第70回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録

日時

平成30年11月9日(金)13:30~15:30

場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議事

 
○内藤部会長 定刻より少し早いようですが、御出席予定委員の方々が全ておそろいになりましたので、少し早めに開会させていただきます。ただいまから第70回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会を始めます。本日は小野委員、山本委員、花井委員、友利委員は御欠席となりますが、労働政策審議会令第9条の規定、全委員の3分の2以上(最低10名)又は、公労使委員の各3分の1以上(最低各2名)の御出席をいただいておりますので、定足数を充たしております。本日の議題ですが、1の中小企業退職金共済制度の現況及び、平成29年事業年度決算について、2の建設業退職金共済制度の掛金納付方法の検討についてとなっております。
議題に入る前に、委員の異動がありましたので、御紹介いたします。宮嵜孝文委員の後任として、日本紙パルプ紙加工産業の労働組合連合会中央執行委員長の橋本俊幸委員が御就任になっております。橋本委員、何か一言お願いします。
○橋本委員 ただいま御紹介いただきました紙パ連合の橋本です。何分、初めてですので至らない点があるかと思いますが、皆様にご教示いただきながら精一杯務めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○内藤部会長 頭取りは、ここまでですので御協力をお願いします。続いて、事務局の異動がありましたので、事務局から説明をお願いいたします。
○宇野勤労者生活課長 私は、本年7月31日付けで着任いたしました勤労者生活課長の宇野と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。私から今年度着任した事務局を御紹介いたします。まず、雇用環境・均等局長の小林です。大臣官房審議官(雇用環境・均等、子ども家庭、少子化対策担当)の本多です。勤労者生活課長補佐の友住です。事務局を代表して、局長の小林より御挨拶を申し上げます。
○小林雇用環境・均等局長 本日はお忙しい中、中小企業退職金共済部会のためにお集まりいただき、ありがとうございます。中小企業退職金共済制度ですが、独力で退職金制度を設けることのできない中小零細事業主の方が、相互扶助の仕組みのもとで退職金を支払えるようにしようという制度です。中小零細企業の労働者の福祉の向上に役立っていることはもちろんですが、昨今、非常に人材確保が難しいと言われている中で、中小零細企業の魅力を少しでも高めていくことが不可欠であろうということで、そういう中にあって、この退職金共済制度の意義はますます重要になってきているのではないかと思っているところです。本日は、部会長からお話があったように、制度の現況と、平成29事業年度の決算の御報告をさせていただきます。それから建設業退職金共済の関係ですが、掛金の納付の在り方に関して実証実験をやってまいりましたので、その結果も御報告させていただければと思っております。最終的には法律改正を伴うものですが、今の状況について御説明させていただければと思っております。
非常に貴重な機会だと思っておりますので、是非、忌憚のない御意見を賜れればと思っております。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○内藤部会長 ありがとうございました。では、本日の部会の説明は前回と同様にタブレットを使用して行うこととなっております。事務局から何か御説明があればお願いできますでしょうか。
○髙橋勤労者生活課長補佐 本日の部会ですが、前回と同様、ペーパーレスで実施いたします。お手元にはタブレットとスタイラスペンを配布しております。使用方法につきましては机上に操作説明書を配布しておりますが、ここで簡単に、操作の説明をいたします。まず、皆様のタブレットの画面上に労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会のフォルダが既に開かれており、資料が並んでいるかと思いますが、説明者が申します資料の番号を触っていただくと資料が開きます。もし、数値など見にくい場合があり、拡大したい場合は2本の指で広げたり閉じたりしていただくことで拡大や縮小をすることができます。また他の資料に移りたい場合は、左上に青色の文字で、元のフォルダの名称の「中小企業退職金共済部会」があるかと思います。そこを触れていただくと元の画面に戻りますので、次に移りたい資料を軽く触れていただくことで、次の資料に移ることが可能です。資料は指でなぞって上下にしていただくと、ページをめくるように移動することが可能です。
またお手元のスタイラスペンは軽く回すと先が出ますので、その上で真ん中のボタンを押すと反応するようになり、指の代わりに使っていただくことが可能です。そのほか御不明な点がありましたら、近くの職員にお声掛けいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○内藤部会長 ありがとうございました。それでは、議事次第に従って議事を進めてまいります。議題1「中小企業退職金共済制度の現況及び平成29事業年度決算について」に入ります。では、事務局から説明をお願いいたします。
○宇野勤労者生活課長 まず、資料2の説明をいたします。1ページを御覧ください。1の新規加入状況についてです。一番下の行が平成29年度の実績ですが、左側の共済契約者数、つまり加入事業主の新規加入数は合計で21,532件となっており、右側の被共済者数、つまり従業員の新規加入数は合計で494,157人となっています。前年度と比較すると、共済契約者、被共済者数ともに、一般中退の増加が大きかったため、全体としては増加となっております。次に、2の在籍状況については、平成29年度末で、共済契約者数は合計で543,497件となっており、被共済者数については合計で5,659,489人となっています。
2ページは、退職金等支給状況です。一番下の行になりますが、平成29年度の支給件数は、合計で318,719件、支給総額は合計で4,026億4,200万円となっております。前年度と比較すると、清酒製造業の1件当たりの支給金額が大幅に減少しておりますが、これは平成29年度において在籍している被共済者に対して現況調査を実施し、退職金受給資格のある被共済者へ退職金の請求を促し、受給資格のない被共済者には手帳の返納手続を要請した結果です。その結果、脱退者数が前年度比で大幅に増加し、その多くが短期間の在籍で受給者の平均掛金の納付月数が前年に比べて大幅に減少したことが要因と考えております。また建設業の支給件数は、平成28年度以降、大幅に増加しております。これは平成28年度から退職金の不支給期間を掛金納付月数が24月未満から12月未満に緩和されたことが要因であると考えております。
次に、3ページ目の上段の左側を御覧ください。4番の一般中退の平均掛金月額の状況です。掛金月額の設定は、5,000円以上3万円以下の中から任意となっております。また短時間労働被共済者は、2,000円、3,000円、4,000円から選べることとなっておりますが、短時間労働者の掛金も含めた平成29年度の平均掛金月額は、9,414円となっており、近年は一貫して増加傾向にあります。5番の特定業種の掛金日額の状況ですが、それぞれの日額は表のように決まっております。林業の掛金日額につきましては、平成26年度に行われた特定業種退職金共済制度の財政検証の結果を踏まえ、平成27年10月から470円に変更されております。下の表は、運用資産高状況についてです。平成29年度の運用資産高は、合計で約5兆8,743億円となっております。そのうち一般中退が約4兆8,463億円を占めております。
そして、4ページ以降に資産運用の状況についての詳しい内訳を載せておりますので御覧ください。一般中退の資産運用状況です。一番右側が平成29年度末の数字になっております。自家運用割合は54.98%となっており、国債等の有価証券で運用を行っております。平成29年度の自家運用の利回りは、0.57%という結果でした。自家運用につきましては国債等の満期保有を行っておりますが、国債の低金利を反映して利回りが低下傾向にあります。一方、下にある委託運用は信託銀行等に委託しておりますが、平成29年度の利回りは4.42%でした。運用全体としては、資料の一番右下にありますとおり、平成29年度の運用利回りは2.29%となり、昨年度に続きプラスとなっております。
5ページは、建設業退職金共済における資産運用状況です。建設業退職金共済では、中小企業に対する事業を給付経理と、契約時の元請事業主が大手企業に対する事業を附帯的に実施している特別給付経理とに区分しております。上段の表が給付経理、下段の表が特別給付経理となっております。平成29年度の利回りは右上の表の右側にありますとおり、給付経理の運用利回りは自家運用と委託運用を合わせて2.09%となっております。
6ページは、清酒製造業退職金共済の資産運用状況です。清酒製造業におきましても、経理を給付経理と特別給付経理に区分しております。建設業と同様に上段の表が給付経理、下段の表が特別給付経理となっております。平成29年度の運用利回りは、給付経理の運用利回り全体で、2.05%となっております。
7ページは、林業退職金共済における資産運用状況です。平成29年度の運用利回りは、表の右下にありますとおり、2.04%となっております。林業につきましては、(注)1にありますが、委託運用部分につきましては、平成28年度から一般中退との合同運用を実施しております。以上が、中小企業退職金共済制度の現況です。
続きまして、資料3を御覧ください。平成29年度決算についてです。まず、1ページ目は、機構全体の貸借対照表及び損益計算書の要旨を示しております。下段の損益計算書を御覧ください。損益計算書の一番下の当期純利益は、機構全体で550億6,700万円という結果となっております。
2ページ目から、個々の内訳の事業説明をいたします。一般の中小企業退職金共済事業等勘定です。まず下段の損益計算書を見ていただくと、平成29年度につきましては金銭信託の運用益より運用収入が1,079億円で、23億円の増となったこともあり、全体では下から2行目の当期純利益で、約518億円の利益が発生しております。これを受けて、上段の貸借対照表にありますとおり、貸借対照の下から3行目ですが、利益剰余金合計は4,332億9,400万円と、前年比518億円の増となったところです。
3ページが、建設業退職金共済事業等勘定の決算です。こちらにつきましても、下段の損益計算書の下から3行目の当期純利益は、21億円となっております。一昨年度、昨年度は、ここがマイナスでしたので3年ぶりのプラスという形になっております。その結果、上段の貸借対照表の下から3行目ですが、利益剰余金は1,084億円で、前年度比21億円の増となったところです。
4ページが、清酒製造業退職金共済事業等勘定の決算です。同様に損益計算書の当期純利益が約2,200万円、その結果、貸借対照表の下から3行目にある利益剰余金は昨年に引き続き、26億円となったところです。
5ページ目は、林業退職金共済事業等勘定の決算です。林業につきましても同じ所を見ていただくと、下の損益計算書の当期純利益が約2億円となっております。これは委託運用利回りが高水準となったことが主な要因ですが、林業の場合には繰越欠損金があります。貸借対照表の下から3行目ですが、前年度には7億8,300万円の欠損金がありましたから、この数字は5億8,200万円に改善しているという状況です。以上が決算の概要ですが、6ページには決算確定までの流れを示しておりますので、御覧いただければと思います。
最後に、7ページを御覧ください。こちらは前回の部会で決定した「新しい付加退職金支給ルールについて」です。今回の決算結果を当てはめた資料を作成して付けました。付加退職金は利益金の半分を充てることが基本のルールとなっていますが、新しいルールでは中小企業退職金共済制度の安定的な運用を図るため累積剰余金を2021年度末までに4,400億円まで積むことを目標にして、利益金が単年度目標額の2倍を下回る場合は単年度目標額を優先的に剰余金の積立てに充てることとしております。2018年度の単年度目標額は、今年の3月に御審議いただいたときの単年度目標額ですが、この右の図の赤い線の枠にありますとおり、117億円でした。
今回の決算結果を踏まえ、今年度末、来年3月に御審議いただく予定の平成31年度付加退職金支給率の決定の際に使用される単年度目標額は、この緑色の線にありますとおり、16億円となります。
簡単ではありますが、中小企業退職金共済制度の現況及び平成29事業年度決算の報告は以上です。
○内藤部会長 ただいま、事務局から議題(1)の資料2と資料3にわたって、御説明がありました。この件について御意見、御質問等がありましたら、是非お願いいたします。いかがでしょうか。何か御質問、御意見等がおありでしたらお願いいたします。鹿住先生、いかがでしょうか。
○鹿住部会長代理 資料2なのですけれども、今回、運用成績は比較的良かったかとは思うのですが、それぞれの制度によって委託運用の利回りが多少、良いところとそうでもないところと、少し差があったかと思います。この差は、やはり委託運用を委託している先の、例えば運用手腕というか、どういった所に投資をするか、ポートフォリオをどう組むかといった運用手腕によって結果が違ってくるということでよろしいのでしょうか。
○宇野勤労者生活課長 鹿住委員からのお尋ねにお答えいたします。この中退共、建退共、清退共、林退共のそれぞれにおいて、資産別の構成比が過去の資産運用の経緯もあって若干、異なります。構成比が異なることをベースにして、実際の委託先の運用の結果、あとはそれぞれの得意分野とか、そういったものによって若干の変動があります。安定的な運営をするために、資産運用委員会を通じて委託先の選定等もきちんとやっていただきたいと思っております。
○内藤部会長 ほかに、労使委員のほうから御説明、御質問などはございますか。ございませんか。では、特に御質問等がないようであれば、議題(2)に移ります。議題(2)の「建設業退職金共済制度の掛金納付方法の検討について」です。この件についても事務局から説明をお願いいたします。
○宇野勤労者生活課長 それでは、資料4の説明をさせていただきます。資料4の「建設業退職金共済制度の掛金納付方法の検討について」です。まず、1ページを御覧ください。特定業種退職金共済制度ですけれども、事業の運営が主として有期の請負によって行われ、又は季節的要因による影響を受けやすいという業務運営上の特殊性から、期間雇用労働者に依存するところが大きい建設業において、短期間に職場を転々とする期間雇用者に対する退職金を支給するため、昭和39年に創設されました。現在では建設業に加えて、昭和42年に清酒製造業、林業が昭和57年ということで、それぞれ制度の対象となっております。
上の図にありますように、期間雇用ということで事業場を転々と移動する方々のための制度です。そういった特殊性がありますので、現行の掛金納付の方法については共済契約者、つまり事業主が金融機関窓口で共済証紙を購入し、被共済者である労働者に、賃金を支払う都度、被共済者の共済手帳に就労実績に応じて共済証紙を貼付して、これに消印する方法によって掛金を納付しています。右にありますとおり、この赤い切手のようなものが共済証紙です。共済手帳はここにありますように、今日お持ちしましたけれども、このぐらいの大きさのが共済手帳です。
この方法についての課題が、1ページの下の段にありますけれども、2つあります。この方法ですと制度を運営する機構においては、証紙の貼付状況を手帳提出時(手帳の更新時等)しか把握できないという課題があります。また、事前に証紙を買っていただいて貼付するということですから、どうしても販売された証紙と貼付された証紙の枚数に差が生じてしまうという課題もあります。
こういった課題を解決するために、対応として2つあります。ペイジー又は口座振替といった電磁的な方法によって掛金納付を可能とするように検討していきたいところです。ここについては、行ったり来たりで申し訳ないのですが2ページを見てください。上段に、この掛金納付に係る法律の条文があります。ここを見ていただくと分かるとおり、中小企業退職金共済法の第44条第4項の中に、共済契約者は、退職金共済手帳に共済証紙を貼り付け、これに消印することによって掛金を納付しなければならないというように法律にはっきり書いてある形になっております。電磁的納付をする際には、この条文を改正する必要があるといった部分の課題もあります。
1ページに戻っていただいて、下の対応の2つ目にありますけれども、勤労者退職金共済機構において、平成30年1月~6月に、実際のペイジーとか口座振替といった電磁的な方法が現場で本当に回るかどうか、掛金納付が可能かどうかを実証実験をさせていただきました。
続いて、2ページの上は先ほどの条文ですけれども、下は中期目標という形で、本年4月から開始された第4期中期目標の中では、厚生労働大臣から機構に対して、電磁的方法による掛金納付の実証実験を実施し、導入の可否を検討する旨を指示しているところです。
3ページは、電磁的方法と証紙貼付方法の比較をするため、元請・下請構造のある建設現場における掛金納付の手順を図に表したものです。電磁的方法については、この図ではペイジーを使う場合を表わしています。これ以外に口座振替も可能とするように検討しているところです。右側は現行の証紙貼付方法です。共済契約者(元請の方)は、金融機関で共済証紙を購入します。その金融機関は、機構の建退共の事業本部に対して証紙購入代金を入金します。○3までが事前手続となります。被共済者である労働者が就労した後、○4にありますとおり、下請から元請へ被共済者の就労実績を報告いたします。そうしますと、○5にあるとおり、就労実績報告を踏まえて元請の事業主さんから下請の事業主さんに共済証紙を受け渡します。その際に、受払簿を作成することが義務付けられております。○6のように、下請の事業主さんが被共済者の共済手帳に共済証紙を貼付して、消印することにより掛金を納付する、これが現行の制度です。
現行では、この波線の矢印のように、証紙が共済手帳に250日分貼れることになっているのですが、250日分の証紙を貼り終わった場合は、共済契約者である下請を通じて建退共事業本部に更新手続を依頼して、新しい共済手帳が交付されるというのが現行の制度です。
一方、左側の電磁的方法ですが、○1のように、元請の方はペイジー又はインターネットバンキングの方法により、共済掛金の原資を払い込みます。○2のように、建退共事業本部は入金確認をし、入金された原資を管理いたします。建退共の被共済者である労働者が就労した後、○3にあるとおり、下請は元請に対して就労実績を報告いたします。その後、○4のとおり、元請の事業主は建退共事業本部へ専用サイトを通じて就労実績を報告します。いわゆるインターネット経由で電磁的に就労実績を報告します。建退共事業本部は、○5のとおり、その就労実績の報告に基づいて、あらかじめペイジー等で振り込まれた原資から被共済者に掛金の充当を行うこととしております。
充当の内容については、○6にありますけれども、共済契約者ごとに専用サイトを設けますので、その専用サイトを通じて掛金充当状況を確認することができます。○7のとおり、元請から下請に対してメールや郵送等で掛金充当状況を通知いたします。なお、今のところ開発の中では、専用サイトは下請もダウンロードできるような形で組むように検討されています。また、○8のとおり、下請から被共済者へ掛金の充当状況をお知らせいたします。
共済手帳については、左側の電磁的方法では、証紙の貼付欄がいっぱいになった場合に加えて、現時点では2年ごとに手帳を更新することと考えております。機構において、更新後の共済手帳に、証紙を貼付した分と、電磁的方法でそれまでに納付された掛金総日数を手帳に印字した上で交付する予定です。被共済者は手帳に加え、退職金受給資格が発生する納付月数12か月時点と、その後、納付月数60か月(5年ごと)の到達時点で掛金充当状況に応じた通知を機構から送ることを予定しています。これらにより、被共済者は自身の掛金納付状況を把握できるほか、随時機構や下請に照会することによって掛金納付状況を把握できるようにすることを予定しております。
メリットは3ページの下に書いてありますけれども、事務手続の煩雑さがなくなるという部分と、一番のメリットは、掛金納付状況を適時に建退共が把握できるところと考えています。
続いて、4ページが実証実験の概要です。検証の内容は上の欄にありますけれども、1点目は、電磁的方法による共済掛金原資の支払及び管理の手続き、2点目は、実証実験システムによる就労実績報告及び掛金充当手続の2つを実験させていただきました。詳細はここにありますとおり、(1)の掛金原資の支払の部分は、ペイジーや口座振替を使って支払い、その後、機構で確認をさせていただいています。これは3ページの図でいくと、○1及び○2に当たるところです。なお、この実験においては、実験だということもありましたので、金銭の支払に代えて購入済みの共済証紙を送付するということでも可能とする形にさせていただきました。
2点目のほうですが、就労実績報告、これは3ページの左側のほうでは、○3及び○4になりますけれども、下請からの就労実績報告を元請において工事ごとに取りまとめて、実証実験システムを通じて機構に報告させていただきました。また、機構のほうでも掛金充当の手続を行わせていただきました。ただ、掛金納付は先ほども説明したように法律の事項がありますので、実験中は機構が貼付と消印の義務を代行することにより実施いたしました。実証実験の参加企業数及び参加の人数、就労報告日数は、4ページの真ん中の実績に書いてあるとおりです。
実証実験の結果については、機構のほうで有識者の検討会が設置されておりますが、近々、この実証実験結果を検証して報告を取りまとめると聞いています。取りまとめの方向としては、実証実験の参加者の御意見等を踏まえれば、電磁的方法を導入することは可能であるという結論になると聞いています。
ちなみに、ここにはありませんけれども、実証実験の参加者のアンケートに自由回答欄がありまして、回答内容を一部を紹介いたします。元請からは、省力化につながると思いますので、費用やセキュリティに問題がなければ早期に運用してほしいという御意見がありました。下請からは、証紙を貼る作業がなくなることで、義務負担軽減のメリットを感じるという御意見もありました。また、別の元請からは、下請企業に認知されるように広く宣伝活動を行ってほしいというような御意見もありました。一方で、下請の一部のほうからは、証紙を貼った手帳がなくなってしまうと、被共済者に退職金の積立感がなくなってしまうと。そういう意味では、被共済者の確認が簡単にできるようにしてほしいという御意見もありました。
厚生労働省といたしましては、こういった機構の検討会や実証実験の声、結果等も踏まえまして、電磁的方法については引き続き検討を進めたいと思っております。特に、電磁的方法の導入に当たって前提となる中小企業退職金共済法第44条の改正については、行政手続のオンライン化等を更に推進するため、内閣官房を中心に検討が進められているデジタルファースト法案という法案の策定作業と一体的に行う方向で検討、調整を進めているところです。以上で、私からの説明を終わります。
○内藤部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見あるいは御質問等ございましたらお願いいたします。
○小川委員 電磁的方法による掛金納付、電子申請方式の導入についてですけれども、その意義として、まず、1つには掛金納付実態の透明化、2つには共済契約書の事務の合理化、3つには労働者の意識の向上、4つには適正かつ確実な掛金納付によって労働者の退職金充実にとって意義があると思っています。
2つ目に、来春の稼動に向けて準備が進められている、本人認証の上で、就業履歴と資格などを蓄積して、建設技能労働者の処遇改善や企業施行力の可視化などを目指す建設キャリアアップシステムとの就労データの連携も期待されていることです。
3つ目に、技能経験を考慮して加算することができる特別掛金の創設導入も期待されます。
4つ目に、公共工事、民間工事を問わずに、一層の建退共制度の普及促進が期待されるというようなことから、建設業の将来にわたっての持続的発展のための担い手確保と育成に重要であり、建設業に関わる労働者、使用者、関係業界・団体の全てが合意して、早期の実現を望んでいると考えています。同様の趣旨で、7月27日には日本建設業連合会と全国建設業協会の皆さんが、合同で厚生労働省の雇用環境・均等局、国土交通省の土地・建設産業局に対して、建退共制度の見直し要望を行っていると伺っています。
是非、厚生労働省におかれましては、必要な法令改正を含めて、早期の実現が可能となるようにお取り計らいをいただきたいと思います。
なお、共済契約書の中には中小零細な事業所、それから被共済者には中高年が多いということもあって、電子機器に不慣れでなかなかなじめない者も多く、デジタル・デバイドへの配慮が特に必要で、従来の手帳と証紙の存続も望まれます。従来の手続と電子手続はそれぞれ完結したものとして、二重の手続にならないようにして、事務の煩雑さ、複雑化の解消、低減を図り、どちらで手続をしても正確な貼付、掛金納付実績が反映、一本化されて、被共済者と共済契約者が最新情報を確認できるようにしていただけることを望みます。
○内藤部会長 ありがとうございました。ほかに。では事務局のほうからお願いします。
○宇野勤労者生活課長 今、小川委員から御発言があった件について述べさせていただきたいと思います。まずは1点目ですが、早期のシステムの実現に伴いまして、我々もその辺の部分も含めて、できるだけ早く実現するように頑張りたいと思っています。先ほども申し上げたとおり、法律改正が必要になってきますので、法律改正が必要になると当然、掛金納付というのは重要な部分なので、改正に当たっては当部会に諮問という形でお諮りしなければいけないと思っていますので、その辺もどうか、よろしくお願いしたいと思います。
2点目ですが、私の説明が不十分だったかもしれませんが、今、我々のほうで検討している電磁的方法の導入方法ですが、現行の証紙貼付方法と併存する形で考えています。それは、先ほども小川委員からもあったとおり、建設現場は多様なので、全員が電磁的方法というわけにはいかないと思いますので、これは併存する形で行わせていただきたいと思います。その際には、先ほど御指摘いただいたような事務の正確性など、その辺も含めて、引き続き推進したいと思っています。以上です。
○内藤部会長 ありがとうございました。ほかの御質問、御意見ございませんでしょうか。
○藤川委員 連合の藤川です。私も建退共の検討委員の一員ということで、小川委員がおっしゃったことに加えて、少しだけ意見を申し上げたいと思います。冒頭、小林局長もおっしゃったように、今、世の中は人材不足ということになっていまして、特に将来に向かって、建設業では人の確保と定着というのが大変な課題だと聞いています。そういった意味では、建退共の制度を拡充していくことは大変重要だと思いますし、建設業の産業としての魅力を高めていくということも大変重要なポイントだと思っています。そうした意味では、この電子化を行うことを踏まえて、建退共の制度の拡充を皆さんに知らせていくという活動も大変重要だと思っているので、その点は1つ申し上げておきたいと思います。そして、ややもすると電子化ということでは、共済契約者である事業主の方の利便性が高まるということでもありますが、被共済者である労働者に対してのメリットということもきちんと考えながら、このシステムを作っていただきたいという意見を申し上げていますので、ここで御報告を申し上げておきたいと思います。以上です。
○内藤部会長 ありがとうございました。何か、事務局からおありですか。お願いいたします。
○宇野勤労者生活課長 藤川委員、ありがとうございました。事務局から、2点とも全くおっしゃるとおりだと思います。まず、建設業の退職金共済制度、建設従業者の方の職務改善や人材確保の面からも、我々は加入促進を推進してまいりたいと思いますので、そのような魅力ある制度を作るためにも、この電磁的方法の導入を含めて検討していきたいと思います。
また2点目のほうも、全く御指摘どおりで、やはり建設業退職金共済制度は、最終的には被共済者、労働者の方々のためであると思っていますので、先ほど3ページの図で御説明したとおり、被共済者の方に対しても掛金充当状況をお知らせするようにして、共済契約者の方だけではなく建退共からも通知を行うとか、手帳は残して、その中にきちんと印字するなど、被共済者の方々にも情報が伝わるように工夫していきます。いろいろ御意見を頂きながら行っていきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
○内藤部会長 ありがとうございます。ほかに御意見、若しくは御質問等ございませんでしょうか。よろしゅうございましょうか。
○新田委員 まず2点ほど御質問というか確認させていただきたいと思います。まず1点目は、先ほどの御説明の中で、今回は中退法の改正が必要ということで、単独ではなく一括法案で提出される予定とお伺いしましたが、今のところ、いつ頃、どのようなスケジュールで提出を予定されているのか、もう少し具体的なイメージがありましたら教えていただきたいです。
2点目は、資料4の3ページ目ですが、今回、電磁的方法と証紙貼付方法と両方を併行してやっていくというようなお話があったかと思うのですが、その場合、物理的に二重加入とか、二重取りの可能性という部分では、先ほど小川委員の御発言にもありましたとおり、少し気になっている部分ですが、そこは物理的にあり得ないということでよろしいでしょうか。今時点でお考えになっている予防策なり、何かありましたら併せて教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○内藤部会長 事務局、お願いいたします。
○宇野勤労者生活課長 1点目のスケジュールですが、これは委員がおっしゃったとおり、デジタルファースト法案ということで、今、政府全体でやっていこうという形になっています。そのため、内閣官房のIT総合戦略室で準備を進めていて、その御指示を仰ぎながら我々も調整させていただいているのですが、何分、法案の関係ですので、現時点では、いつというスケジュールは、まだ示されていません。ただ実際に、法律を改正することになりますと当然、部会の御審議の日程もあるので、それは分かり次第、速やかに委員の方々にはお知らせしたいと思っております。今のところ、日程自体は我々にも分からない形になっております。
2点目のほうは、二重取りという部分につきましては、特に電磁的方法につきましては、今回かなり就労実績報告の部分に対しても、ここでは紙でもいいですし電子でもいいのですが、下請から元請への部分、3ページで言うと○3の部分ですが、実際には様式を統一化しながらアプリ等も使って、かなり電子化をしていこうと。その中で、先ほど小川委員からもありましたが、この中で、今、国交省のほうで検討されています建設キャリアアップシステム、これができると労働者のキャリアアップの状況も分かるし、実際の勤務状況も、ある程度把握できるシステムであると聞いていますので、そことの連携も図ることによって、実際の勤務実績と就労実績報告は、リンクするようになってくるものと考えていますが、現行の証紙貼付方法においては、今でも、御指摘のように、購入された証紙の枚数と実際に貼付された枚数が異なるというような実態もあります。
この辺りは、今後、システムを開発していく中で両方を併存したときの問題点を可能な限り、そこは潰していくように、我々も少し考えていきたいと思います。今、現時点でこういう方法でやればいいというものを私どもは持ち合わせていないのですが、そこは今、御指摘いただいたので、今後その検討の中で、より不正がないようにやっていきたいと思っています。
○内藤部会長 いかがでしょうか。よろしゅうございますか。ほかに何か御質問、御意見。
○関委員 電子機器のことがよく分かっていないので、セキュリティーの話ですとか、ちゃんと把握できていない上での質問になるかもしれません。現在いろいろな企業があるので、証紙の貼付と電子機器と両方が必要だということは分かっているのですが、将来的には、やはり電子化に一本化したほうがいろいろな意味で先ほど言った問題もなくなり、いいのではないかなと思うのです。それに当たって、例えば下請企業に、何かアプリだけではなく小さい機器のような物、そこに例えばスマホをピッとかざすと登録できるといった物を政府から渡していくということを、将来的には検討できないのかどうかということをお伺いしたいと思います。今、お店に行くと、携帯で小さな機器にかざすと、それぞれのお店でポイントを付けていくことができるようになっています。もしかすると値段もそれほど高いものではないのだとすると、将来的にはこうした機器を導入可能なのかどうかということをお伺いできればと思います。
○内藤部会長 お願いいたします。
○宇野勤労者生活課長 ありがとうございました。今、関委員のお話ですが、この分野は技術革新が日進月歩なので、将来はどうなるかというのは分かりませんが、おっしゃるとおり、そういったシステムというのも考えられなくはないのですが、一方で、電子システムというのは、どうしてもセキュリティの問題等がありますので、我々としては、この電磁的方法の、正に入金をして、それで就労実績報告に基づいて掛金充当をやっていくというシステムをきちんと構築すると。これも、実際には数十億円というお金が掛るので、まず、そういったものをきちんと作って、セキュリティーも万全を期していきながら運用したいと考えております。その上で、実際の利用状況を見て、電磁的方法がうまくいけばいいのですが、もし利用状況が芳しくない場合に、御指摘いただいたような部分が課題だとすれば、次のステップとしてやっていくという方向で、ステップバイステップという形でやらせていただければと思っています。
○内藤部会長 いかがでしょうか。
○関委員 ステップバイステップで、是非やっていただければと思います。それに当たって、将来的にどうするかということで、現在導入するアプリといった、現在の技術開発の状況も変わってくるかもしれませんので、その辺も視野に、最初のステップを踏んでいただければと思いました。
○内藤部会長 ありがとうございます。ほかに御意見、御質問ございませんでしょうか。御意見、よろしゅうございますか。
先ほど、小川委員がおっしゃったように、私も個人的には、一種の個人カードのようなものが、もし可能であれば、御本人、労働者自身のキャリアというものと、その経歴が、いわば積み上げが分かるような形になると思いますので、でき得れば前向きに御検討いただければと思う次第です。
ほかに御質問、御意見がないようでしたら、よろしゅうございますか。それでは、本日の議題は、この2つということで、御意見がほかにないようでしたら、これで部会を終了させていただきたいと思います。よろしゅうございますか。それでは本日の議事録の署名委員として、橋本委員と新田委員にお願いしたいと存じます。
それでは、本日はこれで散会といたします。委員の皆様、お忙しい中をありがとうございました。