長妻大臣再任記者会見概要

H22.06.08(火) 23:51 ~ 24:23 省内会見室

広報室

会見の詳細

挨拶

大臣:
夜遅くにどうもありがとうございます。先程官邸でも会見を申し上げましたが、この度、厚生労働大臣、年金改革担当大臣に再任をいただきました長妻でございます。またよろしくお願いを致します。私からは官邸で冒頭申し上げましたので、皆様からの御質問をいただければと思います。

質疑

記者:
総理とお会いされたと思いますが、就任にあたって総理からどのような指示があったのかという点と、再任をされての抱負をお願いします。
大臣:
総理からは6点指示がありまして、年金記録問題、後期高齢者医療制度を廃止して新しい制度を作る、そして子ども・子育ての政策、障害者自立支援法を廃止して新たな障害者福祉制度を作る件、そして求職者支援制度の創設、派遣労働法制の見直し、そして6番目としては食の安全・安心という項目の御指示がありました。私からは、「少子高齢社会の日本モデル」ということを総理にも申し上げまして、これについて総理の方から進めて欲しいというお話がありましたので、このビジョンを国民の皆さんと共有をするべく取り組んでいきたいと考えています。
記者:
総理は会見等で「強い社会保障」という言葉をよく使われますが、大臣はこの「強い社会保障」といったものはどういったものをイメージされているかという点と、消費税増税の議論についてどのように今後進めていくべきと考えられているか教えて下さい。
大臣:
「強い社会保障」と裏腹だと思いますが、「強い財政」ということも総理が言われておられます。やはり強い社会保障というのは強い財政に裏打ちされた持続可能性、そして少子高齢社会の日本モデルというと、ある程度一定の地域で、例えば中学校区とかそれくらいの地域で基本的サービスが受けられる。あるいは自宅に居ながら、つまり在宅のサービスの充実を、これは訪問介護だけでなく看護もそうでしょうし、精神疾患の方々へのアウトリーチといわれる訪問、あるいは保育についてもご家庭にお邪魔をして御相談にのるような、そういう在宅でのサービスの充実ということが一つ重要ではないかと考えております。それとともに、社会保障費の自然増というのが国庫負担だけでも年間1兆円ずつ増えていくという大変激しい増加が見込まれるわけでありますので、今後、消費税を含めた税制改革の議論は進める必要があるということであります。ただ、前提としては役所文化を変えて、ムダ、優先順位の低い事業を自ら表に出して削っていくと、こういう役所文化にならなければならないと。今週の改善ポイントというものも出していますし、人事評価基準も変えましたので、そういうものを徹底的にやるという前提で国民の皆様方に少子高齢社会の日本モデルの絵姿もお示しをして、そういう税制改革の御理解もいただいていくと、こういうことが必要となる時期が来るのではないかと考えております。
記者:
子ども手当の関係ですが、総理と会話をされた時に、子ども手当が今後どうなるかということは一般の方もすごく関心が強いと思いますが、何らかの話というのはあったのかという点と、先程の会見の中で、「財政のことを考えると満額支給は難しい」というような発言をされたと思いますがその辺りをお聞かせ下さい。
大臣:
総理とお会いしたときは、金額については、短い時間でしたので話は出ませんでした。私が先程官邸の会見でも申し上げましたのは、1万3千円が今月から支給が始まりました。平成23年度について満額の支給ということについては、やはり財政上の制約もあり、それは難しいのではないかということを申し上げたところであります。1万3千円の上乗せ部分については、現金か、あるいは保育サービスかということについては今後の検討課題であります。いずれにしましても、ある程度考え方というのがお示し出来ることになった時に、これは国民の皆さんにきちんと説明をしなければならないと考えております。
記者:
確認ですが、今言われた満額支給というのは、「現金で満額支給は難しい」という意味なのか、それとも「保育サービスでやったとしても満額は難しい」という意味なのかどちらの意味で取られているのでしょうか。
大臣:
財政も含めた制約ということを考えますと、その満額という意味は、現物、現金を問わず2万6千円という水準について確保するのが難しいのではないかという風に我々としては考えております。それについて具体的にどういう考え方でいくのかということは、これは税収がどれだけ確保出来るのかということも含めて我々としては考えていくということでありまして、これについて一定の結論が出れば国民の皆様にきちんと御説明を申し上げるということが必要だと考えております。
記者:
「政治とカネ」について3点ほどお伺いします。小沢前幹事長ですが、辞任でけじめをつけたという話が出ていますが、それについて大臣のお考えはどうかということと、政倫審等で弁明すべきという意見もありますが、それについてのお考え、あと、クリーンな民主党ということを強調していますが、具体的に「政治とカネ」でクリーンであるということにはどんなことが必要だとお考えでしょうか。
大臣:
幹事長をやめるということになったわけですので、これについては一定の「身をひく」ということを考えてそういうことになったのではないかと思います。政倫審の出席については、これは御自身がある意味では申し出てお話をすると、そういう仕組みになっていると思いますので、これは基本的に御本人の判断だと考えております。そして、「クリーン民主党」というお話ですが、これは野党時代、政権交代の直前に私も法律提案の答弁者として、政治献金について企業団体献金を基本的に禁止をすると、法案の答弁に立ったわけでありますので、基本的には企業団体献金を禁止するということを速やかにやる必要があるのではと考えております。
記者:
菅総理との個別の面談の中で、大臣はこの8ヶ月間で官僚との摩擦が色々あったと思いますがそれに関して総理から指示はあったでしょうか。
大臣:
それについては特にはないです。
記者:
「もう少しうまくやって欲しい」とかそういった指示はなかったでしょうか。
大臣:
そんなような話はないです。
記者:
子ども手当についてですが、先程のお話ですと5.3兆円の財源を確保するのは難しいということですが、そうしますと現金で言いますと何万円くらい財源が確保できそうとお考えでしょうか。
大臣:
これについては、財政の状況との相談になるのではないかと思いますが、15歳より下の方々に対する若年者扶養控除を廃止をすると、「控除から手当へ」ということでありますので、やはり廃止と一定の年収以上の方がそこで黒字になるか赤字になるか、実質的なプラスマイナスがどう変わるのかと、こういうようなことも見る必要があるのではないかと考えております。今の段階については今後財政が税収も含めてどういう見込みになるのかということもございましょう、あるいは中期財政フレームということもありますので、それらの状況を見ながら判断をしていくということになると思います。
記者:
控除等がなくなると、なくなったまま現金が1万3千円であまり増えないとなると増税になる子育て世帯が増えてきますが、そういうことも考慮をして赤字にはならない程度にというお考えでしょうか。
大臣:
基本的には今お話いただいたような考え方が必要ではないかと考えますが、ただ、全体の中でどういう考え方、税制も含めて、控除といってもマニフェストで他の控除についても一部廃止をするということも申し上げておりますので、全体像の中でどう考えていくかということについて、税収、財源との見合いで我々も考えていくということです。
記者:
関連ですが、1万3千円は必ず守るということでしょうか。それとも、上乗せではなく1万3千円も下回る可能性はございますでしょうか。
大臣:
1万3千円は下回ることはないと思います。
記者:
それは一部保育サービスなどの現物給付に回すために支給額が下がるということも基本はないと。
大臣:
基本的にはそういうことは想定していません。
記者:
関連ですが、所得制限について改めて伺いたいのですが、所得制限の是非についてはどのようにお考えでしょうか。
大臣:
所得制限についても私自身は基本的には今と同じです、つまり所得制限がないという風に、現金支給の面だけで見ると確かにそうでありますが、先程申し上げた「控除から手当へ」という考え方で、実質的に若年者控除が廃止をされますと、控除というのは年収の高い人ほど有利になりますので、プラスマイナスでいうと年収の高い方ほど実質的な手取りは減るということで、税制面での所得制限が実質的についているのが今の制度だと考えておりますので、この考え方で基本的には行くということです。
記者:
先程から子ども手当の話で大臣は「我々」という言葉を使われますが、その「我々」が示す範囲というのは厚生労働省なのか政府全体のことなのか、どこを指しているのでしょうか。
大臣:
「我々」と言ったのは、基本的には厚生労働省、私がまずは一義的に全責任を負う立場である厚生労働省ということでありますが、ちょうど今、マニフェスト作成の時期でもありますので、これは当然、党と政府で一体となる必要があるわけで、そういうことについても党とも平仄を合わせていくということで、色々意見交換をしているところであるということです。
記者:
党とも大体そういう認識で一致をしているという考えの元に「我々」という言葉を使っているという感じでしょうか。
大臣:
そうです。
記者:
子ども手当の関連ですが、「保育サービス」という場合に保育所整備のためのお金も含めているイメージなのか、それとも保育所の利用のためのお金といった、家庭が直接負担するものの軽減のために何かしていくというイメージなのか、そこら辺の範囲はどういったイメージをお持ちでしょうか。
大臣:
これについては、保育サービスだけではありませんで、他のサービスについて現物給付と言ったときに、範囲が保育サービス以外も入るのか否かということについても今後検討されると思いますが、そういう意味では今確定的に厳密にどこの範囲でどういう考え方かというのはまだ固まっている段階ではありません。いずれにしてもマニフェストで申し上げていた案件でありますので、変える時にはきちんと具体的にどういう考え方で変えていくのかということは国民の皆様に懇切丁寧にきちんと説明をする必要があると考えています。
記者:
今回年金改革担当の兼務となりましたが、菅総理から年金改革について何か指示はありましたでしょうか。
大臣:
年金については、新しい年金制度の取り組みを進めて欲しいという指示です。総理交代ということで少し遅れておりますが、いずれ総理がトップの組織で年金の原則を発表するということも今考えております。
記者:
これまでですと、国家戦略室の方がどちらかと言えば主導権を握っているように見えたのですが、今後長妻大臣が主導権を握って行くことになるのでしょうか。
大臣:
主導権というか、政府全体で良いものが出来ればいいわけですので、今回の年金の原則にしても基本的には年金局の中にチームを作って、いろいろな方にも御協力をいただいて、そこでまとめた案も御提示させていただいているところです。いずれにしても年金制度というのは厚生労働省だけで完結出来るものではなくて、財政にも非常に大きな影響がございます。文部科学省の教育関係の共済も含みますし、財務省所管の国家公務員の年金共済、総務省の地方公務員の共済にも絡みますので、やはり、政府のど真ん中で議論の土俵を作ることが適当だと考えてやっているところです。
記者:
それに関連してですが、基本原則を示されたあとに、具体的な制度設計に向けて今の検討会を引き継いで行くのか、あるいは新しいものにするのかという組織の問題と、いつ頃検討を始めて、いつ頃までにまとめたいと大臣がお考えかお聞かせください。
大臣:
これについては我々はマニフェストについてもお示ししていますが、4年後に法律を成立させるということです。法律を成立させることになると、一定の制度設計がそこで終わっていなければいけないわけですので、基本的にはそういうタイムスケジュールの中で非常に大きな大改革ですので、それぞれ国民の皆様の御意見を聞く、あるいは与野党で話合いの場を作るなど、それぞれの過程でそいういうことを丁寧にやって行く必要があると思います。今のところについては、まずは原則をお示しして行くということを考えております。
記者:
菅総理は貧困問題について「政治の課題」だとおっしゃりましたが、具体的に何か指示はありましたでしょうか。
大臣:
具体的には指示はありませんでした。これまでも副総理時代に意見交換をしているところですが、今私ども厚生労働省としては格差というのがどれくらい開きすぎると、経済的損失を呼ぶのかということについて、ナショナルミニマム研究会で試算をしているところです。相対的貧困率が、例えば子どもについては所得再配分後に更に格差が広がるという、特異な現象が日本で起こっているということもあります。あるいは、雇用でも伴走型というか、マンツーマンで雇用等に就く支援、パーソナルサポートいう考え方もありますので、「少子高齢社会の日本モデル」の中でも非常に重要な位置を占めるテーマだと考えております。 そして、「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」も作りましたが、これは自殺者の方の数が昨年9月の政権交代以降、最新は本年の5月のデータですが、前年同月比で減っているということもあります。メンタルヘルスの分野も含めてトータルで「少子高齢社会の日本モデル」の中でも提言して行きたいと思います。
記者:
来年度の予算編成に向けてですが、菅総理は財政再建とともに、強い社会保障を主張されておりますが、昨年末は予算の制約の中で、かなり長妻大臣は苦労されたと思いますが、そういった予算編成の方針も変わるというお考えでしょうか。
大臣:
一つは中期財政フレームということもあります。あるいは概算要求もありますので、いろいろな過程を経て議論が煮詰まって来るとは思います。ただ、前回については9兆円もの税収の落ち込みということがありました。今回どれだけ税収が増えるのか、あるいは景気動向も密接に絡んで来ますが、そういう一つ一つの過程の中で決まって行くことだと思います。いずれにしても大変財政が厳しいことは言うまでもないことですので、厚生労働省は予算のかなりの部分を使う役所ですから、自らは徹底的に必要性の低い事業や、無駄の部分、浪費を呼ぶ天下りを含めて見直して行くことが何よりも重要だということを省内でも申し上げているところです。そういう議論の過程で中期財政フレーム、概算要求というところで具体的な金額が判明して来ると思いますので、我々もその都度対応を考えなければならない局面もあるかもしれませんが、今はビジョンを示すことについて、あるいは概算要求の骨格作りについて今後取り組んで行くということです。
記者:
今の話を伺いますと、やはり、短期的にはなかなか社会保障を充実させるのはそう簡単にいかないけれども、中期的には強化して行くという方向性ということでよろしいでしょうか。
大臣:
そうです。やはり、税制改革ということについて、消費税以外のものについて進められるものは進めて行くべきと私も考えております。社会保障を預かる所管の責任者として、今の財政全体を見ると税制の部分まで私も発言をする必要性が出てくるのではないかと考えております。何度も申し上げるようですが、だからこそ自ら身を削って浪費、無駄遣い、天下り、これまで数多く指摘されていたことが徹底的に表に出る組織になれば、一定の信頼が得られる、そうしないと道は開けないということを省内で口を酸っぱくして申し上げているところです。
記者:
年金制度で最低保障年金の額は示されるのでしょうか。また、無年金者対策については盛り込まれるのでしょうか。
大臣:
まだそこら辺は議論をしている最中です。これは当然そんなに長く時間をおくわけではありませんので、固まり次第公表するということです。
記者:
消費税に関してですが、先ほどお話がありましたが、大臣は以前から2期目以降とおっしゃっていたわけですが、消費税に関しては例えば、福祉目的税化、社会保障目的税化という議論、少なくとも税率としてはこれくらいが必要だろうという大臣のお考えをお聞かせください。
大臣:
やはり、厳密に精査しなければなりませんし、その上げる時期との関係もあります。税率というのは今直ちに申し上げるという段階ではないわけですが、いずれにしても事業仕分けを含め、徹底的に国民の皆様に申し上げたように無駄を削って行くということを前提として「社会保障費自然増も年間1兆円あり、今後こういうメニューも実現すると、こういう御負担が必要になるのではないか」ということも御提示する時期が来るのではないかと考えております。
記者:
消費税以外の税制改革の部分で、念頭にある項目はありますでしょうか。
大臣:
いろいろな税金が世の中にあると思いますが、所管は財務省ですのでいろいろお考えになっていると思いますので、私から何か確定的にこの税金という段階ではないと思います。
記者:
B型肝炎訴訟なのですが、政府の調整役であった仙谷大臣が官房長官ということで、今後B型肝炎訴訟については調整役を含めどのように対応されて行くのでしょうか。
大臣:
私が聞いておりますのは、官房長官が引き続き調整役になると聞いておりますので、基本的には今までと同じということです。千葉法務大臣も再任されましたので、同じメンバーで取り組んで行くことになるのではないかと思います。
記者:
年金記録の紙台帳とコンピューター記録の突合作業で、職員が事前に情報を2つの業者に流していたということがあったのですが、それについての受け止めと、これについては問題がないという日本年金機構から説明があったのですが、それについて大臣はどうお考えかお聞かせください。
大臣:
昨日、日本年金機構から相談したいことがあるということで、その話を聞きました。基本的にその職員がそういうふうに言っているという話の報告を受けておりますが、本当にそれだけなのかどうか、コンプライアンスの部署が日本年金機構にありますので、そこに調査を命じました。第一次的な発表は今日させていただいたと聞いておりますが、これで終わりではありませんので、コンプライアンスの担当部署で調査をして新たな問題があれば公表いたします。いずれにしても、処分は必要だと思いますので詳細が確定した時には公表させていただくということです。
記者:
入札に参加した業者からは、「不公平だ」という声が上がっているのですが入札をやり直しをしたりすることはお考えでしょうか。
大臣:
今の段階においては、我々が掴んでいる情報は非常に断片的ですので、コンプライアンス担当部署で調査をして、一定の結果が出た後で判断をして行くことになると思います。
記者:
先ほどのB型肝炎訴訟の件ですが、大臣としてはどのように取り組んで行かれるのでしょうか。
大臣:
かねてより申し上げておりますが、総理が変わりましても重要度に対する認識はもちろん変わっておりませんし、取り組むメンバーも同じ閣僚が引き続き取り組むという体制ですので、非常に重大な大きな問題だと考えております。政府一丸となって取り組んで、総理にも逐一御指示を仰ぎ、御報告をし、内閣全体の問題として私としても取り組んで行きたいと思います。

(了)