第2回社会保障審議会年金部会 議事録

日時

令和5年3月28日(火)16:00~18:00

場所

東京都港区新橋1-12-9新橋プレイス
AP新橋 4F D+Eルーム

出席者

会場出席委員
オンライン出席委員

議題

(1)年金制度を取り巻く社会経済状況の変化について
(2)全世代型社会保障構築会議における議論について

議事

議事内容
○総務課長 定刻になりましたので、ただいまから第2回「年金部会」を開催いたします。
 皆様、本日は、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。
 まず、委員の異動につきまして御報告いたします。
 株式会社笑下村塾代表取締役社長のたかまつなな様に、新たに委員として御就任いただきました。
 一言御挨拶をお願いいたします。
○たかまつ委員 皆さん、ごきげんよう。たかまつななと申します。
 私はふだん、子供たちの社会参画を促す主権者教育を専門に活動しております。
 この会では、若い人の声とかを届けられたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○総務課長 次に、本日の委員の出欠状況についてお知らせいたします。
 深尾委員から御欠席の御連絡をいただいております。
 オンラインで御参加の方でございます。
 出口委員、権丈委員、駒村委員、武田委員、嵩委員、堀委員はオンラインでの御参加でございます。
 権丈委員、島村委員、玉木委員につきましては、少々遅れて御参加される旨の御連絡をいただいております。
 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立していることを御報告申し上げます。
 次に、議事に入る前に、資料の確認をいたします。
 厚生労働省では、審議会等のペーパーレス化を推進しておりまして、本日の部会においてもペーパーレスで実施いたします。
 なお、傍聴される方には、あらかじめ厚生労働省ホームページでお知らせいたしましたとおり、御自身のタブレット等の携帯端末を使用して、厚生労働省ホームページから資料をダウンロードして、御覧いただくこととしております。
 次に、資料の確認をいたします。
 資料は、右上に番号を付しております。
 資料1が「年金制度を取り巻く社会経済状況の変化」。
 資料2が「全世代型社会保障構築会議報告書(抜粋)」。
 参考資料として「全世代型社会保障構築会議報告書」をお配りしております。
 最後に、オンライン会議における発言方法について確認いたします。
 オンラインにて参加される委員におかれましては、会議中、御発言される際には「手を挙げる」ボタンをクリックして、部会長の指名を受けてからマイクのミュートを解除し、御発言をお願いいたします。
 御発言終了後は、再度マイクをミュートにするようお願いいたします。
 なお、本日の会議は、動画配信システムにてライブ配信をしております。
 以上でございます。
 それでは、以降の進行につきましては、菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、こんにちは。
 期末の大変お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 これから第2回の部会を始めさせていただきます。
 カメラの方は、ここで御退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○菊池部会長 それでは、早速でございますが、議事に入らせていただきます。
 本日、久しぶりの第2回でございますが「年金制度を取り巻く社会経済状況の変化について」。
 「全世代型社会保障構築会議における議論について」。
 以上2点を議題としております。
 まず、2つの議題について、まとめて事務局から御説明いただき、その後、質疑応答、フリートークという流れで進めさせていただければと思います。
 それでは、議題1、議題2につきまして、まとめて事務局から御説明をお願いいたします。
○年金課長 年金課長の若林でございます。
 私からは、資料1と資料2を御説明します。
 まず、資料1です。
 本日は、2回目ということで、特定の議論のテーマを設定しておりません。
 全体に関わる議論をお願いするということで、その参考となるよう、年金制度を取り巻く状況の変化を時系列でまとめたものが資料1です。
 特に基礎年金制度ができた1985年あたりをスタートに見ていき、場合によっては、皆年金がスタートした1960年代から見たデータ集です。
 大きく5点で整理しております。
 まずは人口です。右下にページ番号がございます。
 3ページは「日本の人口の推移」で、日本の人口の推移、見通しの全体です。
 棒グラフの縦が総数ですが、2010年ぐらいから人口減少局面に入っております。
 黒い四角の折れ線が高齢化率ですが、1985年当時は約10%だったのが現在は28%、今後は38%程度まで上がり、2050年頃から高止まる見通しです。
 その下の特殊出生率は1.44。これは平成29年の推計ということで、現在、アップデート作業中と聞いております。
 4ページは、同じものを人口ピラミッドという形で見ております。
 緑と青の推移は、団塊世代、団塊ジュニアの世代の推移です。
 団塊ジュニアの世代が2065年に75歳以上に達するあたりまで高齢化率が上昇していきます。
 5ページは「合計特殊出生率の推移」で、基礎年金が始まった1985年から見ていますが、当時1.76だったものが、現在は1.30になっております。
 途中、団塊ジュニア世代が結婚・出産の年齢期だった頃は少し上昇しましたが、その後は下がっており、近年ではコロナの影響等も入っていると見ております。
 6ページは「平均寿命、平均余命の推移」で、皆年金が始まった1960年をスタートとしています。実線が平均寿命でこの時が男女で70歳と65歳です。実線は65歳時点での平均余命で、男性が11年、女性が14年。
 この時点で支給開始年齢が65歳の国民年金がスタートしましたが、その後は右肩上がりで上がっています。
 7ページは、健康寿命です。
 あまり遡るデータがないのですが、2001年から見て、平均寿命に応じて少しずつ上がっている状況です。
 こちらは、日常生活に制限のない期間の平均という定義でして、男女ともに仕事であったり、社会参加に関われる一つの目安と見ております。
 次に「家族の姿の変化」です。
 9ページを御覧ください。
 こちらは、左の1985年と右の2020年の世帯構成に大きな変化があるということで、特に減った構成を赤で囲っており、「夫婦と子供」あるいは「3世代世帯」です。
 一方でその他の世帯は増えていますが、特に単身世帯が大きく増えています。
 単身世帯の右側ですが、薄くピンクで囲っている高齢者の単身世帯も増えており、現役世代、高齢者世代ともに単身世帯が増えています。
 10ページは、同じものを今度は時系列の折れ線で見たもので、減っている世帯としては、夫婦と子供世帯と3世代世帯となり、増えているのは高齢者単身世帯です。
 点線より右側は推計値になっており、高齢者の単身世帯が伸びていくということです。
 11ページは、単身世帯の増加の要因の一つでもある「未婚割合の推移」です。
 実線の30歳前後での男女の未婚者の比率、点線の50歳前半での男女の未婚者の比率が共に上がっている状況です。
 12ページは、同じものを2時点間、左の1985年と右の2020年で比較したものです。
 未婚の割合が高くなっている点は同じ、緑の部分です。
 一方で、新しい数字として離別の部分がオレンジです。
 30歳時点で離別は、それほど変わっていませんが、50歳時点では、例えば男性でいうと、1985年の2.9%が6.0%となり、女性についても高くなっています。
 13ページ、今度は同じものですが、人口構成で見ています。
 青の「未婚」あるいは緑の「離別」が増えている点は同じです。
 14ページも、人口構成比で見ており、同じデータになっています。
 
 次は、働き方の観点からのデータになります。
 16ページは、正規雇用といわゆる非正規雇用の労働者の推移で、1984年をスタートに見ていますが、総数3936万人だったのが5600万人に大きく増えています。
 他方で、増えた要因で大きく占めているのは非正規雇用で、一番右側でパート、アルバイト等が増えています。
 ここ数年ですと、非正規雇用が減っていてマイナスとなる一方で、正規雇用はプラスになっています。
 次は、男女別、雇用形態別に見た数字になります。
 まず、女性が17ページですが、これもスタートは1985年で、大きく伸びているのは赤いところ「パート・アルバイト」です。それから、正規職員も近年増えています。
 18ページ、今度は男性になります。
 男性についても、1985年スタートですが、大部分は正規職員で、ここはあまり変わっておりませんが、赤の「パート・アルバイト」も増えています。
 この中には、高齢期の方々が「パート・アルバイト」で就労される例が増えている要素があると考えております。
 19ページはいわゆるM字カーブで、1981年の赤が、2021年では緑となり、Mの窪んでいるところがほぼなくなっている状況です。
 他方で、20ページになりますが、その中身について雇用形態別で見てみると、少し違う形が見えてきます。
 先ほどのM字カーブの就業率のうち、赤はそのままですが、青が正規雇用の比率です。
 したがって、赤と青の差の部分、乖離している部分は非正規雇用となり、これは年齢階級別になっているので、右のほうで年齢階級が上がっていくにつれて乖離幅が広がっています。この青のグラフの形からL字カーブと言われています。
 21ページは、非正規雇用の増加という点を違った見方で捉えております。
 これは1985年との比較ですが、一番左は共働き世帯数で大きく伸びています。
 ただ、その内容を見てみると、右側になりますが、奥様がフルタイムというところが微増、奥様がパートタイムというところが大きく伸びていて、共働き世帯数の増加の要因を占めているのは、パートタイム世帯であることがうかがえます。
 同じような話ですが、22ページは、共働き世帯数といわゆる専業主婦世帯数の推移を見ております。
 スタートは1985年の時点で、青線の男性雇用者と無業の妻から成る、いわゆる専業主婦世帯が多かったものが1990年代に逆転しています。
 1985年の時点では、専業主婦世帯のほうが多かったということで、こういうものを背景に第3号被保険者、あるいは基礎年金等が整備されましたが、その後状況が変化してきている点がうかがえます。
 23ページは、共働き世帯が増加している内訳について、共にフルタイムというところはそんなに伸びていない一方で、妻がパートという世帯は大きく伸びており、これが薄い青の線です。こういう状況が1985年時点と比べて起きています。
 次に、こういった社会状況の変化を踏まえたものが年金のデータにも現れているということで、被保険者等の状況になります。
 25ページになります。
 まず、被保険者数の推移で、真ん中が第2号被保険者、いわゆる厚生年金に加入されている方が増えています。
 それから、緑の折れ線グラフは全体に占める割合ですが、当初5割ちょっとだったのが、今は約7割に近くなっています。
 他方で、それに合わせるように、第3号被保険者、第1号被保険者の割合は減っています。
 途中、2000年代の折れ線グラフの変化をみると、2号被保険者の割合が低くなる一方で1号被保険者が高くなって接近しているところがございます。
 この一つの要因として、この時期、非正規雇用の方の数が増えており、これが2号被保険者、厚生年金に加入すれば、そのまま増加につながっていきますが、必ずしもそうならない場合には1号被保険者の増加として現れてくるということで、そういうものもあったのかなと見ております。
 26ページは、同じ被保険者数の推移で、今度は男女です。
 男性は、2号被保険者が大宗を占めており、女性については3号被保険者が一定数いらっしゃいます。
 ただ、ピークで1200万人だったのが、今は800万人と、3分の2程度まで減少しています。
 
27ページは受給者、年金を受給されている方の推移です。
 まず、厚生年金の受給者数です。
 高齢化・長寿化にともない老齢給付が伸びていますが、厚生年金については、特徴として遺族給付を受給されている方が一定数いらっしゃいます。
 これは、若いときに遺族になられる方と、高齢期の2つありますが、数として多いのは、夫婦ともに御高齢で、どちらかお亡くなりになって、配偶者の方が受給される例です。本人の老齢年金が高い場合には、本人の老齢年金が優先されますが、まだ遺族年金が主流です。
 28ページは受給総額で、先ほどの人数に単価を掛けると、総額になります。
 老齢給付は増えておりますが横ばいということで、人数ほどは増えていない点がございます。
 この点は、幾つか厚生年金特有の事情がうかがわれて、一つには、給付乗率が昭和60年改正と平成12年改正で下がっている点。それと60歳代前半の定額部分の支給開始年齢が2001~2013年にかけて引き上げられています。
 そういうものであったり、スライド率についてデフレが続くと毎年のスライドがそれほど高い率にならない等の要因で横ばいになっていると見ております。
 遺族給付が一定数を占めるという点は、先ほどと同じです。
 29ページ、今度は基礎年金(国民年金)の受給者数で、これも高齢化・長寿化等で老齢給付が増えています。
 他方で、こちらの特徴としては、障害給付が一定数を占めています。
 この約半分程度は、20歳前に障害を負われた方が20歳から受給する20歳前障害年金です。また、医療の進歩、長寿化等、いろいろと影響しています。
 同様に、30ページは受給総額で、こちらは人数に比例する形で老齢給付が増えています。
 先ほど申し上げた、厚生年金特有の事情はなく、国民年金、旧法から基礎年金に移ってきて給付総額が増えています。
 それから、障害給付が一定数を占める点も同じです。
 今回、遺族年金、障害年金についてもテーマになり得るということで、こういうことにも留意していきたいと思います。
 31ページ、話はまた現役世代に戻りますが、厚生年金に加入されている方の男女での標準報酬額の推移でして、推移自体は横ばいですが、赤の男性と、緑の女性の間で一定の乖離が見られます。
 これは生の報酬総額の月額換算ですので、リアルにもらっている数字になりますが、時給自体に男女差はないので、働き方が影響しているのだろうと見ております。
 例えば短時間なのか、フルタイムなのか、あるいは企業規模がどうなのか、職種はどうなのかという点が影響していると見ております。
 標準報酬は、厚生年金の年金額にそのまま反映されるベースになりますので、こういう状態が続くと、年金額についても差が出てくる点は留意しなくてはいけません。
 32ページ以降ですが、まず「第1号被保険者の就業状況」でして、第1号被保険者は、自営業、無職、学生の方が主に念頭にありますが、左側の緑の「被用者」が一番多いというのがございます。人数についても同じです。
 同様に、33ページの「第3号被保険者の就業状況」について、左のグラフですが、いわゆる専業主婦よりも、働いていらっしゃる方が半分ほどいらっしゃるということ。
 中でも、今の適用拡大のラインが20時間ですが、この20時間を超えている方が約4割いらっしゃるということです。
 それから、全く就業していないとお答えになった方は年々減ってきているのが一番右です。この辺りをどう見るかというところが時系列の変化でうかがえるところです。
 最後に、34ページ以降は、高齢期のデータでございます。
 35ページは、高齢期に限らない全体の数字になりますが、青が「15歳以上人口」になり、赤が「労働力人口」です。
 労働力人口から完全失業者を引くと、薄い緑の線「就業者数」が出てまいります。就業者ですので、自営業者の方も含むものです。
 この就業者数を15歳以上人口で割ると、就業率となります。
 以下、就業率ということで、36ページは「就業率の推移」を1985年から年代ごとで見ております。
 特に増加が大きいところに注目しており、一番上の3本、青、黄、薄い水色は30歳前後の女性の就業率で、大きく伸びている数字です。
 4番目に伸びている緑の数字は、60歳代前半の男性、女性。
 その次の薄い黄色、50.8と書いてあるのは、60歳代後半。一番下は70歳以上。
それぞれが上昇しつつ、特徴があるところです。
 37ページは、60歳代前半の就業率の推移で、1985年から見て、男女ともに上がっており、青が男性、赤が女性です。
 特に2005年あたりからぐっと伸びており、2005年に65歳までの雇用確保の措置が義務化されて段階的に導入されたことにつれる形で上がっています。
 38ページは65歳以上ということで、色で年代を分けており、青が65~69、赤が70~74、一番下は75以上で、65~69の方々ですと2010年ぐらいから上がっており、さらに、70歳以上になると2015年ぐらいから上がっています。先ほど2005年ぐらいから60歳代前半の方は上がっていますが、約5年遅れぐらいで各年代の就業率が上がっていることが見てとれると思っています。
 それから、75歳以上になると横ばいという点は、先ほどの健康寿命、あるいは個人差等が影響していると見ています。
 39ページは、雇用形態についてで男性になります。
 左側は60歳代前半で、こちらは正規職員、真ん中の緑の割合が増えています。
 65歳以上になると、右側ですが、総数が上がっていて、パート・アルバイトの方が増えています。それと一番下の「自営業・家族従業者」が一番大宗を占めています。
 40ページは、女性になります。
 女性についても、60歳代前半は先ほどの男性とは少し違い、多くを占めるのはパート・アルバイト、薄いピンクの方々です。
 65歳以上になると、総数が増えているところと、パート・アルバイトが増えている点は男性と同じです。
 以上、様々なデータを時系列で見てまいりましたが、最後に41ページですが、こういったものの背景として、高齢者雇用の促進であったり、あるいは仕事と家庭の両立支援であったり、様々な動きをまとめたものです。
 高齢者の雇用については、左側の60歳、65歳までの定年の義務化など時系列での対応が背景にありますし、右側の両立支援についても、最初は男女雇用機会均等法から始まり、育休制度の法制化や育児・介護休業法を改正して、支援策が拡充してきたというのがございます。
 
 次に、資料2になります。
 これは、昨年12月16日、全世代型社会保障構築会議、これは政府全体で置かれている会議になりますが、そちらで出された報告書になります。私どもの検討の参考に資すると考えて紹介させていただきます。
 1ページ目は、基本的考え方でして「目指すべき社会の将来方向」ということで、真ん中の箱ですが、少子化・人口減少の流れを変え、超高齢社会に備えるとあります。
 その下は基本理念が5点ほどあり、将来世代の安心を保障する、あるいは能力に応じて全世代が支え合うということが挙げられています。
 2ページも総論的な点で、基本的考え方の中ですが、地域軸、時間軸の視点が盛り込まれています。
 最初の文章の2行目辺りですが、2040年頃までを視野に入れつつ、足元の短期的課題とともに、当面の2025年、2030年を目指した中長期的な課題にしっかりと時間軸を持って取組を進めていくことが重要とあります。年金制度は100年の時間軸を持って考えていることもございますが、こういう指摘もいただいています。
 3ページ以降は、報告書の中で年金制度に関わる部分を私どもで抜粋した資料になります。
 大項目として「働き方に中立的な社会保障制度等の構築」とあり、その真ん中辺りに「勤労者皆保険の実現に向けた取組」ということで、勤労者がその働き方や勤め先の企業規模・業種にかかわらず、ふさわしい社会保障を享受できるようにするとともに、雇用の在り方に対して中立的な社会保障制度としていく観点から、以下の課題への対応を進めるとあります。
 真ん中に、ひし形で7つほど囲われた項目があり、一番下には「次期年金制度改正に向けて検討・実施すべき項目」として幾つか挙げられており、まさにこれが年金部会でも取り上げていくテーマと重なると見ております。
 4ページ以降は、その具体的な内容でして、項目のみの紹介にとどめますが、最初の黒い四角では「短時間労働者への被用者保険の適用に関する企業規模要件の撤廃」とあります。
 それから、その下に「個人事業所の非適用業種の解消」とあり、さらには5人未満の個人事業所についての検討とございます。
 さらに、一番下に、週労働時間20時間未満についての適用拡大が挙げられています。
 一番下の段落ですが、副業等が増える中で、複数の事業所で勤務する方、マルチワーカーの方々が増えており、そういう場合の適用要件についての指摘です。
 5ページの最初は、フリーランス・ギグワーカーについてで、現在、この方々は、基本的に自営業者ということで、第1号被保険者に該当していますが、この方々への社会保険の適用をどう考えるかということです。
 ここに書いてあるのは、まず現行の労働者に該当する方々は、被用者保険が適用されることが明確化されており、確実に適用すべきだということです。
 一方で、そういった労働者性が認められない方々については、働く実態、あるいは諸外国の例も含めつつ検討ということでいただいております。
 その下は、デジタル技術を活用するという指摘、その下は、昨今指摘されている女性の就労、あるいは高齢者就労の制約となっているような社会保障制度、あるいは税制等について、中立的なものにするという指摘です。
 その観点からは、被用者保険の適用のメリットを分かりやすく説明する、一層強力に進めることが重要であるとされています。
 一番下は、その関係の環境整備、広報の充実ということで、繰り返しですが、正確な情報、あるいはメリットを分かりやすく説明するという指摘です。
 一番下の段落は、いわゆる就業調整の問題についてです。
 これについては、適用される短時間労働者の方が労働時間を延長する、あるいは正社員に近い働き方をすることで、企業活動を活性化するという好事例を積極的に集約して、しっかりと広報・啓発活動を展開すべきだということでいただいております。
 こういった指摘については、個別テーマの回において、適用拡大、あるいは勤労者皆保険を議論する際の参考になるものと考えております。
 駆け足になりましたが、私の説明は以上になります。
 
○菊池部会長 どうもありがとうございました。
 様々な資料について御説明いただきましたが、その中で、被保険者、受給者のデータをお示しいただいたり、あるいは全世代型社会保障構築会議の関連箇所を御紹介いただきましたが、それ以外も、広く年金制度を取り巻く諸状況ということで御説明いただいたかと思います。
 本日は、まだ2回目の開催でございますので、特定のテーマを設定するのではなく、委員のお考えや問題意識を広く伺わせていただく会とさせていただきたいと存じます。そのため、必ずしも事務局が発表なさった内容にとらわれずに、年金制度に対する問題意識や御意見などについて、この機会に御発言いただいて結構でございます。
 特定の議題を立てて議論する形になりましたら、挙手いただいて御発言をいただく形にしたいと思いますが、本日のところは、広く、様々な御意見を伺いたいということもございますので、第1回目もそうであったかと存じますが、よろしければ、こちらから名前を指名させていただきますので、何もなければパスしていただいても結構ですが、恐らくそういうことはないと思いますが、御発言をお願いできればと存じます。
 まず、対面で、会場で御参加の皆様からいただきまして、その後に、オンライン参加の皆様から御意見を賜りたいと考えてございます。
 ということで、五十音順で恐縮ではございますが、小野委員からお願いしてもよろしいでしょうか。
○小野委員 ありがとうございます。
 部会長から御指摘がありましたが、今日は、今後の議論のためのいわゆる論点出しが趣旨ではないかと私は理解しておりまして、その観点から意見を申し上げたいと思います。
 資料1の32ページですが、まず、1号被保険者の中に被用者が多いという状況は、被用者には被用者にふさわしい制度を適用するという原則からして、相当に乖離した状態になっているのではないかと思っております。そういう意味で、被用者保険の適用拡大の徹底が喫緊の課題だと認識しております。
 日本は、国民皆年金といいますが、殊被用者に関する限り、被用者保険の適用の状況は、所得比例型の制度を持つ諸外国の例から見ても、必ずしも胸を張っていられるような状況ではないのではないかと思っております。それが第1点でございます。
 次に、同じページで、自営業主に関してですが、自営業主と家族従業員は、2020年で大体670万人ぐらいいると統計では出ておりますが、被保険者が約半分となっております。これは、年齢構成によって、自営業主等の約半分が60歳以上で、公的年金に参加できていないということなのだろうと思います。この状況は、恐らく1961年とか1985年当時とは大分異なると思いますが、この点についても大きなテーマだと思っております。
 以上、私からは2点指摘させていただきます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、小林委員、お願いできますでしょうか。
○小林委員 日本商工会議所で社会保障専門委員会の委員を仰せつかっております、小林と申します。
 ふだんは、中小企業の社長として、製造業の経営をしております。
 今回から、初めて年金部会に参加させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まずは、資料の御説明をありがとうございました。
 資料1「年金制度を取り巻く社会経済状況の変化」の御説明によると、就業率や就業数等が増加して、人手不足改善に向けての流れができつつあるように見えるのですが、我々、中小・零細企業では、依然として人材確保、人材の定着に苦労しているのが実情でございます。
 本日は、中小企業の経営の現場で起こっている具体的な事例等を含めて、私から、今後の年金制度改革の議論に当たり、念頭に置くべきと考える点について、3点ほど述べさせていただこうと思っております。
 1点目は、高齢者の就業継続につながる年金制度の改革についてでございます。
 高年齢者雇用確保措置の義務は、御存じのように65歳であり、老齢基礎年金の受給開始年齢も65歳です。つまり、会社と従業員の双方にとって、65歳が一つの区切りと言えると思います。
 65歳になった従業員の選択は、経営者にとっても極めて重要な意味を持つと考えております。従業員は、65歳になった後、働き続けた場合の収入と、退職して年金生活へ移行した場合の収入を比較して、手取りの収入は年金生活のほうが多い場合、従業員は退職を選択する可能性が大いにあるからです。こういった従業員の考え方は自然だと思います。
 しかし、人材確保・定着に苦労している中小・零細企業の経営者は、働く体力、能力を有している方に、65歳以降もぜひ働いていただきたいのですが、実態として、元気で、働く意欲もあるのに、比較して収入が高くなる年金による生活のほうを選ぶ従業員が多数います。このことは、経営者にとって貴重な戦力の喪失を意味しています。
 年金制度が従業員の就業継続を後押しするものであれば、企業経営者にとっては大変ありがたい援軍となりますので、そのような視点での改革に向けた議論を、今後、していただけたらと思っております。
 2点目は、女性の就業促進につながる年金制度改革についてです。
 資料1の41ページのとおり、育児休業制度の整備をはじめ、働きながら育児に取り組む世帯を支援する制度が整いつつあります。
 弊社でも、子供が2歳になるまで育児休業を取得する社員もかなり増えてまいりました。
 しかしながら、そのうちの一部の女性社員が育児休業期間の終了後、子供を長時間預けられる保育所が見つからない等の理由により、短時間勤務を余儀なくされて、正社員から非正規社員への転換を希望するケースが多く見られます。
 また、短時間労働の非正規社員になったことで、年収の壁による就業調整を選択する方もいらっしゃいます。
 そのような事象により、会社側にしてみれば、さらに人手不足が発生するという問題が起きることになります。
 また、8時間勤務をベースとしている中小・零細企業の製造業などでは、これは例ですが、生産ラインに入っている従業員が1名でも、就業時間中に抜けると、代替要員を簡単に手配できませんので、生産に支障が生じる可能性がございます。女性社員が非正規社員へ転換するのを防ぐために、必要な人に、必要な形での保育所の整備などがなされることを求めたいと思います。
 これは、本部会の守備範囲ではないことは十分に承知しておりますが、問題提起として申し上げました。
 なお、年収の壁の解消をはじめ、女性の就労促進の観点に立った見直しについて、ぜひ本部会で議論していただきたいと思います。
 3点目は、資料2に記載されている被用者保険の適用拡大についてです。
 多様な働き方や女性の社会進出を踏まえ、将来の安心の確保の観点からも、被用者保険の適用拡大という方向性については理解できるものの、企業経営に与える影響にも配意することが必要と考えております。
 具体的には、適用拡大により、事業主の社会保険料負担が新たに発生すること、及び被用者保険への加入を求められた従業員が、被用者保険へ入らずに、第3号被保険者資格を維持するため、労働時間を減らし、結果として、人手不足を加速する懸念があることを忘れてはならないと思います。
 従業員規模要件を101名以上へ拡大した昨年10月を境に、従業員の働き方がどう変化したのか、調査を行う予定と伺っております。その結果に加えて、可能であれば、事業主や被雇用者の社会保険料負担や年金の受給見込額がどう変わったのかについても、データを整備していただき、それを基に丁寧な議論が行えればと思っております。
 事務局におかれましては、御検討いただきますよう、どうぞよろしくお願いします。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、是枝委員、お願いします。
○是枝委員 私からは、今後の検討課題の論点という形で、人口構造の変化、家族の姿の変化、働き方の変化、いわゆる年収の壁問題の4点について意見を申し上げさせていただきます。
 まず、人口構造の変化についてですが、今、政府として、異次元の少子化対策としての政策パッケージが検討されております。
 年金制度としましても、出生率の見通しを所与として、受け身のように制度を考えるだけではなく、より積極的に、制度改正によって、若い世代の出生希望をかなえることでどれだけ年金給付を充実させられるのかということも、もう少し考えてよいのではないかと思っております。その際、まずは、産前・産後の国民年金の保険料免除期間につき、現在の4か月からさらに延長する検討を行ってみてはと思っております。
 さらに、諸外国には、フランスのように、子供の人数に応じて年金受給額を増額させたり、ドイツのように、一定以下の年齢の子供を育てている間は、保険料を追加で払ったとみなすような制度設計を行っている国もございます。保険料の拠出だけではなく、子供を育てることも年金制度への貢献とみなして、給付に反映させるという考え方であり、検討に値するものと思います。
 いずれにしても、若い世代が希望するだけの子供を持てるようにするため、年金制度として、積極的にできる施策はないのかということを議論する必要があると思っております。
 2番目に、家族の姿の変化についてです。
 12~14ページの資料にありますとおり、高齢期を単身で迎える方が増加しており、その割合は今後も増加し続ける見通しでございます。
 年金制度としましては、単身世帯が特に不利な制度設計になっているわけではないのですが、生活費は世帯当たりでかかってくることが多いので、どうしても高齢期に1人分の年金で1人で生活するのは厳しくなってまいります。
 ただし、単身者に年金給付を上乗せすることは、公平性の観点や財政面からできそうにはありません。年金制度としましては、少しでも家族形成をしやすくなる制度設計を検討する必要があると思います。
 具体的には、18歳未満の子供がいる世帯で遺族年金が出ているケースにつき、再婚しても支給を継続できるようにすること。
 あるいは、現在の民法では結婚が認められていない同性のパートナーにつき、年金制度で配偶者として扱うことなども検討課題だと思っております。
 3点目に、働き方の変化についてです。
 21~23ページの資料を見ますと、女性の雇用は増えても、パートタイムばかりであるように見えますが、実際には、若い世代ほど人口が少なく、かつ、婚姻数も減少しております。
 既婚女性の雇用形態を年齢階級別に見ると、現在の20~30代では、正規雇用者の割合が大きく上昇しているところでございます。
 20ページの30代以上において女性の正規雇用比率が減少していく、いわゆるL字カーブについてですが、これはあくまで現時点の各年齢の正規雇用比率を切り取ったもので、今の20代がこれから30代、40代になった際にたどるルートとは大きく異なることが見込まれます。
 現在では、正規雇用の女性は、子供を産んでも、8割近くが就業継続しております。現在25~29歳の58.7%を占めている正規雇用者は、その比率をおおむね保ったまま30代、40代に突入していくことが見込まれますし、そうなるように労働市場を変えていかなければなりません。
 女性の働き方は、年齢よりむしろコーホート、つまり世代によって大きく異なっております。
 例えば今の20代、30代が40歳以上になったときにも、中高齢寡婦加算をなお残しておく必要があるのか。将来の年金制度の在り方を検討する際は、コーホート別の見通しに基づいた議論をすることが重要だと思っております。
 4点目に、いわゆる年収の壁問題についてです。
 資料2「全世代型社会保障構築会議報告書」にありますとおり、働き方に中立的な制度とするために、まずは被用者保険の適用拡大を進めることが重要だと思っております。
 一定の収入を超えると、働き損になるとして、就労調整の要因になっているとされる、いわゆる年収の壁の問題につきましては、必ずしも年金制度の問題ではなく、制度の誤解も多分に含まれております。
 被用者保険に加入するか否かは、雇われた時点の労働時間や月収によってあらかじめ決まり、年末や年度末に調整できるものではありません。被用者保険に加入して社会保険料を負担する分は、決して働き損ではなく、それに見合う給付を受けられるものであることを丁寧に国民に説明していく必要があります。
 一方で、被用者保険に加入せずに、年収が130万円を超えて、3号から1号に変わるケースについては、保険料が増えても給付が増えない、言わば本当の働き損に当たるケースになります。この点について、適用拡大によってそのような方を少なくすることはできますが、今後もずっと被用者の配偶者という身分をもって、収入が一定以下であれば、保険料を免除する仕組みを続けていくべきかは議論の余地があります。
 昨年12月に開催された男女共同参画会議の計画実行・監視専門調査会では、お茶の水女子大学の永瀬教授が、第3号被保険者のような保険料免除制度につき、被用者の配偶者を対象にする制度から、育児のためなどに低収入や無収入となっている者に対象を変えてはどうかと提案されており、検討に値するものだと思っております。育児や介護などの事情がなく、労働時間の制約を受けにくい方については、3号被保険者をなくすことで、年収の壁に直面せずに、自らの希望に応じて働く時間を伸ばし、収入を増やしていくことができるようになります。
 若い世代では、結婚を機に女性が退職することはかなり珍しくなってきつつあり、寿退社という言葉は死語になりつつあります。ある世代で区切って、それ以後の世代については、第3号被保険者について、育児や介護などの事情のある者に限るという改正を行う余地はあると思っております。
 一方で、シングルマザーなど、ケアを担い、労働時間の制約を現に受けている方につきましては、配偶者が厚生年金に加入しているか否かを問わず、保険料の支払いを免除する形で、一定の再分配の対象に加えることが適当ではないかと思っております。
 現在の制度では、世帯の中に厚生年金加入者がいる前提であれば、3号制度があっても、1人当たりの賃金が同じなら、どんな世帯でも保険料も、年金額も、所得代替率も同じということで、1人当たり賃金の水準に応じた所得再分配が行われております。
 ただし、世帯の中に厚生年金加入者がいればという前提が満たされないために、分配の輪の中に入っていない方がいます。
 今後、マクロ経済スライドの調整期間を一致する観点から、厚生年金と国民年金の間で財政の調整を行うことを検討するかと思います。その際には、改めて厚生年金と国民年金に共通で守るべき価値観や理念は一体何なのかということを再考する必要があるかと思っております。
 なるべく働き方に中立に、女性の自立の妨げにならない制度とするとともに、年金制度として、配偶者という身分を守るべきなのか、それとも、ケアを担う人を支えていくべきなのか、いま一度大きな枠組みで議論させていただきたいと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、佐保委員、お願いしてよろしいでしょうか。
○佐保委員 ありがとうございます。
 私からは、前回申し上げたことと重複する内容も含まれますが、大きく3点と、今ほどお話もありましたいわゆる収入の壁について、意見を申し上げたいと思っております。
 令和2年改正法では、附帯決議において、将来的な所得代替率の低下が見込まれる基礎年金の給付水準の引上げについて、速やかな検討を進めるとの内容が盛り込まれております。
 基礎年金の給付水準の低下は、防貧機能や所得再分配機能を低下させることとなり、第1号被保険者期間が長い人や低賃金の厚生年金保険加入者ほど深刻な影響を受けます。拠出期間の延長や基礎年金拠出金の仕組みの見直しなど、限られた選択肢に縛られることなく、さらなる国庫負担割合の引上げにより、財政基盤を抜本的に強化した上で、基礎年金をマクロ経済スライドの対象から外すなど、国民が安心、信頼できる公的年金制度を構築するため、広い視点で議論すべきと考えます。
 また、資料では、就業者数や世帯構成などの変化がデータとして示されていますが、現行の公的年金制度がそのような情勢変化に対応しているのか、多様化した働き方やライフスタイルに中立的な制度なのかという視点が重要と考えます。
 基礎年金の創設や第3号被保険者制度の導入から35年以上経過しておりますが、今後、年金部会において、現行制度の枠組みにとらわれることなく、公的年金制度の在り方について、様々な視点から検討すべきと考えます。その際は、背景や根拠となるデータを基に課題と論点を整理した上で、丁寧に議論を進めていただきたいと思います。
 なお、連合としては、将来的に目指すべき公的年金制度として、現行の1号、2号、3号の区分をなくし、全ての者が加入する所得比例年金制度の創設を掲げております。
 この実現のためには、自営業者等の所得捕捉が必要不可欠となりますが、これは、複数事業所で勤務する労働者の所得捕捉にも関連するものであります。大きな課題であると認識しておりますが、マイナンバーの活用なども含め、どうすれば全ての者の所得捕捉の仕組みを構築できるのか、構築するに当たり、ハードルとなるものは何かなどについて、今後の年金部会における議論テーマの一つとしていただきたいと思います。
 最後に、いわゆる収入の壁ですが、岸田首相の会見後の様々な報道によれば、時限措置として、パート労働者等の保険料負担を実質的に国が一部肩代わりする具体策が報じられております。これは、制度を複雑化させるとともに、いわゆる収入の壁の根本的な解決につながるとは言い難いものであります。
 また、「要件を満たさない中小企業等で働く人が年収130万円を超えた場合に、自ら国民年金、国民健康保険に加入する人は対象とならない」との報道がありますが、これは被用者であるにもかかわらず、社会保険が適用されない者にとって、さらなる不公平が生じかねません。
 さらに、短時間労働者の就業調整回避への効果は不透明であるとともに、労働時間を短くしても、同水準の手取り収入を確保できるため、新たな就業調整が生じ得る可能性があり、合理性に疑問を抱かざるを得ません。
 以上から、優先すべきは、全ての労働者への社会保険適用の実現であると考えます。
 なお、短時間労働で働く理由には、育児、介護などによる時間的制約も考えられることから、働き方改革を進め、全ての働く者が育児、介護等と仕事を両立できる環境を整備することも重要と考えます。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、島村委員、お願いします。
○島村委員 ありがとうございます。
 私からは、4点お話ししたいと思います。
 まず、未婚率や離婚率の上昇ということで、単身者が増えるというお話がありました。
 それに加えて、非正規の方が増加しているとすると、基礎年金の依存度がますます高くなるかと思います。
 そうすると、基礎年金の水準が大事になりますので、低水準のままでよいのかという問題意識がございます。
 基礎年金の水準を考える上で、よって立つべき哲学というか、指針のようなもの、基礎年金は何を保障するのかということを改めて整理した上で、年金生活者支援給付金も視野に入れながら、所得の再分配機能の強化について考えたいと思っております。
 基礎年金水準の低下を防ぎ、所得再分配機能の低下を防ぐためには、マクロ経済スライドの調整期間は一致する必要があるのではないかとも考えております。
 今の点にも関係しますが、掛け持ちで、マルチワーカーという形で御指摘があったところにも問題意識を持っておりまして、会社ごとに見ると、所定労働時間の要件などを満たさずに、厚生年金に加入できていない問題についても検討が必要かと思います。
 第二に、高齢期の就労が増える中で、就労によって保険料を納めているのに、勘定という形では厚生年金しか潤わず、国民年金のほうは潤わない仕組みがこのままでよいのかという点を問題意識として持っております。
 被保険者期間の45年化は、この問題に関連する一つの案かと思いますが、端的に、基礎年金拠出金の算定方法自体を見直す必要があるのではないかと考えております。
 第三に、遺族年金については、原則として終身で支給され、女性の高齢期を支える重要な機能を果たしているかと思いますが、遺族年金の本来の趣旨は何なのか、高齢期を支える給付とは、本来、老齢年金なのではないかという問題意識がございます。
 遺族厚生年金については、男女ともに配偶者の死亡直後の生活の激減に対して、生活を保障するための給付として整理して、有期の形に特化するのも一案ではないかと思っています。
 他方で、現役時代の就労の少なさとか低賃金などを理由に、低い老齢年金しか得られない、主に女性が抱えることの多い問題については、離婚時年金分割の仕組みなどを参考に、亡き配偶者が納めていた年金記録を死亡時年金分割などの形でもう一方の配偶者に分割して、老齢年金の水準を高めるとかという形で、高齢期の所得保障は老齢年金が担うという形で整序するのもありではないかと考えております。
 最後に、企業年金やiDeCoなどの私的年金については、企業年金・個人年金部会の所掌範囲かとは思いますが、公的年金と私的年金は、どういった役割分担の下、どのような連携を果たすべきなのか、高齢期の所得保障の全体像をどう描くのかに関しては、年金部会のほうでも議論する必要があるのではないかと思っております。
 長くなりまして申し訳ございません。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 最後の御指摘については、年金部会は、以前は、企業年金等についても一緒に議論していた。
 それが分かれて、議論が別々になってしまったという問題もあるかなと思ってお聞きしておりまして、分かれた当初は、情報交換しましょうということでやっていましたが、事務局の担当者が替わり、委員も替わる中で、今はほとんど行き来がない状況なので、今の島村委員の御指摘は、一体として考えていく視点をどうやって持っていくかと。そこは事務局にも、今後に向けて、課題としてお考えいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 すみません。途中で一言入れてしまいました。
 それでは、お待たせしました。たかまつ委員、お願いいたします。
○たかまつ委員 よろしくお願いします。
 今回から入りました、たかまつです。
 私は、もちろん年金の専門家ではないですし、私のふだんの専門は、主権者教育といいまして、若い人に政治参加を促す活動をしておりまして、これまで株式会社 笑下村塾では、全国で7万人以上の子供たちと対話をしてきました。
 その中で、若者世代が感じている年金に対することについて、3点ほどお話しできればと思っております。
 まず一つは、持続可能な年金制度にしていくことの重要性です。
 年金を持続可能なものにするために、私自身は、今余裕がある人の分はカットして、将来世代に回すことが重要だと考えています。
 もちろん、今困っていらっしゃる高齢者の方を充実させることは大事だと思うのですが、余裕がある人の分はカットすることも必要ではないかと思います。
 ただ、年金に限らず、総論として、将来のために今抑えることとか、今余裕がある方々に負担増をお願いすることは炎上しがちで、伝え方は非常に難しいところがあると思っております。
 2つ目は、年金不安です。
 年金に対する不安、将来に対する漠然とした不安がありまして、年金は本来、心理的な意味でも、社会的な生きる意味でも、セーフティーネットとして機能すべきものなのに対して、若者に対しては、年金が全くそういう形では機能していなくて、自分たちで貯金をしなくてはいけないのだ、そういうのは自己責任であるのだと思ってしまっているところが問題だと思っています。
 また、一部の若者には、年金は将来、もらえないものとか、破綻してしまうのではないかという思いもあります。このような不安を取り除くような広報が必要だと思っています。
 なので、若者自身も将来は自己責任だと思っていて、年金制度について知らなかったり、関心を持っていないことも大きな課題だと思います。
 例えば大学の授業で、学生がどういう働き方をして、将来幾らの年金をもらうのか、実際に試算してもらったら、認識が大分変わったという話を聞いたことがあります。今後、役所が広報する際も、具体的な数字で示すと、自分のライフステージが描きやすかったりするのも一つあるのではないかと思っております。
 また、先ほど範囲外だというお話もあったかもしれないのですが、困っている若者や知識がない若者ほど、将来に投資に回す余裕がなくて、iDeCoなどに手を回せなくて、そういうものに手をつけるのは怖いという漠然とした不安もあって、格差がより広がっていくことも問題だと思っています。
 年金について、特に中高でそのようなことを教わる機会もなく、大学でもそういうことを考えずに、企業に就職してから初めて考えるところで、知識不足とか、そういうところ。
 あとは、知識はあっても、お金に余裕がなくて、回せない方もいらっしゃるので、格差がどんどん広がってくるところです。
 3点目は、多様な働き方や生き方に対して、年金制度が充実しているかということについて議論したいと思っています。
 若者は、副業など多様な働き方をしていますが、それに対して対応できずにいることが大きな問題だと思っております。
 私自身も、小さな会社を経営しているのですが、副業で働く人とか、そういう人たちに対して、どのようにしていくかというところとか、ほかの会社の人と相談したりもするのですが、社保が難し過ぎて、業務委託という形になってしまったりすると。
 そうすると、なかなかそういう方々が守られなかったりするので、非正規の人が損をしないように見直したり、制度を簡素化していくことが必要だと思いますし、先ほど議論にもありましたが、LGBTQ+の方とか、そういう方のいろいろな生き方に対して支援していくこと。年金においては、制度設計を見ても、あまりにも古い家族観に縛られ過ぎているのではないかと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、永井委員、お願いします。
○永井委員 ありがとうございます。
 私は、労働組合の立場で2点申し上げたいと思っております。
 1つ目は、社会保険の適用拡大ですが、前回も申し上げましたとおり、雇用形態、勤務先の企業規模や業種などによって適用有無が変わることは不合理だと思っております。まずは、令和2年改正法の附帯決議を踏まえ、企業規模要件の速やかな撤廃、個人事業者に係る適用業種の見直しについて、この部会において速やかに方向性を共有し、その実現のための議論を進めるべきと考えております。
 その上で、第1号被保険者の保険料とのバランスを踏まえた収入要件の引下げ、雇用保険の加入要件なども踏まえた労働時間要件の引下げ、フリーランス等、曖昧な雇用で働く者への適用なども含め、全ての労働者への社会保険の完全適用に向けた前向きな議論を行うべきと考えております。
 2つ目は、適用拡大にも係りますが、制度の正しい理解の促進が急務だと申したいと思っております。
 岸田首相の会見も含め、いわゆる収入の壁に関する報道が目立つわけですが、社会保険の完全適用が実現すれば、壁は解消すると理解しております。
 私が所属する産業別労働組合のUAゼンセンは、流通・サービス業で働く組合員が多い組織でございますが、パートタイマーを多数雇用する現場では、確かに収入の壁による年末の労働時間調整が起こっており、それにより現場の人員不足も起こっております。
 しかしながら、所得税がかかる103万と、社会保険適用の賃金要件である月額8.8万円の12か月分の106万と言われる参考値が一緒くたにされ、現場で調整の原因になっているのではないかと思われます。これは、以前の適用拡大の際にも、現場で税と社会保険の壁による多少の混乱があったとも聞いております。
 また、パートタイマーの組合員への意識調査では、年収調整をしている方の中で賃金改善や一時金の支給を望むという割合が大きくなっていることも考えると、いわゆる収入の壁があるから働く時間を調整していると言えると思っております。
 社会保険の適用によって、将来の年金などの給付が充実することよりも、手取りが減る、つまり可処分所得の減少ばかりに焦点が当たっていることには違和感を覚えますが、いずれにせよ、制度の正しい理解は極めて重要と考えます。
 現在も、厚生労働省に特設サイトなどを開設され、省としても様々努力されていることは承知しておりますが、現場の労使双方がしっかりと制度を理解するための取組の強化をお願いしたいと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、原委員、お願いします。
○原委員 原でございます。
 私からも、大きな括りの部分と細かい部分が混ざってしまうかもしれませんが、今日の資料のご説明を聞いて、コメントさせていただきたいと思います。
 特に関心を持っていることというか、今後、議論したほうがいいのではないかということなのですが、大きな括りで言うと、現在の社会の姿、あるいは20代、30代といった若い世代が今後歩むであろう将来の姿に合っていないような制度があるものと思われます。今資料でお示しいただいたような社会経済の状況、家族の姿の変化、働き方の変化、それにプラスして、ライフスタイルの変化、労働環境の状況なども見据えていきながら、そういった社会の変化に合わせて見直しの検討を行う必要があるものについては、それがたとえ難しいものであっても、長い期間かかるかもしれないものであっても、検討は始めなければいけない時期なのではないかと考えております。
 また、これまで給付と負担という部分の中でいうと、割と大きなテーマが中心となっていたように思いますが、検討は幅広く、細かいテーマまで含めて行っておくのがよいのではないかと考えています。
 例えばですが、現在、社会保険の適用拡大が進められていまして、厚生年金保険に加入して働く人が今後ますます増えていくと思われます。
 厚生年金自体、周知活動はもちろん必要で、厚生年金の制度内容もまだよく知られていない部分があると思います。さらには、制度内容が昭和60年改正前のいわゆる旧法時代のままになっているものもあるのではないかと思われるところがあります。
 加入者が増えていく中で、創設当時の社会の姿に合ったものが、今もそのままの姿で残っているのではないかと思われますので、細かいところまで現在あるいは将来の姿に合ったものにしておく検討を始めていくのが必要だと思います。
 一つ例を挙げますと、細かい話になってしまうのですが、年金給付の種類などによって、ついたり、つかなかったりする加算関係です。
 年金にはいろいろな加算があるのですが、その中でも、例えば老齢厚生年金の中で、加入期間が20年以上などの要件を満たす人に支給される配偶者の加給年金といったものがありまして、昭和29年に世帯単位で、家族構成に応じて、配偶者等がいる場合に創設されているのですが、令和5年の現在、共働きも増加していますし、今後は夫婦ともに厚生年金に長く加入して働く世帯も増えていくものと思います。
 そもそも夫婦単位という部分がまず挙げられます。単身世帯が増えている中で、夫婦単位であり、かつ、夫婦の年齢差、恐らくは夫が年上、妻が年下といった当時の夫婦の姿のモデルなのかもしれませんが、そういった夫婦の年齢差によって支給の有無が決まったり、支給期間の長短が決まるという制度なのですが、そういったものが今の時代に合っているのかどうかは、検討したほうがいいのではないかと思います。
 ただ、老齢厚生年金の加給年金は、子の加算もあったり、老齢以外にもあったり、ほかの制度にもいろいろと影響を及ぼすものなので、そういったことはきちんと整理しながら検討を進めていったほうがいいと思います。
 もう一つ、加算であえて挙げさせていただくと、老齢厚生年金なのですが、適用拡大を進めていく上で、厚生年金の制度内容を今の社会の姿に合わせるよう、整備したほうがいいのではないかと思うのですが、今後、長く働く人も増えていくでしょうし、厚生年金にも長く加入する人が増えていくと思われます。これはほかの課題や要因にも絡んでくるものかもしれませんが、経過的加算についてもどうするのかというのは検討する必要があると思います。これについては、より広い視点で見たときにどうなっていくのか、どうしていくのか、関心があるところです。
 あとは、もう一つ、大きなテーマになりますが、これもどちらかというと厚生年金についてなのですが、遺族年金を挙げさせていただきたいと思います。
 これは今すぐというよりも、将来世代のところで、今の20代、30代といった世代を考えたときに、その世代の将来像に対して現制度が合っているかどうか、時間はかかるかもしれませんが、少しずつ検討していくことは必要かと思います。
 もちろん、遺族年金という全体の話ではなくて、例えば、現役期の遺族厚生年金の遺族の範囲といった細かい要件のところなどで、今の時代に合っているかどうかという部分があるかと思います。
 平成27年1月にまとめられた議論の整理の中で、これからの社会の姿として、男女ともに就労することが一般化していくことが想定されるとあって、続けて、そうした中で、遺族年金についても、社会の変化に合わせて制度を見直していくことが必要である、とありました。そういったことも考慮して、今後10年、20年後ぐらいの将来像を前提に検討していくことが大事なのではないかと思います。
 例えば例を挙げれば、男女の要件と言われますが、要件の違いなどがありますので、そういったものが今のままでよいのかというのがあります。
 これは、労働環境などそういったものが関係してくることでもあり重要になるかと思います。
 私も、20ページのL字カーブを見て思っていたのですが、これは現在のものなので、正規の雇用比率は今後上がっていくと私も思うのですが、そういったことも見ながら、労働環境が整い、男女ともに正規で働くようになっていくといった環境が整っていくことが前提にはなることだと思います。そうであれば、就労インセンティブとか、公平性の観点といったものなどを考慮して、現在から見えてくる将来の姿に合った制度を検討していくことはしていったほうがいいかと思います。
 遺族年金については、このほかにも課題が多岐にわたり、どれも難しいテーマであるため、時間をかけて、基本的な考え方の整理から行っていくのがよいのではないかと思っています。
 いずれにしても、令和元年12月27日の年金部会における議論の整理の最後にも、将来世代のための改革の議論を続けていくことが重要である、とありましたが、まさにそのとおりと思いますし、現在、そして将来を考えたときに、社会経済状況の変化に合わせて見直しの検討を行う必要があるものについては、検討していかなければならないのではないかと考えています。そして、幅広く、細かいテーマまで含めて検討を行っていくのがよいのではないかと考えております。
 以上です。
 ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、平田委員、お願いいたします。
○平田委員 ありがとうございます。
 私は、もともと人事マネジメント情報誌の記者として、働く人と企業側の両方の生の声を聞き続けてきたという背景を持っています。
 その上で、今、企業の人事コンサルタントとして企業支援を行っていますが、その支援の過程で、労使両方がよくならないと、会社はよくならないねということを、ものすごく強く感じています。
 そんな背景から、この場では1点のみ、少し各論に入るかもしれませんが、被用者保険の適用拡大のことについてお話しします。その上で、年金部会がどうありたいかということを最後にお話しして、閉じたいと思います。
 まず、被用者保険の適用拡大ですが、企業規模要件は撤廃でいいのではないかと思っています。個人事業所における非適用業種についても同様です。一方、所定労働時間20時間未満への適用拡大については、より深い議論の必要があると思っています。
これは、企業にとって、被用者性、労働者性、つまり、うちが保険料を負担して働いてもらう対象だと思うかどうか。ということは、論点ではないかもしれませんが、被用者とはどういうことで、使用者責任とは何なのか? という深い議論が、必要なのではないかと個人的には思っています。
 適用拡大について、事業主側が負担を重く感じるのは、私自身、零細企業の代表を務めておりますので、非常によく分かります。
 一方で、苦しさは、企業規模だけによるものではなくて、それぞれのビジネスモデルだったり、今、需要の多い分野の仕事かどうか? などにもよります。したがって、企業規模が判断基準として適切なのか、ということはあると思います。もし企業側への配慮が必要であるならば、他の仕組みを入れたほうがよいと思っています。
 一方、働く個人においても同じことが言えるかと思います。
 自分の保険料支払いが苦しいと思う人は、既に今、適用拡大されている、100人超の企業に勤めている人も同様であると思います。もし支援が必要であるならば、別の仕組みを入れたほうがよいということです。
 実際、20時間以上30時間未満働きながら、3号被保険者でいたいという理由で就職先を選ぼうとしても、事実上、難しい現状があると思います。求人広告にはその記載がありませんし、企業のホームページにもそれがないので、選ぶことができないこともあると思います。
 同時に、職選びにおいて、3号被保険者であろうとするという判断基準で職を選ぶことは、長い目で見れば、当人のためにならないのではないか、社会のためにもならないのではないか、ということを、考えていくべきではないかと思います。
 当人のためにならないというのは、自分の人生は自分が選択していく自分の命であるにもかかわらず、社会保障の仕組みがこうだから、あるいは夫の会社の配偶者手当がもらえるからという理由で職業選択をしていくことが、本人にとっていいことか? ということです。最終的に、その人がそれを選んでいるかもしれませんが、社会の仕組みとして、損得が明確に生じるものがあれば、当然選ぶわけです。
 同時に、労働力不足について先ほど小林委員からもお話がありましたが、実際に当社の顧問先でも、この制度がゆえに20時間以上は働かない、30時間以上は働かないと明確に決めている人がいる。
 ところが実際には、31時間とか32時間働ける人も多い。だけれども、そこで切ってしまっている。このことも、本人としても、企業としてもよいのか? ということがあるかと思います。
 今、働く女性は、ものすごく多様化しています。いろいろな選択肢があるからこそ、非常に難しい時代でもあります。が、だからこそ配偶者手当があるからとか、配偶者控除があるからとか、3号だからということで選ぶのではなくて、自分で自分の人生を生きることにちゃんと向き合っていくことが、すごく大事なのではないかと思っています。今の仕組みは、そこから女性本人をある意味逃げさせてしまっている面もあるのではないかということです。
 そういう意味合いにおいて、この仕組みができた当時と今では、社会が大きく変わっている。仕組みの効果はあったと思いますが、それが薄くなって、逆効果のほうが大きくなっているのではないか。そうだとしたら、今後はどのように社会を導いていくのか? という議論、つまり、社会のありたい姿を考えることも、大切になってくるのではないかと思っています。
 働き方改革も、ありたい姿を誰かが示して、これだけ進んできた側面があると思います。年金もそうあっていいのではないかと思っております。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、百瀬委員、お願いいたします。
○百瀬委員 百瀬です。よろしくお願いします。
 3点挙げさせていただきます。
 1点目が、障害厚生年金についてです。
 資料1の27ページで、厚生年金保険の受給者数の推移を見ますと、3種類の給付のうち、障害給付の受給者が非常に少なく、かつ、受給者の増加も緩やかになっています。そのため、障害年金については、現在でも非常に多くの方が基礎年金のみの受給になっています。
 その理由として、初診日が20歳前の方が少なくないことが挙げられるわけですが、その一方で、厚生年金保険料を一定期間納めていた方でも、初診日が退職後になってしまったなどの理由で、障害厚生年金を受給できないケースもあります。厚生年金保険料を一定期間納めていた方については、保険事故の発生が被保険者期間中に存在しなくても、退職後からそれほど期間が経過していなければ、保険給付の対象にすることも検討の余地があると思います。
 このような延長保護は、海外でも類似の仕組みがあります。
 2点目は、基礎年金の拠出期間の45年化についてです。
 今回、60代前半の就業率が高まっていること、しかも、雇われて働く人の割合が高まっているというデータが紹介されました。
 この傾向が今後も続き、厚生年金の適用拡大がさらに進んでいくと、60代前半は、男女ともに厚生年金の被保険者が多くなることが予測されます。
 厚生年金の被保険者であれば、基礎年金の拠出期間を40年から45年に延長したとしても、保険料負担は増えません。一方、60代前半で働くことが難しい方や、自営業者の方は第1号被保険者になりますが、その場合は、保険料免除の仕組みがあります。ですので、基礎年金の拠出期間が45年になったとしても、全ての国民の保険料負担が増えるわけではありません。さらに、拠出期間の45年化は、障害基礎年金、遺族基礎年金の増額にもつながっていきます。これらの事実関係の情報発信も重要だと思っております。
 3点目が、遺族年金の改革についてです。
 次の改正の論点の一つに、遺族年金の改革があります。
 ただし、仮に次の改正で見直すとした場合でも、過去の大きな改正がそうであったように、生年月日等で経過措置をつけることになると思います。
 今回、女性の就労に関して幾つかデータを御紹介いただきましたが、多くが64歳未満を一くくりにしたものでした。経過措置を考える上でも、就労状況に関しては、出生コーホート別に考える必要があると思います。これは是枝委員もおっしゃっていたことですが、私からも述べさせていただきます。
 以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、オンライン参加の委員の皆様から順次お願いできればと思います。
 恐縮ですが、五十音順で指名させていただきます。
 まず、出口委員、お願いできますでしょうか。
○出口委員 経団連の社会保障委員会の出口でございます。
 今回、初めて参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは、2点コメントさせていただきたいと思います。
 1つ目は、今回、資料1で詳細に人口構造とか世帯構成、就業状況等の社会状況を中心に、変化を示すデータをお示しいただきました。本当にありがとうございました。
 私が考えているのは、これと併せて、経済情勢の変化も見る必要があるのではないかというのが1点目でコメントさせていただきたいことでございます。
 特に、こうした変化の背景は、日本経済のマクロの状況、特に失われた20年とか30年と言われておりますが、そういう時期と重なっているということ。最近まで物価あるいは賃金が上がっていない状態が続いたことも影響しているのではないかと思っております。年金財政は、賃金、物価とも関わっておりますので、これらの変化も踏まえながら、今後、どう見ていくのかというところは、非常に重要な視点ではないかと思っております。
 私ども経済界は、今年の春の労使交渉を通じて、ベアを含めた賃上げをかなり積極的に対応しております。来年以降も継続して進めていくことになりますし、構造的な賃金引上げを実現したいと考えております。
 好循環に向けて、まさに今、経済の大きな変化点に来ていると思っていますので、こうした経済情勢の変化も踏まえて、今後の議論を進めていく必要があるかなと感じました。これが1点目でございます。
 2点目は、いろいろな委員の先生方からお話がありましたが、資料の32ページとか33ページに、第1号被保険者、第3号被保険者ともに被用者の割合が増えている中で給付と負担の違いといった問題がございます。
 公的年金とか社会保障制度は、経済のいわゆる成長と分配の好循環の基盤でございますが、公平・公正な仕組みの下で、どのような働き方をしてもセーフティーネットが確保されて、誰もが安心して希望どおりに働ける、いわゆる働き方に中立ということがこれから極めて重要かと私は考えております。
 目指すべき方向性は、被用者保険のさらなる適用拡大だと思っております。企業規模、あるいは業種、賃金といった適用要件については、より多くの方が被用者保険に加入できる方向性に沿って、さらに見直しを進めていく必要があるのではないかと思います。
 こうした見直しの中で、先ほど先生方からもお話がありましたが、資料2の5ページの最後に広報の充実とありました。
 被用者保険に加入することで、今より厚い給付が受けられ、働く人々の安心感が一層高まるという前向きなメッセージをどうやって出していくのかというところは、非常に重要かと感じました。
 以上、私からは2点でございます。
 ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、権丈委員、お願いできますでしょうか。
○権丈委員 2点ほどです。
 2つとも構築会議の報告書関連ですので、資料2を準備していただければと思います。
 まず、資料2の2ページの1つ目の黒星に「『時間軸』の視点」とあります。
 これは、もともと去年3月の第2回構築会議で、次のような発言があったわけですが、「例えば遺族年金などは、現在受給している人たちに全く影響を与えることなく、将来のコーホートに最適な制度に向けて、20年ぐらいかければ移行を完成することができます。
 今回の構築会議では、コーホートにおける種々の変化を先読みして織り込んで、改革を時間軸の中で明確に位置づけて、これまで動かなかったものを今度こそ動かすようにしてもらえればと思っています。」
この発言が、オリジナルの時間軸の使い方です。時間軸をもって遺族年金を変えていく。
 今回の年金部会では、そうした意義のあることにしっかりと時間を費やして、遺族年金の改革を実現してもらいたいと思っています。
 2点目です。
 資料2の4ページの下から2段落目に、20時間未満の短時間労働者についても、被用者保険の適用除外となっている規定を見直し、適用拡大を図ることが書かれています。
 その下の行に「国民年金制度との整合性等を踏まえつつ」とあるわけですが、この整合性を踏まえると、20時間未満に関しては、厚生年金の事業主負担のみを課す形になるといいますか、そうならざるを得ません。
 実は、岸田総理が政調会長だったときにまとめた報告書にある勤労者皆保険、当時、彼らは勤労者皆社会保険と呼んでいたわけですが、勤労者皆保険は、20時間未満に関しては、事業主負担だけを課す制度の話でした。
 今、厚生年金の事業主負担のみで、給付は厚生年金の半分になる制度を厚生年金ハーフと呼んでおきたいと思います。
 厚生年金ハーフを20~30時間のパート労働者に当てはめて、彼らに本人負担を含めた厚生年金フルと、厚生年金ハーフを選択するという形にすれば、今騒動が起こっている、壁だと信じ切って、就業調整をしている人の問題はほぼ解決します。
 ちなみに、構築会議の報告書では、5ページの4つ目の黒星にあるように、就業調整に関しては、一層の適用拡大と被用者保険への加入の意義の広報の充実しか書いていません。
 しかし、みんなが壁と誤解して意識して、それに基づいて行動しているというのであれば、広報の充実と並行しながら、先ほど言った20~30時間のところに厚生年金ハーフを準備して、彼らに、社会保険料の本人負担分を払わないで、今の手取りを高める選択をしてもよいけれども、それは老後の貧困リスクを高める選択であることを学んでもらうことも必要になっているかと思っております。
 今から12年ほど前の2011年2~3月にかけて、運用3号という問題で世の中は大変盛り上がっていました。それがあまりにも不公平な制度であったということで、その制度の制定に関係した課長の更迭というトカゲの尻尾切りのような事件が起こりました。
 この国では、3号を優遇すると、大炎上します。そのことを分かっていない新しい人たちが永田町にも増えてきたのだろうと思って、今の様子を見ています。
 いわゆる壁と言われているものをなくすために、年金財政から補助金を出すことなど、年金局の人たちが進んで考えるわけがないのですが、報道を見れば、厚労省が前向きに動いているという話になっている。
 今日もそうした案が出てくるのではないかと、フロアの人たちは、大いに期待されているのではないかと思いますが、今言われている補助金の話は、3号は、基礎年金だけでなく、法律上は2号も3号も国民年金の保険料は免除されているわけですが、加えて厚生年金保険料の本人負担分を補助金という他の人のお金で埋めてもらって、厚生年金をフルで受け取ることができるようにするという3号への特別な優遇措置です。
 そういうことにみんなが気づいていったら、運用3号のときのように大炎上するだろうと思いますし、今度は課長ではなく、局長あたりが更迭されるのではないかと私一人で心配しております。年金局の方々は、くれぐれも気をつけながら対応していかないことには、この話はかなりやばいぞというのがあります。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 今、会場では、非常に大きな反響が沸いておりました。
 それでは、駒村委員、お願いいたします。
○駒村委員 ありがとうございます。
 4点ほどお話ししたいと思っております。
 一つは、年金制度は、目の前の問題に対応しながらも、先を予測しながら制度改革をしていく必要です。舵を切ってから、方向が変わるまで大変時間がかかるタンカーみたいなものの性格があるということで、ある程度先読みをしながら、給付の十分性と財政の持続可能性の担保をしていかなければいけないと思います。
 その上で、まず、給付の十分性に関わることなのですが、今日の資料にはございませんでしたが、第1号の中に占める免除、猶予の割合がかなり急激に上昇してきている、4割近くが該当しているようになってきていると思います。これは当然、将来、低年金受給者になる可能性が高いと思います。
 団塊ジュニア世代は、2040年ぐらいから退職に入っていきますが、非正規の期間が非常に長いのではないかと。これも低年金者になる可能性が高い。
 そういうのを考えますと、まず、先ほど島村さんがお話しされましたが、年金生活者支援給付金をどうするのかということは考えなければいけないし、それ以前に、厚生年金の適用拡大はなるべく急がなければいけない。
 ただ、その際に、2つめですが、中小・零細企業がその負担に耐えられるように、この人件費相当分をちゃんと価格転嫁できるように、中小企業政策、下請政策を含めて、経済産業政策と連携を進めていただきたい。これがあります。
 3つ目になりますが、寿命の伸長ということで、資料1の7ページ目には、今の平均寿命は、男性が81歳、女性が87歳と出ていますが、2065年になると、男性が85歳、女性が91歳、長寿命に至ると、女性は94歳ということで、女性の67%、男性の40%が90歳まで生きることになってきます。今の若い世代は、かなり人生が長くなる。
 もちろん、若い世代が将来のことを今から準備するのはなかなか難しいと思いますし、このようなダイナミックな寿命の伸長を人生の計画に組み込めるかということは、なかなか難しいかもしれません。だから、なおさら年金に関する知識を十分に若い世代にも提供しなければいけない。
 金融リテラシーと言われている言葉の中には、金融資産の選択だけではなくて、社会保障に関するリテラシーも当然組み込んで、政府の教育システムの中に入れていただきたいと思います。
 その上で、働く期間が65歳以降も長くなること、私的年金の充実も必要になること、自分の人生設計に合わせて、公的年金の受給タイミングを自ら選択できるように、そして選択したことによって、損得が発生しないように制度改正をしていく必要があるのではないかと思います。
 最後に、これは制度改革に関わる話ではないのですが、制度の改善という意味で考えておかなくてはいけないことが一つあると思います。
 65歳以上人口に占める75歳以上の割合は、今ちょうど半分、半分ぐらいの状態ですが、2030年になると、75歳以上人口比率が60%。2060年になると、高齢者に占める人口は、75歳の割合が65%と、75歳以降の方が増えてくる。
 同時に、単身者の人が増えてくることになります。
 これはどういうことになってくるかというと、もう一つ考慮することとして、人間が家計を管理するためには、ある程度広い意味での認知機能が必要です。
 軽度認知障害、認知症の確率を考えると、85歳を超えると、ほぼ80~100%どっちかになっていると言われています。
 この状態を考えると、単身高齢者、認知機能を経験する高齢者が増えるという時代になったときに、今の年金の支給間隔、2か月に一遍という間隔で、本当に家計管理ができるのでしょうかと考える必要があります。家計の管理を簡単にするように年金の支給間隔は1か月単位にするように、高齢者の認知機能の変化を踏まえた上で、この際、制度運用の改善も考えたほうがいいのではないかと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、武田委員、お願いします。
○武田委員 どうもありがとうございます。
 本日は、資料1で経済社会の状況変化を丁寧に御説明いただきまして、感謝申し上げます。
 基本的な考え方として、年金制度は、老後の生活を支える根幹のものであり、かつ、将来世代にわたって、いかに持続的な制度とするために、どのような改革が必要か議論していくこと。そして、日本の持続的な成長にも資すること。これらの観点から、議論をさせていただければと考えます。
 3点意見を申し上げます。
 1点目は、11ページでお示しいただいた未婚率の問題です。
未婚率が高まっていることは、認識しておりましたが、男性で7.8倍、女性で3.5倍と急激に増えており、これは大きな変化ではないかと考えます。
 あわせて、本日の資料には御提示はございませんでしたが、30~34歳の男性の非正規労働者の未婚率を見ますと、同じ年代の男性の正規の労働者の約2倍になります。
 結婚、あるいは子供を持つかどうかの選択自体は、個々人の価値観によるものですが、一方で、正規、非正規の格差に起因するもの、あるいは経済的な理由や将来への不安を背景に、未婚率に極端に差が出ているならば、それは是正すべきと考えます。
 少子化の進行は、年金制度の持続可能性に影響をもたらすことは言うまでもございません。したがって、非正規雇用の将来不安への対処の必要性については、改革の上で、十分に考慮する必要があるのではないかと考えます。
 2点目は、男女の賃金格差に関してです。
 先ほどM字カーブが近年和らいできたこと、またL字カーブの背景には、コーホート的な問題もあり、いずれ徐々に解決していくだろうという議論がございました。
 確かに、M字カーブが和らいできたこと、そしてL字カーブはコーホートも影響していることは、そのように認識しております。
 一方で、31ページの賃金の長期時系列のグラフを拝見いたしますと、まず驚くべきは、賃金が全体として、横ばいが続いてきたこと。これは、世界で見れば、大変異常な事態でございます。
 横ばいの中で、男女の賃金差も縮まっていないことも、このグラフが示しているとおりだと思います。
 先ほど出口委員からございましたとおり、この春、賃金は、各社ともに相当前向きに対応しているさなかであり、ここから好循環につながるかどうか、まさに分岐点にあると思いますので、今後に期待したいところでございますが、同時に、根強く残っている男女の役割や働き方に対する慣行・慣習も、併せて改善していく必要があると思います。
 したがって、将来を見据えた制度の議論としては、慣行・慣習によって悪影響を増幅させている制度があるのであれば、見直す方向で、議論を中長期的に進めていくべきと考えます。
 3点目は、就業調整に関してです。
 今申し上げたことと関係しますが、男女の様々な格差、あるいは働き方の差に影響を及ぼしている制度があるとするならば、時代の変化に合わせて見直す必要があると思います。
 平田委員がおっしゃったとおり、配偶者控除や第3号被保険者制度があるからという認識があるのも事実です。その点は制度への理解不足も含めて、是正していく必要があると思います。
 しかし、根本的に解決していこうと考えますと、広報だけではなく、まずは適用拡大を着実に進めていく必要があると思いますし、その先は、現時点で共働き世帯の比率がマジョリティーになっていること、働き方も多様になってきていることを踏まえて、制度の見直しを冷静に議論していく責任があるのではないかと考えます。
 以上です。
 ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、嵩委員、お願いします。
○嵩委員 嵩でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、資料の御説明をどうもありがとうございました。
 私からは、3点お話しさせていただきたいのですが、いずれも既にほかの委員の先生方が指摘された点と重なるところはあるのですが、順に述べさせていただきます。
 1点目は、今回御説明いただいた資料でも示されていましたが、女性の就労が変化し、非正規労働者が多いものの、M字カーブの底が上がってきているという変化に照らして、第3号被保険者制度の意義と課題を再検討し、社会の変化に合った見直しの方向性を示すべきではないかという点になります。
 第3号被保険者制度については、主に女性の年金権の保障のために導入され、その意義はとても大きいのですが、他方で、本当に不公平かどうかはさておき、不公平感の問題などが長らく指摘されてきておりました。
 第3号被保険者制度見直しの議論は、既に何度も行われてきましたが、一定の統一的な方向性を示すことはなかなか難しくて、現在は、短時間労働者の適用拡大を法で推進することで間接的に対応している状況かと思います。
 今回の資料でもありますように、第3号被保険者の就労が進展しておりますので、短時間労働者の適用拡大によって、一定程度の第3号の方は、今後、第2号に移行されるのではないかと思われますが、それでも第3号被保険者として残る方々は一定数おられると思われます。
 その中で、先ほど来御指摘があった年収の壁という現行の問題に取り組むことが重要でありますが、それとともに、第3号被保険者に残る方々がどういう事情で所得が低いのかということについて、これは是枝委員が先ほど御指摘されていましたが、例えば育児や介護で十分に就労できないといった事情を持っているのかなどを把握した上で、例えばそういった事情に即した制度に第3号被保険者制度を組み替えていくべきかなど、根本にまで踏み込んだ議論を行って、一定の見直しの方向性をこの部会で示していければと思っております。
 2点目は、基礎年金の強化なのですが、基礎年金を強化することと、他方で、社会保険制度の限界もあるかと思いますので、その限界に照らして、社会保険制度の役割を意識した議論というか、相対化した議論を行う必要があるのではないかという点になります。
 マクロ経済スライドにより、基礎年金の所得代替率が低下していくことが見込まれていますが、十分な厚生年金を持たない方も少なくないと思われますので、老後の生活を支える上で、基礎年金の意義は重要で、その意義を再定義して、基礎年金を強化することが今後ますます重要だと思います。
 ただ、他方で、基本的には、拠出が十分にできないと、給付も十分になされないというのが社会保険の本質的な特徴だと思いますが、その特徴に照らしますと、社会保険において機能させるべき所得再分配にもおのずと限界があるのだろうと思いますし、その限界を超えて再分配を機能させてしまうと、社会保険としての年金制度の本質を損ねるおそれもあるのかなとも考えております。
 公的年金の所得再分配やその機能の限界を見極めつつ、また、現実問題として、老後所得保障において、公的年金制度だけでは支えられない状況にあると思いますので、所得が低い方については、先ほど来御指摘がありましたように、年金生活者支援給付金制度との役割分担、あるいは所得中高層の方については、企業年金などとの役割分担を検討していくということで、基礎年金を中心に据えつつも、公的年金の役割を他の制度との関係で相対化して捉えて、公的年金制度の位置づけを再設定していく必要が、大きな議論としてはあるかと思っております。
 3点目ですが、遺族年金の見直しになります。
 先ほども御指摘がありましたが、まずは遺族厚生年金の受給要件において、男女差がありますので、その解消に取り組む必要があると考えています。
 これは、今回の資料にもありましたが、女性の就労が進展している状況とともに、男女ともに、特に配偶者が亡くなったときの生活のインパクトは、女性に限らず、男性もあると思われます。男性と女性でのニーズは、どんどん違いがなくなってきているのかなと思いますので、男女差を解消していくための検討が必要かと思っております。
 その中で、より根本的には、現在の社会状況に照らして、特に配偶者の死亡というリスクは、遺族年金はカバーしておりますが、配偶者の死亡というリスクがどういうものなのか、捉え直した上で、長い視点で遺族年金をもう一度見直す必要があると考えております。
 ありがとうございます。
 以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、堀委員、お願いします。
○堀委員 労働政策研究・研修機構の堀と申します。初めての参加になります。
 私からは、2点お願いしたく存じます。
 第一に、若者目線での年金の設計をお願いしたいと思います。
 若者にとって、自分が年金をもらう状況もはるかに先のことですし、年金の重要性を感じる機会はあまりないと思われます。
 しかし、年金制度の側から言えば、若者世代なしに年金制度は成り立ちませんし、若者世代もいずれ年齢を重ねることになります。
 今回、たかまつ委員に御参加いただいたのは、若者の声を反映させる意図があるものと予想しておりますが、若い世代に明確なメリットのある年金制度の設計を検討していただければと存じます。
 第2点目なのですが、就職氷河期世代の年金受取見込額の推計をしていただけないかと考えております。
 皆様も御存じのとおり、氷河期世代は、学校を離れて労働市場に入るときの景気の悪化に直撃されて、不安定なキャリアを送ってきた人の割合が高い世代です。
 近年は、人手不足を背景に、正社員化が進んできておりますが、後から正社員になっているため、正社員といっても収入が低かったり、上の世代に比べて、国民年金のみの期間が長い人が多いと考えられるかと思います。
 こうした不安定なキャリアは、年金額にも反映されやすいと推測しておりますが、団塊ジュニア世代も含まれ、人数が多いだけに、今後の年金政策を考える際に、基礎資料として必要ではないかと考える次第です。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 今の最後の点について、資料についての検討は、事務局、いかがでしょう。
○年金課長 御指摘は非常に重要だと思いますので、中で検討させていただきます。
○菊池部会長 よろしくお願いいたします。
 それでは、会場から、玉木部会長代理、お願いいたします。
○玉木部会長代理 本日は、厚労省関係の別の会議がございまして、到着が遅れましたことをおわび申し上げます。
 皆様の御意見を拝聴しまして、それぞれうなずくところばかりでございました。
 上部構造、下部構造という言葉がございますが、経済実態とか人口動態、家族の在り方といったものが下部構造であり、それと整合的な上部構造として、社会保障制度をつくることが望ましいということでございます。
 この下部構造は、どんどん変わっていくわけでございます。
 昭和60年当時の制度改正時の下部構造と、あのときにできた上部構造である制度は割と整合的だったかもしれないけれども、下部構造がどんどん変わってしまったので、適合していかねばならない。だから、働き方に中立な制度が望まれるという政策提言が出てくるのだろうと思われます。
 このように、下部構造はどんどん変わっていくわけでございますが、一つ、このように変わるのかもしれないと思われるところとして申し上げますと、過去10年、20年というのは、人口動態で見れば、今日の資料の4ページにありますとおり、1990年とか2020年においては、労働力の中にベビーブーマーと第2次ベビーブーマーと山が2つありまして、今、この1つの山が抜けつつあるところでございます。この1つの山が抜けつつある時期に、労働力不足、人手不足と言われてきてございます。
 また、過去10年、20年の一つの特徴は、ずっと物価、賃金が上がらない、デフレ的な経済であったということでございます。
 こういったものが過去10年、20年、あるいは30年の下部構造であったわけでございますが、こういったものが未来永劫、変わらないものであるかといえば、全然そんなことはないわけでございまして、今日も御指摘が出ているとおり、もしかすると来年度の賃上げは、従来とはかなり違うものになるかもしれない。
 あるいはもしかすると、そういったことが非正規雇用の場とか、いろいろなところに広まっていくかもしれない。それはよく分かりません。
 ただ、従来のような物価、賃金が上がらないという下部構造がもしかすると変わるかもしれないということでございます。そうなった場合には、デフレがうんとひどくなるということでなくて、ややインフレ的な経済、あるいは下部構造になっていく可能性がございます。
 こういったインフレ的な下部構造に対して、賦課方式の公的年金保険制度は、割と柔軟な対応がしやすい構造にはなってございます。
 こういったことが国民生活で大きな意味を持ちまして、うまく適合していけば、今、特に若い方を中心に、年金が不安の源になっている。若い世代に、君たちの将来は暗いのだよと言うときのネタの一つに、年金は駄目なのだからと平然と言われることがあるわけでございますが、もしインフレーションが、あまり高い率ではなくても、現実になっていった場合には、これ自体は人々の不安の源となり得るわけでございますが、年金保険制度という賦課方式の制度は、むしろ安心の源になり得るわけでございます。
 こういった意味で、今後、デフレ的な経済が、少しそうではない経済に変わっていった場合には、公的年金保険制度が国民に提供し得るものとして、安心の意味が強くなるといったことも考え得るところでございまして、こういったことを国民の間にうまく伝えながら、働き方に中立的とか、様々な所要の制度改正に結実させていきたいと思っているところでございます。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 ちょうど委員の皆様から御意見を頂戴したところで、ぴったり予定時間が参った次第でございます。
 非常に多岐にわたる御意見をいただきまして、私に到底まとめる能力がございませんが、事務局におかれましては、今後の議論に向けての課題設定その他、大いに参考にしていただきたいと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ちょうどお時間になりました。
 予定している議事は、以上で終了とさせていただきます。
 今後の予定について、事務局からお願いいたします。
○総務課長 次回以降の議題、開催日程につきましては、追って連絡いたします。
 本日はありがとうございました。
○菊池部会長 それでは、本日の審議は終了いたします。
 大変お忙しい中、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。