第13回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

日時

平成31年3月18日(月)10:00~12:00

場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)

出席者

(委員)(五十音順)
大竹委員、川﨑委員、古賀委員、後藤委員、長谷川委員、守島部会長、山川委員
(ヒアリング対象者)
中村 龍二氏(株式会社NTTデータ )
元木 剛氏(日本アイ・ビー・エム株式会社)
保科 学世氏(アクセンチュア株式会社)
(事務局)
土田政策立案総括審議官、村山労働政策担当参事官、高松企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任)、五百旗頭調査官(労働基準局労働関係法課)、名田企画官(職業安定局雇用政策課産業雇用政策)、東江企画法令係長(雇用環境・均等局総務課)、立石室長(人材開発統括官付政策企画室)

議題

(1)技術革新(AI等)の動向と労働への影響等について
(ヒアリング)
・株式会社NTTデータ 中村龍二様
・日本アイ・ビー・エム株式会社 元木剛様
・アクセンチュア株式会社 保科学世様
(2)その他
 

議事

 
○守島部会長 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第13回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたしたいと思います。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただき、本当にありがとうございます。
カメラはありませんね。
本日は、所用により、石山委員、入山委員、大橋委員、佐々木委員、武田委員、冨山委員、御手洗委員、森戸委員が御欠席でございます。川﨑委員はテレビ会議での御出席となっております。
また、本日は、委員の皆様方のほかに、本日の議題に関するヒアリングのため、株式会社NTTデータ、中村様、日本アイ・ビー・エム株式会社、元木様、アクセンチュア株式会社、保科様に来ていただいております。
議事に入ります前に、本日の審議会の説明はタブレットを用いて行いますので、初めに事務局より御説明をお願いいたしたいと思います。
○高松企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任) 本日の部会もペーパーレスで実施させていただきます。
お手元には、タブレット、スタンド、スタイラスペンを配付しております。使用方法については、操作説明書を机上に配付しておりますが、御不明な点がございましたら、お近くの職員にお声がけください。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 それでは、議事に入りたいと思います。
本日の議題は「技術革新(AI等)の動向と労働への影響等について」です。
本日の進め方について御説明いたしたいと思います。
最初に、ホワイトカラー分野における各社のAI等の新技術の導入事例や労働への影響、今後の見通し等について、先ほど御紹介申し上げました株式会社NTTデータの中村様、日本アイ・ビー・エム株式会社の元木様、アクセンチュア株式会社の保科様の順にお話をいただきたいと思います。
続いて、3社の皆様のプレゼンが全て終了した後にまとめて質疑応答と自由討議を行います。
最後に、事務局より次回の基本部会に関する事前の説明をしていただいて終了といたしたいと思います。
なお、資料1として、前回第12回のヒアリングの概要を、参考資料1として、同じく前回第12回の資料4「ホワイトカラー分野において導入が進む新技術について」を添付しておりますので、適宜御参照いただきたいと思います。
それでは、各社からのヒアリングに移ります。
最初に、株式会社NTTデータの中村様からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中村氏 おはようございます。NTTデータの中村と申します。本日はよろしくお願いいたします。
それでは「RPAの導入状況について」というところです。現在「RPA」という言葉を聞かれている方も多いと思いますけれども、働き方改革に資するツールということで、今、こちらがどのように導入されているかということを御紹介させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
そうはいっても、RPAはどんなものか、御存じない方もいらっしゃるかもしれませんので、まず初めに、簡単なデモ動画を見ていただこうと思います。これを見ていただくことで、まず、どういうものかというのが簡単にわかっていただけると思っております。
デモ動画の路線定期代情報の検索というものを開かせていただきます。どういうデモか簡単に御説明させていただきます。社員の方の定期代、どこからどこまで通勤区間か、幾らかというのを申請すると思うのですけれども、それが本当に正しいかどうか総務の方がチェックする。チェックする際に、ウエブの乗りかえ案内みたいなものを見て定期代を検索する。今まで手でやっていたものをこちらのRPAツールで自動で実施するというデモでございます。
こちらがRPAの画面になります。左上の実行ボタンを押すとエクセルファイルを自動で開いて、エクセルファイル上で通勤経路や定期代、申請されている値が表示されております。この駅名等を記録して、自動でインターネットエクスプローラーを起動して、出発・到着も自動で検索します。それで、料金の安い順にクリックして、このルートに関して定期券の価格をクリックして価格のところを覚えさせます。これを先ほどのエクセルの行数分、自動で繰り返します。今、裏でツールが走っている状況です。ツールがこうあって、定期代検索が終わりましたら、最後にエクセルのほうに戻っていきます。ここで、実際に乗りかえ案内で検索した定期券の値をツールのほうで埋めていきます。例えば上から2番目の方は、検索した値が実際の申請の値と違っているのでチェック欄にバツをつける。今まではこういった作業を手でやっていたと思うのですけれども、こういう操作を全て覚え込ませて自動で実施する。そういうものがRPAのツールでございます。
もう一つ、実際に例を御覧いただこうと思います。今度は、RPAはどうやってシナリオをつくるのかというところで、シナリオ作成という動画を見ていただこうと思います。
向かって右側のほうに住所管理システムというダミーのウエブシステムがあります。基幹システムでも何でもいいと思います。こういうものでシステムに対して操作する。よくあることだと思います。こういうものに対して、この左上の「編集・記録」と書いてある赤い丸ボタンをクリックしますと、こちらで実施した操作を自動的に記録して、左側のフローチャートの画面のところに、どういう操作を実施したかというのが逐次記録されていきます。もう一回この「実行」を押すと、記録した操作をそのまま実施することができる。そういった形で簡単にシナリオをつくることができる。もちろん、細かいところとかは修正する必要があるのですが、今、実際にPC上でやっている操作を記録させることで自動化することができるといったものがRPAツールでございます。
では、資料のほうに戻って、もう少しイントロダクションを続けさせていただきます。
シナリオ作成のところはちゃんと御覧いただけなくて申しわけないのですけれども、実際に動いている様子は御覧いただけたかと思っております。
今、このRPAツールは、大手金融機関様から始まって、地銀様、信用金庫様等、急速に普及している状況です。加えまして、昨年は自治体様のほうでもRPAの活用推進ということで動きが出ておりまして、つくば市様等は共同研究を開始ということで、日本で最もロボットが活躍している自治体にという形でRPAに力を入れていただいているような状況でございます。
では、そもそもRPAというのはどういうものなのか。今のイントロダクションを受けてもうちょっと詳細に説明させていただきます。
RPAというのはロボティック・プロセス・オートメーションの略になりまして、簡単に言えば、ルールエンジン、ルールに従って機械学習、人工知能なども活用しつつ、ホワイトカラー業務を効率化・自動化する仕組みのことになります。仮想知的労働者、デジタルレイバーとも呼ばれることがございます。
下の図を見ていただくとわかるかと思うのですけれども、今まで工場等ではロボットを使うというのは当たり前だったかと思うのですけれども、右側のほうのホワイトカラー、実際の事務作業のところではまだ自動化は行われていなかった。先ほど見ていただいたような、PC上で動くソフトが人間のかわりにオペレーションをするといったものがRPAでございます。
従来の発想との違いというところで、先ほどの工場とオフィスの違いをもう一度御説明させていただきます。工場側のほうですと、メーンとなる第1層に生産設備があって、その上に産業用ロボットがあって、実際にそこで人が働く、3層構造になっています。オフィスのほうでは、今まで基盤となるようなところは基盤システムERP等を入れていただきました。実際働いている人もいました。産業用ロボットに当たるような間のところが自動化されていなかったのではないかというのがRPAの目のつけどころになっております。
次のページを見ていただくとより一層わかるかと思うのですけれども、多く作業が発生した1層と呼ばれているような部分はシステムで賄えます。そのほか、人間の判断を必要としたり、細かいところは3層で今までどおり残ります。ただ、システム開発ほどではないけれども、それなりに作業量があるような2層のところ、システム化対象とされていなかったところの作業を自動化するということで効率化を図るのがRPAツールでございます。
RPAを導入するメリットはどういうものかといいますと、こちらに書いてあるとおり、Q・C・D、それぞれの要素やメリットが享受できるのですけれども、一番大きなところで言えば、この下線が引いてあるようなところです。品質、人為ミスの削減による業務品質の向上。自動化しますので、ルールに従って正しい動きを何度も繰り返していただく。あと、速い。リードタイムの短縮ということで生産性が向上される。自動化なので、ソフトがやれば、人に比べて10倍ぐらい早く操作を行えるところがありますので、生産性が向上します。実はストレス減というのも結構大きい。今まで反復大量作業を繰り返していてストレスが多かったとか、わかりにくいシステム操作をやっていた、そういうものから解放されるといったところがRPAの大きな導入メリットになっております。
次に、今、RPAはどのぐらい導入されているのかというところを簡単に御説明させていただこうと思います。
11ページ目の「RPAの導入の現状」というところです。こちらは、RPA BANKという会員制サイトからの回答の状況になるのですけれども、既に大企業様では約40%の企業様がRPAの本格展開に進んでいる。先ほども、大手の金融機関様に始まって、いろいろな企業様に使っていただいているという話をしましたが、大手の企業ではかなり導入が進んでいるような状況です。
ここで着目しているのは、300名未満、いわゆる中小企業というところでも、トライアル等で何らかの形でRPAの導入に約50%の企業様が取り組まれている。ということで、大企業から始まった波というのが、中小企業を始め、種々さまざまな規模の企業様まで波及しているという状況です。おかげさまで、我々のほうもNTTデータから既に2300社以上のユーザー様にトライアルや実際に購入いただいているところで、非常に多くの広がりを見せているという状況でございます。
あとは、導入です。今、日本の話をさせていただいたのですけれども、諸外国の導入状況と比較するとどうか。もともとRPAというキーワード、横文字というかアルファベットであることからわかると思うのですけれども、海外のほうが先行して導入されているところがございます。日本とどういうところが違うのか、我々なりの解釈でまとめたものがこちらになります。
海外では、トップの意思決定のもと、全社的にRPAツールを導入する事例が比較的多くございます。大規模導入で、こういうRPAツールを入れたから現場で使ってねと。先ほどの1層、2層、3層でいうと、1層の基幹システム側に近いような形でツールを入れるというのが結構多い状況です。それに合わせたツール。ここに書いてありますBluePrismとかAutomation Anywhereといったツールが比較的多く導入されています。
一方、日本では、先ほど紹介させていただいた、我々でも取り扱っているWinActorという製品等々は、現場の「カイゼン」活動の延長線上でボトムアップで導入されることが多いのが特徴なのかなと思っています。なので、現場主導で小規模の導入。現場主導といっても、間接部門の方もいらっしゃれば、実際に反復業務が多いような業務部門の方でも、そこの主導で入れていただくようなこともございます。現場主導で小規模導入から入れる。ある程度現場へ入ったら、その後、トップダウン型と組み合わせて全社展開しようといった流れです。今、世界の中でも共通語になっている「カイゼン」活動といったようなところの延長線上で、業務プロセスを見直すといったようなところと非常に相性がよくて、入れていただいているというのが特徴でございます。
次に、RPAをどういうところで利用していただいているのかという事例について御説明をさせていただきたい。
まず、総論的なところの話を2つほどさせていただこうと思います。
そもそもRPAが適している業務は何かというところです。これは大きく3つございます。
まずは、先ほどのようにPC上でソフトを御覧いただいたかと思うのでわかるかなと思うのですが、情報が電子化されているもの、構造化・正規化されているもの、要するにソフトで扱える形式になっているということです。
2番目が定常的に発生するもの。操作を記録したり、ロボットに覚え込ませるために作業が必要になりますので、1回限りとかいうものだと余り効果が出ないので、何回も繰り返すようなものが効果が高い。
あとは、処理方針や判断ルールが明確なもの。ルールに落とし込むというところなので、ルールが明確でないものはうまくいかない。
こういうふうに3つの指針に照らし合わせて考えると、RPAはかなり多くの業務に適用が可能かなと思っております。その中でも、間接業務とかはよく言われますけれども、それだけではなくて、ツールをさわってみて、実際にこういうところにも適用できるのではないかというところで、例えば、間接業務でない、営業の中で適用するといった事例もありますし、どんな中でも結構いろいろ適用できるというのがRPAの特徴なのではないかと思っております。
次に、個別の導入の事例を話す前に、先に結論めいたところになるのですけれども、利用事例、導入した後、一体どういう効果があったのだろうかというところです。こちらはMM総研が調べた結果からとってきているのですけれども、我々のほうで現場で実際にヒアリングしているものと感覚としてはかなり近いところがあるかなと思っています。RPAを入れて一番満足度が高かった理由は、業務が楽になったと。人を減らしてコストを下げるというか、もしくは付加価値の高いところに展開するというのもございますけれども、どちらかといえば、今、既に人手不足や長時間労働といった課題があって、そちらに対してRPAを入れることで業務が楽になったというところが非常に大きいです。先ほども申し上げたように、ストレスが結構たまるような業務に対してRPAというのは非常に有効だなというところがあります。例えば、単純に反復で、繰り返すとか。あとは、繁忙期だけものすごく忙しくて、しようがないから人手で歯を食いしばって頑張らなければいけないといったところに対して、RPAツールを入れることで業務が平準化されるとか、単純に繰り返す作業をやらなくて済む。そういう精神面での満足度も結構高いというのが1つの特徴でございます。
こちらは、実際に導入された企業の方から、ちょっと繰り返しですけれども、バックオフィスのメンバーをフロントの営業に転換できたといった話ですとか、年度末とか繁忙されていたのがうまく平準できたといった声も聞いているところでございます。
何個か具体的な事例を御紹介させていただこうと思います。こちらは事例の具体的な中身というよりは、さまざまな業務・業態で適用が可能だというところを少し理解いただければというところで出させていただきました。
1つ目が旅費精算の確認業務です。こちらはデモでもお見せさせていただいたところになります。総務や人事の方では比較的よくあるようなところなのかなと思っております。先ほどは定期代でしたけれども、旅費でも同じような形です。これも担当者が旅費精算のシステムを入れて、旅費精算を入れた後に、それが本当に正しいかどうか突き合わせる際にウエブのシステムで確認を行う。今まで手で行っていたようなところをWinActorで自動化することで、担当者のチェック稼働の完全自動化が実現できましたといった例でございます。こちらは、RPAを使うことで、社内のシステムと外部のウエブシステムを簡単に連携して自動化できるという例でございます。
次もよくある例で、案件情報の入力業務。インプットとなるようなものを人が転記してシステムに入れる。そういうふうに抽象的に言うと、かなりよくあるような業務なのかなと思います。こういうものも今まではお客様ごとに異なる用紙や注文書が届いて、営業支援部門で転記していて、業務量が月に約600件、転記ミスも発生するといったところが、RPAを導入することで、正しく自動入力して転記ミスゼロに。品質も向上できるようになったといったところで、作業稼働も減りましたし、転記ミスもゼロになったと。案件情報の入力業務以外でも、何らかシステムに入力するというのではよくある例なのかなと思っております。
あとは、この督促業務自動化事例というところもそうです。同じような形で、こちらは異なる複数のシステムから情報を検索して、その情報を照合して次の処理を行うといった例です。今までは基幹システムから滞納リストの情報をとった後に、その滞納リストにある情報をキーに顧客管理システムがさらに情報を付加して、それを督促係に渡していたというのが督促業務の例なのですけれども、そういったシステムに対する操作も全部自動でRPAツールが行うことでミスもなくなりますし、作業の効率も上がるといったところをRPAの事例として紹介しております。
次も同じような例なのですけれども、こちらを挙げさせていただいたのは、JDM悪質業者照会サービスといった、ほかのウエブサービスが行っているようなものとも連携してRPAで自動化できますよという事例で御紹介させていただいております。
こちらもちょっと割愛させていただきますが、システム運用業務等でも自動化ができるといったところになります。
次の例は、次のところにもつながりますので、少し説明させていただきます。先ほど電子化されたものでないとRPAは活用できないという話をさせていただいたのですけれども、紙というのは結構根強く残っているところもあるのかなと思っております。そういうところでは、OCRを導入して、この例では請求書ですけれども、請求書をデータ化することで、RPAとうまく連携して自動化したといった例でございます。初めに請求書が来たものをスキャンして、OCRソフトでテキストデータを作成。テキストデータを作成した後に、もともと持っている経費精算のワークフローとその結果を突き合わせることで、見積金額がちゃんと合っているかとか、遡及ではないかとかというところをRPAソフトのWinActorで自動でチェックするといったところで、自動化して、生産性を向上して、質も上げたといった例でございます。
今、見ていただいた何個かの例、見ていただくとわかると思うのですけれども、特にこの業務だからといったものは余りないというのがわかっていただけるのではないかと思います。システムと連携するとか、手でオペレーションする操作があるもの、かつ、それが大量に繰り返されるものは、RPAを入れることで生産性向上の効果がかなり見られるといったものでございます。
続いて、少し違う切り口の話で、RPAとAIを連携した例を御説明させていただきます。
まずは、先ほどの利用事例の最後で話をさせていただいたようなOCRとの連携です。OCRを使用することで、今まで紙なのでRPAと連携できないといった制約がなくなるといったところです。こちらは簡単にデモ動画で紹介させていただきます。インテリジェントOCR動画というものです。
通常のOCRと近いのですけれども、初めにどこを読むかをこのような形で指定をさせていただいて、出力するときの形式等を事前に選んでおきます。この項目はどういう数字なのか、どういう読み取り項目なのかというところを指定して、これで読み取りのモデルを1回つくった後に、実際、読ませる帳票をアップロードさせて読み取りを開始しますと、このような形です。
これぐらいの簡単なフリーピッチとかですと、今までも読めていたりはするのですけれども、帳票OCRとかですと、升目に書いたものでないと精度が高くなかったといったところが、AIの技術を使うことで精度が飛躍的に進歩しておりまして、氏名や銀行名、支店名といったところについては非常に高い精度で認識ができるものでございます。認識した結果等は、後ほどCSV等に出力して、後続の処理とも連携ができるといった例になります。
実際どのぐらい読めるかみたいなことは、こちらの例のほうがむしろわかりやすいかなと思うのですけれども、アンケートの自由記述欄。今までこういう複数行で自由に書いているものは、OCRにしても全然読めないところだったかと思うのですけれども、こういうものもOCRにすることで精度が高くなる。住所も読める。今まで紙だから諦めていたようなものが、電子化することで、RPAとつないで効率化ができるといった事例でございます。
ほかに紙以外でも、音を入力してやるといったものでも、WinActor、RPAツールと連携して、例えば会議室を予約して、ホテルを予約してとかいったようなものが実施できるという例でございます。
最後に、その他の変化というところ。キャリアプラン、RPA導入によって働くキャリアプラン等々いろいろ変わっているところがあると感じておりますので、そちらを簡単に説明させていただきます。
従来ですと、例えば間接部門の財務や経理の方というのは、その部門での基礎知識をどんどん伸ばしていって、マネジメントスキルを身につけてキャリアアップをしていくといったところが、RPAツール等を導入していただくことで、まずはRPAを入れて改善を推進するといったものと、ITを活用するといったところの2つの軸ができる。労働者とロボットを両方ともうまく合わせて生かすスキルが身についているというところがございます。現場の方も、RPAをやることで、今まで財務とかしかやっていなかった方が輝いているというか、RPAの第一人者として、ITに対してどんどん入れていこうみたいな意欲も湧いているという例も現場では聞いておりますので、RPAツールを皮切りにして改善やIT活用というところで、スキルが未熟でキャリアアップができるといった例がございます。
あとは、RPAを1つのスキルの軸として、派遣技術者の方がRPAを実際に連携してRPAの技術を身につけることでキャリアアップをしていくといった例ですとか、RPA人材というのは、今、人材市場で認知されているといったところもあります。RPAを使いこなすには、ものすごく簡単というわけではないのですけれども、プログラミングとかよりはハードルが低いということで、遠隔化などのサポート技術等を組み合わせて、育休で時短勤務の方はRPAを使って技術者になりたいとか、障害があって移動が困難だけれども、家で作業ができるといった方がRPA技術者になったり、今までプログラミングをやっていたという方が、定年退職後、自分の技術力を生かしてRPA技術者になりたいといったところで、RPAを皮切りにして活躍の場、キャリアアップの場が結構増えているというのがございます。
すみません。少し長くなってしまいましたが、以上、RPAの導入状況について御説明をさせていただきました。ありがとうございます。(拍手)
○守島部会長 中村様、ありがとうございました。
続いて、日本アイ・ビー・エムの元木様から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○元木氏 皆さん、こんにちは。日本アイ・ビー・エムの元木と申します。私からは、AIの活用状況ということで、特に企業でのAIの活用ということで御報告させていただきたいと思います。
まず初めに、私たちは、調査とか、そういったことを大々的にやっているわけではないのですけれども、毎年、全世界のCEOの方を対象にインタビューをしていて、その中で、2年ぐらい前から、AIの活用についての意識調査ということでレポートを出させていただいています。まず、そこからちょっと見ていただこうかと思います。
全世界で6000名ぐらいのCEOの方のインタビューをしているのですけれども、その中で、日本は約600名のCEOの方にインタビューしました。AIの推進を強く意識して実践されている経営者の方を、ここでは「コグニティブイノベーター」という名前で呼んでいるのですけれども、日本の場合は、インタビューした中の上位15%がそういった層に当たるという分析がなされています。グローバルの平均が大体10%。実はこの調査を始めた当初の2016年は約5%ぐらいだったのですけれども、そういった状況になっています。当初から、日本の経営者の方はAIの導入に非常に積極的というか、非常に意識が高かったり、情熱を持っているという印象を私たちも持っていました。そういうこともあって、私たちのAIシステムは、当初、英語版だったのですけれども、次に対応したのが日本語であったということがございます。
ただ、日本の経営者の方は、ほかの国と違ったところに力点を置いているというのが次のチャートです。
そもそもAIが企業の中でどういったところに使われていくのか。この絵では、フロントオフィス、ミドルオフィス、バックオフィスの3つの層。ミドルオフィスという言葉を使うことは余りないかと思うのです。フロントオフィスというのは、どちらかというと顧客接点に当たる部分です。バックオフィスは、人事であるとか、財務であるとか、法務であるとか、ITであるとか、そういったオフィスワーカーを後ろで支えるような業務。「ミドル」と書いているのは、イノベーション(研究開発)とか、製造技術とか、かなり専門性の高い領域で業務をしている人たちということになります。
この中で、日本の経営者がトップに挙げている投資領域というのは顧客サービスで、これは非常に際立っているのです。海外では、平均的に見ると、顧客サービスは全体で13の業務領域の中の7位になるのです。それに対して日本の経営者はこれをトップに持ってきていて、その後に、営業であるとか、財務であるとか、いろいろな分野が続いている。
海外を見ると、特に米国とか中国とかは、イノベーションであったり、セキュリティーであったり、そういった領域がトップのほうに来ているということで、同じAIというテーマでも、狙っている領域が結構違うのかなと感じています。
ここから具体的にAIがどのような領域に適用されているのか、その現状を整理してまいりたいと思います。
AIというのはいろいろな解釈がされるのですけれども、典型的な適用パターンとしてこの絵にまとめてみました。私はこれを5つのグループにとりあえずまとめたわけですけれども、左から右まで、対象にしているデータの内容だとか、そういったところでかなり違いが出てまいります。左側2つは、どちらかというと、従来のコンピュータが扱ってきたデータ。例えば数値データとか、センサデータとか、リレーショナルデータベースとか、そういったものに入っているデータを解析して、ビッグデータアナリティクスとか呼ばれているような、そういう分析手法の中にAIの技術が入ってきている。例えば、これをもとに需要を予測するとか、在庫を予測するとか、発注を最適化するとか、工場のロボットを制御・コントロールするとかです。これらの分析を学習ベースでやっていくとか、そういうことが左側のところから順番に来るものです。それが発展していくと、例えば自動車の自動運転だとか、そういった領域もこの領域に入ってくるのかなと思います。
この絵で言うと、この真ん中の「人との自然な対話質問応答」の領域が、皆様、昨今、AIとして一番イメージされるものではないかと思います。先ほどの御紹介の中でもAIスピーカーの話とかが出てまいりましたけれども、ロボットと対話をするとか。最近ではチャットボットと言われるものがありますけれども、このあたりから自然言語であるとか、さらに画像とか音声とか、コンピュータが扱うのは余り得意ではないのだけれども、人間は非常に得意であるような分野のデータを扱った人工知能が出てまいります。
右側のほうに行くと、そういった自然言語の活用を通して、専門性の非常に高い知識を扱うような領域、専門家の判断をAIが支援するようなパターンが出てくる。
それから、これはまだまだ今後の話になるかもしれないのですけれども、人間の創造的な、クリエイティブな活動を支援するようなタイプのAIといったものも徐々に事例が出てきているという状況であるかと思います。
この中で、ホワイトカラーの方々に関係する分野というのは、主に真ん中から右側のほうに行くのかなと考えています。こういったAIの適用パターンというのを意識しながら、実際のオフィスでの業務というところにマップしてみたのが次の絵になっております。
この絵では、AIの能力とか、機能レベルだとか、そういうのを縦軸に置いて、だんだん難易度が上がっていく軸にしています。それから、先ほどあったフロントオフィス、ミドルオフィス、バックオフィス、逆の言い方をしますと、業務のエンド・ツー・エンド、バリューチェーンみたいなものを横軸にして、その中でAIがどのように活用されているのか。私たちはよく「ユースケース」と呼んでいるのですけれども、適用シナリオの代表的なものをここに書き出しています。
例えば、営業マーケティングだと顧客接点のところがテーマになってきて、コールセンターでの受け答えみたいなところをAIがお手伝いするとか、代行するとか、そういったことがあったりします。
ミドルオフィスなどは研究開発。特許を分析したり、論文を大量に学習して、そこから何か新しいことを発想していくお手伝いをする。
バックオフィスだと、例えば、企業内での人事のいろいろな問い合わせに対して答えていくヘルプデスクみたいな使い方だったりがあります。
この3年ぐらいやってきた中で、この領域はかなり汎用性があるなというものをここに書き出してみました。その中でも、もう既に実用化されている、本番で利用されているケースがかなり出てきています。今日で言うAIの適用が始まったのは3年ぐらい前からだと思いますけれども、本番で利用されるようになって、そこから1年、2年ぐらい、早いところは進んできているということで、ようやく一部結果が見えてきているような状況にあるのかなと考えています。
順番に見ていきたいと思います。
1つ目はフロントオフィスのところです。ここは、事例も多く、AIを入れるというと、チャットボットを入れるとか、コールセンターを変えるであるとか、そういう部分が多いと思います。この絵にも書いてありますように、フロントオフィスのところのパターンは、チャットボットの様な、セルフサービスで自動応答するという部分と、コールセンターのオペレーターを後ろからAIが手伝うというパターン。それから、そこで集まったお客様の声を分析して、そこから何らかのインサイトを得る。そういう3つぐらいの代表的な使い方になるのかなと思います。特にチャットボットは非常に広がっていて、例えば、1週間ぐらい前だと思いますけれども、中小機構様でも起業家向け、中小企業の経営相談のチャットボットを利用できるようなサービスを開始しましたという発表がありました。企業から始まって、こういった政府系の機関でも利用が進んできていると思います。
導入のステップとしては、当初は、業務効率の向上、特にロボットなので24時間365日いつでも問い合わせが来たら対応できるとか、そういう部分であったり、コールセンターのオペレーターの方の育成みたいなところに時間がかかる、そこを何とかしようみたいなところであったり、効率を高めていくところに主眼を置いてスタートしています。
今、こういったプロジェクトのその後を見てみると、企業内の知識を活用していこうという仕組みに進化してきているなと思います。そういう意味で、当初は、FAQと呼ばれているような、よくある質問に答えていたものが、社内にあるいろいろな知識データベース、知識を探索して、サービスマニュアルであるとか、障害の履歴であるとか、そういったものを含めて、そこから答えを見つけてきて答える。過去の専門家たちはどういうふうに答えていたのか、そういったことを参照しながら手がかりにしていく。これを知識活用と呼んでいるのですけれども、そういうステージがどんどん進んでいる。
もう一つ、さらにその先に指向している方向としては、個に対応する。パーソナライズとよく言われていますけれども、AIが入ってくることによって、今は誰が質問しても同じ答えを返していることが多いのですが、その人その人に合った答えを見つけて応答していくという方向に進んでいくという流れがあると思います。
ここで1つ御紹介するのは、弊社アイ・ビー・エムで実際に大規模に使われている製品の障害のサポート・システムです。顧客接点という意味で非常に重要なところですけれども、ここにAIの技術を重点的に活用しているということです。入り口の部分でこういった障害が起こったら、どういった対応をしたらいいのかということを自然言語で問い合わせて検索をするとか、チャットでAIが答えたり、人間が答えたり、そこをシームレスにやる。それから、障害の原因を明らかにしていくために、ユーザーの方自身がどういう症状なのだということを端的に、しかも十分にまとめるということをAIが支援しながら、こういったところはどうですかと聞きながら、レポートをまとめていくであるとか。使われる局面は非常にさまざまです。裏側では、実際にその問題を解く専門家を探すというところに使っていたり。一部は、先ほどのRPAと連携されていて、自動的にそういったレポートを回していくとか、ワークフロー的な部分と連動して自動化が進んできている。
現在、弊社では、約1万2000人の顧客障害対応のメンバーがこのシステムを利用しているというところに来ております。
バックオフィスのほうに行くと、ITのヘルプデスクだとか、そういったところは結構当初からやっていたのですけれども、最近はここの専門性が広がってきて、法務だとか、法規制対応だとか、例えばここでは金融規制の対応をAIがお手伝いをする、というようなソリューションがあります。これは金融規制というところからスタートしたのですけれども、恐らく全てのインダストリーがこういったものが求められていく。例えば製造のお客様だと、海外に輸出するときにいろいろなレギュレーションをクリアしなければいけない。今はかなりの専門家集団がそれ専門の仕事をしているのですけれども、そこをAIが各国の法規制を学習しながら支援していくというパターンが広がってくるのであろうと考えております。
同じく、企業ではバックオフィスの領域に入るのですけれども、人事・人材の領域でAIを活用するというケースがだんだん広がってきています。ここでは4つのパターンを書きました。いわゆるヘルプデスク的にいろいろな人事関連の問い合わせを企業内でAIが答えてくれるというシステムからスタートし、従業員が、自分はどういうキャリアを積んでいくのか。社内にはロールモデルになるような人たちがいて、そういった人たちはどういったキャリアを積んできたのか、どういった研修を受けてきたのかといったことを参照にしながら、キャリアのアドバイスをする、あるいはこういう研修を受けたほうがいいよというアドバイスをするとか、そういう試みが始まってきています。
これは企業の例ですけれども、企業だけではなくて、例えば今、大学でも幾つかこういったことがスタートしている。私たちは金沢工業大学さんと一緒にやっているのですけれども、学生が例えば特定の卒業生とか先輩だとかをロールモデルにしながら自分のキャリアを高めていくという領域に適用されたりしています。
下の2つは、いわゆる人材マッチングと呼ばれているもので、社内あるいは社外の新しいジョブオプチュニティーと自分をマッチングする。あるいは、人材派遣の領域で募集に対して最適な人材を紹介するというところを、データに基づきながら、例えば履歴書を読み込んだり、あるいは求人票を読み込んだり、それを理解してマッチングをするということが進んできています。これらがバックオフィスという領域の代表的な事例になります。
海外ではイノベーション領域というところが最も注目されていますというお話なのですけれども、例えば映画を作成するとか、小説を書くとか、そんなところにAIを使いましたみたいなニュースもあったりします。それはそれで非常に興味深いです。
例えば研究開発のところです。新しい化学化合物を開発する、発見する。そういった領域でAIを使っていこうということが取り組まれてきています。あるいは創薬だとか。ここで御紹介するのは新しい香り。いわゆる香料を開発するような企業がAIを活用する事例を紹介します。
これは2つ大きなテーマがあります。
1つは、人間にとって意味のある、よいと感じる香りというのはどういった材料から精製されて、どのように調合されているのか。これらの過去のデータをもとに学習をして、新しい香料が持つ特性を予測をしていくことができるようになってきているわけです。ただ、香りというのは非常に感覚的なものでもあって、香りをうまく明瞭に表現することは人間でもなかなかできないと思うのです。例えば初夏の香りだとか、そういう表現を読み解きながら、その表現にあった香りを実現する、実際の裏にある組成式はどういうものなのかを探求していく必要があります。その部分により人間的な要素があって、このプロジェクトはそういったところにもチャレンジをしているというところになります。
事例ということで、今、注目すべきケースについて手短にお話をしたのですけれども、最後に、今後の方向性とか課題についてまとめさせていただきたいと思います。
今、AIの技術が幾つかの領域で有効だということが証明されて、それをビジネスの中でうまく活用していこうということが徐々に進んできているのですけれども、今後、このAIというのは当たり前のツールとして広くビジネスの業務プロセスの中で活用されていくものだと思います。それ自体は、業務を効率化したり、顧客の満足を高めたりだとか、そういったところがあるわけですけれども、先ほど言いましたように、本質的には、知識であるとかノウハウであるとか、そういったものをいわゆる資産として共有して活用して継承していく。そういった非常に重要な役割を担う技術であると考えています。
同時に、私たちはUX(ユーザーエクスペリエンス)の革新と呼んでいますけれども、この新しい技術は機械と人とのインタラクションをする仕組み自体を大きく変えていく。特にこういった対話型のシステムというものがかなり現実的になってくる中で、そうした大きな変化が期待されるのではないかと考えています。
課題は結構あります。技術的な課題であったり、運用面での課題であったりということで、特に今、私たちが次のステージに進んでいく中で非常に重要だと思っているのは、AIの信頼性と透明性という2つのテーマになります。ややもすると、AIはブラックボックス化されてて、しかも、もともと投入されたデータそのものの中にいろいろなバイアスが含まれているという危険性があるということで、この絵で見ていただけるように、導入したいと思っているお客様もいろいろな問題を懸念して躊躇されている状況があります。私たちも大きな課題として取り組んでいます。それから、AIに取り組んでいる各社で、この問題をある意味一緒に解いていこうという動きも出てきています。
日本でも、AIの7つの原則といった形でガイドをまとめるという動きがあります。私たちもこうした問題に関してAIの5つの原則をまとめて、それを実際に技術的に実現していこうとしています。特に、バイアスが判断の中に含まれていないかということを検出する仕組み。もう一つは、判断の根拠だったり、なぜそういう判断になったかという理由を説明できるような仕組み。そういうものを全てのAIに組み込むような取組をしております。
最後になります。将来にAIがどうなるかというのは明確にはわからないわけですけれども、少なくともこれから何十年かにわたって、このAIを私たちが使いこなしていく、ツールとして活用していく時代が来ると考えておりまして、そこでそれが健全に使えるような取組が非常に重要になってくると考えられます。
ちょっと長くなってしまいました。どうもありがとうございました。(拍手)
○守島部会長 元木様、どうもありがとうございました。
続いて、最後になりますけれども、アクセンチュア株式会社の保科様にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○保科氏 おはようございます。アクセンチュアの保科と申します。
今、中村様、元木様からいろいろお話がありました。私からは、その後の時代も含めてなるべくお話しできればと思いますが、「AI時代の働き方とは」ということで、我々、幾つかグローバルでやっている調査結果と、実際に我々がやっている事例などをちょっと御紹介させていただきたいと思います。
まず最初に、調査のほうからお話ししたいと思うのです。いわゆる日本の置かれている状況というのはどういったところにあるのかということで、2035年なのですけれども、世界で12カ国の成長率予測を出しています。薄いグリーンと濃いブルーのグラフが並んでいると思うのですけれども、薄いグリーンのほうに「ベースラインシナリオ」と書いていますけれども、いわゆる成り行き上の成長率、今のまま行った場合の成長率予想です。濃いブルーのほうがAIを活用した場合の成長率予測になるのですけれども、いわゆる成り行きのほうの成長率予測、ここの12カ国が調査対象になっていますが、御覧いただくとおり、日本の成長率は残念ながらこの中では一番抑えられている結果になっています。これは、御存じのとおり、少子高齢化が進んでいて、現時点でも労働力が不足していますけれども、2035年でさらに不足してくるということで、余り高い成長率は望めないのではないかという調査結果になっています。
一方で、濃いブルーのグラフは、AIを活用できた場合の成長率になるのですけれども、この場合、日本の成長率は2.7%ということで、成り行きの予測に比べればかなり成長できているのかなと思いました。一番お話ししたいのは、いわゆるAIを活用できた場合とできていない場合で伸び率が一番大きいのが日本ということです。この対象12カ国の中で、日本がAIを一番活用する意味がある、活用していかなくてはいけない国なのだと言えるということです。
日本のいろいろな経営者の方とお話ししていると、海外はどんな感じなのかみたいな、海外の事例を見て、それをフォローするみたいなマインドの方が日本は多いのかなと思うのです。海外を追っている、特に欧米を追っているというよりは、実は日本こそが真っ先にAIを活用していかなくてはいけない国なのかなと、この調査結果から私は読み取っております。
調査結果は続くのですけれども、これは労働者の意識調査をしたときの結果です。ここで示しているグラフですが、縦軸が、AIと協働するために新たなスキルを習得することが重要と考えている人の割合、横軸が、過去1年間にAIとの協働に向けたスキル習得に取り組んだ人の割合という形になっていて、こちらは、各国のプロットと日本のプロットを見ていただくと、日本だけ大分外れ値のようなところにいます。新たなスキル習得が重要と思っている人の割合が少ないし、実際に取り組んだ人の割合も少ないということで、いわゆる意識レベルでちょっとまずいのかなと思っています。
もう一つ、続けて同じ調査の結果を示したいと思います。
こちらは、縦軸が、AIが私の仕事にポジティブな影響をもたらすと思っている人の割合で、横軸が、AIが私の仕事にもたらす具体的な変化がわからないと言っている方の割合なのですけれども、これも、各国のプロットと日本のプロット、日本だけがちょっと離れたところにいるという形です。これを見ますと、日本の労働者はAIというものに対してどのような影響をもたらすのかという具体的なイメージがまだまだできていないという課題があるのかなとこの調査結果から感じております。
というわけで、AIとの協働といっても、確かにその言葉だけでは大分漠然としているので、具体的にどういったことをしていかなくてはいけないのか、どういったスキルを身につけていかなくてはいけないのかというところを日本でも話していかないといけないのかなと。
これは、昨年出した「HUMAN+MACHINE」という本から引用しているものなのですけれども、いわゆる機械と人の協働というのはどういったことなのだろうというのを具体的にイメージしていく必要があるのかなと。我々、人と機械の間のところを、ミッシングミドルと呼んでいます。ミッシングミドルというと、違ったものを想像するかもしれないですよね。例えば、中間管理職が足りないとか、そういう話ではなくて、機械と人間の間のところ、ここが重要です。人間としてどういうスキルが必要なのかという話はこれまでかなり多くされてきていますし、マシンはこういったことができますよとか、マシンはこういうものなのですよみたいなお話も結構されている。特に、AIはメディアでもかなり注目されて、そういったお話というのは多いと思うのですけれども、人とマシンのコラボレーションのところというのは、AIという単語を毎日目にする割にはそんなに語られていないのかなと。我々はここが非常に重要だと思っていて、そこが重要なのに余り語られていないのでミッシングミドルと言っているのですけれども、そこをきちんとイメージをつけていくことが重要だと考えています。
ここのミッシングミドルの領域というのは大きく2つに分かれると思っています。「人間によるマシンの補完」と「AIによる人間へのスーパーパワー付与」と書いていますが、マシンも今の時点では少なくとも完璧ではなくて、人間による補完が必要。例えば、マシンが何か学習するというときに、人間が学習のお手本となっていかなくてはいけないケースもあるし、正しいデータを与えていかなくてはいけないみたいな、人間によるマシンの補完というのが必要だし、逆に、人間はマシンによって今までなかったことができるようになっていく。ただ、そのためには幾つかのスキルが必要ですねと。そういったお話をさせていただきたいと思っています。
このミッシングミドルというところ。具体的に何が必要なのかというところで、8つの融合スキルを我々は挙げていまして、こういった8つのものが必要であろうと。
それは何かと申しますと、まず1つ目に「人間性回復」と書いています。いわゆる機械とマシン、AI、それぞれ得意とするところは違うし、できるところも違う。一方で、機械ができるところはかなり増えてきていて、中村様からRPAのお話があったり、元木様からチャットボットの話とかもありました。いろいろな機械でできることはあるのだけれども、一方で、人間でしかできないところ、人間がやるべきところというのがある。人間としての人間そのものの価値がどんどん増えてくるだろうと。人間らしい活動に協力していかなくてはいけないし、そういった能力が今後より問われてくるだろうというところが1つ目です。
2つ目に「責任ある定着化」と書いています。いわゆる人間とマシンの相互化作用が今後増えてくると、元木様からも倫理問題などのお話も出ましてが、マシンを使って何かをするに当たっても、そのマシンが正しく動いているのかというところ。人間の判断としてそれが倫理的に正しいものなのか、社会的に正しいものなのかというのをきちんと考えながら、それを社会にちゃんと定着させていくことが必要であろうというのが2つ目の「責任ある定着化」というふうにお話しさせていただいています。
3つ目に「判断統合」と書いてあります。今、倫理的な問題の話もしましたけれども、人間が何か判断していくときに、今後、AIの判断というのがより入ってくると思うのです。AIがやるべき判断と人間がやるべき判断、それぞれやらなくてはいけないところがあるのかなと思っていて、結局、それを総合的に判断していくのが人間だと思うのです。そういった総合的な判断、AI、機械の判断というものも含めて、最終的にどう判断していくのかというのを決めていく。こういった能力が人間により問われていくのだろうというのが3つ目です。
4つ目に「合理的質問」と書いています。例えば、AIスピーカーとかを御家庭で使われる方、スマホでもSiriなど、ああいったものを使われている方はお感じのところも多いと思うのですけれども、今のAIというのはそんなに完璧でもないので、自分の欲しい情報を手に入れるために、正しい結果をうまく引っ張り出すための質問の仕方というか、そういった能力というのが実際問題としても問われてきているというのがこの4つ目の合理的質問です。
5つ目に「ボットによる強化」と書いてあります。先ほどチャットボットのお話もありましたけれども、そういったAIのボット、エージェントといったものをうまく活用して、自分の業務する能力を増していくといった能力が、まさに今、人に問われているのかなと思います。
6つ目に「総合的融合」と書いています。これは何かと申しますと、「人の身体的かつ精神的」と書いていますが、身体的なところも含めていかに能力を増していくのかというところです。今、さまざまなロボット技術ができています。サイボーグとまでは言わないのですけれども、それに近いようなイメージで、機械の力を使っていかに人間の能力を拡張していくのか。わかりやすい例で言ってしまうと、例えば、私は眼鏡をかけています。この眼鏡というのは別にAIでも何でもないのですけれども、自分の視力を補う機械として、まるで体の一部のように普通に使っています。これがよりAI的な力も含めて、自然な形で、自分の体の一部のように人間の能力を拡張していくというのは増えていくのだろうなと思っています。
7番目が「相互学習」ということで、AIのエージェントと互いに学習する。冒頭のところで、AIも学習が必要ですね、それの学習の先生として人間がというお話もさせていただきましたけれども、いわゆる機械を教え、逆に、機械から人間が教わるという相互学習というのが今後より重要になってくるだろう。今後、そういった能力というのが人にはより必要になってくるだろうと思っています。
8番目に「継続的再設計」と書かせていただいています。AIを使って何か業務をしていくというのは、先ほどRPAのお話がありましたし、今ある作業をいかに自動化していくのかというお話もあったりするのですけれども、一方で、新しい技術を用いて、今までにないようなプロセスを考えていくというのが今後はどんどん増えていくだろう。いわゆる新しい技術で、今、やっている自動化とか継続的改善というよりは、ゼロから新しい業務というのはどうなっていくのだろうと想像していく力が必要になってくるだろうということで、8つ目として継続的再設計を挙げさせていただいています。
今、大分話してきたように、いわゆる人と機械が協調して働いていくには、こういった8つのスキルというのが、今後、人にはより問われてくるのかなと我々は考えております。
8つのスキルというお話をしました。その中でも、例えば人間性回復とかいったお話をさせていただきましたが、端的に言って、どういったところが人間が得意で、どういったところが機械が得意かというところをお話ししてから、事例のお話のほうに入りたいと思います。
これは中村様からもお話が大分ありました。RPAのところでもありましたが、例えば24時間365日労働というところ、あるいはスピードとか安定したサービスレベルとか、そういったところは機械のほうが得意だろうと。あと、膨大なデータから何か判断するところもすぐれているので、まず、その膨大なデータ知識量というのは、人間の脳で覚えられることと機械で覚えられることには大分差がありますし、その大量のデータから何かを見つけ出すところは機械が得意なのかなと。
最近、IoTデータが大分増えてきて、しかもいろいろなマシンがネットにつながってきて、その機械との対話のところはやはり機械のほうが得意であろうと考えています。一方で、人がやらなくてはいけないところは確実にあると思っていて、そもそも世の中の社会課題とは何なのかというところを定義するとか、インタラクティブな対応、まだまだ機械が苦手とするところが多いので、その柔軟対応もそうです。あと、抽象的な問題、あと、社会的にこれはオーケーなのかNGなのかというところはやはり人間が決めていかなければいけないところです。
もう一つは、機械がかなり発展してきて、人間と同じようなことができた場合も、共感というところが結構ポイントなのかなと。AIの技術開発の部分でいうと、人に共感するAIというのは研究も大分進んでいますけれども、それが行き着くところまで行っても、生物というか生き物というか、人間の本能として、人間に共感されたいという思いはあると思っていて、そういった意味では、共感というところを軸に、人ならではの力を発揮する。そこは、人が得意とするというより、人がやらなくてはいけないところなのかなと考えています。
あと、下のほうに「お客様対応での協働例」と書いていますけれども、我々、いろいろな顧客サービスのところでAI技術を活用するというのをやり始めていますが、顧客満足度という意味でも、得意とするところをお互いに組み合わせるというのが重要だなと考えています。AIだけが対応した場合と人だけが対応した場合、単純に両者の顧客満足度を比較すると、人だけが対応した場合が顧客満足度が高いのですけれども、実はうまく組み合わせた場合が顧客満足度が一番高いという結果も出ています。やはり得意としたところをうまく組み合わせるというのが重要なのかと考えております。
我々、いろいろなところでAI技術を活用するということをやっていますが、まず、アクセンチュアの社内。これは日本の中でのお話ですけれども、海外も含めてやっていますが、日本の事例を今日は御紹介したいと思うのです。
社内で生産性改革ということでAI技術を幾つか使っております。その1つ。アクセンチュアは人間の社員以外にバーチャル社員というのが何人か働いていまして、その中でバーチャル秘書というものを今から御紹介しようと思います。
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これはバーチャル秘書で、バーチャル社員だろうが人間社員だろうが同じツールで我々コミュニケーションを取っています。チャットで話している分には人間も機械も同じような形で。こういったツールを使って、例えばミーティングの調整だとか、会議室を押さえるだとかいうことをやっていたりします。
続いて、バーチャル人事から始まって、今、社内のいろいろな問い合わせに対応してくれる、もう一人のバーチャル社員を続けて御紹介したいと思います。
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例えば、妻が出産したけれども、どうすればいいかみたいな、こういった家庭が絡むようなものというのは、昼間思いつくというより家へ帰って浮かんだりするのですけれども、家へ帰ってから聞かれても、その時間は人事に電話できないみたい、でもそんな時は24時間働いているバーチャル社員に質問する、といった形で役に立ったりしています。
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このツールは、実際、人事以外にもいろいろな問い合わせに対応しています。
一方で、おもしろいなと思ったのは、実は人間の人事の方がこれをかなり使われているのです。質問があったときに、人間の人事の方が、この質問は何だっけみたいなものをこれで調べて、後ろの、バーチャル人事ランディさんに聞いて、そこの回答から答えるとかというのもあります。
あと、もう一つ、これも実際に使っていておもしろいなと思った点なのですが、この仕組がLGBT関連の外部の賞を受賞したりしたのですけれども、私もこれをつくったときに全然イメージしていなかったのですが、例えばLGBTの方の問い合わせみたいな、人間には面と向かって聞きづらいみたいなものに対して、このチャットボットに聞いて、実はこのランディさんが人間を介さず答えていて助かったみたいなお話も結構いただいています。
先ほど人間と機械とそれぞれいいところがあるというお話をさせていただきましたけれども、こういうチャットボットだからこそ、人に聞きづらいことも聞いて解決するみたいなことも実際に我々の社内の中でも多く出てきています。
社内のお話を幾つかしましたけれども、社外で、人とコラボレーションするような事例。今、御紹介したのは、人がAI、チャットに対して話しかけていくという形ですけれども、人と機械がインタラクティブに協調しながら働いている、サポートしているという事例を1つ御紹介したいと思うのです。これは日本航空さんと一緒にやらせていただいている事例になります。
(動画再生)
こちらは、より直接的に人間をサポートするという形で、いわゆる対人接客しているところで、人と接客している会話を聞きながら必要な情報が手元にどんどん出てくる、今、こんなものも始めています。
大分お話ししてしまったので、最後にちょっとまとめさせていただきたいと思います。
冒頭お話しさせていただいたように、日本もAIを活用すればまだまだ成長できるし、業種別に見ても、あらゆる業種でAIを活用していけば、企業の収益を増やしていける。収益だけではなくて、AIというとどうしても人の仕事を奪うみたいな話にされがちですけれども、雇用自体も増やせると思っています。AIを使っていかに新しいサービスをつくっていくのか。我々としてはつくっていきたいと考えております。
私からの話は以上となります。(拍手)
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、お三方の御説明が終わりましたので、これから自由討議に移りたいと思います。
どなたからでも自由に、御質問、御意見がおありになったら、挙手をいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
○後藤委員 御説明ありがとうございました。
私の働いている会社でもRPAの導入が相当進んでおりまして、ここ1~2年ぐらいで、社内の全てとは言いませんが、かなりの部署で自分たちの業務の効率化のためにRPAなどを導入しています。先ほど世界はトップダウンでやっているというお話でしたけれども、現場から上げていって業務を効率化するためにRPAを導入しようとする動きが活発で、社員間での自主的な勉強会や、各部署で導入した事例を紹介し合って、コンテストのようなものもしていると聞いています。
ところが、それを構築している、先ほど「シナリオ」という言葉遣いだったと思うのですが、そのシナリオなどをつくっている方というのは、正社員よりは、今まで業務にある程度携わっていらっしゃった派遣社員の方とか、契約社員の方とか、有期雇用の方がメインでやられていることが多いそうなのです。1年ぐらいたった後、その方々はどうなったのかと思って少し話を聞いてみたところ、大きく3つぐらいに分かれていました。RPAのスキルをすごく吸収して、職場で活躍されている方々。それから、スキルは得たのだけれども、結局それをうまく使いこなせないというか、一度シナリオをつくった後にそれをメンテナンスをしていかなければいけないらしいのですけれども、そこまで手が出せずに、結局ほかの業務で忙殺されてしまっているという方。あるいは、RPAのシナリオづくりを勉強したのだけれども、結局、全く理解できなくて、今までのような働き方をしている方。この3つぐらいに分かれているのだということを伺いました。
先ほどの説明の中で、人間らしいところの領域とAIやRPAが得意とする分野というのがまだ分かれているということだったのですけれども、技術的なほうからいくと、人間らしい分野にその技術の発達というのがチャレンジしていくのではないかと思うと、人間らしい分野というのがすごく限られてきている。前回の部会のときに武田委員から、4つの象限の中で右下のほうに属する単純事務処理のような領域の人たちをどのようにサポートしていかなければいけないかというお話があったと思うのですが、右下の象限に入っていくような分野というのはどんどん広がっていってしまうのではないかということを少し懸念しています。そうすると、前回の議論でもあったように、そこの部分の方々に対する訓練や、あるいは、RPAであったり、AIの技術に対してキャッチアップしていくような訓練を施していかなければいけないとなったときに、そうした訓練を簡単にできるのか疑問に思います。前回の議論と同様になってしまいますけれども、教える人たちも必要となりますし、そういった人たちの確保ということも考えていくと、どんどん取り残されていってしまうような人たちがいないようにしていく仕組みを同時に考えていかなければいけないのだろうなと思っております。感想としてそういったことを思いました。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたか。
では、長谷川委員。
○長谷川委員 後藤さんと重複するところがあると思うのですけれども。
実は、私、昨日、東京から八王子に帰るときに「特急あずさ」で帰ったのです。15日からJRは特急券の買い方が変わりました。自由席がなくなり、全て座席指定になっていました。結局、今まで510円で自由席に乗っていたのが指定席だと1010円になるため、購入を控えました。
今朝、「特急かいじ」で厚生労働省に来るときに、事前にスマホで特急券をとりました。これまでは切符をチェックする車掌さんが何人か乗っていたのですけれども、人数が減っているのです。すべて座席指定なのでチェックの必要性が減少したのです。これがAI・ICTによる変化で、あの車掌さんたちはどこに行ったのだろうとふっと思いました。
アクセンチュアの方の4ページのミッシングミドルのところです。人間とAIが協働するといいますか、お互いに補完し合ってという、今、こういうところが拡大していると思います。先ほど後藤さんも言ったように、人間がやっていたところが恐らくAIになっていくので、その人たちは雇用管理でいくと余剰だと思うのです。その人たちは恐らく2つの層に分かれていくのではないかと思うのです。職業訓練を通じて次のステップに上がれる人と、そこはなかなかうまくいかなかった人がいて、そういう人たちは次にどこで働くのかなと、今日の説明を聞いて思いましたし、昨日、今日のJRの件でもそのように思いました。
次に、5ページのところにも「8つの融合スキル」について、1から8は全くそのとおりだなと思いました。そうなのだけれども、結局これも、ある意味では対応できる人と対応できない人に分かれていくのだろうなと思います。この8つのスキルはなかなか高度なので習得が難しい。こういうことができるようなスキルをどうやって身につけていけばいいのかなと考えていたところです。恐らくまだ解は出てはいないのだと思うのですけれども、こうしたスキルを私たちはきっちりと捉えないといけないのではないかと思っています。
3つ目は、この間、AIの勉強をしながら、人間が「働く」というのはどういうことなのかと。働いて、賃金を得て、それで生活する、人間としての文化的な生活をする、私にとっては働くことはそういうことだったのです。それでこの間は「良質な雇用」とかを言ってきたわけですけれども、これからAIと人間が融合し合っていく社会の中で、人間が「働く」というのは何なのかということ。AIはいろいろな資料を自分で取り入れながらどんどんスキルアップしていくと思うのです。そうすると、人間の働くことというのは何なのか、人間の働き方というのはどうなっていくのかというのが、今のところ、まだ見えない。不安だけあおり立てるのはいかがなものかと思って、私も非常に慎重に話しているつもりなのですけれども、融合するというのはわかりました。それも非常に重要なことだと。しかし、一方では、「働く」こと、そういうものから漏れていくものもあるのではないか。融合するためのスキルアップのためのものというのは何なのか。そういうことを今日思いまして、何かお考えがあればコメントいただければと思います。
○守島部会長 ありがとうございます。
特に保科様でしょうか、8つのスキルを出していただきました。私がお伺いしたいのは、今、言ったようなトランジションの過程というのは、実際の企業の中ではどういうふうにマネージをされているのかというところのお答えを。あと、人間が働くということについて。それはかなり哲学的な質問なのでちょっと難しいかもしれません。
○保科氏 まず、8つのスキルというふうに書かせていただきましたが、確かに、こういうのを使いこなせる人と使いこなせない人というのはあるのかなと思っているのです。一方で、特にAIを経営陣とかとお話しするときにもお話しさせていただくのですけれども、それをまず使わないことには使えるようにならないというか、まずやってみるというのが重要です。そういった意味では、失敗を恐れずにみたいなお話がよく世の中に出たりしますけれども、私はどちらかというと、「失敗を恐れる」ではなくて「失敗を推奨する」という言い方をさせていただいています。その失敗も、許される範囲で、うまく失敗しながら学んでいくことが重要。そういった意味では、簡単なところから実際にやってみる。やるところから学ぶというところが非常に大きい。
あと、こういう新しい技術というと、若い人が向いているのではないかと思われる節も結構ありますがそれが事実である一方で、総合的な判断みたいなお話もこの8つのスキルのところでお話しさせていただきました。実は、人間、経験を積んで年をとってきたほうが、記憶力とかそういうところはあれなのかもしれないけれども、総合的な判断はすぐれた判断をされる方が非常に多いなと私は考えています。実はIT、AI向きではないのではないかというふうに世間的に思われている方でも、機械とうまく組み合わせると逆にその力を発揮するというパターンはあるのかなと思っています。
人が働くこととは何かとか、どうなっていくのかというお話もありました。私、いろいろなところでデジタル化を推進していて、いかに機械化するか、自動化するかとやっていますが、一方で、そういうのが進んだ先の世界というのは、逆に、人自身がおもてなしをするとか、サービスをすること自体がものすごく価値になっていくのかなと思っています。例えば、ホテルとかも自動化で全部やっていきますみたいなところもあったりしますけれども、高級旅館が全部自動化するのか。絶対にないと思っています。それは、人がサービスすること自体の価値が今まで以上に増していくのかなと私自身は感じております。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかのお2人、何か追加的にございますか。
古賀委員、どうぞ。
○古賀委員 貴重なお話をありがとうございました。
資料の説明の中で具体的にお聞きしたいことがございますので、よろしくお願いします。
まず、中村さんから。RPAの導入によるメリットとしてコスト削減というのがありました。コスト削減できるのであれば、まさにほとんどの会社は入れるであろうと思っているのですが、入れる費用、初期投資やランニングコストとかがありますね。そういう意味では、費用対効果ということからすれば、導入された企業はどういうふうな感じに思われているのか。入れた企業は、メリットを感じているからやっているのでしょうけれども、どう思われているのか。そのときの職場、いわゆる働く人たちの現場はどう変化したのか。先ほどからある質問とよく似ているのですけれども、それに変わったら、その職場の何十人かは要らなくなったわけですから、その人たちはどういう状況になったのかということをおつかみでございましたら、お聞きしたいと思います。
それから、保科さんですけれども、AIとの協働に向けた労働者の意識改革と行動が日本は非常に遅れているのだというデータがございました。私も、全般的に見て、日本の働く者の感覚というのはこういう感覚だなというのは何となく分かりますが、「なぜか」ということに対して何か分析をされたのかどうか、そのあたりをお聞きしたいと思います。
先ほどの議論の続きになりますけれども、「働く」ことに対する意味や意義づけが日本人は諸外国とはかなり違っていると思うのです。もちろん、労働力を提供して報酬を得るということは原点ですけれども、そこに働くことの誇りとか楽しさ、社会とのつながり、働く現場というのはまさに居場所だとか、よりどころだとか、そういうさまざまな付随したものがたくさんあるのが日本の働く場だと思うのです。恐らく、そんなことも関係しているのではないかと思うのですけれども、保科さんのほうで先ほどの意識改革と行動の遅れに対して分析した、あるいは保科さん個人的な見解でも結構ですから、お聞かせいただいたらありがたいと思います。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、中村様からお願いします。
○中村氏 それでは、いただいた質問で、RPA導入のところで業務コストの削減とはどういうものなのかというところです。RPAを導入していただく際によくございますのが、導入前、導入後で適応する作業に対してどのぐらい時間がかかっているのかというのを測定して、例えばAという作業は月次で1回30時間かかっていましたとかいうのをはかったりするのです。その後、RPAを実際にやって、どのぐらいの時間が減ったかというところで削減効果を時間数で出す。それで時給換算みたいなところでどのくらいコストが削減できましたとか、人がほかのことをできましたという形で業務コストの削減という観点を見ることが多いです。時間の観点で見るという形です。
ただ、そこと現場での人の動きはどうリンクするかというところだと思うのです。そこにつきましては、先ほどの御説明でも話をさせていただいたのですけれども、例えばある事例では、バックエンドにいた人がもうちょっと顧客接点のフロントに出て実際にフロントサービスをやる。そのためには、もちろん、もともとバックエンドをやっていた人がそのまますぐフロントをできるわけではないので、プラスで教育とかをした上でフロントに出るという事例もございます。あとは、どちらかといえば、今まで負荷が高過ぎたところをRPAをうまく使って解消したといった事例のほうが今のところは多く聞くような形です。それによって繁忙期での忙しいところですとか、もしくは今までできなかったような、もうちょっと質を上げたいなと思っていたような、例えば顧客に対してもうちょっと手厚くフォローするとか、そういうところに時間が回せるといった例が多いと聞いております。
総じて、減らす、マイナスのところというよりは、辛かったところが解放されたということで好意的に受けとめられているという印象を持っております。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、保科様。
○保科氏 ここの日本の労働者の意識と行動の遅れのところについて御回答させていただきます。この調査結果はほかにもいろいろなアンケート項目があって、そこの中から、こういったことではないかというところコメントさせていただきます。これは明確な結果が出ているわけではないので、参考情報としてお話しさせていただきます。
まず、日本の特徴として幾つかありまして、AIに対するイメージがすごく漠然としている。そのAIというところをどうしてもドラえもんや鉄腕アトムみたいな。そういったところで、具体的にどういう技術がどういうふうに入ってくるのかというイメージが足りないというのがまず1つあるのかなと思っています。
一方で、日本の働く環境としての特徴も実は反映しているのではないかと思っています。まず、日本の仕事というのはどうしてもジョブディスクリプションが余り明確ではないというか、実際、いろいろなことを皆さんやられているのです。かつ、働く場所、仕事の流動性というのも少ない中で、自分の仕事がほかの人にすぐかわるみたいなところの明確なイメージが、ここでグローバル対象として書いている国よりも実際問題少ないところがある。他人にとられるのもそうですし、AIとかわるというところの意識がほかの国と比べて少ないのかなと。
もう一つは、中村様からのお話にもありましたけれども、日本はトップダウンが効きにくいというか、海外だとここはAIでやるのだと言ったら、実際問題入れかわるというケースが結構あると思うのです。日本というのはそれが非常に少ないということで、具体的に自分の仕事がAIに置きかわっていくというイメージが、ほかの国と比べてではありますけれども、まだまだ少ないのかなと感じています。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに。大竹委員。
○大竹委員 まず、中村さんにお聞きしたいのですが、製品のWinActorを見ていると、エクセルのマクロをつくっているのとほとんど同じだと思いました。先ほども質問がありましたが、現場でシナリオをつくっているのは一番ボトムの人なのか、もうちょっと上の人なのか、それとも完全に向き不向きで対応されているのか、印象レベルでかまいませんので、お聞きしたいと思いました。
それから、日本アイ・ビー・エムの元木さんのお話で、最後におっしゃったAIの信頼性と透明性というところです。2つおっしゃっていて、1つはバイアスのチェックですが、これはかなり難しい問題だと思います。実際にジェンダーの問題なども、過去のデータを使って学習すると、どうしても、もともとバイアスを持って昇進や評価が決定されているという場合には、そのまま間違ったデータを使っているということなので、機械から幾らアウトプットが出てきてもなかなか難しいかなと思います。これは人間がかなりしっかりしていないと判断が難しいかと思います。
もう一つは、それと裏腹になってもっと難しいと思ったのは、機械学習のモデルがなぜ理論的にこういう結果が出てくるのかを人間に説明するというのは、理屈がわかっていればいいのですけれども、人間にわかるような理屈がまだわかっていないとなると、幾ら言われてもわからないというのがあって、この2つはどちらもかなり難しい問題で、人間がいつもチェックし続けないといけません。2つ目が本当に必要かは、人間が納得できるかというだけの話なわけです。理由はわからないけれど、うまく働くモデルがあればいいということかもしれません。ただ、それが1つ目の問題で倫理的に問題をはらんでいるというときに、それが識別できないとかなり難しい問題だというのが感想です。
アクセンチュアの保科さんの議論で、最初におっしゃったAIが活用できると日本の生産性の向上の余地が高いという話ですが、これも内生的に決まってくるのだろうと思います。人手不足が深刻だから、ベースラインの成長率が低いと見込まれているわけで、逆に言うと、人手不足が深刻だから、そういうものを一生懸命採用したいというのが生まれてくるわけです。日本以外の国で人手不足が深刻でないなら、それほどAIに一生懸命投資しない可能性もあるかと思いました。
2つ目は、先ほどから議論になっている、AIとの協働に対応が遅れているとか不安が多いということについては、私はちょっと不思議な感じをもちました。日本の場合は、物的なロボットの導入は結構早くてそんなに反発はなかったのに、AIに対してどうしてそんなに不安があるのかというのは若干非対称で、質問の仕方によって日本人が少し保守的に不安を過大評価するからそう思っているだけで、実際に導入し始めたら、ロボットの導入と同じように早いのかなというのが感想です。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
御質問のところも少しありましたかね。
では、中村様。
○中村氏 RPAのシナリオづくりはどういう人なのかというところです。その前に、エクセルのマクロみたいですねというところはまさにおっしゃるとおりです。エクセルのマクロみたいなのですけれども、実は何が違うかというと、RPAのツールというのはマクロみたいなプログラミングがフローチャートで見られるので、やっている内容が比較的わかりやすくて、それを周りの人に引き継ぎやすい。そういう意味で、実はマクロよりもいいかなというところもあったりします。
すみません。ちょっとだけ脱線しますけれども、実際、この業務を改善するという意味でRPAツールを入れていただく場合には、RPAツールでできる部分もあれば、マクロを使っていただくような部分もあるし、手で判断していただくような部分もある。人間の業務の特性とかに応じてやっているという部分もございます。
いただいた質問のシナリオづくり。どういう人がつくっているのですかというところにつきましては、まさに向き不向きというところがありまして、社員とか派遣の方とかというよりは、ややプログラミングに近いような、フローチャートとか、あと、変数とかいう概念もあったりするので、そういうものに対して比較的取っつきやすい人のほうが早くツールを覚えていただくということはございます。実際、社員の方ですとか、自治体の職員の方とかが初めに導入するときは研修を受けていただくのですけれども、そこで、おもしろいねとか、少しつくって自分でわかるようになると、そのまま使っていただくような事例も結構ございます。なので、どの社員かというよりは、向き不向きみたいなところで、早く習得される方とやや時間がかかる方というのがいらっしゃるのは事実かなと思っています。大体うまくサポートして、サポートを受けながら自分で1個でもつくられたりすると、ちょっとさわれるというか、理解できるようになるといったようなことが多いという形です。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかのお2人に対しては、感想ということですか。何かありますか。
どうぞ。
○保科氏 ちょっとだけ。
漠然とした不安というところで、質問の仕方というお話もありましたけれども、確かにそれはあるかなと思っています。質問の仕方が、AIがポジティブな影響をもたらすのかどうかという聞き方なので、明確な回答を避ける日本的なマインドが反映されている可能性もあります。なので、おっしゃるとおり、漠然としたというところはそうだと思うのですけれども、実際にやり始めると、実は私は、親和性は高いのではないかと希望的に思っております。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたか。
では、山川委員。
○山川委員 感想が1つと質問が1つです。
私もAIは全然詳しくなくて、一般の人みたいに、AIというのは漠然としていて何のことだかよくわからないというところが大きかったのですが、今日の話を聞いていて、RPAは非常によく理解できる。それはまあそうだよなということがある。あと、ディープラーニングはまた全然わけがわからなくて、それが全部がっしゃんこ。そもそもRPAとディープラーニングを一緒にAIについて討論しましょうということ自体、若干無理があるのかなと。討論する、ないしは報告書をまとめるに当たっては、AIは何を定義しているのかというところが重要なのかなと思ったことが1つありました。
もう一点は、いわゆるメーカー側のアイ・ビー・エムさんの元木さんに御質問ですけれども、バイアスとかこちらの話があるではないですか。その話というのは、結局、メーカー側で対応できるところというのはある程度限られているのかなと。例えば、年齢によるバイアスが検出された場合に、ユーザーの企業がそれを考慮するか無視してしまうかによってももちろん違うだろうし。あと、私がよくわからないのは、例えばデータをどこから持ってくるか。この会社での採用とか昇進となったら、もちろん会社からしか持っていきようがないのだけれども、そういうデータの抽出とか、できあがった結果についてどういうふうに使うべきかみたいなことをアイ・ビー・エムとしてユーザーにある程度指導したり、契約の中の条件にしたり、そういうことというのはあるのでしょうか。
○元木氏 バイアス等のお話で御質問いただきました。まず、やらなければいけないと思っているのは、そういうバイアスの可能性がある判断の事象というのを見つけて、さらに言うと、それのもとになっているデータの偏りを見つける。まずそこを見つけないといけないということ。そのためのツールを提供するというところが今取り組んでいるところです。
何でそういうことをやっているかというと、この間そういう問題となりうる事象があったということがあります。例えば私たちの学習済みの画像認識のシステムを使うと、白人の顔認識と黒人の顔認識の精度にかなり差があったとかいうことがあって、そういうことに取り組み始めたのです。
次に何故その判断になったかという根拠を探索する、説明するというのが2点目です。機械なので、よくブラックボックス化されると言われますけれども、逆にそこのところは明確にしていくことはできるはずなのです。ただ、余りにも複雑過ぎて、人が理解できるようにうまく説明するのが難しいという部分が問題になります。そういう意味では、データがあって、アルゴリズムがあって、そこから導き出されているものではあるので、そういったところを人間にわかりやすく説明するということに、今、取り組みつつあるということです。
例えば機械学習の際どういうファクターが強く重みづけされてこの判断になったかというのは可視化できるし、それが見えれば、人間でもある程度わかることになります。それを応用してこのファクターをいじればこの結果がよくなるのだろうなとか、そういうこともわかるようになって行きます。その部分からスタートして、今後は、いわゆるディープラーニングと呼ばれているような非常に複雑な計算をしているものを見える化していくといったところに取り組んでいこうとしています。
○守島部会長 ありがとうございました。
そろそろ時間なのですけれども、もう一つぐらいおありになれば。大丈夫ですか。
それでは、そろそろこの議論は終わりにしたいと思います。お三方、どうもありがとうございました。
最後に、次回、介護分野における新技術の導入状況等についてのヒアリングを行う予定ですので、それに先立ち、事務局から資料5の御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○村山労働政策担当参事官 では、資料5を御説明させていただきます。
ただいま座長からもございましたように、次回は介護分野に関するヒアリングでございますので、それに先立って、以前、介護分野で働く方々の状況はどうなっているのか、そういったことについてきちんと押さえた上でヒアリングに臨んだほうがいいという御示唆もありましたので、準備させていただいたものでございます。
時間の限りがありますので、ちょっとはしょらせて説明させていただきます。
資料5の1ページ目「介護サービスの種類」から、2ページ目「総費用等における提供サービスの内訳」のところに関しましては、現行の介護保険制度のもとで、要介護1~5の介護給付、要支援1~2の方々の予防給付、それぞれどんな全体の見取り図になっていて、そしてまた、提供サービス、費用、利用者数、事業所数がどのようになっているのかという資料でございます。御覧いただければと存じます。
進んでいただきまして、3ページ目「人口構造等の変化」から何枚かの紙に関しましては、今後の介護サービス量を予測していく上で、例えば「人口構造等の変化」のところでは、高齢化が一層進んでいく、とりわけ後期高齢者の方の比率が増えていくでありますとか、認知症高齢者の方の増加状況、また、世帯の状況として、65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯が増加していくといったようなことなどが記されているところでございます。御確認いただければと存じます。
4ページ、5ページ、6ページは、それをそれぞれ敷衍したものでございまして、特に6ページ「要介護度別認定者数の推移」に関しましては、要介護・要支援の認定を受けられている方々の数というのが、足元平成30年4月現在で644万人で、20年弱の間に3倍になっています。
あわせまして、地域という視点から見ますと、7ページ目「地域別の介護サービス量見込み」のところでございます。全国でも、足元推計も含めまして、2017年度から2025年度にかけましてプラス24.9%でございます。特に首都圏のところを御覧いただきますと、プラス33.3%で、居住系のサービスなども含めまして、首都圏での伸びが高く見込まれているということなどがうかがわれるところでございます。
続きまして、事前にいただいておりました介護分野で働く方々の状況についてでございますが、8ページ目からになります。
まず8ページ目が「介護職員数の推移」です。先ほどのグラフと同様でございますけれども、この十数年間、約20年間の間に右肩上がりに増加していて、この数値では平成28年度が足元になっておりますが、622万人という状況になっています。
それから「介護職員の現状」についてが9ページ目でございます。本日も働き方の問題が少し出ておりましたけれども、介護の分野では非正規で働かれている方々の比率が高いということがまず1点。
それから、年齢構成で見ますと、施設におきましては、30~39歳、あるいは40~49歳という、その画面でいいますと、赤で囲っているところが多いわけでございますが、訪問介護の分野におきましては50~59歳の方々が担い手としてかなり多くなっていることが御確認いただけると思います。
また、性別で見ますと、施設、訪問介護、いずれも女性の方々の比率が高いということでございます。
10ページ目以降が、本日も出ていました人手不足の中でということでございます。有効求人倍率を全職業と比べましても、介護分野は30年平均で3.9倍となっていまして、極めて人手不足になっているという状況でございます。
11ページは、介護サービス事業所にアンケートをしている結果でございます。こちらでも人手不足感が強く示されておりまして、特に不足している理由としては、そもそも採用が困難であるということに加えまして、離職率が高い、また、事業拡大に当たっての人材確保の困難性等を挙げられる事業者さんが多いということでございます。離職率に関しまして詳細な数字は省きますが、12ページにございますように、全職業と比べてもやや高い。しかし、その高さは、以前と比べると近接してきているという状況かと思います。
介護福祉士の方に、過去働いていた職場をやめた理由を伺ったのが13ページでございます。離職時には、業務に関連する心身の不調でありますとか、職場の方針、人間関係など広い意味での雇用管理のあり方がきっかけになっていることがうかがわれるところでございます。こうしたところについて、本日もホワイトカラー分野で御議論ありましたが、新しい技術でどんなふうに対応できていくのか、あるいはしているのかということをまた次回のところで御議論を深めていただければありがたいと考えております。
介護職員の方々の平均勤続年数は、14ページにございますように、30~34歳まではおおむね全産業平均と変わらないのですが、35歳以上は下回っている状況になってございます。
その上で、15ページが、医療福祉分野全体の就業者数の見通しに関しまして、政府としていろいろなところで出している資料でございます。先ほど見ていただきましたように、既に実績としても非常に伸びてきている中で、一方で、働く方の数が、人口減少の中でいろいろな供給拡大策をとっても今後制約が非常に強まってくる中で、この分野における広い意味での生産性向上というか労働投入当たりのサービス量で見た生産性をどのように上げていくのかが大きな課題になっており、その際に、今部会で御議論いただいています技術革新をどのようにこの分野に対応させていくのかということが大きなテーマになるのだろうと考えているところでございます。
17ページ以降は「総合的な介護人材確保対策」でございますが、先生方、よく御案内のところも多いかと思いますので、資料の配付をもってかえさせていただきたいと考えております。
資料5の説明は以上でございます。
あと、先ほど来、委員の先生方から多数御意見をいただきまして、ありがとうございました。その中で2点申し上げさせていただければと思います。
まず1点は、山川委員からございましたバイアスの存在に関して、本日、事業者の皆様方と御議論を深めていただいたところでございます。これは、個別の企業の取組でも、今日御紹介いただいたように、非常に認識もされ、深めていただいているということでございますが、1つの企業あるいは1つの国だけでは対応できないようなことについて、国として、さらに国際的にも議論することが重要だという文脈の中で、前回も御紹介申し上げましたが、人間中心のAI社会の原則等も議論されており、その議論の中には、本日、主要な現場の皆様方にも御参画いただいているということもあるのではないかと考えておるところでございます。それが1点でございます。
あと、長谷川委員、また後藤委員から、実際に職場に入れるとき、実際の労使の中で、また働く方々にどんな影響がというお話がございました。本日もお三方から大変深いお話をいただきましたが、これは受け入れられている企業からのお声とか御報告もまた重要かと思います。これは次々回以降の中で部会長とも御相談しながら、そこら辺のプレゼンテーションをどのように入れていくか、また、本日いただいた問題意識も踏まえて調整させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
介護分野については、次回またヒアリング等を行いますので、よろしくお願いしたいと思います。
間もなく終了時刻となりますので、このあたりで今回の議論を終了させていただきたいと思います。活発な御議論をどうもありがとうございました。
最後に、事務局から次回日程について御説明をお願いいたします。
○高松企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任) 次回の当部会の日程ですが、3月29日金曜日の開催を予定しております。詳細につきましては改めて御連絡いたします。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 それでは、本日はこのあたりで閉会とさせていただきたいと思います。
本日の会議の議事録につきましては、運営規程により、部会長である私のほか2人の方に御署名をいただくことになっております。つきましては、大竹委員、古賀委員に署名人になっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
本日の会議はこれで終了いたしたいと思います。皆さん方、お忙しい中、どうもありがとうございました。