第14回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

日時

平成31年3月29日(金)10:00~12:00

場所

厚生労働省省議室(9階)

出席者

(委員)(五十音順)
 大竹委員、古賀委員、後藤委員、佐々木委員、武田委員、長谷川委員、守島部会長、森戸委員、山川委員
(ヒアリング対象者)
 清田啓子氏(北九州市保健福祉局先進介護システム推進室)
 小室貴之氏(株式会社楓の風)
 石川竜太氏(株式会社カナミックネットワーク)
 石川公也氏(社会福祉法人シルヴァーウィング)
(事務局)
 土田政策立案総括審議官、村山労働政策担当参事官、高松企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任)、五百旗頭調査官(労働基準局労働関係法課)、名田企画官(職業安定局雇用政策課産業雇用政策)、東江企画法令係長(雇用環境・均等局総務課)、立石室長(人材開発統括官付政策企画室)、川口企画官(老健局総務課)

議題

(1)技術革新(AI等)の動向と労働への影響等について
(ヒアリング)
・北九州市保健福祉局先進介護システム推進室 清田啓子様
・株式会社楓の風 小室貴之様
・株式会社カナミックネットワーク 石川竜太様
・社会福祉法人シルヴァーウィング 石川公也様
(2)その他
 

議事

 
○守島部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第14回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたしたいと思います。
皆様方におかれましては、年度末のお忙しい中、御出席をいただき、本当にありがとうございます。
カメラはありませんね。
本日は、所用により、石山委員、入山委員、大橋委員、川﨑委員、冨山委員、御手洗委員が御欠席でございます。 また、本日は、委員の皆様方のほかに、本日の議題に関するヒアリングのため、北九州市の清田様、株式会社楓の風の小室様、株式会社カナミックネットワークの石川様、社会福祉法人シルヴァーウィングの石川様に来ていただいております。どうもお忙しい中、ありがとうございます。
議事に入ります前に、審議会の説明は本日もタブレットで行いたいと思いますので、初めに事務局より説明をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
○高松企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任) 本日の部会もペーパーレスで実施させていただきます。
お手元には、タブレット、スタンド、スタイラスペンを配付しております。使用方法については、操作説明書を机上に配付しておりますが、御不明な点がございましたら、お近くの職員にお声がけください。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 それでは、議事に入りたいと思います。
本日の議題は「技術革新(AI等)の動向と労働への影響等について」でございます。
本日の進め方について御説明いたします。
本日は介護分野におけるAI等の新技術の導入事例や労働への影響、今後の見通し等について御説明をいただきたいと思います。先ほど御紹介さしあげました4人の皆様、清田様、小室様、石川様、石川様の順にお話をいただきたいと思います。
本日も皆様方のプレゼンが全て終了した後にまとめて質疑応答と自由討議を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
それでは、ヒアリングに移りたいと思います。
最初に北九州市の清田様、よろしくお願いいたします。
○清田氏 北九州市保健福祉局先進的介護システム推進室長の清田でございます。
北九州市の取組を発表させていただくこのような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
本日は「技術革新(AI等)の動向と労働への影響等について~北九州モデル『先進的介護』の実現に向けた取り組みを通じて~」を発表いたします。
北九州市は九州の北部、福岡県にございます。人口約95万人の政令指定都市でございます。全国平均よりも高齢化が進んでいる状況で、全国的な課題であります介護人材の確保は、本市にとっても喫緊の課題でございます。
そこで、本市では、ポテンシャルを活かしまして、平成28年度から介護ロボット等を活用した先進的介護の成功モデルを創造し、全国に向けて発信することに取り組んでおります。
目指す先進的介護という姿は、介護ロボット等を活用して、介護職員の負担の軽減、そして、介護の質の向上、施設入居者の自立支援、高年齢者等の雇用機会の拡大、また、同時にロボット産業の振興の実現でございます。
取組の全体イメージです。介護施設での実証、下に下がりますが、現場ニーズとメーカーをつないで行う開発、介護現場でロボット等を活用できるよう支援する導入、普及拡大し、社会実装につなげていく。このサイクルを繰り返すことで先進的介護を実現してきております。
実施体制でございますが、実証施設として、市内の特別養護老人ホーム5施設、そして、開発コンソーシアムとして、メーカーや大学など44団体、ワーキンググループや倫理審査委員会などで構成しております。
実証に先駆けて、この赤字にありますように、産業医科大学と連携して介護現場の作業を観察・分析しました。作業観察の方法は、1名の観察者、PTなのですが、PTが1名の介護職員を3日間観察する方法で行いました。観察者はこのタブレット端末アプリを使って、介護職員の行動を30秒ごとに介護項目をタップして記入し、介護のタイムスタディーを記録しました。また、介護姿勢についても記録をいたしました。そのほかに、位置の情報や足底圧、活動量などのデータ収集を行いました。
これは作業観察の結果です。昼間と夜間に分けております。昼間は介護施設で行われる介護として、ここにあります「食事・水分補給」の27.6%が一番多いのですが、そのほか、グレーの「排泄」「移乗・移動」というのが内容にありますとおり、多くを占めております。また、このオレンジにありますように「職員の行動」として整理しております介護記録や職員同士の会議、これに27.1%という時間が使われていることがわかりました。
夜間ですが、夜間に関しては圧倒的にこの青部分「職員の行動」55.8%にあるとおり、記録や巡回ということで時間を使っておりました。
これは先ほどと同じデータを直接介護と間接介護に分けたものです。入居者に接して行う介護、これが円の左側なのですが、直接介護として整理しております。円の右側は、入居者に接して行わない介護、これを間接介護として今回分けております。
御覧いただいているとおりに、円の右側、間接介護のほうに54.46%という半数以上の時間が使われていることがわかりました。下の枠で囲っているとおりに、介護ロボット等の導入としましては、この間接介護については人から介護ロボット等への代替としていくことが可能ではないかと考えております。
右側の円の下の四角の中にあります、直接介護については人が行うべきと考えておりますが、身体的負荷の大きい作業については、ロボットが補助や支援をすることが可能ではないかと考えております。
これは姿勢について分析した結果です。介護者の身体的負荷を作業姿勢で見たものです。OWAS法による作業分析を行っております。アクションカテゴリー3は、可能な限り早く改善すべき姿勢、アクションカテゴリー4は、直ちに改善すべき姿勢です。この赤の点の中に入っているところがアクションカテゴリー4と3が観察された姿勢です。丸で囲んでいますとおりに「体位変換」「更衣・清拭」「移乗・移動」「入浴(脱着衣)」は腰痛等につながるリスクが高い姿勢であることがわかりました。
こういう作業分析を終えまして、ロボットの導入に入りました。ただ、平成28年度は作業分析が終わっておりませんでしたので、まず使ってみるという意図で行いました。実証に当たりましては、国家戦略特区の制度を活用しまして、従来、入居者約10人ごとを生活単位としてユニットと申しますが、ユニットごとに1つずつ設置している共同生活室、この2つを一体的に利用して行いました。広いスペースを確保した上で、リハビリやレクリエーションを提供する際に、介護職員を補助するロボット等の実証を行いました。
これは29年度です。29年度の実証は、作業分析結果を踏まえることができましたので、施設の課題に合わせて機器の選定を行いました。真ん中から下の赤で書いてあるように、間接介護の動作を代替するものとして導入しましたのは、記録時間の短縮として記録支援機器、また、夜間巡回の効率化として見守り支援機器、情報共有の効率化としてインカムを入れました。
また、直接介護の動作を支援するものとして、移乗の介護を支援する移乗支援機器などを導入しました。この導入前、導入後に、介護作業の分析をまた行っております。
この機種は平成29年度の下半期にさらに機種を増やして実証を行った分です。このページの機種も実証を行いました。
ここからは、機器の導入前後を比較した導入効果を発表いたします。まず、情報共有機器、インカムによる結果です。介護時間の変化としましては、グラフのとおり、真ん中の青で囲んでいるところが職員同士の会話が減った部分、赤い点線で囲んでいるところが入居者との会話が増えた部分でございます。
介護現場では、さらに、職員を探し回らなくて済む、緊急時にその場を離れずに人を呼べて、迅速な対応が可能になったなどの効果がありました。
また、介護職員からは、夜間一人で介護するとき、すぐ相談できるので、精神的に安心だという声があり、さらには格好いいという声なども上がっておりました。
これは見守り機器の部分ですが、介護時間の変化としましては、訪室や見守りが減少する一方で、寝具の手直しが増えました。この変化は部屋の様子をスタッフステーションで常に見られるために、訪室のタイミングを見極め、不必要な訪室が減るといった介護職員の負担を軽減したこと。一方では、布団がずれたことをモニターで見て、布団のかけ直し、寝具の手直しに訪室するといった目的を持ったきめ細かいケアが増加したのだと考えております。
モニター画像はシルエットを映して、入居者のプライバシーに配慮しております。
これは、見守り機器の導入によって介護職員の「見守り・訪室」の歩数が減少したグラフです。
今度は、介護記録の支援機器の比較でございます。いつでもどこでも記録は可能だという声があったり、右上の写真のように、入居者と会話しながらでも記録できるなど、効果を介護職員から聞いております。しかし、時間変化では、導入前と導入後に記録時間に変化はありませんでした。
介護現場では、時間があればある分、記録に時間をかける傾向があります。記録項目に関しましては、標準化とか統一が課題として残りました。これは移乗支援機器、非装着型を導入したときの介護姿勢の前後比較です。先ほどのOWAS法を使った分析で、改善すべき姿勢が減少しております。抱え上げる作業がなくなります。それで、腰痛リスクが高い姿勢が改善したと考えております。
また、2人で抱えていた介護を1人で行えるために、介護職員が2人揃うまで入居者を待たせていたことがなくなりました。
さらに、導入効果として、入居者の皮下出血や拘縮などのリスクが軽減したこともありました。人の手による抱え上げに比べて、シートによる抱え上げは、入居者の体への圧迫を分散できるためです。
これは、移乗支援機器の今度は装着型の導入効果です。スーツのように体につけて使うものです。疲労感のアンケートでは、疲労に関する全ての項目で減少しております。
これは、機器を使った介護職員のアンケートです。身体的負担感では、35%が「減った」と回答しております。インカムを使うことでどこの部屋にいるか、職員を探し回るという現状の手間がなくなった。また、腰の負担が軽くなったという意見です。
しかし、精神的な負担感では、35%が「増えた」と回答しています。操作方法が難しくて、ゆとりを持って仕事ができなかった、落としたり、ひっかかったりしないよう注意が必要などの意見でした。
この円グラフは、作業時間の変化などを見たアンケートです。作業時間の変化では、59%が「長くなった」と回答しております。記録する時間は減りますが、機械のスピードはゆっくりですので、つり上げ、つり下げに時間がかかるとの意見です。
ただ、作業全体の負担感では、73%が「減ったと思う」と回答いたしました。慣れるまでは大変だが、慣れたら軽減される、もっと使いやすく現場に合ったものがあればよりよい環境をつくれると思うなどの意見がありました。私どもはこの73%という高い数字には、介護現場からの期待を感じております。
また、実証施設の施設長が言います、実証を始めてから職員のモチベーションが上がったとか、実証が始まってから離職者が減ったと。こういうことがこういう数字にあらわれているのだと感じております。
本市では、介護職員や施設長向けに、介護ロボットマスター育成講習を開催しております。機器の使用方法などを習得し、精神的負担を軽減することや、介護ロボットを使いこなせる専門人材の育成を目的としています。
介護現場が介護ロボットを活用するには、事前の学習、演習、また、ロボットについて相談できるリーダー的存在が施設の中にいることが重要です。今年度は介護ロボットマスターの育成講習を強化して、初級、中級、上級に分けて実施しました。介護職員からは、マスター取得が励みになるという声をいただいております。
これは介護ロボット等の改良・開発の支援です。介護ロボット開発コンソーシアム、青地の白抜きのところですが、現場ニーズに合った介護ロボットの開発や改良を支援しております。このコンソーシアムの運営は、市の外郭団体であります、産業学術推進機構、通称FAISが担当しておりまして、会員の活動に対して、安全性検証のサポートや実証のための倫理審査等のサポートを行っております。
その結果、各開発メーカーにおいて、改良が8件、開発が3件行われました。
これからの取組を推進するコンセプトとしまして、介護イノベーション「北九州モデル」をまとめました。介護現場で介護ロボット等を活用するには、導入するだけではなくて、介護職員が使いこなせることが大切で、このことによって人とテクノロジーとの融合が生まれ、介護現場のイノベーションを起こすのではないかと考えております。
高年齢者等の多様な人材、介護ロボットやICT等の活用による介護現場の働き方改革を進めて、入居者の生活の質の向上、介護ロボット産業の振興を推進することにつながると考えております。
そこで、介護イノベーション北九州モデルでは、この下にあります3つの方針を掲げています。まず、介護ロボット等を使いこなす新たな担い手をつくる担い手づくり、そして、新たな介護現場づくり、人と介護ロボット等の共存による生産性の向上です。
方針1は、新たな担い手です。この左下にあります写真にあります介護職員は、70代の女性です。機器を導入する前は、移乗の介助は担当しておりませんでした。機械を使用して一人で移乗介助できるようになって、現在も移乗を担当しております。介護現場では、50代になると介護の現場から退職しようかという声が上がると聞いておりますが、介護ロボット等を活用することで、高年齢者等を新たな介護人材として促進していきたいと考えています。
また、介護職員の中には、ロボットや人をマネジメントできる高度人材の育成も大切だと考えています。誰でも介護ロボットを使用できるように、介護手順書などの充実も大切です。
方針の2つ目は、新しい介護現場づくりです。介護施設の課題解決に向けたロボットやICTの導入によって、介護職員の心身の負担の軽減、入居者のケアの集中、介護職員の専門性や働きがいが高まる環境づくりも進めていきたいと思っております。「見守り」「情報共有」「記録」などをやれば、安全・安心な介護現場づくり、そして、「抱え上げ」や「排泄」「コミュニケーション」、ロボット導入によって快適さの創出ができるように考えております。開発メーカーの開発、そして、介護ロボットの導入マニュアルなども必要になってきます。
方針の3つ目は、人と介護ロボット等との共存による生産性の向上です。多様な人材や介護ロボット等を活用し、働き方改革を進めて、介護現場の生産性向上ができると思っております。
例えば、インカムの活用では、情報を共有できることは介護職員だけではなく、ボランティア等の支援にもなります。介護現場への参画を支援することになります。人とロボット、あるいは正規職員とパート職員、または有償ボランティアなど、さまざまな人材の組み合わせによる多様な介護人材の勤務シフトが検討できるのではないかと考えております。
最後の画面ですが、今後、北九州モデルを構築するために、31年度は3つの視点から実証をさらに行う予定です。
人とテクノロジーの融合による新たな働き方の検証においては、まず視点1にありますような介護業務の整理です。介護職員が行うべき業務と職員以外で支障がない業務を整理します。ボランティアが行える業務を分けて、また、介護ロボット等で行える作業を分けることで結果として介護職員の専門性を高め、また、入居者と向き合う時間を増加させていきたいと考えています。
2つ目、視点2は、機器の有効活用です。例えば見守り機器を使っての夜間巡回は、広い施設をめぐる方法から、寝ている様子を見て訪室する方法に変えて、入居者の睡眠を妨げないケアを提供することになります。このように、職員の心身の負担を軽減し、きめ細かなケアの提供を推進していきたいと考えております。
3つ目は、効果的な勤務体制です。機器を習熟した高年齢者等には、積極的に介護現場に参画してもらいたい。いわば同世代介護です。また、介護現場には介護を多く必要とする時間帯と少ない時間帯があります。高年齢者等による短時間勤務者等も活用し、需給バランスのとれた勤務体制をつくることができます。これによって休憩、休暇がとりやすい職場をつくるとともに、介護人材確保を促進していけると考えております。
以上で発表を終わります。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
○守島部会長 清田様、どうもありがとうございました。
続きまして、株式会社楓の風の小室様、株式会社カナミックネットワークの石川様、よろしくお願いしたいと思います。
○小室氏 それでは、発表させていただきます。
本日はこのような場にお呼びいただきまして、まことにありがとうございます。楓の風の小室と、カナミックネットワークの石川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今日は「ICTテクノロジーの目的的活用と生産性向上」というところでお話しさせていただければと思っております。
当社の自己紹介は見ておいていただければと思いますが、私たちの取組はまずデイサービスという場でやらせていただいております。今、全国42拠点、比較的コンパクトな施設を展開させていただいております。後で御説明させていただきたいと思いますが、利用者さんが自分自身で移動できるようにというところで、空間づくりのほうから自立支援に取り組ませていただいております。
業界の背景について少しお話しさせていただきたいと思いますが、今日の資料にもありますけれども、実はデイサービスが在宅系介護サービスで最も介護給付財源を使っているサービスでございます。そういったデイサービスに対して、大きく分けて3つの指摘がなされております。
1つ目は、多くのケアが無目的、目的的なケアに導く必要があるのではないかという御指摘でございます。読ませていただきますと、デイサービスはいろいろなメニューがあるのが一般的だとしながら、体操だとか、合唱だとか、いろいろなプログラムがある。ところが、そのプログラムがどういう目的で行われているのか。それらを目的的な活動と無目的な活動に分けると大半は後者に属する。つまり、まず目的を持ってケアをやっていないというところが一つの指摘としてございます。
もう一つが、通所介護がそもそもどういう目的で使われるものなのかが余り業界的にも理解されていない。例えばこちらの指摘ですと、利用者さんは単なるサービスのお客様、客体ではなく役割を持つ人間と定めて、彼らがお世話を受ける受動的な存在ではなく、ちゃんと存在意義を、たとえ要介護状態であっても彼らが存在意義をちゃんと持って生きていけるように支援するのがデイの役割なのではないかという指摘をいただいております。
また、最近は自立支援ということでにわかにブームになっておりますけれども、その中でいわゆる機能訓練がにわかにはやり始めております。これは特に問題ないことだと思いますが、ただ、回復の限界を十分に考慮しないで心身機能へのアプローチばかりやっていると、要介護状態になるとひたすら機能訓練ばかりやっていなければいけない。そういった人生になってしまうわけです。そういったことをやってしまうことによって、利用者さん自身が日々訓練を受けることが人生の目標になってしまって、恐らく機能訓練士に依存したまま人生を終えてしまうことになりかねない。こういったことが、結果的に自分らしく生き抜くというところについての思考を妨げてしまうのではないかという指摘があります。
こういった業界背景の中で私たちがどう取り組んでいるのか、お話しさせていただければと思っています。
まず、弊社の事業所としての課題点がございました。志が高過ぎまして、定時で業務を終えることができない。慢性的に40時間以上の残業時間があるという大変なブラック企業でございました。また、経験ですとか資格、非常に志の高い有資格者が集まるのですが、それぞれ目指すケア像に違いがありまして、常にぶつかり合うという現象がございました。
また、いいケアはできているのですけれども、結果的に働き過ぎて人材が長持ちしない。そして、意義ある仕事はしたいのだけれども、楓の風で働くと超大変そうということで、なかなか人材の確保は困難だという5つのジレンマを抱えておりました。
それに対して、我々が生産性の向上を高めていこう、職員の定着を高めていこうということで取り組んだのがこの4つでございます。
まず、4番からお話しさせていただきますと、環境づくり。実はこれは後で御説明しますが、非常にミニマムな環境の中で仕事をしていこうということにさせていただきました。
そして、何より大事なのが、デイサービスが何を目的にやるのかというところで、自立支援ケアをしっかりやっていこうと。では、その自立支援ケアとは何をもってして自立支援なのか。ただひたすら運動ばかりやっているのでは、一生要介護高齢者は運動しっ放しの人生になってしまいます。そういったことに対して、しっかりと何をもってしてケアの成果なのかということをアウトカムスケールを開発しまして、ケアをしっかり定義して、かつ定量評価できるようにやっていきましょうと。これは昭和大学保健医療学部との長年の共同研究の中で生み出されてきたものでございます。
それを前提に目的を明確にしたところで、今日御一緒させていただいているカナミックネットワークさんのICTを活用して、より効率よく目的的に情報共有するということで、結果的に何が起きたかといいますと、残業時間が11.5時間まで減りました。非常に働きやすくなりました。
また、いろいろなアウトカムが明確になりましたので、職員たちがちゃんと視点が違うところで意見をしても、目的が一緒なのでいい意味での円卓発想ができるようになりまして、非常に職員の定着率も向上したという状況でございます。
環境づくりのところからお話ししていきたいと思うのですが、実は働きやすさの中にまずそもそも環境をどうするか。利用者さんたちが、例えばトイレに行けない方がトイレに連れていってくれと言えば、当然介護職は連れていくわけですが、一般的にデイサービスは非常に広い空間の施設が多いです。このお部屋のように広い空間で、トイレが一番端っこにあるパターンが多いわけです。そうすると、家で一歩先につかまるところがある環境の中で何とか自分でトイレに行けていた利用者さんたちが、我々の介護施設に来るとたちまち広くて自分の力で自分でおしっこすら行けなくなってしまう。そういったところで、やむを得ず職員たちに連れていってもらう。そういった中で、彼らは負い目、引け目を持ちながら人生を過ごすことになってしまうわけなのです。
なので、我々は厚生労働省に示していただいている1人3平米というルールをきっちり守って、3平米ルールの中で余計な空間をつくらないというところで、利用者さんたちがまず自分で一歩先につかまるところがある環境の中で、できる限り我々に頭を下げないで生活できるような環境をつくりました。
その結果、利用者さんが分散しない、かつ、余計な介護は発生しません。施設基準どおりの人員配置で済むようになりましたので、結果、余計な人件費の投資がなくなりました。介護福祉士年収で400万円、生活相談員には450万円提供できるようになりましたので、結果的に住宅ローンも組める、子供を私学に通わせることができるということで、やる気と定着がアップしております。
そして、最小限の設備投資を実現することになりますので、減価償却費もうんと抑えることができますので、申し上げにくいのですが、大変高い利益率を上げさせていただいている現状でございます。
そして、肝心なのは自立支援ケアに特化したというところなのですが、レクリエーションですとかお楽しみサービスは極力行わない。ただ、囲碁をやりたい、将棋をやりたい、カラオケをやりたいという利用者さんに対しては、私たちが提供するのではなくて、地域包括ケアの理念である地域のあらゆる社会資源を活用して応援をしていこうということでやらせていただいております。
その結果、職員たちが行事ですとかレクリエーションの開発をするストレスから解放されて、本来、彼らの専門性である自立支援について専門的にかかわることが彼らの非常に楽しい仕事につながっています。いわば、ソーシャルワークに集中するということでやらせていただいております。
そして、必要外の長時間サービスを行わないことに集中させていただいております。預かれば預かるほど正直介護報酬は高くいただけるのですが、利用者さんが本当に長く預かる必要があるかどうかをしっかり見極めた中で、適切なサービス提供時間をしっかりやっております。その結果、職員は余計な疲労、余計な消耗を回避することができて、結果的に働きやすい職場づくりにつながっております。
また、自立支援をやるにしても、何をもってして自立支援なのかわからない。先ほど申し上げたとおり、私たちはケアのアウトカムを明確に定義しまして、これを軸に仕事をさせていただいております。社会的自立支援アウトカムスケール、SIOSというものを開発しました。それをもとにやることによって、経験知識の乏しい人材でもポイントを押さえたケアに取り組めます。また、ケアの目的がしっかり統一されますので、個人の経験の差ですとか価値観によってのばらつきをしっかり抑えることができる。かつ、定量評価することができるので、よかったねという情緒的な判断ではなく、しっかりと定量評価をして、ばらつきなく安定して結果が示せるようになりました。
また、情報共有、ナレッジ共有のソリューションの目的的活用ということなのですけれども、ICTを導入すれば当然情報共有が容易になりますが、どういう目的で何のためにその情報を有効に共有するのかというところで、目的を持ってICTを活用しながら情報共有する。要するに、あるだけの記録ではなくて、無駄なテキスト入力がなくなる。自立支援を志向したテキストデータがしっかりとICTの中に蓄えられて瞬時に共有される。そういったところでしっかりとやらせていただいております。
そういった取組の中で、私たちの図で示しますと、基本的には過剰介護をしない。自立支援のしっかり基本的な取組として、生活支援の提供は最低限しっかりやりながらも、過剰介護をしない。
その前提の中で、現在の取組としましては自立支援介護、身体的な自立支援と社会的自立支援、2つに分けて捉えています。お体が少しでもお元気になったほうがいいと思います。これについてのアウトカムは、要介護認定度ですとか、あるいはBarthel Indexを活用しながら、身体的に自立支援のアウトカムを明確にして、しっかりと療法士が中心となって機能訓練に取り組んでいます。
ただ、正常な老化現象との見極めが大事です。どうしても人間は死を迎えますので、死を迎える中で、どうやって彼らが人生最後まで自分の居場所で自分らしく、存在意義を持って生き抜くことができるかが大事だと思います。そこを情緒的に判断するのではなく、SIOSという社会的自立支援のアウトカムを明確にすることによって、彼らの存在意義を見出す支援を明確にエビデンスに基づいて行うことをやらせていただいております。
実は、これらは既にデイサービスにある機能訓練加算に定義された内容を私たちがアウトカムを独自解釈してやらせていただいているところでございます。それに対して、このアウトカムを目指しながら、情報共有をしながらやっていく。結果的に、最終的には目的的に、自立支援を志向したデータをため込んだ中で、どうしても職員の力の差がありますので、将来人工知能に力をかりながら、いわゆるAIがコーチングをしてくれるような、有益なソーシャルワークができるようなコーチング機能を持たせていこうということで、カナミックさんと一緒に取り組ませていただいているところでございます。
これは私たちの取組を野中郁次郎先生のSECIモデル、知識創造理論に基づいてお話しさせていただきますと、まず目的を持った、アウトカムを明確にした暗黙知を、ICTを活用して共同化をしていきます。目的的に共同化された情報をみんなで目的的に表出化して、ケアの目標設定ですとか訓練の計画を立てて、そして、利用者さんにもしっかり参加してもらった上で同意をしていく。それによって形式化されたものから有益な目的的な計画をしっかり策定して、実際にケアをやっていく。この繰り返しをすることによって、自立支援を志向したデータがどんどん蓄積されていきます。なので、やみくもなデータを集めるのではなく、ちゃんと自立支援を明確に、目的的にしたデータを集める中でしっかりとAIに考えさせる環境をシステムの中でつくり上げて、これからますます蓄積してやっていこうと考えておるわけでございます。そういった状況でございます。
具体的なシステムについてのお話については、担当者のカナミックネットワークさんからお話をさせていただきます。
○石川竜太氏 カナミックネットワークの石川でございます。
先ほど、楓の風の小室さんからありました自立的な介護において、それをシステムのほうでどう実現しているかといったところ、その考え方等を少しお話しさせていただきたいと思っております。
今、出ております非常に極端な例なのですけれども、通所介護で行われている記録ですね。現場でまず記録をとってからというところになりますが、実際、その後に報告の様式であったり、御利用者さんに連絡するような連絡様式であったりといったところで、結構転記が多いというところがございます。ICTの中でこれらを解決するというのがほとんどですので、多くのシステムにおきましても、これら介護の記録の入力からさらに情報を活用するというのが通常行われているようなところになっております。
楓の風さんの中で、今、行われている内容でいきますと、記録のところは記録としてICTを活用してとっていきます。その後、実際に情報も利活用していく中で、転記をなくすというところは通常のシステムとしても行われているところにはなるのですけれども、特に楓の風さんの中では、先ほど少し話もありましたように情報ですね。活用して、それを次の介護に生かすであったり、御利用者さんの顔を見ながらその情報をもとに次のアクションにつなげるといった形で、ただ単に記録をとるだけではなく、その先の利活用のところですね。そこを最適化したシステムという構成をとっております。ですので、とった記録自身がよくありがちな帳票をつくるためのツールというわけではなく、その人の生活ですね。そういう記録をどんどん蓄積していって、会話をしていく中ですぐに使えるような、タブレットなどの端末を使えばその場ですぐ見られますしといったような活用をしております。
それによって、紙で出しているような状態ですと分厚いファイルを見なければわからなかったところが、今は会話をしながらちらっと見れば、その人の必要な情報であったり、次にしなければいけないアクションであったりがわかるようなところまで颯というシステムで持っていっている状態でございます。
先ほど、AIの活用というところがありました。現在とっている記録であったり内容は非常にまだテキストが多い状態になっておりまして、そこからAIの活用はまだ難しいところがございます。現在、大学の先生とともに、その項目自身の精査を行いまして、実際、AIで活用できるような項目セットをつくり出している図になっております。
これによってでき上がってくるものは、ここでも少し書かせていただいているのですけれども、実際、情報自体、この人に何が必要かであったりとか、もうそろそろこれを聞かなければならないような情報があるであったりとか、そういったサジェスチョンができるのではないかというところで互いに開発を進めているところになっております。これによって無駄な情報もなくなりますし、介護の質も上がる形になります。あと、現場でとっていく記録ですね。それに関しても非常に目的を持った記録になっていきますので、無駄が省けて現場だけでなく御利用者さんの介護の向上までつながるような、そういった取組になっているのかなというところで、現在もシステムを変えながらやっている形となっております。
○小室氏 以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、最後に社会福祉法人シルヴァーウィングの石川様から御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○石川公也氏 石川でございます。
日本の介護の現場は、大きな課題が3つあると思います。1つ目は労働環境の改善が挙げられます。2つ目が人手不足です。3つ目が利用者の自立支援ですが、なかなか自立支援に向けた取り組みができていない、この3つが大きな課題だと思っています。
これら課題を解決するものとして、介護ロボットを始めとしたテクノロジーなどが挙げられますが、では何から最初に取り組むべきかというと、私はやはり介護現場の労働環境の改善だと思っています。7割の介護職員が腰痛を持っていると言われています。
もちろん人手不足も深刻であり、私どもの介護現場でも課題ではありますが、もし私が私の職場でロボットを導入して人手を減らしていくと言えば「理事長は全くわかっていないな、それでなくても忙しいのに・・」と、職員から反発されると思います。ロボットを導入して人手を減らすと言うと、返ってテクノロジーやロボットの導入がおくれるのではないかと感じております。
そうした中で、私どもでは2013年に東京都産業労働局から補助金をもらい、雇用環境の改善と業務の効率化に取り組みました。大きく分けて2つの取り組みを行いました。1つ目が介護記録の電子化、2つ目が介護ロボットの導入です。従来、記録は手書きでした。電子化したことのメリットは、看護師は看護記録、介護職は介護記録、栄養士は栄養科の記録と、皆それぞれ記録をつけていましが、看護師の記録を介護士が見ることなく、情報共有はなかなか進まない状況でした。介護記録を電子化したことによって看護師が今どんなケアをしたかをリアルタイムで介護士は見ることができるようになりました。部署間の情報共有が図られたことで、時間のロス・ケアにおけるミスなどが減少し、結果、業務効率、ケアの質の向上が見られました。介護記録の電子化は、情報共有の進展、業務効率、ケアの質向上へとつながりました。
2つ目は介護ロボットの導入です。介護ロボットとは、大きく3つに分かれています。1つ目が高齢者の自立を支援する機器、2つ目が介護業務を支援する機器、3つ目がメンタルケア支援機器です。
こちらが私どもで導入している介護ロボットの一覧表です。排せつ介助は負担の大きな業務ですが、負担を軽減する有効な支援機器ないのが現状です。その中で自動排せつ吸引機というものがあります。排せつすると自動的に流してくれるという機器です。私どもでも一度実証試験に取り組みました。夜間帯の時間に限定し使用してみましたが、結果、確かに自動的に流してくれるのですが、体位をちょっと変えるだけで漏れるため、体動が制限されるという問題がありました。そのため皮膚の状態が悪化するといった状況が見られています。
私はそのときにうかつだったなと思ったのは、介護ロボットを導入したら、必ずプラス面もあればマイナス面もあるということです。体位変換の回数をふやすようにケアプランを変えるとか、機器の運用に合わせてケアも変えてゆく必要があったと、振返ってみて自分自身反省しております。
介護ロボットは大きく2つに分けて考えられています。1つ目は既存の製品にロボット技術を組み込んで機能を高めた機器です。ショーネという機器があります。こちらは介護ベッドが中央から2つに分かれ、片側がリクライニングチェアになるという機器です。現場では非常に重宝しています。従来、介護士が2人介助でないと移乗できなかった方が介護士1人で移乗の介助ができます。
2つ目が、従来の技術では困難であった機能を持った機器です。ホンダが開発した歩行アシスト機器があります。こちらを装着すると杖歩行の方が杖なしで歩ける方がいらっしゃいます。
導入している機器をいくつか紹介します。こちらがHALという装着型の移乗支援機器です。本来はベッドから車椅子などへの移乗支援のために開発された機器ですが、職員によると、腰痛の原因になるおむつ交換のときの中腰姿勢の保持が大変楽になるという評価でした。
こちらが先ほど御紹介したリショーネです。
こちらはスカラモービルまたはJ-MAXという階段昇降などの移動を支援機器です。私どもの事業所の周辺では、公営住宅の中に5階でもエレベーターがないところがあります。ショートステイ、デイサービスの送迎時に、従来は職員が抱えて降ろしていました。階段昇降機器を導入してからは、機器に乗ったまま昇降できるようになり、職員から非常に業務負担の軽減になった、と評価されている機器です。下の写真は、もっと利用範囲が広がらないか、という実証試験に取り組んだ時の写真です。施設からスタートして、歩道橋を渡って、地下鉄の階段を降りました。いろいろ課題はありましが、改良していけば階段昇降の出来る車椅子という利用も可能ではないかという感触を得ました。
障害を持った方にとっては、車椅子は単に乗り物ではなくて、社会と接する重要な道具です。階段昇降機器の車椅子化が実用化されれば非常にプラスなのではないかと感じております。
こちらが眠りスキャンという見守り支援機器です。本来は高齢者のベッドからの転倒・転落を防ぐための機器ですが、最近の機器は非常に高性能になっておりまして、睡眠状態やバイタルデータが24時間とれるという機器です。
こちらが先ほど御紹介したホンダの歩行アシストです。ホンダさんも将来的には市販したいと言っていますが、現状の課題としては、装着して転倒事故が起こったときに企業としての責任はどうなるのか、ということです。それでなかなか踏み切れないようなお話をしていました。ただ、いずれは杖ではなく、歩行アシストを装着した方が町中を歩く時代が来るのではないかと思っております。
こちらがPOPOというリハビリ機器です。患部を免荷して歩行訓練をするのですが、この利用者は恐らく歩行すること、立つことすら難しいだろうなという方が、POPOを使うと歩行訓練ができます。再び立つことができる、ということで非常に高齢者の方はモチベーションが上がる機器だと思っております。
また、平行棒ですと、訓練する距離が限られていますが、これは廊下があればずっと歩けますので、利用者満足度から見ても非常に効果的だと思っています。
こちらがコミュニケーションロボットでPALROです。私どもでも何回か実証試験に取り組みました。利用者の方に「今、何時ですよ」などと声かけをします。「8時ですよ」とか。そうしたことによって時間の感覚を取り戻したという方がいらっしゃいました。
認知症の見当識障害を改善する方法して、リアリティーオリエンテーションという療法があります。〝ここはどこ、あなたは誰〟といつも声かけをします。本来、もちろん職員がやるのですが、なかなか職員だけではできないものです。声かけするコミュニケーションロボットを活用し、認知症の見当識障害の改善ができないだろうか、という取り組みをこれから始めようと思っているところです。
こちらがセラピーロボットのPAROというアザラシ型のロボットです。例えば、利用者の方がしばらく入院し、退院して施設に戻ります。環境が変わると落ちつかない方がたくさんいらっしゃいます。また、認知症の利用者の方で常に不安感を訴える方がいます。こうした不穏、不安感の強い状態の方がPAROと接していただくことで、落ちつきを取り戻します。
私は思うのですが〝では、人間は健康で自立していれば幸せだろうか、そうではない〟と。心が癒やされる、ということも大事だと思います。私ども施設では、どうしても自立といった視点でのケアに注目してしまいますが、メンタル面のケアも大切ではないかと思っています。
介護職員の業務は大きく分けると2つあります。1つ目は専門的福祉サービスの提供です。2つ目は家庭機能の代替的な役割です。そうした意味では、生活支援ロボット、掃除ロボットなどを導入して職員の業務負担を軽減するという視点も大事だと思っております。
私どもでも掃除ロボットを導入しました。ただ、導入するときにメーカーから言われたのは「接触事故のリスクがありますから利用者のいる場所では使えません」デイサービスのような利用者の方が帰った後の掃除には使えますが、特養のフロアでは掃除ロボットは活用できないという現状です。
ロボットの活用方法ですが、ロボットにも得意な部分と苦手な部分があると思っております。例えば先ほど紹介した見守りロボットですが、24時間バイタルデータがとれるとか、画像が撮れるロボットもあります。私どもの特養では1時間に一遍、利用者の安全確認を必ず行います。夜間も同様です。従来、人の目だけで見守っていましたが、今は人の目プラスバイタルがとれるということで、利用者の安全性は非常に高まったのではないかと思っております。
また、人間には一人のお年寄りの方、利用者の方を24時間見守ることはできません。そういう意味では、非常にロボットに向いた仕事ではないかと思っております。
一方で、食事介助があります。今日は利用者の方の機嫌がいいとか、食欲があるとか、人の気持ちを推し量りながら進めていく業務は、まだまだロボットは難しいと思っております。
「あるべき介護施設は」と書かせていただきましたが、私もあと2年後には老人福祉法の対象になります。1981年から高齢者福祉の仕事に携わっています。従来、人手によるケアでした。加齢による身体機能の衰えはしょうがないが、幾つになっても自分でトイレに行きたいと思っています。それがかなえられる施設を利用したいと考えています。が、従来の人手だけの介護ではなかなか私の入りたい施設は実現できないでしょう。やはり今、人とテクノロジーの共存がどうしても求められているのではないかと思っております。
介護ロボット利活用の方向ですが、現状は業務負担の軽減です。しかし、いずれは人の作業をロボットに置きかえることも検討されていくべきだと思っています。見守りロボットにはその可能性があるのではないかと感じております。
介護ロボットの社会実装に向けてですが、ロボットの使いやすい環境というのは定型的な環境です。工場とか事務所などです。介護現場ではなかなかそういう環境を実現することはできません。最初からロボットを使うことを前提にして、これからは施設をつくっていくべきだと思っております。
しかしながら課題もあります。私どもでも今年の7月に新しい施設をオープンしますが、どんなロボットとロボットを結びつけたら一番効率的な業務ができるかと、どこかの企業に相談したいと思ったのです。いろいろな機器を結びつけて、こうやったら施設の業務が効率的にできる、といった提案をしてくれる企業はありませんでした。メーカーと介護現場を仲介するプレーヤーの存在がないことが大きな課題でした。
介護記録ですが、必要な介護情報は3つあります。実施した介護サービスを把握するための情報。心身機能の変化などサービス実施の効果を分析する情報。病状などを客観的に捉える情報です。
情報を共有できる組織をつくることで、共通意識がうまれチームケアに結びつくのではないかと考えております。
手書きの介護記録の課題というのは、やはり定型化されていないものがいろいろありました。こちらが導入している介護記録の画面です。現状は職員が自由記述で書いています。
導入してから実際に稼働するまでに4カ月ぐらいかかりました。最初はうちの組織に合わない、うちの施設に合わない、などなどいろいろな意見があったのですが、マンツーマンで職員に指導してようやく使えるようになりました。
介護記録というのは、50人いると49人職員ができて1人だけ手書きというわけにはいかないので、どうしても全員できるようにしなければいけません。たまたま2013年ごろ、日本の半導体の低調期がありました。この時期、定年近く、定年後の60歳を過ぎている技術系の方を雇用しやすかった環境がありまして、当法人でも何人か雇用しました。この技術系職員が入ったことにより、介護記録の電子化や介護ロボットの導入への取り組み、推進することができた、という経緯があります。
記録の電子化のメリットは、保管期間が無制限であり、過去の記録の検索が可能です。
記録と機器の連携ですけれども、私どもでもいろいろなロボットを導入した中で、課題としては、導入するたびにタブレットPCやスマホなどの端末がついて来るのです。ようやく今、これらが一つで管理できないか、といった取り組みが始まっています。こちらは私どもが今度新しい施設で採用するシステムですが。見守りロボットの記録をナースコールを通して介護記録に自動的に取り込める仕組みです。もちろん一つのスマホで管理できます。
全居室にカメラを設置しようと思っています。これはプライバシーの関係でいろいろ議論になるところですが、今の特養は個室化されています。安全確認で夜間部屋を訪室しますが、バイタルが24時間とれ、更にカメラで部屋の状況を確認できると、あえて個室の部屋に行って確認する必要があるのか、どうかです。行けば当然起きたり、起こしたりという状況になります。利用者の睡眠状況が把握でき、かつ安全を守るためにも、これらの機能を備えた見守りシステムを導入しようと考えました。
ただ、現状として、介護記録を電子化したものの課題もたくさんあります。今、取り組んでいるのが、重要単語の下には幾つかの例文が表示され、誰が書いても同じ文章で記録が書けるようにしようということです。
2つ目は、介護職員によって書いてある内容がばらばらであることです。ある職員は食事のことばかり書いているとか、ある職員は排泄に関する記述が多い。そうした中で、まず、この利用者にはどんなことに注目しなければいけないかということを画面上にはっきり出すようにしたいと考えています。
3つ目が、介護職員は作業中手が離せないという状況を踏まえ、まずは音声入力をし、後から記録をPCに入力するようにする、という仕組みです。その際には記録を起こすのは介護の専門職でなくてもいいのではないかという取り組みを始めようと思っております。
リハビリロボットというものがあります。これも課題が多く、データはとれているけれど、現状は機器が違うので、書く人が違うのはしょうがないが、書いている紙も違うという状況です。これも標準化、共通化していくことが大切だと思っております。
AIを活用する取り組みについてお話します。私どもは介護記録をAIで4回分析しました。結果として、リスクの予見が可能であるという分析結果を得ることができました。例えば誤嚥性肺炎のリスクが高まっているという予見については、過去に入院した人の記録を教師データにしてデータベースをつくることでAIが分析し、そこから誤嚥性肺炎を抽出し、リスクを予見するといったことが可能ではないかと思っています。いずれは介護記録を入力すると、リスクの高まりによってアラートが鳴る、といった時代が来るのではないかと思っております。
介護ロボットを始めとしたテクノロジー利活用の方向性ですが、人間の可能性の拡大だと思っています。加齢によってできなかったことがテクノロジーの力をかりてまたできるようになる。人とロボットが支え合って人間が幸せになる。それが大切ではないかと思っております。
非常に簡単な説明でございましたけれども、以上で私の報告を終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○守島部会長 ありがとうございました。
続きまして、質疑応答及び自由討議に移りたいと思います。ただいまの3つの御発表に関する質問とか御意見のある方は御自由に挙手をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
大竹さん。
○大竹委員 大竹です。
北九州市の清田さんに質問したいと思います。質問の前に、この取組は、効果をしっかりと検証されていて、エビデンスベースの政策になっているすばらしい取り組みだと思ったという感想を述べさせて頂きます。
さて、質問は2つあります。一つ目は、作業観察されて、それから導入されたインカムが非常に有効だったということですが、現場からはこういうものがあったほうがいい、効率が上がりそうだという提案はもともとなくて、作業観察して初めてこれが有効だということが予想されたという経緯なのか、そうでないのかということをお聞きしたいです。
もう一つは、こういうデータをとってボトルネックを見つけて、きちんと効果検証をすることに予算を使うことは、どの段階で計画されていたのか。予算をつける段階でそういうことが必要だということになっていたのか、こういった事業を進めていく上で、せっかくやるのであればこうすべきだとなったのかという行政的なところを教えていただきたいと思いました。
以上です。
○守島部会長 では、よろしくお願いいたします。
○清田氏 どうもありがとうございます。
まず1点目の導入の経緯でございますが、介護現場の方から声が上がったものではございません。経緯を言いますと、まず、介護現場の観察をして、そして、私どもが北九州産業学術推進機構のロボットを理解している者たちと介護現場の課題解決ができるロボットがあるかなと検討し、提案してみて、現場がこれだったら使えそうだというような意見を持って実証に入っております。
そういう意味では、導入の方法はそれだけで大切な技術が必要だと思っておりまして、今回、導入マニュアルをつくらないといけないなと思ったのはそのせいでございました。ロボットを入れてみたが合わないとか、実は思ったような効果がなかった、だめだったというがっかり度合いを既にチャレンジした施設から聞いておりました。マッチングさせる作業は、言い換えればロボットの知識と介護現場の知識と、それを融合させていく作業なので、現場からあのロボットを使えば効果があるというような客観的な発想はなかなかないと感じております。
もう少し言えば、初めからマッチングがうまくいけば、そして、それに慣れるところまで研修していけば、やはり思ったとおりの効果が出るのだなと。それは現場に合った、ある程度見込んだ上でロボットを入れておりますので、効果も見出しやすいと。がっかりさせることもなかったという点では、マッチングという作業はとても大切なのだと感じております。
2つ目の、事業に取り組んだ行政的な本市の経緯でございますけれども、一番のスタートは、地方創生という目的がございました。北九州は政令指定都市の中でも高齢化し人口が減っているまちですので、それをどう活性化していくかというところで介護現場の人材不足に着目し、また、本市が新日鐵等があった町ですので、ものづくりがプラスの力としてあるのではないかというところでした。安川電機もTOTOも地元にありますので、実はトップダウン的に介護ロボットに着手、チャレンジしてみたらどうか、地方創生の予算もこれであればとれるのではないだろうかと、そういういろいろな政策的な思いがあって着手し始めました。
着手し始めますと、いろいろ大学の先生方からの意見を聞き、やはり効果をどう見ていくか、機器を入れればいいというものではないということで、産業医科大とは当初から手を組みながらどうすると効果が見出していけるかということを検討してきております。
ただ、効果も手探りには間違いありません。やってみてどうだったか、これは効果として言えるのか、作業観察も先ほどのとおり、介護職員さんにいろいろな評価方法をやったのですが、心拍数をとろうと思っても、汗をかくので剝げるのですね。だめだなと。だったらどの評価方法で効果がとれるのかなと。全ての評価の方法が手探りという状況でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木委員 皆様からの発表が大変勉強になりました。どうもありがとうございます。
北九州市さんに1つだけ教えていただきたいのですけれども、この介護施設というのは、今はルールが変わっているのかもしれませんが、介護認定の度合いが高ければ助成金とか補助金が多く出るので、過去から言われていることですが、施設的に見ると施設に入居している方々をどんどん元気にしていくと、どんどんお金が減っていくと。逆を言えば、何もしないで寝ていていただいて介護度が進行していくと、助成金、補助金が増えていくので、よくしていくことにインセンティブがなかなか湧かないというのが過去にずっと聞いていた話で、これはなかなか複雑だなと思ったのです。
AIを導入して、当然ながら今日のお話のとおり、一番は労働していただける方々への負担の軽減や人材確保ということではわかるのですが、それによってその次には例えば先ほど癒やしのAIの御説明があったように、話しかけるとか、音楽を聞かせるとか、さまざまなことが考えられるわけです。そうすると、いい介護施設に入ると、自分の親たち、あるいは自分本人が元気になっていくのが理想なのだとすると、政策上の仕組みとして、AIを導入するというところに助成金があることはわかるのですが、その後、入居者が元気を取り戻していったことへの評価などは資金的というか、どういう仕組みになっているのか教えていただけますでしょうか。
○清田氏 介護現場は、頑張った施設には点数が加算されるようになっております。おっしゃったような意見に対し、そして、モチベーションの高い施設に頑張っていただくというような加算が厚労省のほうで仕組みとしてされております。
ただ、それで全ての効果が評価されているかというところまではなかなかいかなくて、人の配置が、何もしないほうが職員の配置を減らして、経営的にもやりやすいと。胃ろうも通して寝たきりでのほうがやりやすいねと割り切っているところに比べて、努力をしていろいろ機器を入れている施設というのは、持ち出しは多いし、職員の配置も基準以上に多く置いてあるし、自分たちの評価はどこで見てもらえるのかという気持ちは残っています。
そういう中で、ロボットやAIというのも、今年度の介護報酬改定の見守り機器は評価に入ってきましたが、そういう意味ではまだまだ評価がしっかりついてきていません。ただ、今後効果は現れやすいのではないかと思っておりますのは、介護現場の職員の方々が、介護人材不足の中でモチベーションが上がりやすい施設に傾向として集まってきているところがあります。先ほどの放っておけばいい介護をしているような施設では、介護職員の方々は自分たちでいい介護がしたくてその職を選んでいる方々ですので、放っておけばいい施設から離れていく。いい施設はどういうものかという定義はあるかもしれませんが、いろいろ努力してAI等にも努力していく、ロボットも努力していくという施設に集まってきている傾向があります。モチベーションも上がっていくと。
そういう意味では、自然淘汰するような介護職員の流れによって、それが評価につながってきているという自然の流れも実は起こってきているところがあります。介護現場に介護報酬をつけると、その分、介護保険料にはね返っていく仕組みですので、一概に加算をつければそれがいいとも行政としては思いません。頑張る施設に加算がついていく仕組みと自然淘汰の社会的な動きとバランスがとれるのがいいと思います。しっかり頑張っている人を評価していく傾向に進むべきと思いますが、加算で評価すればそれで終わるというものではないと思います。
○佐々木委員 ありがとうございます。
何となく機器を導入すると加算とか、そういうものはすごくわかりやすいと思うのですけれども、結論からすると、きっと本来であれば介護5だった人が4になったとか、2だった人が1になったというところで加算の評価がないと、下手をすると何もしていなくてもカメラだけつけましたとか、ITロボットを3台入れましたというと加算がもらえるような仕組みにならないように、ぜひ今後も御検討いただけたらと思います。これはコメントです。
○守島部会長 古賀委員。
○古賀委員 貴重なお話をありがとうございました。
北九州の清田さんに2つと、これはシルヴァーウィングの石川さんにお聞きしたほうがいいと思うのですけれども、1つ御質問させていただきます。
清田さんには、こういう体制をとる目的が一番最初に3つプラスアルファ、介護職員の負担軽減、介護の質の向上、そして、高齢者などの新たな雇用機会の拡大にプラスして、地元の産業振興という御説明がございました。
1点目、2点目は、データに基づいて割とクリアになったのですけれども、3点目の高齢者などの新たな雇用機会の拡大というのが、まだ何年かしかやっていないですから、そんなに顕著にあらわれているかどうかわかりませんけれども、具体的に何か数字なり事象があればぜひお聞かせ願いたいというのが一つです。
2つ目は、佐々木さんの質問と少し似通っているかもわからないのですけれども、介護をする側の意識あるいは質についてのいろいろなデータなどはよくわかったのですけれども、被介護者ですね。介護をされる人たちがこのことによってどう感じているかとか、どう思っているかとか、そういうことは何か拾い出しているのか、吸い上げているのか。介護される側にとっても自分で自立をしたいとか、自分のことは自分でやりたいという、いわば人間としての尊厳があるわけですから、その辺についてはどう考えておられるかという、この2点をお聞かせ願えればありがたいと思います。
それから、シルヴァーウィングの石川さん、私が誤解しているのであれば誤解を解いていただければありがたいのですけれども、介護現場にロボットとかAIとかIoTとか、要するに、進んだ技術を入れるのはコストがかかると。コストがかかるのでなかなか進まないのだということを片一方では言われる方もいらっしゃるのですね。そういう意味では経営的な考え方になるのでしょうけれども、ロボット等を導入されることによる費用対効果ついてはどうなのかをお聞かせ願えればありがたいと思います。
以上です。
○清田氏 まず高年齢者等の新たな雇用拡大という今の現象でございますけれども、既に介護施設の中には、シルバー人材センター等から高齢者が有償で何百円かの時間給をもらいながら、現場に入っている現状がございます。ただ、直接介護を行うというよりも、介護現場では一緒にレクリエーションをやるとか、介護職員の応援をやるとか、そういう役割で今のところは入っている状況でございます。
今回、高年齢者等の雇用拡大というのは、私どもが高齢者の多い政令指定都市ですので、初めからそれを目標に置いていたのですけれども、実際に抱え上げる機器を使ってみたら、本当に高年齢者の方が喜んで使ったと。自分は現場では介護で抱えることはできない職員として存在していたので、抱えなければいけない対象者がいるとほかの人を呼んだり、その人が出勤するのを待っていたりという引け目を感じたと。それに対して、機械を使うようになったら自分にも移乗ができるのだという女性の発言を聞いて、応援できるところがあるなととても実感したところでした。
まだそういうことを実感できるケース数は多くはないのですけれども、今後として目をつけているのは、男性の方で何か貢献したいという人にロボットという操作は魅力ではないだろうかと思って、来年度以後そういう実証も入れたいと思っているところはございます。
2つ目の入居者の方々自身の評価でございますが、当初からそれは絶対にしなければいけないと思っておりました。ただ、ロボットは治療する機器でもありません。そして、リハビリ支援の機器はございますが、特養施設で実証を行っていますので、リハビリの職員がつくったプログラムを介護職員さんがかわりにやるときに使うというような現状維持を目的とした導入の方法でしたので、なかなか状態が改善するという評価を入居者にするのは難しいなというのが当初からありました。
ただ、おっしゃるとおりに、意欲というところは随分効果として出てきます。ロボットを使ったりとか、リハビリ機器で、自分のリハビリにプラスアルファのいろいろな風が吹いてくること自体が入居者の思いに影響しますので、意欲も変わってきます。
満足度という項目だとか、QOLにつながるような項目で、現在はとっておりませんが、それはとっていかないといけないねと考えています。今回介護者に対しての効果が出てきたので、今度は入居者にとっての効果をあわせてやっていかなければいけないねと、考えている中途の段階でございます。
以上です。
○石川公也氏 まず、介護ロボットの現状ですけれども、10人いる介護スタッフを9人にすることは難しい。業務負担の軽減はできますが、人の代替はできない状況です。
そうした中で、どこに効果を求めるかということですが、1つは先ほど言ったように利用者の安全性が高まるとか、利用者が癒やされるとか、サービスの向上が挙げられます。 職員で言うと、HALを御紹介いたしましたが、装着型で移乗支援をするHALやマッスルスーツは現状では施設用の支援機器です。
在宅を訪問して介護するヘルパーで、私どもの介護職員でも腰痛になった人がいました。やはり在宅の現場は施設での介護より厳しい環境です。在宅介護の現場で使える機器はないかと探していました。たまたま、オランダ製ですが、レイボという装着型の移乗支援機器がありましてので、訪問介護用に購入しました。
そういう働く現場の労働環境を整えることが現状では効果といえます。導入することで例えば収益が向上するとか、ただ、将来的には人手不足は目に見えていますので、結果として機器導入していく中でより効率的な業務、生産性の向上と最近言われていますけれども、それができるようになればいいなとは思っております。今すぐに導入して目に見える効果があるかというと、それは残念ながらありません。そういう状況です。
○古賀委員 ありがとうございました。
○守島部会長 後藤さん。
○後藤委員 御説明ありがとうございました。
すごく興味深くて、いろいろなことをお伺いしたいのですが、絞ってお尋ねしたいと思います。感想もお話ししたいと思うのですが、特に介護ロボットの活用であるとか、センサー機器を多用されている。あとは情報端末などを入れることで働き方が非常に楽になられているというお話が共通してあったと思います。介護現場はかなり厳しいのだということは私どもも聞いている状況でしたので、こういった環境改善がどんどん進んでいくことで就業される方も増えたり、あるいは就業の過重さが減っていくことにつながることはすごく歓迎すべきことかと思っています。
その中で、幾つかあるのですが、皆様に共通してお尋ねしたいことは、ロボットかセンサーなどの情報機器についての進化はよく理解できたのですけれども、AIの利用について、御説明の中では何かこういうことをしたほうが良いといったようなサジェスチョンにつながるような使い方であるとか、あるいはリスクを予見するようなところまでの使い方があるというお話だったのですけれども、もう少しAIをどのように導入していく、あるいはこのような方向感の開発を期待しているということがあれば、それぞれお聞かせいただきたいと思います。
もう一つは、楓の風様とカナミック様に特化してなのですけれども、これは少し個人的な興味にもなるのですが、私の祖父母はもう大分前に亡くなったのですけれども、デイサービスに通っていたことがありました。目的的にケアをしていきましょうということで、レク等のお楽しみサービスは行わずソーシャルワークに集中していくという御説明があったのですが、結構ストイックだなと受けとめました。
特に私の祖父などは外に出ていってデイサービスを受けることにすごく抵抗を感じていたのですけれども、何回か家族が連れていく中で、レクみたいなものを楽しむようになり、祖母よりも率先していくようなことになったことがあります。そういった効果をどう捉えられているか。ソーシャルワークに集中するということと精神的な楽しさについてどのようにお考えなのかということをお聞かせいただければと思います。お願いします。
○小室氏 御質問ありがとうございます。
AIの活用は、次のレクリエーションをやらないというところとソーシャルワークがストイックに映るのではないかということが実はつながっておりまして、何をもってして自立支援なのかと。もちろん束の間のお楽しみですとか、歌を歌って気分転換することももちろん大事なことだと思うのですが、要介護状態はそもそもどういう状態なのかを考えたときに、手が動かなくなる、足が動かなくなる、歩けていたのが歩けなくなる。そういったことによっていろいろな家族だとかホームヘルパーなどにお世話にならないと生きていけなくなることだと捉えているのです。それは結構負い目引け目を感じませんかというのがまず根底にあります。
みんな優しいので、いろいろな手伝いもしてくれるでしょうし、楽しいひとときもくれるのでしょうけれども、ふと我に返ったときに、自分は人生80年、90年生きてきて、人にこんなにお世話をかけてしまうような生き方になってしまったのかと振り返ったときに、結構な負い目を持つわけですね。気がつけば私ももうすぐ50になるのですけれども、神社で毎年何をお祈りしているかというと、健康で長生き。何のために健康なのかなと思ったのですが、やはり子供たちに迷惑をかけたくないというところでやっているわけですね。
基本的に今は日本は高齢化が進む中で病院で死ぬのではなくて在宅で最期を迎えるのだという流れの中で、自分らしく生き抜いていく御支援をしていかないと、ずっと人にお世話になりっ放しで負い目引け目を感じながら人生の終焉を迎えるのはどうも違うのではないかというのが我々のスタートなのです。
そういった中で、レクリエーションを否定しているわけではなくて、例えば囲碁将棋をやりたいということであれば、囲碁将棋クラブに行ったほうがおもしろいわけですね。マージャンをやりたいということであれば、デイサービスで1時間集中してやることで楽しむのではなくて、本物の雀荘に行って怖い人たち相手にきっちりやったほうがおもしろいわけです。なので、私たちは地域にあるそういったレクリエーションと、いかに御本人の趣味嗜好だとか人生の過ごし方に合うか合わないかとか、ちゃんとマッチングさせる作業をソーシャルワークと捉えておつなぎしていきます。
カラオケも水割りを片手にママを口説きながら1曲歌ったほうが楽しいわけですね。そういったところで、疑似的な喜びではなく実際の社会の中で本質的に彼らの人生の過ごし方にのっとった応援の仕方をしていこうというのが私たちの仕事だと捉えております。
それをやるのは非常に難しいのです。非常にベテランのソーシャルワーカーであれば意外とそういったところが見えてくるのですが、人生の過ごし方に着目するのは非常に難しいのです。特に若い子。介護福祉士の子たちには非常に難しい。そんな彼らに、ちゃんと彼らが存在意義を見出すためにはどうしたらいいのかということを道具として与えたのがこのSIOSというアウトカムスケールなのですね。実はこれは千葉県の流山市で来月から導入が決定しているのですけれども、これをやってみんながちゃんと目的を持ってやっていく。ただ、それでも声かけですとか、何かをお勧めしていくというところでベテランの技術にかなわないので、このSIOSに基づいた人生の過ごし方のアセスメント情報をデータベースでためていきながら、どんな応援をしたのか、どんな支援をしたのかというナレッジをクラウドの中でしっかり共有しながら、AIに解析させて、AIにリコメンドさせて、その人に合ったいいリコメンデーションさせていくところでAIを活用していこうとビジョンをしてございます。
何しろ、私もこの仕事をやっていますけれども、正直、自分の施設にいつか通わなければいけないと思うとうんざりするのですね。できれば誰にも迷惑をかけたくない。ぴんしゃんころりでいきたいところですが、実際にはぴんしゃんころりにはいかないわけです。なので、どうやって自分らしく生き抜くか。いかに介護サービスを使わないで、最小限の上手な活用の中で人生を生き抜けるかというところに、AIの活用と今のカナミックさんと取り組むシステムのあり方があると考えております。こんな感じでよろしいでしょうか。
あと、AIについて、石川からも回答させていただきます。
○石川竜太氏 AIのところと楓の風さんのストイックなところを、ベンダーとしての視点でお話しさせていただきたいと思うのですけれども、楓の風さんは目的意識を持った形でやられているというのがあるので、非常にストイックなやり方をしている。これもやり方として非常にありだと思っていますし、レクリエーションなどをやっているデイサービスに関しても無目的かというと、中で見ると無目的に見えるところもあるのですけれども、使い方という中では非常に重要な位置を占めているとは思っております。
どちらかというと介護を受ける方のためにデイサービスがあるというよりも、御家族のほうのレスパイト的な要素として使っているケース、そういうプランを立てているケアマネジャーさんも結構多いのですね。家族などを介護している中で、介護で疲れたりするときにどうしても預けたいとか、そういったときに御活用いただくというのが、レクリエーションなどを中心としているところは多いのかなと思っております。
総合事業等でいろいろなものが増えてきておりますけれども、ある程度重度の方になると、通常の通所介護のほうでしか受けられなかったりしますので、そういったところでの活用はあるのかなと思っております。それはいろいろな経営の仕方があると思っていますので、ストイックにやるケースもありますし、レスパイト的なところを受け入れるやり方もあるとは思っています。
AIの活用に関してなのですけれども、今回お話しさせていただいた中でいきますと、楓の風さんの中でいくと、さまざまな情報をためていって次のサジェスチョンのようなところでの要素はできるとは思っています。そのできるという根拠というのは、別の事業の中で、ケアマネジャーのケアプランを立てる中で、もともとあるさまざまな情報をまだAIの手前ですね。統計的な手法で活用できないかというところで一度見たことがあります。結構きれいに分割できるところまではわかりましたので、そこから実際に教師データをつくったりなどをしていけば、実際に次のステップですかね。ケアプランを自動で立てるのはNGだと思っていますので、そちらに関してもサジェスチョン的な要素は強いと思っているのですが、そういったステップに行けるとは思っております。
それを解析するに当たって、問題となったのが、データが正規化されていないというか、同一的なデータがないであったり、文字情報ばかりなのでそこから解析するのは難しいというところですかね。シルヴァーウィングの石川様の発表の中にもあったように、いろいろな文字で、同じ表現がされていない、同じ内容でも別の表現になっているというのがあったのは見られたというのがありますので、現状、楓の風さんとやられている中でも用語の統一であったり、とり方の統一ですが、そこら辺の中身をきっちりと進めていくとAI化はそれなりにいくのではないかと思っています。
例えばベンダーであったりとか、実際の現場だけではやり切れないところがありますので、大学の先生が入られているとおり、学術的なところも踏まえてやっていくことで、これがより速く進んでいくのではないかと思っております。
以上、回答いたしました。
○小室氏 1つだけ追加でお話しさせていただきたいのですが、例えばAIを志向してデータをどうやって入れていこうか。通常の介護記録ですと、お風呂をやった、著変なしとかという記録になるのです。ここからAIが解析しようがない状態だと思うのです。
それが、我々はアウトカムスケールSIOSを用いて、これは全部ICFに準拠して組み立ててあるのですが、いわゆる人生の過ごし方、活動と参加の促進という捉え方で全てカルテデータが項目立てて入れられるようになっています。職員たちもそれを応援するために介護をすることになりますので、そういった記録の仕方になっていきますので、入浴実施、著変なしではなくて、例えば入浴の場合だと、入浴を実施した。本当は家のお風呂に入りたいと思っている。だけれども、もし転んだら家族に迷惑がかかるから、だから施設で入浴するのだというニーズが拾えてきて、拾えたのだけれども、それを重要な記録として残すか残さないかに差が出てくるのです。なので、出てきたこの目的的な記録をAIにしっかり学習させるところから有益な目的的な教師データが生まれてくると考えております。
なので、アウトカムの明確化は絶対に大事だなと思って、まず電子カルテの整理からしっかりやっていかないと、今はどうしても多くのベンダーさんが監査が怖いですから、監査に入って記録があるかないかというところで効率よい記録づくりのベンダーのいろいろなシステムが出ていますけれども、カナミックさんと我々が取り組んでいるのは、どうやって利用者さんたちが自分らしく生きていくかを支えるために効率よい電子カルテをつくっていこうということで取り組ませていただいているところでございます。すみません。余計だったかもしれませんが。
○石川公也氏 私どもの介護記録をAIで4回分析したことがあります。きっかけは、今は会社の名前が変わったようですが、ユービックという、法律事務所をAIで支援している会社が、NTT関東病院と連携して看護記録から転倒リスクの予見をできないかという取組をしているという話を聞きました。それならば、うちの介護記録でいろいろなリスクの予見ができないかということで、AIで分析してもらいました。
具体的には、誤嚥性肺炎と認知症と褥瘡と感染症、この4つでした。結果、私は技術的なことはわからないのですけれども、感染症を除いては、ある程度リスクの予見ができるのではないですかという結果でした。
その後、インフォコム、グリッド、三菱電機ビジネスシステムと、その3社に同じように分析してもらいました。ただ、分析の仕方が多少違っておりまして、グリッドはインターネット上に例えば誤嚥性肺炎ならば学術論文でどんな言葉がよく出現するかということでデータベースをつくって、介護記録を分析したということでした。結果は、リスクの予見ができる可能性があるのではないかという結果でした。
もともと依頼したきっかけは、従来の介護は職員の経験と勘というか、その部分が多かったのを、今、国でも取り組んでいる科学的介護ということを言いますけれども、そういうことの可能性がないかということで取り組んだ経過です。
いずれは先ほどお話ししたように、職員が介護記録を打ち込めば、前後のいろいろな記録と結び合わせてこんなリスクが高まっているのではないか、受診したほうがいいのではないかとか、そういうことがわかれば早期に受診に結びつけられますし、介護職員の業務負担は大幅に軽減されるのではないかと思っています。
ただ、その中でわかってきたのが、先ほどお話もありましたが、介護の記録の質です。自由記述ではとてもデータとして活用するのは厳しい。標準化とか共通化が今後必要ではないかと思っています。
今、私どもで取り組んでいるのは、いろいろな表現があるのをある程度定型的な表現ができないかということで、この重要単語の後は何種類かの文章の選択肢がある。もちろん自由記述も大事なのですけれども、その次にはこの人は何に注目しなければいけないかを画面に表示する。そして、音声入力と。そうすることによってデータとして活用できるよう記録の質を高めていこう、そういう取組も始めているところです。
お答えになっているかどうかわかりませんけれども、以上です。
○清田氏 私どもも非常にAIには期待しております。といいますのが、介護の現場の対象者は個別性の幅が非常に大きいところで、疾患一つにしても状態によって随分ケアの内容が違ってくるというところです。その中で統一的なということではなくて個別性をプラスアルファするための標準的なミニマム的なといいますか、そういうケアをつくっていくのは、実は質の担保のためにもとても必要なのだと考えています。
その標準化、ミニマム的な必要最小限と言えるケアに個別性を加えていくというところが本来あるべき姿なのだと思います。標準化に関しては、既に出ているケアプランの内容をデータでためていって、疾患との関係性、状態との関係性、人の行動との関係性によって、効果的なサービス提供はこういう状態であるというようなイメージです。標準的にはこうだよというものが出てくれば、さらにそれにプラスアルファしていけるという点で、AIによる力、AIに発展するためのデータベース化はとても期待したいところです。
また、データベースができれば、機器の間の連携も発展します。メーカーさん同士で連携について検討したときに発言が出たのは、介護現場での記録の標準化がこういうものであるとわかれば、例えば排せつ行為をしたときに、もうデータ化してそれを記録に飛ばすことはできると。だけれども、どの記録が標準化されるもので、どれが要らないデータでと整理されていないので、手の結びようもないのだと。そういう話もありますので、実はデータの標準化があれば今は進んでいないと言われた機器間連携、メーカーさんの連携というのも一歩踏み出しやすいというメーカーにとってもとても期待するところです。
さらに、働く人にとっても、先ほども出ましたけれども、手入力の時代ではないとみんな思っていると思うのです。音声入力をしたり、さらには介護動作をするだけでバイタルが飛んでいく。そういうことで言うと、それもとるべきデータが標準化されていれば、介護動作の中で記録するものが自動的にその動作をすれば飛んでいくというところにもつながっていきます。AIにつなぐためのさまざまな記録の標準化、AIによって効果的なサービスは何なのかが結果として出てくるというのは本当に期待したいし、現場にとっても待望しているところだと思います。
○守島部会長 ありがとうございます。
武田さん、お願いします。
○武田委員 今日は貴重なプレゼンテーションをありがとうございます。
本当に多くの気づきがありまして、感想も多く述べたいのですけれども、時間の関係もあると思いますので、幾つか質問させていただきたいと思います。
まず1点目なのですけれども、皆様の共通点として、人とロボットとの共生あるいは人とテクノロジーとの共生ということで、さまざまな観点から、つまり、働き手の負担の軽減と介護される側の質の向上という両面に注目されていることが大変よくわかりました。
それは大変よくわかった上で、あえてプラスアルファでの質問なのですけれども、北九州市の取組みの最初の1枚目の概観図の中では、先進的な介護の実現ということに加えて地元の産業の振興というお話もございました。また、石川様のプレゼンの中にも、ホンダの歩行ロボットの事例も踏まえると、今後普及をさせるためには消費者が転倒したときのリスクをどう考えるのか、メーカーの負担の問題等を御指摘されたところが印象に残りました。本当に介護現場に被用者にとってもプラスアルファになる形で普及を進めていくためには、公的負担だけではなく民間のビジネスで回っていくこと。それが持続可能性の一つのポイントではないかと私は思っています。
したがって、当初の導入時あるいは実証段階ではある程度公的な支援は必要になってくると思うのですが、持続可能性という観点で真に民間ビジネスでも回っていくようにするためには何が重要か、つまり、地元の産業振興に本当につながる点ではどのような取組みが必要なのかについて、1点質問させていただきたいと思います。
2点目は、本部会は、労働政策審議会の基本部会でございますので、労働政策としてこういうことが必要なのだという点があれば、この際、お話を伺えればと思っております。
例えば清田様からは人材育成に力を入れていられるということで、マスター制についてのお話もいただきましたけれども、今後、労働政策の上でこういったところを意識するといいのではないかというアドバイスがもしございましたらいただきたいです。
例えば、標準化の重要性は皆様が訴えられましたし、私は人材のマッチングも大事なのではないかと思っていますので、これからAIを活用していくという視点、あるいはシニアの方の就労をより促進させていく視点。それから、若い人にとっても介護現場が魅力になっていくにはどうしたらいいか。そして、需要と供給のアンバランスをどう解消していけばいいのか。これらの点について、もし皆様、お考えがありましたら、アドバイスとしていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
○清田氏 まず1点目の地元の産業振興を民間のほうでということなのですが、一つには開発・改良をしていくことの応援があると思います。介護現場にメーカーさんがどんどん自分から入っていくというほど近しい関係がなかなかとれていないということがあります。
それに対し、私どもは実証施設との間に入って調整するわけなのですけれども、お互いに分野が違うのでどう入ったらいいのかもわからない。介護現場からすると、メーカーがどこまでお世話してくれるのか、何か問題があったときにすぐ来てくれるのかと、思う。そういう非常にそれぞれの姿が遠いのだなと思う状況があります。
そういう状況に対して、本市では開発メーカーのコンソーシアムの方々には介護施設の見学ということなどもやっております。施設職員と直接意見交換をする場を持つとか、排せつというテーマを持って、介護現場とメーカーさんが一緒にディスカッションするとか、そういう応援をしている現状があるのです。
このように、今後導入するのにおいては、間に立つような専門家も必要です。ロボットであれば、本来、産業ロボットの場合はそれをお世話する人はメーカー側にいると聞いております。そのようなメーカー側にしっかり定着させていく専門家がいれば、非常に持続可能ではないかと思います。営業の中でしっかり質問を聞きながら活用について応援していき、介護現場に入っていきやすくなるのではないかという期待もあり、産業振興へも影響すると考えているところです。
2つ目の介護現場の人材なのですけれども、介護現場の中には非常に頼もしい方々がいっぱいいらっしゃいます。そういう方々が、今、介護人材不足という中で、自分たちの職が人気がないような職なのかというふうながっかりするようなことになっています。そうではなくて、自分たちは新たな分野、テクノロジーのこともわかり、介護現場もわかる。そして、人をマネジメントすることはとても難しいことだと思うのですが、今後、介護現場の中に高齢者も入ってくる。もしかしたら外国人も入ってくるかもしれない。ボランティアさん等の多様な人材が入ってくるかもしれない。そういうテクノロジーと多様な人材をマネジメントする介護職員の中でも高度な人材、そういう人たちの階層があれば、キャリアパスを描けるような姿があれば、介護現場の労働の中に光が当てられて、今、頑張っている人たちがさらに頑張りたいと思ってくれるのではないかという思いがしております。
以上です。
○武田委員 ありがとうございます。
○小室氏 いろいろと捉え方があるのですけれども、労働政策審議会でございますので、給料が安いというところで一つの意見が上がっていて、なかなかそこで人が集まらない、魅力がないというところだと思います。それがそもそもなぜなのかで考えたときに、先ほど弊社の発表の中でも介護職でも400万、450万稼げるようになるところがどう確保できるかだと思っておりまして、なぜそういった給料が払えないかというと、適切な設備投資ですとか、適切な人材配置投資ですとかができていないというところで、何か根本的な介護のあり方のパラダイムを見直していかないと、いつまでたっても介護報酬が安いからだという議論に終始してしまうのではないかと考えるところでございます。
担い手の捉え方で、必ずしも雇用だけではないのかなと思っておりまして、産業の振興との絡みもあるのですが、実は私たちはソーシャルワークという捉え方をしておりますけれども、将来AIを活用して、クラウド上で地域のいろいろなスーパーですとか、例えばタクシーですとか、ウーバーさんですとか、いろいろなものとつないで要介護高齢者の方々が自分らしく普通に生活していくために地域のいろいろな産業とクラウド上でつないでいこうというビジョンを持っています。それを含めてソーシャルワークと捉えていまして、そういったところで、最終的に担い手というところであれば、地域のいろいろな産業が結果的に担い手になっていくという捉え方をして、単に介護福祉士の資格を持った人間がどう支えるかだけではなくて、地域包括ケアなので地域全体でどう支えていくかという結論になるのではないかと捉えて、システム開発にいそしんでいるところでございます。
○武田委員 ありがとうございます。
○石川公也氏 産業振興ということはよくわからないのですが、見守りロボットでいいますと、最初はほとんどがベンチャー系の企業が多かったのでが、最近は、例えばコニカミノルタとか、リコーとか、凸版印刷かな。大手の企業が続々と参入してきています。どうも国の方針である程度ビジネスという言い方がどうかわかりませんけれども、市場が拡大するのではないかという見通しがあるからではないかと思っています。ですから、逆に言えば当初参入していたベンチャー系の企業が経営不振というか、倒産とか、うまくいっていないところが出ています。そういう状況です。
人材育成でいいますと、多様な人材がこれから入ってくると。今度は外国人技能実習生に私どもは取り組もうとしているのですけれども、そういう中でどう施設のサービスの水準を維持していくか。それが大きな課題だと思っています。
3つ目の標準化ですが、例えば私どもでケアプランをつくるときにアセスメントとします。そのアセスメントでも何十種類とあります。ですから、なかなか標準化というのは課題がたくさんあるのかなと思っています。
また、リハビリロボットからデータがとれるという話をさせていただきましたが、共通基盤がない。そういう状況です。共通のルールをつくると、各企業それぞれが切磋琢磨というか、競争がなくなって逆に進歩の妨げになるのではないかという意見もありまして、なかなか共通基盤をつくるのが難しい状況ではあります。
お答えになっているかどうかわかりませんけれども、そんな感想です。
○武田委員 皆様、ありがとうございました。
○石川竜太氏 すみません。少しお話しさせていただきたく、先ほどの持続化と標準化と労働の確保みたいなところなのですけれども、持続化のところでいきますと、いろいろな機器のメーカーさんがいろいろなものをつくってはいるのですけれども、先ほど少し話があったように、介護の現場とのつなぎがないというのが多いのと、つくっている機器自身、結構シーズベースでやっているケースが多くて、我々のところにも相談に来るのですが、これが何かに使えないですかというケースがやはり多いのですね。ではというので、我々は介護現場を知っていますので介護現場に行って話をするのですけれども、マッチしないというのがあります。
現状、実証でやられている中でもシーズベースで使えるのではないかとやっているケースがあるので、継続しないというのが多いというのは確かかなと思っています。
幾つかの例で持続できているケースでいくと、介護の現場の方と十分話した中でいくと、こういった目的で使いたいというところがあった後に、我々から実際に機器を探し込んで当て込んでいくと、基本的にはそれはもう持続的にいきますし、効果が出ている、効果も見えやすくなっているというのが実際です。なので、北九州市さんの話があったとおり、間をつなぐところがどれくらい今後生まれてくるのかが一つポイントかと思っています。
そこをどうやっていくのかという中で、今回今日の資料の別冊の中にもありましたけれども、コンサルなどでの補助金がつくようになったと思うのですが、ああいった中での活用も一つかなと思っています。あれが介護分野における生産性向上のガイドラインをもとにしているようなところだと思うのですけれども、そこの分野で経営のところにぐっと入り込んで、ここの部分に関しては機器を入れたほうがいいだろうというアドバイスのもとに進めることで、基本的には持続できるのではないかと思っております。
記録の標準化のほうに関していくと、先ほどあったように、難しいというのは難しいと思っています。介護の分野というと、学問として成り立っていないというか、まだでき上っていないというのもありますので、実際に進んでいないのかなというのが思っているところです。
いろいろな関係上、厚労省の別の部署の方々とも話はするのですけれども、その中でも記録の標準化であったり項目の標準化の話はされていたりはするのですが、なかなかまだ決まり切っていないなというのが現状かと思ってはいます。
ただ、どこかが頭を張ってやらないと、いろいろなところがいろいろなものをつくり出して、それらがみんなデファクトを狙ってどうにかしようということになっていくので、できればそこの記録の標準化は厚労省さん全体の中で急いでいただけると、全体的に統一ができるのかなとは思っています。
人材等の確保のところでいきますと、経営の体質を改善していかないと、なかなか給料を払えないというのがあります。これも先ほどの介護分野における生産性向上のコンサルティングなどにも関係してくるのですけれども、それ以外にICTの活用のところですかね。実際に介護の記録から情報共有、請求のところまで、ここら辺、全体的に一体的にICTを活用することによって、結構労働時間、特に残業時間は減っていきます。残業時間が減った分、その人の給料は減るのですけれども、全体的には給与水準を上げることができて、その企業自身の魅力が上がっていくのです。こういったところをうまく推進していくことで、人の確保ができるのかなと思っています。
介護の分野の方は実際に給与は低いといえば低いのですけれども、その給与だけで見ていない方も結構多いのもわかってはいます。ある訪問介護をやられている事業者さんなのですけれども、ほかの近隣に比べて給与水準は低いのです。ただ、ヘルパーの方が訪問介護で回る回数ですね。そこを徹底的に最適化していて、1日で回れる数を非常に多くできるようにしているような事業者さんがいます。そうすると、ほかのところより給与は高いのですけれども、1日に2軒しか回れないところが、そこの事業所に行くと1日3軒4軒回れて実質的に給料が高くとれるケースもありますので、こういった中では、先ほどあったようなAIなどでどう人を配置するかで最適化していくことによって、その企業自身の魅力を上げて、人材の確保までいけるのではないかというところは、我々のつき合いのある介護の事業者さんを見ていくと、そんなところがあるのかなとは思っております。
○武田委員 どうもありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに。
○佐々木委員 お時間のないところ、すみません。1つだけコメントで、これは多分事務局の方々へのコメントになるのかと思うのですけれども、今日ずっとお話を伺ってきて施設でのAIの導入と労働政策という関係が見えてきたと思うのですが、介護離職が増えてきている中で、結局大きいロボットは家にはなかなか置けないと思うのですけれども、本当の自宅でどういったタイプのAI、IT技術を入れることによって、例えば介護離職者を減らすことができる、あるいは離職しなくても短時間労働にすることで勤務をし続けることが可能になれば、労働政策上大変意味があることなのだろうと思うのです。
ですから、今日は施設の取組を伺ってきたので、今日にはふさわしくないと思うのですけれども、今後のヒアリングなのか、調査対象として、自宅でどのようなAI技術なり何らかのサポートを受けると個人が離職をしなくてもよいような介護負担を減らすことができるのか。直接経済効果あるいは間接経済効果というものが今後すぐには出ないと思うのですけれども、出てくるといいなと。周りに介護離職の男性たちが非常に増えてきているのも感じておりまして、この辺は今後と思っております。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、そろそろ終了時刻が近づいてきましたので、まだいろいろ聞きたいことはたくさんあるのですけれども、これで今回の議論は終了させていただきたいと思います。
委員の皆様、それから、来ていただいた、ヒアリングにお越しいただいた方々、非常にお忙しい中、改めて御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
最後に事務局から次回の日程について御連絡をいただきたいと思います。
○高松企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任) 次回の当部会の日程ですが、4月24日水曜日の開催を予定しております。詳細につきましては改めて御連絡いたします。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございました。それでは、本日はこのあたりで閉会とさせていただきたいと思います。
本日の会議の議事録につきましては、本審議会の運営規程により、部会長である私のほか2人の方に御署名をいただくことになっております。つきましては、後藤委員、武田委員に署名人になっていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
本日の会議はこれで終了といたします。ありがとうございました。