目があるのですけれども、目次の家族と年金制度の関わりのところに、加給年金、特に配偶者の加給年金ですが、これは年金の扶養手当とも言われますが、これを別途項目として立てていただければと思っております。前回も申し上げたのですが、現在ライフスタイルも多様化して単身世帯の増加や夫婦の形も様々になっていますので、特に配偶者加給年金については、夫婦の年齢差によって支給の有無や支給期間の長短が決まるものですので、公平性の観点からも見直しの検討の必要性があるのではないかと思いますし、また、現在共働きの世帯が増えていますし、今後、厚生年金に夫婦共に長く加入する世帯が増えていくものと思われますので、現在の社会に合っていないのではないかと思われます。
さらに言えば、よく一緒に説明するものに国民年金の振替加算というものがございます。御存じのところかと思いますが、加給年金の対象となっている配偶者が65歳になると、配偶者自身の基礎年金に加算され終身で支給されるものです。これはよく加給年金とセットで説明することが多いのですけれども、この振替加算については60年改正で第3号被保険者ができたときに、そのとき既に20歳以上であった人が3号の期間が短くなるということで加算され、額はその人の生年月日に応じて徐々に少なくなっていく仕組みなのですが、昭和41年4月2日生まれ以降の人には支給されなくなります。  
今後、振替加算は対象者がいなくなっていくのに対して、加給年金は残るということで、確かに国年法と厚年法で法律が異なりますので、制度の創設背景や意味合いは異なるかもしれませんが、このタイミングで配偶者の加給年金についてもその役割は果たしたと言えるのではないかと考えております。ただ、加給年金自体は老齢だけではなく、配偶者だけでもないので、それぞれについての議論も必要かと思います。細かい話だと思われるかもしれませんけれども、実際にこの制度はいろいろなところに出てくるものですので、一般の方からの質問も多く、行動や選択、例えば繰り下げの選択などにも影響を及ぼすところですので、検討の項目として加えていただきたいと思っております。
 2つ目ですけれども、私の前回の発言で、12ページに経過的加算についてのコメントをしたのですが、3つめの・と5つ目の・で、現在の法律では月数上限があるので、例えば40年以上、そして60歳以上も働いた人については、それを超えた分が反映されない仕組みとなっているわけですが、ただし、それは基礎年金の拠出期間が仮に40年から45年に延長されれば、厚生年金からの経過的加算部分は基礎年金1階部分として支給されるようになると思われますので、その場合は経過的加算の問題はある程度解消されるのではないかと思っておりますし、いずれにしても60歳以上で働く人が増えていく中で、その分の給付が増える仕組みは必要ではないかと考えます。前回の補足です。
 それから、遺族年金についてかなり意見が出たのですけれども、私の前回のコメントが中途半端だったので補足します。時間をかけるということだと思うのですが、まず前回の意見の中、あるいは以前の議論の整理の中に、有期給付にしてはどうかというものがあったと思うのですけれども、追加意見をさせていただければと思います。
 遺族厚生年金については、短期要件と長期要件があるのですが、それで言うと短期要件、在職中の死亡についてということになるかと思います。具体的には、先ほど説明もありましたけれども、子のいない現役期の遺族厚生年金については、有期給付の可能性を探っていくという方向性としてよいのではないかと思います。
 例えば、平成16年改正で夫の死亡時30歳未満で、子のいない妻に対する遺族厚生年金については、今、原則5年の有期給付となっていますので、そのぐらいの期間なのかどうかはもちろん今後検討が必要ですけれども、男女同一の要件としていくという方向性は考えられるかと思います。ただし、その後の就業がうまくいかない場合もあるかと思いますので、そういったケースを想定して高齢期の所得保障の検討が必要ではないかと思います。例えば、遺族厚生年金の支給停止解除や老齢厚生年金との差額支給といったことも65歳になった以降の所得保障は何らか必要かと思います。
なお、長期要件に該当する65歳以上で老齢厚生年金を受給している人が亡くなった場合については、現行制度のままでよいのではないかと思います。
 もう一点ですけれども、子のいない現役期の人でも中高齢の遺族配偶者については、その後の就業の難しさはある程度残ってしまうのではないかと思います。そこで、現在の遺族厚生年金の無期給付が、実質妻が30歳以上、夫が55歳以上で支給は60歳からとなっていますけれども、これを中高齢期の一定年齢以上に対する無期給付として検討してもよいのではないかと思っております。段階的に時間をかけて男女差を解消していく方向で、最終的に何歳以上にするのかも含めて、無期給付自体をどうするのか、一定年齢以上の中高齢期のところで残していくのかも含めて検討していく必要があると思います。
 最後にもう一点だけすみません、広報のところですが、生涯を通じた年金教育の取組とありますが、そこにぜひ新入社員や社会人の若手社員の取組をツールやコンテンツなどでいいので加えていただきたいと思います。というのは、会社に入社したときに、確定拠出年金の企業型を導入している会社ですと、わりとすぐに加入者教育、つまり投資教育が行われることがあるかと思います。そうなると、公的年金制度に触れる時間は投資教育の中にはあまりないと思われますので、新入社員の人達が、老後の資金は自分で積み立てていくものだという意識が強くなってしまうのではないかとやや危惧しております。そういった意味で、公的年金の意義や役割についてはもちろんですが、給与明細をきちんと見ていれば、保険料の負担は感じているでしょうが、それぞれこういう給付があるということを年金・社会保険含めて確認してもらう機会は必要だと思います。生涯を通じた年金教育といった意味で取り組めるといいのではないかと思っております。
 以上です。長くなって申し訳ございません。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、永井委員、よろしいでしょうか。
○永井委員 ありがとうございます。私からは2点意見を申し上げたいと思います。
 1つ目は社会保険の適用拡大ですが、第2回部会におきまして、私から現行制度の正しい理解を促進することや、企業規模要件の速やかな撤廃、個人事業主に係る適用業種の見直しとともに、雇用保険の加入要件なども踏まえた労働時間要件の引き下げの検討の必要性などを意見として申し上げました。その後、報道では、政府が週20時間未満の短時間労働者等も雇用保険に加入させる検討に入ったと報じられています。雇用保険の加入対象が週20時間未満の短時間労働者等に拡大した場合、厚生年金保険についても労働時間要件の引き下げについて検討すべきと思っております。労働組合の現場では、就業調整している方から「雇用保険に入りたかった」といった声もあると聞いております。雇用保険については労働政策審議会の議論になると思いますが、そちらの動向を踏まえつつ、適用拡大により新たに対象となる労働者数などのデータを提示いただきながら、本部会においても議論を進めていただきたたいと思っております。
 2点目につきましては、高齢期の働き方と年金受給の在り方についてです。
 この間、高齢期の就業率の上昇に伴い、受給開始時期の選択幅の拡大が実施されてきており、これまでの部会でも挙げられていたとおり、自身の人生設計に合わせて公的年金の受給期間を選択できる制度や高齢者の長期就労を促進する仕組みの重要性は理解しております。
 一方で、受給開始年齢については、現在も65歳の年齢引き上げの途上にあること、現行制度を前提に老後の生活を設計している現役世代に多大な影響を及ぼすこと、さらには、公的年金制度に対する被保険者の信頼を損ね、国民年金保険料の納付率を低下させかねないことなどから、引き上げを実施すべきではないと考えております。
 また、在職老齢年金については標準報酬が要件となっていますが、賃金以外の収入がある方との公平性を確保するためにも、事業所得、家賃、配当・利子など総収入をベースに年金額を調整する制度に改めるといったことも検討すべきだと考えております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、嵩委員、お願いいたします。
○嵩委員 御説明どうもありがとうございました。私からは、3点になります。
 1つは、モデル年金については、今回の資料2にもありましたけれども、年金の給付水準を図る指標として長年使用されてきたため、年金給付の経年的な推移を把握するためには今後も意義のある指標だと思いますし、また、現行法では年金の給付水準の下限措置を設定する際にも用いられておりますので、直ちにこれを変更するのは難しいというか、できないと思いますけれども、共働き世帯や単身世帯などが増加している現状に合わせて、もっとリアルな年金の給付水準を知る目安として、多様なライフスタイルを想定したパターンを提示する形で広報していく、そして、それに基づいて政策決定を判断していくことが必要かなと思いました。
 2点目は、遺族年金の意見がたくさんあって、また遺族年金の話になって申し訳ないですけれども、遺族年金については今回いろいろと意見が出されていまして、今後この部会で本格的に在り方や根本的なところを踏まえて議論されることになると思われます。その際に、遺族年金の趣旨や目的とも関係してきますが、例えば、DV被害者の方などの問題状況にも照らして、現在、生計維持要件などが死亡時の一点だけで審査する仕組みになっておりまして、ただ、運用ではかなり柔軟に判断されておりますけれども、そういったいろいろな状況にも照らしながら、死亡時一点で審査するという在り方も踏まえて、遺族年金の趣旨・目的などの見直しもしていく必要があるのではないかと思っております。
 3点目は、厚生年金の再分配機能の維持・強化が重要だと思うのですけれども、その関係で、標準報酬月額の上限について見直すこともあり得るのかなと思っております。厚生年金の標準報酬月額は健康保険と比べて低く設定されておりまして、少なくない被保険者が上限のレンジに至っているという現状があります。これについては、厚生年金の場合には標準報酬月額が保険料に反映されるだけではなくて年金給付額に反映されますので、標準報酬月額の上限を低めに設定することついては、現役世代の所得の格差を年金の格差として持ち越さないという意義もあり、そういう意味で低めに設定されているというのもあるかもしれませんが、他方で、厚生年金は垂直的な取得再分配機能も働いていますので、基礎年金と報酬比例の給付をするということで垂直的な所得再分配機能も持っていますので、上限を引き上げることによってその再分配機能を強化することにもつながるのではないかと思います。
 また、引き上げることで、再分配機能は充実しながらも高所得者の給付の充実にも資すると思いますけれども、この点については、私的年金との役割分担などの議論も踏まえて検討する必要があると思いますので、私的年金との連携という点も踏まえたうえで、上限をどうするかも検討が必要かなと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、たかまつ委員、お願いできますでしょうか。
○たかまつ委員 よろしくお願いします。私は、若者の政治参加の部分が専門で、年金については専門ではないので、今日は若者が年金についてのどのような不安を持っているのかという点について、主に3点お話しさせていただきたいと思っております。
 1つ目は、社会保障の教育を充実させることが私は大事だと考えています。前回も発言させていただいて、概要には広報の中に位置づけていただいたのですけれども、私は教育から考えていかないといけないのではないかと思っています。
 若者は年金に対して漠然とした不安があります。私は年金について今回、部会の委員に就任したことと、若い人の意見をくださいとTwitterで意見募集したところ、年金不安について多くの声が集まりました。例えば、実際に幾らもらえるのか分からないところが不安ですという意見や、年金要らないから自分で積み立てさせてほしい、政府自体が信用ならない、シンプルに幾らもらえそうなのか学校で教えるべかきと、それも一種の主権者教育だと思います。年金はなくなりません(もらえる金額が1円かもだけど)みたいな方便は早くやめた方がいいかとなど、私と同世代の人の中には、会社の新卒研修で年金がどうなるか分からないから貯金したほうがいいという説明を受けたという人もいました。本当に全体的に解約したいとか、破綻するから自分で積み立てたいという意見が中でも多くありました。年金をしっかり調べると破綻するという考えは考えにくいと思います。若者については、そのように考えている人が多いということが私は非常に問題ではないかと思っております。
 だからこそ、年金という本来なら安心が提供されるべきセーフティーネットとしての機能を果たしていないことが非常に問題だと思います。そのような将来不安から結婚や出産をためらうようなことになったり、年金を初め様々な社会保障があるから安心してチャレンジできるという社会が本来あるべき姿だと思います。さらに、若者には自分が将来どのくらい貯金して備えればいいのか、どんどんお金を使ってほしいのか、貯金と支出のバランスが分からない人も多いと思います。もちろん、これは個人の選択の話だと思いますが、社会保障の理解を深める主権者教育や自分の資産形成やライフプランを考える金融教育など、もっともっと具体的に数字が分かるようなことを広報という位置づけだけではなく、教育としてもやっていくことが大事だと思っています。
 2つ目は、子どもの声や若者の声を聞く場をつくっていただきたいということです。こども基本法が今年4月から施行されまして、子どもの施策については子どもの声を聞くことが国や地方自治体には義務付けられました。年金制度も今の子どもたちにも当然、将来関わるものです。子どもや若者も議論に参加するような場をつくる必要があると考えております。私も20代として、この部会で若い人の意見をできる限り代弁するようにという意識ではもちろんいるのですけれども、私だけが20代全体の意見ではないですし、より多様な若い人の意見や先ほどの不安みたいなものをぜひ皆さんともシェアしたいと思っていますので、そのような場があるとうれしいなと思っております。さらに、政府の広報の資料や具体的に教科書などを見てもらって、どういうところが具体的に分からないのか、そのような意見をもらうような機会があるといいかなと思いました。
 3つ目は、先ほどもお話があったのですけれども、若者は副業など多様な働き方をしていますが、現状それに対応していないことが問題だと思っています。若者にとっては例えば、自分がフリーランスになったら、自営業者になったら、副業したら、結婚したら、学び直しをして1回働くのを辞めたら、休職したら、その際自分の年金がどうなるかまで分かっている人は少ないと思います。モデル年金が今の家族間に合ったものではないと思いますので、モデル世帯を今の家族に合わせた新しいパターンを何パターンか提示されるだけでも、自分はこのパターンに近いから将来このくらいもらえるのかな、では、年金が破綻するという考えではなく、自分のライフプランはこういう形にしていこうかなという具体的な自分の人生設計につながるのではないかと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、島村委員、お願いします。
○島村委員 よろしくお願いいたします。私からは、遺族年金についてと障害年金について述べさせていただきたいと思います。
 まず、遺族年金については、既に男女差の撤廃や有期に関して議論が出てきているかと思いますが、それにも関連して年収850万円という生計維持要件についても議論していきたいと思っています。年収の引き下げについての御主張もあるかと思いますが、私自身は有期化とセットにして、年収要件を撤廃してもよいのではないかと考えています。というのも、たとえ高所得者であっても、これまで生活を共にしていた配偶者がお亡くなりになれば、生活が激変することが考えられるからです。死亡以前のように働くことができなくて、それまでの所得を維持できないこともあり得ますので、配偶者の死亡に関しては所得に関わらず生活を立て直しするというのも一つの考え方であるように思います。
 この生計を維持するという要件については、これまで主として金銭面で評価がされてきたかと思いますが、2012年の社会保障・税一体改革では、第3号被保険者が死亡された場合にも遺族基礎年金が支給されることになりました。経緯としては、死亡時に第3号被保険者であっても、その前には保険料を納付していたこともあったのだからというところが主に考慮されたかと思いますけれども、生計維持という要件が金銭以外、具体的には家事をしていただとか、育児をしていたというような貢献によっても満たされる可能性を示唆しているようにも思われ、年収要件を今後も維持していくのかというのは議論する価値があるのではないかと考えています。
 高所得者の制度に対する信頼というかモチベーションを維持しつつ、亡き配偶者の制度に対する貢献を評価する意味でも、遺族年金については有期にした上で、年収要件を取り払うことも案として議論させていただけるとありがたいです。
 そしてもう一点、冒頭に菊池先生からも御指摘がありましたが、障害年金については百瀬先生が御指摘くださった以外あまり御指摘がなかったかと思います。しかし、このことは障害年金について問題がなく改正の必要が全くないということを意味しているわけではないと思っております。既に指摘のあった初診日の要件のほかにも、障害年金の目的をどう捉えるのか、医学モデルなのか、社会モデルなのかも含めて、何のために障害年金は支給されるのかを認定基準との関係も含めた上で議論する必要がありますし、その際にはそのほかの障害者施策との関係性についても視野に入れた上で議論していく必要があるのではないかと考えております。
 年金部会で議論する場合には、障害年金を専門に御研究されてきた先生方の問題意識をぜひともお伺いできる機会をつくっていただけるとありがたいと思っております。
 私からは以上です。ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、佐保委員、お願いいたします。
○佐保委員 ありがとうございます。私からは、3点について意見を申し上げるとともに、1点質問をいたします。
 1点目は、資料1について、基礎年金の給付水準、マクロ経済スライドの調整期間の一致、基礎年金の拠出期間延長などの意見が列挙されていますが、あくまでも調整期間の一致や拠出期間の延長は、基礎年金の給付水準の引き上げのための選択肢の一つであり、これらの方策を実現しなければ給付水準の引き上げが実現しないというものでもないと理解しています。前回も申し上げましたが、基礎年金の給付水準の低下を防ぐためには、限られた選択肢に限定することなく、国庫負担割合の引き上げなど、広い視点で議論すべきであることを改めて強調しておきます。
 2点目ですが、年金生活者支援給付金について、現在は保険料納付済期間や免除期間に受給額が比例する仕組みとなっていますが、防貧機能がしっかりと働いているのか検証が必要と考えます。連合は、現行制度を大幅に強化した生活手当を導入し、保険料納付済期間に比例した加算と同時に、無年金者等に対しても最低年金額を保障することを掲げています。この間も意見として挙げられていますが、所得再分配機能の強化の観点も踏まえ、給付額の増額、保険料を支払うことができなかった人への対応など、低所得者加算の在り方について検討すべきと考えます。
 3点目は、制度の周知、広報についてです。4月28日に連合総合生活開発研究所(連合総研)が公表した第45回勤労者短観の中で、就業調整についての意識に関する調査結果が報告されました。それによれば、就業調整をしている人の43.1%が年金額への影響を「あまり知らない」または「知らない」と回答し、就業調整をしていない人も含めた全体では63.4%の人が「あまり知らない」または「知らない」と回答しています。就業調整による年金額への影響について、後に年金を受給する場面になって気づいても遅いので、年金制度を正しく理解するための周知啓発をさらに強化すべきと考えます。
 続いて、1点質問します。資料2では、令和元年財政検証の追加試算の結果を掲載いただいています。21ページには、調整期間一致や拠出期間延長の場合の所得代替率の試算結果が示されておりますが、追加試算②と③の違いは、60歳以降の延長期間に係る給付に対する国庫負担の有無となっています。今後の議論やそれに基づく法改正により、仮に拠出期間が延長された場合、60歳以降の延長期間に係る給付に対する国庫負担がないという選択肢は妥当性がなく、国民の理解を得られないと考えますが、事務局としての考えをお伺いいたします。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 1点御質問ということですが、事務局からいかがでしょうか。
○年金課長 追加試算の御質問をいただきました。この当時はこういう前提を置いて試算したものだと理解しており、2と3の違いは御指摘のとおり、45年加入した場合の国庫負担の有無の違いです。現行制度では、国庫負担2分の1というのは基礎年金給付の半分が国庫で賄われるという仕組みですから、これをこのまま単純に延長すれば当然国庫負担は2分の1つくということになりますし、そうでない場合にはそういう改正をしなければいけないということです。いずれにしても、この当時こういう試算をしてみたということで、そもそもこういうことをやるかどうかも含めて今後の議論になると考えております。
○菊池部会長 佐保委員、いかがですか。
○佐保委員 ありがとうございます。仮に拠出期間の延長という選択肢をとった場合でも、全ての期間に係る給付に国庫負担をつけるべきと考えております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、是枝委員、お願いいたします。
○是枝委員 私からは、まず遺族年金について、次に外国人と年金について、その後、年金の持続可能性と世代間の問題についての3点、基本的な考え方とマクロ経済スライドの名目下限、調整期間の一致の合計5点について意見を申し上げさせていただきます。
 まず、遺族年金についてですが、島村委員が提唱された遺族厚生年金の改正の方向性に賛成いたします。今回の資料では資料1の9ページの8つ目に当たりますが、遺族年金は最終的には親が亡くなった場合に未成年の子の生活を支える給付と、配偶者の死亡直後の生活の激変を緩和する給付の2本立てに整理していくのがよいと思っております。その上で、本日島村委員から御発言のあったとおり、年収850万円の生計維持要件については撤廃することに賛成いたします。生計維持について、共働きでともに家事・育児を回す中で年収850万円稼いでいたとしても、シングルマザーやシングルファザーになった上でその収入を稼げるかというとまた別の問題ですので、生計維持要件の撤廃には賛成いたします。
 女性の低年金への対応については、島村委員は死亡時年金分割を提案されていますが、私としては二分二乗のほうがよりよいと考えております。二分二乗は年金受給開始時に夫婦で年金を分割するという考え方で、この改正を行うと夫婦の収入の比率がどのような割合であっても、自分の収入の増加が配偶者の死後も含めて着実に自分の年金の増加に結びつく形となります。より働き方や家族構成に中立的な制度になるかと思います。
 他方、二分二乗では現行と比べると、専業主婦世帯などの夫婦間の収入差が大きい世帯について、夫婦の一方が亡くなった後の保障が弱まることとなります。しかし、男女の働き方、婚姻の有無も含めてライフスタイルの選択肢が広がる中で、専業主婦世帯などの夫婦の収入差が大きい世帯にだけ特別な保障をする必要性は薄れているように思います。今すぐ変えられるわけではありませんが、20~30年の時間軸で議論させてください。
 次に、外国人と年金について申し上げます。社人研の将来推計人口では、およそ50年後に人口の1割ほどが外国人となるという見通しが示されました。日本の公的年金は日本人だけのものではなく、国籍を問わず日本に住む全員が保険料を支払い、給付を受けるべきものです。これまでは20歳から60歳まで国内に住み、40年間国民年金や厚生年金に加入することを前提に制度を考えることが多かったですが、今後は現役期の途中から日本にやってくる人のことも十分に考えて制度設計を行う必要があると考えております。
 続いて、年金の持続可能性と世代間の問題についての基本的な考え方です。本日の資料1、13ページの下から2つ目、第2回年金部会でたかまつ委員が発言した、年金制度を持続可能なものにするため、今余裕がある人の分はカットして将来世代に回すという部分について意見を述べます。この部分については、たかまつ委員が自身のTwitterでも発信し、大変大きな反響がありました。批判を恐れずオープンに社会に発信し、より多くの人に年金制度の議論を知ってもらおうとする姿勢に、まず敬意を表します。
 その上で、年金制度を持続可能なものにするため、今余裕がある人の分はカットして将来世代に回すという主張は、若い世代の年金制度に対する意見の代表例だと思います。ただし、この主張を取り扱う際には2点注意すべき点がございます。この2点については、たまかつ委員だけでなく、若い世代がなるべく納得できる形で年金部会の議論を進めていく上で非常に重要な点ですので、ほかの委員の先生方については御存じのことばかりとなるかと思いますが、少々お付き合いください。
 1点目は、現状において年金制度が持続可能でないとする評価が妥当なのかということです。確かに、本日の資料2の14ページにあるとおり、2009年財政検証では今後の経済見通しによっては、今のままでは将来にわたって所得代替率50%を維持できない可能性もあり、何らかの制度改正を行い、将来の年金給付水準を引き上げる必要がある、特に基礎年金を引き上げる必要があるかと思います。もちろん、次の財政検証に向けて経済見通しを更新しなければなりませんが、悪い話ばかりではなく、出生率の低下などを含めても年金制度そのものの持続可能性が危ぶまれるような状況ではないというのが私の認識です。もし、たかまつ委員として異なる経済見通しに基づいて年金制度が持続可能でないと評価するのであれば、ぜひその根拠を教えてください。また、大きな認識の相違がないのであれば、今後は「年金制度を持続可能にするため」ではなく、「より将来の年金給付を引き上げるため」や、もしくは「大きく減らさないようにするため」というような形での伝え方をしていただければと思います。
 2点目は、社会保険方式の年金制度は拠出に応じた給付を受けられるのが大原則であり、過去の拠出実績に基づく年金給付額をいたずらにカットすることはできないということです。もちろん年金制度に再分配を組み込むことはできますが、その際にはどのような問題に対処するために、どのように給付を調整していくべきかを丁寧に制度を設計して議論して、国民に伝えていかなければなりません。たかまつ委員自身、Twitterで若者は専門家に比べ知識が劣り、現状を語れるが政策まで語れないということを課題に感じていると発言されていました。私としては、年金制度の専門家としては若輩者ではありますが、年金部会の委員の中で恐らく2番目に若く、たかまつ委員ほどではないにしても若い世代が直面している現実や経済社会の変化の兆しをくみ取りやすい立場にいる者と思います。たかまつ委員自身が感じている問題意識は、これからもぜひ積極的に発言してください。その上で、私も賛同できる部分については具体的な政策として提案させていただきます。
 世代間の視点で見たときに、具体的な提案を2つ挙げさせていただきたいと思います。
 1点目は、マクロ経済スライドの名目下限についてです。現在の日本の年金制度では、世代間の再分配の仕組みとしてマクロ経済スライドが既に組み込まれております。大前提として世界のどの国の年金制度でも少子高齢化が進めば年金の財政は厳しくなります。そして、ほとんどの先進国で大なり小なり少子高齢化が進んでおり、年金財政の調整を余儀なくされております。その手段としては、マクロ経済スライドのほかにも主に保険料率の引き上げや支給開始年齢の引き上げなどがございます。しかし、これらは既に年金を受給している人には痛みがなく、これから保険料を払う人、これから年金を受け取る人にだけ痛みを押しつける形となります。日本では2004年の制度改正により、今後は現役世代や将来世代だけに痛みを押しつけるのではなく、既に年金を受給している世代も含めて全ての世代で平等に痛み分けをしていこうと決め、その自動調整の仕組みとしてマクロ経済スライドを導入いたしました。このような自動調整の仕組みはスウェーデンにはありますけれども、アメリカやイギリス、フランスにもなく、日本の制度としては世代間の痛み分けの仕組みが非常によくできているものと思っております。このマクロ経済スライドは、2014年まで機能しませんでしたが、その後の制度改正や物価の基調が変わったこともあり、現在はおおむね機能しております。マクロ経済スライドが機能する限り、世代間の公平性はそれほど大きな問題にはならないと私は考えております。とはいえ、もし再びデフレが長期継続した場合には、現在の現役世代や将来世代だけに痛みが押しつけられる形となりますので、私としてはマクロ経済スライドの名目下限の撤廃を主張させていただきます。
 2点目は、マクロ経済スライドの調整期間の一致についてです。マクロ経済スライドの調整期間の一致を行うと、所得再分配や国庫負担の水準を変えるだけでなく、世代間の再分配も行われることとなります。この改正を行うと報酬比例部分のマクロ経済スライドがより長期間行われることとなるため、大体2025年から2035年ごろの年金額が現行制度よりも少し減る形となります。もちろん、その後は基礎年金の水準が増えることで多くの方は現行制度よりもトータルの年金受給額が増えますが、2035年ごろまでにお亡くなりになる方にとってはマイナスの影響だけを受けることとなります。2004年当時に制定したマクロ経済スライドによる世代間の痛み分けは、当時の想定より8年ほど遅れてしまいました。このため現在の年金の所得代替率は当時の想定より高くなっており、その分だけ現役世代や将来世代の年金の所得代替率が当時の想定より低くなる見込みとなっております。マクロ経済スライドの調整期間の一致は、なるべく2004年当時の想定に戻そうとする案だと評価することもできます。私は、マクロ経済スライドの調整期間の一致には大筋では賛成です。ただし、このような偏りが生じてしまった要因や改正による影響を分析する必要がありますし、手段としてもより大胆な適用拡大を進めるなど、ほかに方法がないのかをまだまだ議論する必要があると思っております。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、駒村委員、お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。5点ほどございます。
 まず、1つ目ですけれども、先ほどもたかまつ委員からお話がありましたけれども、年金の意義をどう伝えるのかということで年金教育の重要性でございますが、政府は金融リテラシーに関する新しい教育の仕組みをつくるということでございますので、この中には当然、社会保障、年金リテラシーを一緒に組み込んでいただきたいと思っております。
 今日、御紹介があった寿命の伸長も説明の仕方によっては若い世代に将来のことを考えていただく、いい手がかりになるかと思います。私も、20代の学生時代はほとんど年金については関心を持たなかったわけですけれども、今はその研究者になっております。どうしても若いうちは、遠い将来のことについてなかなか思いをはせることはできないわけですけれども、今日の発表された長寿の数字、平均寿命2070年で男性86、女性92ですけれども、これを中位寿命でみれば男性87、女性94。さらに最新死亡年齢、一番死亡が多い年齢は人口部会の統計から推計すると、男性92、女性96です。つまり、現在20の方は2070年くらいを視野に入れるわけですけれども、すごい長生きをするのだということをよく理解いただいて、そこまで長い人生の中で生きている限りずっともらえる年金がどういう意義があるのかを考えていただくいい情報になるのではないかと思います。
 2つ目、外国人に関して今日、人口推計に与えるインパクトの話があったと思います。従来推計よりも9万人多く入ってくるという前提でございます。この9万人は毎年出生率が80万人を切るような状態になっている中で、若い世代が9万人ずつ2040年まで入ってくるというのは非常に大きなインパクトがあり、2070年時点で見ると、現役世代の年齢の12~18%を日本人ではないとされている居住されている方の割合で占めると。2017年推計の6~10%ほど上に出てくることになります。こういった外国人の方たちが労働者として経済成長にどう寄与していくのか。あるいは労働者としてカウントした場合に、年金財政にどう関わっていくのか、加入行動はどうなのか、国際年金協定上の関係はどうなっていくのか、脱退一時金はどうなっているのかといったものを併せて考えていかないといけない。これはこれから財政検証が行われると思いますので、その中でどう組み込んでいくのか、もし考えがあるならば教えていただきたいと思います。第13回、過去の年金部会では外国人の年金加入に関して非常にいい資料が出ておりますので、ぜひ、そのバージョンアップをしていただきたいと思っております。
 3番目です。当然、大胆な適用拡大を今、是枝委員からもあったように進めていくべきだろうと思います。例えば、厚生年金の保険料の下限8.8万円は、国民年金保険料とのバランスで設定しているような説明が行われていますけれども、これは年金財政上の基礎年金拠出金の構造から考えて、本当にそれを正当化できるような構造になっているのかどうかを疑っております。もっと大胆に下げられるのではないかと思っております。
 4番目、これも是枝委員から話がありました、マクロ経済スライドの基礎年金、厚生年金の同時停止の部分ですけれども、これについては仮に外国人の影響によって高齢化率、人口減少、労働力人口の減少がそれほどでなくても、2025年には第3パターンでは厚生年金のマクロ経済スライドは終わってしまいますので、これは今回の部会でぜひとも深めた議論をやっていただきたいと思います。
 5番目はお礼でございます。年金数理部会に属しておりますので、参考資料1-2を配付いただきましてありがとうございます。この中の36ページには、毎年行われている年金財政の健康診断の結果が表示されています。その健康診断と5年に一度の大診断の関係性がよくまとまっていると思いますので、委員の皆様にもぜひ御覧になっていただきたいと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 そういえば、私も前に数理部会に属させていただいておりましたので、そのときには年金部会の場で御報告いただくこともあったかなと今思い出しまして、必要に応じて今後、数理部会での議論をこの場で御紹介いただくこともやっていただいていいのかなと今改めて思ったしだいですので、事務局で、私は中身を把握しておりませんが、必要に応じて御検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは、小林委員、お願いいたします。
○小林委員 資料1では、私の意見を含めて、分かりやすくまとめていただきまして、誠にありがとうございます。今回、私から、2点ほど意見を申し上げさせていただきます。
 1点目は、在職老齢年金制度の見直しについてです。資料では、資料1の12ページ、もしくは資料2の17、18ページ等々に記載が若干ございましたけれども、前回申し上げましたとおり、中小企業は人手不足による人材確保に苦慮しており、意欲・能力のある高齢者には定年を迎えた後も働き続けていただきたいと思っております。その場合、必ずしも現役時代と同じ働き方ということでなく、勤務時間や給与を含む労働条件を労使双方で調整し、無理なく働いてもらうことも可能だと思っております。しかし、働いた収入が多いと年金受給額が減ることがあることから、働く意欲自体はあったとしても、その従業員が就労継続を希望しない、もしくは勤務時間を短縮する傾向がございます。これは、在職老齢年金制度が従業員の就労意欲と中小企業の人手不足の両方にマイナスの影響を及ぼすケースと言えます。
 年金財政、ひいては将来世代の受け取り見込額への影響を踏まえつつ、在職老齢年金制度の見直しについて丁寧な議論を行うことが重要と考えます。そこで、議論を深めるため、65歳以上の高齢者で①、働かずに年金を満額受給している人、②、就労中だが年金を満額受給している人、③、就労中で在職老齢年金制度により年金受給額が減っている人、④、就労中で年金受給開始を70歳以上もしくは75歳以上にまで延長している人、これらの人数もしくは年齢分布等のデータをお示しいただけますよう、お願いできればと思っております。
 2点目は、本部会と企業年金・個人年金部会の連携についての意見です。資料1の4ページに公的年金と私的年金の見直しについて、両制度を一体として考える視点を持つべきとの意見が出ております。私自身、公的年金部会と私的年金部会の両方に参加しており、両部会の連携の必要性について、強く感じております。そこで、今後、どのように部会の連携をされていくのか、具体的なお考え等がございましたら、教えていただければと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 ただいま企業年金・個人年金部会との関係、先ほどありました年金数理部会との連携もあると思います。いかがでしょう、事務局から併せてコメントいただきたいのと、データの御提出のお求めがありました。これに関してもお願いしたいと思います。
○総務課長 御意見ありがとうございます。
 年金部会と企業年金・個人年金部会の連携あるいはもう少し広く公的年金と私的年金の一体的な議論につきましては、今回だけではなく前回、前々回からも御指摘いただいているところでございます。具体的な進め方はまだ検討している途中でございますけれども、また部会長とも御相談しながら決めていきたいと考えております。数理部会につきましても、御意見を踏まえ考えてまいりたいと思います。
○年金課長 データについては、これまでもこういうデータがないかということで指摘いただいております。この後、個別のテーマを議論する回に間に合わせるような形で、どういうデータがとれるのか確認してまいりたいと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 小林委員、よろしいですか。
○小林委員 大丈夫です。
○菊池部会長 今、御回答いただきましたけれども、繰り返しになりますが、数理部会との関係はもう少し年金部会において数理部会の議論を反映してほしいという、年金部会の前の改正のときにそういった議論があって一定程度年金部会で共有していただいた経緯がございましたので、そういった部分はぜひ継続していただきたいと私も思いますし、企業年金部会との関係については、前回も御議論を委員からいただいておりますので、何らかの形をお示しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、お待たせいたしました、権丈委員、お願いいたします。
○権丈委員 2点ほど考えていたのですけれども、ほかの人の話を聞いていて4つほど加えます。
 まず1つ目、永井委員、小林委員が話をされていた在老の廃止、もういいかげんやろうよという話です。これは優先順位を高く考えてもらえればと思います。
 2点目が、島村委員が話をしていた遺族年金の改革の方向性、また原委員もお話ししていた遺族年金と加給年金の改革の方向性は、ここにいるみんなは同じ方向を向いているのではないかということと、あと、社会保険で給付時に所得を見るというのは、もうやめようというのも随分前から言っているわけですけれども、その中の部分として先ほどの遺族年金で給付時に所得を見るというのは、もうなくしていこうということも議論の対象にしてもらえればと思っております。人類のいろいろな歴史の経験の中で、見ないほうがいいというようなことはある程度分かってきているわけなので、今日は遺族年金に関していろいろ細かい説明がありましたけれども、そういうことはもうみんな議論しなくても分かっているという形で原則にのっとった形でやっていきましょうよというのがあります。
 3番目が、是枝委員が言っていた名目下限の撤廃、もういいかげんやろうよという話です。これも今まで抵抗されてブロックされていたのですけれども、やりましょうということ。
 4番目、基礎年金の話をするというのは、国庫負担をいかにもらうかという話で、今までのデフォルトの改革の方向性は、被保険者期間の延長や適用拡大というのを言ってきた。果たして再分配機能の強化という理由で国庫負担をもらえるのかというのは考えたほうがいいかなと。記者たちに私は、これほど給付水準を上げるおいしい方法はないぞ、再分配効果の強化とか貧困問題をもち出して言っておけば、君たち自身の基礎年金が増えるんだからと励ましてる。しかし、このロジックを財源負担する人たちあるいは財務省はかなり突いてくる可能性は多分にあるというのがあり、私たちが被保険者期間の延長や適用拡大を言っていたのは、クローバックをどうブロックするかというところが視野にあり、向こうが論点として文句言えない論をずっとつくっていたのだけれども、まあ、頑張ってねという世界になりますかね。
 ということで、ほか2点ほど考えていたことを言いたいわけですが、1つは、この国で問題のない年金制度を求めても無理だという話です。国民年金法が成立した1959年に当時の事務局長の小山進次郎さんは、国民年金法の解説の中に、「国民の強い要望が政治の確固たる決意を促して、我々役人のこざかしい思慮や分別を乗り越えて生まれた制度」と書いていました。無職の人を初め、所得を把握することができない人も含めて国民皆年金保険を行うということは、政策技術的には無謀なところがありました。今で言えば、仮に3号を抜きにして1号と2号から成る制度を考えても、能力に応じて負担し、必要に応じて給付を受けるという社会保険の原則に反していて、垂直的再分配がない制度が組み込まれているという問題もあって、これ自体1号と2号のところだけでも問題がある。ところが、今度は1号を抜きにして2号と3号から成る制度を考えると、社会保険の原則にあまり反していないというところもあるので、私は社会保険としての制度の歪みの根源は1号にあると考えてきました。皆年金を堅持していく、つまり1号を堅持していく限り、この国の公的年金制度はひずみが生まれます。そして、個人的には1号は堅持していくべきだと思っているので、このひずみを抱えた状況で制度を運営していかざるを得ないだろうと思っている。
 公的年金というのは、いろいろなパーツがすき間なく組み合わされてつくられていて長い履歴を持つので、最初にアキレス腱を抱えてつくられ、長年運用してきた制度を、その後どう繕っても矛盾がほかのところから顔を出します。そのひずみを正そうとすると、ほかのところで矛盾が出てくる。公的年金制度の議論は、どちらがましかという悪さかげんの比較をせざるを得なくなります。
 例えば、先日、お隣の小林さんのところの日商が3号をなくすべきと発表したという報道がありましたけれども、私には数十年前に民主党が言っていた最低でも県外と同じように聞こえる。制度を変えた先の具体的な制度を提示してもらって、その新たな制度と今の制度の間の、いわば悪さかげんの比較をした後でないと建設的な政策論をしようがないわけです。日本の公的年金というのは、政治的要請で最初から問題を抱えた制度をつくっているのですから、野党や研究者が簡単に批判することができる制度です。しかし、年金というのはそう難しい話ではないので、10分間でいいので具体的な新しい制度を心に描いて、そこにどのようにして今の制度から移っていくのか。そこで起こる問題はどういうことなのかを考えて、その方向性と今デフォルトで進められようとしている改革の方向性、例えば、適用拡大を徹底的に進め、さらには昨年末の全世代型社会保障構築会議で示された、20時間未満への厚生年金ハーフの実施によって見えない壁をなくすという方針との優劣を比較した後に発言するようにしていかないことには、かつて租税方式にしたほうがいいという人たちは試算も何もやらないまま言っていたのかということがあって、壮大な無駄な時間というか政治を疲弊させたことがあったのですけれども、そういうことにならないように具体的なアイデアと今あるアイデア、今ある制度を比較して、悪さかげんの比較をして、議論を提案したほうがいいですよというのがあります。
 2つ目ですけれども、どうしてこうも年金周りでは誤解や間違いがあるのかということを考えると、どうも時間軸が関わる話であることが原因だなというのがあります。今、話題になっている年収の壁もそうですけれども、年金という制度を医療保険や介護保険のように今年1年で閉じる制度と考えれば、あの話はそう間違いではない。しかし、年金は時間軸が入ってくる問題なんですね。労働経済学者などは所得・余暇選好場でものを考えながら、予算線の屈折を昔から壁だ壁だと言ってきたわけですけれども、その壁なるものの存在を信じてずっと壁の内側にいた人たちが今本当に幸せになっているのかは考えたほうがいい。研究者たちというのは、自分たちの言動が世の中にどのような影響を与えるかをなぜ考えないのか不思議に思うわけですけれども、人間は時間軸でものを考えるのが苦手な生き物なのだから、研究者であっても仕方がないと言えば仕方がないかなと思っています。
 例えば、3号という制度が年収の壁をつくっているのは、制度設計者たちの無責任・無能のせいであって、3号を利用できるのであれば利用したほうが得であり合理的であるというメッセージを発することがインプリシットに3号を勧めるメッセージになるわけですけれども、彼らの言う壁をもたらす制度を利用して、実は高齢期のリスクを高めて、さらには労働市場でOJTの機会も放棄して自らの潜在的な可能性を発揮しない人生選択をする人たちのほうが、時間軸の先の未来で本当に幸せなのかということは考えながら、報道からいろいろなことをやっていかないと、結構不幸を生んでいくことになるのではないかと思っています。
 私は、多くの論者が壁であると言い続けてきたことを「予言」と名づけて、その予言を信じている人たちが就業調整している姿を「予言の自己実現」と呼んできました。そして、この予言の自己実現によって人々が就業調整をしている状況をなくす必要があるという方向で全世代型社会保障構築会議はまとめられていて、加えてあの報告書には、被用者保険に加入することの意義をしっかりと伝えていく広報の重要性を強調していました。今日もそういう話が出ましたけれども、ぜひやってもらいたい。それでいいと思っています。
 かつてはやっていた世代間の格差も、時間軸を持ってものを考えることを苦手とする人間の認知バイアス上の問題があったわけですけれども、伝統的な経済学が視野に入れてこなかった認知バイアスというのは、年金の世界では特にやっかいなもので、たかまつさんから若い人たちは年金が分かっていないという話がありましたけれども、若い人たちだけでなく、年長者もみんな分かっていないです。多くの人たちが人間の認知バイアス上、年金を理解することは難しいみたいなんですね。年金局の人たちの仕事を大変にしているのは、大方人間の認知バイアスに基づいた「ヒューリスティック年金論」と私は呼んでいますけれども、そういうヒューリスティック年金論だから、人間が人間である限り永久戦争になります。ということで、最後は頑張ってくださいねという年金局へのエールで話を終えたいと思います。よろしく。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、小野委員、お願いいたします。
○小野委員 ありがとうございます。私の立場上、財政の観点から発言させていただきます。
 私は、この部会の重要なテーマというのは、将来の世代にいかなる年金制度を残すかということだと思っております。給付の適正性というのは認識した上で、財源の議論をしないままの改革案は十分ではないのではないかと思っています。財政検証やオプション試算では年金制度の将来像とともに改革を行った場合の効果が示されると思いますが、その中で今、改革を避けることの将来的影響が確認できるのではないかと思います。また、かつて年金モンロー主義と言われましたけれども、言ってみれば年金の庭先がきれいになっていても、集めたごみが隣の家に移転するような改革というのは説得力に欠けるのではないかと思います。このあたりの認識が重要なのではないかというのが第1点です。
 第2点は、年収の壁の件です。私は「壁」という言葉は正しくないと思っていますけれども、これに伴う就業調整の議論がありました。私は、被用者が自らの選択で第2号被保険者になることを避けるという指摘は、いささか懐疑的に思っております。被用者が第2号の被保険者になった途端に、事業主は被用者保険の事業主負担分、約15%ぐらいだと思いますけれども、これがいきなり追加負担になると思います。この事実を告げずに被用者保険の本人負担分が目減りするという理由で説明すれば被用者も納得してくれるかもしれませんし、このことが被用者を20時間の壁に閉じ込めてしまうことになりかねません。前回、権丈委員が御指摘の厚生年金ハーフというのは、被用者側からは見えない20時間の壁を取り払うことにもなり、重要な提案だと私は思います。また、これによって就業調整の状況も随分変わるのではないかと思っております。
 3つ目ですけれども、同性婚の問題を取り上げてみたいと思います。遺族年金に派生する問題ですけれども、社会保障協定を締結している国には先進諸国を中心に同性婚を法律婚として認めている国が多数あります。このようなカップルが日本の社会保険制度に加入した場合に、配偶者の死亡に係る保障がどうなるか私としては気になるところです。日本の公的年金には事実婚というカテゴリーがあるので、外国人に限らず同性カップルを事実婚として整理すれば、保障の道が開けるのではないかとも思います。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 最後の点ですが、これは法的にも非常に興味深い点なのですが、日本の制度的あるいは裁判所の立場からすると、事実婚として認める状況にあるかどうか確認ということで事務局から、今どうなっているかお答えはできますか。
○年金課長 私の記憶が曖昧ですが、年金法に限らず「妻」という表現が出てまいりますけれども、そこで言うところの「妻」というのは民法上の身分に基づくものと連動しているという理解です。なので、遺族年金等の場合で内縁の妻を含むというのはございますけれども、それをさらに拡大するところまでは今解釈としては行っていないという状況だと思っております。確認が必要です。すみません。
○菊池部会長 もし可能であれば、また確認をお願いできればと思います。
 小野委員は、それを含める方向で議論すべきだというお話ですか。あるいはそういう制度改正をすべきだという。
○小野委員 まず疑問として、外国人の同性カップルが法律婚として日本に来て日本の社会保険に入った場合に、これが遺族年金等を中心とした取扱い上どうなるかが疑問だったというのが一つです。そこを考えていくと、日本における同性カップルも事実婚というカテゴリーの中でうまく処理できるのではないかと思ったしだいです。
○菊池部会長 ありがとうございました。そういった御提案も含むということで、職業柄ちょっと過剰に反応してしまいまして申し訳ございません。
 それでは、出口委員、お願いいたします。
○出口委員 ありがとうございます。もう皆さんからいろいろな御意見をいただいているので、私から総論として資料1の2ページの①から④までまとめていただいたところに沿ってコメントさせていただきたいと思います。
 まず1つ目が、先ほどからお話がありますが、社会保障全般の流れとリンクした年金制度の議論が必要だと改めて感じております。特に、被用者保険の適用拡大、子育て支援もありますが、今後の議論に当たっては年金制度自体の個別最適化だけではなく、今、日本が置かれている将来に向けた社会保障全般の課題とリンクさせて議論したい。例えば全世代型社会保障構築会議でも御議論がありましたし、将来推計人口でも出ていますように、日本の置かれている一番の課題は労働力不足ではないかと思っています。そういうことも含めて、就労意欲を上げていくような年金制度もぜひ考えていただけたらということで、ほかの部会とのリンクも非常に重要だと思っております。ぜひお願いしたいところです。
 第2ですが、家族と年金制度の関わりが③でありました。これもいろいろ御議論がありましたが、全般的に見ると今の制度は昭和の時代の名残だなと非常に感じます。特に、この数年間でコロナもありましたが、それ以外の要素も含めて、非常に世の中の価値観が複雑化・多様化している。先ほど同性婚の話もありましたが、現代社会も経済の動向も相当変化しているというところに対して、現行制度は昭和の名残があってマッチしていないと感じています。
 とは言いながら、家族と年金制度の関わりに関する個別論点という意味では、先ほど少し御紹介がありました資料2の7ページ、8ページにありました前々回の年金部会の報告書に、結構大事なポイントが実は記載されているのではないかと感じました。非常に重要なコメントが書かれていると思っていまして、今後の議論のスタート地点と位置づけし、議論を深めていけばいいのではないかと感じました。
 第3点は、基礎年金の給付水準とそれに係る制度枠組みの検討についてです。現行の制度は2004年の改正の枠組みに基づいて負担に上限を決めて、給付を調整することで長期的な持続可能性を確保することを担保しています。次期改正の議論では給付の調整の方法をどうするかがポイントになると私は受け止めております。現行制度の枠組みで特に基礎年金の給付調整や財政構造を巡る問題点がいま一つ分かりにくく、できれば分かりやすく、かつ、丁寧に示していただいて、建設的な議論につながればいいと思っています。今回、提示していただいている資料で言いますと、資料2の25ページ、26ページあるいは財政構造については参考資料1-2の38ページあたりに示していただいているのですが、今後、建設的な議論を進める上では、もう少し丁寧に御説明をいただければありがたないと思っております。
 私からは以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。分かりやすい説明と資料の提示をお願いしたいということで、今後に向けて事務局でお願いしたいと思います。
 以上、会場からは一通り御議論いただきました。それでは、大変お待たせいたしました、オンライン参加の皆様から御意見を賜りたいと思います。武田委員、平田委員、堀委員、百瀬委員、そして玉木部会代理の順でお願いしたいと思います。
 まず、武田委員、いかがでしょうか。
○武田委員 どうもありがとうございます。本日は、過去の経緯と前回の議論を整理いただきありがとうございます。私からは2点です。
 1点目は、今の御意見と多少重なる点がありますが、一言で申し上げるならば、過去の経済社会をベースにつくられた制度を現在の経済社会構造、さらには未来志向で見直していく必要があるのではないかと思います。一から制度をつくれるわけではないことは承知しておりますが、議論の軸の一つとして、そうしたことを念頭に制度を改革していくことを共有しておきたいと思います。
 人口減少を前提に考える必要があり、少子化をどう食い止めるかということは別途議論が必要ですが、今の将来推計をベースにすれば、労働供給が先細りすること、労働力不足が生じていくことを踏まえますと、少なくとも就労に影響を与えている制度は、中立な制度にしていくことが極めて重要ではないかと思います。
 また、根強い男女の役割に対する意識の問題、これも制度だけではありませんが、制度と社会の慣習、意識がリンクしている部分があると思っており、その点については制度の見直しが必要ではないかと考えます。
 特に、資料2で前々回の議論の整理を御提示いただきまたが、7ページにございますとおり、第3号の問題もまずは被用者保険の適用を進めていく、拡大していくとともに第3号被保険者制度の縮小・見直しに向けたステップを踏んでいくことが書かれています。今申し上げた2点に関係する制度でもありますので、まずはロードマップとして被用者保険の適用拡大を進める方向と思いますが、同時に先を見据えて見直しのステップについても、今回こそ結論を出すべきではないかと思います。
 2点目、年金制度の広報・周知について多くの方から御指摘がありました。確かに広報・周知は極めて重要ですが、全世代型社会保障構築会議で議論になったこととして、デジタル技術の活用があります。実際、本日の資料でもその文脈が掲載されております。広報・周知を進める上で、データを上手に利用し自ら情報を知ることができることも重要な要素ではないかと思います。そのことを通じて制度への誤解が解けたり、あるいは本来不要な就労調整について気づきを経て就労調整の行動が変わってくるなど人々の行動変容につながったりすることも可能性としてはあると思います。
 デジタルの活用については、この部会ではあまり議論はされていませんが、別の部会で議論がされているのか、もしよろしければ事務局から御教示いただければと思います。
 以上2点です。よろしくお願いします。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 最後の点につきまして、事務局からいかがでしょうか。
○年金課長 ありがとうございます。この年金部会は、制度の立てつけや仕組みが議論の中心にあるということもあり、具体的な実務の面でデジタル技術等々についての議論は弱い面があるのかなと思っております。他方で、事業部門や年金機構、関係部会もございますし、制度を実施する際にはシステムの改正・見直しは伴ってきますので、そこを効率的にやることは必要な視点だと思っております。引き続き御意見をいただきながら考えていきたいと思っております。
○総務課長 補足ですけれども、特に広報や普及啓発に関して、どうデジタル技術を活用しているかという面であれば、広報の検討委員会の中では公的年金シミュレーターの活用や、どう開発していくかといった議論が行われているところでございます。
○菊池部会長 武田委員、いかがですか。よろしいですか。
○武田委員 より周知を進める上での工夫やプッシュ型でどう行えるかといった検討については、今後、人々の理解浸透あるいは行動変容を促すうえで重要です。デジタルのご活用を御検討いただける部分はあるのかどうか、と感じておりますので、よろしくお願いします。
○菊池部会長 ありがとうございました。また、デジタル化については折に触れ御発言いただければと思います。
 それでは、平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。私からは大きく3点申し上げたいと思っております。1点目は障害年金について、2点目は年金の価値に関する周知・広報について、3点目は年金の改正をどのように考えていくかということです。
 まず1点目、障害年金ですけれども、今日も少しご発言にありましたが、障害基礎年金と障害厚生年金どちらが適用になるかは、障害の原因となった病気やけがの初診日に国民年金に加入していたか、厚生年金に加入していたか、だけで決まってしまう。初診日の時点で加入していた年金が、生涯続くということに関し、いろいろな弊害が出ていると聞いております。在職中に初診日があると、退職後に障害年金の手続きをした場合は障害厚生年金ですが、退職してから初診日があると、在職中にどれだけ長く働いていても、基礎年金になってしまいます。あるいは学生など就労していない段階で初診日があると、その後就労してもずっと障害基礎年金になってしまうということです。この基礎年金と障害厚生年金では、給付の額、厚生年金のほうがより軽い障害でも給付が受けられる、あるいは障害手当金と一時金を受給できる、というように様々に差があって、この差が自立の問題に関わってきて、人の尊厳にも関わってくると思っております。例えば、障害を負った方が、年金があるからこそ生活保護ではなく、年金と併せて自分の賃金で生活を成り立たせられる、といったことです。このあたり島村先生が障害年金の専門の研究者のお話も聞きたいとおっしゃっておられましたが、ぜひ私もお願いしたいと思いました。
 2点目、年金の価値に関してですが、先ほど駒村先生が今後長く生きることになる若い人にとっての価値をとおっしゃっていましたが、高齢者が働いて定収入を得られなくなったときに年金が定期的に入ってくる安心感も、私はまだその域にはいっていませんが、ものすごく大きいという話をヒアリングでお聞きしました。貯蓄は崩すことに抵抗があるけれども、年金は湧いて出てくる感覚があるので使える、年金という安心感があるからむしろ貯金も使いやすい、などです。そうなると経済も回りやすいかもしれず、今後の経済動向にも関わるのではないかと思えるようなお話もありました。そんな年金ならではの価値も含めて広報していくと、例えば繰り下げ受給に関しても、またその利用が変わってくるのではないかと思いました。いつ死ぬか分からないから早くもらうというのではなくて、今をどのように生きて、未来をどのように保障するのかという視点で考えられるような広報もいいかなと、ということです。
 なお、繰り下げ受給に関するデータは、累計データを基に出ているようですが、単年度データがあると、どの程度の人がどう選んでいるのかという現状がわかるので、そのことも今後の選択を左右してくるのではないかと思います。
 最後、年金の改正をどのように考えていくかですが、今日もあったように2070年、高齢化率38.7%というのは、今私たちが日々目にしている世の中とは全く異なる未来が出現するということだと思います。そういうときに誰がどのように社会を支え合うのがよいのかというありたい姿を、もちろん所得再分配の視点や貧困対策、高齢期の生活を支える視点というのは持ちながらですけれども、また、これはこの部会で話すことではないかもしれませんけれども、国民にも問うて意見を聞きながらこれを描いて、実現する手段という観点からも、年金の在り方を考えるのが大事なのではないかと今日改めて思った次第です。
 私からは以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、堀委員、お願いします。
○堀委員 どうもありがとうございます。多くの先生方から有益な意見を拝聴させていただきまして、誠にありがとうございます。私からは1点だけ申し上げたいと思います。社会保険の適用拡大についてです。
 近年の雇用保険の適用拡大については順調に進んでいるものと認識しておりますが、これはコロナという一時的なショックはあったとしても、労働市場の状況がよいという条件がそろったから進んだということは重要な点ではないかと考えております。今後も人口減少による人手不足が長期的に続いていくことは間違いないところなのですけれども、景気は循環するものですので、いつかは分かりませんが景気の悪化が生じた場合には、長期的に人手不足であっても短期的には採用控えが起こり失業率が上昇いたします。また、景気がよい今日においても、偽装フリーランスのように社会保険料を逃れたいというインセンティブを持つ企業もあるわけです。よって、今後一層の社会保険の適用拡大が進められていくことは間違いないとしましても、一つは適用拡大のタイミングが非常に重要であること及びフリーランスにつきましても同時に検討を進めていくことにつきまして、改めてお願いできればと考えております。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、百瀬委員、お願いします。
○百瀬委員 私からは、障害年金について述べさせてもらいたいと思います。
 前回改正時の年金部会から、今回の年金部会に課された宿題の一つが障害年金に関する検討です。障害年金については、大きなところでは、支給要件の在り方、給付水準の妥当性などの論点があります。また、受給者の中心が身体障害から精神障害に大きく変化していることに合わせて、制度を見直す必要があるのか、あるいは、ないのかも検討の余地があります。
 その他に、保険料納付要件の特例措置、いわゆる直近1年要件については、10年間の延長が繰り返されてきましたが、そろそろ、その役割を終えているように思います。
 障害年金については様々な論点がありますが、年金部会では、障害年金の議論が老齢年金や遺族年金の議論の陰に隠れてしまうと感じています。また、多くの委員の皆様が参加される年金部会において、障害年金について一から議論することも非常に難しいと思っております。
 そこで、もし可能であればですが、年金部会の下に少人数の委員会を設けて、そこで数回議論していただくことはできないでしょうか。もちろん別の方法でも構わないのですが、いずれにせよ障害年金の見直しについて検討を行うのであれば、別の場所で議論していただいた結果を年金部会に上げてもらって、それを基に議論を進める必要があるのではないかと思っております。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。この部会の立てつけにも関わる、ここをどうするかというのは事務局で御検討いただければと思いますが、まさに本日の議論の中でも何人かの委員の皆様から障害年金の専門家から話を聞きたいということがございましたので、まさに障害年金の専門家たる百瀬委員に、今後ともいろいろ御教示いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、玉木部会長代理、お願いいたします。
○玉木部会長代理 今日の冒頭、人口推計について御説明いただきまして、ありがとうございます。そういったものに接するにつけ改めて思うことなのですけれども、寿命が延びるというのは単に高齢者が多い社会になるということだけではなくて、人が長く働くことでもあります。今の若い方、20代や30代の方々は、恐らく75歳とか80歳まで勤労することがごく当たり前になる時代に向かって生きていくのではないかと思います。こういう非常に大きな変化がある中で、60代の勤労あるいはその報酬を特別扱いする在職老齢年金という制度は、違和感が増してくるのではないかと思います。一部の委員から人手不足という御指摘がございましたけれども、これは本当に長期にわたって企業経営者の関心を大きく占めることになるだろうと思いますが、そういった企業の経済活動の努力の方向と不整合にならないような社会保険制度にすることが非常に重要なことだろうと思います。
 もう一点申し上げますのは、今日もたくさんの方から広報・教育について御指摘がございました。私も多くの考え方あるいはいろいろな年齢の方々に対して、社会保障・社会保険制度についてよりよく知っていただくための努力はもっともっともっとやるべきだと思うところでございます。こういう流れはあるわけですけれども、実は金融サイドでは金融経済教育推進機構というものができることになりそうでございまして、企業年金はこの金融経済教育推進機構の中にかなり包摂されるような流れになっているのではないかと思います。ただ、私も教員でございますので学生に対してこういったタイプの話をするときには、要するにお金というのは全部一つのものとしてまとめて教えてあげないと、生きるための知恵として、あるいはスキルとしてなかなか定着しないと感じます。金融サイドから老後に向けた資産形成に割とフォーカスを置いた教育の試みが強まっていく中で、この流れに社会保険・社会保障の側もうまく乗るのが一つの方法ではないかと思います。これは、教育あるいは広報を受ける客体の側も同じでございますので、なるべく統一感のある働きかけをしていくのが、効率のよい教育・広報になるのではないかと思うところでございます。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 これで一通り皆様から御意見を伺うことができたと思います。
 ほぼ時間は尽きておりますが、何か追加で御議論・御意見がございます方がおられたら合図していただきたいのですが、会場ではたかまつ委員ですね。オンライン参加の皆様から特にないですか。
 それでは、たかまつ委員からお願いします。
○たかまつ委員 すみません、簡単に。是枝さんから私の発言について指摘がありましたので少し説明させてください。
 前回私の発言です。年金制度を持続可能なものにするために、今余裕がある人の分はカットして将来世代に回したほうがいいのではないかという部分についての御指摘ですけれども、まず、私は年金制度が持続可能ではないとは考えていません。年金制度は持続可能なものでありますが、より持続可能なものにしていくという意味合いを込めて使わせてもらいました。先ほどお話しさせていただいたとおりなのですけれども、将来不安が若者の中にあったり、それは年金として本来の意味を果たし切れているのかとか、広義の意味で国民は将来年金があるから安心して暮らせるということも含めて、年金制度が今だけではなく自分たちの現役世代だけでもなく、未来の子どもたちも含まれているという意味で使わせてもらいました。ただ、是枝さんから御提案いただいた「将来の年金を引き上げるため」という言い方のほうが誤解がないのではないかと、私の真意にそちらのほうが近いので使い方には気をつけたいと思います。御指摘いただきありがとうございます。
 プラス、世代間格差についてですけれども、そもそもこのような人口構造になるということは制度設計時には考えていなかったと思うので、若者が置いていかれないような見直しをする議論も必要だと考えています。若者が自分たちの世代だけすごく損をしていると感じるものではなくて、若者世代が納得して将来の年金をより引き上げるためにどうしていくかを考えていくことが大事だと思います。ただ、高齢者の方の中でも貧困の人や年金だけでは生活が厳しい人がたくさんいまして、世代内格差ももちろんあるために幅広い可能性を考える必要があると思います。私は、前回「カット」という表現をしてしまったのですけれども、課税という方法もあるかもしれないですし、私自身も制度はそんなに詳しくないので、若者が不安や不公平感を感じないようなソリューションは、ぜひ皆様のお知恵をお借りしながら今後御教授いただきながら議論できると幸いです。
 以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございます。是枝委員よろしいですか。今日のところはこの辺でということにさせてください。ありがとうございました。
 皆様の御意見を伺っていて、最近の子ども・子育ての議論もそうですが、社会保険というものがなかなか深まっていないなという、また理解もされていないのだなという思いを持ちまして、社会保険たる公的年金の在り方をしっかり議論していければと思ったしだいでございます。
 それでは、以上とさせていただきます。
 今後の予定について事務局からお願いいたします。
○総務課長 次回の議題や開催日程につきましては、追って連絡をいたします。
○菊池部会長 それでは、これにて本日の審議は終了いたします。御多忙の折お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。お疲れさまでした。