2018年5月31日 第12回過労死等防止対策推進協議会 議事録

労働基準局総務課(過労死等防止対策推進室)

○日時

平成30年5月31日(火)9:58~12:05

○場所

厚生労働省 省議室
(中央合同庁舎第5号館9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

○出席者

<専門家委員>
岩城穣委員、岩村正彦委員、川人博委員、堤明純委員、宮本俊明委員、森岡孝二委員、山崎喜比古委員 
 
<当事者委員>
寺西笑子委員、中原のり子委員、西垣迪世委員、前川珠子委員 
 
<労働者代表委員>
白井桂子委員、中川義明委員、八野正一委員、村上陽子委員 
 
<使用者代表委員>
佐久間一浩委員、山鼻恵子委員、輪島忍委員 
 

○議題

過労死等の防止のための対策に関する大綱(案)について

○議事

岩村会長 おはようございます。定刻より若干早いですけれども、御出席予定の皆様おそろいということですので、始めさせていただきたいと思います。
それでは、ただいまから、第12回「過労死等防止対策推進協議会」を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、いろいろお忙しい中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、小林委員が御都合によりまして御欠席と伺っております。
次に、本日の資料につきまして事務局のほうから確認をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○小城企画官 本日の資料につきましては、議事次第に資料の名称等をお示ししています。資料1、資料2-1、資料2-2、資料3、この4点をまずお示ししています。
そのほか、参考資料としまして、資料1から資料7まで7点をおつけさせていただいております。さらに、専門家委員、あるいは当事者委員の皆様方から御提出いただきました資料を2点おつけさせていただいていまして、と付している資料につきましては、本日初出の資料です。
以上でございます。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、カメラ撮影につきましてはここまでとさせていただきたいと思いますので、御協力をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
(カメラ退出)
○岩村会長 それでは、お手元の議事次第をごらんいただきたいと思います。それに沿って進行させていただきます。
本日の議題は、「過労死等の防止のための対策に関する大綱(案)について」でございます。
前回の協議会におきまして、大綱の見直しの素案を委員の皆様方に御検討いただいたところでございます。委員の皆様の御意見を踏まえて、大綱の素案を修正するとともに、関係各省庁の間での調整を行っていただき、本日の協議会に向けて大綱の最終案を御用意いただいたところでございます。
本日、できる限りの御議論をいただきまして、大綱の改定をめぐる本協議会での議論に区切りをつけていただければと考えておりますので、委員の皆様方におかれましてはどうぞよろしくお願いいたします。
それではまず、事務局から、きょう御提出いただいている大綱の見直しの案について、御説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○小城企画官 それではまず、資料1をごらんいただきたいと思います。大綱の柱立ての新旧対照表となっています。赤字が現行の大綱から変更した部分でございまして、アンダーラインを引いていますのが前回の協議会の御意見を踏まえて新たに追加した項立てとなっています。
具体的には、1ページ目の「第4 国が取り組む重点対策」の中に、各委員から対策を明確に項立てとして位置づけるべきと御意見をいただきまして、「労働行政機関等における対策」としまして、「長時間労働の削減に向けた取組の徹底」「過重労働による健康障害の防止対策」「メンタルヘルス対策・ハラスメント防止対策」という3点を新たに記載しています。
それから、2ページ目で、3番の「啓発」のところの(10)でございます。これも高年齢労働者、障害者である労働者への取組についても明確に位置づけるべきとの御指摘をいただきましたので、新たに項立てとして起こしています。
その余につきましては、前回お示しした案から大きく変わっているところではございません。
次に、資料2-2、見え消し版のほうで御説明を申し上げます。資料2-2、新旧対照表となっていまして、赤字につきましては、現行大綱からの見直し案でございます。黄色いマーカーをつけてございますのが、前回協議会の意見等を踏まえまして新たに修正等をしたところでございます。
具体的には、1ページから3ページぐらいまでは、基本的に文言修正等をしているところでございますので割愛させていただきまして、4ページでございます。川人委員からも御指摘いただきましたけれども、ハラスメントについて包括的な概念というものを整理して、そして、パワハラ等具体的なものに言及するというような御指摘をいただいています。
そこで、表題につきましては、当初、「パワーハラスメント等の発生状況」としましたものを「ハラスメントの発生状況」とさせていただきまして、柱書きに近年の精神障害の出来事別の労災支給決定件数等の状況としていじめ、嫌がらせを受けたというものが60件台、70件台である、あるいはセクハラを受けたということで精神障害の認定を受けたものが20件であるというところを記載しています。
次に、5ページ目の(5)でございますけれども、ここにつきましては、ミスリードする可能性があるということで、文言をより正確にさせていただいています。就業者の脳血管疾患等の発生状況につきまして、就業者数をまず見てみますと、平成27年の「労働力調査」では、60歳以上の占める割合は全体の2割程度でございますけれども、人口動態職業・産業別統計で就業者の脳血管疾患等による死亡者を見ますと、60歳以上の占める割合は7割台となっているということを記載させていただいています。
次に、8ページまで進んでいただきまして「課題」のところでございますが、八野委員からも御指摘いただきましたとおり、現在の日本国における生産年齢人口の減少、そして多くの分野で人手不足が続いている基調があるということをまず記載させていただいた上で、過労死防止に向けた長時間労働の削減を進めるためには、技術革新による省力化や業務の進め方の見直し、こういったことに伴う生産性向上を図りながら、いろんな障害をお持ちの方、あるいは女性の方々など多様な労働者の方々が労働参加できる環境をつくっていくことが重要であるということをまず総論として書いています。その上で具体的な課題について言及しています。
次に、13ページまで飛ばせていただきます。相談体制の整備のところ、3番でございます。宮本委員から余りにも産業医についての記述に偏り過ぎているというような御指摘もいただいているところでございます。
そこで、当然、職場における産業保健活動につきましては、産業医のみならず、衛生管理者や保健師など産業保健のチームとして取組を進めることが重要であるということがございますので、そういった視点で書き改めております。
次に、14ページでございます。過労死防止対策の数値目標でございます。数値目標につきましては、2番といたしまして、勤務間インターバル制度について新たに記載しています。勤務間インターバル制度につきましては、多くの委員の皆様方から意見をいただいた中で、まず周知を進めていくということについてはコンセンサスを得たところかと思っています。
したがいまして、就労条件総合調査で経年的にこのインターバル制度の取組状況を把握することとしていますので、その調査対象である労働者数30人以上の企業のうち、まず勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とするという目標を1つ掲げさせていただいています。現行におきましては、調査対象全体に占める勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合は37%というところでございます。
2点目といたしまして、森岡委員からも、勤務間インターバル制度について定義が明らかでないとの御指摘もいただいていまして、ここはまず定義を明らかにするということで、括弧書きのところに「終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けることについて就業規則又は労使協定等で定めているものに限る」と定義を明確にした上で、その取組の導入企業割合を10%以上とすると目標設定させていただいているところでございます。
次に、「第4 国が取り組む重点対策」のところでございますけれども、15ページ、1番のところに「労働行政機関等における対策」として、従来、啓発の取組に書いておりましたものを抜き出しています。主として過労死等ゼロ緊急対策などで取り組んでいるもの、いわゆる指導分野にかかわるものについて取り出しをしております。
(1)といたしまして「長時間労働の削減に向けた取組の徹底」につきましては、過重労働の疑いがある企業に対する監督指導の徹底でありますとか、あるいは労働時間の適正な把握といったような、過労死等ゼロ緊急対策において盛り込んだ対策などを中心に記載しているところでございます。
また、16ページの中ほど、「さらに」のところに、地方公務員の勤務条件につきましても、労働条件の適正把握ガイドラインの周知を図るなどして、人事委員会における監督指導の徹底に努めるといったところを記載させていただいています。
(2)といたしまして「過重労働による健康障害の防止対策」を記載させていただいていまして、まずは、健康障害防止措置についてしっかりと指導していくということ。さらに、過重な長時間労働やメンタル不調などのリスクが高い状況にある労働者を見逃さないということで、産業医による面接指導等をしっかりと指導していく中で、特に産業保健のチームによってその取組を進めるようにということも留意しながら対策を進めるという趣旨で書き改めています。
(3)といたしまして「メンタルヘルス対策・ハラスメント防止対策」ということで、第1パラグラフにつきましては、過労死等ゼロ緊急対策で取組を進めているものを書いています。第2パラグラフといたしましては、まずハラスメント防止対策ということで、特にパワハラ、セクハラ、あるいはマタハラといったものについて例示しながら、その取組を実施していくということを記載させていただいているところでございます。
17ページの中ほどに「過労死等防止調査研究センター(仮称)」と書いていますけれども、これは宮本委員から予防、防止の観点からの取組を進めていることを明確に位置づけるべきとの御指摘がありまして、現在、機構におきまして名称変更の手続をさせていただいているところでございますので、このように書き改めております。
次に、20ページまで飛んでいただきまして、20ページ以下、啓発の内容といたしまして、(3)のところで削除している部分が多くありますが、先ほど御説明しました対策のところにここの部分は全て記載を移しています。
21ページの(4)のところにつきましても、同じように記載を移しているところでございます。
次に、23ページでございます。職場のハラスメントの予防・解決のための周知・啓発というところにつきまして、先ほどお話し申し上げたとおり、ハラスメントという包括的な概念としてとらえております。そういった中で、やはり過労死等に直結しやすいパワーハラスメントについて記載した上で、一番下の「一方」というところで、セクハラでございますとか、あるいはマタニティハラスメントにつきましても、その取組を関係法令の周知を含めて徹底していくということです。
25ページでございますけれども、ウの「医療」に関する部分につきましては、医師以外の取組をもっと明確に位置づけるべきとの御指摘もいただいているところでございます。
そこで、なお書きといたしまして、「看護師等の夜勤対応を行う医療従事者の負担軽減のため、勤務間インターバルの確保等の配慮が図られるよう検討を進めていく」というように、働き方ビジョン検討会での報告を踏まえた検討を進めていくということを記載しています。
その上で、「さらに」といたしまして、医師、看護師、保健師など医療技術者も含めまして、医療従事者の勤務環境改善に向けた取組といたしまして、都道府県に置かれております医療勤務環境改善支援センターによる支援の推進と機能強化を進めていくというふうに記載させていただいたところでございます。
26ページでございます。カの「その他」のところでございますけれども、堤委員、中川委員から御指摘をいただきました宿泊業に関して注視すべきということで、また書きのところでございますけれども、長時間労働の傾向が見られ、年次有給休暇の取得率が低い宿泊業につきましては、インバウンドの増加、あるいは2020年のオリンピック・パラリンピック等を控えまして労働時間増が懸念されるということから、長時間労働の削減、年次有給休暇の取得促進に向けた取組を進める必要があると記載しています。現在、関係省庁とも調整しながら、こういった方向で取組を進めるというふうに書き改めているところでございます。
また、26ページ、「さらに」というところで、八野委員からも御指摘をいただいておりますけれども、いわゆる消費者、あるいは生活者からの不当な要求等を受けることがあるということで、サービス産業を中心にして、このような労働者に大きなストレスを与える事例も問題となりつつあるということ、取組に当たっての配慮を要するというところを注記させていただいています。
(10)といたしまして、岩城委員から、高年齢労働者、障害者である労働者への取組についても明確に位置づけるべきとの御指摘をいただいています。そこで、柱書きに、「業務における強い心理的負荷による精神障害の労災支給決定(認定)件数が多い若年労働者や、脳・心臓疾患の労災支給決定(認定)件数が相対的に多い高年齢労働者、個々の特性に応じた雇用管理を求められることが相対的に多い障害者である労働者については、心身ともに充実した状態で意欲と能力が発揮できるよう、各々の特性に応じたきめ細かな配慮を行う必要がある」と総論として書かせていただいております。
その上で、各論といたしまして、アでございますけれども、「若年労働者への取組」につきましては、特に西垣委員から若年労働者が入社間もない中で過重労働になっていることが懸念されるというところの御指摘も踏まえまして、3行目のまた書き以降でございますけれども、「若年労働者が職場に定着し、安定的にキャリアを形成していくため、入社間もない若年労働者が長時間に及ぶ時間外労働を強いられることがないように、ワークライフバランスのとれた働き方の促進や、メンタルヘルス不調の発生防止など職場におけるメンタルヘルス対策の充実を図るなど、若年労働者の職場環境を整備していくための取組を推進する」と記載させていただいているところです。
イの高年齢労働者につきましては、「加齢に伴う身体機能の低下など高年齢労働者の特性に配慮しながら、作業環境の改善、健康の保持増進などの取組を推進する」と記載させていただいています。
ウの「障害者である労働者への取組」につきましては、個々の障害特性や業務内容を十分考慮し、雇用されている障害者に対する合理的配慮の提供が義務づけられているところでございますので、その取組を推進するということで、合理的な配慮の例示としては、出退勤時刻に関し体調に配慮するとか、本人の習熟度に応じて業務量を徐々にふやすなどといったことが挙げられるところでございます。
次に、28ページにおきまして相談体制の整備のところで、ハラスメント関係につきまして労働局の取組を新たに追記させていただいているところでございます。
資料2-2につきましては以上でございます。
次に、資料3につきましては時点修正等をさせていただいておりますので、その点だけ御説明いたします。
1ページ目でございます。「『現大綱』に定める数値目標及び実績」の「週60時間以上の雇用者の割合を5%以下」というところにつきましては、平成29年の数値が出ましたので、平成28年と同じく7.7%でございますが、リバイスさせていただいております。
2ページ目も同じでございます。
次に5ページ目でございます。「月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者数及びその割合」につきましては、平成29年は7.7%というような数字になっていまして、リバイスさせていただいております。
6ページも同様でございまして、週40時間以上の雇用者のうちの60時間以上の雇用者数、割合につきましては12.1%という数字となっています。
それから、8ページでございますけれども、次の9ページの正社員の年次有給休暇の取得率の表を前回お示ししたときに、中川委員から、この表からは、宿泊、飲食サービスの分類がわからないという御指摘もいただいたところでございます。したがいまして、大分類で業種の状況をお示しした上で、特に宿泊業については中分類として特記させていただいています。宿泊業の年休の取得率31%ということで、全業種で一番低い数字となっているという状況でございます。
資料については以上でございます。よろしくお願いいたします。
○岩村会長 ありがとうございました。
ただいま、事務局から説明をいただきましたこの大綱案につきまして、これから委員の皆様から御意見をいただきたいと思っているところでございますが、議論の順序といたしましては、前回と同様ですが、まず、数値目標以外の大綱見直し案全体についての御意見をいただきたいと思っております。その後に数値目標に関して御議論を頂戴したいと考えているところでございます。そういった進め方に御協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。
それではまず、今申し上げたとおり、大綱見直し案全体につきまして御意見を頂戴したいと思います。案文の修正にわたる御意見をいただく場合におかれましては、見直し案のこの部分の記載はこのように修正、または追記したほうがいい、あるいはしてほしいというような形で具体的に御意見をお示しいただきますと大変ありがたく存じますので、よろしくお願いいたします。それでは、いかがでございましょうか。
では、寺西委員。
○寺西委員 ありがとうございます。過労死家族の会の寺西笑子です。
大綱の3年後の見直しに当たりまして、今、事務局からの大綱改定案の御提示に対して少し意見を述べさせていただきます。
この間、私どもは、調査研究、啓発がメインの大綱から、これまでの調査研究で得た知見を生かして、過労死防止のために実効性ある対策を生かしてほしいとの要望をしましたが、前回の協議会で国が取り組む重点対策に、調査研究、啓発、相談体制の整備、民間団体の活動支援に加えて、実効性ある対策を盛り込んでいただきたい意見を今回反映していただきまして、改定案の「第4 国が取り組む重点対策」に新たな項立てとして、「1 労働行政機関等における」、前回の御説明のときは「対応」と示されていまして、そこの修正をお願いしようと思っていましたが、本日、先ほど御説明の折には「対策」となっていましたので、このままで結構かと思います。
(1)の「長時間労働の削減に向けた取組の徹底」「過重労働による健康障害の防止対策」「メンタルヘルス対策・ハラスメント防止対策」という、いずれも喫緊の課題で重大項目なので、積極的な取組が求められる観点から、今回、項目立てにしていただきましたことは本当にありがたいと思います。こうして対策を立てて実行するという意味を持つ「対策」または「施策」という文言を提案しようと思っていましたが、既に「対策」と修正されていますので、こうした改定案は今後引き続き力を入れていっていただきたいと思っています。今回は、過労死防止法、3年後の見直しの議論というところにまでは踏み込めませんでしたが、今後、法の見直しの先取りになっているようで、ここに至るまで事務局の皆さん方の御尽力に心から感謝しております。
この改定案の取組をこれからも期待するとともに、来年こそ法改正が実現するように願っておりますので、ぜひとも、これからも積極的な、過労死を予防する、また防ぐという観点のもとで実施していただきますようにお願いいたしまして、私からの意見とさせていただきます。ありがとうございました。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、先ほど白井委員がお手を挙げていましたので。どうぞ。
○白井委員 大綱の新旧対照表の27ページです。「公務員に対する周知・啓発等の実施」の項でございますが、地方公務員のところにつきましては、ガイドラインの周知徹底が具体的に記載されたということにつきまして、非常に有意義なことであると考えております。この間、総務省から御助言、御指導いただいておりましたが、さらに補強できるとも考えております。また、公務労働者は、いわゆる36協定が適用にならないため過重労働があると考えております。このところで対策に生かせるのではないかと考えております。
また、16ページ、あるいは29ページに、具体的にこの過重労働に対する取組を担う機関が人事委員会ということを明確にしていただいております。苦情相談の先が明確に明らかになったということで、非常に意義のあることであると考えているところです。
新旧対照表の24ページの「(9)商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進」の「医療」の部分でございますが、前回も御指摘させていただきました看護師等医療従事者は医師以外にもたくさん、チーム医療という形で行っておりますということを発言させていただきました。この中に具体的に看護師等ということで、ほかの医療従事者の法律もということも書かれております。このところで、医療従事者の過重労働に対しての取組が進むと良いかなとも考えております。
また、2段落目の看護師等の負担軽減の記載に「勤務間インターバルの確保等」とございます。この「等」の中には、厚生労働省で検討されておりました「新たな医療のあり方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」報告書など、ほかにもいろいろ検討会がございましたが、そのもの全て入ると私は考えておりますが、その点について事務局に御確認させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○岩村会長 それでは、事務局のほうで、まずお答えいただけますでしょうか。
○村山総務課長 ただいま白井委員から御確認の点でございます。今、白井委員からもございましたように、医師・看護師等の働き方ビジョン検討会はじめさまざまな場において提言がなされており、ビジョン検討会の報告書でも特に強調されたのは勤務間インターバルのところでございますのでこのような記述にさせていただいておりますが、その他の長時間労働対策等の観点もありますし、またチーム医療というお話がございましたけれども、今後のタスクのあり方なども含めた全般の議論も包摂して読んでいただければということで、このような記述とさせていただいております。
以上でございます。
○岩村会長 よろしいでしょうか。
○白井委員 はい、ありがとうございます。
○岩村会長 それでは、川人委員、どうぞ。
○川人委員 川人でございます。
まず初めに指摘したい点は、この間も、私ども、過労死110番、その他の相談窓口には実に痛ましい事例が相次いで報告されております。本件の大綱との関係で関連するものを幾つか申し上げますと、高齢者につきまして、例えば、つい最近のことですが、60代後半の方が警備員として働いている中で、働く現場で倒れ救急搬送されたが、亡くなったと。宿直勤務を含めて大変過重な労働であったと。現代の状況の中で、60代後半になってもフルタイムで、かつ、宿泊勤務を含めて働く方がふえている。警備業界では特にそういう傾向が強い。こうした中で、こうしたことを繰り返さないためにどうしたらいいかということが、今後とも、調査を含めて重要な活動となっていると思います。
障害者の問題についても、今回、大綱で指摘されておりますが、例えば障害等級の2級の方がある会社に採用され就職されて、それは政府からも補助金が出るような形で就職になったわけですけれども、残念ながら、就職した後1年数カ月後に病状が悪化して亡くなった。その過程でさまざまな職場の問題があったということで現在調査がされております。また、運転手の問題についても、この間議論もされておりますが、つい最近も大型の運転手の方が配送先で倒れて、そのまま亡くなるという事件が発生しております。
さらに、裁量労働制を含めたそういう制度にかかわる過重労働を防止するということは今回も重要なテーマとして掲げられておりますが、せんだって、都内の労基署で裁量労働制を適用されていた20代後半の青年について労災認定が出ております。彼の場合も、裁量労働制になってから徹夜勤務が行われるなど、こうした勤務形態の変化等の悪影響の可能性もあり、今後とも、これらの調査を含めて重要な検討、過労死防止のための対策が必要であると、そのように強調しておきたいと思います。
私と岩城さんの2名から資料を提出させていただきましたので、若干説明させてください。よろしいでしょうか。
○岩村会長 できれば、それは全体の議論が終わってからにしていただきますとありがたいのですけれども、よろしいでしょうか。その時間はとりたいと思いますので。
○川人委員 はい、結構です。
○岩村会長 それでは、今たくさんお手が挙がっていますので、それではまず、山崎委員、そしてこちらにということにいたしたいと思います。
○山崎委員 山崎です。
今回、具体的な取組という点で、産業別に続いて属性別の取組の点で、最後に「障害者である労働者への取組」というのがございます。私は、できたら表現としては、「障害のある労働者への取組」というほうが適切なのではないかということが1つあります。
あわせて、疾病並びにというぐらいで、「並びに疾病を抱える労働者への取組」というのを加えたらいかがかということでございます。そもそも、これよりもちょっと早く、2013年ですか、この時期に既に厚生労働省のほうで調査が行われて、疾病を理由として1カ月以上連続して休業している従業員がいる企業の割合は、メンタルヘルスが38%、がんが21%、そして脳血管疾患が12%で、言ってみれば、メンタルヘルスも、それから脳血管疾患もまた、事実上、一種、再発の予備軍でもあるわけですね。厚生労働省は、2年前、事業場における彼らに対する治療と職業生活の両立支援のためのガイドラインを提起しております。それは、過重労働防止という観点からも、大変格調高いガイドラインになっております。そういった意味で、私は、ここにエとして付け加える、あるいは「並びに」という形で、「疾病を抱える労働者への取組」というのを入れてはいかがかということでございます。
○岩村会長 ありがとうございます。お答え、まとめてということにしたいと思います。
輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 ありがとうございます。
24ページですが、「(9)商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進」ということで、また書きに私どもの共同宣言について記入していただいて、感謝を申し上げたいと思います。経団連と、それから日本商工会議所と中小企業団体中央会、3団体並びに産業を束ねる業種団体と、それから地域を束ねる各県の経営者協会、現在では112団体が共同宣言に賛同して、現在、さまざまな会員企業への周知等々をしております。
そういう中から、商慣行の是正ということでございますので、端的に言うと、金曜日の夜に発注して、月曜日に納品しろとか、また高品質のものであればきちんとそれに対する対価を払うとか、契約の変更であれば、契約を再度結び直すとか、基本的なことからきちんとやるというようなことを現在周知しているところでございまして、その点だけコメントをつけておきたいと思います。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございます。
それでは、こちらで、西垣委員から順番にお願いいたします。
○西垣委員 過労死家族の会兵庫代表の西垣です。4点について発言させていただきます。
まず第1点は若年労働者についてであります。私たちの意見を取り入れてくださり、資料2-2、ページ26、27の(10)にありますように、啓発の中に、高年齢労働者、障害者とともに新たに項を立てて書いてくださったことはありがたく思います。雇入れ時の労働条件の明示、新規採用時の労働法制の周知、入社間もない若年労働者が長時間労働を強いられることのないよう、またメンタルヘルス対策の充実等に取り組んでくださるよう、国と企業にお願いいたします。その取組についての御報告を今後よろしくお願いいたします。
いつの時代も、若者は国の宝です。まして労働力の減少が問題になっている今般、若者を企業の目先の利益のために使い捨てにしてはなりません。今、若い労働者や学生たちが望んでいることは、健康的に働ける職場という希望が一番になっております。その中で彼らの能力を引き出し、意欲的に働ける職場づくりをしていただきたいと考えます。健康的に働ける職場でこそ生産性は高まると信じております。また、赤子の折から手塩にかけて育てたかけがえのない子どもたちを仕事のために親から奪うことは何びとにも許されないということを肝に銘じていただきたいと思います。過労死のために我が子を失った親たちの悲痛な思いです。また、高年齢労働者や障害者の能力を引き出すためにはその特性に配慮することが必要である、これも当然のことだと思います。
1つ、今、山崎先生もおっしゃったことに関連するかもしれないですが、障害者の「害」という字は、石ヘンの「碍」ではなくて、ウ冠の「害」でいいのでしょうか。このごろは石ヘンの「碍」もよく使われているように思いますが、いかがでしょうか。
2点目は、情報通信業についてです。先日、IT企業で裁量労働制を適用された28歳の男性が、不動産会社のシステム開発に携わり、36時間連続勤務と長時間労働で過労死、労災認定されたとの報道がありました。残念ながら、調査や検討会等の立ち上げがなされましても、まだまだ情報通信業の過酷な労働条件は改善されておりません。取組をさらに進めながら、ページ10の下から5行目からページ11の7行目にあるように、労働・社会分野の調査研究については、重点職種・業種の継続的な調査や再調査が必要だと思います。続けていただきたいと思います。
3点目は労働時間の把握についてです。同じく資料2-2のページ15、下から5行目からページ16の8行目において、「長時間労働の削減に向けた取組の徹底」として、過労死等を発生させた事業場への指導徹底と、平成29年1月の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の周知が大綱に盛り込まれました。
高速道路関係の社員だった34歳の男性が未経験の仕事を担当させられ、連続36時間残業、最長月178時間で過労死し、労災認定された事案では、親が会社を業務上過失致死容疑で訴えております。企業は、労働時間の適正な把握とともに、長時間労働を減らす根本的な対策をとるべきであるでしょうし、国にはその指導が望まれます。
4点目はハラスメントについてです。ページ4の下から6行目から5ページの12行目、さらに11ページの下から2行目からページ17の8行目において、ハラスメント防止対策について新たに述べられておりますが、長時間労働対策とともに力を入れていただきたいと思います。
また、ページ23、下から9行目において、顧客や取引先からの暴力や悪質なクレームなどの著しい迷惑行為が問題になっているとされておりますが、1例紹介したいと思います。これは美容院です。美容院において、髪形が気に入らないと、客が美容師に「死んでしまえ」と何度も暴言を吐き、美容師がうつ病になったという事例を聞いております。雇用主からのハラスメントとともに、対策を検討していただきたいと思っております。そして、新しい大綱に基づいて、国、地方自治体、事業主、労働団体、民間団体、国民がそれぞれの立場から協力をして、過労死ゼロを目指して取り組むことが必要かと思っております。
以上、意見、要望について述べさせていただきましたが、重要な点においては過労死防止法の改正に引き続き結びつきますように検討していただきたいと思います。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、前川委員。
○前川委員 過労死を考える家族の会東北代表の前川と申します。
7ページの国家公務員について申し上げます。前回申し上げたのですけれども、人事院28年度年次報告書には、長期休職者3,295名とありまして、そのうち6割がメンタル疾患と言われています。けれども、実際の公務災害申請数というのは、精神が22件、認定が10件で、とても少ない。この7ページの部分に、実際、公務災害の申請数自体はもっと多くてもいいと考えますので、実情に追いついていないということと、制度の充実と普及が早急に、「公務員の申請制度の充実が図られる」というのを入れていただきたく思います。なぜならば、この膨大な3,295名の休職者の陰には、多分、万単位の厳しい状況にいる人がいると考えられるため、この辺が健全に申請できる組織になっていってほしいというのが願いです。
あと、前回の会議で申し上げた死亡者も調べていただいたのですけれども、死亡者全体で、国家公務員全体で227名。死亡率自体は普通の死亡率でした。いろいろ調べてみたのですけれども、こちらは人事院勧告の対象となる給与法適用職員27万人が対象の死亡率、死亡者数ということだったので、結局、このほかに30万ぐらいの人たちが国家公務員の中には入ってない、計算されてない。30万人の中にどういう人がいるかというと、外交官とか、大臣とか、自衛官とかですね。
自衛官というのは自死率が結構高くて、調べたところ、一番わかりやすかったのが、2015年6月5日の日経で、イラクに派遣された自衛官、特に2005年、2006年の自殺者数が10万人当たり38.6人。これは国全体の厚労省の簡易生命表によると、50代男性が一番自殺率というのは高いのですけれども、それでも10万人中26人ということで、派遣された人たちというのは多分50代ではないと思うので、異常な高率ではないかと考えました。
国防上の問題があるので難しいとは思うのですけれども、自衛官とはいえ、私たちにとっては大切な家族ですし、東北の過労死家族の会の中には自衛隊の方がいらっしゃって、その方の死亡原因はパワハラでした。たまたまそれは、宮城県の知事が自衛隊出身者だったので、隠していた書類が見つかって、労災、公務災害申請が通ったのですけれども、自衛隊の問題は非常に大きいのではないかと思います。なので、その辺の問題も一応あるということぐらいは、過労死防止法の大綱の中に、国民の一人だということで入れていただきたいなと痛切に願います。
あと、メンタルヘルスに関してですけれども、相談体制ができたことがダイレクトに過労死防止にはならないと考えます。深刻な相談を産業医にしても、仕事を続けながら回復していく、働きつづけられる状態を作るというのが過労死防止法の最も願うところでもありますので、相談後の相談者の仕事の継続率を、各企業、各産業医ごとに把握する必要について、言及いただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、八野委員。
○八野委員 私のほうからは、2-2の資料で、「(9)商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進」の26ページになります。まず、先ほども指摘がございましたが、「その他」の下の段落の中に、サービス産業を中心とした一部の消費者、生活者からの不当な要求を受け云々、労働者に大きなストレスを与える事例も問題になることから、取組に当たってはその点に配慮する必要もあるということを挿入していただいたことに感謝申し上げます。
実は、先ほど美容室の話が出ておりましたが、いわゆるお客様に対応する職種、例えば小売業であるとか、介護、教育、交通、運輸、そういう現場において、一部の消費者、または顧客、いわゆる生活者の中から悪質なクレームを受け、かなりのダメージを受けて働いている者が多くいるという事実が出ていることについては、きちんと受けとめなくてはいけないと思っております。
次は、同じ場所ですが、宿泊業を挿入していただいたことに関して感謝をいたします。
その上の建設業ですが、オリンピック・パラリンピック関連施設の建設中に過労自殺、または事故死が発生した事実があります。状況を聞いてみますと工期がかなりタイトになってきているということで、かなり過重労働が強いられているということを聞いております。宿泊業の中ではオリンピック・パラリンピックということを記載していただいていますが、建設業の中で、オリンピック・パラリンピック関連施設及び再開発に向けた建築現場等において長時間労働削減、安全対策が必要だということを強く感じておりますので、そこのところは意見として指摘させていただきたいと思っております。
もう一点は、先ほども挙がりましたが、それぞれの経営者、または労働組合、国等がそれぞれの役割を持って責任を果たしていくというところがあったと思います。ページで言いますと、労働組合のところは32ページになります。まず、ここでの概念ですが、過労死を考える家族の会の代表の寺西さんが、なぜ過労死、過労自死が起きたのか、なぜ違法な労働環境を放置していたのか、なぜ私たちは働く一人一人を救うことができなかったのか、人の命はかけがえのないものである、ということを発言されている場面がございました。この言葉こそが、政・労・使それぞれの役割の中で責任を果たさなくてはいけないことをきちんと発言していただけていると認識しております。労働組合としては、もちろん、過労死、過労自殺をなくすための職場環境を改善していく、または労働組合がある職場では労使の取組をきちんと行っていくということを宣言するとともに、使用者の皆様にもお願いしたいことになりますが、労働組合がないところにおいても、従業員の皆様と一緒に、長時間労働をどのように削減していくのか、職場環境をどう改善していくのか、企業文化をどう直していくのかということについて真摯に向き合って話をしていただけたらと思っております。
連合としては、労働組合のない職場で働く人たちに向けて、ルールを周知させる取組を全国で現状も行っておりますし、今後も力を入れて取り組んでいきたいと思っております。また、中小企業への取組については、行政としてもしっかりとした動きをしていただきたいということをあわせて申し上げて、意見とさせていただきます。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、森岡委員、中原委員のところまで御意見を伺って、それで事務局のほうでまとめて、今までのところで答えるものについてはお答えいただきたいと思います。では、森岡委員、どうぞ。
○森岡委員 森岡です。
この時期に至って、これまで議論してないことを新たに持ち出すことは現実的ではありませんが、限られた点に絞って若干の、恐らく最後のこの議論の場になると思いますので、発言をさせてください。
この間、民間団体からここに参加されている協議委員の方々の共通の要望として、過労死防止の観点から、調査研究に力点を置いた法律と大綱から、過重労働対策に踏み込んだ法律と大綱にもう一歩進めるべきだという要望がされています。
過重労働対策についてはこれはこれで、今回の最後の恐らくは原案となるであろうきょうの提案にも盛り込まれていまして、その点では、積極的な目標や、あるいは方向性、取組等が示されていて、私もある面で感謝をしております。しかし、他方、今回の大綱案がそうなっているというわけではありませんが、過重労働対策ということで調査研究を、もう済んだとしてしまうには課題がいろいろ残っています。その一つは、前回も発言しましたが、海外の過重労働と過労死の問題、あるいはストレスによる自殺やうつ病等の勤務に起因する疾病の実態を、先進国、途上国、新興国問わず調査する必要があります。
それから、ハラスメントもそうですね。それに対する防止対策も諸外国でいろいろ検討・実施されてきていますので、その面でも海外事情調査をもっと重視すると。具体的には、この大綱にどう書くかということでなくて、白書を作成する際に、過去の労働白書でもいまの労働経済白書でも厚生労働白書もそうですが、時々の白書には、年度ごとに重点課題があって、恐らくは専門家に委嘱してレポートを収録するということがされてきたと思います。
今回、3回目になる過労死白書ではまだそこまで踏み込めていないかもしれません。予算を組んで、今言ったような形で特定のテーマについて重点的な調査レポートを白書に盛り込むという努力をすることによって一定の方向性が出てくるのではないか。これは重点課題で絞り込んでするしかありませんけれども、いずれにせよ、過重労働対策ということでの使命がある一方、まだ調査研究にも課題が残っているということを申し上げておきたいと思います。
それから、インターバル休息制度について、私は前回、数値目標については消極的な意見も言いましたけれども、きょうのニュースで、育児休業法の男性の数値が5%になったというニュースがあって、13%ぐらいが目標数値ですが、初めて5%ということで少し前進があったというような報道がありました。そういうことで、数値目標の持つ意味もありますので、10%という数値目標が盛り込まれたことについては一つの積極面として、私も、前回の意見にこだわらず、受けとめさせていただきたいと思います。
その上ですが、定義で、ここでは「一定時間以上の休息時間を設けることについて、就業規則又は労使協定等で定めているものに限る」とされています。この一定時間以上というのが漠としているわけですね。2015年度の社会面調査の数字で、インターバルについて労働協約などで定めている企業の割合は2.2%だったという数字が出ていましたけれども、その調査では、5時間以下が7.7%、8時間以下だと38.5%となっていました。11時間超ももちろんあるのですが、28.2%にとどまっています。休息を、最低11時間確保する場合には、24時間で見ると13時間が最長の就労時間となります。5時間ということになると1日19時間労働もありうることになりまして、常に長い。
だから、一定時間以上というのは、最低休息時間をどのように確保するか、文章に健康配慮とか最低必要休息時間とか何か盛り込むという工夫も必要かもしれません。他方でEUのことが後に出てきて、11時間となっていますが、それを参考にするとか、健康確保や自由時間の確保という観点も含めて、行政的な指導では一定の取組を求めることが必要かと思います。その辺で、インターバル休息について、文章をどう表現するかという問題もありますけれども、少し検討願いたい。
それから最後に、インターバル休息でEUのことが出てくるくだりがありました。このEUのことで、文章が、適用除外云々が前書きにあって、それで本文が始まっているという、そのくだりが、どうもつながりが悪い。21ページ、下から3行目ですが、「その際、EU(欧州連合)加盟国では、労働時間指令によって、勤務形態の特殊性などから様々な業務において適用除外となっているが」という表現ですが、ここは適用除外のほうが強調されて、後のほうが薄まる文脈になって、しかも、適用除外というのをどのように読むか、読み取りにくいので、一番簡単な形で文章も訂正いただけるなら、「業務において適用除外はあるが」として、その後の文章をそのまま生かす。適用除外になっているというのはちょっとわかりにくいと思います。適用除外の職種や、例えば日本でいう管理監督者とか、そういう人は必ずしもそうでないと、あるいはそれから外れているという含みでしょうけれども、そういう含みを読み取る上ではちょっと文章の改善を要するのではないかと思いますので、私が言ったのは案になりませんが、一考をお願いしたいと思います。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、中原委員、どうぞ。
○中原委員 前回、宮本委員のほうから、産業医が担うべき職務が増大していることとか、産業医制度のあり方及び具体的な見直しの方針に応じていろいろ、産業医だけではなくというような御意見の中、今回、保健師という文言も含まれていますけれども、そもそも長時間労働をフォローする医療者として、精神科の医師がいいのか、看護師、精神保健福祉士、臨床心理技術者、あるいは循環器内科の医者がいいのか、これは非常に曖昧でわかりづらいのですね。
開業医とか勤務医というのは、そもそも産業医としての教育を専門的に受けていらっしゃる以外の方々はそれぞれ専門医というのを標榜しているはずで、ひとくくりに産業医といっても、皮膚科とか耳鼻科の先生たちもいらっしゃるということも、本当にこの長時間労働で健康を害した人たちのサポートができるのかというところが、もちろんできるとは思いますけれども、そこのあたりですね。もっと産業医に強い権限を与えてもらえたらという現場の先生たちの御意見もありました。
そもそも働きやすい職場づくりがかなっていれば、過労死することも、過労自殺に追い込まれることも防ぐことができるでしょうから、まずは、今、ストレスチェックに関して、50名未満規模の企業であっても、長時間労働者に対する、医師に対する面接制度は義務化されているけれども、ストレスチェックに対しては努力義務であって、まだ義務化というところまでいかないようですけれども、すばらしいこの制度があるわけですから、ぜひそういうのもこちらの過労死防止法のほうに取り込んで取り組んでいただきたいと思います。
世の中の多くの産業医は、身分の保障がないという立場でかなり苦悩している現場の悩みがあるようです。そもそも、ちょっとネットで産業医というのを調べると、産業医見積もりで他社より一円でも安く産業医を派遣しますとか、産業医紹介センターとか、企業の産業医、保健スタッフ、人事部、管理職等のあっせん事業などというような文言も見受けられて、これは本当に派遣事業ではないので、非常に危うさを感じます。特に厚生労働省と共同開発という広告を出しているような企業もあるのですけれども、そういうところのよい産業医とは、「会社側に盾突かない医師」ということで、そこで産業医として働いている医師が労働者側に立っての意見を述べると、次のときからもう更新がないという、契約されないというような目に遭っているという話も私のところには届いていますので、ぜひこの産業医の権限をしっかり強化していただくということが大切なのではないかと思います。
今、政府主導の多様な働き方で、健康管理時間と言われていますけれども、この健康管理時間というのも非常に曖昧な、時間の中身が余り見えてこないし、その中で医師の面談というのが、産業医なのか何なのか、こちらの過労死防止の大綱改定にあるように、保健師も含まれるのか、臨床心理士の技術者も含まれるのかというところが非常に曖昧で、その曖昧が大きくなれば、そういう派遣業務みたいなところも、厚生労働省の名前を騙って、多く広がってしまって、それが決して労働者のためにはならない仕組みをつくってしまっているという現状があるかと思いますので、どうかこのあたりは本当に規制強化、こちらのほうを重点的に取り組んでいただけるような、そんな仕組みをつくってもらえればと思います。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、一旦ここで事務局のほうから御質問等についてお答えいただければと思います。
○村山総務課長 多くの委員の先生方から多岐にわたる御質問含めてお投げかけをいただきましたので、私のほうから、国家公務員の公務災害以外の部分で、かつ最後の中原委員の御質問については、担当が参っておりますので、そちらから御回答を差し上げたいと思います。
まず、山崎先生の御指摘についてです。まず、表記の仕方として、「障害者である労働者」というよりは、「障害のある労働者」という書き方のほうがよいのではないかと。これは多くの委員の先生方もうなずいていらっしゃったところだと思います。まず、ここのところは見直す方向で省内の関係部局に投げかけ、調整してまいりたいと考えております。
それから、山崎先生からのもう一つの御指摘で、治療と仕事の両立支援に関するガイドライン等にも御言及いただき、ありがとうございました。この関係は今回記述を付加させていただいた、今後人口減少が現実のものとなる中で、また一人一人の方々の働くことを通じた生きがい、働きがいという課題をより前向きに考えていく方向の中でとても大きな課題として、私どもとしてもしっかり取り組んでいかなくてはならないと考えています。
同時に、過労死等防止対策という観点で編集しているこの大綱において、今、御指摘の点をどのようにこなすのか、1つ項立てをする選択肢もあるかもしれませんし、また、疾病を抱える労働者への取組という考え方をこの障害の部分に並立して、全体としてより幅広く考えるというアイデアもいただきました。一度持ち帰らせていただきまして、また別途、山崎委員はじめ各委員と御相談する機会を持たせていただければありがたいと思っております。
それから、輪島委員の御意見に続きまして西垣委員から何点かの御意見をいただきました。お二人の意見についてしっかり受けとめさせていただきたいと思っております。西垣委員からのお投げかけの一つとして、障害の「害」という字についてのお投げかけがございました。確かに、政府の公的な文書を策定する中でも、この点についてさまざまな御意見もいただいており、「碍」にしたり、あるいは平仮名で「がい」と書くようなケースもあろうかと思います。他方で、これはもう御案内のように、法律に基づいて最終的に閣議決定する文書だということなどもございまして、用字・用語の観点からの政府部内での取扱いの並びといったことも確認した上で、改めて、個別の点も含めて御回答差し上げることができたらと考えております。
それから、前川委員からの御指摘については、後ほど公務員制度官庁から御回答があろうかと考えているところです。
それから、八野委員からの多岐にわたる御提言、御意見の中で、特に、前回に引き続きまして、建設業に関して、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、短納期の工事等々の課題もございました。今回、状況を御理解いただいた上での御発言に重ねて大変恐縮ですけれども、26ページのオのところで、まさに建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議等々の最近の動きの中では、委員御指摘の点も含めて御議論は進められているものと考えておりまして、そうしたところを関係省庁とも連携しながら記述を書き足させてはいただいたという経過でございます。
ある意味、ぎりぎりの省庁間の折衝の中でこのような前向きな方向で修文したという上で、委員から御意見があったことはしっかり議事録に残した上で事務局は受けとめてほしいというお話がございましたので、この場をお借りして、しっかり受けとめさせていただき、また今後の対策の中で、安全衛生確保の対策、また労働条件の改善の対策の中で肝に銘じて対応に努めてまいりたいと申し上げることで御理解をいただければと考えているところでございます。
それから、森岡先生から多岐にわたる御指摘を頂戴いたしました。特に調査研究のあり方につきましては、この文章の中だけではなくて、今後の実践の中でもという御意見を頂戴いたしました。皆様も御案内のとおり、毎年の過労死等防止対策白書に、今重点になっている5分野、これからもしこの大綱が成立すればさらに分野がふえることになりますが、この分野ごとの研究・検討に当たりましては、森岡委員、山崎委員はじめとして、この協議会の委員の方々にも参画いただき、しかるべき検討の場で、アンケートの設計などいろいろなこなしもいただいた上で白書の記述に持っていっているという流れもございます。こうしたものにさらに何をつけ加えられるのかという点については、今後、本日いただいた御意見も含めて考えてまいりたく、今後の宿題とさせていただければありがたいと思います。
また、諸外国の部分について、今、諸外国における状況をこのように確認して、それを今後の白書にこう投影していくという方向まで確たる御回答ができなくて恐縮でございますが、前回までの回でも森岡委員から同様の御指摘をいただいておりますので、15ページの「国が取り組む重点対策」の中で、「労働行政機関等における対策」等の個別の記述に入る直前のなお書きのところで、「今後の調査研究の成果や諸外国の状況等を踏まえ」という形で諸外国の状況については入れておりまして、これを出発点として何がどこまでできるかということは、また個別に御指導いただきながら深めていくことができればと考えております。
インターバルの数値目標についてもいろいろ御意見ございました。数値目標の御議論については、会長の仕切りで、この後、ほかの先生方からも御意見があると思いますので、数値目標についてはこの場でのお答えを差し控えます。他方で、そもそもインターバルについて紹介しているところ、具体的には21ページから22ページで、適用除外がまず来て、原則のほうが後に来ているというのは、途中の議論の経過で、修文の関係からこのようになってしまっている経過がございますが、御指摘ごもっともな部分がございますので、文章表現については、どのような書き方ができるか、修正案を改めて御相談していきたいと思います。
事実関係として、森岡委員からございましたように、EU指令には、1つは森岡委員から御指摘のあったさまざまな業務の適用除外、それから、形態とか場合における適用除外、さらに協約等で各国の実情の中で除外できる場合等々いろいろあったかと思います。そうした点も含めて、記述の正確化とあわせて文章の流れの修正については引き取らせていただければありがたいと思っております。
先ほど申しましたように、中原委員からの御質問については、担当のほうからお答えを差し上げたいと思っております。
○神ノ田労働衛生課長 労働衛生課長でございます。
中原委員のほうから、産業医の権限を強化すべきではないかという御指摘をいただきました。実は、現在、国会で御審議いただいております法案でも、この産業医、産業保健機能の強化というのが重要な柱の一つとなっています。
具体的に申し上げますと、まずは産業医に情報が集まらないとしっかりとした産業保健活動ができないということですので、1つには、労働時間の状況をしっかりと把握をするということ、これを義務づけて、この労働時間の状況についてはしっかりと産業医に提供するということについても義務づけることにしています。これによって、長時間労働の方についてはしっかりと面接指導を受けてもらうということで、産業医が対象労働者に対して申し出の勧奨をすることもできるようになりますので、この面接指導の徹底ということもできるようになると思っております。
それと情報の関係でいきますと、健康診断ですとか、あるいは面接指導後の事後措置の内容についても、産業医のほうに提供されるようになります。それが不十分だということになれば、これまた産業医の判断としてしっかりと事業者に対して勧告することができますし、また、その勧告の内容については衛生委員会のほうに報告されますので、衛生委員会において労使がしっかりと協議をして、その勧告の内容が徹底されるような形で進められるということも期待しているところでございます。
あと、ちょっと口うるさいことを産業医が言った場合にやめさせられるのではないかというような御指摘がありましたけれども、産業医がやめた場合には、これも衛生委員会のほうに報告することを事業者に義務付けることとしておりますので、理不尽な理由でやめさせるということについては一定のブレーキがかかるのかなあと思っております。
あと、産業保健については、今、健康経営ということがよく言われていますけれども、産業保健について、コストとして捉えるのではなくて、むしろ投資だと、労働者の健康を守ることによってこの企業の発展につながると、そういう形で事業者の考え方も変化してきているのではないかと思っています。これは法律とは別途、産保センター等で研修にも力を入れているところでありまして、そういった考え方が事業者に浸透していけば、安かろう悪かろうという考え方で、余り仕事をしない産業医を選任するといったようなこともなくなるのではないかと思います。産業医と事業者が同じ方向を向いて仕事ができるような形で現場も変えていきたいと思いますし、そういった考え方を周知することで事業場での労働者の健康も守っていきたいと、そのように考えているところでございます。
○岩村会長 ありがとうございました。では、公務員関係につきましてよろしくお願いします。
○阿部人事院職員福祉局補償課長 人事院の補償課でございます。
先ほど前川委員のほうから、申請制度の充実についてお話がございました。実は国家公務員の災害補償の制度の性格を申し上げますと、国家公務員の災害補償は、国が直接自らの災害補償責任を果たすものと整理されておりまして、労災のようにいわゆる請求主義をとっておりませんで、被災職員ですとか、その遺族の方の請求を待たずに、国が直接認定手続を進めるというような性格を有しております。したがって、公務災害の認定手続きについては法令上の請求権という概念がないわけでございますけれども、他方、実態といたしましては、被災職員ですとか遺族の方々が、これは公務災害でないかという申し出をしまして、それを契機に各省が認定手続を始めるということもございます。
問題は、被災職員とか遺族の方が申し出をした場合に、各省がそれを捉えてきちんと手続を始めるということが大変重要ではないかと思っておりまして、そこは人事院といたしましても、常日ごろ、研修等の場をかりまして、各省に、そういう場合にはきちんと対応するようにということをお願いしておりますし、引き続き各省にはお願いをしたいと思っておるところでございます。
これに関連しましては、前回ちょっと申し上げましたけれども、資料2-2の28ページで「公務災害に関する相談窓口について周知を行う」という文言が入りましたので、どういう周知の仕方があるかというのは今後とも各省とよく相談してまいりたいと思っております。
それから、自衛官の方々についてお話がございました。実は人事院は一般職の国家公務員を所管しておりまして、自衛官のような特別職につきましてはいわば所管外ということで、コメントはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますけれども、他方、本日、委員のほうからそういうお話があったということはよく承知しておきたいと思います。
以上でございます。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、岩城委員、どうぞ。
○岩城委員 私からは、障害者の件とハラスメントの件、それから労働時間の把握について、意見と質問を申し上げたいと思います。
まずハラスメントについてですが、今回、パワーハラスメントという言葉から、その上位概念としてのハラスメントというのを前面に出した構成にしていただいたのは大変ありがたいと思っております。ハラスメントというのは、与える側もさることながら、受けとめる側にどのような影響があるのか、安全・安心して仕事ができるのかといった観点からの言葉ですので、さまざまなハラスメント概念を取り込めるような仕組みがいいのではないかということで、賛成したいと思います。
また、パワーという言葉を使う場合は、これはパワーに至っているのか至らないのかとか、正しいパワーなのかといった議論にもなってしまって、問題が見えにくくなってしまうということもあります。最終的には、この生存自体が脅かされるような過労死、過労死体制につながるような、例えば長時間労働や過酷な労働、それ自体がハラスメントではないかといった指摘もあるところであります。そういった点から、これからハラスメントについての調査研究が進んでいくことも期待したいと思います。
それから、例えばパワーハラスメントによってうつ症状が出た、うつ症状が出た結果、不眠になったと。それで睡眠不足の中で脳・心臓疾患を発症したという事案もあるわけですね。そういった場合、今の認定基準とかではなかなか把握、認定がしにくいというような構造もあって、これから、ハラスメントについての調査研究や認定基準の改善なども検討される必要があるかなと思っております。
2点目が高齢者、障害者の点であります。私が前回意見を申し上げて、今回取り入れていただいて大変ありがたいと思っております。念のための確認ですけれども、ここでいう障害者ということについては、身体障害のみならず、精神障害や知的障害も含むと考えていいのかどうか。それから、等級をもらっているかどうか、手帳を持っているかどうかにかかわらないという理解でいいのかどうか、後で回答いただけたらと思います。
3つ目が労働時間の把握の点であります。きょうにでも衆議院で採決される可能性があると聞いている高度プロフェッショナルの制度については、一定の収入のある労働者については労基法の労働時間規制から外すという制度だと理解しているのですけれども、そのような労働者であっても、健康障害の防止ということは必要だろうと思います。
また、今回、裁量労働制の拡大というのは外されましたけれども、従前から裁量労働制というのはありますし、それから、事業場外労働や管理監督者といった制度もあります。そういった方々について、労働時間の把握、それから、いわゆる健康確保のための健康管理時間の把握といったあたりがこの大綱の対象となっているのかどうか。また、なっているとした場合に、その把握義務について、国としての指導というのはどのようなものになるのかといったことについてお尋ねをしたいと思います。
以上です。
○岩村会長 最後の点は、今、国会にかかっている法律の話になってしまうので、ちょっと細かいところまでは、多分、事務局としてもお答えしにくいとは思います。
○岩城委員 ごめんなさい。私の質問の仕方が悪かったかもしれませんが、今の制度でも裁量労働制というのはあるわけですし、事業場外労働や管理監督者という、労働時間の厳密な意味での把握が求められてないものもあります。そこも含めての質問だったのです。
○岩村会長 現行法の問題としてですか。
○岩城委員 はい。
○岩村会長 では、事務局、お願いします。
○村山総務課長 事務局への確認、2点だったと思います。
まず1点目で、この書き方は、先ほどの山崎委員の御指摘を踏まえてどうするかという点もありますが、障害者である、あるいは障害をお持ちの労働者の方々への取組については前回も申し上げたかもしれませんが、最近の障害者雇用促進法の法律改正の中で、可能な範囲での合理的な配慮の提供の義務づけが一般的な考え方として入ったということも踏まえての今回の修文ということでございます。
申し上げるまでもなく、この法律というのは、障害をお持ちの労働者全般、知的、精神の方も含めて対象としており、その一般則に入っている規定でございますので、先ほど委員おっしゃったような御理解で受けとめていただくことができればと思っております。
なお、合理的配慮の指針の中には、個別の障害、主に想定される障害類型ごとにどのような配慮を提供していくかということが、公・労・使、さらに障害をお持ちの当事者、4者構成の審議会での御議論を踏まえて書き込まれているところであり、また、そうした経緯も踏まえて、所管部局と調整した上で、今回の文案も御提示申し上げたということを付言させていただきたいと思います。
それから、2点目の部分で、これは先ほど会長からも仕切っていただきましたように、現行の法制を前提とする中での御議論であると理解しておりますが、今、御指摘のありました管理監督者ですとか、みなしの労働時間制度の方々、これは労働基準法上の、特に割増賃金ですとか36協定との兼ね合いでどのようになっているかということからの整理だろうと思います。
一方で、先ほども少しお話に出ました労働安全衛生の観点からの健康確保措置に関しまして、例えば典型的には労働安全衛生法の66条の8に規定されている面接指導等に関しましては、現在でも、適用される労働時間・制度を問わず、例えば裁量労働の方であれば、労使で把握されている労働時間の状況に対応して、きちんと一定の要件の方々については義務づけ、ないし一定の要件の方々については努力義務という枠組みになっているということで、この大綱もそれと同じ枠組みで記述させていただいているということで御理解いただければありがたいと思います。
以上でございます。
○岩村会長 よろしいでしょうか。
ほかにはいかがでございましょう。
では、川人委員、どうぞ。
○川人委員 質問になるのですが、いわゆるダブルワークですね。複数職場で働いている人たちの労働時間等についての調査というのは、これまで行ったものがあるのか、ないしは現在調査中のものがあるのか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
○岩村会長 では、事務局お願いします。
○村山総務課長 お答え申し上げます。
昨今の一連の御議論の中でも、いわゆる兼業・副業、とりわけ、恐らく、川人委員、想定されているのは、どちらも雇用形態で働いていらっしゃるような、そういう方がどれぐらいいるかということに関しましては、例えば就業構造基本統計調査等を見れば実情がわかりますけれども、その労働時間に関しまして網羅的に、少なくとも相当のサンプル数をとって公的な統計として行われるような調査は、直ちに思い浮かぶものはないということでございます。
○岩村会長 私も関係する検討会をやっていますが、人数の統計は出ているのですけれども、時間については出てなかったように記憶しています。それは、1つには、個別の人ごとに調べなければいけないというのがやはりあって、調査上の非常に大きな難点が多分あるということかなと。マスでは、パートでやっている人は幾らとかいうのは出ますけれども、兼業をやっている人の中で、ではそれぞれどれぐらい働いているかというのは、ちょっと私も見た記憶がないのですね。
○森岡委員 関連しての質問ですが、2011年4月に、学術会議で、産業医が中心となって、「労働・雇用と安全衛生に関わるシステムの再構築を―働く人の健康で安寧な生活を確保するために」という提言がされました。そのときの議論で、産業医の委員の方から、非正規は健康診断受診率、その他さまざまな面で、正規と比べると数字が著しく低いということで、正社員と違った特別の健康配慮の必要性があるというお話がありました。
そのことも踏まえての発言ですが、近年、「雇用によらない働き方」とか、あるいは「雇用類似の働き方」ということが政府の「働き方改革」の中でもしきりに言われるようになって、フリーランスに注目が集まっています。これは公式の統計ではありませんが、アメリカではおよそ3,000万人、日本では1,000万人いるとも言われています。その方々は、ある面で兼業労働者(マルチプルジョブホルダー)、雇用関係に入ってない個人営業、独請け、インディペンデントコントラクターという形をとっている場合も多い。いずれにせよ、雇用関係に入らないと労基法の適用対象でない。
しかも、例えば1980年代末の過労死110番からずうっと経過を見ると、日本社会の一つの特徴として、低賃金労働者が急激にふえて、非正規比率が随分高まって、最近、ここ1~2年は下げどまっている感もありますが、高い数字であることは間違いない。
そのフリーランスを含む非正規の低賃金労働者の間では、兼業、副業で長時間働いている人も多い。近年、そういう労働者の合計労働時間がふえ、例えば一回のアルバイトが20時間で、それを1週間に5カ所していると、100時間働くなんてちょっと考えがたいような事例もあります。
その点で言うと、雇用関係によらない、労働基準法の保護を受けない長時間労働者の問題でもあるのですね。この協議会は、その辺も含めて全ての働く人々の健康配慮なり過労死防止というミッションがあると考えますし、そこは切り捨てられないと。今後の検討課題として重視していく必要があるのではないでしょうか。
○岩村会長 では、川人委員、どうぞ。
○川人委員 本日の意見になって申しわけないですが、要は、この調査の課題として、表現は、調査の困難性も考慮してお任せいたしますが、複数職場での労働の実態についての調査ですね。労働時間を含めた。これについても、今後の調査課題の一つと入れる方向で、大綱の加筆を検討いただければと思います。
ちなみに、労災の不認定例を見れば、その範囲でも今までの分については相当わかるとは思います。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございます。今の兼業、副業については、これから法律上どう扱うかということも含めて、私の承知しているところでは、審議会など、あるいは検討会などで議論するというような状況にありますので、それとの関係でどういう扱いになるかということもありますので、そこは引き取らせていただいて、また事務局と相談してみたいと思います。
ほかにはいかがでございましょうか。
それでは、大綱の数値目標以外のところはこれで一旦閉じさせていただきまして、次に、数値目標のほうに議論を移させていただきたいと思います。
まず、輪島委員からよろしいでしょうか。
○輪島委員 ありがとうございます。
15ページの数値目標、背景と、14ページからの第3の数値目標の関係でございますけれども、私どもとしては、全ての項目について適正な範囲の数値だろうと考えており、評価したいと思っております。
質問は、資料3の2ページですけれども、29年度のところ、8.5、8.2、7.7と下がってきて、傾向として、7.7は、私どもの肌感覚としては、さまざまなことを実施しているので、もう少し下がってもしかるべきではないかなと考えてはいるのですが、どうして数字が余り大きな変化がなかったのか、どのように分析しているのかというのはお聞きしたいなと思っています。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございます。事務局のほう、お答え、今できるでしょうか。
○村山総務課長 この点については、5ページをお開きいただきますと、今、労働市場全体の状況は、非常に人手不足感が強い中で、全体の生産年齢人口等が減る中にありましても雇用者数はふえているということが顕著に続いているという現実はあるわけでございます。29年に関しましては、28年と比べて、28年の5,561万人から、29年の5,642万人まで、非農林雇用者数が増えております。
こうした人手不足基調の中で、労使のお取組で、週60時間以上にわたるような長時間労働者を減らす方向でのお取組で、比率はそこで一目瞭然のように長期的なトレンドとして減ってきているわけですが、60時間以上の雇用者数の実数もほぼ横ばい、また割合もほぼ横ばいになっているのが現状ということで、十分我々も分析ができておりませんが、きわめて強い人手不足感が続いているということは、1つ要因としてはあるのかなと思っています。
ただ、その中にあって、前回の八野委員の御意見で今回加筆させていただきましたように、働き方全般、仕事のやり方全般の見直し、あるいは省力化投資や技術革新の活用等を通じて、できるだけ働きやすい職場をつくっていくということは引き続き必要な状況ではないかと理解しているところでございます。
雑駁な回答で恐縮です。
○岩村会長 よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。
それでは、中川委員、どうぞ。
○中川委員 私も、輪島委員と同様の15ページのところです。インターバル制度の導入企業割合を10%以上と明記したことについては、我々労働組合としても評価したいと思いますし、本大綱の大きなポイントの一つと受けとめております。連合の春季生活闘争、春闘においても、インターバル制度導入に向けて要求した組合は、2017年、2018年と合わせて500件ほどございまして、また、導入に向けて通年で労使において議論している組合もございます。
前回の協議会での、この制度があったら過労死を防げたのに、というような専門家委員の意見も踏まえますと、やはり過労死等防止の観点からは導入すべきだろうと考えております。この数値目標を新たな契機として、労働組合もより制度導入に向けて労使の話し合いを進めていきたいと思います。
加えて、制度の認知度についても目標値が明記されています。また、「勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会」でも、導入に向けたマニュアル等を検討するという発言もあることを踏まえますと、広く周知することと、導入に向けた手引きのようなものをしっかり整備するということのセットで、労働組合のない企業や中小企業などに向けて、制度導入に向けて広く波及することにもつながると思います。そのような重要な点もあるということも意見として発言させていただきたいと思います。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 全国中小企業団体中央会の佐久間でございます。
今、数値目標を賜りましたけれども、事務局からの御説明がありますとおり、14、15ページにかけての比較する、例えば労働者数30人以上とか、この辺の数字の具体性というのはどういうことなのかということもお伺いしたのですけれども、その既存の調査の割合とか人数分散とか、それから見れば、この部分の数字なのでおおむね妥当なのかなという考え方をとっております。
また、インターバル制度につきましては、何時間、例えば8時間なり11時間とか、そういう時間的なものはなかなか入れにくいことから、まずは周知を図るのが必要であると前回から御意見させていただいております。10%とか、努力目標的になってしまうかもしれませんけれども、まずインターバル制度の周知をしてもらう、事業者側としても知ってもらう、そして自分たちの独自のものを検討していただくという材料が必要なのではないかと考えておりますので、おおむねこの記載の仕方でよろしいのではないかと考えております。
○岩村会長 ありがとうございました。人数のお話が御質問か何かでしたか。それはよろしいですか。
○佐久間委員 はい。
○岩村会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。
では、山崎委員、どうぞ。
○山崎委員 私、今回提案されていますこの数値目標の、要するに勤務間インターバル制度についての趣旨の周知を図ることと、制度導入の普及を図ることの二段構えの数値目標を掲げた点、実は前回はそのことが明確にならないまま、どちらを選ぶかという感じも正直ありましたので、私は、この二段構えというのはやはりなかなか積極的でいいのではないかと思っております。
特に勤務間インターバルというのは、私たちの保健福祉分野の立場から言いますと、ワークライフバランスやインバランスのライフに当たる生活時間とほぼイコールでありまして、長時間にわたる過重労働とそれに伴うライフの欠如は一体となって、本人の健康とQOLのみならず、子育て環境を著しく阻害しております。睡眠の重要性は、例えば認知症の原因物質であるベータアミロイドのお掃除をしているなど、免疫力の回復を促進させる、いわば人を蘇生、再生しているという極めて生産的な時間であるということが、最新の脳科学や生命科学によって次々に明らかにされてきております。睡眠不足のまま仕事につけば、事故を引き起こしたり、サービスの質も下がることは昔から労働科学の分野ではデータとしてきちんと整ってきて、よく知られていることであります。
勤務間インターバルやライフ確保の位置づけを、過労死防止対策と働き方改革をめぐる議論において、率直に申し上げて、もっともっと高める必要があるかと思います。また、勤務間インターバルがあることで、仕事の質も上がることだとか、さらに家庭で子供の成長に親がかかわることができる時間とか、身体的、精神的な余裕が取り戻されることも必定であります。よって、私は、今回の数値目標のこの二段構えの設定というものを歓迎いたします。
以上の内容を、周知めざして広く皆さんの意識のもとに共有できるような形でのパンフレットを作成する等の事業に取り組んでいただければ幸いです。
○岩村会長 貴重な御意見をありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。
では、寺西委員、どうぞ。
○寺西委員 先ほどから数値目標についての、とりわけインターバル制度についての周知が全く、行き渡るのが乏しいという御意見がこれまでも出ていましたが、今、家族の会は、中原委員と私がこの厚生労働省の周知・啓発の委託事業の委員としてかかわっているのですが、これは連合さんも使用者側の方たちと同じ協議をしているのですけれども、その中で、ことしはこの大綱改定に向けての中身を積極的に入れてという趣旨で、今、準備を業者さんとともにしているところであります。
この資料を自治体であるとか企業側であるとか、これまでに普及しなかったところにも、インターバルとか、今度改定に向けての中身を入れていただきますので、積極的普及という意味においては周知する機会をもっと広くしていただきたいと考えていますので、事務局さんのほうでまた、連携している自治体であるとか、そういうところにぜひ、本日御参加いただいているかどうかわかりませんが、利用していただきたいと、周知徹底の材料にしていただきたいというお願いをしたいです。
○岩村会長 ありがとうございます。ほかはいかがでございましょうか。
よろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは、これで一通り、大綱の全体と、それから数値目標について御議論いただいたということかと思います。大変活発な御議論をいただきまして、まことにありがとうございます。いろいろ御意見もお出しいただいたところでありますが、いやいや、まだ言いたいという方も、ひょっとするといらっしゃるかもしれませんけれども、委員から幾つか御意見をいただいたところではございまして、それにつきましては、厚生労働省を初めとした関係省庁が事業を行っていく中で、御意見を踏まえて実施していっていただくと思いますし、またそのようにお願いしたいと思います。
また、当然のことではありますけれども、予算要求の作業等もありまして、時間の制約があるというのも事実でございます。大綱の今回のこの見直し案に含まれております対策の推進に当たりましては、協議会でお出しいただきました意見というものを踏まえて、関係省庁間でしっかりと取り組んでいただきたいということを、会長として改めて要望させていただきたいと思います。そういうことを踏まえて、きょうの議論につきましてはここまでということにさせていただければと思います。
きょういろいろ、修文の案も含めて御示唆等、御意見もいただいたところでありますけれども、修文等について検討しなければならない部分、場合によっては内容にわたる部分につきましては、最終案の確定をしていくステップの中で、個別に委員の皆様方の御確認もいただくということを前提とさせていただくという条件のもとで、事務局と私とで相談していきたいと思っていますので、最終的には会長である私に御一任いただくということで御了解いただければと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○岩村会長 ありがとうございます。
それでは、これまでこの大綱の見直しにつきまして委員の皆様から活発な御議論をいただきまして、まことにありがとうございました。
○西垣委員 済みません。
○岩村会長 では、西垣委員。
○西垣委員 申しわけございません。次の議題に移る前に一言つけ加えさせていただきたいのですが、今、岩村会長も提案者も言ってくださったことと関連いたしますが、ページはちょっと指定できませんが、過労死防止シンポジウム、11月の啓発月間が、大綱の中では唯一目標達成した、全国47都道府県と中央シンポにおいて実施できた。その前には民間団体が各地で実施をし、それに上乗せをして国主体のシンポジウム開催に繋がったということで、これはすごく大事なことで、評価すべきだと思うのです。
そのシンポジウムの開催の仕方につきまして、実は今、私の地元、兵庫では、労働局と、それから兵庫県と神戸市、それから各地方自治体、そして労働組合数団体、それから社労士会、そして私たち地元で遺族と弁護士でつくっている過労死防止兵庫センター、全てが一堂に会しまして計画を進めております。11月までに、もう1回目行いましたが、6回から7回、毎月のように打ち合わせをしまして、その中では実は、労働局や兵庫労働基準連合会様の御協力もいただいて、企業から過労死防止、いわゆる長時間労働改善の取組についても、この2年続けて報告していただいているところであります。
そのように、大綱はどこかにあり、防止法はどこかに祭っておくものではなくて、日常的に全国でこれが実践されれば、その中でインターバルについて説明する機会もございますでしょうし、もっと広く国中に過労死防止の考えが広まるのではないかと思うのです。どこに書いてほしいということではありませんが、ぜひよろしく皆さんに御協力をお願いしたいと思います。
済みません、お時間をいただきまして。
○岩村会長 ありがとうございます。今、そういう強い御意見と御要望があったということは、多分、きょうのメンバーの皆さん全てがそのように受けとめたものだと思っております。ありがとうございます。
それでは、ここで山越労働基準局長から御挨拶いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山越労働基準局長 それでは、一言御挨拶をさせていただきたいと思います。
平成26年にこの過労死等防止対策推進法が成立いたしまして、また、翌年の27年に、御議論いただきましたこの過労死等の防止のための対策に関する大綱、これが閣議決定されたところでございますけれども、私どもといたしましては、それ以来、この法律、それから大綱を踏まえまして、さまざまな取組を重ねてまいりました。
ただ、残念ながら、そうした中でも、働き過ぎによって尊い命が失われたり心身の健康が損なわれる、そうした痛ましい事態がまだ後を絶っていないところです。そうした中で、厚労省、それから当事者の皆様の大変熱心な御議論をいただきまして、今回、大綱の見直しをしていただいたところです。これを新たな過労死等の防止の対策のためにぜひともつなげていかなければならないと思っております。
大綱の見直しにつきましては、昨年の10月から4回御議論いただきまして検討していただいたところでございますけれども、今後、この大綱につきましては、関係省庁との調整やパブリックコメントがございます。そういった手続を行った上で、政府として閣議決定してまいりたいと思っております。それに基づきまして必要な対策を講じてまいる所存です。
今後、予算編成、あるいはことしの白書もございますので、その節目節目でこの協議会を改めて開催させていただきまして、その際、また皆様から御意見を伺いつつ、過労死ゼロを目指して一歩一歩、しっかりと対策を進めていきたいと思っております。ぜひとも、今後とも皆様の御協力をお願いしたいと思います。本日はまことにどうもありがとうございました。
○岩村会長 山越局長、ありがとうございました。
本日こちらで用意しました議題は以上でございますけれども、先ほど川人委員から提出資料についての御発言のお求めがあって、そのときは後ほどと申し上げたものですから、ここで川人委員から御発言をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○川人委員 どうもありがとうございます。簡潔に申し上げます。
きょう配付していただきました「岩城委員及び川人委員提出資料」というものがございます。これは過労死等の労災認定基準の改定意見書について、せんだって、厚生労働省に提出したものでございます。本協議会は過労死防止法の協議会でございますので、認定基準について扱う場ではございません。
ただ、この認定基準の改定意見書の中には、過労死防止法の趣旨、つまり、過労死を防止するためにどうするかということに非常に関連する内容が多数ありますので、概括的な資料の配付をお願いした次第でございます。
御存じのように、いわゆる過労死ラインという言葉が使われ、現在、時間外労働が月80時間というものがその目安になっているわけですが、これは平成13年、2001年に厚生労働省が策定した労災認定基準が起源になっていると、そのように理解しております。言いかえますと、2001年から17年間経過しているわけですが、この間にこの認定基準の見直しは行われておりません。この17年間の間に数多くの医学的な知見が内外で発表されております。労働時間と疾病に関する知見が発表されています。また、数多くの全国的な裁判所の判決も出ております。これらを踏まえて、過労死の認定基準というものについて見直す時期に来ている、そのような指摘をし、それで、かなり大部な文書でございますが、意見書を提出したということでございます。
また、精神疾患等につきましては2011年に認定基準ができまして、これももう既に7年が経過しております。その間にまた新しい知見もたくさん出ており、判決等も出ております。したがって、これらも含めて厚生労働省において認定基準の見直しを検討していただきたいということで提出した次第でございます。
委員の皆さんに申し上げたいのは、ここで書きました内容は、過労死防止との関係で、実際には非常にダブる内容が含まれております。そういう意味で、ちょっと2点だけ申し上げたいのですが、1つは、私どもは、いわゆる過労死ラインと言われるものについては、1カ月80時間ではなく、65時間が適切であるという意見書を提出しました。これはさまざまな医学的な知見や判例に基づいた意見でございます。このさまざまな医学的知見その他については、今後、過労死防止を進める上でもぜひ生かしていただきたいと考えている次第でございます。
もう一つ、先ほどテーマになった問題ですが、ダブルワーク、現行の労災行政においては、2つの職場で雇用されて働いていた方が、例えば一つの職場で200時間働いた、もう一つの職場で100時間で働いた、合計300時間、月に働いたという場合について、労災認定の対象外にされています。以前はそういう場合も労災認定の対象となっていたのですが、現在は労災認定の対象から外されております。こういう扱い、果たして適切なのかと。労災行政として、過重労働で亡くなった人については救済すべきであるという立場から、是正についての意見を申し上げています。
このことは、過労死防止法との関係で言えば、今後も含めて、複数の職場で働いて、その結果、過労で倒れたり亡くなるということを防止していかなければいけません。そのためにどのようにしたらいいのかということで、さまざまな調査が必要だろうと思います。この協議会以外にもさまざまな場でこの問題は議論されているとお聞きいたしましたが、ぜひ重要なテーマとして今後とも調査をし、さらに検討していただきたいと考えております。
以上、貴重な時間をありがとうございました。
もし御希望があれば、一報いただければ、全文をお渡しいたします。よろしくお願いします。
○岩村会長 ありがとうございます。もし何か御意見等があればと思います。
では、村上委員、どうぞ。
○村上委員 今、川人委員から労災認定基準の問題について御発言がありましたので、私ども、労働者側委員としても意見を申し上げたいと思います。大きく3点ございます。
1点目は、私どもとしても労災認定基準見直しの検討に着手すべきではないかということでございます。この協議会の場でも、あるいはそのほかの労政審の場でも申し上げてまいりましたが、その趣旨というのは、労災認定されるべき事案で労災認定されていないものがあるのではないかという認識からでございます。先ほど岩城委員からもありましたように、パワハラの行為についての評価が低いのではないかという問題であるとか、あるいは労働者性をめぐる問題もございますし、今、御指摘もありました複数事業場の問題などもございます。そのようなことなどを含めると、労災全般に関しての検討というのは必要ではないかと考えております。
本日配付いただきました弁護団の意見書というのは、認定基準の中で改定を要する項目について、労基署の認定の実務であるとか再審査での実務、あるいは行政取り消し訴訟の中での実務に基づいた具体的な御提案かと思っております。それらも踏まえつつ、御意見の中にもありました労災認定基準を定めてから時間も経過しているということであるとか、被災労働者の救済であるとか、過労死の防止といったような観点から見直しの検討に着手すべきであろうと考えております。
その際、現在の認定基準もそうですし、その前の認定指針もそうでございますが、策定される過程では、いずれも法律や医学の専門家を集めた検討会を設けられまして、そこでさまざま資料収集であるとか検討を経てとりまとめられたと認識しております。
こういった経緯に照らしましても、専門家などを集めたような検討会を速やかに設置し、弁護団の皆様の御意見だけではなく、さまざまな分野から広範に意見を集めて検討していくべきではないかというのが意見の1点目でございます。
2点目ですが、認定基準の改定作業が必要であるということとは別に、同時に認定基準の法的性質についても再確認しておく必要があるのではないかと考えております。この点につきましては、旧労働省時代の労働基準局の見解は明快でございまして、認定基準に記載された要件の法的性質というのは、限定列挙ではなくて例示列挙であるということで、認定基準に該当しないことを理由に業務起因性を否定するのは誤りであるということとされております。
具体的には、「認定基準はその設定されている有害因子別の疾病の業務起因性を肯定し得る要素の集約である。したがって、認定基準の要件とは異なる形態で発症する疾病を必ずしも全て否定しているものではなく、認定基準に該当しない疾病であっても、業務と疾病との間の相当因果関係の存在が認められる疾病については業務上の疾病として取り扱われるものである」とされておりまして、これを公式見解として認識していけば、労災認定基準に合致しないから労災と認定されないということは減っていくのではないかと考えております。
そうしたことから、労基署の認定実務であるとか、審査請求、再審査請求の実務に対して、認定基準に該当しないという理由で業務起因性を否定する例を抑制していくためにも、認定基準の性質が例示列挙にすぎないということを、この際厚生労働省として示していただきたいと考えているところでございます。認定基準の見直しというと時間がかかりますが、これまでの見解を改めて出し直すということはすぐにできることかと思いますので、ぜひ御検討いただきたいと考えております。
3点目でございます。これは具体的な案があるということではありませんが、この間、過労死、過労自殺をされた被災労働者の御遺族の方々が、労災申請をするのは大変労力が要る、精神的にも物理的にも、また、さまざまな資料を集めなくてはいけないというそのことでも大変労力がかかっているということを伺っております。川人先生や岩城先生のような弁護士の先生方が全国津々浦々にいらっしゃればサポートしていただけるかと思いますが、そうではありませんので、過労死等をゼロにしていくということはもちろんですが、被災労働者の御遺族の方々をサポートできるような仕組みというものも何か事業として検討いただけないかとお願いでございます。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでございましょうか。
寺西委員、どうぞ。
○寺西委員 ありがとうございます。
今、貴重な御意見をいただきまして、私たち過労死を考える家族の会では、労災被災者という観点から、たまたまきょう参加している人たちは全て労災が認定された人たちばかりですが、労災が起こってから遺族が相談するに当たって、申請者側に立証責任があるというハードルがすごく高いことがありまして、なかなか相談にも行けない方が多いわけであります。前川委員も先ほど少し触れられましたが、被災したその向こうには、本当に泣き寝入りされた方がたくさんいらっしゃるという現実があるわけです。
私たちは、このような過労死をする前に、今にも倒れそうな人を救いたいということで、やはりここで大事なのは、相談体制の整備がもっと大事になるかと思うのです。このままでは倒れてしまうという段階でせめて相談していただきたいというのが私たちの狙いで、この防止法の意味もあると思うのですね。ですから、相談体制の整備において、今、このパンフレットにも一部書いていただいていますが、そうした方の相談がもっと全てにおいて窓口があって、相談体制をきちっと受けとめていただける、そうしたものもこれから充実した形に向けて進めていっていただきたいなということをお願いしたいです。
○岩村会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
では、輪島委員、どうぞ。
○輪島委員 今の件で、厚生労働省のほうからどのように御見解をお持ちなのかをお伺いしておきたいと思いますが。
○岩村会長 きょうのところは、もう会は閉じていますので、今のところ、こちらとしては厚労省の御見解までお願いするということはちょっと考えていないということでございますが、でも、村山課長のお手が挙がりましたので、どうぞ。
○村山総務課長 今、会長から整理していただいたとおりでございますけれども、他方で、先ほど川人委員からお話のあった意見書に関しましては、別途、行政のほうでもしかるべく御説明とともにいただいているところでございまして、その取扱いにつきましては、本日いただいた御意見、担当課長も来ておりますし担当部局もみんな聞いているところでございますので、本日の状況も踏まえて今後しっかりと検討していきたいと考えております。
本日のところは以上でございます。
○岩村会長 輪島委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、どうぞ。
○輪島委員 私どもとしては、現行の認定基準というのは、医学的な専門家による検討会の報告書を踏まえたエビデンスに基づいたものだと認識しております。それから、精神障害の関係の認定基準についきましては平成23年に制定されて、かつ、現在では、その審査基準の明確化とか、具体的なものの早期化とか、改善が行われているとは認識しておりますので、その点を踏まえて今後考えていきたいと思っております。
以上です。
○岩村会長 ありがとうございました。
それでは、会そのものは既に終了しているのですが、最終的に、これをもちましてきょうは終了させていただきたいと思います。長時間にわたりまして、皆様、どうもありがとうございました。(了)