第25回厚生科学審議会感染症部会 

健康局 結核感染症課

日時

平成30年6月15日(金)15:00~17:00

場所

厚生労働省 省議室(9階)

議題

  1. 1.麻しん及び風しんに関する特定感染症予防指針の改正
  2. 2.レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針の改正
  3. 3.プレパンデミックワクチンの今後の備蓄方針等について
  4. 4.報告事項 
  ➀今冬のインフルエンザの発生状況について
  ➁コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生状況
  ➂東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた対応
⒌その他

議事

 
○野田結核感染症課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第25回「厚生科学審議会感染症部会」を開催いたします。
委員の出席状況を御報告いたします。本日は、味澤委員、岩本委員、大曲委員、菅原委員、戸部委員、中山委員、脇田委員より御欠席の御連絡をいただいております。また、南委員におかれましては、御出席と伺っておりますが、現在のところ御到着されていないという状況でございます。
現時点で定足数以上の委員に御出席いただいておりますので、会議が成立いたしますことを御報告いたします。
次に、資料等の確認をいたします。議事次第、配付資料一覧、委員名簿、座席図のほか、資料1~資料11、参考資料1~参考資料10を御用意しております。不足の資料がございましたら、事務局までお申しつけください。
冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。
(カメラ撮影終了)
○野田結核感染症課長補佐 以降の議事運営につきましては、倉根部会長にお願いいたします。
○倉根部会長 こんにちは。きょうもよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題を確認したいと思います。議題1が「麻しん及び風しんに関する特定感染症予防指針の改正」。議題2「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針の改正」。議題3「プレパンデミックワクチンの今後の備蓄方針等について」。議題4「報告事項」。議題5「その他」になっております。
委員の皆様方には活発な御意見、御議論とともに、また議事運営にもどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、事務局から審議参加に関する遵守事項について報告をお願いします。
○野田結核感染症課長補佐 事務局から審議参加について御報告いたします。本日の議題3ではプレパンデミックワクチンに関連した審議を行います。審議品目の申請資料作成に関与した委員はおりませんでした。また、製造販売業者または競合企業から寄附金・契約金等の受取額により、審議不参加や議決不参加に該当する委員はおりませんでした。各委員の寄附金・契約金等の受取状況については、後日ホームページにて公表させていただきます。
以上でございます。
○倉根部会長 ありがとうございます。
それでは、議事に入りたいと思います。議題1「麻しん及び風しんに関する特定感染症予防指針の改正」。事務局から議題1について、資料1から5までの説明をお願いします。
○髙倉結核感染症課長補佐 それでは、事務局より御説明させていただきます。まず、資料1をごらんください。こちらは、麻しん及び風しんの発生状況及び沖縄県における麻しんの集団発生事例についてまとめたものでございます。
1ページ目、麻しんの発生状況。2012年以降のものを図に示しております。本年2018年は、6月6日の時点で167例の届け出があるという状況でございます。
2ページ目、風しんにつきましては、同様に示しておりますけれども、2018年は、6月6日の時点で34例の届け出があるという状況でございます。
3ページ目、沖縄県における麻しんの集団発生事例につきまして、この事例の概要と本事例の特徴についてまとめたものでございます。本事例は、3月17日に入国いたしました台湾から沖縄への観光客でした。3月20日に麻しんと診断、届け出がなされました。この時点でこの発症者が人に感染させやすい期間に人の多い観光地や大型商業施設等を利用していたということもございまして、プレスリリースがなされ、対応が直ちに行われました。国立感染症研究所からFETPを派遣し、厚生労働省からは各自治体や医師会等に注意喚起の事務連絡を発出するなどの対応をいたしております。
本事例は、5月28日時点で沖縄県だけで99例と、近年では大きな規模の集団発生となっておりました。しかしながら、5月11日に医療機関を受診した患者を最後に、4週間新たな患者が発生しないということが確認されまして、6月11日、沖縄県は、沖縄県における麻しん流行が終息したことを宣言するに至っております。
続いて、資料2につきましては、予防接種室より御説明いたします。
○黒崎予防接種室長補佐 それでは、資料2「乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチンの需給状況等について」、御説明申し上げます。最新の状況も含め、MRワクチンの需給状況に関して御説明申し上げたいと思います。
1枚おめくりいただきまして、現行の麻しんに関する特定感染症予防指針におきましても、「感染力が非常に強い麻しんの対策として、最も有効なのは、その発生の予防である。麻しんの接種に用いるワクチンは、風しん対策の観点も考慮し、原則として、麻しん風しん混合ワクチンとするものとする」と記載してございます。
MRワクチンの需給状況の見込みにつきましては、現時点において、MRワクチンの全国的な不足は生じない見込みであると考えてございます。
グラフに関しましては、5月以降に関しては見込みでございますが、3月、4月は実績で示させていただいております。特に5月の需要につきましては、5月当初時点での見込みということで、実際にはさらに需要が伸びていたと推定されますが、仮に5月の需要が少し伸びていたとしても、まだ対応できる余力はあると考えてございます。
1枚おめくりいただきまして、5月18日時点でのMRワクチンの需給状況に関する情報ということで、まとめさせていただいております。スライドの中ほどの「医療機関納入量実績対前年比%」をご覧いただければと思いますが、4月の医療機関納入量実績は、昨年と比べ約217%と2倍を超える増加となっておりました。また、5月についても5月18日までの途中実績ながら、既に昨年の5月1カ月分の約210%に達しており、相当の量が実際に医療機関に納入されております。さらに、5月18日時点の流通過程上に存在すると考えられる在庫量は約46万本となっているほか、さらに5月末までに追加のワクチン供給がなされたところでございまして、今後の見通しとして現時点において全国的な不足は生じない見込みと考えているところでございます。
最後のところに麻しんの抗体保有状況について(2017年度の感染症流行予測調査事業)のグラフを載せてございます。我が国の予防接種制度の変遷から、定期接種でなかった世代、1回接種世代、2回接種世代といった区分も聞かれておりますが、2歳以上においては、どの年齢においても95%以上が陽性抗体価を満たしておりまして、感染予防抗体価で見た場合でも世代間では明らかな差が認められる状況ではないことから、感染症流行予測調査の結果からいたしますと、現時点において、1回接種世代がおしなべて感染リスクが高いわけではないと考えてございます。厚生労働省としても正確な情報提供に努めてまいりたいと考えてございます。
資料2については以上でございます。
○髙倉結核感染症課長補佐 引き続き、資料3以降を説明させていただきます。
資料3は「麻しん及び風しんに関する特定感染症予防指針の改正について」でございます。経緯といたしまして、この予防指針は、感染症法の第11条第1項及び予防接種法の第4条1項に基づきまして、麻しん及び風しんの発生予防及び蔓延の防止等を目的に作成されたものでございます。
両指針においては、少なくとも5年ごとに再検討を加え、必要があると認められるときは、これを変更していくということとされております。
第23回の感染症部会及び第19回の予防接種基本方針部会におきまして、麻しん・風しんに関する小委員会を設置して議論を行い、両指針の改正を行うということが了承されました。
平成30年2月から6月まで3回の小委員会を開催いたしまして、両指針の改正について議論され、改正案が了承されたところでございます。
今回の改正案は、1から5番までが主なポイント、6番としてその他、必要な事項となっております。
第1番目が定期予防接種率の向上に向けた対策の強化でございます。各市町村に対して、第1期、第2期それぞれの接種率が95%以上になるよう働きかけること等が今回の改正案の趣旨でございます。
2番目のポイントは、児童福祉施設、保健所等ですけれども、及び医療機関等における対策の強化でございます。定期接種をまだ受けていないゼロ歳児であるとか、予防接種を受けることができない方と接する機会の多い者に対しまして、強く予防接種を推奨する趣旨の記載を追加しております。
3番目が輸入症例への対策の強化でございます。従来の指針におきましては、海外に渡航する者に対する予防接種の推奨のみを行っておりましたが、今回の改正案では、海外からの渡航者と接する機会の多い職業、空港の職員等に対する予防接種を推奨する趣旨の記載を追加しております。
4番目が風しんの抗体検査から予防接種への結びつけでございます。風しんの指針におきまして、従来抗体検査や予防接種が推奨されておりましたが、抗体検査の結果を予防接種に結びつけることが重要であるという趣旨の記載を追加したところででございます。
5番目が広域感染発生時の対応の強化でございます。こちらも両指針におきまして、国が自治体間での情報共有や連携体制の方針を示し、技術的援助等の役割を積極的に果たすこと、及び都道府県等における相互の連携体制をあらかじめ構築しておくことが重要であるといった趣旨の記載を追加したものでございます。
具体的に資料4で麻しん、資料5で風しんの特定感染症予防指針の改正案を新旧対照表の形で示してございます。今回の修正部、改正部分を傍線で示しておりますが、ページを順にめくっていただきまして、5ページをごらんいただきますと、先ほど御説明いたしました5つの改正の主なポイントに該当するところを赤枠で示しております。5ページには、方向性の5番目に当たります広域感染発生時の対応の強化について、今回新たに追加された記載がございます。
さらにページをめくっていただきまして、7ページは、ポイントの1番目でありますところの定期予防接種率の向上に向けた対策の強化についての記載部分でございます。
9ページにはポイントの2番目、児童福祉施設、医療機関等における対策の強化及びポイントの3番、輸入症例への対策の強化について、それぞれ新たに記載を追加あるいは修正したところを示してございます。
こちら及び同じようにポイントの2番目と3番目につきましては、9ページより13ページにかけまして、特にこの予防指針の中で「予防接種法に基づかない予防接種の推奨」という章でございますけれども、その中で児童福祉施設あるいは医療機関における対策の強化及び輸入症例への対策の強化の部分を主に追記及び修正させていただいたというところでございます。
16ページにも方向性の1番でありますところの定期予防接種率の向上に向けた対策の強化といたしまして、都道府県等における麻しん・風しん対策の会議等の役割について示しております。
以上が麻しんの改正案でございます。
続きまして、資料5に風しんの予防指針の改正案について示しております。同様にポイントに該当する箇所を赤枠で囲ってございます。
6ページに5番目のポイントについての修正箇所、追記箇所を示してございます。
7ページから16ページにわたりまして、改正のポイントの2番あるいは3番に関する部分が記載、追記あるいは修正されてございます。
風しんにつきましては、麻しんと異なりまして、ポイントの4番は風しんの指針のみの改正箇所でございます。こちらにつきましては、7ページ目に方向性の4といたしまして赤で囲ってございますが、抗体検査において陰性または抗体価が低いという結果が確認された場合に、確実に予防接種を受けることにつなげることが重要であるという記載が追加されております。
それに伴いまして、9ページの「予防接種法に基づかない予防接種の推奨」。こちらは14ページまで続いている項でございますが、抗体検査や予防接種の推奨を行うというのが従来の記載でございましたが、おのおのの予防接種の推奨する項目におきまして、それぞれの文末の部分に「抗体検査の結果が陰性若しくは抗体価が低いと確認された者については、予防接種を受けることを推奨する」といった記載に修正してございます。
そのほか、5年前からの事前の修正でありますとか、あるいは麻しんと風しんで表現に若干ずれのあったような箇所について、主に修正しております。
以上が麻しん及び風しんに関する特定感染症予防指針の改正案についてでございます。
○倉根部会長 ありがとうございました。
ただいま事務局から説明をしていただきましたけれども、この点で御質問、御意見ございますでしょうか。山田委員、どうぞ。
○山田委員 反対とか賛成ということではないのですが、予防接種法に基づかない強い推奨をされるということは非常にいいと思うのですが、それが結果として接種につながったかどうかということをどうやって把握できるのかということがちょっと疑問なのですけれども、それはいかがでしょうか。
○倉根部会長 事務局、いかがでしょう。
○髙倉結核感染症課長補佐 今の御質問につきましては、現在のところ、予防接種法に基づかない予防接種について、どのような方にどのように接種されたかということを確実に把握することは困難な状況にございます。
今回強い推奨として、今後厚生労働省のほうより関係機関等と協力しながら、該当する対象者に対する推奨を行っていくわけでございますけれども、その中で推奨の結果、どのような状況であったかということを同様に関係機関等に照会いたしまして、それらを繰り返すことにより、その接種を少しでも確実なものにつなげていきたいと考えております。
○倉根部会長 大石委員、どうぞ。
○大石委員 私は麻しん・風しんの小委員会の委員長を担当しており、過去4回会議を開催して議論をしてきたところですので、全体について説明したいと思います。麻しん、風しん、基本的に書きぶりが共通しているというところは、皆さん御納得だろうと思います。今回主なポイントが良くまとめられています。最近の麻しんの事例で注目すべきは、未接接種の人が集団発生の発端になる事例が多々あるので、未接種の人たちに、定期接種に基づかない接種をどう勧めていくかいついて議論しました。例えば、医療機関及び児童福祉施設の職員等には強い推奨をする必要があるとされています。今回の改定で感染対策がかなり強化されていると思います。
もう一つ大事なことは、昨今問題になっている広域感染事例の自治体間の情報共有とか、医療機関との情報共有の課題です。個人情報のこともあり、自治体の判断が一律にならないというところが非常にもどかしいところで、我々としても情報発信が非常にしにくいところなのですが、各自治体に一定の方針を決定しておくようにということが書かれていますので、自治体としてはぜひこれを実施してほしいと思っております。
もう一つは、以前から繰り返し議論されている風しんの30代、50代の感受性者ポケットに対する対策なのですが、ここも基本的には予防接種法に基づかない対策の中に書き込まれています。
風しんの指針の12ページ、「予防接種法に基づかない接種の推奨」という項の6番のところで、「厚生労働省は、今後の大規模な流行する観点及び先天性風しん症候群の発生を防ぐ観点から、事業者団体に対し、雇入時等の様々な機会を利用し、産業医と協力して」という文脈があります。そしてまた一定の年代、昭和37年度から平成元年に出生した男性従業者については強く推奨ということをここに記載していただいておりまして、先天性風しん症候群の事例の感染源になったのは、周辺の職場の方々からの感染が多かったということを踏まえて、こういったことを記載していただいているといます。
しかし、山田委員がおっしゃったように、これから本指針を実際の対応にどうつなげていくかというところが大事な部分なので、とりわけ予防接種法に基づかない予防接種の推奨を、これからどう進めていくかというところが重要思っております。
以上、追加説明申し上げました。
○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 はしかについては、特に特定感染症予防指針が果たした役割は強くて、これが出たことがきっかけで自治体が根拠を持って動けるようになったということがあると思うのです。風しんも特定感染症予防指針がつくられて、今回それを改善することになったというのは、方針として非常にウエルカムであると思うのですけれども、今、大石委員もおっしゃったように、これをどうやって実行していくかというところが一つ課題だろうと思いますが、でも、そこは大きく期待をしたいと思います。
それから、来週、倉根先生もメンバーとして出掛けられるのですけれども、WHO西太平洋地域事務局の予防接種に関する国際専門家会議(TAG Meeting)があって、はしかと風しんだけではないのですけれども、はしかと風しんも大きな議題の一つになります。その中で、幸いに沖縄も終息宣言ができて、今回はしかについては、かなり社会的な関心を呼んだけれども、コントロールをきちんとできたということは、胸を張っていいことではないかと思います。私も自治体ですけれども、当該の自治体であるとか関連するような自治体では非常に努力をされたということもちょっとつけ加えておきたいと思います。もちろん、国も一生懸命やっていただいたということもあります。
そういうことで、風しんの場合は2020年目標ということがありますが、流行がおさまると、どうしても関心がなくなってしまうのは世の常ですけれども、しかし、これからが本当の勝負だと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
○倉根部会長 コメント、ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 沖縄での流行の終息宣言を出すときに、どれだけの期間患者が発生しないということで、例えば潜伏期の何倍とか、いろんな根拠を持たせるわけですけれども、今回この4週間というのは、何か根拠を持たされたのでしょうか。
○倉根部会長 事務局、お願いします。
○髙倉結核感染症課長補佐 こちらは、潜伏期間の2倍の期間というのを基本と考えておりまして、そのあたりにつきましては、国立感染症研究所のほうで作成いただきました自治体の対応ガイドラインのほうにもそれを目安にするという記載がありますので、それに倣ったものと考えております。
○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。山田委員、どうぞ。
○山田委員 本質と余り関係なくて申しわけないのですが、沖縄で台湾の方が発熱をした3日後に入国されていると。そうすると、空港ではサーモグラフィーで検出をしようとされているのですけれども、結局、そのぐらいの発熱ではスルーしてしまうということなのか、それともこの方の発熱が特異的に低くて検出できなかったのか。今後オリンピックなどでああいうシステムをどうやって生かすかというときに、非常に重要なことになるのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
○倉根部会長 事務局、お願いします。
○髙倉結核感染症課長補佐 御質問ありがとうございます。
入国時点での体温がどうであったかという、そこまでの詳細は確認できておりませんが、麻しんという病気は、典型的には二峰性と申しまして、初期症状の後に若干解熱する短期間があった後に高熱と全身性の発疹が出る。そういう経過をとることも多々ございますので、振り返っての推測にすぎませんが、入国時点では一時的に若干解熱傾向にあったのではないかと推測しております。
しかしながら、今後の入国時のチェック体制といった意味では、十分注意を要することがよく知らされる症例ではございましたので、今後の対策の参考にしていきたいと考えております。
○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。越田委員、どうぞ。
○越田委員 実はこの沖縄の麻しんが名古屋に広がりまして、先週の日曜日に、その患者さんが潜伏期間中に名古屋から石川県に滞在したという情報が自治体間情報で我々のところにありました。私は保健センターの乳幼児健診にも関与しておりまして、今週の火曜日にたまたま3か月健診がございましたので、そこに来所される45名のお母さん方全てに聞き取り調査をいたしました。未接種ないしは1回接種のお母さんに接種勧奨をすべきではないかと考えまして。そうしたところ、お母さんご自身の予防接種歴が記載されているご自身の母子手帳は当然も持ち合わせていらっしゃらないので、お母さんの曖昧なご記憶の中で、麻しんワクチンの接種状況をお尋ねしました。あくまでも聞き取り情報ではありますが、少しお話をさせていただきたいと思います。
平成2年4月2日より前に生まれた方と平成2年4月2日以降に生まれた方で分けて考えてみました。そうしますと、45名のうち、平成2年4月2日より前に生まれた方が34人、後に生まれた方が11人でした。平成2年4月2日より前に生まれた方34名では、未接種が4名、1回接種が14名、2回接種が3名、不明は13名でした。平成2年4月2日以降に生まれた方11名では、未接種者はなく、1回接種2名、2回接種6名、不明は3名でした。不明者は合わせて16名で、この日健診にお越しのお母さんの3分の1は記憶にないのです。でも、考えてみますと、0歳とか1歳とか2歳に打っても、お母さんは覚えているはずがないのです。つまり、この年代の方は、あなたの接種歴はどうですかと言われても、自分の母子手帳がない限りは正確なことはわからないということなのです。
ですから、今般の指針は隔世の感で、すばらしいなと私も思ったし、実際自治体で感染拡大の予防を行っていますので、これがあると我々も随分動きやすいと大変感激はしているのですけれども、個人の予防接種歴が縦にも横にもつながるような仕組みの構築、マイナンバーの導入等々の活用も大事ではないかと思うのです。
同様に、風しんワクチンのついても聞き取り調査しましたが、平成2年4月2日より前に生まれた人で未接種は3名いる。一方で、風しんに関しては、妊娠中に産院で抗体検査をなさっていますので、3回打っている人もいるわけです。つまり、HIが16に上がらないと再々接種する。再々接種が必要なのかどうかということは別にして、母親は3回接種の方がいらっしゃる一方で、先ほどお話が出ておりましたお父さんに関してはほとんど接種勧奨がなされていない。同世代の男性にも風しんワクチンの接種は必要ではないかなと思っています。
自治体の住民検診では肝炎ウイルスの抗体検査を行っております。これは肝炎ウイルス陽性の人を見つけ、治療につなげるための検査でありますが、風しんの場合は、抗体検査を行うよりは、一定年齢を対象にワクチン接種を行って、CRSの根絶を目指すことを検討していくべきではないかという気がいたします。
以上です。
○倉根部会長 ありがとうございます。
ただいま意見がございました。
○岡部委員 もう一ついいですか。
○倉根部会長 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 ありがとうございます。
今回、沖縄だけではなくて、名古屋であるとか、現在福岡が動いていますが、1例でも発生したら積極的にサーベイランスを行うというのが、フォローするには有効だと思うのです。ただ、自治体では数千例に及ぶ人々をフォローしなくてはいけないので、今までの1例を見た場合の積極的な疫学調査、健康調査であるとか接触者調査は、比較的流行を落としていこうというときの段階のやり方なので、これは大石先生のほうへの注文にもなるのですが、現在の落ちついてきた状態における積極的疫学調査というのは、もうちょっと工夫をしたほうが効率よくできるだろうと思うので、その点をお願いしたい。
それから、今の3回接種とか、2回接種を受けた人でも罹ったというのは、確かに数字だけではそう見えるのですけれども、調査ではことに2回接種を受けた方の症状は軽くて、PCRでみるウイルス量も非常に少なくて、そこからの二次感染は極めてまれであるので、決して2回接種が無駄だということではないわけで、その辺も含めて調査のやり方や何かを少し工夫しなくてはいけない段階かと思います。
○倉根部会長 今のコメントに関してでも結構でございますし、あるいはほかにございますか。大石委員。
○大石委員 今回改訂された指針につきまして、自治体は積極的に内容を吟味していただけると思います。一方、問題は医療機関であるとか事業所といったところにどう伝えていくかというところが大事になってくると思います。厚生労働省は積極的に情報共有を進めていただきたい。もちろん、感染研も情報共有を進めます。どうぞよろしくお願いします。
○倉根部会長 ありがとうございます。
事務局、どうぞ。
○髙倉結核感染症課長補佐 さまざまな御指摘、御意見ありがとうございます。
予防接種の歴の確認の点、あるいは先天性風しん症候群の防止に向けた周囲の男性等への接種勧奨、及び今、医療機関や児童福祉施設等への対策の徹底につきましては、一部今回の指針の修正の中で強調させていただいた部分もございまして、例えば妊娠がわかった場合に、周囲の者も含めた家族の方に対して接種歴や罹患歴を確認して、予防接種を推奨するといった旨も記載させていただいているところでございます。
さらに、医療機関等につきましても、この指針はあくまで方針を大きく定めたものでございますので、おのおのの対象とされる機関につきましては、今後感染症研究所のほうと協力しながら、ガイドライン、手引などの文書を作成しながら、それを通してより具体的なところを周知していくという形で進めてまいりたいと考えております。
○倉根部会長 ありがとうございます。
特にほかになければ、私から1つだけコメントです。例えば資料4の9ページ、資料5の11ページに方向性マル2というところがあって、それから資料3の○の2、「児童福祉施設、医療機関等における対策の強化」の1行目に「麻しん指針及び風しん指針において、0歳児や予防接種の不可能な者」という書き方があるのです。言わんとしていることは、通常予防接種できない人ということだと思うのですけれども、「不可能な者」というのは、本当に不可能なのかと言われると、難しい解釈もあると思うので、ここの「不可能な」は、本来資料4とか5にそういう書き方をしていないので、少し緩やかなというか、現実に即した書き方が必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○髙倉結核感染症課長補佐 御指摘ありがとうございます。これは議論の過程で作成した資料の表現そのままを使用していまして、不適切だったかと思います。御指摘いただきましたように、今回の予防指針の案の中にはそういった記載は配慮して、ない形になっているかと思いますので、もう一度確認させていただきますし、今後はこの表現については適切なものを心がけるように注意していきたいと思います。どうも御指摘ありがとうございます。
○倉根部会長 ありがとうございます。
では、それをもって、どんな文言になったかは私のほうで確認いたしたいと思います。委員からいろいろ御意見いただきました、また、今述べた意見の確認も私のほうで行い、その上で本事案については了承ということにしたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
○倉根部会長 それでは、この事案については了承するということにいたしたいと思います。ありがとうございます。
それでは、次は議題2「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針の改正について」。まずは事務局から御説明をお願いしたいと思います。資料6、資料7であります。
○嶋田結核感染症課専門官 それでは、レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針の一部の改正について御説明します。資料6をごらんください。
初めに、改正の趣旨について御説明します。本指針は、感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針に基づき、レジオネラ症の感染源となる設備において講ずべき衛生上の措置を示し、レジオネラ症を予防することを目的として平成15年に定められた指針です。
今般の改正は、平成29年12月から平成30年1月にかけて、高齢者施設において、加湿器内のレジオネラ菌属に汚染されたエアロゾルを吸入したことが原因とされるレジオネラ症の感染事例が報告されたことを踏まえ、加湿器の衛生上の措置について明記するためのものです。
改正の概要としては、新たに加湿器による衛生上の措置に関する項目を設け、エアロゾルを発生させる加湿器の衛生上の措置に関する基本的な考え方、構造設備上の措置及び維持管理上の措置について定めております。
続いて、資料7の7ページと8ページの赤線で囲っている箇所をごらんください。これまでの指針には、入浴設備、空気調和設備の冷却塔、給湯設備や、その他エアロゾルを発生させる機器及び設備についての衛生上の措置のことが記載されていましたが、今回はこちらに加湿器についての項目を追加記載したものです。
建物内の空気調和設備の加湿装置と、床置き式加湿器などの家庭用加湿器について記載しております。特に施設などで使用されることの多い家庭用加湿器においては、使用後はタンク内の水を毎日完全にかえることや、細菌汚染の原因となるタンク内等の生物膜、すなわちぬめりやバイオフィルムを除去するためにタンク内を洗浄する旨の記載をしております。
今後としましては、今回の感染症部会で御了承いただいた後は、パブリックコメントを経て、平成30月8月上旬に告示したいと考えております。
以上です。
○倉根部会長 ありがとうございました。
ただいまの説明に関して、何か御意見、質問ございますか。荒川委員、どうぞ。
○荒川委員 加湿器についての記載が追加されるということですが、具体的に8ページの一番下、三項の4「家庭用加湿器のタンクの水は、毎日完全に換えるとともに、タンク内を清掃すること」とあります。具体的な対応としては、加湿器を製造販売している業者に機器の取り扱い説明書にこういった記載を入れるように指導するということになるのですか。
○倉根部会長 事務局、いかがでしょうか。
○野田結核感染症課長補佐 具体的な対応といたしましては、この技術指針については、基本的には自治体に対しての周知という形になりますが、今回集団発生は高齢者施設などで起こったというところもございますので、自治体を通して、施設で使う場合にこういうことに注意してくださいということをやっていくという形になると思います。
一方で、加湿器については、使用上の注意の部分で掃除をするということが書かれていると思っております。
○荒川委員 もう既にそれは記載がされているということですか。
○野田結核感染症課長補佐 すべからく確認しているわけではございませんけれども、基本的には掃除をするということが書かれていると思います。
○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。山田委員、どうぞ。
○山田委員 先ほどの質問と同じようなことですが、加湿器の構造上の基準がここに書かれているわけですね。例えば「水処理装置を設置し」とか「点検及び清掃を容易に行うことができる構造」ということを言っているのだとすると、これに準じないような製品というものは販売できないような格好にしていくという理解でよろしいのでしょうか。
○倉根部会長 事務局、いかがでしょう。
○野田結核感染症課長補佐 基本的にこれは技術上の助言になりますが、何か規制をできるという部分でないと考えております。ですので、販売上、何かの規制につながるようなものではないと思っております。
○倉根部会長 課長、どうぞ。
○三宅結核感染症課長 通常我々がつくるときは、まさにうちの補佐が言っているとおりなのですね。ただ、このレジオネラの、ビルのやつとかそういうのはビル管法とかあるので、厚生労働省の所管の中でいろいろできるわけですけれども、どこかに通知できるところはあるのですか。少し相談する相手を。これは医療機器なり単なる電気製品だったりすると思うのですが、そういうところに何らかの情報提供をして、そこのルートでできないかということはもう少しトライをしてみたいと思います。
○倉根部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
私のほうから質問をいいですか。例えば2カ所、6ページの左の三の1に「冷却塔に供給する水を水道法第四条に規定する水質基準に」ということで、水道法第四条というのは三十二年にと書いてあるのですけれども、これは通常簡単に見つかる文書なのですか。
○嶋田結核感染症課専門官 水道法の四条については、例えば塩素消毒であったり、金属の残留のことであったり、細菌の残留のことを記載しております。
○倉根部会長 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 ちなみに、その水質検査というのは地方衛生研究所でもやっております。
○倉根部会長 そうですか。
清水委員、どうぞ。
○清水委員 先ほど自治体に対する指導・助言という形でということだったのですが、高齢者施設ということになりますと、例えば厚生労働省の老健局とかを通じて高齢者施設に対する指針のようなものとして出すという考えはおありなのでしょうか。
○倉根部会長 事務局、いかがでしょうか。
○野田結核感染症課長補佐 ありがとうございます。
この技術上の指針を平成15年に作成した際には、高齢者施設などを所管するようなところとも協力して周知をさせていただきましたので、今回改正させていただきました場合には、そのようなルートも通じて周知を図っていきたいと考えております。
○倉根部会長 よろしいですか。
○清水委員 はい。
○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。特にございませんか。
それでは、ただいま幾つか御意見をいただきましたけれども、提示いただいたものについては、この委員会として了承するということでよろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○倉根部会長 それでは、この議案については、この委員会として了承するという形にしたいと思います。ありがとうございます。
次は議題3「プレパンデミックワクチンの今後の備蓄方針等について」。事務局から資料8の説明をお願いいたします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長補佐 それでは、資料8「プレパンデミックワクチンの今後の備蓄方針等について」に関しまして、御説明させていただきます。資料は8になりますが、参考資料は7と8と9が該当するものになります。
まず、プレパンデミックワクチンの備蓄の経緯ですが、平成9年、世界で初めて鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスによる感染確定例が報告されております。
それを踏まえまして、H5N1ウイルス由来の新型インフルエンザが発生した場合、その病原性の高さに鑑み、大きな健康被害が引き起こされることが想定されたことから、平成18年度よりH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄を行うこととなり、平成30年度まで適宜ワクチン株の変更等を実施しながら、継続して備蓄を行ってきております。
参考資料7の4ページ目に新型インフルエンザ対策におけるプレパンデミックワクチンの備蓄の変遷が書いてございます。これは平成23年以降のものになりますが、このような形でこれまで備蓄をしてきておりまして、現時点では危機管理上重要性が高いワクチン株に関しまして、1,000万人分の備蓄を行っております。
資料8の1の3つ目のポツですが、備蓄に関する現行の方針は、「検討時点で『危機管理上の重要性』が高いワクチン株の備蓄を優先すること」とされていることから、現時点ではチンハイ株を1,000万人分備蓄しております。
また参考資料に戻っていただきたいのですが、下段にチンハイ株が2つ並んでいますけれども、そのうちの900万人分が31年度に切れるという状況になってきております。なので、今後この株をどうしていくのかというのがまさに今回御議論いただきたいことになります。
参考資料7の1つ前のページに関しまして御説明させていただきます。これまでプレパンデミックワクチンの備蓄方針の決定に関しましては、4つの視点と3つの指標というもので議論していただいておりました。平成28年10月の第19回厚生科学審議会において決められた内容になりますが、近年のH5N1鳥インフルエンザ発生の疫学的な状況、パンデミック発生の危険性、パンデミックが発生した際の社会への影響、発生しているウイルスとワクチン株の抗原性ということを踏まえた上で、さらに危機管理上の重要性として、ヒトでの感染事例が多い、ヒトでの重症度が高い、日本との往来が多い国や地域での感染事例が多いということで審議いただいておりました。
以上のことから、鳥インフルエンザ等に関しての現状を先に御説明させていただきたいと思います。
資料をそのままめくっていただいて、参考資料7の5ページ目、鳥インフルエンザA(H5N1)発生国及びヒトでの感染症症例、2003年以降のものがこの世界地図のほうで記載がございます。主にアジア及び中東のほうで出ているのですけれども、時系列に直したものが6ページ目になります。今、備蓄しておりますチンハイ株というのは、2015年というところに書いてありますエジプトで136例の症例が出ていて、世界で145例が出ていたものに該当しますが、現状のH5N1に関しましては、エジプトでは2016年が10例、2017年が3例という形になっておりまして、世界的にも2016年が10例、2017年が4例となっております。
そのような状況でH5N1が減少してきておりまして、このことに関しましては、国立感染症研究所のほうからも高病原性鳥インフルエンザ発生状況という形で報告がされております。
参考資料8のほうを見ていただきたいと思います。鳥インフルエンザのそれぞれの亜型に関しまして、現在の発生状況が報告されております。まず、鳥インフルエンザH5に関しましては、今、御説明させていただきましたように、1ページ目の一番下、2014~2015年のエジプトにおける流行の後は報告が激減し、WHOへ2017年2月以降報告されているヒトへの感染例は、インドネシア及びエジプトが計4例ということになっております。
また、H5N1以外の鳥インフルエンザに関しましても、この発生状況のほうで解説がされておりまして、ずっと見ていただきたいのですが、H5N6というのはヒトでも感染例がこれまで報告されております。3ページ目の下のほうで、日本のトリでの発生状況としましては、2018年1月に香川の養鶏場で1件発生しておりまして、野鳥については3都県で46件報告されているので、トリとしては報告はされているのですが、国内ではヒトの症例は報告されておりません。
ただ、世界のヒトでの発生例としましては、2018年6月7日までに計19例が報告されておりますが、2018年以降は2例になっております。これは具体的にいつ発生したかというのが4ページ目に記載がございます。2017年に2例報告されておりまして、それ以外の報告はございません。
このような状況の中で今、数が多いものはどういったものになってくるかといいますと、参考資料7の7ページ目「鳥インフルエンザA(H7N9)のヒトへの感染の対応について」というところを見ていただきたいのですが、現在鳥インフルエンザの中で多いと言われているのはH7N9の型になります。平成25年3月以降に関しまして、新たな鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト感染事例は1,567例の報告がございまして、感染患者のうち615例の死亡が報告されているとなっております。下の図を見ていただきたいのですけれども、2016年、2017年のところで大きい山がありますが、そこのところでかなり数が出ていたとなっております。
H7N9に関しましては、国立感染症研究所からリスクアセスメントのほうが更新されております。参考資料9の1ページ目、疫学的所見の「1)事例の概要」の2つ目のポツのところで最新の状況がアップデートされております。第5波、先ほどのグラフで山が大きいところが、ここの記載にある766例であったというところに該当します。2017~2018年の一番直近のシーズンに関しましては3例と数が減ってきてはいるのですけれども、その前の段階では非常に多かったというのがございます。
ちなみに、2016~2017年の第5波は非常に多かったということですが、その前の年は120例という形で少し下がっておりまして、その前の第3波は233例という形で、数というのは、これまでも推移が増加したり、減少したりというのがありますので、2016~2017年のシーズンは高くて、2017~2018年のシーズンが低かったからといって、今後どうなるかというのはまだはっきりわからないというふうになります。
そのことに関しまして、リスクアセスメントが感染症研究所の報告で記載がございます。2ページの「感染源・感染経路」のウイルス学的所見ということになってきますが、そこの「Update」と書いてあるところ、CDCによってインフルエンザのパンデミック時の個々のウイルスの評価と優先順位の決定のためにInfluenza Risk Assessment Toolが提唱されているというところがございますが、そこのところでは現在鳥インフルエンザH7N9ウイルスは評価対象になっておりまして、鳥インフルエンザの中では最も高い、中~高レベルのリスクに分類されているという記載がございます。そういった状況で国際的にもリスクが高いということがH7N9に関しては言及されております。
リスクアセスメントの次のページ、一番上から1つ目のポツ、「米国CDCの報告」というところがございますが、そこのところで実際に今、流行している株に関しての解説がございます。
参考資料7の9ページ目、H7N9のHA遺伝子系統樹というのもここで解説させていただきたいと思います。主にH7N9のHA遺伝子の系統樹は、Pearl River deltaとYangtze River deltaと書いてあると思いますが、この2つの群に大きく分かれます。この中で現在のところは93%がYangtze River deltaという形になっておりまして、上のほうのグループの数が多いとなっております。
その中で主に2つのグループに分かれるのですが、鳥に対しての低病原性のものと鳥に対しての高病原性のものに分かれておりまして、今、数として多いものはYangtze River delta、低病原性のものになってきております。
参考資料9に戻っていただいて、先ほど御説明させていただいたポツの1つ下のところに書いてあるのですが、WHOのインフルエンザ協力センターで実施された抗原解析の中で、Pearl River deltaに属するウイルスはWHOが推奨する2013年のワクチン候補株と抗原性は類似しているのですが、今、主流になっているものはYangtze River deltaですという記載がございます。
そこのところに高病原性のH7N9のウイルスが含まれておりまして、ここから新たに高病原性の鳥インフルエンザウイルスを含む2株のワクチン候補株が作製されることになったということで、作製がされております。
以上が今の鳥インフルエンザに関する現状になります。
また、新型インフルエンザの対策の一環として、現在プレパンデミックワクチン以外にパンデミックワクチンの製造体制の整備事業が行われておりまして、平成30年度末をめどに製造の事業が完了していく見込みになっております。それができますと、これまでの季節性のインフルエンザのように、鶏卵を使ってのワクチンから考えると、製造の時間がかなり短くなってくるとされております。
具体的に事業が完成していくと、ワクチン候補株が企業に入ってから約半年で全国民分のワクチンが製造できる体制が見込まれるという状況になってきておりまして、先ほど申し上げましたような鳥インフルエンザの疫学の状況及びそのようなパンデミックワクチンの製造の体制が整いつつあるという状況の中で、今後のプレパンデミックワクチンの備蓄方針について議論いただきたいと考えております。
資料8の2つ目のプレパンデミックワクチンの今後の備蓄方針ということに関しまして、新型インフルエンザ対策に関する小委員会の下にある公衆衛生作業班のほうで言われたこと及び内閣官房新型インフルエンザ対策有識者会議において、今後のプレパンデミックワクチン備蓄の必要性と、備蓄が必要な場合に備蓄する亜型について検討すべきとの指摘をいただいております。
その提案をいただいた上で、提案という形で以下2つを挙げさせていただきたいと思います。現状としまして、平成31年という比較的近いタイミングで有効期限が切れるということがございますので、それに対して今後どうしていくかということで言いますと、特定接種対象者に対し迅速に接種を行うためには、プレパンデミックワクチンの備蓄が当面は必要と考えております。その内容としましては、1,000万人分備蓄するプレパンデミックワクチンとして、近年の鳥インフルエンザ発生状況から、検討時点において「危機管理上の重要性」が高いH7N9株(A/Guangdong株)としてはどうかということを提案させていただきたいという意見を小委員会のほうからいただいております。
資料8の2ページ目、一番上の星のところに書いてありますが、これまで「危機管理上の重要性』の高さということに関しまして、先ほど3つ視点を挙げさせていただきました。
それを受けて、2つ目の星ですけれども、このため、平成29年度までは、H5N1鳥インフルエンザウイルスのチンハイ株が該当しておりましたが、平成29年以降はH5N1鳥インフルエンザのヒトでの感染事例は4例にとどまったということが現状でございます。一方、中国で流行しているH7N9鳥インフルエンザウイルスについては、ヒトへの感染者数が、平成25年以降1,567名が報告されており、急激な増加が確認されていること。また、このうち613人の死亡事例が報告されており、重症度が高いこと。また、中国は日本との往来が最も多い国であることから、現在確認されている亜型の中では最も危機管理上の重要性が高いと考えられるとしております。
また、H7N9鳥インフルエンザのうち、高病原性から低病原性まで広く交差性を示すH7N9株(A/Guangdong株)を細胞培養によるワクチン製造候補株とするのが望ましいということで、提案をさせていただきたいと考えております。
参考資料7の一番最後の系統樹に戻っていただいて、一番下の四角の中の一番下のポツを見ていただきたいのですが、高病原性のサブクレードの中のA/Guangdong株というものは、ワクチン候補株IDCDC-RG56Nが開発されておりますが、フェレットを用いた血清では、低病原性及び高病原性ウイルスにも広く交差反応が示されることが現段階でわかっておりますので、そういった観点からこのA/Guangdong株を提案したいということが小委員会のほうから挙げられております。
資料8に戻っていただきまして、留意事項としましては、細胞培養事業で行っている一般財団法人化学及血清療法研究所、北里第一三共株式会社、武田薬品工業株式会社においては、それぞれアジュバントの有無、種類が異なり、パンデミック時に発生した株との交差免疫性に違いがある可能性があるため、プレパンデミックワクチンの備蓄に当たっては、製造可能な各社から備蓄することが必要と考えております。
続きまして、中長期的な課題ということに関しましては、先ほど御説明させていただきましたように、30年度末をもって細胞培養事業の製造体制が整備される見込みでございます。整備後、各社の製造体制、パンデミック発生からプレパンデミック、パンデミックワクチンの接種時期、接種体制等を精査し、改めてプレパンデミックワクチンの備蓄の必要性に関して検討することとしてはどうかということを提案させていただきたいと考えております。
以上になります。
○倉根部会長 事務局から説明をありがとうございました。
ただいまの説明に関して何か御意見ございましょうか。岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 小委員会の委員長をやったので、補足的に。プレパンデミックワクチンをどうやって備蓄していくかというのは、ここでも議論をされていたのですけれども、それに対してリスクをどう考えるかということと、タイミング的に中長期的な方針を立ててこられなかったということがあるので、今回はそれも含めて、一つは当面の備蓄方針で、これが枠の1番のところで、もう一つの部分が中長期的に見た場合に2番ということで、現在、例えばプレパンデミックワクチンの特定接種であるとか、あるいは住民接種であるとか、自治体はそれで進んでいるので、その方針を今のところは維持しつつ、新しいパンデミックに対してどう備えるのか。この2つの議論を並行してやっていくことが必要であるということになったわけです。
今まではH5N1が中心で、高病原性鳥インフルエンザとして留意されていたわけですが、これが全く消え去ったわけではないのですけれども、リスクの考え方から言うと、全てに備えるわけにはいかないので、よりリスクが高そうな、ポッシビリティーとして高いものということでH7N9が選ばれたという経緯があります。
H7N9もいろんなつくり方、アジュバントがあるないとか、製剤としても異なった形になってくるので、統一したH7N9ワクチンというわけではないので、それぞれができるところから早くつくったほうがいいのではないかということが議論されました。
中長期的な分については、いろいろなリスク管理だけではなくて、製造技術その他があるので、こういうことを考慮しながらディスカッションをより深めていったほうがいいだろうというのがあります。
もう一点は、実際にH5N1についても毎年毎年つくりながら、使われていないので、極めて無駄ではないかという声も当然あるわけですが、ワクチンそのものが実際に使われる場にならなかったというのはいいことなのですが、それによる技術開発であるとかシステムの構築であるとか、いろいろなものについては、そういう方面に与えた影響は強いだろう。つまり、つくって全く捨ててしまったということでなくて、備蓄というものに対する評価もしていいだろうというのが小委員会の大体の議論でした。
○倉根部会長 追加をありがとうございました。
賀来委員、どうぞ。
○賀来委員 今の岡部先生の御意見にも賛成いたします。また、加えて今回の御提案、備蓄方針について賛成させていただきたいと思います。今も事務局から報告がありましたけれども、中国国内でH7N9による感染症がこれだけ多く流行しているという事実、それから1,566名の感染事例の中で、少なくとも613名の方が亡くなられ、死亡率もかなり高いということ、さらに中国との往来が多いということを考えても、H7N9をターゲットに置いていくというのは非常に重要なことではないかと思っています。
現時点において、まだ備蓄されているワクチンがないので、いろんな議論があるとは思うのですけれども、製造が可能であれば速やかに備蓄していただきたい。そういった方向へ是非とも進めていただきたいと要望したいと思います。
○倉根部会長 ありがとうございます。
山田委員、どうぞ。
○山田委員 H7N9のパンデミックポテンシャルを考えるに当たって、参考資料の7ページに4つのポツが出ていて、そこを見る限りにおいては、物すごいパンデミックポテンシャルがあるとはまだ考えられない。ただ、H5N1と比べたときに、中国での感染者数と死亡者数が多いから、ちょっと気をつけましょうという議論だと思うのですが、それを考えるときに、例えばH5とか、鳥に対しての高病原性のものについては、農場レベルあるいは各国で今までのH5N1に対する対応力で物すごくきちっと抑え込むということがやれているのではないか。それに対してH7N9は基本的に弱毒ですから、鳥が症状を出さないので、ヒトとの接触がはるかに多くなる可能性がある。無防備で。それが数に反映している可能性もあるのではないか。そうした場合に若干オーバーエスティメートしている可能性もあるのではないかと思うので、現時点でプレパンデミックに備える、次のターゲットとしてH7N9を挙げることはいいと思うのですけれども、それのラショナールをもうしばらく継続的に調べる必要もあるのではないかと思います。
以上です。
○倉根部会長 ありがとうございました。
岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 鳥のほうについては、農水のほうがやることになると思いますが、厚労省のほうからもいろいろな情報を提供していただくことになると思います。H7N9については、参考資料7の一番後ろにあるように、従来の鳥に対しての低病原性から鳥に対しての高病原性に変化してきているという事実から、それでヒトに急速に広がっているというわけではもちろんないわけですけれども、ただ、今までの致命率の高さ、それからもとのほうの鳥にとって高病原性になったということは、ポテンシャルとしてはヒトに対しても影響が高いだろうというところで議論がされたわけです。もちろん、H5N1をこれで無視するわけではないだろうと思います。それから、今までの毎年1,000万ドース、推測をしながらつくっていくことがいいかどうかという、中長期的視点に立ったものについても、いろんなエビデンスを集めながら、妥当性であるとか、あるいは本当に備蓄が必要かどうかということについても委員会では議論を続けたいと思っています。
○倉根部会長 山田委員、どうぞ。
○山田委員 H7N9が高病原性化したということに伴って、今度は逆に農場レベルの封じ込めがきちっとされるようになると、ヒトへの感染が減るかもしれない。そういうところに対しても注視したほうがいいのではないかと思います。
○倉根部会長 ありがとうございます。
調委員、どうぞ。
○調委員 中国が主なH7N9のソースだと思うのですけれども、中国での鳥の対策として、鳥に対するワクチンというのは導入が進んでいるのでしょうか。
○倉根部会長 事務局、情報はいかがでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長補佐 これまで委員会等では専門の委員のほうから、鳥に対するワクチンが実施されたという報告は受けております。そのことがどれぐらい影響しているかということに関しては今後引き続き検討が必要だと伺っております。
○倉根部会長 調委員、どうぞ。
○調委員 若干細かい質問で申しわけないですけれども、もちろんH7N9のワクチンをつくっていくということは非常に理解しやすいと思うのですが、参考資料9の3ページのところに、アメリカで2株ワクチン候補株があって、日本で今回つくる可能性があるというのは、左側の株ということですか。もしそうであるとすれば、それを選んだ理由というのはあるのでしょうか。
○倉根部会長 事務局、どうぞ。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長補佐 参考資料7の一番最後のページで説明させていただくことになるのですけれども、このGuangdong株というものが、フェレットでは高病原性だけではなくて低病原性まで血清の交差性を示すということが言われておりますので、交差性の観点からこの株が挙げられております。
○倉根部会長 調委員、どうぞ。
○調委員 その交差性についてもちょっとお聞きしたいのですが、それは感染研でとられたデータなのでしょうか。もう一つは、フェレットで作製した血清の広い交差免疫性ということと、ヒトにおいてその免疫がついたときの交差免疫性というのは相関するのですか。
○倉根部会長 事務局、どうぞ。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 ワクチン作業班長の小田切先生がそのあたりにお詳しいのですが、本日はいらっしゃらないので、当日の議論を振り返って申し上げたいと思います。私もそこまで細かい説明ができないのですけれども、今、竹下から御説明申し上げたとおり、参考資料7の9ページの一番最後のところをごらんいただくと、右側のHunanのほうが、上のW5-1というところに赤字で書いてあるものになります。今回小委員会から御提案いただいているA/Guangdongというのが、下のHPAIというところの真ん中の赤いA/Guangdongというところに入るということでございます。
小田切先生から伺っているところでは、これはCDCのほうでつくられているものなので、日本のデータではなく、海外のデータになりますが、フェレットのデータイコールヒューマン(ヒト)のデータではないけれども、いまだ世界のどこでもつくっているものではないので、それは誰かがつくってやってみないとわからないということですが、少なくとも上のhunanのほうでカバーできる範囲が下のGuangdongに比べると狭いということは、フェレットの中でわかっている。そういうことでございます。
○倉根部会長 よろしいですか。
○調委員 はい。
○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。釜萢委員、どうぞ。
○釜萢委員 これまでの小委員会の中でも、今のお話に出ましたフェレットの交差免疫性とヒトの場合どうかというのは調べてみないとわからないので、今回もしプレパンデミックワクチンを生産する。株が決まったらば、大変だけれども、ぜひ臨床試験をきちっとやってほしいという要望を出していて、それは検討していただくことになっていたと思いますが、事務局、それでよろしかったですか。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 おっしゃるとおりでございます。これは小委員会、ワクチン作業班の中でも先生方から、今、お話があったとおり、ヒトできちんとデータをとって頂きたいというお話がありました。それは裏返すと、実際発生した場合に有効であるかという観点からも、きちんと臨床検体も保存しておくようにという御指摘をいただいていると思います。そちらのほうはしっかりと私どもも受けとめてやっていきたいと思っています。
○倉根部会長 よろしいですか。
○釜萢委員 はい。
○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。
そうしますと、この御提案については、委員会として了承するということでよろしいでしょうか。先ほど賀来委員から御意見があったのは、株についても使えるものから使うべきではないかという御意見ですか。
○賀来委員 はい。それも含めてです。
○倉根部会長 事務局、どうぞ。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 今、賀来先生から御指摘いただいた件ですけれども、先ほど竹下のほうから御説明したとおり、今回については平成31年度に有効期限が切れる分を備蓄するということですが、危機管理上の観点から早目に対応できるのであれば早目に対応したほうがいいという御指摘をいただいたと思っておりますので、その点も含めて、先ほどの血清の件も含めて適切に事務局のほうで対応してまいりたいと思っております。
○倉根部会長 それでは、よろしゅうございますか。山田委員、どうぞ。
○山田委員 31年度に900万ドース期限が切れるわけですけれども、今の話を聞いていますと、H7N9のちゃんとしたワクチンとして使えるようなものが31年中に完成するかどうかはわからない。そうすると、期限が来たからといってその900万ドースを捨ててしまっていいものかどうかということがちょっと疑問なのです。危機管理上として言うのであれば、シェルフライフは過ぎていても、数カ月とか1年とかは有効性が残るのではないかと思うので、それを備蓄の中に加えておくということは可能なのでしょうか。
○海老名新型インフルエンザ対策推進室長 今の御指摘は、恐らくH5N1のワクチンの期限が切れたからといって捨てることはないのではないかという御意見に近いのだと思いますが、そのあたりは製造時の条件ともかかわってまいりますので、よく検証して、いわゆる無駄にならないという観点でしっかり取り組んでまいりたいと思います。
○倉根部会長 よろしゅうございますか。
○山田委員 はい。
○倉根部会長 それでは、ありがとうございました。
ここまでの審議の議題については終了いたします。
報告事項に移ります。報告事項のマル1、今冬のインフルエンザの発生状況について。これも事務局からお願いいたします。
○繁本結核感染症課長補佐 今冬のインフルエンザについて(2017/18シーズン)、報告させていただきます。今冬のインフルエンザについてですけれども、毎年この時期に感染症研究所の先生方に最新の知見を含めて取りまとめていただいているものでございます。そして、本日厚生労働省、感染症研究所のウエブサイトのほうにアップさせていただく予定でございます。情報につきましては、全国の医療機関や保健所、地方衛生研究所、学校等から集まっているものでございまして、こうした関係機関の協力あってのものと理解してございます。全部で9部に分かれておりまして、第一部から第八部がそれぞれサーベイランスのまとめになっております。
第一部がインフルエンザの定点サーベイランスでございます。御存じのとおり、今年度は例年にない大流行でございまして、開始時期が11月下旬。これは昨シーズン同様でした。ピークの時期が1月下旬から2月の上旬。第3週から第5週になってございます。過去3シーズンと比べてほぼ同時期だったのですけれども、ピークの高さがサーベイランスを始めた1999年以降最も高いということで、累積の推計患者数においても近年の累積推計受診者数を大きく上回るものでございました。
第二部につきましては、インフルエンザの病原体サーベイランスでございます。2017/18シーズンはB型。これは山形系統が主でありますが、その次にAH3亜型。そしてAH1pdm09亜型の順で、複数のインフルエンザウイルスが、時期により割合は異なっておりますが、同時に流行しておりました。この混合流行が今季の患者数の増加に影響を及ぼしていた可能性があると考えられています。
第三部は、インフルエンザの入院サーベイランスでございます。いわゆる重症例をあらわしているものだと思いますが、2018年の17週時点で比較しますと、前シーズンと比較して、今シーズンは全ての年齢群で報告が増加しております。60歳以上の年齢群では特に大きく、約2倍の報告がありました。こうした年齢分布は過去3シーズンの入院患者数とは異なっている状況です。
一方で、入院時の医療対応の割合について見ますと、全年齢群で前シーズンや前々シーズンと同程度の割合で、推計受診者数に対する入院患者数の割合で見ましても、前シーズン、前々シーズンとほぼ同様の割合でありました。
それ以外に肺炎による死亡の把握であるとか、インフルエンザ様の疾患発生であるとか、脳症のサーベイランスもございますが、時間も限られていますので、割愛させていただきます。
最後に34ページです。参考として今シーズンの流行規模とインフルエンザワクチンの供給。今シーズンについては若干供給開始がおくれたという問題がありましたが、まず、今シーズンの流行規模については、混合流行が患者数の増加に影響を及ぼした可能性があり、かつ例えばアメリカにおいては過去6年間で最も大きな流行であったなど、世界的にも流行規模が大きかった。流行が大きかったのは日本だけの問題でなかったということがわかっております。そして、これまでに国内外でインフルエンザワクチンの供給がインフルエンザの流行の規模に影響を及ぼしたといった報告が見られないことから、供給の開始のおくれが今シーズンの流行拡大の要因になったということ、直接的な理由になっている可能性は否定的であると考えられております。
説明としては以上です。
○倉根部会長 ありがとうございました。
何か御質問、御意見ございますでしょうか。大石委員、どうぞ。
○大石委員 今シーズンの流行について補足させていただきたいと思います。先ほど繁本補佐のほうから話があったとおりですが、5ページに定点受診者数の比較が示されておりますが、ピークが赤で書いてある今シーズンは高かったわけですけれども、実は36週ぐらい、9月ごろから定点サーベイランスの数値が、過去5年のみ平均プラスSDを超えて高い推移をずっと推移していたという状況があって、かなり早い段階からインフルエンザの活性が高かったということが一つあると思います。
もう一つは、年が明けてからの大きな流行については、2004年/2005年もそうだったのですけれども、A型とB型が混合で流行し、特にB型が主体となって流行しました。そういった要因が今シーズンの大きな流行にかかわった可能性はあるかもしれません。
以上です。
○倉根部会長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。釜萢委員、どうぞ。
○釜萢委員 今いただいた御説明の中でちょっとよくわからなかったのですが、34ページのところを先ほど御説明いただいて、「インフルエンザワクチン供給開始が前シーズンに比較して遅れたことが今シーズンの流行拡大の要因となった可能性は否定的」と言われるのですが、その根拠をもう少し詳しく説明してください。
○倉根部会長 事務局でよろしいですか。
○繁本結核感染症課長補佐 こちらに書いてあることになるのですけれども、今シーズン流行が大きかったのは日本だけの問題でなくて、これは世界的な問題であるということが一つあります。それの原因ははっきりとわかっていないですが、考えられていることの理由としては、インフルエンザの複数種類のウイルスが同時に流行したことで患者数がふえたのではないかと推測しております。要は、インフルエンザのワクチンの供給あるなしであるとか、早い遅いとか、そういった時期的な要因とか、こういったものが流行規模に影響を及ぼしたという研究というのは実際問題ありませんで、供給がおくれて現場の先生方に御迷惑をかけたということはあったと思うのですけれども、ことしの日本の流行がそれによって例年より拡大したというわけではないと考えております。
○倉根部会長 釜萢委員、どうぞ。
○釜萢委員 ですから、日本だけでなく世界の流行もあって、全体に流行があったから日本も多くなったのだというところは、そうだろうと思います。ただ、今わかっていることの中で、ワクチンの供給がおくれたことが全然影響しなかったというふうに言うだけの根拠は余りないと思うので、ここまでの表現は少し強いのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○倉根部会長 いかがでしょうか。事務局、何かコメントございますか。
○黒崎予防接種室長補佐 予防接種室でございます。
インフルエンザに関しては、委員の皆様も御存じのことと思いますけれども、重症化予防、発症予防という効果はございますが、感染そのものを予防する効果はワクチンにはないということと、もう一つは、インフルエンザは、これまでの歴史の中で定期接種から外れていた時代がございます。その当時はワクチン接種率が極端に低く、インフルエンザワクチンがほとんど接種されていないような時期もございました。そのときにインフルエンザが爆発的に大流行したかというと、そういうことはもちろんなかったことと合わせて考えてみますと、インフルエンザワクチンとインフルエンザの流行の規模というものは必ずしも相関しないものと考えてございます。
○倉根部会長 この点、コメント。どうぞ。
○釜萢委員 ただ、そこまで言い切るだけの根拠はないので。根拠がないという意味は、今回供給がおくれたことが流行に影響を与えなかったと言うだけの根拠は、今、御説明があったように、ワクチンをやっていないときだってそんなに爆発的にはならなかったではないか、それをもって今回のおくれに対しての影響はなかったと結びつけてしまうのがいいかどうかというところを問題として感じておりまして、あえてこのような表現をここに書かなくたっていいのではないのかなと感じた次第でございます。意見としてそのように申し述べておきます。
以上です。
○倉根部会長 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 ワクチン製造の遅れと一部で生じた供給不足、これが流行拡大の要因になった可能性は否定的とまで言い切れるかどうかわからないですけれども、そんなに影響を与えていないだろうと、私も思います。ただし、これをもって供給は問題がなかったのだというふうに捉えてしまうのが、多分釜萢先生のおっしゃっている問題点だと思うので、供給のことはほかのところでも問題になっていますし、今後の課題としてワクチンの供給というのは、全てを含めて改善していくべきであるといったような意味合いのことをつけ加えてはいかがですか。
○倉根部会長 事務局、どうぞ。
○江浪予防接種室長 ここの表現に関しましては、まさに今、岡部先生がおっしゃられたように、ワクチンの供給がおくれたことがその現場に影響もなかったし、悪いことだと思っていなかったということをエクスキューズしたいわけでは全くなくて、供給のことに関しましては、さまざまな場で特に定期接種に使うワクチンを中心に万全を尽くさなければならないと常々考えているところでございまして、その部分に関する努力に関しましては、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと考えてございます。
○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。コメントございませんか。
今、説明としてこういう説明をいただきました。そしてまた委員からも供給の問題については今後も考えて整備していくべきではないかという御意見があるということかと思います。
それでは、説明、ありがとうございました。
次がマル2、コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生状況。事務局から説明をお願いします。
○繁本結核感染症課長補佐 事務局です。
資料10「コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生」についてでございます。ことしで9回目です。コンゴ民主共和国は旧ザイールで、ことしは北西部の赤道州においてエボラ出血熱が発生しました。5月8日にWHOより発表されています。
当初エボラ出血熱疑いの患者さん5検体の検査を行ったところ、エボラウイルスが検出されたということでございました。これを受けて、すぐにWHOのほうから専門家チームが派遣されております。当初ビコロ、赤道州の比較的南のほうの地区で発生したのですけれども、これは森林地帯で、人口密度も高くないところだったのですが、5月16日に州都のバンダカの郊外のワンガタ保健区でエボラ出血熱の確定例が報告されました。これを受けまして、同国の保健省が同日中に、エボラ出血熱の発生は「新たな段階に入った」と発表しております。翌々日の18日に、これが公衆衛生上の緊急事態に相当するかどうかについて、WHOの緊急会合が開催されましたが、2014年-2016年の大流行に相当するようなものではないというふうに公表されました。週が明けて5月21日より接触者へのエボラ出血熱のワクチンの投与が始まっております。6月11日までに2,507人が接種されました。6月11日までに患者数59例、そのうちの確定例は38例です。このエボラ出血熱が報告されて、うち28名が亡くなっております。
我が国の対応といたしましては、厚生労働省として一般の国民の方に対してはウエブサイトを通じて注意喚起を行うとともに、事務連絡を5月9日に発出しています。検疫所には海外渡航者への注意喚起を行うこと。医療機関に対しては、当該地域からの帰国者の診察の際にはエボラ出血熱を念頭に置くこと。国土交通省に対しては、民間航空会社、旅行会社に対して、参加している事業者を通して海外渡航者に対する注意喚起を行うようにお願いしました。外務省は、5月29日に国立感染症研究所の職員を含む調査チームを派遣しております。また、6月11日には国立感染症研究所や国立国際医療研究センターの職員を含むJICAのJDR感染症対策チームを派遣しております。
裏にはエボラ出血熱の一般的な説明事項を記載しております。
説明は以上です。
○倉根部会長 ありがとうございました。
この件、何か。まず岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 たしかWHOは、PHEICを宣言しないということを宣言しているのではないかと思うので、それははっきりお伝えいただいたほうがいいのではないかと思う。
それから、せっかく日本から感染研を含むチームが行って3週間たち、それからJICAが出したJDRも1週間たっているので、一体どういう活躍をされたか、ぜひ教えていただきたい。
○倉根部会長 それでは、大石委員、どうぞ。
○大石委員 現状をお伝えしますと、ウイルス検査診断の支援と疫学支援ということで、感染研、NCGMから専門家が派遣もされているところです。ウイルス学的支援は国立生物医学研究所(INRB)でがあって、もともと感染研ウイルス一部が協力関係を維持しており、都合2人体制で、現時点で計4名を送り出しているところです。
疫学状況については、症例数の増加なくもふえていないところがあって、現在感染症疫学センターから派遣している人員は、検疫業務、ポイント・オブ・エントリーとしての機能を強化しいてます。川を挟んで隣の国コンゴ共和国と行き来がかなりあるので、そこの検疫機能を強化する訓練を行っているということであります。6月一杯、継続してJDR、感染症対策チームの対策を継続するということになっております。
以上です。
○倉根部会長 事務局、どうぞ。
○野田結核感染症課長補佐 岡部委員、大石委員、ありがとうございます。
今、岡部委員からございましたように、今回の事例につきましては、PHEICに該当するかというところは一つ大きな注目があったところでございまして、背景といたしましては、今、大石委員からもございましたが、資料10の右側に小さい図で描いておりますけれども、コンゴ川が流れておりまして、コンゴ川自体が各国にまたがるような形で流れている川であり、また、古くから人がここを行き来するような川でございますので、容易に人が行き来でき、また、感染症が出た場合には容易に国際的に渡ってしまうというところがございます。ビコロについては、湖がございますが、この湖がコンゴ川につながっているというものでございますので、ここら辺で出た患者さんについては、場合によっては容易に首都のキンシャサまで行ってしまう可能性もございますので、そこは国際的に2014年から2016年の状況、まさにPHEICに該当するようなことにならないかと注目をしていたところでございます。そういうところもございまして、5月18日にWHOのほうで緊急委員会がございまして、PHEICに当たるかどうかということが議論され、最終的にはPHEICに当たらないということが結論づけられたという状況でございます。
以上です。
○倉根部会長 ほかに御質問ありますか。よろしいですか。
ただいまこういう状況であるという報告でありました。
それでは、次のマル3に移ります。東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた対応につきまして、事務局から説明をお願いします。
○繁本結核感染症課長補佐 事務局です。
資料11と参考資料10を使って説明させていただきます。「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての感染症対策について」ですが、まず研究がございます。2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックの競技大会に際しては、さまざまな国から訪日客の増加が見込まれます。感染症発生リスクも増加することが懸念されるのですが、地域によって訪日客の数も違えば、渡航元、もともとの国がどちらかというのも違ってきますので、自治体ごとに適切に感染症のリスク評価を実施して、事前にサーベイランス体制の整備等、必要な準備を行う必要があると考えられました。そこで、厚生労働省科学研究班において、感染症発生動向調査の評価や改善法に関する研究や、東京大会を見据えたリスクアセスメントの手法に関する検討を行いました。
その研究の成果ですけれども、東京大会に向けて、持ち込み増加の可能性が高い感染症やその対応方法を整理するとともに、各自治体が行うべきリスク評価の手法・手順について取りまとめていただきました。取りまとめていただいたのが参考資料10になります。
ステップ1、2、3とございまして、この順番にリスク評価をしていただきますと、特にどの疾患に重点的に気をつけるべきかということがわかってまいります。一例なのですが、資料11の中の表に書かれているように、それぞれの疾患、ワクチン予防可能なものとか、新興・再興感染症とか分けられていますが、例えば麻しんですと輸入例もふえるでしょうし、この疾患はもともと感染伝播の懸念もありますし、大規模事例の懸念もあり得る疾患であると。こういったものについては気をつけねばいけないなということがこうやって整理されていくという状況です。
ただ、現在各自治体からこうやってリスク評価の報告を受けておりまして、中には過小評価であったり、過大評価であったり、評価者によってずれるところもあるようですので、今後各自治体のリスク評価の改善に向けた検討を行ってまいる予定としております。
以上です。
○倉根部会長 ありがとうございました。
何か御質問ありますでしょうか。東京オリンピック・パラリンピックへ向けての感染症対策のリスク評価の部分を説明いただいたということです。調委員、どうぞ。
○調委員 このことに直接関係するかどうかわかりませんけれども、東京オリンピック・パラリンピックのテロ対策に関連しまして、先週厚生労働省が主宰されました全国地方衛生研究所の所長会議で、内閣官房の方が平成13年に決められた対応について御説明になって、その中に原因のわからない感染症の患者が発生した場合に、保健所が近いところにあれば、保健所が検体をとって地方衛生研究所に搬送して病原体を検出すると。そういうフローになっているのです。恐らくそのときは炭疽菌を想定してそういうフローがつくられたと思うのですけれども、テロ対策とすると、天然痘や、それ以外にさまざまな感染症が想定されると思いますので、実際に地方衛生研究所でどんな検査を準備すればいいのかというところが必ずしもはっきりしていないところがあって、そういった技術的な支援でありますとか、必要な試薬などもぜひ支援をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○倉根部会長 事務局、今のことに関して何かコメントがありますか。
○野田結核感染症課長補佐 ありがとうございます。
まさにオリンピックに向けての準備ということで、バイオテロに関して言いますと、恐らくバイオテロが起こった場合には、初期にはそれがバイオテロか否かわからない。感染症が何か起こっている。しかもそれが大規模に起こっているということで初めに認知されることが多いのだろうと思っておりますので、それはふだんからの部分もありますし、また、今回特にこういう大きなイベントがございますので、それに向けた準備ということで、ちゃんと対応できるような準備については地方衛生研究所、自治体とも協力しながらやっていきたいと考えております。
○倉根部会長 ほかに。大石委員、どうぞ。
○大石委員 伊勢志摩サミットの強化サーベイランスなどでもバイオテロ対策が行われたと思うのですが、感染研としては、テロは所掌ではないという位置づけです。しかし、研究班として担当はしており、一定の対象病原体については検査ができる体制になっています。しかし、今後地方衛生研究所がバイオテロ対策の検査体制の中に入ってくるという認識なのでしょうか。最近の状況を教えてください。
○倉根部会長 調委員、どうぞ。
○調委員 今後といいますか、平成13年にテロ対策のスキームがつくられて、それが生きているのだという説明だったような気がいたしますが、そういう意味で、再度それぞれいろんなところの役割分担とか、どういったことに取り組んでいけばいいかということを明確にしていただいて、取り組むべきところは取り組んでいくということになると思いますけれども。
○倉根部会長 何かございますか。事務局、どうぞ。
○野田結核感染症課長補佐 先ほどからの繰り返しになりますけれども、バイオテロという部分で、バイオテロだとわかって行動するということはそれほど多くないと思いますので、ふだんからの対応をちゃんとできるような形で。例えばそれが炭疽菌であろうと何であろうと、対応できるように準備をしていくというところをやっていく必要があると考えております。そこは引き続き何が必要かというところも含めて自治体と協力してやっていきたいと考えております。
○倉根部会長 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 オリ・パラだけではないのですが、バイオテロ対策を考えた場合に、検査機能としての地衛研はかなり技術的には可能ではあると思うのです。ただ、今までのバイオテロ絡みの事件のときに、いつも問題になるのは検体の確保をどうするかということで、つまり、警察側がやるのか、自治体側が感染症法に基づいてやるのか、あるいは不明疾患として自治体がやるのか、この辺は依然混沌としていると思うのです。
私のいるところでも警察側と話をなるべくするようにしたりということは進めているのですけれども、恐らくこれは全国的な問題ではないかと思うので、地研は地研なりに話はしているのですが、ぜひ国、厚労省側でも検討していただきたいと思います。
もう一つよろしいですか。
○倉根部会長 どうぞ。
○岡部委員 これを拝見すると、非常によくまとめてあるとは思うのですが、日本におけるサーベイランスというのは、私も自認をしておりますが世界の中ではいいほうではないかと思っていますし、今のサーベイランス体制でかなりのものがひっかかると思うのですが、現存のものはこれでいいのだと見えてしまうのですけれども、例えば疑似症サーベイランスはほとんど動いていないです。私のところでも疑似症サーベイランスを一般の先生たちに説明しながら、これを強化していくということをやっているのですが、既存のものでありながら動いていないというのがあるので、それはきちんとできるようにするおとが大切かと思います。
○倉根部会長 事務局、どうぞ。
○野田結核感染症課長補佐 ありがとうございます。
全体としてオリンピック・パラリンピック、また来年のラグビーもございますので、そこに向けて十分に準備をしていきたいと思っております。特に今、御指摘いただきました疑似症サーベイランスにつきましては、サーベイランスとして、特にこういうマスギャザリングのようなイベントがある場合には有効性があるようなものだと思いますが、一方で、今、なかなか活用ができていないという御指摘があるのは、そのとおりだと認識しておりますので、ここについては次回以降、どのような形でオリンピックに向けて対応できるかということについて提示させていただければと考えております。
○倉根部会長 賀来委員、どうぞ。
○賀来委員 1点追加です。東京オリンピック・パラリンピックに対しては、いろんな学会がコンソーシアムをつくっています。感染症に関連する学会としては日本環境感染学会と日本感染症学会なのですけれども、それぞれ役割分担をしながら、学会としても支援していく。環境感染学会でのチームのチーフは防衛医科大学校の加來浩器先生ですが、バイオテロも含めた感染症の対策について学会としても支援していくことになっています。
○倉根部会長 ありがとうございます。
現場からすると、文言が書いてあっても、どこまで自分たちがやるのだという部分がクリアでない部分が多いということかと思いますし、そこの整理も含めてぜひよろしくお願いしたいと思います。
事務局、どうぞ。
○野田結核感染症課長補佐 少なくとも次回、間に合うかどうかわかりませんけれども、オリンピックに向けてはこういうことを考えていますよということを事務局から御提示させていただければと思います。
以上です。
○倉根部会長 よろしくお願いいたします。
それでは、これで4の3については終わります。
その他、事務局あるいは先生方からございますか。大石委員、どうぞ。
○大石委員 追加で情報提供しておきたいのですが、今年に入って風しんの検査体制については、省令を改正して体制強化するという方針で動いているところですけれども、4月、5月、6月の初めぐらいまで、三十数例の風しんの届出がありました。しかし、26例の検査診断例のうち、ゲノタイプまで決定されているものがわずか3例しかないという状況です。また、感染研のほうにシーケンスの情報とかがまだ共有されていないとのことです。今後の風しんの検査体制の強化のためには、遺伝子型をしっかり決めて調査していきましょうということでしたので、今一回現状を確認しておく必要があるなと思っています。どうぞよろしくお願いします。
○倉根部会長 調委員、どうぞ。
○調委員 風しんの塩基配列の報告がそれほどなされていないという御指摘でしたが、恐らく麻しんについてはかなりされていると思うのです。なぜ風しんでされないかということですが、一つは技術的な問題があるのではないかと思っています。風しんウイルスを検出するPCRは、感度的に割とできるのですけれども、型別を決定するためのPCRは余り感度がよくなくて、それは遺伝子領域が変化の多いところを検出しているので、感度はそれほどよくない。検出はできるのだけれども、型別のほうのPCRが動かないので、型別が決定できていないという例が多いのではないかと思います。
今、プライマーを森先生の研究班で検討しているので、恐らくそれによって若干改善するのではないかと期待しておりますが、風しんウイルスの場合はGCコンテントが高くて、80%ぐらいGCなのです。そういう技術的な困難さがあるということにほとんどよるのだと思っています。
○倉根部会長 大石先生、どうぞ。
○大石委員 検査診断例が26あったのですけれども、ほとんどがIgMによる診断で、ゲノタイプの診断がついたのは3例でした。遺伝子診断がどのくらいでされていたか記憶にないですが、ほとんどがIgM診断で、急性期に風しんを疑っている症例が少ないのだと思うのです。PCRで検出できるのは発症から1週間ぐらいですね。その辺、風しんの困難さがあるのかなと思っているのですけれども、情報共有で対策を進めていきたいと思っています。
○倉根部会長 事務局、どうぞ。
○野田結核感染症課長補佐 ありがとうございます。
風しんは麻しんより難しいというところは認識しておりますが、いずれにしても、医師のほうからちゃんと届け出をしていただいて、検体もちゃんと出していただくというところについて、ことし1月1日から始めた段階で、チラシなどもつくって周知はさせていただいたのですが、今回予防指針を改定するということもございますので、それなどもあわせまして再周知をさせていただきたいと考えております。
○倉根部会長 どうぞよろしくお願いします。
それでは、その他ほかになければ、ここで今回の委員会は終了したいと思います。
事務局からの連絡はありますでしょうか。
○野田結核感染症課長補佐 事務局からですけれども、次回の開催については追って御連絡をさせていただきます。
事務局からは以上になります。
○倉根部会長 それでは、本日はこれで終了したいと思います。
ありがとうございました。