職業能力開発計画事例056

 
 
 
 
    株式会社A
 
 
 
 
 
情報掲載年度 2012年度
情報掲載日 2013年3月29日
都道府県 静岡県
資本金 5000万円以上~1億円未満
 
従業員数 300人以上
産業分類 サービス業(他に分類されないもの)
助成金の申請 なし
助成メニュー  
 
 
製造業の構内請負をメインとした人材サービス業を行っていたT社が、一昨年、事業の専門性を高めることと拡大を狙い、4社に分社化した。
今回対象の企業はそのうちの1社であり、グループ企業内の役割は、4社をまとめるためのホールディングス形式となり、その企業に管理部門を集中させ、人事や人材育成の部署がおかれることとなった。
ところが、もともときちんとした制度が社内になかったことと、企業全体を見て管理できる能力がある人材が育っていなかったため、管理部門に課せられた課題はやまほどあるが、何から手をつけていいのか分からない、という状態の時に、人材育成コンサルタントとして企業訪問し、継続したコンサルティングを施していくことになった。
数回のヒアリングを行っていくと、人材に関する問題や課題が浮き彫りになり、後述の通り企業の経営方針が人材に焦点をあてているため、その方針に則り人材を育てていきながら、問題と課題に対処していこうということになった。

◆人材に関する問題点と対応策
課題、問題 ⇒ 対応策
1.組織と人をマネジメントできる人材が不足している。
  →管理職にふさわしい、または見込みのある人材を育てる
2.組織と人の力を目一杯発揮させる人材が不足している。
  →リーダーにふさわしい、または見込みのある人材を発掘し育てる。
3.事業所の人に関する課題や問題が情報として見えにくい。それにより適切なタイミングで、良質の対応の機会を失っている。
  →本社と事業所間で人事情報や労務情報を双方向で共有できる仕組み作り。
4.企業理念、年度方針等が正しく全社員に浸透していない。
  →企業理念、行動方針や年度方針を社員が行動に起こせる内容に落とし込む評価制度の作成。
5.右肩上がりの人件費の増大
  →限られた資源を適切に分配する人事・評価制度の構築
6.将来、マネージャーやリーダーに進むだけの一本化された人事制度
  → スペシャリスト(専門職)として将来を設計できる複数の人事制度の構築。日程としては、3年は目途にしていこうということで合意をしたが、まずは取りかかって見ないことには分からないので、当初の1年間の計画をたて、PDCAを回していくこととした。

・経営理念・経営方針に基づく人材育成の基本方針・目標
コンサルティングに取り掛かると時期を合わせて、企業理念と行動方針を取りまとめていたので、上手に利用させてもらうこととした。

企業理念
 1.雇用の創造と継続を以って、取引先の不安を解消し、労働人口の拡大に努める。
 2.CSR活動を全社員で推進し、企業として正しい利益の向上に努める。
 3.人材と、その持てる人間力を最大限に生かすことで社会貢献に努める。

行動方針
 1.私たちは、気持ちのよい挨拶を心がけます。
 2.私たちは、約束、時間、期日を守ります。
 3.私たちは、法令を遵守し、社会人として責任ある行動をとります。
 4.私たちは、お客様やスタッフとのコミュニケーションを大切にします。
 5.私たちは、いきいきと活気があり、整理整頓された職場をつくります。
 6.私たちは、安全に最大限の配慮をし、良質な“ものづくり”と“サービス”を提供します。
 7.私たちは、常に生活者の笑顔を思い浮かべながらものづくりを行い、サービスを提供します。
 8.私たちは、会社の収益力を高め、事業の発展と、従業員、株主、社会への還元を実現します。
 9.私たちは、社会に貢献するために、自らの人間力を高める努力を日々行います。
 10.私たちは、仕事を通じて、労働人口の拡大に貢献します。

企業理念にある「人間力を最大限に生かす」ことを人材育成の基本方針の規範として、グループ企業全体で、約1,200名の社員の持てる能力を最大限に活かすことが出来れば、相当のパワーを発揮できると信じ、更に、各事業所に分かれて働いている社員の中に、埋もれている人材の発掘を戦略として実行することを目標として定めた。
 
 
人材の育成及び人材の発掘の手段として、職業能力評価基準を使用することとした。
その理由は、製造請負業と人材派遣業をメインの事業としているため、様々な事業所において様々な業務をこなしている。そのような社員を、できるだけ共通の基準で見ることができるツールとして利用することとした。
職業能力評価基準は、膨大な職種と業務及び職位に分かれてサンプルを提示されているので、その中から担当企業に適した帳票を見つけるのに、相当の時間を要した。しかし、一から自分たちの仕事を文章化することなど不可能に近いため、結果としては大変助かった。
職業能力評価基準の利用目的は、
 1.どこの事業所でどのような業務をしているのかを把握する(職務分析)
 2.どの職位の者が、何をするべきなのかをできるだけ明確にする(求められる姿の提示)
 3.社員の能力を評価し、評価のフィードバックを通じて、人材育成と人材の発掘につなげる
膨大な社員がいるため、まずテストケースとして、グループ企業の中で中規模の企業を選び出し、最初の1年間は、この企業での仕組み作りを重点的に行うこととした。
 
 
人材育成の手段として、キャリアマップの作成が必要不可欠であることが分かった。職業能力評価基準を利用して、現在作成しようとしているが、サンプルとなるものが少ないため、なかなか進まないのが現状である。

職業能力評価基準は、現在のポイントをしめすものであって、将来の姿を見せるにはためのツールがあると大変助かる。

ようするに、若手の基準があり、次に中堅社員の基準があるが、そのようにしたらその基準に到達できるか、というプロセスを目で見える資料があると、特に若い人にとって自分の将来像を描くことが出来るために定着率にも大いに役立つものと思われる。