2018年11月19日 第13回過労死等防止対策推進協議会 議事録

労働基準局総務課(過労死等防止対策推進室)

○日時

平成30年11月19日(月) 09:59~12:00

○場所

厚生労働省 共用第6会議室
(中央合同庁舎第5号館3階公園側)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

○出席者

<専門家委員>
岩城穣委員、岩村正彦委員、川人博委員、木下潮音委員、黒田兼一委員、宮本俊明委員、山崎喜比古委員 
 
<当事者委員>
寺西笑子委員、西垣迪世委員、前川珠子委員 
 
<労働者代表委員>
白井桂子委員、八野正一委員、村上陽子委員 
 
<使用者代表委員>
佐久間一浩委員、山鼻恵子委員、輪島忍委員 
 

○議題

・平成30年版過労死等防止対策白書について
・平成30年度の取組状況・予定について
・平成31年度概算要求について

○議事

○岩村会長 おはようございます。定刻より若干早いですが、出席御予定の方がお揃いですので、始めさせていただければと思います。それでは、ただいまから「第13回過労死等防止対策推進協議会」を始めます。委員の皆様におかれましては、御多用中にもかかわらずお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。初めに、委員の異動がありましたので御報告いたしたいと思います。参考資料に委員の名簿がありますので御覧ください。
去る8月1日、過労死防止に多大の御功績、御尽力を頂きました専門家代表委員の森岡孝二委員が御逝去されました。ここに慎んで御冥福をお祈りいたしたいと思います。森岡委員の後任としまして、11月1日付けで専門家代表委員の黒田兼一委員が厚生労働大臣から任命されていらっしゃいます。それでは、黒田委員から一言御挨拶を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。
○黒田委員 図らずもこういう所に座らせていただくことになりました。私の持っている力で精一杯頑張りたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。明治大学教員をやっています。よろしくお願いします。
○岩村会長 ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。また、本日は御都合によりまして、堤委員、中原委員、中川委員、小林委員が御欠席でございます。また、文部科学省の方については、本日、中央教育審議会初等中等教育分科会が開催されており、学校における働き方改革について審議が行われているということでして、11時30分頃から出席される予定と伺っております。さらに、事務局にも異動がありまして、7月31日付けで労働基準局長が交代になりましたので、ここで御挨拶を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。
○坂口労働基準局長 おはようございます。今、岩村先生のほうから御紹介いただきましたが、7月31日に労働基準局長に就任した坂口です。どうぞよろしくお願いします。過労死等防止対策につきましては、今年の7月24日に過労死大綱を変更して閣議決定をいたしました。この協議会の委員の皆様には、この大綱の見直しに当たりましても非常に活発に御議論いただいて、貴重な御意見を頂戴したとお聞きしております。改めて御礼申し上げます。
厚生労働省では見直した過労死大綱に沿って、関係法令に基づく監督指導等の実施、そして、この過労死等防止対策推進法に定める調査研究、啓発、相談体制の整備、民間団体の皆様の活動に対する支援という4つの対策をしっかりと着実に進めてまいりたいと思っています。中でも、今月11月は過労死等防止啓発月間になっております。家族会の皆様、労使団体の皆様、それから本日お集まりの協議会委員の皆様の御協力も頂きながら、今、全国各地でシンポジウムを開催しております。こういった幅広い啓発活動を通じて、しっかりと取り組んでまいりたいと思いますので、改めて皆様の御協力をお願い申し上げます。
本日の協議会では、議事次第にもありますとおり、平成30年の過労死白書について、これまで取り組んできた取組状況、それから、平成31年度の予算要求の状況といった点につきまして、公務員に対する取組も含めて、関係府省からも説明をして、御意見を頂戴したいと考えております。委員の皆様からの御意見を踏まえて、今後の対策を着実に進めてまいりたいと思いますので、どうぞ忌憚のない御意見をよろしくお願いします。今後とも皆様の御理解と御協力の下に、過労死対策をしっかりと着実に進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。以上でございます。
○岩村会長 ありがとうございました。事務局の異動につきましては、局長以外の職員の方も交代があったと伺っておりますので、事務局から御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○小城企画官 事務局に異動がありましたので、御紹介申し上げます。大臣官房審議官の田中です。労働基準局総務課長の富田です。事務局の紹介は以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。それでは、議事に入る前に、今日の協議会における説明資料のペーパーレス化の取扱いにつきまして、事務局から簡単に御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○小城企画官 厚生労働省では10月から審議会等のペーパーレス化に取り組んでいます。説明資料につきましては、今後は電子媒体で提供することを原則とするよう取り扱うこととなりました。このため、本日の協議会から各委員にタブレットを配布して、ペーパーレスにより資料等を御確認いただきながら御議論していただくこととなりました。資料については事前にメール等で御案内しています。そこで、お手元にタブレット1台を準備しております。そのほか、白書の冊子とタブレットの操作説明書各1部をお配りしているので御確認ください。白書の冊子以外の資料は、タブレットのファイルを指で軽く1回タッチしていただいて用意することができますので、画面に表示されたものを御確認ください。なお、操作方法等、御不明の場合につきましては、お手元の説明書に記載してありますが、御遠慮なく、随時、近くの事務局職員を挙手によりお呼びいただくよう、よろしくお願い申し上げます。
○岩村会長 ありがとうございました。今、説明がありましたように、もしタブレットの操作が分からなければ、御遠慮なく、随時職員に手を挙げてお呼びいただければと思います。
それでは、議事次第を御覧ください。これに沿いながら進めさせていただきます。前回は5月31日でしたが、そのときまでの議論を踏まえて、7月24日に大綱の変更が閣議決定されております。その後、10月30日に、大綱の変更の経緯や内容なども盛り込んだ「平成30年版過労死等防止対策白書」が閣議決定されまして、既に公表されています。また、新たな大綱の閣議決定から既に4か月近くが経過しておりますが、この間、各行政機関においては平成31年度概算要求が行われています。また、関係行政機関におかれては随時対策を進めていただいていると思います。
つきましては、まず厚生労働省から白書についての御報告を頂くとともに、平成31年度概算要求及び、これまでの対策の実施状況について、まとめて15分程度で御説明いただきたいと思います。その後、人事院、内閣人事局、総務省という順序で、対策の実施状況について、それぞれ大体3分程度で御説明いただきたいと思います。その後に、一括して質問などの時間を設けるという順序で進めてまいりたいと思いますので、御協力をお願いいたします。文部科学省については到着次第、御説明いただくことを考えております。それでは、まず厚生労働省から御説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○小城企画官 それでは、厚生労働省から資料1~3及び8について御説明を申し上げます。まず、資料1、過労死防止対策白書の概要をお開きいただきたいと思います。1ページに白書のポイントが記載してあります。国における主な取組としては、上段の箱書きですが、本年7月に見直された過労死防止対策大綱の概要と、それから本年7月に公布された働き方改革関連法について記載をしています。
2つ目のポイントとしては、調査研究の重点業種・職種、特に教職員、IT産業、医療を中心に、労災、公務災害認定事案の分析、あるいはアンケート調査結果を記載しております。
2ページ以下ですが、労働時間等の状況について、前回の5月の協議会までにお示ししているデータもありますので、最新の公表データを中心に御紹介いたします。
4ページ、過労死等の現状について、労災、公務災害の補償状況です。これを見ると、脳・心疾患は民間労働者、公務員ともにおおむね横ばい、精神障害は増加傾向にあり、民間及び地方公務員は過去最高の認定件数となっています。
5ページ以降ですが、過労死大綱の見直しの概要を記載し、6ページに数値目標に係る最新のデータを赤字で記載しています。
6ページ、新大綱の2番、インターバル制度を知らない企業の割合ですが、本年1月現在で29.9%、導入企業を含めた全体としても26.6%となっています(。インターバル制度の導入企業割合は本年1月現在で1.8%、その下の左側の欄になりますが、年次有給休暇の取得率が2017年(平成29年)調査で51.1%となっていまして、5割超えは1999年(平成11年)以来の水準です(。その下ですが、メンタルヘルスに取り組む事業場割合は2017年(平成29年)で58.4%、更にその下、仕事上の悩み等について相談先のある労働者の割合は72.5%、ストレスチェックの集団分析結果を活用した事業場割合は51.7%というような状況になっています。
次に、働き方改革関連法について、12、13ページです。働き方改革関連法については、本年9月7日に公布された関係政省令と36協定に関する指針の内容も含めて、長時間労働の是正、過重労働による健康障害防止に関する主なポイントを記載させていただいています。
13ページのオの所にその他とありますが、ここには高度プロフェッショナル制度について、正確にその制度の内容を理解し、不適正な運用がなされないように対象となる要件が極めて限定的であること、年104日の休日確保などの健康確保措置が確実に取られる必要があることなどについても記載しています。
14ページ以降は調査研究です。第4章では、旧大綱における5つの重点業種・職種につきまして、労災、公務災害認定事案の分析、企業・労働者に対するアンケート調査による労働・社会面の調査結果を記載しています。
15ページ、自動車運転従事者についてです。箱書きの所ですが、労災認定事案の分析結果を見ると、トラック運転手の脳・心臓疾患事案の発症に係る時間外労働以外の要因は、拘束時間の長さ、早朝勤務、不規則勤務などが多く、運行パターン別で見ると出庫時間が午前7時以前の早朝出庫型が多い状況です。精神障害事案のストレス要因を見ると、トラック運転手では長時間労働、タクシー・バス運転手では乗客等からの暴言、暴力等が多くなっているところです。
16ページ、教職員についてです。労災認定事案、公務災害認定事案の分析結果によると、脳・心臓疾患の発症に係る長時間労働の要因は、中学校及び高等学校の教員では、担任、部活動に関するものが多くなっています。精神障害事案のストレス要因は、教員では保護者対応等の住民との公務上の関係が多くなっています。労働・社会面のアンケート調査結果を見ると、1日の平均勤務時間は、中学校で長く、職名別では副校長、教頭が最も長くなっております。ストレスや悩みの内容は、長時間勤務の多さ、保護者・PTA等への対応などが多くなっています。教員が過重勤務防止に必要と感じる取組は、教員の増員が最も多く、校長が取り組んでいる取組は、校内会議時間の短縮などが多く見られるところです。
17ページ、IT産業についてです。特にシステムエンジニア、プログラマーの状況を見ると、労災認定事案の分析結果では、脳・心臓疾患、精神障害事案ともに、30代、40代の比較的若い世代が多く見られます。脳・心臓疾患事案の発症に係る長時間労働の要因は、厳しい納期、顧客対応、急な仕様変更などとなっています。精神障害事案でのストレス要因も長時間労働が多く見られるところです。アンケート調査結果を見ると、労働者が挙げた長時間労働が発生する理由は、トラブル等の緊急対応、顧客対応、仕様変更といったような、主に発注者等顧客からの要望への対応が多く見られます。ストレスや悩みの内容は、納期厳守等のプレッシャーが多く見られます。過重労働の防止に向けての課題は、顧客の理解・協力が必要とするというものが最も多く見られます。
18ページ、外食産業についてです。脳・心臓疾患事案及び精神障害事案ともに、調理人、店長の事案が多く見られます。脳・心臓疾患事案の発症に係る長時間労働の要因は、調理人では開店前、閉店後の準備や片付け、店長では店舗管理以外の接客等の複数の業務を行うことが多く見られます。精神障害事案でのストレス要因は、調理人では対人関係、店長では業務量の増加が多く見られます。
19ページ、医療についてです。労災認定事案の分析結果では、医師については脳・心臓疾患事案の割合が多く、その発症に係る要因はほとんどが長時間労働で、具体的には診療業務、管理業務に起因するところです。看護師については精神障害の事案の割合が多く、そのほとんどが女性で、約半数は30代以下です。また、その発病に関与したと考えられるストレス要因は、患者からの暴力や入院患者の自殺の目撃等、事故や災害への体験、目撃をしたというものが約8割と特に多く、その発生時刻は深夜時間帯が多く見られるところです。労働・社会面のアンケート調査結果を見ると、時間外労働が発生する理由は、医師、看護師ともにカルテ等の書類作成、あるいは救急や入院患者の緊急対応等が多く見られます。過重労働の防止のために実施している取組は、医療事務作業等の補助者を増員するというものが多く見られるところです。
20ページ以降については、過労死等防止のための対策の実施状況を記載しています。第5章では、過労死等防止対策推進法で定められた4つの対策、調査研究等、啓発、相談体制の整備等、民間団体の活動に対する支援とともに、労働行政機関における関係法令に基づき取り組む監督指導等の対策について記載しているところです。
また、コラムとして25ページ以降では、労使関係団体の皆さんにも御協力を頂いて、企業や団体及び自治体の取組状況を紹介していますが、特に25ページでは、過労死された方の遺族や弁護士を学校へ派遣して、学生への啓発を行う取組を行っているコラムを御紹介するとともに、高校の公民科の授業における教育の実践例といったものも御紹介しており、今後横展開していただければ有り難いと思っているところです。白書については以上です。
次に、資料2ですが、対策の実施状況をまとめています。これは旧大綱に基づく対策の実施状況として、平成27年度から平成29年度の3か年の取組実績を取りまとめたものです。後ほどお目通しいただければ有り難いと思います。
資料3です。今年度の主な取組の状況についてです。まず1ページ、過労死大綱の見直しについての御報告です。大綱の見直しについては、5月の協議会で見直し案を取りまとめていただきましたが、それ以降の対応について報告申し上げます。まず、(2)ですが、6月15日から1か月間、大綱改定案についてパブリックコメントを実施しました。209件の意見が寄せられております。主な意見としては、36協定が事実上適用されていない教職員に実行性のある労働法の適用や時間外労働の上限規制をすべきである、地方公務員への人事委員会による監督指導を徹底すべき、官民問わず勤務時間管理の適正化が必要であるといったような御意見を頂いています。そのような意見を踏まえて、一部修正の上、平成30年7月24日新たな大綱の閣議決定と同時に、パブリックコメントの結果を公表しています。併せて、同日付けで自治体、人事委員会、教育委員会へ、関係省庁と連携して通知するとともに、労使団体の協力も得て、セミナー等で周知させていただいているところです。
2ページはシンポジウムの状況、3ページは過重労働解消キャンペーンの状況として、この11月の過労死等防止啓発月間に取り組んでいる内容をお示ししています。3ページ、(4)ですが、11月4日に実施した無料電話相談の速報値は501件となっております。
4ページは、長時間労働削減等のための監督指導などの取組状況を記載しています。
5、6ページ、調査研究です。5ページは、過労死等防止調査研究センターにおいて実施している労災事案等の分析です。6ページについては、企業等へのアンケート調査の内容を記載しています。いずれも、新たに大綱の重点業種に追加された建設業、メディア業界を対象として、現在分析や調査を実施中で、来年度結果を公表予定です。
7ページ、過労死された方の遺族や弁護士を講師として大学等へ派遣し実施している学生の啓発事業について、今年度は10月26日時点で191件の申込みを頂き予定数を大幅に超えたため、平成30年度受付は終了させていただいています。家族会や弁護団の皆様方には御協力いただき、ありがとうございます。
8、9ページ、商慣行を踏まえた業種ごとの取組状況を示しています。8ページの自動車運送業については下から2行目、全国47都道府県で実施したモデル事業の成果を踏まえて、11月6日に、荷主との運送業者との協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドラインを策定し、公表をさせていただいております。IT関係では、その1番下の枠囲みですが、本年3月、プロジェクト現場での仕事の進め方や取引の在り方を見直すための働き方改革のハンドブックを作成して、IT企業への個別訪問によるコンサルティングなどを実施しているところです。このほか、次のページにあるとおり、医療関係については、引き続き働き方の見直しについて検討中ということです。
資料8です。平成31年度概算要求をお示ししています。過労死等防止対策推進法や大綱に定める調査研究等、啓発、相談体制の整備等、民間団体の活動に対する支援に関する必要な予算については、引き続き継続して要求するとともに、一部予算の拡充を行っているところです。平成31年度は、平成30年度予算に比較して120億ほど拡充させていただいているところです。
具体的には2ページです。2ページの上から2つ目の丸の所ですが、業種別マニュアルの作成等による勤務間インターバルの普及促進に関するもの、3つ目の丸の「働き方」の見直しに向けた企業への働きかけの実施の下から2番目の項目にありますが、47都道府県に設置する「働き方改革推進支援センター」において、専門家による企業への個別訪問等によるコンサルティングの実施、あるいは商慣行・勤務環境を踏まえた取組の推進の下から2つ目の項目ですが、タスクシフティング等、医療業務における好事例の普及や医療機関へのかかり方等の啓発といったようなものを、平成31年度概算要求では新規・拡充させていただいているというところです。私からは以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。それでは、引き続き、人事院のほうからお願いいたします。
○人事院職員福祉局荻野職員福祉課長 人事院の職員福祉課長でございます。失礼して、座って説明させていただきます。
資料4をお開きください。人事院の過労死等防止のための対策についてまとめさせていただいています。人事院では、内閣人事局等とも連携して、過労死等防止のための対策を講じてきています。幾つか柱を挙げていますが、左側、こころの健康づくり対策、パワーハラスメント防止対策についてですが、まず、キーとなる方たちの研修に力を入れて行っているところです。各府省の健康管理担当者の方々に対して、説明会の中でこころの健康づくりの取組に関する説明を行ったり、あるいはこころの健康づくりの研修で過労死に関する説明を行ったりして、具体的にこころの健康づくりを求めたりといった取組を行っています。
2つ目、周知については、メンタルヘルスであればガイドブック、職員用と管理監督者用の2種類を作っていて、どちらにも過労死防止のための取組も含めて府省に配布しています。また、パワーハラスメントについても同様に、パワーハラスメント防止ハンドブックを作成して配布をしているところです。
3つ目、相談体制の運営についてです。こころの健康相談室と下に書いていますが、こころの健康相談室を本院と全国に10か所ある地方事務所、事務局に設けていて、どこの府省の方でも利用可能なこころの健康相談を受け付けるという形にしています。
それから、パワハラについてです。パワハラの関係については、その下の左側に相談件数という表を付けています。公平審査局の中に苦情相談の制度があり、職員本人の方であれば匿名でも利用可能です。もちろん、パワハラだけを扱っているわけではありませんが、平成29年度においては、パワハラ関係で261件の御相談を受けているという状況です。また、記載はありませんが、パワーハラスメントについては、民間でのパワーハラスメントの議論が進んでいると承知しているので、それを重視して、公務におけるパワハラ防止対策についても、今後検討していくこととしています。
2つ目、長時間労働の是正等の関係です。本年夏の国会及び内閣に対する人事院勧告時に、長時間労働の是正について報告をさせていただいています。国家公務員については、これまで人事院の指針の中で、年間の超過勤務の上限目安の時間数を示してきましたが、民間労働法制の改正も踏まえて、超過勤務命令を行うことができる上限を人事院規則で定めることとし、原則1か月について45時間、かつ1年について360時間と設定し、他律的な業務の比重の高い部署に勤務する職員に対しては、1か月につき100時間未満、かつ1年につき720時間等と設定するなどの措置を講じていくこととしています。また、職員の健康確保措置、年次休暇の使用促進の措置についても講じていくことにしています。人事院としては、各府省に対してあらゆる機会を捉えて、長時間労働の是正を働き掛けていくこととしています。
3つ目の柱、過労死等事案の分析、公務災害相談窓口の周知についてです。平成29年度は、平成22年4月から平成27年3月までに公務外と認定された脳・心臓疾患事案及び精神疾患・自殺事案を取りまとめて、分析を実施したところです。また、2つ目の丸ですが、各府省の公務災害相談窓口について、人事院のホームページで周知して、併せて職員等から相談があった場合の対応等について、各府省に通知しているところです。以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。それでは内閣人事局から、お願いいたします。
○内閣官房内閣人事局池田参事官 内閣人事局です。よろしくお願いします。座って説明させていただきます。
内閣人事局では、人事院と連携しながら国家公務員に対し、啓発や相談体制の整備のための取組を進めております。資料5を御覧ください。平成30年度における過労死等の防止対策の実施状況ですが、国家公務員に対する啓発、相談体制についてという観点で、ワークライフバランスの推進、心身の健康の保持増進という2つの柱を立てて取組を進めております。
まず1つ目、1ページ目のワークライフバランス推進ですが、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、超過勤務の縮減、年次休暇の取得の促進といった取組によって、ワークライフバランスを推進しているところです。
1として、今年度も7、8月を国家公務員のワークライフバランス推進強化月間として実施いたしました。右側中段にありますのが、今年度、各府省に掲示したポスターです。推進強化月間は平成27年度から実施して、今年度で4年目となりました。例えば、終業時刻を普段より1時間早める「ゆう活」をはじめとした働き方改革に取り組むことにより、長時間労働を打破することを目的としております。
「ゆう活」については、本府省等において推進強化月間中の第1・第3水曜日の状況を調べたところ、「ゆう活」に取り組んだ職員の76%が定時に退庁し、職員全体の79%が20時までに退庁しておりました。参考として、推進強化月間前の6月27日の水曜日における職員全体の20時までの退庁割合が73%となっていることと比べますと、推進強化月間中の早期退庁の割合が高くなっております。一定の成果があったものと申し上げられます。
2として超過勤務の縮減と年次休暇の取得促進、ワークライフバランス推進のためのマネジメントの向上として、特に管理職に対する働き掛けを進めております。まず、アとして、超過勤務予定の事前把握の徹底です。これは管理職が超過勤務の理由や見込み時間を事前に把握することによって、超過勤務の原因を取り除き、超過勤務を縮減するという取組です。また、年次休暇についても連続休暇の取得を促進するとともに、計画的に取得するために計画表を活用するといった取組を推進しております。また、イにありますとおり、働き方改革と女性活躍、ワークライフバランス推進に係る管理職員向けeラーニングも実施しております。これについては、昨年度から全管理職を対象として行っているところです。また、こういったeラーニングに加えて、ウにありますとおり、対面形式のマネジメント・セミナーも本府省及び全国8ブロックで開催しております。今年は計300名程度が参加見込みであり、管理職として求められる行動・役割について講義のほか、グループ討議なども行っております。
続いて、2ページ目の心身の健康の保持増進です。こちらは管理職職員などによる健康マネジメントの推進という観点で進めております。まず、公務員に対する周知・啓発等の実施として、1の管理監督者のためのメンタルヘルスセミナーです。今年度は全国6ブロックにおいて管理職員などを対象に合計約320名が参加する見込みです。これはメンタルヘルスの基礎知識やメンタルヘルス不調者への実際の対応方法を習得するためのセミナーです。
2としてeラーニングを用いたメンタルヘルス講習、ハラスメント防止講習です。こちらは平成28年度から新任管理者について、「心の健康づくり」、「ハラスメント防止」に関する研修の受講を必修化しておりますが、各府省での取組に加え、内閣人事局としてeラーニングを用いた講習を提供しており、今年度は新任管理者や課長補佐など約1万人を対象に実施し、メンタルヘルス、セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、マタニティー・ハラスメントの基礎知識、また部下との相談対応などをWeb上で受講するものです。
3として、生活習慣病対策等の健康増進対策の推進です。過労死などの原因となる脳血管疾患や心臓疾患を予防する観点から、健康診断等の結果、要医療・二次健診の対象となった職員の方へ確実な受診などの指導を行っているところです。また、公務員に対する相談体制の整備などとして、各府省等カウンセラー講習会を全国6ブロックにおいて各府省などに配置されているカウンセラーを対象に実施しており、合計約200名が参加する見込みです。カウンセラーの方は様々な基礎知識や経験がありますが、よりカウンセリング能力を高めていただくための実践的講義を行っております。以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。続いて総務省から、よろしくお願いいたします。
○総務省自治行政局公務員部吉武安全厚生推進室長 総務省安全厚生推進室長の吉武です。座って説明させていただきます。
資料6により、総務省における過労死等の防止対策の実施状況を説明させていただきます。まず1ページを御覧ください。時間外勤務の縮減につきましては、こちらにお示ししておりますように、地方公共団体に対し公務員部長名などで通知をするほか、人事担当課長などが出席する各種全国会議などで要請いたしているところです。本日の資料に掲載が間に合わなかったのですが、地方公務員の労働時間の上限規制につきましては、いわゆる現業事業場においては労働基準法上の上限規制がそのまま適用されることについて、この11月12日に全地方公共団体に通知をいたしました。
また、加えまして、非現業職場や教職員の皆さんにつきましては、先ほど御説明がございましたけれども、国家公務員に対して来年4月から上限が設定されるという話があったことを踏まえ、同様に上限の設定を行うよう各地方公共団体に助言することを予定しているところです。
次に2ページを御覧ください。女性活躍・働き方改革推進協議会は平成29年度から設けたものですが、本年度も5ブロック4県で開催することとしております。また、3ページに、この協議会の成果である事例の一部をお示ししております。平成29年度の協議会の成果として事例をまとめたガイドブックを平成30年3月に作成し、地方公共団体へ配布するほか、ホームページにも掲載したところです。
5ページを御覧ください。「ゆう活」などによる働き方の見直しも引き続き要請しております。平成30年度は全都道府県・全政令市のほか、3分の1に当たる572の市区町村でも様々な取組がされたところです。
8ページを御覧ください。調査・分析の取組です。平成29年度は公務外事案に加え、教職員などに関する公務上事案の63件を詳しく分析しました。結果につきましては、地方公共団体へ周知するとともに関係府省へ提供し、加えまして白書、ホームページへの掲載もいたしました。また、平成30年度におきましては、平成29年3月末までに公務上認定されました合計で321件についてのデータベースの構築に向けた作業を進めているところでございます。
9ページを御覧ください。地方公共団体における安全衛生体制、ストレスチェックの実施状況です。こちらにつきましては相当程度実施していただいておりますけれども、更にこの対応を進めていただくよう、引き続き指導・助言を行っていくこととしております。加えまして、10ページにございますように、メンタルヘルスに関する研修につきましても、関係機関などにより、今年度お示ししているこれらの研修を実施しているところです。
最後に11ページを御覧ください。相談の取組です。人事委員会が時間外勤務の縮減への対応を行うことの必要性、苦情・相談業務の充実について、各ブロックで開催されております人事委員会の会議に総務省としても出席し、説明をしたところでございます。また、メンタルヘルス相談事業を行っている各地方公務員共済組合に対し、その充実に努めるよう事業運営通知に明記をさせていただきました。加えて、公務災害の補償を実施している地方公務員災害補償基金におきましては、ホームページに本部及び支部の相談先を明示するほか、より事務が迅速に進むよう、請求書の様式の注意書きに変更を加えていただきましたことから、総務省といたしましても、各地方公共団体の職員の皆様にも周知するよう通知を行うなどの対応を行ったところです。以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。それでは、ただいま各府省から御説明いただいたところですので、これからそれにつきましての御質問あるいは御意見等をお出しいただければと存じます。いかがでございましょうか。
○八野委員 御説明、どうもありがとうございました。私からは2点申し上げたいことがございます。1点は周知・啓発です。今、白書の中でも、またこの11月に向けても様々な啓発活動が行われていると認識しています。
連合におきましても、初めて弁護士の川人先生に来ていただいて過労死等に関するフォーラムもさせていただきました。また、月刊『連合』等にもその特集を組ませていただきました。
ただ、周知・啓発が、どこまで浸透しているのかというところについては、まだまだ課題があるというような認識をしております。やはり、民間企業では、直属の上司又は管理監督者、使用者、経営者の意識が、どこまで高まっているかというところが重要だと思っています。働き方改革ということで言うと、企業における働き方の新しい戦略を組んでいくぐらいの大きなことだと思っています。そういう意味でも、我々労働組合、連合としても、もちろん啓発をしていきますけれども、更に進めていく必要があるだろうという認識を持っているということが1点です。
それから、過労死防止のための対策に関する大綱の中に、国の取り組む重点対策ということで、商慣行、勤務環境を踏まえた取組というものを入れていただいたことに関しては、一歩も二歩も進んでいると思っております。
今、報告を受けましたが、例えば教職員のストレス・悩みというところでは、保護者・PTAとの対応があり、看護師のところでは、ストレス要因として患者からの暴力があるというようなことが出ております。
私たちUAゼンセンとしても、今マスコミでも取り上げていただいておりますが、悪質クレームをなくすという運動を行っております。私たちも、クレーム自体がいけないということを言っているわけではありません。クレームによってサービスを更に高めることができたり、商品のトラブルをなくしていくことができたりするという面では、クレームというものも非常に大切なものだと捉えています。ただ、実は悪質なクレームが増えてきて、アンケートによりますと、現場で働く人は、精神的なダメージをかなり受けているということでございます。「軽いストレスを感じた」「強いストレスを感じた」という回答だけで90%になっております。一番多いのは、やはり消費者からの暴言でして、これは現場で聞いてみますと、1つの商品の苦情又はサービスの苦情に対応していると、様々な、家の状況であるとか家族の状況であるというところまで話が及んでくるというようなことで、サービス業で働く者の精神の安定を守るという観点からは、そうしたことへの対策を図るハラスメント対策指針等の策定が必要だと思います。それから、生活者に対する啓発・教育というようなことも、非常に重要になってきているのではないかと思っております。これは介護の現場でも非常に増えてきているということが、実態として出ております。大きなことにならないうちでの対策というものが求められているというように思っております。以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。川人委員、お手が挙がっていたようです。どうぞ。
○川人委員 3点質問ないし意見を申し上げます。まず、質問です。報告を頂きました過労死白書の第2章、過労死等の現状についてのデータに関することなのですが、この中に脳・心臓疾患や精神障害の支給決定件数の表示が出ています。この間、いわゆる自庁取消と言いまして、過去に労災認定をせず業務外決定を出した事案につき、裁判の判決を経ないで自庁取消、つまり労災と認定するというケースが続いております。最近、非常に有名な例では、札幌の新人1年目の看護師さんが死亡なさったケースについて、過去に労災認定されなかったのですが、最近になって裁判所の判決が出る前に、自庁取消をしたという事案が大きく報道されております。質問なのですが、この自庁取消というのは、まずこの報告数値の中ではどのように反映されるのか、あるいは反映されていないのか。そして、それらについては具体的に統計を取っているのか取っていないのか。この点、今日御出席の方で分かる範囲でお答えいただきたいということが1つです。
2番目、これも大きな社会問題になっております外国人労働者についてです。外国人労働者について、過労性疾患で病気になったり亡くなったりのケース、つまり労災認定がされたというケースが報告されています。これは独自に統計が取られているか、また取られていないか、この辺りについて御質問したいと思います。
最後、先ほどから詳しく御報告いただいた運送業について、運転手さんが運転の業務をしている時間と、それ以外の業務つまり車に荷物を載せたり若しくは荷物を降ろしたりする業務を区別して、別の法人として評価しているために、運転労働だけが拘束時間として評価されているというような例が報告されております。この辺り、職業運転手の場合の拘束時間なり労働時間の問題について、別の法人が関わった場合にはどういう処理になっているか、これも現時点で分かる範囲で教えていただきたいと思います。以上3点について、よろしくお願いします。
○岩村会長 3点御質問だったと思いますけれども、いかがでございましょうか。事務局からお願いします。
○荻原補償課長 まず自庁取消の件数ですが、今、統計は取ってはいません。ただ、一般に自庁取消というのは、最初の監督署の段階で把握できなかった新たな事実が出たとか、裁判の段階で今までなかった追加の明確な証拠があった場合については、もう一度原点に戻って、認定基準に戻して決定をするという形のものになっております。ですから、監督署長が決定した段階で、この認定件数の中に入ってくる形になります。
○川人委員 入る場合というのは、どの年度に入るのですか。
○荻原補償課長 支給決定を行った年度に入りますので、取消を行った年に入ってくる形になっております。監督署長が認定した年に入ってくるというように御理解いただければと思います。
外国人労働者の認定のケースですが、これは御存じのとおり国籍に関係なく、労働者という観点で、私どもとしては全て同じ取扱いをしているので、特別に外国人だけを取り出して労災の数を把握しているわけではございません。ただ、一般の災害については、労働者死傷病報告というものが出ていますので、その中で災害件数としては出している状況にはなっているということです。
それから個別案件の運転業務について、これは一般論ですが、運転業務と荷積み・荷下ろしの関係ですけれども、労災の現状からすると、実際に監督署で調べるときは、運転手さんがその後にフォークリフトを使って荷積み・荷下ろしをするとか、実際に働いているということが確認できれば、一般的には労働時間という認定をして、認定基準の負荷要因にカウントするという形になっております。
○岩村会長 よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。
○西垣委員 全国過労死を考える家族の会兵庫代表の西垣です。平成30年版白書の取りまとめ、お疲れさまでございました。今までにも発言させていただいてきたところですが、最後でもありますので、7点について意見ないし質問をさせていただきます。また、私たちは今、啓発シンポジウム・啓発授業に取り組んでいる最中でもあります。
まず、1つ目、資料1の8ページ、勤務間インターバル制度についてです。睡眠時間の保障は、やはり生命の保障になると思います。息子の会社の36協定は(時間外労働が)1日13時間、元の8時間にプラスして21時間働けます。残りの3時間が、お昼の休みとか残業に入る前の休みとか夜中3時から40分の休みというように散りばめられております。1日の終業時刻は翌朝の8時半、つまり9時から始業ですから、その前の30分、インターバルで言うと30分のみという現状であります。その中で、息子は連続37時間勤務がタイムカードに残っており、睡眠障害から鬱病になりました。そして、鬱病によって亡くなりましたが、主訴は眠れなかったということです。眠れなかった。数年間まともに眠れない状況で死に至りました。
インターバル制度の導入を進められることは大切なことだとは思っております。ただ、強制力のある義務にはまだなっておりません。今、大事なことは労基署が36協定を受け取っていただくとき、1日の時間外労働時間をチェックする方策を講じていただきたいのです。息子の会社のような異常な13時間、これはやはりまずいでしょうということを御指導いただきたい。さらに、1日の時間外労働に上限を決めるべきです。これが働き方改革関連法にも入っていません。そして、先ほど申しましたインターバル制度も義務化していただきたいです。これが1点です。
2点目、これは同じく資料1の12ページ、時間外労働上限規制の原則が1か月45時間、1年360時間となっています。そして、通常予見できない臨時の場合においては1か月100時間未満、複数月80時間未満、1年720時間以内となっています。これについては、原則の月45時間、年360時間を厚労省も重視するとおっしゃっておられますが、徹底して重視していただきたい。また、過労死ラインである臨時の場合がたびたび起こることが想定されます。これを防ぐ措置を講じていただきたいです。
3点目、22ページの(1)、長時間労働が行われている事業所に対する監督指導についてですが、2016年以降、月100時間から拡大して月80時間以上の時間外労働に関して指導を行ってくださっています。これは100時間に戻すことなく、引き続き80時間を重視して取り組んでいただきたいと思います。
次、4点目、同じページの(3)、新ガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底についてです。第1回協議会が始まってからも、一貫して私も申してまいりましたが、長時間労働を是正するためには実労働時間の把握が前提だと思います。これが日本中でできていない。いまだかつてこれだけ問題になっていてもできていない。これがやはり問題になると思います。この把握をしなければ、長時間労働の是正というのは砂上の楼閣の議論になると思います。そのために、このガイドラインをガイドラインにとどめるのではなく、是非義務化、法制化していただきたいと思います。
さらに、平成28年版白書において過労死等に関する実把握のための労働・社会面の調査で明らかになったように、これは平成27年度調査ですが、労働時間を正確に把握すること、そして残業手当を全額支給すること、このことが残業時間を減らし、年休を増やし、メンタルヘルスの状況を良好化すると、はっきり結果に出ております。したがって、その面から考えますと、裁量労働制、高プロ制等は過労死防止の観点から問題があると言えます。やはり、働いた時間をきっちり管理して、その時間に見合う報酬が払われるべきだと思います。
5点目、同じく資料1の22ページ、(4)是正指導段階での企業名公表制度の運用についてです。先日、海外のマスコミから取材を受けました。そのとき、息子さんの労災認定がされた後、会社は自ら謝罪し改善策を示してきましたかという質問を受けました。これは当然のことでしょうというお立場での質問でした。海外では当然のことと思われていることが、日本では残念ながらなされておりません。遺族の強い要望の下、強い働き掛けの下、数少ない企業でしか行われていないのが現状です。
先日、34歳の青年が過労自死した西日本高速道路会社において、遺族の要望を受け、会社が公の場で謝罪を行いました。この件に関しては、遺族は上司をも業務上過失致死罪で告訴しているという状態にもなっております。今の運用を更に進め、過労死を起こした全企業名を公表し、改善策を公表させ、労働行政と国民、労働組合で見守ることが必要と考えます。複数の事業場での過労死で初めて公表するというのでは、余りにも1人の生命を軽く見ているのではないかと思われます。
6点目、若者対策の強化についてです。今回、若者対策の強化を入れていただきました。平成29年の労災補償状況によると、精神事案において若者の過労死・過労疾病は減るどころか増えております。40代も増えております。資料3の3ページ、(3)に長時間過重労働による過労死等に係る労災請求、若者の使い捨てが疑われる企業に対する重点監督指導を、11月に過重労働解消キャンペーンとして行うというように書いてくださっています。この若者の使い捨て企業に関して、具体的にはどのように調べ、どう指導されておられるのか、また今後のことは、どういう御予定を持っておられるのかお聞きしたいです。
最後、7点目、IT企業での取組についてです。資料1の14ページと資料2の11ページの3に関連いたしますが、調査・取組を引き続き進めていただきたい。過労死事案の報道を見ますと、やはりシステムエンジニアの過労死事案は多く報道されております。質問ですが、資料1の14ページにアンケート調査の記載があります。IT関連に関しましては、企業4,000件に対し有効回答が423件と大変少なくなっています。この理由については、どういうようにお考えでしょうか。この中に問題点はあるとお考えでしょうか。以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。少しまとめて、後で事務局からお答えいただきたいと思います。
○寺西委員 文科省の報告についてお伺いしたかったのですが。
○岩村会長 後ほどで結構です。
○寺西委員 では、後ほどということで。職場におけるハラスメントの発生状況について、白書の中の254ページに報告していただいています。ハラスメントの被災者が、急激に増えていますし、これは若者の自死の一番大きな要因となっているところです。この白書の中でも、各労働局へ寄せられる相談は毎年増え続けて、6年連続で相談件数が7万件を超え最多となっています。また1万人調査では、3人に1人はパワハラを受けたということがあります。
過労死家族の会から厚労省への要請においても、今年は24人中虚血性疾患が1人、メンタル療養中が6人、ハラスメントによる過労自死が17人という被災をされた要請を行いました。そうしたことで、このハラスメント問題について、このままデータや調査の中身をもっともっと深く掘り下げてほしいと思っています。若い人、10代の方、また20代、30代、40代という、本当に若い人がメンタル不調になったり、ハラスメントで自殺をしたりということが大きな問題になっています。職場における、ハラスメントの発生状況が労災申請の相談者にも顕著に表れています。
国が取り組む重点施策について、メンタルヘルス対策に関わる指導や、再発防止の取組の指導、関係法令の周知徹底ということを書いていただいていますが、これだけでいいのでしょうか。もっともっと深めた調査、分析をしていただきたいというお願いをさせていただきたいと思い、発言しました。よろしくお願いします。
○岩城委員 私からは、4点ほど御質問と意見を述べたいと思います。まず、今回の過労死白書は、これまでの2回と比較しても大変充実した内容となっているということで、関係者の皆様に御礼を申し上げたいと思います。
1点目は、過労死の現状についてです。白書では、民間と公務の両方について、労災、公務災害の請求件数、支給決定件数が報告されていますが、この件数が過労死の発生件数自体を表すものではないということは言うまでもありません。大綱によれば、平成27年度の脳・心臓疾患の死亡者数は2万7,000人余りで、このうち、60歳以上の割合が73.3%と書かれております。そうすると、60歳以下の死亡者は27%前後と考えられるわけですが、数字にすると7,300人ぐらいになります。これに対して、労災請求件数が800件台後半となっており、9分の1程度に過ぎません。もちろん、死亡者の全部が労災ということはありませんが、労働との関連性が相当程度ある者について、どの程度労災申請がなされているのか。脳・心臓疾患で死亡したり、後遺障害が発生した場合に、労災申請の選択肢が遺族や被災者本人に十分に与えられていたのか。具体的な知識、情報、機会といったものがあったのか、調査する必要があるように思います。
また、申請しなかった事例について、例えば時間外労働時間数が発症前1か月100時間、2か月以上平均で80時間といったような、労災が申請されれば認められる可能性のあったケースがどのぐらいあったのかについて、これは、いわば生活保護における捕捉率のようなものになりますが、そういったものも調査する必要があるのではないかと思います。なかなか難しい調査ではあると思いますが、数字だけが一人歩きしているというのを、私は危惧するところです。
また、同じく大綱によれば、平成29年の自殺者数2万1,321人のうち、勤務問題が原因動機の1つと推定される自殺者数は1,991人とされています。これに対して、平成29年度の自殺の労災請求件数は221件で、わずか11%に過ぎないわけです。勤務問題が原因動機の1つと考えられる自殺について、その大部分が労災申請に至っていないのです。
過労死、過労自殺の労災申請について、日常的に相談を受けている私たちの感覚からすると、特に自殺の場合は、労災申請のハードルが高いように思われます。配偶者や家族が自殺したことで、遺族自身が大きな精神的ダメージを受けていること。特に我が国では、自殺に対するマイナスイメージが強く、近隣の人たちはもちろん、親族や子供に対しても、自殺であったことを話せていない人が多いこと。長時間労働やノルマやパワハラで苦しんでいたということは、被災者から生前聞いていたとしても、出来事の中身やパワハラについての立証が極めて困難であることなどが考えられます。
しかし、過重労働やパワハラによって、幼い子供や妻を残して自殺した者の遺族こそ、労災補償による保護が与えられるべきことは当然です。私は今後の課題として、労働との関連性が考えられる脳・心臓疾患や、自殺の遺族に対して労災申請が可能であることについて啓発をしていくことを望みます。また、労災申請をしなかったケースについて、その理由や、申請されていれば労災と認められる可能性があるケースがどの程度あったのかについて、調査をしていただくことを要望いたします。
2点目は、数値目標の実現についての方策です。白書には新旧対照表があります。例えば、週60時間以上の雇用者の割合を5%以下にするという目標について言えば、2014年の8.5%から2017年の7.7%まで、3年間でわずか0.8%しか減少しておりません。そうすると、このペースでは、あと3年で0.8%しか減少せず6.9%にとどまることになり、3.5%減少させるという目標は、半分以下の1.6%しか減少させられないことになります。国が目標を掲げることは大変重いことであり、達成するためにあらゆる努力をすることが求められていると思います。この点について、厚労省の御意見を伺いたいと思います。
また、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合について、2013年の60.7%から2017年までに80%以上にするという目標は、残念ながら2016年で56.6%であり、達成できなかったばかりか、平成25年の60.7%から逆に減少を続けています。このままでは、2022年までに80%以上にするという目標には到底おぼつかないことは明らかです。この点についても、厚労省の御意見を伺いたいと思います。
3点目は、勤務間インターバル制度の周知・導入についてです。制度の導入企業割合を2017年の1.4%から10%以上にするという目標は、大変積極的なものだと評価をいたしております。しかしながら、勤務間インターバルを導入する場合、そのインターバルの時間も大変重要であります。EU指令では11時間とされておりますが、仮にこの時間数を7時間とすると、通勤時間や最低限の生活時間を引いた睡眠時間は4時間や5時間になってしまい、かえって過労死を促進する制度にさえなりかねません。そこで、とにかく勤務間インターバルを導入すればよいというのではなく、少なくとも11時間以上というガイドラインを示して指導していくことが必要ではないかと思いますが、これについての御意見をお伺いいたします。
最後に、高齢者、障害者について、今回の大綱で、各々の特性に応じたきめ細かな配慮を行うということが書かれたことは、大変有り難いと思っております。もし、そうであるならば、認定基準にもこれを反映させる必要があるのではないでしょうか。健常者と障害者が同じ80時間、100時間という基準でいいのかどうか。誰とどのように比較するのかといった問題があり、現状では認定基準については全く考慮されていないのが実情です。
また、一度鬱病に罹患すると、再発率は50%から60%だと言われております。一度鬱病に罹患した方は、ある意味で脆弱になっているのであり、広い意味での障害者と言うこともできます。ところが、現在の精神障害の認定基準では、一度発症したことについて全く評価がされておらず、治療中だという場合には特別な出来事が必要だという、かえって厳しい基準になっているという点も、認定基準の不合理性として広く指摘されているところではあります。高齢者や障害者の配慮への一環として、この点も改善の必要があるのではないかということについて、御検討いただきたいと思います。以上です。
○黒田委員 内容的には、西垣委員と岩城委員と同種の問題です。勤務間インターバルという制度について、これはある意味では大変大事な制度だと思います。今の岩城委員の発言の中にもありましたように、EUでは11時間という形で義務付けをされています。私の今の発言の趣旨は、今回制度化された高プロ制度との関連の中で、この勤務間インターバルについて、EUにおいては日本でいう高プロに近い制度として、例えばフランスのカードルという層があります。これは基本的には管理職層なのですが、時間管理が義務付けられていない層なのです。そこに対しても、11時間のインターバルを義務付けていることを考えると、大変大きな課題があるのではないかと思うのです。
今日配布された資料1の13ページに、高プロの話がオのその他にあります。オの高プロ制度の説明の中に、健康管理等の把握をすることを義務付けているという話の下の点線の枠の中ですが、インターバル制度と、4つの選択肢を設けてそのどれかを選択的にやりなさいということを義務化しようという方針だろうと思うのです。これは、私の感覚からすると、インターバル措置を、全ての今の高プロ制度も含めて義務化していくことが必要なのではないかと思います。そういう点で、私の意見としては、新大綱の数値目標が少し低過ぎるのではないかという感じがしますので、検討をしていただければと思います。以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。それでは、一旦この辺りで切りまして、御質問のあった事項について、事務局からお答えを頂ければと思います。よろしいでしょうか。
○富田総務課長 幾つか御意見、御質問を頂きましたので、私から該当部分をお答えして、担当課長から残りの部分をお答えいたします。まず西垣委員をはじめ、他の委員からも、勤務間インターバルについては非常にたくさんの御意見を頂きました。義務化をするべきではないか、また、時間が重要ではないか、EU指令では11時間になっているのではないかといった御意見も頂いたところです。ここについては、今回の働き方改革関連法で、初めて努力義務という形で、法律上の努力義務になったということでして、これは、私どもとしても大きな前進であったのではないかと思っております。
一方で、企業での導入事例がまだ1.4%しかいない状況の中で、今後どうしていくのかということで、私どもとしては、周知をしっかりやっていくことが重要だと思いますし、その上でどのようにやっていくかは、労使を含めて議論していかなければと思っております。現在、勤務間インターバルをどのように普及していくかという検討会も行っておりますので、そういった検討会での議論、あるいは労政審での議論を、これからも深めていきたいと思っております。
それから、西垣委員から、上限時間について今回の法律で原則月45時間、年360時間といったものが入っており、徹底していただきたいということです。これについては、9月7日に上限時間の部分の省令・指針を公布しておりますが、労政審の議論の中でも、これは原則ではないかということが、特に労側委員から強く頂きました。それは、しっかりと周知をしていきたいと思っております。
それから、長時間労働を行っている事業場に対する監督指導の対象が月時間外労働100時間超から80時間超に拡大をしたということについて、100時間に戻すことはないのかということでした。私どもとしては、現時点においてそれを変更することは考えていないところです。
また、労働時間の適正化のガイドラインについて、労働時間の把握が重要というのは、おっしゃるとおりです。今回の法律改正の中でも、一般の労働者のみならず、管理監督者等も含めて把握しなければいけないのではないかということについても、安全衛生法等で把握も強化をしたところです。それについては、実際に運用できるかどうかもありますので、私どもとしても、しっかりと指導していきたいと考えております。
企業名公表制度についても御意見がありました。現在、法違反があった所、それから過労死に係る労災認定を行ったような所について、一定のルールの下に企業名公表制度を行っているわけです。これについては、個人情報の保護等の観点あるいは監督指導が円滑に行えるという観点から、現在のような取組を行っているわけです。御意見は御意見として受け止めながら、今後について適正にやるように、引き続き私どもとしても進めていきたいと思っております。
若者対策の強化についても御質問がありました。使い捨て企業について、どのような把握をやっているのかということです。これについては、ハローワーク等に寄せられた情報を端緒に、例えば離職率が極端に高い事業所等に対して、労働基準監督署において、長時間労働の抑制や過重労働の健康障害防止等のために、現在指導を実施中ですので、これからも引き続き徹底を図ってまいりたいと思っております。
それから、寺西委員から、職場のハラスメントについてもう少し深く分析をしていくべきではないかということでした。それについては御意見と受け止め、今後、次年度以降の調査分析をどうしていくかについては、この中でもう少し検討していきたいと考えております。
岩城委員からの労災の件は、担当課長から申し上げさせていただきたいと思います。数値目標の関係で、目標が全然達成できていないような状況があるのではないかということです。これについては、確かに達成できていないような状況もありますので、そこについては私どもとしても真剣に検証して、今後目標達成ができるように施策を進めていきたいと思っております。EU指令の勤務間インターバルについては、先ほどお答えしたとおりです。黒田委員からも勤務間インターバルの御意見でしたので、先ほどお答えしたとおりです。
○荻原補償課長 岩城委員からの御指摘で、脳・心臓疾患について余り請求が出ていないのではないか、あるいは自殺について、職場のことに関係するのに余り請求が出ていないということでした。これは、非常に微妙なことであることは間違いないと思っています。労災保険も、死亡の場合は時効が5年ということになっており、お亡くなりになって1年を経過した後に請求が出てくるとか、納骨した後に請求が出てくるなど、非常に微妙なところになっております。八野委員からも、どこまで周知されているのかというご指摘がありましたが、私どもの行政として周知徹底を図るということが最大限やらなくてはいけないところかと思っております。加えて、どういう形で把握をするかというのは、これは個人情報の問題や御遺族の御意向などの問題がありますので、今後どういう形で把握できるかも検討してまいりたいと思っております。
もう1つは、現在の脳・心臓疾患及び精神障害の労災の認定基準については、過労死弁護団からも認定基準の見直しをするべきではないかという御要望も頂いているところです。特に、高齢者、障害者の対応はどうかという質問を頂いております。現時点において、認定基準については、有識者による検討会の医学的な専門家による検討報告に基づいて策定されていると認識しています。頂いた御要望については、医学的な面、法制的な面、実務面から、現在精査をしているところです。その辺りの結果が出ましたら、また御報告を差し上げたいと思っております。以上です。
○神ノ田労働衛生課長 岩城委員から、メンタルヘルス対策の取組が進んでいないという御質問がありました。資料1の3ページを御覧ください。中ほどにグラフがあります。事業所規模別に、どれぐらい取り組んでいるかをまとめております。御覧いただければ分かりますとおり、100人以上の所については95%を超えており、かなりの事業所において、メンタルヘルスケアにしっかりと取り組んでいただいているという状況です。ただ、特にストレスチェック制度を義務付けられていない50人未満の事業所は、かなり低くなっております。事業所の数でいきますと、ここが非常に多いもので、ここに引っ張られて、経年的に見ると低くなってしまっていると理解しています。
対策ですが、小規模の事業所をしっかり支援していくことが重要だと考えております。予算においても、助成金を拡充したり、あるいは専門家による相談対応、教育研修も充実していきたいと思っております。それから、メンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」というものを開設しておりまして、そこに取組の事例などをしっかり紹介するなどして、特に小規模の事業所のメンタルヘルス対策のてこ入れをして、数値目標としては80%以上という結構高い目標だとは思いますが、小規模の事業所を引き上げることで何とか達成していきたいと考えております。
○小城企画官 西垣委員から質問を頂きました資料1の14ページにありますIT企業のアンケートの回収率の低さについて、どう認識するかです。回収率については、このアンケート調査については強制力もないことから、私どもは日頃からの課題として認識しているところです。特に、ITについては約1割となっております。実施した対象事業場の規模についても、50人未満が過半数というような状況にあり、いわゆる小規模事業所が多かったこともあって、なかなか回答が得られなかったところがあります。
アンケート調査については、毎年各業種を対象に実施しておりますが、平均すると大体2割ぐらいの回収率になっております。ただ、見ていただきますと、教職員については教育委員会とか、あるいは関係する労働組合団体にも御協力をお願いして回収率を高めるように取り組んだところで、関係団体等にもいろいろと働き掛けながら取り組んでおりますが、ITについては非常に低調な状態になったということです。建設業やメディアについても、同じように回収率がなかなか高まらないということで、委託業者が調査をしておりますが、再三の督促もさせていただきながら回収率を高めるようにしております。ただ、実際には強制力のないアンケートですので、苦慮しているのが現状です。我々としても、回収率は課題として考えて取り組んでいきたいと思っております。
○岩村会長 文部科学省の方が到着されましたので、御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
○文部科学省初等中等教育局鞠子財務課長補佐 よろしくお願いいたします。文部科学省です。到着が大変遅くなりまして申し訳ございませんでした。ただいま、こちらの会議と全く同じ時間で中央教育審議会の初等中等教育分科会が開催されており、そちらで、学校における働き方改革が議題となっておりまして、そちらを中座して参りました。課長は引き続き中教審の対応をしておりますので、私から御説明させていただきます。
お手元の資料7-1から御説明いたします。教員の勤務実態調査で、昨年4月に速報値を出しておりましたが、その後、詳細な分析をしましたので御報告させていただきます。まず、1ページ目です。一番上は、教員の平均的な勤務の状況です。小学校で言えば、7時半に出勤して19時1分に退勤しているというのが平均的な姿で、中学校では7時27分に出勤して19時19分に退勤しているというのが平均的な姿でした。教員につきましては、11時間程度というのが平均的な勤務時間となっておりまして、夜残っているということもありますが、一方で朝が非常に早いというところに特徴があります。
その下、お一人お一人の勤務時間の長短が、個人の属性によるものか学校の属性によるものかを分析しましたところ、小学校では30%程度、中学校では20%程度が、どの学校に勤めているかによる違いという結果になっています。
2ページ目を御覧ください。個人単位の分析です。下のほうに回帰分析の結果をお示していますが、1%の水準で有意のものを特に挙げているのが上の枠囲みです。小・中学校ともに、例えば年齢が若いと勤務時間が長くなる傾向がある。以下同じですが、担任学級児童生徒数が多い、6歳未満の子供がいない、主任を務めている、あるいは、校務分掌数が多いといったような教諭の勤務時間が長い傾向にあります。
続きまして、3ページ目は学校単位での分析です。小学校では教員1人当たりの児童数が多いとか、それから先ほど見ていただいたとおり、個人の属性が教員集団に与えている影響としまして、例えば子供がいない教諭が多いとか、平均年齢が若いといったようなものがあります。また、中学校では、教員1人当たりの生徒数が多いとか、部活動顧問の割合が高いといったものが出ています。
4ページ目は勤務時間です。1週間当たりの学内の勤務時間が60時間を超えている方と超えていない方の2つのグループで、どこの差が大きいのかを分析したものです。小学校では授業準備、学校行事、成績処理でして、中学校では部活動、授業準備、学校行事、学年・学級経営等で差が出ているということです。
5ページ目は、そういった分析を踏まえ、前回の調査は平成18年に行いましたが、それと比べて学内勤務時間が増加した理由を分析したものです。1つ目は若年教員の増加で、小学校では30歳以下の先生が10%以上増えていることが御覧いただけると思います。2つ目は総授業時数の増加です。小学校高学年では平成20年の指導要領の改訂がありまして、コマが増えてきたことが大きいと考えられます。最後に部活動です。中学校による部活動は非常に増えています。これは部活動自体の増加というよりも、部活動に立ち合う時間が増えているというものです。特に休日、土日の部活動に関する時間の増に結び付いているのではないかと考えられます。
最後に6ページです。これは、校内のインフラという観点で、コピー機や印刷機、実物投影機といったインフラの整備が進んでいる学校ほど、教員の学内勤務時間が短い傾向にあることをお示ししたものです。
そういった分析も踏まえまして、7ページは、文部科学省として学校における働き方改革を進めるために、来年度概算要求しております内容を付けています。大きく3つの柱です。1つ目が、学校指導・運営体制の効果的な強化・充実としまして、教員の増です。一番上に書いてありますとおり、小学校の専科指導の充実に1,000人増を含め、合計で2,615人の改善を要求しています。2点目は、教員以外の専門スタッフ・外部人材の活用です。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどに加えまして、スクール・サポート・スタッフ、これは印刷などの補助をしていただく方、あるいは、中学校の部活動指導員、こちらについては今年度から予算措置をしていますが、これについても増要求をしていきたいということです。一番下は、学校の担うべき業務の効率化及び精選ということで、学校現場の業務改善等のアドバイザー派遣等に取り組んでまいりたいと考えています。
その後は参考資料です。本日は平成30年度の取組についてということでしたが、前回、当省の取組についてお話させていただいたのは、昨年末の緊急対策まででしたので、その後の取組を参考資料として添付しています。緊急対策の内容や各教育委員会で取り組んでいただくべき内容につきまして、本年2月付けで通知を発出しています。また、その取組状況を教育委員会向けに調査したものがありまして、それを参考資料として付けていますので、御参照いただきたいと思います。
続きまして、資料7-2を御覧ください。現在、中央教育審議会で検討されています学校における働き方改革に関する答申の骨子案です。まず1.ですが、はじめに、学校における働き方改革の目的などについて触れていきます。2.は、学校における働き方改革の実現に向けた方向性を示しています。先ほど申し上げました教員勤務実態調査の結果等に触れた上で、検討の視点としまして5点、これまで中教審で検討いただいたものを並べています。3.からがその具体的な内容です。
3.は、勤務時間管理の徹底と勤務時間・健康管理を意識した働き方の促進ということで、まず現状の制度を述べ、それから、何よりもまず今般の労働安全衛生法の改正を踏まえた勤務時間管理の徹底を記載した上で、勤務時間の上限に関するガイドラインを策定することになっていますので、それを踏まえた実効性確保のための工夫等について記載するということです。その後で、登下校時間の設定、学校閉庁日の設定等、適正な勤務時間の設定に触れてはどうかということです。
次のページは労働安全衛生管理の徹底です。これにつきましては、現状と課題について記載した後に、学校の労働安全衛生管理の充実のための方策としまして、法令上の義務がまだ必ずしも周知徹底されていない現状がありますので、それをしっかりやっていく、小規模校も含めたストレスチェックを実施していくといったようなことに触れてはどうかということです。さらに、教職員一人一人の働き方に関する意識改革としまして、人事評価や学校評価において働き方改革をきちんと考えていくということです。
4.は、学校及び教師の担う業務の明確化・適正化ということです。業務の担い手の学校・教師以外への積極的な移行、教師の業務負担軽減、慣習的業務の廃止といった基本的考えを述べた上で、これを着実に実行するための取組としまして、何よりも文部科学省がきちんと取り組むべき方策、文部科学省でなくてはできないことをしっかりと明記すべきという御意見を委員の皆様から頂いておりまして、このようなことを書いていきたいということで、具体的には、教師の担うべき役割は何かを文部科学省として明確に示すなど、社会と学校のバッファーとしての役割を果たすこと、実態の把握の公表を進めることできちんと仕組みを構築していくことなどについて記載してはどうかということです。
また、文部科学省内で新たに学校に業務を付加しようとする際の調整体制の徹底ということですが、こちらについては補足させていただきます。私の所属は文部科学省の初等中等教育局財務課という部署なのですが、前回まではこちらの会議には初等中等教育局の初等中等教育企画課という部署の者が参加していました。これまで文部科学省では、こういった働き方改革に関する業務は大きく3つの課に分かれていたのですが、それをこの10月に組織再編し、財務課という部署に統一させていただきました。今後、文部科学省が学校現場に業務を付加するようなことを考える場合には、財務課ときちんと調整をした上で、施策を打ち出していくことを徹底したいと考えています。また、教育委員会が取り組むべき方策としまして、本年2月付けの、先ほど述べた通知等について触れていくということです。
次のページは、各学校の取り組むべき方策です。校長による大胆な業務削減ということで、夏季休業中のプール指導などを具体的に書いていくということです。その後で、これまで学校教師が担ってきた代表的な業務の在り方に関する考え方として、以下14項目を書いてありますが、これらについて記述を深めていくということです。また、作成する計画の見直しや教育課程の編成・実施、業務の明確化・適正化による教師の勤務時間の縮減の目安等についても提示していくということです。
5.は、学校の組織運営体制の在り方です。学校は鍋蓋型組織だと言われています。そういった組織を、より効果的な組織として働き方を見直していくために、副校長・教頭の負担軽減やミドルリーダーによる若手支援、事務職員の活躍等を促していくべきだという議論がされています。
次のページの6.は、教師の勤務の在り方を踏まえた勤務時間制度ですが、こちらについては、まだ中教審でも方向性がきちんと定まっていません。今、議論が行われているところを項目として挙げています。給特法の今後の在り方について、1年単位の変形労働時間制について、その他中長期的な検討事項についてが議題となっています。
7.は、学校における働き方改革の実現に向けた環境整備として、先ほど申し上げたような予算的措置等の必要性についても書いています。8.は、学校における働き方改革の確実な実施とフォローアップ等ということで、こういった働き方改革の取組を一過性のものとしないためにPDCAをしっかり回していくということを書いてはどうかという話です。
以上、説明が多岐にわたりましたけれども、学校における働き方改革を進めるためには、こういった様々な取組を組み合わせて総合的に取り組んで行くことが重要と考えています。文部科学省としても、中央教育審議会の議論を踏まえながら取組を進めてまいりたいと考えています。
○岩村会長 先ほど、寺西委員が御発言ということでしたので、どうぞ。
○寺西委員 家族の会の寺西です。文部科学省から多岐にわたって御報告いただきましてありがとうございます。家族の会では、教職員の過労死・過労自死の遺族が多いことから、これまで昨年からの中教審を傍聴し、文部科学省へ教師の働き方改善の要請も行ってきました。今回の白書では、旧大綱に記載されている重点業種の中で、教職員関係の調査・分析の結果が大変充実した詳細なものを掲載していただいたこと、また、資料編においても中教審の中間まとめなどが掲載されていること、文部科学省、総務省などの協議会への御参加を頂いたことで、教職員の長時間過重労働と労働時間の適正把握がなされていないなどの実態が明らかになりました。協議会の白書の意義を感じているところであります。これには厚生労働省の事務局の皆様方にもお力添えいただきましてありがとうございます。
私たちは全ての職場から過労死をなくしたいと考えています。この国際的比較で、日本の教師は最も長時間労働と示されました。労働時間の適正把握がなされていないのは、やはり残業代が適正に支給されていないことが問題と考えています。教師は、50年も前にできた給特法によって、残業命令ができない、時間外労働手当が出ないという働き方をされています。こうした定時の時間以外の労働は自主的な労働とされ、過労死の被災者にとっても大変な問題であります。労務管理意識もなくなった現場は、長時間労働を際限なく生んでいるというのが実情であると考えています。こうした劣悪な職場環境で良い教育ができるのでしょうかと問いたいです。過労死は喫緊の課題なので、公務職場も民間も過労死等防止対策推進法に則って、大綱が示す重点施策に取り組んでいただきたいと考えています。この給特法、50年前の法律なので、先ほども給特法の今後の在り方について御報告いただきましたが、是非、ここについては改善をしていただきたいということをお願いしたいと思います。
○岩村会長 ありがとうございます。次に、前川委員、それから村上委員という順でお願いします。
○前川委員 東北家族の会の前川です。寺西委員からも御意見をお伺いしたのですけれども、今回の大変詳しい調査内容を深く感謝しています。私は主人が大学の教員であり、この中には小学校・中学校の先生に関する記述はあるのですけれども、高校・大学の先生に関しての記述は全然ない。今、大学も、高校もそうですけれども、大変厳しい状況にあり、特に任期制など様々な雇用形態が導入されていることで、多くの講師・教員・職員が追い詰められた状況にあるということを意見として申し上げて、高校や大学の問題も過労死協議会の中で取り上げていただきたいと深く要望いたします。
それから、今回の教育改革に関してなのですが、先日の中教審での変形労働制の導入検討ということが、今の御報告の内容にもあったと思います。これは労働時間の把握という点では非常に危険を伴うものであり、過重労働につながる危険性があると、当事者一同は深く危惧しております。この点について再度、できれば導入を見直すなど、そういうことを検討していただきたいと考えております。もちろん、給特法の見直しを含めた検討についても、当事者として深く要望させていただきます。
それから、最初に立ち戻って申し訳ないのですが、国家公務員・地方公務員の問題に関して1つ意見を言わせていただきたいと思います。それぞれに御報告いただいた内容で、女性活躍、ワークライフバランスの検討という、たくさんの委員会が立ち上がっていて検討されていると思うのですけれども、女性を含めたハンディのある人たちをどう登用し活用していくかということが、これからの日本の労働の世界でとても重要になってくる点だと考えています。今、国家公務員の皆さんの中でも、3割を超える人を採用するようにということで促進されているようなのですが、女性の割合を増やし、更に育休や介護休暇など、女性にかかわらず休めて補い合えるという労働の形を、是非皆様で検討していただきたいと考えています。
○岩村会長 ありがとうございました。
○村上委員 1点質問と、1点要望です。質問は、今、寺西委員と前川委員が御指摘された教職員の問題について、文部科学省の方にお伺いしたいと思います。今回の白書の中では、皆さん御指摘のように教職員の問題は大変充実した分析が紹介されていまして、残業の理由としては、自分が行わなければならない業務が多いという回答が7割もありますし、また、ストレスの要因としても、長時間勤務の多さが最も多く、4割強ということが指摘されています。こうした中では、先ほどの資料7-1や7-2で掲げていただいているような施策を、着実に前進させていただきたいと考えています。質問は1点で、資料7-2で御紹介いただきました中教審特別部会の中での議論についてです。給特法の見直しではなく、1年単位の変形労働時間制を中心に議論されていると承知していますが、1年単位の変形労働時間制が、教職員の過重労働防止としてどのような効果があると期待しているのかについてお伺いしたいと思います。
2点目は要望です。先ほど岩城委員が指摘された高齢者の問題です。今回、大綱に高年齢労働者の過労死防止対策も重要ということを掲げられていますし、また、65歳を超えて働く方も増えている中では、まず、過労死認定の基準も若年労働者と同じでよいのかということについては、医学的見地からも更に検証を進めていただくことが必要ではないかと思っております。もう1つ手前の段階で、高齢者の労災防止も、事故防止の対策などについては掲げられていますけれども、安全に健康に働き続けられる環境を作るための高齢労働者の健康管理のガイドラインなどについても御検討いただく必要があるのではないかと思っていますので、1点要望いたします。
○岩村会長 ありがとうございます。では、文部科学省からお答えいただきたいと思います。
○文部科学省初等中等教育局鞠子財務課長補佐 様々な御指摘を頂きましてありがとうございました。まず、寺西委員から御発言がありましたけれども、正に全国過労死を考える家族の会の皆様からの要望等も踏まえまして、実際に中教審の議論でも、そちらの要望を配布させていただいた上で御議論いただいているところです。やはり勤務時間の把握がされていない現状があるということは、何よりもまず改善していかなければならない現状だと思っていますし、それをまず答申の骨子案でも最初の所に書いてはどうかという議論が今なされているところです。
前川委員から御指摘がありました高校・大学についてもということですが、申し訳ありませんが、こちらの調査につきましては、義務教育の関係で中学校・小学校を中心に行っていた調査です。一方で、高校・大学についても、いろいろと制度が違う部分がありますが、高校・大学の先生方につきましても過労といったような状況が好ましくないというのは当然でして、そういったことを生まないように文部科学省として取組を進めていきたいと考えています。
寺西委員、前川委員からも御指摘がありました点、また、村上委員から御質問いただいた点に共通することもありますが、現在、制度に関して、資料7-2の6.でお話した点につきましては、中教審でまだ検討中の状況です。ただ、先ほど御質問がありました1年単位の変形労働時間制につきましては、これを決して切り札として考えているわけではありません。これをすれば全てが解決するなどという議論は、中教審では全くされておりません。中教審で議論されているのは、実際に学校の先生方は学期中はどうしても業務が非常に忙しい部分がある一方で、夏休み中というのは工夫や改善の余地があるのではないかということが言われています。そういった中で、先生方に少なくとも夏休み等にきちんと休みを取っていただくために、こういったことをしてはどうかというような議論がなされているところです。ただ、いずれにせよ、まだ議論の最中でして、まさに本日それぞれの委員の皆様から頂いたような意見も中教審の場では出ていますので、そういったところも踏まえて、最終的に中教審の場で御議論いただきたいと考えています。私からは以上です。
○岩村会長 それでは、佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 全国中央会の佐久間です。先ほどの議論に戻って申し訳ないのですが、資料7-1の13ページに、インターバル制度の関係が出ていましたけれども、インターバルの時間というのは本当に重要だと思います。今回の過労死等の大綱でも、1つの目安としての目標の導入率や認知率というのが出てきました。高プロのほうでも、11時間を1つのめどとして、対象業務等々はまだまだ議論があると思いますが、このような数字が入ってきたわけです。また、勤務間インターバルの導入コース、時間外労働等の改善助成金、こちらも9時間以上から11時間又は11時間以上という助成金の制度ができています。こちらのほうも、インターバルを普及する観点からも、平成31年度予算等々につきましても足りなくなるといったことがないよう、是非お願いしたいと考えています。
それから、14ページに先ほど西垣委員からも出ましたITの回答率について、私も随分低いと実感として思っています。対象の企業が、なかなか答えにくいところに調査をおこなっているのか、また、労働者の回答を見ても6.1%の回答しかないのです。ですから、本当にもうこんな回答している時間もないという勤務形態にあるから出てきているのかもしれません。是非、回答をもっといただけるような企業に向けるように、例えばITコーディネーター協会というのがありますので、そちらを活用して調査・協力していただくなど、調査対象を検討することもやってみるのもよいのではないかと考えています。
あと2点ほどあります。21ページに、労働行政機関等における対策というのがあります。限られた人数、また、本当にお忙しい中で、労働基準監督署も現状の体制のなかで業務をやっていただいていると思います。働き方改革推進支援センターでは、今、36協定も未届事業者への相談・指導体制を充実していただいていまして、網の目のような施策を展開し実施いただいていると思うのですけれども、労働時間相談支援班とか調査指導班を設けていただき、限られた人数の中でやっていただいていると存じます。また、働き方改革推進支援センターでも企業に訪問する機会を設けていただくなどをやっていると思います。労働基準監督署では、どちらかと言うと“待ち”になってしまうということがありますので、お互いの連携と書かれているものを、より効率的に、訪問をする所、待って直接電話などで連絡をして訪問いただくなど、そういう区分けも検討いただくことが必要なのではないかと思います。これも働き方改革が進んできて、どのように実効性があるのかを検証していくと思いますので、そちらのほうも検討をお願いしたいと思います。
最後は、資料1の22ページの所で質問させていただきたいと思います。第1節、労働行政機関等における対策の1、(1)で、長時間労働が行われている事業場への監督指導の対象をうんぬんとありますが、これは80時間に事業場を拡大するわけですが、36協定の届出だけではなくて、隠れている事業所もあると思いますが、実際にどういう形の把握をして監督指導を行うか。労働者からの指摘があったという形のものだけではなくて、他に収集する方法があるのかどうか、そちらについて教えていただきたいと思います。
○岩村会長 ありがとうございます。最後が御質問だったと思いますが、いかがでしょうか。
○富田総務課長 御質問が1つありましたので。月80時間超の時間外労働の事業場の把握についてですが、1つは、佐久間委員の御指摘のとおり、労働者からの相談等で発覚するというのがあります。それから、36協定を実際に見てみて、高い所を発見するという契機もありますし、それから、インターネット等で求人情報などいろいろと出ているものがありますので、そこで高い所があるとか、そういうことで発見する端緒もあるということです。
○岩村会長 よろしゅうございましょうか。では、川人委員。
○川人委員 議事も最後に近付いてきましたので、確認のためにお願いします。調査の一層の強化ということで、概算要求もされ、現在も既に実施されていると思いますが、是非検討をお願いしたいのは、高齢者の労働については、特に警備業界が多いわけでして、これまで、IT業界その他それぞれ業界ごとの調査が行われてきましたが、警備業界に関する調査を過労死防止との関係で行い、高齢者労働に関する過労死防止、過労性疾患の防止の検討をしていただきたいということが1点です。
2点目に、同じく調査の関係ですが、ダブルワークと言われる問題があります。つまり、2つ以上の複数の職場で働いている方の問題についてですが、これに関する調査も是非お願いしたいと思います。現在の扱いでは、例えばAという会社で月150時間働き、Bという会社で150時間働いた場合は、合計300時間働くのですが、労災認定は合算しては計算しないということで、労働時間は150時間としか見ないという、そういう実務の扱いになっています。10年以上前はそうではなかったのですが、現在はそういう扱いを労働行政が行っています。御存じのように、ダブルワークをめぐっては様々な議論が行われていますが、労災認定をするかしないかにかかわらず、少なくとも過労死防止という観点から言えば、2つの会社で足して300時間働いて、それが過労によって倒れたという場合は、これはこの過労死防止法の趣旨からいって、絶対にそれはあってはならないことだと思うのです。そういう意味では、ダブルワークに関する調査についても、今後の重要な課題として御検討いただきたいということであります。
併せて、ダブルワークの中には、Aという会社が子会社としてBという会社を作って、同じ職場、同じビルの中で働いているという場合もあるわけで、こういうものが果たしてダブルワークとして労働時間を切り離せるものかというような実態の会社もあります。本日冒頭で申しました運送会社につきましても、そういう例の1つだと思っているのです。いずれにしましても、ダブルワークに関しては重要な社会的な議論がありますので、調査について是非、今年度、更に来年度以降お願いしたいと思います。
○岩村会長 ありがとうございます。御要望ということだろうと思います。余り時間がございませんので、今お二人が手を挙げられたので、そこまでということにさせていただきたいと思います。まず、木下委員、それから西垣委員ということでお願いします。
○木下委員 働き方改革の関係で、高度プロフェッショナル制度については今回の白書にも触れられており、それから、もちろん36協定の上限規制というのは過労死の防止の対策として積極的に取り上げられていますが、今回、3か月単位のフレックスタイム制というものが新しくできました。これについては、全く白書の中にも記載がないのですけれども、実は過労死防止の点から言うと、非常に懸念すべき点があると思います。新しい働き方パンフレットの中でも、長時間働く月と、所定労働時間を下回るような働き方をする月を組み合わせて、そうやって長時間働く月があれば、他の月で3か月以内で休みが多く取れますというような言い方をしていますけれども、それは果たして本当にフレックスタイム制の運用の実態として正しいのか、あるいは、それが本当に可能なのかということを考えていただきたいと思います。今のようなやり方を取れば、36協定なしで長時間労働を行える月が発生できるということを言っているだけではないかと思います。新しい制度なのですが、今まで1か月単位で回していたフレックスタイム制が3か月単位になることによる職場の影響というのは、これは是非検討していただき、今後の調査に加えていただきたいと思います。企業側から見ても、果たして3か月単位のフレックスタイム制がどのような効果があるかは全く未知数です。そういう新しい制度についての始まりからの調査も進めていただきたいと思います。
○岩村会長 ありがとうございます。
○西垣委員 先ほど、意見ないし質問をさせていただいた中で、私がお願いしました36協定の1日の時間外労働の数字をチェックしていただきたい。それをチェックすれば、インターバルを進めるのに役立つのではないかという提案ないしお願いをさせていただいたのですが、その件に関していかがでしょうか。
それから、もう1つ気になりますのは、最近、若者の中に、勤務により過労疾病の状態になってしまって、存命ではあるけれども働けない、又は生活さえやっていけないという方がたくさんいらっしゃいます。実は先ほども相談がありました。たくさんの人がその状態にあると思います。今、働く人の労働力が不足している、高齢者も障害者も外国人もという中で、体を悪くしている若者への対策というのが必要ではないかと思うのです。早急にこの過労死防止法の中の、まず調査に入れ、そして、何ができるか、体を治すこと、そして、就労指導、就労援助等を考えていただきたい。新たな提案をさせていただきます。
○岩村会長 ありがとうございます。御質問のほうは36協定の件ですが、届出の所で時間外労働をチェックしていただきたいということですけれども。
○富田総務課長 当然、36協定を受け付ける際に、その受け付けた36協定が、今回で言いますと、上限規制のものに合致しているかどうかは、しっかりとチェックさせていただくということです。確かに西垣委員がおっしゃるとおり、1日単位については法律で規制があるわけではないというのはもっともなことではありますが、それについては、引き続き、労使も含めて検討させていただきたいと思っています。
○岩村会長 これで大体、予定している時間になりましたので、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。委員の皆様におかれましては、大変活発に御議論を頂きましてありがとうございました。また、関係機関におかれましては、本日この場で出された意見を踏まえていただいて、今後、対策をしっかり行っていただくようお願いしたいと思います。
最後になりますが、次回の日程につきまして、事務局から説明してください。
○小城企画課長 次回は、今年度の取組の状況などを取りまとめます来年4月ないし5月頃に開催したいと思っています。日程等につきましては追って調整の上、事務局より御連絡を差し上げたいと思います。
○岩村会長 よろしくお願いいたします。これをもちまして、第13回過労死等防止対策推進協議会は閉会とさせていただきたいと思います。本日は、お忙しい中を活発に御議論いただきまして誠にありがとうございました。