第8回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

日時

平成30年5月22日(火) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 省議室(9階)

出席者

(委員)
入山氏、岩村氏、川﨑氏、後藤氏、武田氏、長谷川氏、守島部会長、山川氏
(ヒアリング対象者)
湯田 健一郎氏(一般社団法人クラウドソーシング協会事務局長)
平田 麻莉氏 (一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事)
(事務局)
本多総合政策・政策評価審議官、大塚調査官(労働基準局労働関係法課)、岸本雇用環境・均等局総務課長、元木雇用環境・均等局在宅労働課長、奈尾労働政策担当参事官、岡雇用環境・均等企画官、大竹企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任)
 

議題

(1)時間・空間・企業に縛られない働き方について
(雇用類似の働き方に関するヒアリング)
・一般社団法人クラウドソーシング協会事務局長
湯田 健一郎様
・一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事
平田 麻莉様
(2)その他
 

議事

 
○守島部会長 それでは、皆さん方おそろいのようですので、始めさせていただきます。ただいまから第8回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたします。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、また、ちょっと暑くなってきた中、御出席をいただき、どうもありがとうございます。
それでは、冒頭のカメラ撮りはこのぐらいにしたいと思いますので、御協力をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○守島部会長 本日は、所用により、石山委員、大竹委員、大橋委員、佐々木委員、冨山委員、御手洗委員が御欠席です。古賀委員は急遽御欠席ということで連絡がございました。川﨑委員は、ごらんのとおりテレビ会議での御出席となっております。
また、本日は、委員の皆様方のほかに、ヒアリングのために、一般社団法人クラウドソーシング協会事務局長の湯田様と、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事の平田様にお越しいただいております。
また、労働基準局労働関係法課からは、座席表では大隈課長の御出席となっておりますが、所用により大塚調査官の代理出席となります。
それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は、第1に「時間・空間・企業に縛られない働き方について」、第2に「その他」となっております。
本日の進め方ですが、まず議題1について、最初に、雇用類似の働き方に関するヒアリングのためにお越しいただいております湯田様より「クラウドソーシングの活用の広がりと課題認識」というタイトルで20分ほど御説明いただいた後、その内容について15分ほど質疑応答を行いたいと思います。
次に、同じくヒアリングのためにお越しいただいております平田様より「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中へ」というタイトルで20分ほど御説明いただいた後、その内容について15分ほど質疑応答を行いたいと思います。
引き続きまして、事務局より「雇用類似の働き方に関する検討会」でお示しした調査結果、ワーカーからのヒアリング結果について10分程度で御説明いただき、その後、今後の議論に向けてのたたき台について5分程度で御説明いただきたいと思います。
引き続きまして、議題2の「その他」ですが、議題1のヒアリングと事務局説明を踏まえて、15分ほど自由討議を行いたいと思います。
それでは、説明が長くなりましたが、議題1の湯田様からのヒアリングに移りたいと思います。湯田様、よろしくお願いいたします。
○湯田氏 御紹介いただき、ありがとうございます。今から20分ほどお時間をいただきまして、「クラウドソーシングの活用の広がりと課題認識」というテーマで「雇用類似の働き方に関する検討会」にて委員の方々と交えた意見も踏まえて御紹介ができればと思います。
(PP)
まず、クラウドソーシングの認知がまだ十分でないということもありますので、サービスの形式とどのような依頼の形式になっているのかを御案内した上で、日本におけるフリーランスの活用状況においてクラウドソーシングはどのような位置づけになっているのか、雇用類似に当たるものはどのような状況なのかをお話しします。最後に、さらなる活用に向けた課題と現行取り組んでいることも御紹介できればと思います。
(PP)
クラウドソーシングのクラウドは、ITのクラウド(雲)のほうとよく間違われるのですが、こちらのクラウドは「群衆」という意味であり、不特定多数の方々にインターネットを通じて仕事を発注するプラットフォームのことをクラウドソーシングと言っています。海外ではクラウドソーシングの定義は広く、働く分野以外に、例えば場所を貸す、ファイナンシングをするものも含めてクラウドソーシングと言っているところもあります。
(PP)
日本では、クラウドソーシングとは基本的に業務委託を発注し受注するプラットフォームとして定義づけています。業務委託の形式で依頼できるものとして、代表的なのはシステム開発やデザインなどですが、仕事を分解し納品形態を明確にすることで事務系の依頼も多く出されています。また、フィールドワークに類するもので、依頼と納品はウエブ上で行うも、業務自体はリアルな店舗を回って調査し報告書として納品するというものもあり、IT系だけではない仕事もふえてきています。
発注額でいうと、開発とクリエイティブとその他で各々3分の1ほどになっており、発注件数でいうと、ライティングやアンケートなどの比較的軽微な仕事が4割、クリエイティブ系の仕事が3割、開発系が2割、その他1割という傾向が現状です。
(PP)
クラウドソーシングのタイプを整理すると総合型と特化型があり、皆様がよく耳にするのは総合型かと思います。日本で総合型の代表的なサービスは、Crowd WorksやLancers、Job-Hubです。様々な仕事が掲載されており、開発系からクリエイティブ、アンケートなどの軽微な仕事まで掲載されているのが総合型です。
他方、特化型とは、デザインやテスティング、ライティング、翻訳など業務に特化しているものや、建築、音楽のような対象業界を絞ってサービス提供することで、比較的対象スキルの高いワーカーが集まったり、発注についても関連する知見のある方は特化型を選ぶ傾向があります。
総合型は、エントリーレベルからプロフェッショナルの方まで多くの方が登録されており、特化型は登録されている方は比較的少ないものの、継続受注される方の率も高くなるという傾向があります。
(PP)
参考までに、シェアリングエコノミーについても説明します。シェアリングエコノミーとクラウドソーシングは日本では定義を分けて運用しています。シェアリングエコノミーとは、クラウドソーシングを含む概念であり、先ほど説明した業務委託契約だけではなく、消費契約や顧問契約という形式も含めてサービスを展開しています。日本では労働関係法と業務委託に関する法律とで運用配慮すべき事項が異なり、海外のクラウドソーシングサービス事業者が提供しているサービスプラットフォームでは日本の法律に準拠し切れないということもあります。そういう意味では、日本のクラウドソーシング事業者は国内関係法に配慮し利用できるよう仕組み化してサービスを展開しているものが多くなっています。
(PP)
このクラウドソーシングにおける依頼形式は、大別して3つのタイプがあり、プロジェクト形式、コンペ形式、タスク形式と呼んでいます。
(PP)
詳細については次のページから説明しております。プロジェクト形式というのは相見積もり形式で、一般の外注に近いです。例えばホームページを制作してほしい場合は、ホームページ制作をしてくれる方はいますかとクラウドソーシングサイト上で募集をかけ、提案があったなかの1人の方に契約の指名をし、仕事を始めるというものです。提案、依頼とも無料でできますので、仕事を引き受けてくれる方がいるかまずは探すときなどにも利用されています。
(PP)
コンペ形式は、ほぼ完成されている作品を提示するタイプになります。ロゴやキャッチコピー、新店舗の名称募集などもあります。デザイン制作のようなスキルが要るものもあれば、キャッチコピーなど高いスキルがなくてもできるものもあります。完成品に近いものを一つ選んで買い取るというものですので、事業者によっては業務委託契約ではなく、著作権譲渡契約としている場合もあります。
(PP)
もう一つはタスク形式です。多くの業務を一気に多数の方に実施していただくときに活用する方式です。データ入力やデータ分類など、特定の少数の方にお願いするのではなく、たくさんの方に一気にしていただいたほうがいい場合、発注者が受注者を特に指名せず業務を進めるというものです。
例えば、犬か猫かを判別してくださいという依頼もあります。まるでゲームのような依頼内容ですが、現在、アノテーションと言われる、いわゆるAIの教科書データを作成するという業務が多くあり、もとになる画像の判別など、最初のデータを準備する仕事は人が行っています。AIスピーカーも利用に際し、「電気をつけて」だけではなくて「明かりをつけて」「ライトオン」など様々な表現がありますので、そのような多くの言い回しの登録データを作るのは、クラウドソーシングで依頼されていたりします。
このような細かい単位に分解された業務に対し、興味がある方は業務実施をし、検収されるとワーカーに報酬が払われ、検収合格しなかった場合は、また残在庫に戻り、規定量の業務が終わるまで依頼がされるというタイプがタスク形式です。特徴としては、業務実施に際し、質問しなくてもいい程度まで業務分解されて発注されているというものです。
(PP)
クラウドソーシング利用における仕事の流れについて、総合型のプロジェクト形式を例にとってお話します。左側の発注者がホームページ制作などの依頼文をクラウドソーシングサイト上に掲載し、ワーカーがそれを見てエントリーし、選定されると相互に契約となります。
契約に際し、クラウドソーシング事業者の大手の多くは、契約書のひな形を提供しています。日本では個人の方で業務委託契約を書いたことがある方は少なく、何の条項を気にすれば良いのか認識されていないことが多いのが現状です。プラットフォームにて、発注者、受注者、双方にバランスのいい契約ひな形を提供し、適切な契約ができるようにすること。また、事業者によっては電子契約を締結できるようにしており、郵送の手間もなく、また必要なときにダウンロードできるためデータをなくしたということもなくなるなど、重宝されている機能の一つです。
業務実施にあたり、例えばホームページを30万円で依頼する際、全部完成してから30万円入金というのはクラウドソーシングでは余り推奨していません。できるだけ仕事を分解することをお勧めしています。例えばホームページ制作では、最初にデザインを決めて2万円、全体の設計を決めて1万円、全部終わったら27万円払うというように、フェーズに割って仕事を依頼することにより、納品後に依頼したものと全然違ったという食い違いをなくすような仕組みも入れています。
また、仕事を依頼した後でも、どういうペースで制作する調整したり、途中で仕事の分量がふえたりする場合もあります。その際、受注者から発注者に仕事の分量がふえているので契約条件を変更して欲しいと打診する機能なども組み込んでいます。業務委託での仕事の進め方をしたことが余りない方々にとっては、プラットフォームを活用することにより安心・安全に仕事を進めていくことが可能になります。
承認・検収された後、支払いをされるということになりますが、支払いに関しては、発注者から受注者へ直接支払いがされるのではなく、一旦クラウドソーシング事業者が報酬を預かりし、受注者へ支払うという収納代行契約もしくは支払い代行契約を行っています。
先ほどのアノテーション業務の例でいうと、大量のデータ分類の仕事を100人が実施したとして、1件当たり100円の依頼という場合、振り込み手数料や事務手数料の方が上回り、そもそも依頼されなくなってしまいます。なるべく事務コストを減らすため、契約や支払いに係る工数を減らす機能もクラウドソーシングは果たしています。受注者からすると、仕事をした後、入金してほしいときに銀行口座に振り込み依頼をかけられるようにクラウドソーシングサイトに機能化されています。
また、業務終了後に相互評価をするのも特徴です。ワーカーとしても、良い発注者を見きわめるのは最初は難しいものがあり、他の受注者がその発注者をどう評価をしていたのか、可視化していくことをクラウドソーシングではやっています。逆に、受注者の評価も発注者がつけるため、受注者においてもなるべくスピーディーに返答しよう、着実に仕事をしようと意識し業務を進めることをお勧めしています。
(PP)
次に日本におけるフリーランスの活躍状況について説明します。クラウドソーシング市場はまだまだ大きくはありません。2018年予測でも1,820億円ぐらいの市場規模です。2020年には2,950億円と予測されており、市場の伸び率は高いと言えます。
(PP)
クラウドソーシングに限らず、広義のフリーランスについて見ると、日本はこの4年間で20%ほど増加しています。対して、アメリカの成長率は8.1%であるものの、広義のフリーランスの方々が既に就労人口の35%ほどとなっています。
(PP)
次のページで広義のフリーランスに含まれる種類を整理しています。副業系すきまワーカーと呼んでいる、常時ほかに雇用されていつつ、副業として業務受託している方のことです。複業系パラレルワーカーとは、雇用形態に関係なく2社以上で契約される方々を指しています。自由業系フリーワーカーは、特定の勤務先はない独立したプロフェッショナルのことで、一般的にフリーランスと言われるとこれをイメージするかと思います。4つ目は自営業系独立オーナーです。日本では、特に副業系や、パラレルワーカーと言われている、ほかに仕事は持っている方がフリーランスとしての仕事も始めるという層がふえており着目すべき点です。
(PP)
フリーランスによる経済規模は昨年度よりも9%増の20兆円規模と推計されています。
(PP)
アメリカは2027年にはフリーランスの人口が過半数になるというレポートも出ています。日本でも今の比率からはしばらくは伸びていくと推測されます。
(PP)
クラウドソーシングはインターネットを利用して仕事を受発注するものですが、ネット経由の受注比率はアメリカの59%に比べ日本は15%ほどです。インターネットを活用して仕事を受注している人よりは、縁故や直接依頼から契約している方のほうがまだ多いのが現状です。
(PP)
定常的にインターネットを活用しフリーランスとして収入を得る方は2030年には1兆円程度に、また、副業、パラレルワークも含めると10兆円程度の規模になるという予測もあります。
(PP)
一方、現在、フリーランスを活用している企業は、まだ2割程度です。その2割もほとんどは縁故による採用や、企業が直接働き手を募集しており、人材の紹介エージェントや、プラットフォーマーを活用しているのは2割程度にとどまっていると推測されます。
(PP)
しかしながら、中小企業庁の委託事業で平成26年度にクラウドソーシング導入推進事業として、クラウドソーシングの利用体験を実施したところ、参加者の75%の方がクラウドソーシングは事業の向上や改善に使えるとアンケート回答されました。今後、認知が上がることで活用は広がっていくと思われます。
(PP)
プラットフォーマーの役割や価値について、企業にヒアリングしたところ、自社では獲得が難しい人材も、プラットフォームを活用し、欲しいスキル、実績を提示すれば適当な人材が探せることが最も多くあげられます。その他、プラットフォーマー側が業務を整理してくれると良いというものや、特に大企業では、個人の方と契約を結ぶフレームが一般化されていないので、個人には仕事を発注しづらく、プラットフォーマーがBPOの一環として受けて欲しいという声も多くなっています。
(PP)
次のページから登録ワーカーの傾向を記載しています。さまざまなワーカーの方が活躍されており、定常的に報酬を得ている専業フリーランスの方の中には大企業での就業経験がある方も多く、企業における業務フローを理解し、スムーズに進められるようノウハウを生かしている方も多いです。
(PP)
また、ワーカーの中には、御自身の実績を上げるためにクラウドソーシングを利用するという、キャリア形成の目的で使われている方もいます。例えば、ウエブデザインの学校を卒業したとしても、実務経験がないと就職面接では、採用されにくいということがあり、業務実績をクラウドソーシングの中でため、エビデンスとして出せるようにするという使い方をしています。
(PP)
メディアでよく紹介されるのはこのような主婦の方です。もともとスキルはあるものの、フルタイムでの就業は難しいため、あいた時間、家でできる仕事をするというケースも多くあります。
(PP)
また、海外にいながら仕事をされるという方もいらっしゃいます。
(PP)
現在の傾向としては、フリーランスの継続年数が短い方ほどプラットフォームを使われている方が多いです。年齢的には若い方のほうが使われています。2013年あたりからクラウドソーシングの市場認知が広がったことを考えると、この傾向は変わっていくのではないかと思います。
(PP)
ワーカーの支援について、事業者それぞれ特徴をつけて行っています。福利厚生のサービスや税務・法務相談を受けられるようにしたり、キャリアアップテストや技術スキルアップの教育機関と提携して優待で利用できるもの、また、フリーランスの方で起業したい方へファイナンスの相談などもやっています。
(PP)
このようにクラウドソーシングはサービスの広がりを見せていますが、クラウドソーシングで最も重要なことは、良い仕事が適切な価格で出されているか、きちんと業務分解されていて業務委託として体をなしているかです。日本では企業において業務を細かく定義し切り出していくという文化が多くはなかったために、発注スキルが不足しているように感じます。
また、クラウドソーシングの場合、ICTを使いますので、ITリテラシーも必要になり、特に中小企業ではIT関連スキルが問題になることもあります。
(PP)
これらを解決すべく、直接発注以外に、仲介事業者を通じた発注1の活用があります。一度、仲介事業者やプラットフォーマーが受注し、業務を整理してワーカーに再発注するケースもふえています。日本のクラウドソーシング業界では、おおよそ半分の売り上げがこのパターン1の発注となっています。
パターン2となるクラウドソーシングのマッチングプラットフォームとしての利用は、事業者として十分利益を出していくには難しい段階にあります。
(PP)
今後の伸びしろを考えるに、発注者がいかにうまく業務定義をし、依頼を出せるかが重要です。クラウドソーシング協会においても、よく聞かれるトラブルをまとめ、クラウドソーシングを活用する際に気をつけるべき事項をまとめたガイドラインを作成し、利用される発注者、受注者に公開しています。
(PP)
また、クラウドソーシング優良事業者の認定も進めており、2017年より、ガイドラインのポイントを押さえて事業されている企業を優良事業者として認定し、事業者で認定マークを掲出することや、協会として公共事業への協力を行う場合は優良事業者認定を取得されている事業者を御案内することを進めています。
(PP)
本年2月に厚生労働省にて、自営型テレワークの適正な実施のためのガイドラインを策定しており、ガイドラインで仲介事業者が留意すべき事項についても言及されています。それらの情報を適切に把握し、事業者へ発信し、環境整備を進めております。
(PP)
一方で、プラットフォーマー側の整備だけでなく、各地域でクラウドソーシングの活用を適切に理解し推進していく、いわゆる活用企業に伴走して支援する方も必要になりますので、クラウドソーシング・プロデューサー制度を設け認証しています。これは2015年に中小企業庁の事業として始めたもので、現在、120超の企業・団体が認証されています。現在は当該支援事業が終了したこともあり、十分には活動できていませんが、このような機能が広がっていくことにより、適切に仕事の切り分けをし、労働者性がある業務は雇用として対応し、業務委託として実施するのであれば業務委託の仕様を固めて発注していけるよう、支援できるように進めています。
(PP)
以上、いただいたお時間となりましたので、説明を終わらせていただきます。以降のページに協会の概要を参考としてつけております。御清聴ありがとうございました。
それでは、質疑応答に移らせていただきたいと思います。ただいまの御説明について何か御質問のある方は挙手を願いたいと思います。
○後藤委員 御説明ありがとうございました。
単純な質問になってしまうかもしれませんが、2つ教えていただきたいことがございます。
1つ目は、コンペ式では、複数のワーカーが納入した成果物の中から事業者が採用するやり方というお話でしたが、採用されなかった成果物が事業者側で悪用されるような事例があったりするのかということです。
2つ目は、クラウドソーシング事業者には優良事業者認定制度を設けているというお話でしたが、クラウドソーシングで仕事を発注したことがないような事業者にとって、きちんと仕事をしてくれるであろうワーカーを見きわめるときに、プラットフォーム側でワーカーのレーティングをしていたりということはあったりするのか、その辺のところを教えていただけますか。
 
○湯田氏 御質問ありがとうございます。
まず、前段に御質問いただきましたコンペ形式の成果物の利用について、2つ分解してご説明します。
事業者側で悪用することがあるかという点ですが、問題となりうる多くは、発注者がどう運用するかになります。発注者には著作権の扱いを利用規約等で説明するようにしており、提案時点のものはまだ著作権・所有権は移転していず、報酬を支払った時点で著作権・所有権が移転すると規定しています。よって、提案はされたものの、選定しなかったものについては利用してはいけませんとの案内を各事業者ごとにガイドランの著作権留意のページで案内しています。
プラットフォーム事業者が悪用しないかという点については、各社が利用規約にて提案された作品の取り扱いについて明示しています。例えば、ワーカーが自分の実績経験としてプロフィールに表示したい場合は表示可とし、非表示にしたいものは制御できるようしています。あわせて発注者としても、自分が依頼したアイデア募集の内容を公開したくないこともあるため、依頼内容の公開や検索した際に対象とするかを選択できるようシステム化の工夫もしています。このような機能を使うことにより、公開してもいい作品なのかを切り分けできるように仕組みを整備しています。
2つ目の御質問のワーカーの選定が難しいという声は多く聞かれます。多くの場合、実績のあるワーカー、評価の高いワーカーが選ばれます。ただ、どうしても判断が難しいときは、大手の事業者などはチャットによるサポートを提供し、依頼の出し方や選定について相談できるようにしています。
また、そもそも選ぶのが難しいので、クラウドソーシング事業者のほうで選定する観点を設定して欲しいという依頼もあります。そのような依頼を有料サービスとして提供する事業者もあれば、認定ワーカー制度を設けている事業者もいます。その事業者の中で優良と思われるワーカーを選定し、選定されたワーカーは安心と表明し、優先サポートをする工夫をしている動きも始まっています。
以上、回答させていただきました。
○後藤委員 ありがとうございます。
○守島部会長 ほかに、では、入山さん。
○入山委員 早稲田大学の入山です。きょうはどうもありがとうございます。明るくない分野だったので大変わかりやすい説明でとても参考になりました。ありがとうございます。
私、幾つか質問があるのですが、なるべくコンパクトにします。
1点目は、課題にやはり関心があります。39ページに5点挙げていただいています。特に今回は発注スキルの不足の御説明をいただきましたが、できたらもう少し踏み込んで、今後、クラウドソーシングが日本で進んでいく上で湯田さんが思われている課題を教えていただきたくて、例えばこの5つの課題というのは、クラウドソーシングは私も進めるべきだと思いますが、進めるべきもの前提で、ITリテラシーや企業側のスキルとか、比較的スキルが追いついていないという発想の課題が多いと思います。それに対して、例えばクラウドソーシングそのものが従来の働き方と比べて根本的に持っている課題みたいなものがあるのか知りたいというのが1点目です。
2点目は簡単な質問です。先ほどアメリカはこれから2027年に向けて過半数以上がフリーランスという話を伺ったのですが、アメリカは当然ながら雇用の流動性が高いので、日本が見るときはヨーロッパの国を見るというのも参考になるのかなと思います。例えばドイツとか、そういった欧州の国でのフリーランスの状況をもし御存じなら教えていただきたいというのが2点目です。
3点目は、この基本部会の第1回で冨山和彦さんがいらっしゃったときにおっしゃって、なるほどと思ったのですが、東京と地方で物事を見ていると全然発想が違っていて、こういったものの使われ方も全然違うのではないかと思います。私もどうしても東京にいて東京視点なので、地方での使われ方、地方の企業や地方のフリーランスの方と大都市で働いている方でかなり違う気もします。その辺、違いがあるのか、特に地方の方の使い方を教えていただきたいというのが3点目です。
多くて申しわけないのですが、最後が、大きな情報として興味があるのが、結局こういうサービスを使うことでフリーランス側の方の所得にどういう影響を与えるのか。当然、働き方は自由になると思いますが、結果的に所得が大幅に、例えば下がることがあるのか、それとも競争力がある人にとっては所得が意外と上がることがあるのか、あるいは働き方が自由になることで競争力がついて結果的に従来の働き方より収入的に豊かになる方がどのくらいいるのか、もし御存じなら教えていただきたいと思います。
○湯田氏 まず、1点目の課題について、根本的なところという意味では、今までこのよな働き方が認知されていないということだと思います。人を採用したいと企業が思うと求人広告かハローワークに登録する。クラウドソーシングでも人材活用ができることを知らない。一方、働く側も、自分の働き方が個人事業主として業務委託を受託しているのだと認識していないワーカーもいたりします。業務受託という働き方という認識よりも、収入の得方というぐらいにしか思っていない。働き方の種類や形式についての多様化の認識が、日本ではまだ進んでいないことをふまえ、より発信することが必要だと思います。
昨今、クラウドソーシングは安価で、在宅ワーカーとして軽微な仕事からでも始められるという紹介が報道で多く見受けられますが、海外ではプロフェッショナルなフリーランスの活躍フィールドと認識されています。競争倍率もコンペ形式ですと30倍、50倍になったりもします。スキルのある方が使うクラウドソーシングの面と、社会参画したい社会とつながりたいという要望で利用される面が混濁して話されているので、そこを分けて課題整理しないと打ち手が見えてこないと思います。
2点目の海外はどうなっているかという点ですが。
○入山委員 特にヨーロッパとかです。
○湯田氏 ヨーロッパについては、以前、EUの方々と意見交換した際に、日本においては、フリーランスといっても副業やパラレルワーカーが多いという点に注目されていました。ヨーロッパでは100%フリーランスにあたる自営業や自由業型の認識が多く、施策検討の中でも、保険をどうするか、収入途絶したときにどういうサポートをするかを主に考えるのですが、日本では主となる仕事を持ちつつ副業としてフリーランスもしている方が割合として多いため、施策の立て方が異なってくるということが意見交換の中で出てきました。
ドイツ、アメリカを見たときも、シェアリングエコノミーの広がりをひろくとらえて話がされています。業務委託だから雇用系だからという分け方で話がされているより、どのように収入を得る手段があるかを見ているという違いも感じます。
シェアリングエコノミーの活用例として、ウーバーがよくとりあげられますが、アメリカの調査で、ウーバーを利用し1年後も使い続けている人は3%ほどというレポートが先般ありました。仕事の仕方を選択しずっと続けていくというよりは、つなぎ労働として自分のチャンスをいろいろ当たってみるという使い方がされていると言えます。クラウドソーシング利用においても、10年、20年使い続けるというよりは、多様な働き方の選択肢のひとつとして使われるという観点がシェアリングエコノミー全般と同様にあると思います。ただ、100%フリーランスとしての働き方の見方はヨーロッパと日本では違うところがあると思っています。
3点目の地方での使い方という点ですが、クラウドソーシングにて発注している企業は東京が多いのですが、受注しているワーカーは地方の方が多いです。地方にいたとしても自分のスキルを生かしていろんな仕事ができます。仕事の100%をクラウドソーシングでやらないとしても、持てるスキルを生かし、部分的にでも受託をしていくことで、可能性を生かしているという事例も多くあります。
○入山委員 途中で遮って申しわけないですが、逆に言うと、地方の中小企業などで当然人材不足のところがこういったサービスを使うというのはすごく可能性があると思いますが、そこはこれからだという理解ですか。
○湯田氏 現時点でもよく使われています。特に中小企業は、雇用したいものの、人がいないということが多く、クラウドソーシングのような人材活用手法を知れば、どんどん活用が進むといえます。私の父も事業をしており、74歳になるのですが、クラウドソーシングで発注することによって、いろいろな事業を展開することもできると一度認知した後、折に触れ発注をしています。地方の企業ほど利用価値があるといえます。
企業向けアンケートにおける興味深いデータとして、地方の企業は、価格が安いからクラウドソーシングを使うのではなく品質が高いから使うという回答傾向がありました。首都圏企業とは異なる傾向です。コストコントロールしたいというより、いろんな方の力をかりたいという要望が強いと思います。
最後に、所得がふえるかについては、データのとり方を今後検討しなければならないと思います。現在の調査では、フリーランスの方は所得が低いように見えがちです。100万とか300万とあったりします。しかし、調査のとり方として、収入なのか売り上げなのかなど設問表現でフリーランスの方は答え方が大分違います。経費を差し引いた利益で、150万というと、それなりにプラスという見方になります。データを取る際の定義を整理して個人事業主の方々に聞かないといけないと思います。
ただ、次の平田様のお話にもあるかもしれませんが、フリーランスの方は金銭報酬を第一に考えていらっしゃるよりは、環境報酬、いわゆる自分でやりたいことができる、時間をコントロールできるなどの重視傾向があります。よって、金銭報酬だけを物差しにするわけではないという観点と、金銭報酬で把握していく場合でも、メインの仕事があるのか、また、その方が世帯主で収入途絶してはいけない状態にあるのかという点も把握した上でデータを読んでいかないといけません。先ほどお話しした社会参画したい方が含まれたデータで読んでしまうと間違ってしまう可能性もあります。所得がふえるかについては、副業している方の所得が110万ほどふえているというデータが昨年出ており、ふえていくと単純に回答はできるのですが、ほかの様々な要素を加味する必要がある状況だと認識しています。
○入山委員 ありがとうございます。
○守島部会長 川﨑委員、何かございますか。
○川﨑委員 わかりやすい説明、ありがとうございました。
今後、クラウドソーシングを使った働き方がふえていくだろうと予測されていることはよくわかったのですが、これが健全に広がっていくということを考えますと、やはりトラブルをどう避けていくのかということがポイントになってくると考えます。
後段でガイドライン等の説明や、仲介事業者が介入することによってトラブルが避けられていくというお話がありましたが、現状としてこういったトラブルがどのくらいの割合で発生しているのかということと、今、仲介事業者や厚労省の設定されましたガイドライン、こういったものが活用されてどのくらいトラブルの防止に役立っているのかというところの知見等あれば御説明いただけますでしょうか。
○湯田氏 御質問ありがとうございます。
前段で御質問いただいたトラブルについてですが、トラブルのほとんどが発注する内容に起因するものです。仕事の内容が明確でない、仕事の内容に対して価格が適当ではないというものになっています。
これらに対し、クラウドソーシング事業者がどのような対応をしているかといいますと、明らかに要件が不足しており何をすればいいかわからないものについては一旦、非掲載にしたり、募集を一度停止し、発注者に内容書き加えるか内容変更してくださいという案内をサポートで行っています。
また、価格については、業務内容にいろいろなバリエーションがあるため、最低報酬のような制御金額を決めるのは難しいところがあります。明確に設定している例としては、ロゴの発注はある程度工数が見えているため、最低報酬額2万円と下限設定したりします。ホームページ制作などは依頼内容によりかなりボリュームが違うため設定は適切でなかったりします。そのような場合への対応は、違反報告という機能があり、ワーカーより連絡いただき対応しています。ワーカーがこの仕事は依頼内容のわりに価格が低いように思うと違反報告があげられ、サポートより発注者に連絡対応します。このようなワーカーからの発信を起点に整備するというのも仕組み化しているところです。
報酬がきちんと支払われるかがフリーランスにおいては気にかかる点となります。クラウドソーシングでは、発注者が仕事を依頼するときに、エスクローという前払い制のような機能を備えています。クラウドソーシングの場合、ほとんどはクレジットカード決済であり、クレジットカードの与信枠を押さえるというものです。業務開始前に報酬額相当の与信枠を押さえておき、仕事が検収されたときにクラウドソーシング事業者が決済するという仕組みです。一旦納品されたものの、内容が違ったので報酬を支払いませんなどとならないか、一度も会ったことがない発注者とのやり取りでは不安になることもあります。エスクローにより、いわゆる取りっぱぐれをなくすということも仕組み化しています。
このような仕組み化を細かく入れることにより、トラブルをなるべく減らしていくことに取り組んでおり、大手の事業者は知見を重ねているものの、まだまだ若い業界であるため、全ての事業者が対応できているわけではありません。このようなノウハウを共有する機会をクラウドソーシング協会のほうで設け、業界全体で健全活用に向けた方向や、いれるべき仕組みがわかるようにしています。
2番目に御質問いただいたのは認知についてでよいでしょうか
○川﨑委員 2つ目は、実際どのぐらいのトラブルが発生しているのか、トラブルは非常にまれなのか、それとも頻発しているというふうに判断されているのか、その辺をお伺いしたいと思いました。
○湯田氏 トラブルの認知については、サポート窓口に寄せられますが、多くはないです。ワーカーがおかしいなと思った場合、依頼にそもそも応募しません。良い発注でなければ応募反応なく、そのまま流れていくことになります。
ただ、途中で仕事のボリュームがふえたという相談はあります。トラブルというよりは、対応方法を相談したいという件数は一定値あるかと思います。トラブルや相談数を認識する仕組みや指標化は現在していないため、各事業者からヒアリングをしている状況です。
○川﨑委員 ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに、最後になりますが、どなたか、では、岩村委員。
○岩村委員 きょうは大変貴重なお話をありがとうございました。
2点ほどお伺いしたいのですが、かなり初歩的な話です。
1点目は、クラウドソーシングを利用した場合の契約の当事者というのは、発注者と仕事を受けるワーカーが直接契約という形になるのか、それとも発注者と間に入っているプラットフォームと働くワーカーの3者という形になるのか、もしかすると両方なのかもしれませんが、その辺をもし簡単に情報提供いただければというところです。
2点目は、プラットフォーマーによっては保険をオファーしているというのがありましたが、それはいろいろワーカーが考えられるリスクを包括的にカバーするようなパッケージタイプということなのか、あるいは両方あるのかもしれませんけれども、ある特定のリスク、例えば、仕事する側で一番不安なのはちゃんと料金を払ってもらえるかという不払いのリスクだろうと思いますが、そういった、あるところに絞った保険というタイプになっているのか、その辺、ちょっとでいいので概況をお話しいただければと思います。
○湯田氏 まず、契約については、先ほど説明したマッチングタイプとなる事業者が仲介するパターンの2が一般的に言うクラウドソーシングなのですが、この場合は発注者と受注者の直接契約になり、クラウドソーシング事業者は契約当事者となりません。ほとんどのクラウドソーシングサービスの利用規約にて記載されています。
一方で、1のパターンとなる一旦クラウドソーシング事業者が受けて業務を整理し再発注する、いわゆるBPOタイプもあります。この場合はクラウドソーシング事業者も契約当事者になり得ます。
保険については、ワーカーが求めている保険は所得補償が多く、損害賠償まで求められる方はまだ多くないです。他方、事業者は損害賠償についてリスクケアしたいこともあります。例えば情報が漏えいや、サイバーセキュリティーに備え保険形成したいという声かけがあり、発注者向けの提供はふえてきています。
クラウドソーシングは利用して5年後、10年後もずっと同様に使い続けているイメージよりは、比較的エントリーレベルの方の活用か、もしくはプロフェッショナルな方でフラッシュで使われるほうが多いです。そういう意味では、この後お話しされる平田様の認識とクラウドソーシング事業者の提供している保険とは少し形態も異なるということを申し添えておきます。
○岩村委員 ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、湯田様、どうも長時間ありがとうございました。最後までいてください。
では、平田様のヒアリングに移りたいと思います。平田様、よろしくお願いいたします。
○平田氏 では、時間も限られているかと思いますので、自己紹介から始めさせていただきます。フリーランス協会の平田と申します。私自身はフリーランス8年目でして、ずっとこの働き方を気に入ってやってきているのですが、昨今、フリーランスが非常にふえていることと、その課題もいろいろ浮かび上がっているというところから、昨年の1月に協会を立ち上げて活動しております。
(PP)
今、我々の開催するイベントにいらっしゃったり、メルマガで情報提供している会員が7,500名程度、有料で損害賠償保険、所得補償制度等の福利厚生を提供している会員が1,000名、賛助企業が77社という形で運営しております。
(PP)
我々の活動としましては、いろいろなスキルアップ、コミュニティー形成のためのイベントをやっていく互助の場づくり、保険、福利厚生の仕組みを提供している共助の仕組みづくり、そして、フリーランスの声を集めて、政策、自治体と連携していく公助への働きかけ、この3軸で活動しています。
(PP)
ちょうど先月「フリーランス白書」ということで実態調査を発表いたしましたので、その内容に沿ってお話しさせていただきたいと思います。
まず、フリーランスとはというところですが、我々が対象としているフリーランスというのは広義で説明しておりまして、雇用関係があるかないかということで独立系と副業系に分かれております。
独立系の中でも、経営者として法人成りしている方もいれば、個人事業主の方、開業届を出していない方というのも最近非常にふえています。
また、副業系の中でもそれぞれ副業の部分でのステータスというのは違いますので、それによって社会保障のあり方、トラブルのときの適用法というのは変わっております。
(PP)
職種というのも、昨今いろいろなプラットフォームが出てきていることもありまして、非常に多様化しております。従来では雇用関係の中でしか働きにくかったような職種でもフリーランスとして活躍する機会は非常にふえております。これは、副業の方もそうですし、専業の方でも、今までは会社員でやっていたけれども、個人でやっていこうという方がふえている背景でもあります。
(PP)
業務範囲を類型化していますが、クラウドソーシングは、今お話があったようなことですと、タスク型(スポット型)、プロジェクト型が中心だと思いますけれども、割とインディペンデント・コントラクターと言われるような方々でミッション型ということで業務範囲や期間も無限定でやっている、そういう自律した働き方というのもふえております。私自身もそういう形で、広報としていろんな会社の中に入ってお手伝いをしています。
労働者との線引きが曖昧なケースとして「雇用類似の働き方に関する検討会」の報告書でもありましたが、常駐フリーと言われるような業態が、出版業界やテレビ制作業界、アニメーション業界、従来からフリーランスが多い業界においてよく見られるというものがあります。
(PP)
白書の調査結果です。パネルは1,411名なのですが、我々の協会が比較的プロフェッショナルということをうたっている関係もありまして、回答してくださった方は、先ほどの湯田様からの発表や、本日の資料3のパネルとの違いで言うと、いわゆるデータ入力、アノテーションみたいな事務関連は比較的少なくて、割と専業で自発的にフリーランスを選んでいる方が回答者として多かったという印象です。職種の部分も何かしらの専門性を持ってやっている方が多いと思います。
(PP)
その前提でお話しさせていただきますが、まず、年収というところでお話ししますと、これは個人の売り上げではなく年収として聞いております。やはり専門性があって、もともと企業側もBtoBの取引で発注リテラシーがあるような分野の仕事は比較的年収が高く、専門性は比較的少なかったり、いわゆる労力として抱えられているような職種は年収が低いという傾向がありました。
(PP)
最も収入が得られる仕事獲得ルートを聞いていますが、非常にばらつきがあります。高収入者が多いのはエージェントサービスですとか、もともとの人脈、取引先経由での仕事ですね。全体の傾向としましても、実際、利用している割合も人脈経由という方が69.8%、現在・過去の取引先という方が57.8%、ブログやSNSを使ったセルフマーケティングの方が31.4%、クラウドソーシングは先ほど湯田さんの発表とほぼ同じで14.1%の方が使っていると回答しています。シェアリングエコノミーサービスは0.8%の方が使っていると回答していました。
(PP)
独立前に会社に所属していたことがあるかという質問では96.5%が「ある」と書いていますので、どこかしらで仕事の経験を積んで専門性を身につけて、それを糧に独立している方がほとんどと感じております。
(PP)
独立前後の変化に関してですが、働く時間は減って、収入はふえた方、減った方、それぞれ半々なのですが、満足度、スキル、人脈、生産性など向上したという方が多くて、割と自発的にフリーランスを選んでいる方は満足度が高く働いているという結果になりました。
(PP)
一方、課題もありまして、自由回答でかなり熱心にびっしりとコメントをいただいたので我々も驚いたのですが、5つに分類してお話しさせていただきます。
1つ目が政府・行政に対してというところです。産休、介護、病気などライフリスクに対するリスクヘッジの部分とか、国保・年金が会社員に比べてどうしても高いとか、そもそも今、日本の社会保障制度設計の財源が雇用保険など雇用前提になっているということが時代に合っていないのではないかというお話ですとか、高齢のフリーランスもふえてきて、今、人生100年時代と言われる中で65歳以上はほぼみんなフリーランスになるというような考え方もありますので、そういった方たちをどうサポートしていくのか、保育園の優先順位、そういったところの声がたくさん上がっていました。
参考までに申し上げますと、育児、子育てというところでは、我々別の調査で昨年末、353件の経営者、フリーランスの女性に、育休・産休、妊娠のときのトラブルとか、いろいろ聞いたのですが、経営者とフリーランスの44.8%の人が産後1カ月以内に復帰したという回答がありました。これは母体保護の観点からしても少し問題なのではないかと思っております。また、経済的なことでも、雇用関係の有無によって出産時にもらえるお金と出ていくお金に300万円の違いがあるということが明らかになっています。具体的には出産手当金、育児休業給付金、社会保険料の免除で差がついています。一億総活躍で新しい働き方を推進していくというときに、フリーランスや起業が女性の働き方として期待されていることを考えると、こういったライフリスクに関するセーフティーネットの部分は働き方を問わず整備していく必要があるのではないかと考えております。
(PP)
2つ目が世間の意識、社会的地位についてです。まだ少し偏見があったり、時間を切り売りしている感覚の企業や働き手がいて、社会に対する価値とか、専門性でお金をもらうというところが浸透していない。
金融機関での信用というのも、今、与信が勤め先で行われていますので、勤め先がない時点で使用力ゼロになってしまうのです。そういったところを問題視する声もありました。
また、もちろん我々としてもフリーランスが万歳と言っているわけではないので、フリーランスと会社員を人生100年時代のいろいろなライフステージやキャリアステージによって行き来できるような流動性を高めていったほうがいいのではないかと考えております。
(PP)
3つ目のキャリア・スキルの開発支援のところも回答が非常に多かったのですが、フリーランス側の知識として、専門スキル以外の間接スキルで契約や経営に関する知識などを身につける環境が必要という声、フリーランス同士のネットワーク、ジャンルを超えて一緒に仕事をしていく機会、キャリアコンサルタント、相談場所、自分に対するスキル開発、自己投資のための助成金といったようなものを求める声がありました。
(PP)
4つ目の企業に対してというコメントも結構ありました。フリーランスに対する偏見をなくす、安価で無理のきく労働力といったような使い方をしている企業も多いので、そういったイメージを払拭することとか、具体的に発注リテラシーを上げていく企業向けの研修や説明機会をつくっていってほしい、企業の中できちんとジョブディスクリプションを明確化して仕事を発注してほしい、そういった声が上がっております。
(PP)
興味深かったのは、5つ目のフリーランス自身、自分たちに対する意見というのも非常に多くて、やはり意識がすごく高い方が多いと思ったのですが、価値や生産性ベースできちんと仕事をしていくべきだとか、片手間の副業と専門性を持つフリーランスを分けて議論してほしいということ、自分自身の自己研さん、自己管理が非常に大事だということ、そして向き不向きをきちんと見きわめることも大事という声もありました。大変なこともあるのだけれども、フリーランスのだいご味として、自力で生きていく楽しさと辛さを両方味わえることだという意見もありました。
(PP)
会社員との比較も実はやっていまして、こちらは電通マクロミルインサイトの御協力で会社員1,000名のパネルと同じ質問を比較したのですが、収入に関して、すきまワーカーの方を除いたフルタイムフリーランスで考えますと、会社員とほとんど差がなかったのが明らかになりました。年収100万円未満と800万円以上というのはフリーランスのほうの割合が多かったので、ばらつきは多少会社員より大きいと思っております。
(PP)
満足度に関しても、これは、やらせを疑われるのではないかと不安になるぐらい顕著に差が出まして、フリーランスが全項目で満足度が高い結果となりました。理由として、自分で働き方を選択している、自分のスキル・能力が生かせているという実感があるということが回答で多くありましたので、自律性というのが満足度を高めているポイントなのかなと思います。
(PP)
仕事に対する意識も比較していますが、全体としてフリーランスの方が自分に対してシビアというか、意識が高いという結果になりました。忍耐力だけは、フリーランスよりも会社員の方が必要と答える方が多かったのですが、それ以外の部分に関しては、会社員の方でも副業に挑戦するなど、自分の名前で仕事を受ける経験を重ねていくことで、より自律的にキャリアと向き合っていこうという意識は高まっていくのではないかと考えております。
(PP)
そういったいろんな可能性を秘めている働き方ではありますので、それをより広げて、より自律した日本人をふやしていくという観点でどういった課題があるのか、まとめています。
1つ目が企業の中での外部人材の活用促進とリテラシー向上をするということです。非自発的な理由で本人は不本意ながら雇用システムから漏れてしまっている方、従属性が高い働き方をしている方というのも実際ふえておりますので、そういったことをきちんと防止して、悪用を防ぎ、ちゃんと専門性やスキルを持ったプロフェッショナルに活躍していただくために、フリーランス活用のためのノウハウ、法律、事例をきちんと企業に向けてインプットしていただきたいということや、フリーランスをきちんと活用している企業に対して、例えば助成金を出すとか、地方の労働力不足を解決するという意味でも非常に期待はされているのだけれども、いまいち一歩踏み出せない企業もたくさんありますので、そういった後押しが今後出てくると人材の東京一極集中というのも回避できるのではないかと思っています。また、トラブルのときの相談窓口や、業務委託版のハローワーク的なものが今はないので、そういったものをつくってはどうかという意見も出ております。
(PP)
2つ目がキャリア開発の部分のサポートです。我々はどうしても働いた時間ではなくパフォーマンスに対して報酬が発生するので、非常にシビアな競争の世界になっています。生きていくためには継続的に自己研さん、自己投資を続ける必要があって、これは今、リカレント教育ということで会社員であっても非常に大きなアジェンダになっているとは思いますが、リカレント教育の予算はほとんど雇用保険を財源としておりますので、フリーランスは対象外です。一人一人が個の力を高めていくという上では、雇用関係に関係ない公助の経済的支援とか、先ほど少し申し上げた金融機関における与信の仕組みというところも変わっていくように促していただけるとありがたいと思っております。
(PP)
3つ目が働き方に中立な社会保障の再編ということです。今、いろんなセーフティネットは会社員にはあるけれども、フリーランスにはないというのが今日見ていただくとおり非常にたくさんあります。その中でもライフリスクに関する部分、キャリア開発に関する部分は非常にニーズがあるのではないかと思っております。
(PP)
4つ目は、自律的キャリアを営んでいく人をふやすという観点で申し上げますと、副業の部分もきちんと企業側が制度設計やノウハウを蓄えていくということと、個人に向けても多様な働き方を視野に入れたキャリアカウンセリングを提供していくことで、人生100年に耐え得る日本人がふえていくのではないかと考えております。
(PP)
最後、参考です。「雇用類似の働き方に関する検討会」報告書の中で今後の検討課題として挙げていただいていた部分を私のほうで勝手に3分類させていただきました。
黄色い部分は仕事上のトラブルということで、これはあってはならないことが起こってしまったときにどうするかという話だと思いますので、きちんと取り締まりや防止ができるようにしていただくのが望ましいと思っています。
ピンクの部分はライフリスクに関する部分で、ここは正直、フリーランスの中でも必要だという人と必要ではないという人と意見が分かれています。必要ではないという人は、そのあたりも自己責任でリスクを負った上で独立しているのだから自分で被るべきだという論調の方もいらっしゃるのですが、私の考えとしましては、これだけ柔軟な働き方のニーズが高まっていて機会としてふえているのであれば、このあたりは働き方を問わず、みんなが背負うリスクとして整備されていくほうが望ましいと思っております。
真ん中のビジネスリスクに関しては、意見が当事者の間で非常に分かれている部分です。特に失業保険に関しては要らないという声が多いですし、最低報酬や労働時間規制に関しても、そこを縛ってしまうと会社員と違わないのではないかという意見もありますし、企業側にとっても扱いにくくなってしまうことが起こると我々の仕事が減ることにもなりますので、非常に慎重な議論が必要と思っている部分です。
実際、フリーランスの当事者の声というのは私たちもきちんと把握できていなかったので、ちょうど今晩、イベントをやって、300名近くの参加の返答がありますが、この項目について必要か必要ではないかというところを投票していただくことを予定しています。その結果が出たら、いろいろ報道があると思いますので、お知らせさせていただければと思っております。
(PP)
フリーランスと一口に言っても多様性があります。アペンディックスとして、職種、バックグラウンド、多様な事例をつけていますので、こちらもお手すきの際にごらんいただければと思います。
以上です。ありがとうございました。
○守島部会長 どうもありがとうございました。
それでは、平田様の御発表について何か質問、御意見ございましたら伺いたいと思います。では、長谷川委員。
○長谷川委員 どうもありがとうございました。大変勉強になりました。
少し教えてほしいのですが、年金や健康保険料、税金などは過去の所得をベースに算定されて1年おくれで徴収され、私も最近どかんと持っていかれるので、収入がなくなったときに来るので嫌だなと思っています。無収入の場合の保険料支払いなどについて改善といいますか、改革する具体的な考え方があるかという点を伺いたいと思います。
次に、助成金の話が出ましたが、国は労働者のスキルアップ、能力開発に税金は全然使っておらず、これらの助成金は全部雇用保険を財源としている。雇用保険のうち事業主が払った保険料を使っているわけです。そうすると、フリーランスの人のスキルアップの助成金などは、フリーランスの雇用保険のような保険制度をつくって、その財源から拠出するということでしょうか、それとも国の税を財源を使うということなのか、そこを教えていただきたいと思います。
○平田氏 1つ目の部分は税金ということでよろしいのでしょうか。
○長谷川委員 国民健康保険、年金、税です。
○平田氏 保険と年金と税金ですね。フリーランスの当事者の中でも意見が分かれているところですので、一概にこれということは申し上げにくいのですが、まず国民健康保険は、実は我々の協会に一番多く寄せられるニーズが、フリーランス用の国民健康保険をつくってほしいという声です。今は法律上で同一職種であるということが必要なのと、原則、新規の新設がNGになっていますので、かなり難易度は高いと思っています。
今、大体のフリーランスの方は、弁護士など専業の国保がない方は自治体の国保に入っていまして、自治体の国保が財源が少ないというか、定年退職者の方の割合も多かったりするので、どうしても働いている一部の方への負担が重くなっているということもありますし、予防医療の観点が薄いので、人間ドックや健康診断に何十年も行っていない方がすごく多いのです。ですから、そういった働いている方が会社員と遜色ないような金額で予防医療の観点も持った保険をつくってほしいというニーズは非常に多いと感じています。
年金に関しては、率直に言って余り要請されることはなくて、自分で蓄えるという方が会社員も含めてふえてきていると思っております。一応、小規模事業者共済みたいな制度も口コミで広まったりしていまして、あと、国民年金基金を御存じの方は使っていると思います。
税に関しては、どうしても徴収のタイミングから、仕事が減ってからどかんと来るというのは避けがたいことだとは思います。それに関しては、やはり独立するときのリテラシーを高めていただく。我々としてもそういうことが起こるから備えておこうという発信をきちんとしていくことが大事と思っています。
2つ目の御質問でスキルアップの部分です。おっしゃるとおり、税金を使っていただきたいということではなく、フリーランスにも雇用保険のような仕組みがあればきちんと税を負担して払いたいという人が結構います。ただ、仕組みがないために払う先もない。リスクを全部丸抱えしているという状況です。雇用保険に入れてほしいとは思っていないというか、それは筋が違うだろうということは理解してますので、そういった自営業者向けの保険や共済みたいな仕組みがあったほうがありがたいと思っています。
スキルアップのところに限って言いますと具体的には、職業訓練給付金とか、最近は専門職大学院に通う方への助成金のようなものも整備されていますが、そういったものが我々でも使えるような仕組み、財源で御提供いただけると非常にありがたいと考えております。
○長谷川委員 ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、岩村委員。
○岩村委員 きょうは非常に勉強になりました。ありがとうございました。
多分、そうではないというお答えになるのだろうと思いつつ、お聞きするのですが、健康保険と厚生年金ということに限れば、会社をつくる、法人化するということによって、厚生年金、健康保険の社会保険適用という道があります。余り変なことを言うとあれなのですが、完全なフリーランスでも御本人と奥さんで会社をつくってとか、その逆でもいいのですが、そうすることによって法人になってしまえば適用事業になる。かつ、経営者であっても一応被保険者になりますから、そういう道はあることはあるのですが、やはりそういうのよりは個人事業主という感覚のほうが強いということなのだろうなと思いつつ、質問しています。
○平田氏 ありがとうございます。
実際、それを理由に法人化しているフリーランスというのは多いと思います。フリーランスが法人成りする理由は主に2つで、1つは保険の理由、もう1つはどうしても企業側の事情で法人の体にしてくれないと取引できないというパターンで、その理由でされている方も多いのですが、やはり法人化というと結構覚悟が要るというか、ずっとこのまま独立してやっていくのだという覚悟と気概がある方ではないと結構ハードルが高いのですね。税金もかかってきますし、登記の費用も要ります。今、もう少し気軽にというか、新しい働き方を模索する一手として個人でやってみたいという方もいらっしゃいますし、先ほどの回答でもありましたが、一度独立してそのまま一方通行ではなくて、行ったり来たりというのがこれからの100年時代は求められてくるのかなと思っていまして、そういうときの柔軟性を担保するという意味では、個人事業主でも同じように制度が整うということのほうが望ましいのではないかと思います。
○岩村委員 ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、もう一つぐらい、どなたか、入山委員。
○入山委員 どうもきょうはありがとうございました。私もすごく勉強になりました。
1点だけ、ちょっと気になっているのが、今回のアンケートの対象が、先ほど前半に平田さんがおっしゃってくださいましたが、フリーランス協会に所属されている方がメーンのパネルなので、実際、例えば学歴を見ても大卒と大学院だけで6割5分を超えています。後ろのアペンディックスも見ていたのですが、すごくイケているキラキラ系の感じの、いい感じのトップフリーランサーみたいな方々が多いと思います。
そうすると、これはこれですばらしいと思いますが、この結果が悪いというわけではなくて、これはこれで一個の大事な結果だと思いますけれども、代表性という意味でいくとどのくらいの層なのか。逆に言うと、この後ろには、もっとはっきり言うと余り学歴も高くなくスキルもないという方々が結構いらっしゃる。そうすると、年収なども普通の会社員と同じぐらいで、しかもハッピー度が高くて、会社員は忍耐が要るという結果になっていますが、これは、フリーランス協会に登録している方だからそういう結果になっている可能性は当然あると思います。そのときに、この結果はいいとして、この後ろにそういった、それ以外の層というのはどのぐらいいるものなのか、この代表性がどのくらいあるのかというのを教えていただきたいと思います。
○平田氏 代表性で何割というのは申し上げにくいのですけれども。
○入山委員 感覚でいいのですが。
○平田氏 実際、今、Lancersさんが発表している日本のフリーランス人口1,100万人余りと言われている中の65%は副業の方です。残りの35%が一応専業でフリーランスをやっている方ということになるのですが、その中でも、本当に個人の感覚的なものですけれども、自発的にやっている方とそうではない方は7対3とか6対4ぐらいでいらっしゃるのではないかと思っています。
○入山委員 7が自発的ですか。
○平田氏 そうですね。結構、業界の特性というのがありまして、我々も「雇用類似の働き方に関する検討会」でいろんなフリーランスの方をお連れしてヒアリングしていただいたのですが、やはり業界全体として予算が減っていて人手が必要でというところで、アニメーション業界やテレビ制作業界、メディア業界とか、常駐フリーの方がすごく多いのです。
あとは、自発的という意味では自発的なのですが、トラックの運転手、建設業の方というのも我々のパネルに余りいらっしゃらない方ですし、家電量販店ですごく冷蔵庫に詳しい方とか、ああいった方々も実は業務委託だったりするので、そういった方も入れると6対4とか5対5なのかなという気はしています。
実際、私たちの調査も我々の会員には限らないのですが、オンラインで拡散はしていただいているので、比較的プロ意識の高い方が回答しています。ただ、一部、フリーランスになった理由のところで、会社が倒産した、リストラに遭った、育児で両立ができなかった、保活で落ちてしまった、介護との両立、自分の身体的な理由という形でフリーランスになったという方もいらっしゃって、その方たちは満足度も低かったですし、年収も低い傾向がありました。
○入山委員 そういう今回の網に比較的かかっていない方に対して、平田さんのお立場からして、例えばもう少し行政ができるような対応はどういうものがありますか。
○平田氏 今回の資料に入れていなかったのですが、準従属労働者という形で神戸大の大内先生のお言葉をかりて常々説明させていただいているのですけれども、そういった方々に関しては、一つは今、法律でどう守るかというのを皆さんに議論していただいていると思うので、それは専門家の皆さんにお任せしますが、一方で、その人たちを減らすということもすごく大事だと思っています。
なぜその人たちが雇用システムから漏れてしまったのかということを考えますと、先ほどのリストラや倒産は仕方ないにしろ、育児や介護との両立ができなかったとか、身体的な理由で会社員を続けられなかったという方は、会社側の働き方改革が進むことで雇用システムにステイしたまま仕事を続けることができるのではないかと思っています。具体的には、リモートワークができるようになるとか、週3勤務でよしとされるとか、兼業・副業ができるようになるとか、そういった会社員側の働き方の柔軟性が広がっていくことと、フリーランス側の働き方の環境が整備されること、両輪で回していって、白に近いピンクと赤に近いピンクと両方で柔軟性が高まっていって、きちんとリスクも減らしていく、そういう方向性が望ましいのではないかと考えております。
○入山委員 ありがとうございます。
○守島部会長 平田様、どうもありがとうございました。
それでは、続いて「雇用類似の働き方に関する検討会」で示された調査結果、ワーカーからのヒアリング結果及び今後の議論についてのたたき台が出ておりますので、それについての説明に移りたいと思います。事務局より御説明をお願いします。
○元木雇用環境・均等局在宅労働課長 それでは、資料3、4、5を御説明させていただきたいと思います。時間も限られておりますので、雑駁になるかと思いますが、よろしくお願いいたします。
資料3につきましては、JILPTの「独立自営業者の就業実態と意識に関する調査」ということで、これは「雇用類似の働き方に関する検討会」に出させていただいた調査でございます。先ほどの平田さんのフリーランス協会の調査と設問肢が似たようなものもあったりしますので、比較して見ていただければありがたいと思います。
2ページ目の概要です。これはウエブ調査になっておりまして、回収状況が8,256件となっています。
回答された方々につきましては、属性は3ページ目にございまして、年齢、性別、専業・兼業という形で、専業の方が半数ぐらいいらっしゃいます。先ほどお話がありましたが、この方々は、働いていらっしゃる期間、月と時間が非常に短い方々も入っているということだけはつけ加えさせていただきたいと思います。
4ページ目の仕事内容について御説明させていただきます。1年間で行った独立自営業の仕事内容ということで、選択肢を非常にたくさんつけてお聞きしておりますので、いろんな職種がありますが、最も多いのがデータ入力作業で18.2%、次いで文書入力、テープ起こし、反訳という形で続いています。
6ページ目でございます。1人の独立自営業者の方が1年間に取引している取引先の数で見たものですが、全体で見ますと1社と取引していらっしゃる方が4割強を占めています。
7ページ目の報酬額のところですが、1年間に独立自営業の仕事で得た報酬額については50万円未満が最も多くなっています。特に副業でやっていらっしゃる方については50万円未満が65.6%と高い割合になっていますが、専業の方については全体と比べると50万円未満の割合が低い一方で、300万円以上400万円未満から1,500万円以上までの割合が比較的高くなっている状況でございます。
少し飛ばして15ページ目ですが、契約内容の決定方法についてお聞きしたところでございます。主要な取引先事業者との契約内容については、全体で見ますと「双方協議の上、決定」と回答された方が47.4%で最も多く、次いで「取引先が一方的に決定」が24.0%、「やり取りはなかった」方が14.1%という順に回答が多くなっているところでございます。
16ページ目ですが、そうした契約につきまして、書面等による契約内容の明示があったかないかということをお聞きしたものです。主要な取引先事業者からの書面、これはメールも含めますが、契約内容の明示の有無については全体で見ると「はい」と回答された方が半数以上の54.9%、「いいえ」と回答された方が45.1%ですけれども、業界によって「はい」と「いいえ」の割合が少し違うところがございます。
18ページ目は、作業の内容・範囲に関する指示の状況でございます。契約した後にも主要な取引先事業者から作業の内容・範囲について指示を受けたかということなのですが、全体で見ますと「余り指示されなかった」という回答が34.7%で最も多くなっておりました。「全く指示されなかった」という回答も23.8%、「しばしば指示を受けていた」という回答が23.7%で同程度になっています。
21ページ目に報酬額の決定方法があります。主要な取引先での仕事の報酬額については、全体で見ると「取引先が一方的に決定した」という回答が33.6%で最も多く、次いで「取引先が提示し、必要があれば交渉した」が29.8%、自分が提示して必要があれば交渉したというのが21.8%という順番になっています。
少し飛びまして31ページ目でトラブルについてお聞きしたところでございます。1年間で独立自営業の仕事で経験したトラブルについてです。「トラブルはなかった」と回答されている方が半数、50.1%で最も多かったのですが、経験したトラブルの中では「作業内容・範囲についてもめた」が14.6%、「仕様を一方的に変更された」が9.3%、「一方的に作業期間・納品日を変更された」が7.8%の順で多くなっております。
時間がありますので少し飛びますが、45ページ目で独立自営業者になった理由をお聞きしております。「自分のペースで働く時間を決めることができると思ったから」という回答が35.9%で最も多く、次いで「収入を増やしたかったから」が31.8%、「自分の夢の実現やキャリアアップのため」が21.7%という順で、積極的な理由で独立自営業者になられた方が多いという感じなのですが、少ない割合ではありますけれども、「精神的・肉体的な病気を抱えていたから」「正社員として働きたいが、仕事が見つからなかったから」「リストラ」というネガティブな理由で独立自営業者になられた方もいらっしゃるということでございます。
52ページ目です。先ほど平田さんの御報告の中でも満足度の調査がございましたが、独立自営業者としての働き方に関する満足度についてお聞きいたしました。独立自営業者としての「仕事内容・質」「就業時間」「働きがい、やりがい」「働きやすさ」「仕事全体」ということで分けてお聞きしたのですが、6割以上の方が「満足している」「ある程度満足している」と回答しておられまして、特に「働きやすさ」という点では満足度が7割を超えております。
この表にはつけ加えておりませんが、先ほどの積極的な理由で独立自営業者になられた方とネガティブな理由で独立自営業者になられた方をクロス集計してみますと、ネガティブな理由の方は満足度が低くなるというところも出てきます。
55ページ目に飛びますが、独立自営業者を続ける上での問題点をお聞きいたしました。一番多かったのが「収入が不安定、低い」の回答で45.5%、次いで「仕事を失ったときの失業保険のようなものがない」が40.3%、「仕事が原因で怪我や病気をしたときに労災保険のようなものがない」が27.7%の順で回答が多いというところでございます。
56ページ目で、より働きやすくするために整備等を望む事柄ということもお聞きしたところです。「特に必要な事柄はない」が43.0%で一番多いのですが、「ある」という方につきましては「取引相手との契約内容の書面化の義務付け」が23.1%、「トラブルがあった場合に、相談できる窓口やわずかな費用で解決できる制度」が26.6%、「取引相手との契約内容の決定や変更の手続きの明確化」が19.0%というような御希望が出ているところでございます。
JILPTの調査につきまして、以上、簡単ですが、御紹介させていただきました。
次いで、検討会にお呼びしたワーカーの方及び厚生労働省が出向いてお話を聞いたワーカーの方について資料4でまとめているところでございます。時間もありませんので、この方々の就業状況についての御説明は省かせていただきますが、例えばトラブル、仕事の悩み、行政への希望を中心に御説明させていただきます。
3ページ目です。1番目のフリーランスのテレビディレクターの方ですが、トラブル・仕事上の悩みということで「先の見えない不透明さは悩み」「ハラスメントを受けても、仕事をもらっている立場上、発注者に言いたいことが言えない」。先ほどもありましたが、「仕事に関する相談先がない」ということ、この方は女性だったのですが、「子育て中だが、今後、仕事と育児が両立できるかどうかが不安である」というような悩みを持っていらっしゃるところです。
行政への要望ということで、トラブルが発生したとき、公的機関が交渉の後ろ盾になってほしいとか、「妊娠、出産に伴う雇用労働者とフリーランスの不公平の是正」「法律の知識についての教育支援は重要である」という御意見もいただきました。
6ページ目、映像制作の方ですが、行政に望むことで「出産・育児時の金銭的補償」「雇用労働者として働いた経験がない若いフリーランスの方は知識がないままBtoBの世界に飛び込むため、勉強会などの開催や相談窓口の設置が必要ではないか」という御意見もいただいたところです。
8ページ目は、同じ映像制作の方ですが、行政に望むことというところで「ハローワーク等の公的機関での委託業務のあっせんがあれば安心である」という御意見もいただきました。
9ページ目は、アニメーション制作の方ですが、トラブルの内容ということで「契約内容の食い違いが起き、発注者から報酬を支払わないと言われたことがあった」ということもあります。
そういった経験もあってか、10ページ目になりますが、「曖昧な契約を締結しようとする発注者とは仕事をしないようにしている」「契約締結時に信頼できる発注者を選定することが重要」とおっしゃっておりまして、この方も行政に望むことということで「ハローワーク等の公的機関での委託業務のあっせん等があれば安心である」ということでございます。
最後に、アニメーション制作の方ですが、12ページ目にトラブルの内容として「発注者の事情で仕事が突然なくなることがある」「契約時に聞いていたデータと異なる。約束していた仕事が急になくなる。追加料金が支払われない」というトラブルに遭ったことがあるということでございます。行政に望むことということで、この方も「トラブルが生じた際の相談窓口がない。現在は下請法を所管する公正取引委員会が窓口と認識しているが、個人の相談を受けてくれる印象がなくハードルが高い。気軽に相談できる窓口があると良い」とおっしゃっています。
以上、ワーカーとしての実情ということでJILPTの調査とヒアリングの結果について御紹介させていただきました。
引き続きまして、資料5についても御説明させていただきたいと思います。
先月、4月20日に行われました第7回の基本部会での議論を踏まえまして、今後の議論に向けてのたたき台をつくりました。
まず、テレワークでございます。
1つ目の丸は、テレワークについての基本的な考え方を書いたところでございます。「その普及促進や就業環境の整備を図ることが重要」としています。
2番目の丸ですが、これは御議論の中で、テレワークの具体的な事例を紹介されながら、例えばテレワークを実施するためには業務量の見直しが必要という御意見とか、就業規則上の記載の仕方の工夫が必要という御意見もありまして、テレワークをうまく企業に導入してもらうために「実施に当たって留意すべき点等も周知することが必要」「対象者を念頭にわかりやすく書き方を工夫するなどして周知し、普及を図っていくことが必要」ということでまとめました。
3番目の丸につきましては、2月に改定いたしましたテレワークについてのガイドラインで、長時間労働対策について推奨例を入れているのですが、それについてはテレワーカーだけではなくてテレワーク以外の就業についても取り入れていくことが可能ではないかという御意見がございました。
最後の自営型テレワークについてです。この御意見は、後述します雇用類似に関係してくると思いますが、自営型テレワークの中には、納品する媒体で家内労働か自営型テレワークか分かれるということとか、金額は交渉力の違いで従属性が違うという御意見がありました。ある程度守らなければいけない人たちを限定して考えていくのがよいという御意見もありまして、こうしたことにつきましては、後述の雇用類似の働き方に関する保護等のあり方を進める中で、保護すべき対象を検討すべきということでまとめました。
副業・兼業については後ほど基準局から御説明させていただきます。
雇用類似について御説明いたします。
1つ目の丸は、雇用関係によらない働き方が拡大している中、労働行政でも従来の労働基準法上の労働者だけでなく、より幅広く多様な働く人を対象とし、必要な施策を考えることが必要という御意見があったかと思いまして、ここにまとめました。
2つ目から5つ目までの丸につきましては、最後のほうに、検討を進めることが必要、検討する中で議論すべきである、検討に速やかに着手することが必要、実態把握と並行して検討を進めていくことが必要ということで、雇用類似に関する働き方につきましては継続して検討していく必要があるということの御意見がありましたので、それぞれについてまとめたところでございます。
以上でございます。
○大塚調査官(労働基準局労働関係法課) 続きまして、労働基準局から副業・兼業に関して御説明させていただきます。
ページをお戻りいただきまして、1ページ目の下のほうでございますが、全部で4つ書いております。
1つ目の丸は、副業・兼業に関する総論的な考え方を示したものでございます。「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的に労働者の自由である」。これは裁判例などでも示された考え方でございます。こういったことを踏まえまして、副業・兼業を希望する労働者が主体的に自身のキャリアを形成できるような環境を整備することが必要ということです。
前回のこの場におきましても、例えば、政府が自由時間を他の会社で仕事をしなさいと促進することは働き手の側からすると違和感があるという御意見もありました。私どもといたしましては、基本的に、一つの企業に縛られたくない、あるいはスキルアップを図りたいと希望する労働者の自由意思によって副業・兼業というのは行われるべきではないかと考えております。そういう考え方を踏まえて「希望する労働者」という表現を明記しているところでございます。
2つ目の丸に関しましては、ことしの1月に策定いたしました「副業・兼業の促進に関するガイドライン」あるいは改定版のモデル就業規則の周知に関する記述でございます。2行目に「労働者によって仕事の内容や収入等に様々な実情がある」と書きました。これは、前回のこの場におきましても、低収入の方々については少し事情が違うのではないかといった趣旨の御発言が幾つかございました。また、このガイドラインを検討した昨年、湯田委員にも御参画いただきました「柔軟な働き方に関する検討会」におきましても、仕事の内容は必ずしもIT、クリエイティブ系ではない、例えば自動車運転者などが休日などに副業でドライバーなどの業務をした場合に、それは利用者の安全面にとってどうなのかといった御指摘がヒアリングの場でもありました。また、収入に関しましても、1,000万円以上の方あるいは100万円未満の方の割合が比較的多いといった実態データもございまして、このように仕事の内容や収入等によってさまざまな実情、違いがあるということがございますので、そういったことも意識しながら効果的な周知を行うということを書いたところでございます。
次のページの一番上の丸でございますが、これは制度的な検討に関する記述でございます。副業にもさまざまなやり方がございまして、本業は雇用、副業も雇用の形態もあれば、副業は自営業主等の非雇用型というようなさまざまなケースも想定されるところでございます。主に雇用と雇用の掛け合わせの場合を想定しながらということになるかもしれませんが、1つは労働時間管理のあり方、もう1つは労災補償のあり方などにつきまして、働き過ぎ防止という観点、労働者の健康確保等にも留意しながら十分な検討を行うことが必要ということを書いております。
最後の丸につきましては、前回のこの場におきましても、ガイドラインを細かく書き過ぎではないか、あるいはフリーランスで複数の副業を持つような方々についての場合分けなども必要ではないかといった御意見もございました。ガイドラインにつきましては、あくまでも現行法令に基づく留意点などをまとめたものでございまして、今後、いろいろな展開次第によっては中身を変えていくこともあり得るということで、必要な見直しを行っていくことが適当であるということを明記したところでございます。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、今のワーカーからのヒアリング結果及び今後の議論のたたき台についての質問、御議論に移りたいと思います。それから、前半でお話しいただいたお二人の御発表に関してのコメント等でも構いません。何かおありになる方はどうぞ。では、後藤委員。
○後藤委員 たたき台でもよろしいですか。幾つかございます。
まず、副業・兼業についてです。事務局から補足もありましたが、1つ目の丸の「副業・兼業を希望する」という部分についてです。前回部会ですと、副業・兼業の実態が二極化しているのではないかという議論であったと思っております。特に低所得者の方々については、キャリア形成のためというよりも、生活していかなければいけないためにダブルワークにならざるを得ない者ではないかという議論もあったと思います。副業・兼業については、もう少し実態を把握した上で、やむを得ずダブルワークをせざるを得ない人たちの保護に向けて課題を整理するという姿勢を示すべきであり、表現もそういうふうに示すべきではあると思います。
その意味では、2つ目の丸につきましても「様々な実情があることを踏まえつつ」とされてはいるものの、「副業・兼業はオープンイノベーションや競争力向上につながるという価値観を社会で共有できるように広めて」という表現は、本部会でのこれまで懸念が何となく矮小化されているように受けとめられます。先ほどの丸の1つ目と同様に、慎重な課題の整理というのを強調していただきたいと思います。
それから、丸の4つ目のところに「副業・兼業の社会的な広がりを踏まえ」と書いてありますが、現時点で広がっているという表現は何となく共感しにくいと思っており、表現が積極的過ぎるのではないかと思います。むしろ丸の3つ目の制度的課題の「検討」をきちんとして、それを踏まえてガイドラインを見直していくのではないかと思っておりますので、そういった点を受けとめていただきたいと思います。
また、雇用類似の部分につきましては、先ほどの先生方お二人のお話なども踏まえますと、いい面もある一方で、課題も多くあるのだろうと思っています。とりわけ、Uber、Airbnb、そういったシェアリングエコノミーにつきましては、世界の状況を見ても、もっと自由闊達にやっていくのかと思いきや、逆に就労者保護の規制が強まっている状況にあります。この世界的な状況を見ると、何となく日本は世界から周回おくれになってきているのではないかと受けとめています。せっかく世界では、好事例というか、保護する流れにありますから、そういったことも踏まえつつ対応していくことが、この「検討」していくということの中に含まれるべきだと思います。
それから、特に平田先生からは、社会保障や税制、あるいは社会的な保護の制度については、働き方に中立にあるべきだという御意見もいただきました。また、仕事、生活、健康上のリスク対策などについても、どういった働き方をしてもしっかりと守っていくことが必要という御意見もありましたので、そうした点はきちんと受けとめていくべきだと思います。
その上で、独立して働くということの理由を見ますと、夢、キャリアアップ、時間の自由度などが挙げられており、これらは何となく雇用労働者とコンフリクトがあるような部分もあったりします。そういう意味では、雇用されている人たちとフリーで働いている人たちがともに共感しながら、働いている人たちを守っていくというような仕組みが必要だと思っております。そういった点も、検討、議論をこれから加速していくということの中に含んでいただきたいと思います。
長くなりましたが、以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかに、では、長谷川委員。
○長谷川委員 2点、雇用類似についてです。
1点目は、基本的な姿勢として雇用労働者を守るということは明確にしながら、多様な就労形態で働いている就労者の保護に向けてきちっと検討する、そういう積極的な姿勢を出すべきだと思います。現行の労働法は雇用労働者を守っているわけですが、現行の労働法で守れない就労者、法的保護を受けることができない就労者に対して、対象をきちっと見定めて法的保護を図るという考え方、姿勢をしっかりと打ち出してほしい。雇用労働者と雇用労働者ではない就労者がいる中、どのような働き方をしてもきちっと労働法で守られる、こういうことをやるべきだと思います。
2点目は、余り議論にならなかったのですが、集団的労使関係についても入れておいてほしいと思います。クラウドワーカーの場合は、発注者が複数いることが通例です。労働基準法の労働者性や労組法の労働者性の考え方は複数の判断要素があるわけですが、労組法の労働者性の判断要素の一つに事業組織への組み入れということがあります。そうすると、発注者がいっぱいいると特定の取引先の不可欠な労働力としての事業組織への組み入れの部分が非常に曖昧になってきて、労組法の労働者というところから漏れてしまう可能性もあります。労働者を保護するときに集団的労使関係の保護も及ぶような、そういう検討もぜひしていただきたいと思います。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、山川委員、お願いします。
○山川委員 話が全然変わりますが、きょうの発表の中でよく出てきたので一言言っておきたいと思います。人生100年という話が何回か出てきたと思いますが、それはすごく重要だと思っていて、人生100年というのは余りイメージが湧かないけれども、今までの労働者と全然イメージが違うと思うのです。例えば「サザエさん」の波平は54歳なのですが、今、あんな54歳はいないですね。大学を卒業して75歳ぐらいまで働くのだと思ったら職業生活は50年ですね。波平より長いじゃないですか。そうすると、一つの会社にずっといるとか、ずっとフリーランスでやるという発想は多分なくて、それこそ30代後半や40代のどこかでがらっとキャリアチェンジする人というのも当然いっぱいいると思います。
そういう観点からも考えると、今までの話と全部つながってくると思いますが、もちろんAIの話もあるし、自律的なということもあるのですけれども、職業生活がそれだけ長くなると、当然、自律的なキャリア形成というのがすごく重要になってくるし、さまざまな雇用形態の中での行き来がスムーズにできることも決定的に重要になってくる。そうなってくると社会保険の話なども入ってくるので、今までの労働者のキャリアアップと全然スパンが違うという視点も入れておくといいのかなと思います。こんな議論をしている間にどんどん寿命が先に延びると思うので、そこは結構重要なポイントなのかなということをきょうお話を伺って思いました。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかに、どなたか。
○武田委員 まず、本日は大変貴重なプレゼンを湯田様、平田様にいただき、どうもありがとうございました。大変勉強になりました。事務局におかれましても調査などの御紹介をありがとうございます。
さまざまなマクロ環境あるいは技術の進展、スピードなどを考えると、時間、空間、企業にとらわれない働き方は今後ますます進んでいくと思いますし、団塊世代が75歳以上になるのが2022年ということを考えると、超高齢化社会にふさわしい働き方という観点でも、より多様な働き方のオプションとして、シニアの割合がより高まっていくのではないかと考えます。そうした働き方が進んでいきますと、おのずと個人の責任の範囲は広がりますし、個人による就労管理が増えていくのだろうと思います。
一方で、現状の政策として議論されている長時間労働の是正など、これ自体は非常に必要な政策ですが、企業による管理を前提とした制度設計や政策になっています。つまり、政府として進めようとしている労働施策が企業をベースにしている一方で、労働市場の現実の世界では比較的自己責任において働いている方が増えている面を踏まえると、そのギャップが生じているわけです。それは、過渡期なので仕方ない面もございますし、長時間労働の問題は国として対処する必要があるわけですが、今後、先行きを見据えたときに、個人の責任あるいは個人の管理をベースに働く方が社会で増えることを前提に、ここだけはしっかり守ってくださいという考え方で労働政策を考えていくのか、あるいは企業型の雇用と、個人の責任に基づく働き方を区別して政策を考えていくのか、方向性という意味で整理が必要な部分が残されているのではないかとの印象を受けております。
また、本日、御説明いただきましたとおり、フリーランスの方は特に自分の仕事にやりがいを持って、プライドを持って、自由をかち得て活動されていらっしゃるため、政府の助成金あるいは税財源を使って保障をという、いいとこどりはできないのではないかという気も致しますので、その辺も含めてもう少し議論が必要ではないかと感じております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに、では、岩村委員。
○岩村委員 まず、自分の意見を言う前に、今の武田委員の発言について一言コメントしたいと思います。一般の企業において従業員自身が自己の責任において自己管理でというのは、それは夢の世界だと思っています。現実問題として一般企業の通常の多くの労働者は、企業の指揮命令のもと、それに違反すれば懲戒処分という強い制裁のもとに置かれていて、その中で自己責任だ、自己管理だなんていうのはあり得ない。あるとすれば、それは非常に上位の、かなり専門職的な人たちについてでしょう。ですので、今、国会で議論していますが、裁量労働とか高度プロフェッショナルというようなことで自分自身である程度決められる人たちについてはそういうことを認めているという形で今の政策は展開していると思います。それが、およそ労働者の自己責任の問題だ、そういうのもあるのだと言われると、それに対しては非常に強い違和感を持ちます。今の武田委員の発言は私にはそういうふうに聞こえてしまったので、そこのところについてはそのようにコメントしておきたいと思います。
もう一つ、きょうの最後の御用意いただいている資料5については、たたき台ということで、今までの議論を、とりわけ時間、空間、企業にとらわれない働き方のところについては非常にうまくまとめていただいているという気がしております。
ちょっと気になるのは、先ほど後藤委員の発言もありましたが、1ページ目の一番最後の丸の「価値観を社会で共有できるように広めていくべきである」というところについては、そういう副業・兼業があるということ自体はそうだろうと思いますが、他方でそうでないものもかなり多数あるので、そこのところはまとめるに当たっては気をつける必要があると思っています。
特に、きょう御紹介いただいたようなさまざまな働き方というのがオープンイノベーションや競争力の向上という観点からすると日本経済全体にとっても重要であるということは全然否定しませんが、ただ、そうでない副業・兼業というのも多数あるということもやはり気をつけておく必要があると思います。
きょうのお二方のプレゼンにもありましたが、雇用類似の働き方についてどういう形で制度を整えていくかというのはかなりいろいろな問題がそこに絡んでくるので、非常に難しい。私は単純に労働法制に全部引きつけるというふうには考えませんが、それ以外でも社会保障の問題、競争法の問題とか、場合によっては知的財産の問題、そういったものも関係してくるので、かなりいろいろな問題を横断的に目配りしながら検討しなければいけないだろうと思います。ですので、きょうのこのたたき台の中の2ページ目の下から2番目の丸にもあるように、専門家をある程度横断的に、労働法学者も含めて、さらにその他それに限らず、法律家ももう少し横断的に集めて、経済学者、大学の先生も御参画いただくという形で検討を進めるというのがいいのかと思っています。
武田先生、ちょっと激しい言い方をして大変申しわけなかったのですが、私にはそう聞こえた、そういうことでございます。
○守島部会長 では、武田さん、一言。
○武田委員 恐らく大きな誤解があると思います。私の伝え方に問題があったのかもしれませんが、私は企業に自己管理させてよいと申し上げているのではなく、労働市場全体で見たときに、企業で働いている方の割合と、そうではない働き方をされている方の割合が今後徐々に変化してくるとするならば、今までは企業で働いている方を中心に政策を考えていればよかったが、そうではない働き方の面も含めて政策を考えていかなければならない。つまり、個人の責任の範囲が労働市場全体で増え、ワーカーとして働いている方の人数が増えてきたときにそのバランスをどう考えていくのかという意味で申し上げたわけで、企業で働いている方もすべて自己責任にしていきましょうという意味で申し上げたわけではございません。
繰り返しになりますが、私自身も働き方改革実現会議でそう述べてきているとおり、長時間労働の是正も含め、国会で議論されている法律の内容でしっかりやっていく、これまで働き方に関し問題があったところを是正していくことは必要な施策ですけれども、新しい働き方に対して、今まで余り議論してこなかったこともあり、そのウエートが高くなっていくことを踏まえれば、軸足を置いて議論していくべきことも変わっていくのではないか、という視点を述べたということでございます。
○守島部会長 短目にお願いします。
○岩村委員 武田先生、大変ありがとうございます。先生がおっしゃりたいことはよく理解できました。
1点だけ加えると、確かに自分自身での意思なり管理で働くというタイプが出てくることはそのとおりなのですが、その自由な意思なり管理というものが本当にちゃんと実現できるのか、そこがまさに一番の大きな問題で、その点をどうやって担保する仕組みをつくるかというところは、そこは議論しなくてはいけないだろうと思っていますし、きょうのたたき台もそこのところについての一つの考え方を示していると私自身は理解しているということでございます。先ほどは済みません。ちょっと激しく言ってしまいました。大変申しわけありませんでした。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、意見は尽きないのですが、そろそろ時間となりましたので、これで今回の議論は終わりにさせていただきたいと思います。
それでは、最後に事務局から次回の日程についてお願いします。
○大竹企画官(政策統括官付労働政策担当参事官室併任) 次回の当部会の日程でございますが、6月27日(水)の開催を予定しております。詳細については、また調整の上、改めて御連絡をさせていただきます。よろしくお願いします。
○守島部会長 では、本日はこのぐらいで閉会させていただきたいと思います。
本日の会議の議事録につきましては、本審議会の運営規程により、部会長である私とほかの2人の委員の御署名をいただくことになっております。つきましては、入山委員、川﨑委員に署名人になっていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、本日の会議はこれで終了といたしたいと思います。どうも皆さん方、活発な議論をありがとうございました。