人材育成事例265

 
 
 
 
    東北エプソン株式会社
お客様の価値創造に向けた多様な人材育成施策を展開
 
 
 
 
情報掲載年度 2015年度
情報掲載日 2016/3/18
都道府県 山形県
 
資本金 3億円以上
従業員数 300人以上
産業分類 製造業
 
 
当社は、セイコーエプソングループの国内の製造・技術開発拠点を目的として1985年に設立(前身:庄内電子工業株式会社)され、今年度で30周年を迎えている。
現在は、カラーインクジェットプリンタ用ヘッド、半導体(C-MOS、LSI)を主柱事業として、同グループのコアデバイス製品の製造・技術開発拠点の地位を占めている。

東北エプソン株式会社 ウェブサイト
 
 

当社は前述のようにセイコーエプソングループの一員で、理念や方針は共有している。

経営理念

 
お客様を大切に、地球を友に、
個性を尊重し、総合力を発揮して
世界の人々に信頼され、社会とともに発展する
開かれた会社でありたい。
そして社員が自信を持ち、
常に創造し挑戦していることを誇りとしたい。
 

これを受けた「企業行動原則」の中に“人材開発と組織力の向上”として定めていて、それは次の内容である。


人材開発と組織力の向上

私たちは、多様な人々の価値を最大限活かし、個人と組織の間の相乗効果を高めます。

 ・自己実現の夢を持った社員が自信と誇りをもって、自律して働ける環境・制度を整える。
 ・お客様の価値創造に向けた、エプソン・バリュー実践のための教育を展開する。
 ・会社と社員の対話を通じた信頼関係の構築に努力する。
 ・一人一人が自分の能力を組織の中で最大限発揮できるよう教育・支援を実施する。
 ・個性を大切にし、また組織力も最大限発揮できる適切な風土・制度を整える。
 

そして、上記原則に基づいた人材開発方針は、「企業の目的と個人の目的の統合を前提として、自己実現の夢を持った社員を支援し、セイコーエプソングループを人で結び、支え、育てる」を基本として、次のとおり方針を制定している。

(1)会社は「人材」をかけがえのない経営資源と位置付け、自ら伸びようとする社員の向上心と企業目的を高次元で統合する。
(2)人材開発は、経営理念、事業計画を達成するための重要な手段であり、経営の「好循環サイクル」を実現する鍵である。
(3)このため各階層は次の役割を担う。
1)経営者は人材開発の推進者として、あらゆる企業活動において、率先垂範し方針の実現をはかる。
2)人材育成のかなめである管理者は、O.J.Tを明確な意図を持ち、計画的、継続的に行なう。部下の育成は個別支援を基本とし、きめ細やかな目標設定、評価を繰り返し「成功体験」を積ませながら、徹底的に行う。あわせて「後継者」の育成も行う。
3)社員は、主体的に自己革新を継続する。
4)教育担当部門は、OFF-JTにより、人材開発のための施策を推進するとともにO.J.Tの実施を支援する。
 
 

当社は、上記の理念や方針等に整合した能力開発や人材育成を行っている。それは「研修体系」(別紙参照)(縦軸:役割、横軸:研修群)として定められて、そこから具体的プログラムやメニューに落とし込まれている。その内容は多彩であり、セイコーエプソングループで行うものや当社自体で実施するものなど種類も豊富で数多くの研修が整備されている。

(1)新入社員研修

当社を含めたセイコーエプソングループで採用された社員は、入社式を終えると本社に参集して2週間の集中教育を受ける。内容は、座学(理念、エプソンの歴史、安全、モラル、行動宣言等)の他に配属される職種に関わらずモノづくり体験(金鋸で切断、やすり掛け、時計の分解・再組立て等)研修も重要な位置づけとなっている。

その後に配属されて、1年後にフォローアップ研修として再度召集されて、1年間の振り返りや行動宣言の確認等を行う。また、新入社員も目標管理を行って半年ごとにレビューして意識を高めている。

(2)中堅社員研修

当社では、業務・役割の内容、期待成果レベルに応じて「ランク」として分類され、R1~R5、S1~S3まで定められている。S1~S3は管理職で(3)で述べる。

例えば、R5については管理職の一歩手前で次のような研修を行って育成を図っている。

[1]セッション1:役割の期待と理解
・ここでは自分の目指す姿とのイメージ化やマネジメントとはなどを学ぶ
[2]現状分析と自己理解
・ここでは、これまでの自分の振り返りや自分の強み弱みを確認して、自分への理解を深める。

上記の研修の後に、自己学習との位置づけで通信教育によりさらに学んで確認する。最後に、自己分析の評価と目指す姿のギャップを顕在化させて3年後を目途にそれを埋める計画を立てて行動宣言書に明確にする。もちろん、会社としては1年ごとにフォローするプロセスも整えている。

上記のように“仕事の役割”を中心に期待される人材(役割)像への具現化という組み立てが基本で、本人の意識と会社側のサポートが整合するような仕組みである。

(3)管理職研修
1)S1について:当社でのユニークな制度で、いわゆる飛び級で管理職になる社員の研修である。前述のR4までの社員で職場の上司の推薦があって本人のやる気もあって研修に参加するのである。この制度は2015年度から始めている。
[1]座学研修
・マネジメントとはなど管理者の基本を学ぶ
[2]社長指導会
・これは通常の業務を行いながら、理想のマネジメントを目指して、社長が3か月にわたって指導するものである。
[3]経営シミュレーション
・仮想の会社を設立して事業を進めて損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書など作成まで行って、6期分を行う。
[4]発表会
・以上のことを踏まえて、社長や管理者を前にプレゼンを行う。
2)S2について
この役割はまさに日常の管理者なので、1人あたり1年に2回は研修を受ける。これは、目標管理やリーダーの役割をレビューしてさらにレベルアップを図るとともに、より重要な部下の育成手法や考え方を学ぶ。

(4)スキル別研修

これは個人の能力を高めるために、コミュニケーション、ロジカルシンキング、プレゼンテーション等の各スキル研修が用意されている。これらも座学だけでなく、ケースステディを踏まえて発表までの一連の流れがある。

(5)技能教育

これは、実際の製造現場で必要とされる技能(電子機器組立、空気圧装置組立、機械保全等)については、国家資格の技能検定を活用している。幅広く資格を持ったり、よりその高度化を狙っている。また、当社自体の資格として他の模範となるマイスターの称号を与える制度も整えている。他にもQC検定や知財も技能教育に含めている。

技能検定については、毎年100人以上が受験しており計画的に実行している。

 
 

次の2点が課題である。

[1]これまでの人事処遇制度を大幅に変えて、2015年度から新しい制度で運用しているが今後は受講者数を増やして、能力開発を行う対象者の底辺の拡大である。例えば、人生の節目にはキャリア開発研修にも力点を置かなければならないと考えている。
[2]マネジメント層の育成の強化である。当社が設立されて30年というもののセイコーエプソングループからするとまだ歴史が浅いので、中間管理者の層の厚みや質的にはまだ不十分であると思っている。今後当社として戦略的に取り組む必要があると考えている。
 
 
研修体系