第9回厚生科学審議会臨床研究部会 議事録

医政局研究開発振興課

日時

平成31年1月23日(水) 14:00~16:00

場所

厚生労働省共用第8会議室(中央合同庁舎5号館11階)

議事

○伯野研究開発振興課長 定刻になりましたので、ただいまから、第9回厚生科学審議会臨床研究部会を開催いたします。本日は全委員に御出席いただいておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。なお、本日は臨床研究中核病院協議会を代表し、大阪大学医学部附属病院病院長の木村正先生を参考人としてお招きしております。どうぞよろしくお願いします。
続いて、本日の会議資料についてです。お手元のタブレットを操作して御覧いただきますよう、お願い申し上げます。資料は、画面を御覧いただいて、一番上に議事次第があります。その下に座席表、委員名簿がございます。更にその下から、資料1、資料2、資料3、資料4と続いて、参考資料1、参考資料2がありまして、最後に「第8回臨床研究部会」という名前のフォルダがあります。資料の不足等はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
なお、資料1については臨床研究中核病院協議会から、資料2については日本医師会から御提出いただいており、それぞれ木村先生、羽鳥委員より御説明いただく予定です。円滑な議事の進行のため、撮影はここまでとさせていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。以後の進行につきましては、楠岡部会長にお願いいたします。
○楠岡部会長 本日はお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。早速議事に入らせていただきます。議題1は「臨床研究・治験活性化等に関する取組等について」です。初めに資料1ですが、先ほど紹介があったように、臨床研究中核病院協議会から資料の提出を頂いております。参考人の木村先生から御説明をお願いいたします。
○木村参考人 大阪大学の病院長をしている木村と申します。本日は時間を頂きましてありがとうございます。前回開催の臨床研究部会において、資料1の2枚目に「前回(平成30年12月5日)開催の臨床研究部会での論点」がありますが、そこの1から7に関しての将来像をどのように考えるかということがありました。それで、特に、1の現状を踏まえた臨床研究の在り方、2の臨床研究・治験を実施する医師や研究支援人材、そして、7の、このほか、臨床研究・治験の活性化のためにという所を中心に、各臨床中核病院からヒアリングをいたしました。アンケートの形で問合せをさせていただき、12施設で組織する臨床研究中核病院協議会において取りまとめました。2枚目に「取りまとめ経過」という所がありますが、全12病院からの御回答を頂いております。
3枚目は取りまとめの結果です。まず、「医師・支援人材の人材育成」ということですが、時間の関係上、一部分だけ読ませていただきますが、幅広いeラーニングや専門的なOJTを活用している病院がある一方、指導者の養成はどこも苦労されています。行政職等の経験者の方という外部の即戦力の方に来ていただいて、その方に依存していくしかないという病院が結構あるということです。また、民間との賃金格差がありまして、支援・指導人材双方の枯渇に直面する施設が多数あります。そのため、長期的な教育とキャリアパスの形成が困難という状況になっています。また、医師に対しての系統的な臨床研究教育の不足を感じているという病院もあるということです。
4枚目を御覧ください。「CRC・生物統計家等の支援人材の処遇やポスト・キャリアについて」という所です。専門職に関する俸給体系がなくて、全て有期雇用であるということで困っている病院がたくさんあるということです。内部での育成を試みるが、キャリアトラックや指導体制が整備できていない、あるいは中核機能専従の支援人員というのは教育や研究に従事できる時間が少ないということで、次のアカデミックトラックに必要な業績形成が困難であるという状況に陥っているという問題点が指摘されました。そのため、支援職種の地位確立と職位の設定、あるいはキャリアトラック形成や長期教育の実現、キャリアパスの設定が必要であるという御意見でした。また、中核病院の要件についても再検討が必要ではないかという御意見もございました。
5枚目の「他施設支援の具体的な内容と支援や状況の課題について」を御覧ください。プロトコル作成支援、データマネジメント、モニタリング、監査など、コンテンツは多岐にわたりますが、支援に従事できる人材が不足しており、ほかの施設からの御要望に全て対応することは現実的に難しいということです。また、ほかの施設を支援できるほど成熟した支援経験者の確保も困難で、支援を受ける側の資金不足ということも人材育成の課題及び重荷となっているということです。
6枚目の「上記以外の課題等について」を御覧ください。臨床研究中核病院の業務範囲、例えば患者申出療養、先進医療、ベンチャー支援、医療情報の活用など、十分な収入が見込めない懸念がある業務が今後増えていく場合に、どのように資金を確保するかという問題があります。シーズを創出しようとしても、例えば2つ目の太字の下ですが、診療ガイドラインを変えるような臨床研究、すなわち後期開発に相当する部分というのは、これがないと適切な医療を患者のもとに届けるということにならないわけですが、こういった後期開発臨床研究に関する中央支援あるいはローカル支援、多施設共同でのPhase3など、非常にプラクティカルなものに関する支援を臨床研究中核病院の機能に含めるべきではないかという御意見がありました。また、特定臨床研究が評価療養でないということによって、非常に介入研究が減っているという問題があります。例えば阪大でも、本年度の新規の申請というのは今のところゼロで、今までの持越しの分しかないという状況に陥っているということがあります。また、先進医療に係る手続が煩雑で、CRBと先進医療技術審査部会の機能が重複しているということがあり、これはもうCRBに下ろしていただいてもいいのではないかという御意見もございました。
このような意見を取りまとめまして、7ページから課題としてまとめてみました。まず、その一番は人材難です。支援者としての人材難あるいは支援業務を指導する人材難ということです。そもそも、このような製薬会社の開発部と同じような機能を持つということをアカデミアでする以上、そこに魅力がないといけないわけですが、なかなか教育されない、待遇もよくない、そして目標が設定できないということで、魅力がないという現状です。また、指導する人材も、今までの御経験のある方をお呼びして何とかやってきているわけですが、なかなか枯渇してきており、またその指導スキルを教育する土壌やシステムがありません。これはやはり業務の分野ですので、学問的創造性ということと業務の指導監督能力の両方をどのように評価するか、あるいはどのようにそれを評価して処遇するかという問題があります。民間企業のほうが若干上手にやっているということになると思います。また、現状では内部で新規に育成するという手法が確立できておりません。
2つ目の○を御覧ください。せっかく来ていただいたとしても、短期離職率が高いということです。これは、1つ目の業務ごとのキャリアラダーはある程度あるのですが、標準化されていないということです。なかなか評価がうまくされていないという感覚を持っておられます。それから、この支援職種の方々は医療職でもなければ事務職でもないという職種になるわけですが、この独自の専門性をどのように下支えするかというはっきりしたスキームがなく、またこの方々のほとんどが有期雇用です。スキルが上がっても、仕事量が増えても、なかなか処遇は改善しないという閉塞感がある職場になってしまっています。中核病院業務専従義務の掛かる職種では、先ほど申し上げましたように、論文を書いたり教育するという時間が取れないということになりますので、アカデミックキャリアパスの形成が難しいという問題があります。
8ページの課題(2)を御覧ください。「臨床研究中核病院と連携する研究者側あるいは依頼施設側の課題」ということです。1つ目は、医師にとっては非常に耳の痛い話ですが、医師が何も分かっておらず丸投げをしてくるという状況があります。やはり依頼施設側でも、そういう支援と連携できる知識、経験のある人材というのは必要ではないかということです。また、支援を受ける側の施設から研究の支援を依頼する際に、やはりファンドの不足というのは、結局、中核側の体力を奪い、ほかの施設を支援するということの足かせになっているという状況です。
次の○は、臨床研究中核病院のタスクが要件に明確化されていないということです。基本的にこの臨床研究中核病院の要件というのは、高度な機能を持った病院が一定数の論文を出し、そして体制を作り、それを支える人数がいればなれるわけですが、先ほど申しましたような新しい機能ということに対するものには基づいていないということです。それなので、私ども臨床研究中核病院に何をどれだけやるかということがなかなか見えてこず、例えば人材を育成しようとしても何を育成したらいいのか、どれぐらいの規模でやっていけばいいのかということが、タスクがどんどん増えているという現状で見えてきていないということです。
3つ目の○は、業務の高品質化・収益の自立化と、低採算分野の部分を拡充しないといけないというジレンマがあります。先ほど申しましたように、この臨床研究中核の支援機能というのは、恐らく自社で開発能力のある製薬会社が持っている部門だと思いますが、結局お金になるところをそういうところがやってしまうということで、お金にならないところが我々に回ってくるということです。そうしますと、数字で収益の自立化ということを書かれますと、数をこなして低品質化につながってしまうということがあります。2つ目のポツは、前臨床試験支援、評価療養、医師主導治験、多施設共同研究など、これは非常に社会的要求度が高く、これらが達成されると日本の医療の向上にかかる重要な案件ですが、例えばこれを私ども医師がこのようなものにグラントアプライしましても、資金は脆弱でありますし、どう考えても5年、6年とかかる研究がグラントが3年で切れると、それで終わってしまうというようなこともたくさん起こっています。ベンチャー支援、医療情報ネットワーク整備などは、むしろ補助事業化してはおりますが、それが付加業務となって負担となっているということですし、むしろインフラの整備もしなければいけないという状況です。
愚痴ばかりを言ってもしようがなくて、多少の提言はさせていただかなければいけないということで、9枚目を御覧ください。1つは、この人材確保難をどのように克服するか、それから支援人材の魅力あるキャリアパスとしてどのように活かすかということがあります。国立大学、本部としましても、臨床研究というのが全然分からない人たちばかりです。なので、国立大学で何かをしようと思うと、やはり一定の枠組みを作っていただいて、こういうものだというように示していただかないと、先ほど申しましたような業務評価チャートとか、様々な資格であるとか、医療職、事務職以外の専門職俸給などというのは、大学本部の部局長会議でこういう話をしますと、「何だそれは」という話で全く分かってもらえないというのが現状です。ですので、そのような環境整備というのを是非提言していただきたいと。我々だけではなくて、国からも提言していただきたいということです。そして、業務に関する専従を多少は柔軟化していただいて、学問的なキャリアパスも作れるというような制度設計をしてはいかがかということです。
3つ目の○を御覧ください。研究者のリテラシーの向上と研究支援業務の認知度の向上ということです。これは、やはり医療職の比較的早期の段階から、あるいは支援職を目指すような非医療職の方々、様々な医療系の教育機関などでこのようなリテラシーを深めるような活動をして、臨床研究及びその支援に関する関心を、もっと全体的に高めていただければどうかということです。そのためには、教育ツールの整備だけではなく、各支援業務の実施者に対するOJTも私ども中核病院の必須の教育機能としてはいかがかという提案です。また、こういう教育機能強化を私どもの公的機能として、その財源の補助をお願いしたいということです。
次のページを御覧ください。臨床研究中核病院に求められるタスクや機能を要件にするということも考えていただいてはいかがかということです。これは、今、非常に多岐にわたっている求められるタスクが、中核病院の要件には全て入っていないということです。あるいは1つの中核病院が全部のタスクをしないといけないかと言うと、例えば阪大病院はAということが得意であって、東北大がBということが得意であってというような形で、多少のすみ分けをするという方策も考えられるのではないかと思います。そのようなことも含めて、私どもの人材育成や長期計画の参考となるような、国内全体でどの拠点がどこにどれぐらいあるかという適正な規模感を示していただきながら、私たちがそれに乗っていくことはどうかという提言です。
また、院内外の必要な研究には十分な支援をし、また業務の高品質を保つための原資の確保。結局、お金のことばかり言って恐縮ではありますが、民間ではお金にならないところを公がやるというスキームから考えますと、やはりそこにある程度の資金は要るのではないかということです。この2つ目のポツで、臨床研究支援を一定以上実施している病院への診療報酬の上乗せ、これは研究と関係のない人がなぜ金を払うのだという議論は出るかもしれませんが、やはりこの研究を通してその病院の機能が上がる、そしていい医療を提供しているということであれば、多少そのようなことを考えてもいいのではないかという提言です。私はよく阪大病院は保険点数1点15円にしても文句はないのではないかということを言うことがあるのですが、そこまでは言わないにしても、そのような考え方が少しあってもいいのではないかというものです。
また、このような臨床研究法上の特定臨床研究、あるいは社会的に非常に重要な努力義務対象研究、適応拡大とかエビデンスの創出などの一定の品質レベルを満たす臨床研究というのは、やはり社会的意義を踏まえて評価療養に準じたトラックでの実施を認めていただければいかがかという提言をさせていただいて、私からの発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。非常に広範にわたる課題を、協議会のアンケート調査でまとめていただきまして、ありがとうございます。
私自身もAMEDの事業等で臨床研究中核病院にお邪魔させていただいているのですが、木村先生がまさに御指摘された点が、これから臨床研究中核病院の機能維持に大きな問題になってくるのではないかということを実感しているところです。ただいまの御発表に関して、御意見、コメント等はございますでしょうか。
○山口委員 かなり他施設支援というところに負担があるということを以前から私もお聞きしていましたし、今の話を伺っていても、そうだなと思いました。せっかく臨床研究中核病院を12病院指定したにもかかわらず、疲弊して向上していかない、前向きになれないということでは意味がないのかなということを、改めて今の御発表で感じることができました。
最初に、かなり病院によってばらつきがあるというお話をしてくださったと思いますが、できている所とできていない所、あるいは疲弊しているような、苦労している所のほうが多いという意味でのばらつきなのか、実はきちんとできている所のほうが多いけれども、一部そうでないという所があるのか、その辺の全体が分かるようなことを教えていただきたいと思います。
それと、もし十分に充実しているという臨床研究中核病院があるとしたら、何があるからそれができているのかということを教えていただければと思います。
○木村参考人 御依頼していただく側のリテラシーと言うか、どの程度そういったことに慣れているか。これはもう慣れていらっしゃるかでありまして、やはり最初に申請してこられる、1回目は皆さんぼろぼろです。皆さん、ぼろぼろのうちに申請してこられるわけで、それを直しながら、そしてそちらを経験していただきながらレベルが上がってくるものだと思います。これは私たちの世代、今この臨床研究を指導するための世代というのは、こういう教育を全く受けていないままに育ってまいりました。その世代の者が立案しても、その書類がぼろぼろなのは当たり前だと思います。
やはり、そのような経験を積みながらやっていただくということは、どこの施設にとっても大事でありまして、それがうまく回るかどうかは、支援する人材がどれだけいらっしゃるかというマンパワーにかかってきます。そうしますと、今度は逆にそれだけのマンパワーをどのように維持するかという問題が、今度は病院本体に大きくかかってきますので、その辺りをどこまでやるのか。
例えば一番簡単なのは、ある程度よく勉強してきた人だけを拾って、それ以外の人はやめろと切ってしまうのが一番簡単なわけですが、なかなかそうはいきませんので、そういったことが今の現場の疲弊感につながっているのではないかと考えています。
○楠岡部会長 臨床の現場で、我々がClinical Questionと呼んでいるような、こういうことを明らかにしたいとか、あるいは治療において比較をしたいというような場合、それを思い付く人が必ず研究計画を立てられるとは限らない。また、研究計画を書ける人が常にいいアイディアを持つとは限らない、そこはある程度分業体制がどうしても必要になってきて、うまくそれを受け渡していって、最終的にいい結果が出るという形です。アイディアを思い付くところは個々の医師なりで、その後のところをどちらかと言うと臨床研究中核病院に期待しているわけですけれども、そこが今幾つか出てきたような問題点でうまくいっていないと思われます。
ですから、アイディアを持つ医師を育てることも必要ですけれども、それがどんどん出てきたときに、それをうまく受け止めて実際の成果につなげていくシステムをどう作るかが重要です。一方、臨床研究中核病院ができたことによって、それ以外の大学病院等が臨床研究中核病院にお任せというようなスタンスになりつつあることも問題です。大学病院も地域医療の問題、人材育成の問題といろいろと問題を抱えているので、研究部門だけでも外出しにしようかというようなことで、臨床研究中核病院にお任せということになりつつあるところもあって、その結果、中核病院の業務も増えますし、逆にそれぞれの大学病院の研究力も下がってしまうことになる。このバランスをどう取っていくかというのも、これからの課題と考えられることだと思います。ほかに何かございますか。
○清水委員 今の点は非常に重要な点なのですが、それは研究を立ち上げて計画を練ってという入口部分の支援なのですが、実際に臨床研究法に基づいて研究を実施していただく段になると、実施機関としての支援体制というのも必要になってくるわけです。
モニタリングなどであれば、必ずしもオンサイトでなくてもということはあるのですが、例えばきちんとそこを説明していただいて実施して、記録を残していただいてというようなところというのは、やはり現場の医師だけではなくてCRCとか、そういう実施支援部隊も必要なのですが、そういうものがある程度そろっているということも中核病院の要件になっているわけですね。
ただ、それはどう考えても、自施設で質の高い研究をきちんとフォローできるような体制をベースに決められているものなので、遠隔の他施設、それも数の多い所を、実務的にそういう支援をすることは実質的に不可能なのですが、そういったところを整備しようという動きが止まってしまって、中核病院があるのだから全て負んぶに抱っこでいいではないかという雰囲気に若干なっているところもあって、こういうことをしたいので支援してくださいと要請されたときに、あれもこれも全部そちらでやってほしいと申出があっても、それはとてもできる相談ではないと。
当然、私どもが中核病院として支援させていただいてうまくいっている研究も少なからずあるのですが、そういうところを実施されている所というのは、やろうとしている施設は施設なりに十分に努力をされていて、現場に必要なものは何だかを、こちらのほうで、こういうものは現場でないと大変だということをお話すると、それはこちらで整備しましょうと。どうしても中央にないといけないようなところ、先ほど研究計画をきちんとレビューしたりといったところは、どうしても全ての所で整備するわけにはいかないところなので、そういうところを助けていただければというような形でやらせていただける所だと、それでも、今、御説明いただいたように、それも数が増えてくると、そこもなかなかという感じなのですが、それですらないという状況であるというのが、多くの大学病院、必ずしも大学病院だけが研究の場ではなくて、大きな病院であれば当然そういう研究的な動きをされようという所はたくさんあって、CRBを設立されているような病院もリストを見ると、必ずしも大学病院ではない病院でも、それが整備されていると。ということは、研究をしたいという意思は十分にあるのですが、多分そういう所においては、大学より更にそういう人材をどうやって育成したり、維持したりということが、とてもできないと。
中核病院ですら足りない状況なのに、ましてやということだと思うのですが、やはりこういうことを全体的に活性化させていくということを考えたときには、うまくそこで実施部署である個々の病院や大学と、セントラルに支援する中核病院とが、うまく整備状況を分かち合って、全体的にかさ上げしないと、中核病院に全て任せておけばいいという雰囲気になってしまうと、それはとても成立しない話ではないかなと思います。
○藤原部会長代理 私どもは臨床研究中核病院ですので、木村先生にまとめていただいた提言の中に私どものいろいろな要望も盛り込まれているのですが、その中で私が重要だと思っているのは、3点ありますので追加で言いたいと思います。
1つ目は、中にもあった人事体系と言いますか、非医療職、これまでにないいろいろな職が臨床研究支援にこれから入ってくる段階で、それに旧態の人事体系システムが追いついていっていない現状というのが、我々が一番苦労しているところです。これからビッグデータなどが広がってくると、データサイエンティストという職種、横浜市立大学とか滋賀大学が初めて学部を作ってそういう職種を養成していますが、そういう人たちが卒業してきたら、どうやって処遇するのかとか、あるいはデータマネジャー、DMという職種ですが、これは理学部とか工学部を出た人でもなれるのですが、医療職ではないので、それを病院の中でどう雇用していくのかとか、あるいは文系を出た人でもモニターになったりDMになったりする人はいるのですが、それはいわゆる事務職として雇用している現状で良いのかとか、様々な問題に直面しているので、新しい職種に対してどのように対応していくのかということも考えないといけないと、私はいつも思っています。
私どものセンターでは、それをなんとか臨床研究支援職とか専門職のような形で処遇していますが、なかなか広がっていかない背景には、横並び主義の日本の状況があるので、例えば人事院の中に今は医療職とか行政職とか専門行政職という規定がありますが、その中に臨床研究支援職という体系を模範的に作っていただくと、先ほど木村先生がおっしゃったような大学の本部の医療を知らない人たちでも、人事院の中の俸給表にそういうものがあれば、こういう職種は大事なのだというように気付くかもしれないので、その辺も将来は配慮いただければと思います。
2つ目は、この提言の最後の10ページに書いてあるですが、「特定の分野や業務に秀でていれば、その機能をもって中核病院に準じた役割を果たせるようにしてはどうか」というのは大賛成です。
従前から、例えば成育医療研究センターとか精神・神経医療研究センターのような、希少疾患とか難病とか、あるいはこれから非常に大事になる小児の領域を研究開発している病院が、中核病院というのは総合的に秀でるということが要件になっているので、なかなか中核病院になれずに、大事な研究領域の振興が遅れているという現状があると思うので、がんの拠点病院などですと「特定領域」といって、あるがんに非常に優れた病院をがんの診療連携拠点病院にするということも厚労省はされているわけですから、臨床研究中核病院もどこかの領域に優れているという病院を臨床研究中核病院にする第2のトラックを作ってもいいのではないかというのが、私のお願いです。
最後は、これも中核病院の先生方はいつも考えていると思うのですが、臨床研究法が始まって、特定臨床研究という概念が入ってきたのですが、大きなターゲットの欠落がありまして、未承認とか適応外ばかりに目が向いて、既存の薬の使い方とか、Comparative Effectiveness Researchと言いますが、費用対効果に優れていたり、中身も非常に優れた治療法を開発する既承認薬あるいは既承認の技術同士を比較する臨床研究というのが、全くその対象から外れてしまって、多くの大学病院などがそういうことを無視するのではないかという懸念を私は持ちます。したがって、特定臨床研究をもう少し幅広く、診療というのは様々な研究によって支えられているので、何も未承認薬とか適応外薬を使うだけが研究ではないので、そこを振興するような体系に変えていただければなと思います。以上の3つです。
○楠岡部会長 藤原先生が最後に指摘された点ですが、前回の部会でも申し上げましたが、イノベーションばかりではなくて既存薬の組合せをどうしていくかというのも非常に大きな問題なのですが、そこは今日本ではなかなか進みにくいところがあるのは事実です。
そういう問題については中立的なスポンサーがあればいいのですが、必ずしもそうではなく、製薬会社がスポンサーになるケースも多い。そこは今回臨床研究法ができて、COIなどもしっかりと見極めてやっていくので、逆にスポンサーをうまく活用できるような体制ができればまた進むのではないかと思います。これは今後の課題だと思っています。ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。
○羽鳥委員 前回も例でお示ししましたが、東北地方のある大学で、東北大が臨中になるからということで新規の臨床研究の立ち上げをストップしていて、現在進行中のものも3月の駆け込み申請することができていないそうです。
先ほど木村先生がおっしゃったように、阪大ですら新しい研究が出てこないというようになると、今後、非常に悲惨な状況になると思うので、次の見直しを早めに基準を緩めることも考えてよいのではないでしょうか。人材の要件が非常に大きいのだと思うので、その辺を緩める、あるいは複数の大学の案件を扱えるような方の数も減らないようにしないと、ただでさえ一流誌に出る論文が減っているのに更に減ってしまうおそれがあるのではないかと思います。
それから、開業の先生方でも市販されている薬品の有効性を比較するなど、一般の医会で行ってきたことが、臨床内科医会で、この認定倫理審査委員会を作ろうとしても、条件が厳しすぎるために中止したというようなこともあるので、もう少し臨床に近い研究ができるような仕組みを作ってあげないと、これから日本は大変なことになってしまうのではないかと思うので、どうぞよろしくお願いします。
○木村参考人 おっしゃるとおり、数というのは非常に重要だと思っております。先ほども申しましたように、申請をするという行為一つであっても、1回目はぼろぼろでも2回目、3回目と上手になっていきます。ちゃんと分かってくるわけです。それは、やはり数をこなすということが全体の質を必ず上げますので、数ありきではいけないかもしれませんが、少数精鋭という考え方を日本は結構しがちですが、この領域に関して少数精鋭は基本的にないと。まず数、ベースがあって、そうしますと必ずいいものが出てくるというような発想のほうが正しいのではないかと私も思います。ありがとうございました。
○楠岡部会長 ほかにございますか。
○新谷委員 貴重な御意見、ありがとうございます。海外のことと比較して、私が日本に帰ったときに非常に思ったのが、日本のアカデミアの研究はすごく企業寄りのことをやっているなと。例えば統計だとダブルプログラミングをやらないといけない、データもソースデータとチェックしなければいけないとか。それで、必ずしもアメリカのアカデミアでそれをやっているかというとそうではなくて、アカデミアだと、ここは締めて、ここは重要だからきちんとしなければいけないけれども、これ以上はしなくてもいいというところがあって、もうちょっと日本よりも伸び伸びとした環境で安心してやっていたという気がするのです。
ですので、今、臨床研究法が施行されて、治験レベルでやらなければいけないのだったら、もう自分たちはできないというようなうわさも立っているということで、必ずしも治験レベルでやりなさいというわけではなくて、科学性を担保するためには最低限ここだけは守ってくださいというところを啓蒙するような活動も大事ではないかと考えています。
あとは、Comparative Effectiveness Studyで実臨床でのRCTというところで、今、Pragmatic Trialと、例えば必ずしも盲検化しなくてもいいのだよと。心理効果も効果のうちだというような考え方で、もう少し楽にできるような考え方のRCTも入ってはきているのです。ですので、そういうことをどんどん、こういうやり方もありますということを教育していくというところが大事ではないかなと思います。現場の先生方に、もうちょっと安心してやっていただけるような環境を整えられたらと思っています。
○清水委員 今の点に若干付け加えるとすると、やはりクオリティの担保のときに、日本というのは何か基準を決めると、微に入り細に入り、とにかく一から百まで全部守らなければいけないという風土がどうしてもあるものですから、「治験並」と言われたときに、何が治験並で、モニタリングもやらなければいけないといったときに、具体的にどこまでやればいいのかというのがはっきりしないと。
治験ですら、今はリスクベースでモニタリングしていいというようになっているのだけれども、結局はどの程度までのことをすればいいのかが分からないので、とにかく何があってもいいようにしておきましょうということになってしまうと。
これはメーカーが開発するときはやむを得ない部分もあるのですよね。お金をかけてやって失敗したら元も子もないから、絶対に失敗しないように、そこはリスクとバランスしてやりましょうということできちんとやるというのはあるのですが、アカデミックな研究の場合には、科学的な結果の正当性をきちんと担保できるところを見ればいいわけなので、そこはある意味では中核病院などが知恵を絞って、この程度でいいのではないかというものを出していければいいのかなというのは感じております。
もう1つ、Comparative Studyとか、実臨床に根差した研究というのが、なぜこのようにやりにくくなっているかといったときに、一つにはそういう研究というのは時間がかかる、規模がどうしても大きくならざるを得ない。そうすると、それでも研究としては1件にしか数えられないので、例えば中核病院で支援するときにそういうものをバンとやってしまうと、ほかのものができないと。
医師主導治験などで、並でもいいからやりたいと言われても、それをやろうと思ったらばく大な資金もかかるし、期間もかかるし、支援人材もそれにほとんどのものを注ぎ込まないととてもできないという状況の研究が多くなってしまうのです。
ですから、グランティングなどでも、どうしても2、3年という括りがくるので、そういった形の研究のものに依拠して始めたはいいけれども、途中でできなくなるというわけにもいかないしという事情もあるので、研究に対するサポートの仕方であるとか、マネージの仕方であるとかということも、このようにすればいいというところのガイドラインなどを早く決める。それから、そういったものに対するサポートの在り方なども、十分にフレキシブルにできるように。
どうしても企業の資金に頼ろうとすると、自社製品がいいと言ってもらいたいから出すというところもあるので、そうすると本当に勝負するような研究というのはできなくなってしまうのです。敵の薬のほうがいいかもしれないという研究をするのにお金は出せないという話になるので、そういうところはメーカーに働き掛けて、そういう基金などを作っていただいて、そこから支援するというような形のメカニズムを設計していただければと思います。
○楠岡部会長 まだいろいろと御意見があるかと思いますが、時間の関係もありますし、木村先生はこの後は御都合がございましてここで退席されるということですので、この議論に関してはここで止めさせていただきたいと思います。
ただ、本日御指摘いただいた臨床研究中核病院に関するいろいろな課題は、治験・臨床計画に関する課題が中核病院に集約されているような状況ということで、これは決して臨床研究中核病院だけの問題ではないと思います。前回出た幾つかのポイントに全て関わってくることだと思います。今後もこれについては議論を重ねていきたいと思いますので、また臨床研究中核病院協議会の御協力をお願いしたいと思います。木村先生、本日はどうもありがとうございました。
引き続きまして、日本医師会からも資料が提出されております。資料2について羽鳥委員から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○羽鳥委員 資料2を御覧ください。希少疾患の医師主導治験、臨床試験関係者のための教育活動、国民に対する治験・臨床研究の普及啓発活動についてということで、13枚ぐらいのスライドを作っております。前回の部会で論点案にありました医師・研究支援人材の育成、小児、希少・難病の促進、国民・患者への普及啓発につきまして、日本医師会の活動を紹介したいと思います。日本医師会は平成15年から厚生労働科学研究補助金を用いて、医師主導治験の実施支援及び治験推進に関する研究を実施してきました。平成27年からは、日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究開発として研究事業を継続しております。日本医師会治験促進センターは研究事務局として機能しております。
スライド2にありますのが、日本医師会の研究事業の全体像です。医師主導治験の実施に関する研究と治験促進に関する研究の2つの研究事業を行っています。
次に希少疾患の医師主導研究ということでは、スライド4にありますように、医療現場で高い必要性が叫ばれる希少疾患医薬品の承認取得を前提とした研究者が実施する医師主導治験の実施支援を行っています。研究段階により、これから治験実施計画等を作成する研究に係る研究区分と、医師主導治験を実施する研究区分に分けて、研究支援を行っています。なお、開発する希少疾病医薬品等に関しては、日本医学会分科会からの推薦が必須で、日本医師会が設置している外部委員会で研究の妥当性を審議いたします。さらに、医師主導治験を開始する前には、医師主導治験の成績を基に承認申請をしていただく企業と研究契約を締結し、研究者には毎月、症例リクルートや症例登録などの研究実施状況を報告していただき進捗管理を行うなど、長年の支援経験を研究者らと共有しながら、計画どおり研究が遂行できるように支援しています。
平成15年からこれまでに88の課題を研究採択し、そして治験計画届は61件、承認取得は23品目で、承認申請準備中の課題も現在、数題抱えております。
次のページです。主な成果として、3つほど紹介いたします。1つ目は、痙攣性発声障害に対する治験薬であるA型ボツリヌス毒素の医師主導治験を、2014年3月より高知大学医学部附属病院を中心に8研究機関で実施し、22症例が組み入れられ、この試験結果を基に2018年5月25日に承認されました。
2つ目は、従来の治療法では根治的治療が困難とされた硬膜動静脈瘻に対する治験機器である液体塞栓システムの医師主導治験を、2014年1月より神戸市立医療センター中央市民病院を中心に4研究機関で実施し、27症例が組み入れられました。この試験結果を基に2018年4月25日に承認されております。
3つ目は、重症心不全小児患者が心臓移植へのブリッジとして使用する治験機器の医師主導治験を、2012年12月より東京大学医学部附属病院を中心に3研究機関で実施し、9症例が組み入れられました。この試験結果を基に2015年6月18日承認されております。現在、小児用補助心臓「EXCOR」は7つの病院で使用されており、これまでに40数症例使用され、そのうち8例が国内移植、13例が渡航移植となっております。
次に、2つ目の課題の「教育活動」について御紹介します。7ページです。説明に先立って、治験推進に関する研究について、このイメージ図で御紹介します。行政、団体、国民の皆様と協力しながら我が国の治験活性化、治験業務の効率化・標準化を目的に活動をしております。本日紹介する、臨床試験関係者のための教育活動、国民向けの普及啓発活動のほかに、業務の効率化のための活動として1,700以上の組織が利用する治験業務支援システム、大規模治験ネットワークなどがございます。
次のスライドをお願いします。臨床関係者のための教育活動について御紹介します。約3万人のユーザーがいる臨床試験のためのe-Training centerというE-learningシステムを提供しています。この仕組みは日本医師会生涯教育制度の単位も取得でき、医師等の教育に活用されています。設問数は1,800あり、今後、製薬、学術団体と協力しながら拡充を図ります。次年度は臨床研究に関する設問を大幅に増やす予定です。
スライド9は、医療機関等への最新の情報を提供するため、治験推進地域連絡会議を毎年、福岡、大阪、東京の3か所で開催し、例年750名の御参加を頂いています。プログラムは、最近の動向や出席者のアンケートにより臨床試験関係者の実務に役立つ内容を企画しております。平成30年度のプログラムを参考としてお示しします。これ以外にも、臨床試験関係者の多く集まる、CRCと臨床試験のあり方を考える会議における共催セミナー、あるいは医師主導治験のスタートアップミーティングへ同席し、安全性、情報管理の説明の資料管理などの電子化支援なども行っています。
次に、国民に対する治験・臨床研究の普及啓発活動です。11ページです。医療機関が独自に治験促進・治験啓発活動を行う際の支援と、日本医師会が主体となって啓発活動を行うケースと2つあります。下に、提供資料のイメージを示しております。治験説明用のパンフレットを大人・子供向けに作成・提供することで、医療機関の資料作成の労力をなくし、全国で統一した治験の説明ができるようにしています。
次のスライドは、治験啓発用のツールを示しています。イベントの開催支援も行っており、貸出先の医療機関の啓発活動の様子をお示ししています。13ページ、活動の様子を御紹介します。平成28年より毎年数箇所で活動しており、約3,000人程度に説明をしております。左は小学生を対象とし、プラセボ体験を取り入れて楽しく学びながら治験を説明するとともに、夏休みの自由研究として教室をこの厚生労働省に開催していただいてます。右は宮崎県でイベントに出展したときのものです。近隣の社会科見学としても利用されているフェスタで、当日は1,000人を超える中高生の方がいらしております。
最後のスライドです。一般の方向けサイトとして、治験について、治験の探し方などを紹介しており、このサイトを医療機関では御自分たちのホームページにリンクしていただいてもかまいません。簡単ではございますが日本医師会の活動を御紹介申し上げました。
○楠岡部会長 ありがとうございました。この後、事務局から資料3、4につきまして説明いただくことになっておりますけれども、特に今の日本医師会治験促進センターの活動に関する御質問があれば、ここでお聞きしたいと思いますが、ございますか。よろしいでしょうか。それでは、後の資料と合わせて御議論いただけたらと思います。続きまして、資料3、4について事務局から説明をお願いいたします。
○吉田治験推進室長 それでは説明いたします。最初に参考資料1の「第8回臨床研究部会での主な御意見」というファィルを御覧ください。参考資料1で、前回の部会で出た御意見をまず簡単に総括いたします。前回提示した論点案を基にまとめております。まず、1番目として、拠点の在り方ということに関してですが、拠点の現状に係る資料等の提示、実態を把握したいという御意見、あるいは他施設支援に関して拠点の考え方を議論していく必要があるという御意見、また、早期臨床開発だけではなくて、いわゆる後期臨床開発を十分に実施できる整備も必要だという御意見等がございました。
2番目は医師や研究支援人材についての話です。ここについては、clinical questionの着想から、計画立案、デザインをする流れを、教える側の臨床研究を実施する側も十分に理解していないケースがあるという御意見、また、研究支援人材を活用するに当たっては、ポストや長期雇用が非常に難しいという御意見がございました。
次のページです。3番目は、小児疾患など、治験が進みにくい分野の臨床研究についての取組です。これについては、実態を踏まえて具体的な方策を検討するべきではないかという御意見、患者の意見を取り入れてプロトコルを一緒にデザインするような取組を奨励したらどうかという御意見がございました。
4番目、国民の臨床研究・治験への参画についてです。患者会等のコミュニティの理解が重要だという御意見、コンスタントに初等・中等教育で行っていく必要があるという御意見、国民が臨床試験を容易に検索できる体制の整備が必要という御意見がございました。
5番目です。質の高い診療につながる研究の促進ということです。これについては、モノの研究やイノベーションの研究だけではなくて、ガイドラインの精緻化等の研究が必要ではないか、重要であるという御意見がございます。
6番目は、臨床研究法の運用上の考え方についてです。特定臨床研究の手続については、極端に難しいような印象を持たれているのではないかという御意見がございました。
7番目です。その他、活性化のために必要な方策として、例えば特定臨床研究の結果を薬事承認申請に活用できないかという御意見、国際共同臨床試験の実施可能な体制整備を進めていくべきではないか、このような御意見があったところです。
これらを踏まえまして、また、先ほどの臨床研究中核病院協議会及び医師会からの取組の事例に加えまして、厚生労働省のほうで現在行っているこれまでやっていた取組について簡単に共有できればと思っております。
それでは次に、資料3の「臨床研究・治験活性化等に関する取組について」を御覧ください。まず、2ページ目に、前回提示しました論点案がございます。この柱立てに沿って、順番に現在の取組を説明いたします。
4ページ、「臨床研究中核病院の役割や機能」です。これは臨床研究中核病院の現状の位置付けのおさらいになります。平成27年の4月から、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的な役割を担う病院を臨床研究中核病院として医療法上に位置付けております。その意図するところは、2つ目の○ですけれども、この名称独占によって、臨床研究中核病院が他の医療機関の臨床研究の実施をサポートし、共同研究の中核となって臨床研究を実施する、そして、臨床研究に参加を希望する患者が当該病院にアクセスできるようになって、それによって患者が集約され、臨床研究が集約的かつ効率的に行われるようになると、こういうことを意図しております。3つ目の○で、現在、下記の12病院が承認されているところです。
続きまして、臨床研究中核病院の整備状況を簡単に御紹介します。5ページです。まず、病床数、臨床研究支援・管理部門に所属する人員数、臨床研究支援部問の組織規模を比較したグラフです。この赤で示した点々が要件値になっております。これを見ていただきますと、人員数につきましては承認要件から比較して大きく上回っているところ、また、承認要件に近いところに集約されている職種があり、織種によって差があるということが分かるかと思います。また、臨床研究の支援部問の組織規模についても、病院間で規模に差があるということが分かります。
6ページです。こちらは特定臨床研究を行う者等への研修会の開催件数です。いずれも要件値は満たしておりますが、研修内容については、個別の研修項目について各病院の考え方に沿って実施されているところです。
7ページです。これは実績要件ということで、特定臨床研究の新規実施件数、論文数、他施設への支援件数のグラフになります。この実施件数につきましては、1又は2、3又は4ということで、どちらか片方を満たせばいいという要件になっております。これから分かることは、この臨床研究や医師主導治験の実施数については、主に医師主導治験の実施によって要件を満たしている機関が多いということ、また、他施設支援の実績件数については、病院間で大きな開きがあるということです。
続きまして8ページです。ここから臨床研究拠点整備等に係る取組を御紹介していきます。これらの取組は主に厚生労働省が直接、若しくはAMEDを通じて臨床研究中核病院に対して行っている事業ということになります。
9ページです。1つは先進医療技術実用化促進プログラムというものです。これは先進医療の申請に向けた事前相談、この窓口を臨床研究中核病院に置くことで、従来、厚生労働省で行っていた相談機能を臨床研究中核病院が持つことによって、申請技術の品質の底上げや、審査の迅速化を図るというものです。
10ページです。臨床研究・治験従事者等研修プログラムです。これまで臨床研究中核病院が実施してきた実績をベースに、各研修のシラバスを作成して、それに沿って従事者の研修を開催すると同時に、既存のe-learningの体制を改修、若しくは構築することで、更に他施設の臨床研究従事者を含めた養成を行えるようなシステムを作っていくという事業です。
11ページです。下の枠の中を見ていただきたいのですが、3つございまして一番左側、国際共同臨床研究実施推進プログラム、これはいわゆる国際共同治験を実施する者に対する様々な支援を行っております。真ん中の医療系ベンチャー育成支援プログラムは、臨床研究中核病院にそれぞれベンチャー支援部門を設置しておりますので、これを利活用して必要な支援を行うプログラムを進めております。一番右側の安全性確保支援プログラムについては、12ページを御覧ください。これにつきましては、その診療情報についてデータの標準化等の体制を整備して、いわゆる臨床研究中核病院での疾患登録情報等のリアルワールドデータの活用を推進するというプロジェクトです。
続きまして13ページです。これはARO機能評価事業と呼ばれるものです。AROとは、Academic Research Organizationのことを言います。これは研究機関や医療機関等を有する大学等がその機能を活用して、医薬品開発等を支援する組織のことを言います。オールシャパンでの革新的な医療技術創出のために、拠点の有するARO機能の強化と活用を行う。この事業におきましてはARO機能の評価基準を策定して、各機関のAROが得意とする支援機能や充実度等を定量的に評価して、それを公開するということを行っております。今後は、各拠点のシーズ状況も確認した上で、その結果を踏まえて、ARO機能評価の基準の見直し等を行っていく予定です。
次のページは革新的医療技術創出拠点プロジェクトです。今まで説明した取組の多くは、この革新的医療技術創出拠点プロジェクト、いわゆるこのAMEDを通じたプロジェクトということで、具体的には、大学等の基礎研究成果を一貫して実用化につなぐ体制を構築するために文部科学省の橋渡し研究支援拠点の事業と一体化して進められております。
15ページです。このAMED事業における臨床研究中核病院の実績を簡単に御紹介します。過去3年間の実績を御紹介しますと、医師主導治験数で64件、企業へのライセンスアウト数が46件、アカデミア発製品の薬事承認取得数が13件という状況です。その他の実績として、治験・臨床研究に関する一般向けの相談窓口というものを臨床研究中核病院には設置しておりますので、そこでの相談実績が合計2,843件となっております。また、先ほど説明した先進医療の事前相談につきましても合計114件の相談実績となっているところです。
16ページです。これは今説明した実績の年度別の件数です。このグラフを見ていただきますと、医師主導治験だけではなくて、企業へのライセンスアウトや、薬事承認に関する継続的な実績も出てきているということがグラフから分かると思います。
17ページでは、臨床研究中核病院における実用化の具体的な事例を紹介します。事例1は、医療機器ですが、胎児心拍数モニタリング装置、2017年に承認が取得されております。これについては拠点による支援ということで、治験相談資料の作成補助・統計解析・薬事申請に関する助言等が提供されたものです。
事例2は、がん治療用ウイルスG47Δです。これはまだ承認されていませんが、2016年の2月に先駆け審査指定制度の対象品目に指定されております。これについてはデータマネジメント・統計解析等に係る支援が提供されたところです。
18ページです。ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミットにおける活動。厚生労働省では昨年からこのジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミットを開催しておりまして、本年度、第2回が開催されましたけれども、今回、初めて6つの臨床研究中核病院がブース出展いたしました。それによって各病院のいろいろなベンチャー支援の機能や実績等の紹介が行われたところです。
続きまして、「研究支援人材育成」に関する取組です。20ページは先ほどの資料と同じなので省略いたします。21ページは、生物統計家の育成支援事業です。これについては拠点となる大学院2か所に、いわゆる生物統計講座というものを設置して、また臨床研究中核病院等では実地研修の場所を提供するというような連携で、生物統計家の育成を行うという枠組みです。資金等につきましては製薬業界からの協力も受けて行っているところです。
続きまして、論点3の関係で、「治験が進みにくい分野の研究の促進」についての取組です。23ページです。医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議についてです。この取組はもともとは2004年に、いわゆる混合診療の問題に対して、その未承認薬の使用において確実な治験につなげることと、その保険診療との併用が可能な仕組みを作るということが当時の関係大臣下で合意がなされまして、その結果を受けてできた検討会の枠組みです。これにつきましては、海外で承認されているけれども日本では承認されていない、いわゆる未承認薬、また、途中から適応外薬も加わって、さらに直近では、海外でも承認されていないけれども一定の要件を満たすもの、医薬品に関して、要望を公募しまして、その中で重篤性や有用性、治療法の有無、このようなことを考慮した上で、医療上の必要性が高いと判断されたものについては、企業に開発要請、若しくは開発企業を募集するというスキームです。開発要請を受けた企業が開発する場合には、例えばその公知申請への考慮等も行われることになっております。
24ページです。小児医薬品等に係る開発推進のインセンティブの例としまして、再審査期間の延長、あるいは薬価基準における小児加算、こういったものがインセンティブとして適用されているところです。
25ページです。これはAMEDの研究班を使いまして、アカデミアと製薬企業が連携して、日本において優先的に開発すべき医薬品のリストを作成することで、小児医薬品の臨床試験が効率的に実施できる支援体制の構築を目指す事業です。これは小児科学会と成育医療センターに中心になっていただいて、いわゆるPriority Listというものを作って、その開発要望を受けた品目に関して、小児治験ネットワークによる支援を提供する体制を整えるということです。また、製薬業界に対しましても、欧米で小児の適応の開発計画というものがある場合には、その情報を提出していただいて、さらに、国内開発する場合には関係学会とAMEDのほうから必要な支援が提供されるというスキームが整えられております。
続きまして、論点4の、国民や患者の理解と参画についてです。27ページを御覧ください。臨床研究データベースシステムの管理事業ということで、臨床研究法の成立に伴い、臨床研究の概要や進捗状況、結果を登録するjRCTと呼ばれる公的データベースが発足しております。これにつきましては、臨床研究の開始前に臨床研究の概要等を研究者のほうから登録し、さらに進捗状況を登録し、また研究結果も登録し、これら全ては公開されるという仕組みです。このように、研究実施者の側から国民や患者の皆さんに情報を発信するシステムができたということです。
28ページ、一方、これは参考で、アメリカの民間の取組の事例ですけれども、米国では患者さん自らが情報を自分でエントリーして、候補治験と実施施設の調整・支援を行う民間サービスもあります。ですので、27ページのような現在の取組については、28ページのような取組に発展させることも必要なのだろうという認識を持っております。
29ページです。これは、PPI(Patient and Public Involvement)という取組です。具体的に言うと、研究者の方がいわゆる研究計画を作るときに、市民や患者さんの意見というものをお聞きして、必要な意見をプロトコルに反映させて、一緒に研究をデザインするという手法を取り入れた取組です。これに関して、今、AMEDのほうで調査研究が行われております。これについては、AMEDによりますと、2019年度の新規公募から公募要領にPPIの推進というものが掲載されること、また、研究開発提案書や成果報告書にPPIの取組に関する任意記載欄を設置するというように聞いております。
このPPIですが、30ページを御覧いただきますとリーフレットのQ&Aがございます。Q3のところを見ていただきますと、例えば患者さんの意見を聞いて、そこで得た情報を基に自分の研究の優先テーマというものを決める。あるいは例2、例3にありますように研究デザインにその意見を反映させて、患者さんの負担を減らすような方法のデザインをする。あるいは、例3にありますように説明同意文書についてもそういった意見を反映して必要な調整を行う。このようなことが取組としては挙げられております。
その左下のQ2にPPIのメリットとありますけれども、これについては研究開発を進める上で新たな視点と価値を見出すことができるという点、また患者さんの不安や疑問点を解消して臨床研究の理解を促進することができるというメリットがございます。また、これは患者さんや市民におきましても負担の少ない研究デザインができるということと、患者さんや市民にとって研究が身近になるという、相互にメリットがあるという取組です。
続きまして論点6の臨床研究法の円滑な施行について、32ページです。ここでは臨床研究法の運用に係る取組を御紹介します。まず1つ目は、臨床研究審査委員会審査能力向上促進事業です。臨床研究法によって、国が一定の要件を満たすことを認定した「認定臨床研究審査委員会」における審査が義務付けられました。そこで、審査の質というものを確保する上で、架空の研究計画書を作って複数の委員会で審査を行って、その結果を交換するという「模擬審査」を行うことによって、審査能力を向上する事業を進めています。
33ページです。中央IRB促進事業につきましては、認定臨床研究審査委員会若しくは各施設の倫理審査委員会の意見交換の場を提供し、IRBについての手続の標準化あるいは統一化といったものを目指して、更には審査の視点の共通化というものを目指して取組を進めている事業です。
論点7「その他」に関係する部分です。35ページを御覧ください。リアルワールドデータに関する取組ということで、疾患登録システムを活用した革新的な医薬品等の開発環境を整備する、そして診療で得られるリアルワールドデータを収集・解析する体制・システムを整備するということを今進めております。具体的には36ページのロードマップにあるような疾患登録システムの構築であるとか、システムの活用研究、あるいはそのためのガイドラインの策定、診療情報標準化や運用体制の構築、こういった事業を順次進めているところです。
これにつきましては37ページ、38ページに、最近、アメリカのFDAから公表されましたいわゆるフレームワーク、リアルワールドエビデンスを新薬や既存薬の効能追加の承認等に活用できるかを評価・検討する際のFDAの考え方が実は示されております。例えば38ページを見ていただきますと、リアルワールドデータが使用に合致しているか、また、リアルワールルドエビデンスを生み出す試験デザインが制度上の疑問に答えるための十分な科学的根拠を提供できるものか、試験が制度上の要件を満たしているか、こういった観点からの考察が提示されているところです。長くなりましたが資料3については以上です。
続きまして、資料4「臨床研究・治験の推進に係る基本的な考え方」を御覧ください。これはイメージですが、前回提示しました論点案に対して、頂いた御意見や現在行っている取組を踏まえまして、それを再整理したものです。
まずⅠとして【「新薬・新医療機器等の開発」と「治療の最適化のための研究」のバランス】です。いわゆる革新的な医薬品、医療機器の研究開発の推進も必要だが、質の高い医療の提供には診療ガイドラインの改善につなげるような研究、治療の最適化に係る臨床研究も重要であって、その両者をバランス良く進めることが重要ではないかということです。
Ⅱ番目は【人的・財政的リソースの限界を踏まえた対応】です。これは予算やリソースには限界があるので、我が国全体で必要とされる臨床研究・治験数も意識しながら、個々の研究開発の効率性を高める必要性があり、そのためには複数機関をネットワーク化して、症例集積を効率化する取組等の促進が必要ではないかということです。
Ⅲ番目に【リアルワールドデータの利活用促進】です。特に、高い資源投入が要求される開発後期の臨床試験規模の適正化等を図るため、薬事分野をはじめとして、リアルワールドデータの利活用の促進が重要ではないか。
Ⅳ番目として【小児疾病・難病等の研究開発が進みにくい疾病領域の取組】です。これについては、必要とされる研究開発が既存の取組ではなかなか進まない領域について、その領域の臨床研究や治験に関しては、国として疾病療域を特定した取組が必要ではないかということです。
Ⅴ番目として、国民や患者さんの臨床研究・治験に関する理解や参画を促す取組が必要であるということです。
これが全てではないとは思いますけれども、今日、御議論いただきまして、もし一定の御了解をいただけるのであれば次回以降、このイメージに沿って中間的な取りまとめの作業に入っていきたいと考えております。長くなりましたが説明は以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。前回、提示いただきました論点に関して、いろいろ御意見を頂いたものをもう一度まとめ直したこと、それから今まで日本医師会治験促進センター、並びに行政のほうで取っていただいてきているいろいろな施策の取りまとめをしていただいたところかと思います。
しばらく、これに基づいて、いろいろ御意見を頂きたいと思います。資料4の「基本的考え方」のⅠからⅤのどの点に関してということをまず言っていただいて、それに関する意見ということでお示しいただければ理解しやすいかと思いますので、御協力をよろしくお願いしたいと思います。
○花井委員 まずⅠからⅤのどこかですが、臨床研究中核についてですけれども、先ほど藤原委員から意見もあったと思うのですが、やはり小児、具体的には成育のような、つまり特化した機関の機能というのは重要で、臨中の中で何らかのサブグループを作るか何か分かりませんが、得意分野が狭いところについても何らかの対策が必要ではないか。それを臨中の要件でやるのかどうかは今後の議論だと思いますが、そういうことが必要だろうと。
人員につきましても、これも藤原委員から意見があったことと関連するのですが、実際問題、そういうポストと待遇というものを確保できない理由が、かつて国立時代は強制的にできなかったのですが、独法化すればある程度自由なはずなのにそういうポストがないという実情は、先ほど人事院というお話もありましたけれども、何らかの臨床研究中核の中でそのポストを、私どももいろいろな医療機関・病院でやると診療報酬が発生しないような職務は全部単なる事務員みたいな体系で、場所によって違うのですが、大学もかなり古い人事体系をそのまま直さずにおられる。これはやはり臨中が率先してポスト案というものを作っていただかないとなかなか難しいかと思いました。
法ができて、いわゆる特定臨床研究を偏重しているという意見なのですが、基本的な法の立て付けとしては本来は全部、法で規制すべきなのだけれども、規制しすぎたら大変だから一番リスクの高いところからしましょうという趣旨なので、別に特定だけがというわけではないのだけれども、実は臨中の評価がやはり特定でやっているというところがあり、問題は特定臨床研究以外の質の高いresearch questionを拾うという方策が必要なのです。
一番大切なのはresearch questionの質なのです。ところが、そこまで広げてしまうと、今度はとんでも研究を山ほどやることになるのを懸念すると思うので、やはり特定臨床研究以外の質の高いリサーチについて拾っていく何か評価がないと、これは臨中の評価でもそうですし、今後の臨床研究を進める上でも先ほどから意見が出ているとおりそうなので、この制度的立て付けを何とかしてほしいというのがありました。
それから行政が紹介した患者のアクセス、いわゆる患者側からアクセスするというのは30年近く前、既に患者から治験アクセスするというのはアメリカで当時は紙ベースでやっているのを見て、オーファンドラッグ法ができる前ですよね。オーファンドラッグ法ができる前になぜそれを日本でやらないのかということを議論したことがあって、事実上、アメリカでは結構患者がデータを探ってということは紙ベースで実はもう30年近く前からやっている話で、これがやっと今デジタルベースになって、よりやりやすくなっている。これは当然かなと思います。
その後のものは、民間ベースで患者が登録するとそこにというのがあった。これは多分、日本では民間でやるのは厳しいかなと思うのですが、何か公的なスキームであれば患者が登録してというのもあっていいかなと思いました。
リアルワールドデータなのですが、1つはマッピングの問題というか、どういう項目という話があって、最終的に医薬品開発に結び付くのであれば、ある種、薬事にマストなマッピングは必要なのだけれども、一方で、各疾病領域になると、それぞれの専門領域の先生、もっと言えば患者グループ、こういった人たちと適切なマッピングをしていく必要があると思います。この辺のスキームをある程度標準化といっても難しい部分はありますが、最終的に治験や医師主導治験ということを考えるのであれば、やはり薬事のほうを横目で見ておかないと、その段階でボタンを掛け違うと後が使えないレジストリになってしまう可能性が高い。そこも何か、どこ主導でやるかというのはいつも問題になるのですが、やはりある程度目くばせして、公的な所でガイドを作らないと、多分、後から直すのは大変なのでということで是非やっていただきたい。
特定の領域に関しては患者との連携というのは大事だと思うのですが、患者組織がマーケットによってやはり非常に違う。私ども血友病は患者が少ない割にマーケットボリュームが結構大きいので、製薬企業はお金を出してくれるのですが、そうではないグループは結局誰からも見放されていると。国際会議に行っても、いわゆる利益相反のスライドがゼロといって恨み節のような、そういう先生方が細々とやっていて大変で、患者さんも苦労している。患者さんはそういう状況の中、疾病自体の大変さもあるものだから、やはりこういうところでちゃんと意見を言うということができないわけで、ある程度何らかの支えがないと、マーケットとしての魅力がある患者さんばかりの医療が良くなるというのは、これはいわゆる日本の保険療養の立て付けからいってもおかしいので考えていただきたい。以上が意見です。すみません、どこに当たるかというのはちょっと特に言えないのですが、最後のところは下から2番目に当たると思いますし、ⅣとⅤということになると思います。やはり臨床研究のquestionの質、繰り返し言っているのですがquestionの質を是非やっていただきたい。
長くなって申し訳ないのですが、再生医療等法が先行しており、その再生医療等法の委員会の研修など見ていると、やはり今まではまず研究をしたいけれど、どうしたらいいかという立論なのです。そういう研修を続けていくと、そもそもなぜ研究するのか、それがquestion、研究に値するのかと。それにどれだけの患者さんとかの協力が必要なのかという、立論と理論が変わってくるのです。そうしたことがないと、本当の意味でのいいresearch questionというのは出てこないので、その辺も臨床研究全体に広がっていければと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。今、幾つか御指摘いただいた点はこれからも検討していかなければいけない点かと思います。
1つ、臨床研究中核病院に関しては、先ほど協議会からのアンケート結果の報告もありましたけれども、これは臨床研究中核病院の承認要件と継続要件、何を期待するかによって変わってくるところもあると思いますので、そこは別途検討が必要になってくるかもしれないかと思います。
人事のことは本当に大きな問題で、我々国立病院も独立行政法人になり、かつ、非公務員化したら何でもできるのかと思ったら、何もできないという現実的な問題もありますので、これはいろいろ知恵を絞って考えていかなければいけないと思います。どこか1つがモデル的なものを作れば可能になってくるとは思うのですが、なかなかまだその取っ掛かりがないというのが実情かと思います。
リアルワールドデータに関しましても、おっしゃるように標準スキーム、特にNCなり臨床研究中核病院がそれぞれのレジストリなどを今始めているわけですが、将来それをくっ付け合わせるときにうまくくっつくのかどうか。すなわち、ヘッダーの部分だけでも共通化しておかないとつながらないということになるので、そういうところは少し強制的にやっていただかないと、後でまた全部データを取り直しという破目になりかねません。この辺もこれから考えていかなければならないところかと思います。ありがとうございました。ほかにいらっしゃいますか。
○山口委員 まず資料4で言いますと5番目のところです。日本の中で研究への取組というのは決して活発に進められているとは言えない状況がある中で、今日も人材不足とか理解不足ということが言われております。前回も申し上げたかもしれませんが、臨床研究、あるいは治験のことについて、一般の方たちの中で一般常識になり得ていないという問題がまずあるのではないかと思っています。国民への啓発ということを考えたときに、羽鳥委員が先ほど御発表いただいて、結構、中高生向けの取組をされているということがございました。質問を1つ、どういうところにこういう中高生向けで展開されているのか。例えば日本医師会があって、各都道府県医師会や地区医師会というように系統立って組織があるわけですから、例えばこのように作ったものを地域の中で中高生に積極的にやっていくということをすれば、学生さんたちが研究について関心を持ち、それによって研究者になりたいと思う人もいれば、今後、研究を受ける立場としても理解が進むのではないかと思うわけです。どういうところでそういうことを展開されていて、もっと網羅的にしていくという今後の展望がおありなのかということがまず羽鳥委員への質問です。
もう1つは、資料3の6ページの「臨床研究中核病院の整備状況」の中で、倫理審査委員会の委員等を対象とした研修会の回数が出てくるのですが、今、一般の委員が必ず入らないといけなくなってきていて、私も幾つか委員として務めている大学がございます。この研修について、少し疑問に思うような内容の研修も結構ありまして、中身の検証ということが行われているのかどうか。というのも、一般の委員がどれだけきちんと参画していくのか、私は今、AMEDのPPIの委員会にも関わっているのですが、一般の委員の質を上げるということも研究をしっかりと見ていくという上では大事なことだと思います。回数のみならず、中身、内容の検証ということが行われているのかどうかの確認を事務局にさせていただきたいと思います。
最後に、これはⅤではなく、臨床研究中核病院のところですけれども、先ほど花井委員からもお話がありましたが、今日もお話を聞いていると、中核病院を作ったことで、中核病院に結構負担が掛かり過ぎていたり、大学が中核病院に寄り掛かっているような現状があるとすれば、特定の分野に秀でていれば中核病院に準じた役割をということですが、やはりそういったことをやっていかないと研究自体が後ろ向きになってしまう結果に陥るのではないかという危惧を抱いています。その辺、少し緩やかに考えることも大事なのかなと思います。最後は意見です。以上です。
○楠岡部会長 羽鳥委員、いかがですか。
○羽鳥委員 御質問、どうもありがとうございます。中高生、どういう人を対象にということでありますが、今のところはまだ単発的に行っているということがありますので、地域の大学あるいは医学部から行くということがあります。ただ、最近、日本医師会の横倉会長が中教審の委員になられたこともありますけれども、日本医師会の中には学校医部会という組織がありますので、ここを活用して進めていくことが今後考えられます。
もう1つ、国のほうで、例えばがんに関してはがん教育というものが手術高技術と同様、積極的に授業の中に取り込まれるようになっております。そういう中でも治験のことを説明する機会ができるかなと思いますので、山口委員の御指摘になったことは、日本医師会の中でも真面目に取り上げていきたいと思います。ありがとうございます。
○楠岡部会長 事務局、どうぞ。倫理審査委員会教育の件に関して。
○吉田治験推進室長 統一的に全ての研修を検証しているということではないのですが、通常、こういった研修会を開きますと、主催者のほうで必ず受講した方に対してアンケートを取るのが一般的になっています。アンケートを取って、こういうところの説明が足りなかった、あるいはこういうところが分かりやすかった・分かりにくかった、そういう意見を収集してその結果を次回以降の研修に反映させると。それはその研修で講師を務めた先生方にも伝達をして、次回以降の改善につなげてもらう。こういうことを行っておりますので、こういう形でそれぞれ自主的に必要な改善はされているということでございます。
また、例えば我々などが講師に行った場合には当然、そういったアンケートの結果を見ますので、それを踏まえて必要な改善などができると思います。そのような形で、ちょっと検証とは言えないのですが、統一的なやり方ではやっていないのですが、必ずそういったアンケートを通じて改善ができるような仕組みではあるというように理解しております。
○山口委員 確かにアンケートということで、受けた人の意見は大事だと思うのですが、本当に質が上がる研修になっているのかというのはちょっと別の視点ではないかなと思います。こういう研修を受けたら質が上がるなと実感できているかというと、そうでないような研修がどちらかというと多いような気がいたしますので、やはり客観的に内容を検証して、これは本当に役立っているのだろうか、委員の質が上がっているのだろうかということは、是非、それを見る仕組みも考えていただきたいと思います。
○楠岡部会長 中核病院に関わっている委員にお伺いしたいのですが、臨床研究を行う者、あるいは臨床研究に携わる者への研修は標準的なプログラムというものが今できてやっていると思いますが、倫理委員会の委員の方には、何かそういう標準的なものができているのでしょうか。
○清水委員 まだそういう体制には残念ながらなっていないように伺っています。医師・研究者向けのほうについてはどういうものをやったか記録を残して、それをシラバス化していくという、統一シラバスにすることを同時に行っていただいているので、倫理委員向けの講習についても同じように取り組んでいただいて、その中でバラバラにやっているというわけではなくて、こういうことをきちんと講習で取り上げて理解を深めていただいて、審査の質を上げていただくという方向に設計していただければと感じているところです。
○楠岡部会長 もしあれであれば、またそれを進めていただいて。ただ、倫理委員会の委員の研修を中核病院等がやると、自分たちに都合のいい委員を作ってしまうという批判も受けるので、その際には、是非、山口委員等がされているような活動からもコメントを頂ければ。一般の立場の人は、型にはめるというのが目的ではなくて、むしろ型にはまらない意見を頂きたいというのが本質だと思います。その辺も考慮した標準化というものを考えていただければと思います。よろしくお願いします。
○藤原部会長代理 山口委員の意見に関連してです。私はAMEDのPPI関連の委員会の委員長をやっているのでちょっとCOIはありますが、この領域は非常に大事です。例えば厚労省のいろいろな審議会に患者代表とかが入っていますけれども、別にその方々のトレーニングをしているわけではない。それから、私のところの研究倫理審査委員会の一般の方の教育もそうだし、患者参画しようと思って患者会からプロトコルについて意見をもらおうというときも、今は山口さんのようなある程度いろいろな経験をされてきた方がいらっしゃり、アドバイスを頂けますけれども、その方たちのスキルやノウハウが次の世代に引き継いて頂いているかというと余りできていないのです。
山口さんもやっていますが、次世代の患者さんのPPIに参画するような委員を育てる仕組みを是非用意していただかないと、審議会の委員もそうだし、その辺は必要だと思います。FDAもadvisory commiteeに出てくる委員は別に、素人と書いていますけれども全然素人ではなくて、その前に薬事法などの規制をしっかりトレーニングして、どういう発言をしたらいいのか、ニュートラルに話すにはどうしたらいいのかなどをしっかり教育してから委員に就任してもらっています。日本もこれから患者参画をたくさんするのであれば、そういうトレーニング・プログラムをしっかり国費を入れて作って、継続的に教育するのが私は必要かなと思います。これはⅤに関連して。
○山口委員 私もそれが大事と思ってCOMLの活動の中で医療関係会議の一般委員を養成する講座を開催しています。一つのNPOのやることというのは継続性や発展性ということを考えるとなかなか厳しいものがあって、やはりこれは公的な機関でやっていく必要があるのではないかと思っています。是非、その辺りは連携しながらできればなと思っております。
○花井委員 今の件で、重ねてなのですが、私どもも薬害被害者団体をやっていたら、薬事に対していろいろマニアックなことをうるさく言うじゃないですか。そういうことは他の国、ヨーロッパとかアメリカではそういう枠組みがないわけです。では、みんな、患者は黙っているかといったら、どこも患者会がやっているわけです。疾病の患者会は薬事とか、自分たちの関連する法律について詳しくて、ロビーイングやらアドボケートをやっているわけです。日本の患者会の体力が諸外国と比べレベルがかなり低い。
調べてみると、やはり公的ファンドを患者会に入れているという仕組みがヨーロッパの国では幾つかあって、そういった所は今言ったような患者の教育というところ、ただ出すのではなく、ある程度患者会にもクライテリアを設けてこういう要件をちゃんとやりなさいとかやっている。ここは場違いかもしれませんが、患者の質を支えるということではある種、患者会活動を支えるということでもあるので、先ほどの発言とかぶりますけれども、重ねてお願いしたいと思います。以上です。
○楠岡部会長 そうですね。国忠委員、そして清水委員。
○国忠委員 3つほどコメントがあります。資料3にまとめられている活性化に関する取組等について、私も最近、大変画期的な制度を作っていただいたことに感謝している次第です。一方で、いろいろな制度ができるのですけれども、それがバラバラに動いているような気がして、もう少し統一感を持って動かしてもらえたほうが実際に有効性が出てくるのではないかと思います。
少し例を挙げます。条件付き早期承認制度というのができて検証試験をやらなくても承認をもらえる。検証試験に代わる条件を解除するような試験を何らかやりなさいというところで、例えば特定臨床研究でレジストリみたいな試験をやって条件を取っ払うとか、
そういうような組合せが可能なのではないか。言ってみれば各制度、あるいは法制度を有機的に統合するようなことによって、今作られた取組がもっとうまく活きるのではないかと思うのが1点目です。
もう1点は小児医薬品に関わる開発推進に関するところなのですが、小児の前に未承認薬の公知申請というやり方があるのだという御説明を受けました。実際にまだ未承認状態であれば、今、小児科学会とかがリードしてやっていただいているAMEDの試験を使った仕組みで動かすしかないのですが、既に大人で承認をもらっている薬剤に関して、例えば小児用の用量の一変申請みたいな仕組みを使って、それも特定臨床研究でやって一変申請などということができないのでしょうか。そういうことができれば、もっとこれもうまく進むのではないかと思うのが2つ目です。
3つ目は半分質問です。リアルワールドデータを使って実際に薬を作っていく場合に、私たち製薬会社もどうやってそれを使っていったらいいかよく分からない。一つのアイディアとしては、かなり難治性の疾患に関して既にhistorical dataがあるような場合、それをcontrol armとしてシングルアームトライアルができるのか。そういうことが可能になれば、このリアルワールドデータを使った開発というものも進むのではないか。何か例がない状態でリアルワールドデータを使いましょう、あるいはその仕組みを検討していますということはもう3年以上言われていますが、何も出てこない中で、具体的に何か成果を、産官学協同で作っていかなくてはいけないのではないかと思っております。その中の1つとしてこういうことが考えられないかなというのが3点目です。
○伯野研究開発振興課長 ありがとうございます。恐らく、おっしゃっていただいているのは薬事当局と我々とがちゃんと連携を持って、一貫性を持って対応すべきではないかということではないかと思います。引き続き、しっかり連携してまいりたいと思いますし、できるだけいい仕組みにつなげていきたいと思っております。最後の、リアルワールドデータをどう使っていくか。例えばcontrol armなどに使ったりできないのかというお話ですが、現在、どういうようにすれば使える可能性があるのかをガイドラインでまとめられないかということを研究ベースでやっておりますので、またその辺の状況も踏まえながら、適宜、御報告させていただければと思っております。
○清水委員 幾つかありますが、まず全体に関わることで。これは主に資料4のⅡの項目にリンクするのかもしれません。先ほど出てきたような、中核病院が今ほとんどジェネラルな総合的な病院であることを踏まえたような規格になっているのですが、その中に、特定疾患領域の臨床研究中核病院のようなサブ・クライテリアを作っていただくというのを、是非検討していただいたらいいのではないかと。そうすると、全体的な要件の見直しも必要で、タスクがどんどん増えているのに、タスクと関係のない要件が厳しいままで残っていると、そちらにリソースが割けないという状況になってきているのも実態だと思いますので、その辺、お考えいただきたいのです。
それにも増して、最初から限界を踏まえた対応と話を決められてしまうと、では、今のリソースでやれということですかという話になるわけです。ここのところは本当に、例えば先ほどもちょっと議論がありましたが、profitableな領域というのは、企業の協力も得られて、そういう希少疾患であってもマーケットがきちんと確保できるような所には研究費が行くのだけれども、そうでない所には来ない。これを何とかしなければいけないと考えると、これは国民の皆さんの健康増進のためだと考えると、やはりそれは国費を使ってサポートするというメカニズムを取り込まなければいけないのだと思うのです。それのベースになるお金は広く、例えばメーカーさんなりの法人税を充てるとか、そういうことも考えなければいけないかもしれませんが、やはり直接的にプロフィットにダイレクトにリンクしないようなところ、特に支援人材のところなどは正にそうなのです。これがあったからすぐ何かプロフィットに結び付くというわけではないわけで、支援メカニズムというのはその土台で基本的なインフラなわけですから、それをきちっと維持できて、その上で、間接的ではありますが、将来のプロフィット及び国民の健康のために役立てるという発想に立っていただく。
ここは、最初から限界を踏まえた対応という議論ではなくて、限界は当然あるわけですが、国のお金だってリミットがあるわけですから、だけれども、そういうことではなくて、本当に必要なものについては、やはりそこに対する公的支援をもっと増やしていくべきではないかという議論もした上で、当面の限界がここなのだからこうしましょうという議論にしないと、初めから限界ありきの議論をするのは、私は非常にまずいと思います。要するに、縮小せざるを得ない状況を生んでしまうことになると思うのです。その上で、限られたリソースをどうするかというのは議論する価値はあると思うのです。ですから、この基本的な考え方の中で、最初から限界を踏まえてというところを括っていただくのは私は反対なので、そこは少し考えていただきたいと思います。
それから、Ⅲ番目のリアルワールドデータの所は、私も非常にこれからの大事なポイントだろうと思うのです。それには、今、ここでもたくさん議論が出てきたような、薬事承認の在り方であるとか、そのときに、基本的に、できるものであれば必ずRCTでプラセボコントロールなり比較薬を置いてデータを出して、それを前向きに集積しないといけないという、必ずしもPMDAさんだってそこまで厳格に言ってはいないと思うのです。ほとんどの場合そうなっているところの、例えばコントロールアームはリアルデータから取ってくるという手法も今後出てくるはずなのですが、そういったところを、どういうものをどういう形でリアルデータとして集積すれば、それがそういう研究用の対象に使ったり、承認のときのデータの一部に使ったりということができるのかというのもベースに踏まえた上で、どうしようかと議論させていただかないと、これを活用しましょうとだけ言っていても空論に終わってしまうのではないかと思うのです。前田先生も退出されてしまうのですが、ちょっとPMDAもそれをお考えいただければと思います。そのことを踏まえた上でこれを議論していくのが私は大事ではないかと。
公知申請とかそういう話もあると出ましたが、結局、米国などでリアルワールドデータが追加承認、適応拡大のデータとして使えるのではないかという議論は、実際、Compassionate Useで、リアルワールドで使われているからそのデータがあるわけで、日本では、原則的にこれは研究でやらない限りそのデータは出てこないわけです。ですから、これをやる方向に舵を切るのであれば、少なくとも特定臨床研究レベルでクオリティが高いデータを集めたものは承認データの一部にカウントできる、少なくとも公知承認のときの、今は本当に公知承認は、外国で論文が出るとか、外国で承認されているとかということがないとほとんど認められない現状なのですが、そうではなくて、我が国できちっとした研究がされて、論文で、しかもその論文の基になったデータのクオリティが一定程度担保されているものは使えるという制度設計のところも含めて、是非とも議論をさせていただきたいと思います。
それから人事面で、大学とか独法になったから自由にできるでしょうと言われても、実際には国から引き継いだ定員の枠がしっかり握られていて、それの削減自身も引き続き求められている。多分、どこの国立病院法人もそうだと思うのです。そういった状況であると、結局、なかなか自由にできない。それから、大学の自助努力でそういう定員を転換しようと思っても、俸給制すらないような職種に定員を転換するなどというのはやりようがないのです。ですから、先ほど藤原先生の議論にもありましたように、人事院などの議論も巻き込んでいただいて、そういう特定技能職のような俸給体系を是非とも採っていただきたい。
実際に京都大学では、特定職員という、教員でもないし事務官でもないような職種を作っているのです。それは特定で、年俸制で定員内で雇う以外、そこの職に就ける人はいないのです。そういった職を作った理由は、例えばITなどのシステムエンジニアなどを雇おうと思ったら、とても大学の持っている俸給表で雇えないのです。だけれどそういう人は必要で、それを全部丸投げで外注したら倍以上コストが掛かる。そういうことでそういう制度を作って、そのときには5年雇止め制の問題がまだこれほど深刻ではなかったのでスタートしているわけですが、そういった職種が研究職でないとなると、5年雇止めをせざるを得ない状況に今後なっていってしまうので、やはり、何らかの特定技能を持っている技術職の方を、大学とか国立病院、法人化された後のそういう組織でも雇用できるようなメカニズムを国ベースで働き掛けていただいて、モデルを作ればやれないことはないと思いますので、そこを是非、御検討いただければと思います。ここの部会だけの話ではないので、なかなか難しい話かと思いますが。
○楠岡部会長 ちょっと時間もなくなってきましたので、先へ進めたいと思います。
○新谷委員 すみません、ちょっと言いたいことがあったのでよろしいですか。
○楠岡部会長 では手短にお願いします。
○新谷委員 3点お話させていただこうと思います。リアルワールドデータに関して、基盤の整備をどんどん進めていただいているということで大変有り難いことではあるのですが、リアルワールドデータはかなりバイヤスが掛かったデータですので、それを安易に解析してしまうことは大変危険なことでもあるのです。ですので、やはり疫学的素養のある方、統計学の素養のある方をしっかりチームに入れてやっていく。ガイドラインを作成するときもそういう方を入れて、例えば、お薬を使ったら悪くなるという結果がリアルワールドデータで出てきます。それは悪くなるのではなく、もともと悪い人に使われているからということなのですが、その辺の知識がある方をどんどん巻き込んでいただく。あと、日本にはそういう人材は限られていますので、引き続き、人材育成にも力を入れていただくということと、現場の医師に対して、やはりそういう教育をどんどん広めていただきたいと考えております。
それに伴い、生物統計家人材育成なのですが、東大と京大でかなり頑張っていただいて順調に進んでいるようなのですが、あと3年で30人、30人と60人出ると。果たしてそれで足りるのだろうかという議論もしていただきたいと思います。例えばアメリカの場合は、生物統計の博士号を年間120人前後出している。修士はその何倍も出しておりますが、それでも足りないという現状があります。ですので、日本全国オールジャパンで60人新しい人を作って終わりでいいのかという御議論と、あとは、2つの大学、オールジャパンでやるのであれば、既存の生物統計を持っている教室に対する支援も何らかの形で入れていただけないかと考えております。私ども、教室で、例えば教授がいて助教がいてという所で、データセンターのこともやらなければいけない、教育もやらなければいけない。木村先生がおっしゃいましたように、やはり統計家がいても、どこに努力を割いていいのかという問題もあります。
そこで、私が今考えているのは、医学部での教育が1つポイントになるのではないかと。医学部では統計学を教えているのです。そこが今、ちょっと理論ベースな所で、実用化、実用的なところを教えられていないのではないか。ただ、これを言い始めますと、文科省の範囲になりますよということになるかもしれないのですが、そこを何とか文科省にも働き掛けていただいて、医学部の1年生、2年生、3年生頃は、かなり時間もありますし頭も柔らかいので、統計学をきちっと面白く教えたら、打てば響く学年でもあるかと思います。ですので、限られた資材でというところで、何とか工夫をしてやっていけるところを考えていただきたいと思います。
あと最後すみません、Clinical Trials.govで、これはアメリカにもう1つ同じようなPatientsLikeMeという商業用のデータベースがあります。それは、患者さんがデータを入れると、自分と同じような疾患を持った患者さんのデータがもらえるということで、ある程度インセンティブもあって、患者さんが直接データを入れるわけなのです。そういうのをリサーチャーに提供するというものと、ただ、商業用のデータベースは限界がありまして、そのデータは売られているということで、NIHは独自に持っています。リサーチマッチというのを持っています。これは今、160大学又は病院、54の財団又は学会で取り入れられているシステムです。これは、患者さんと研究者をつなぐ、研究者と研究者をつなぐというテーマになっています。患者さんは組入れ除外基準をしっかりデータベース化して、それに合致する患者さんが見つかったら、各大学のコーディネーターが研究者と被験者に電話を掛けて、お互いコンタクトを取ってもいいかという感じで研究参加の促進をしている所もあります。今、NIHは実はそこをすごく推していまして、CTSAの第3期は、Recruitment Innovation Center(RIC)ということで、そこを大々的にこれから推進していこうとなっておりますので、是非、日本もそのような動きがあれば良いなと考えます。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それから、清水委員の指摘もありましたが、資料4のⅡ番は、ちょっと書き方を考えないと。要するに、限界があるのは公的資金であって、今後、いかに民間の資金を活用していくかということが重要です。今、拠点も自立化ということで、国から出される助成金がどんどん減っている中で、自立していただく方向に進んでいるので、国からはもうこれ以上お金は出ないけれども、どうやって活性化していくか。もちろん効率化も必要ですが、それがなくなったらもうなくなってしまうという話ではないと思いますので、Ⅱ番は書き方を考慮いただければと思います。
○渡部委員 それに関連して短くよろしいですか。
○楠岡部会長 はい。
○渡部委員 研究開発を支える人材育成にちょっと焦点が集まりすぎているという印象を受けています。先ほどの阪大の木村先生の御発表もありましたが、全体的な臨床研究リテラシーの不足、研究者のリテラシー不足もすごく大事な問題で、ここを解決すると、かなり無駄なリソースとかそういうのを削ぐことができるかと思いますので、ここに「研究者の質の向上」というのも、是非、入れていただきたいと思いました。実際、研修会等も回数はたくさんやっているのですが、jRCTに公開されているような特定臨床研究を実施している医師が、どれだけこういった研修を受けているのかとかそういったデータももしあれば、是非、今後出していただければと思いますので、よろしくお願いします。
○楠岡部会長 それでは、今の議論をまとめていただいて、また次回、御提示いただきたいと思います。
それでは次に、参考資料2につきまして御説明をお願いします。
○吉田治験推進室長 それでは、資料リスト09、参考資料2「最近の臨床研究・治験に関連する動き」というファイルを開けてください。3点ほど情報提供をいたします。まず、2ページ目です。平成31年1月18日現在の臨床研究法の施行状況について、jRCTでの公表状況、また、認定臨床研究審査委員会数の情報です。2枚めくり、もう1つは、「平成31年度予算における統合プロジェクトの概要」です。これは、主にはAMEDを通して行う厚労省、あるいは文科省、あるいは経産省が統合して行うプロジェクトの概要です。今日、御説明しました臨床研究中核病院を対象にしたいろいろな事業につきましては、3.の「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」、ここが大きく関わる部分です。資料の中身の説明は省略します。
しばらくめくっていただき、今の資料の右下に、18ページと書かれている所が最後のページになるのですが、その次のページからまた次の資料がございます。「国立高度専門医療研究センターの今後の在り方検討会報告書」という資料です。これについては、いわゆるナショナルセンターの在り方について検討が行われていて、その報告書が最近公表されております。これについては、NCの組織論だけではなくて、いわゆる臨床研究全体の在り方についても言及されていますので、参考までに添付しております。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ただいまの2点に関して、何か御質問ございますか。よろしいでしょうか。このナショナルセンターの今後の在り方検討会の報告は、社会保障審議会の医療部会でも御報告があったのですが、臨床研究中核病院、ナショナルセンター、それ以外の研究をかなり実施している医療機関とをいかに有機的に組み合わせるかということを考えてやっていく必要があるかと思います。その辺りは、またこの部会での検討事項にもなるかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
先ほど来、臨床研究中核病院さえ頑張ればいいという話ではないわけで、まずは、全体のインフラの一番の基盤が大きくなって、その上に司令塔のような形で中核病院が乗っかっていく。それから、ナショナルセンターもそれぞれの領域ごとの司令塔になり、それ以外の病院も総合力の中で協力していくという、そういうスキームになっていく可能性はあるかと思います。この辺りにつきましても、また今後の御議論を頂きたいと思っております。それでは、以上で予定された議題が全て終了しましたが、何か、まだあと2分ぐらいでしたら追加の発言ができるかと思いますが、よろしいですか。
○川上委員 先ほど、制度がばらばらでつながっていないとの例もあったので関連しまして、リアルワールドデータの利活用推進は私も重要だと思います。例えば、臨床研究中核病院と特定機能病院においては義務、その他の病院でも努力規定になっています未承認新規医薬品を使用する場合です。研究ではなく、診療目的として使うには、担当部門から評価委員会へ移して審査することや、病院としてもその使用状況を把握することが医療法上求められています。全国85の特定機能病院が同じような試薬を使った院内製剤や輸入薬を使うときに、それぞれが使用状況をデータとして把握するのだけれども統合されておらず、それをMID-NETを使って集められるかというと、未承認薬や輸入薬は医薬品コードがないのでデータ収集することができないかと思います。法令で義務付けている未承認新規医薬品の使用実態の把握が国内にこれだけあるのですから、それを集められるような仕組みを作ることも大事かと思いましてコメントさせていただきました。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかに御質問ございませんか。それでは、今後のことに関して、事務局からお願いします。
○伯野研究開発振興課長 本日は、長時間にわたり御議論を頂きましてありがとうございました。次回の開催につきましては、2月15日を予定しております。また、開催時間、場所等については、改めて御連絡を申し上げます。事務局からは以上です。ありがとうございました。
○楠岡部会長 ありがとうございました。今日、もし発言できなかったこと等ございましたら、事務局にメール等で寄せていただいて、また次回のテーマの参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。それでは、本日はこれで閉会といたします。お忙しい中、どうもありがとうございました。