人材育成事例359
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当社は創業者である板垣文治衛が明治元年(1868年)に山形県鶴岡市に鍛造を主体とした鍛冶屋を創業し、今年で150年を迎える。現在は山形県三川町に立地して県内では数少ないHグレードの鉄骨加工業として年間約13千トン余を出荷している。 出荷先は地元のみならず仙台圏、関東圏であり、加工内容も難易度が高い物件も多く、その品質や納期の実績から顧客の信頼を獲得している。 (株式会社板垣鉄工所ウェブサイト) |
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当社の経営や人材育成の方針は明確に設定され、毎年全社員に手帳として配布され、周知運用されている。その一部は次の通りである。 1.経営理念・技術と人を高め、信頼を大切にします。 ・全従業員の物心両面の幸福を目指します。 ・鉄を使って人類社会に貢献します。 2.重点施策 人材育成に関する施策を抜粋すると次のことを設定して取り組んでいる。 ・自律型の人材育成 ・労務管理の充実と健康経営で従業員の活性化 |
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以上の方針等を受けて、特に、以前から社内プロジェクト(新教育システム運営委員会)を立ち上げて検討していた「新教育システム」を今年度から運用を開始している。その概要は次の通りである。 また、同システムは外部に依頼しないで、社内の横断的な階層から選抜した中堅の社員で検討作成したことも特徴的である。 1.新教育システムについて(1)目的:新しい技術や技能の獲得や伝承に加えて"自ら考え、行動し、課題を発見して解決する人材"に育ってもらうことを狙っている。また、会社が期待する人材像を明確にしており、それは人間性、テクニカルスキル、マネジメントスキルのそれぞれのレベルアップとバランスがとれた社員を多く確保することである。
(2)これまでの教育システムとの違い
➀これまでのテクニカルスキル重心に加えて、人間教育を含める。
➁これまでの単年度計画であった点を3年計画で教育を進める。
➂これまでは実績管理が不明確な点もあったので、実績によりポイントを付与して、個人管理を明確にする。
➃今後は、各部門長が責任をもって単年度ごとの教育計画を立案して社長の承認を得て、委員会が確認していく。
➄教育実施後は必ず、部門長が評価する。その評価方法(レポート、資格取得等)も明確にした。
そのほかに、社員の健康意識の向上に寄与する教育メニューも委員会で推奨している。(3)自己開発シートの採用 ➀ コミュケーションや専門性など9項目について自分の現在のレベルを診断するとともに、今後の自分が取りたい資格や伸びたい項目についても、上司と相談して決定する仕組みとした。これで個人の目標と部門の課題、会社の方針の同心円が重なるようにした。
➁それをもとに、部下と面談して部下の考え方やキャリアプラン等についてお互いにコミュニケーションを行う。
➂これによって、部下と上司の信頼関係を強くしてお互いの育成を意図するものである。
2.新人教育 新教育システムで運用を開始した実績例として新人教育を紹介する。延べ10回の教育の大まかなプログラムは次の通りである。 ・社長講話:会社の歴史と経営理念
・ディスカッション(会社の役割、なぜ利益や生産性を上げなくてはならないのか等)
・ビジネスマナー(電話、メール、敬語の使い方、名刺の授受等)
・社員手帳と「板垣フィロソフィー」の習熟(健康の維持向上、輪読、私生活の管理、金融教育等)
・目標管理と自分の成長
・スピーチ(自己紹介、学んだことの発表)
3.管理者教育 ここでは、管理者として必要なマネジメントスキルの他に人間的素養にも力点を置いている。例えば、コーチング、聴く力、リーダシップ、面談・評価スキル、財務知識も必須である。これらを運営委員会でコントロールしながら、自律型社員を育てていこうとするものである。 直近では、管理者は査定者でもあるので評価基準の変更や評価方法、面談時のコミュニケーションの留意点について資料を作成して教育を行った。 また、管理者は基本的に部下との関係で、例えば有給休暇の取得の承認や部下の健康管理、目標管理等を通じてのいわゆるOJTで自ら育って行くものとの考え方である。 そして、自部門を部下に継承できるように部下を育成することも管理者の重要な責務としている。 |
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・「新教育システム」は運用をスタートしたばかりなので、まだ効果は感じられないが今後管理者はじめ社員の意見を聞いて、ブラッシュアップをかけていく考えである。
・また、管理者は部下を育てるのも重要な業務であることを社内風土としてさらに定着することも課題である。
・企業は人なりで当社の最重要課題であるので、今後とも自律型社員の育成に力点をおいて経営を行っていく考えである。
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