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第4回 糖尿病ってなぁに?

今回は「糖尿病」をテーマに、その症状や治療、予防について紹介します。

【theme】
Q.糖尿病はどんな病気?

A.私たちの血液中のブドウ糖(血糖)の濃度は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって一定の範囲に保たれています。

糖尿病は、インスリンが十分に働かないために慢性的に血糖が増えてしまう病気です。血糖の濃度(血糖値)を高いまま放置すると、将来的に心臓病や失明、腎不全、足の切断といった合併症につながります。

糖尿病の種類には1型糖尿病や2型糖尿病などがあります(表)。


症状からは気づきにくい 定期的な健診の受診が大切

糖尿病は、2型糖尿病の発症の初期段階など、血糖値の上昇が軽度の場合には症状が見られないことが多いです。そのため、眼や腎臓の合併症が進行してから糖尿病と診断されることがあります。症状からは気づきにくいため、定期的に健診を受診して早期に糖尿病を見つけ、合併症が進行する前に治療を開始することが重要になります。

40~74歳を対象に行われている特定健診(メタボ健診)や職場の健診で血糖値や体重、血圧などを定期的に測定することによりリスク要因を把握し、早期に対策を講じることができます。健診結果が保健指導レベルになった場合は、指導を受けて2型糖尿病の発症を予防しましょう。

血糖値がかなり高くなると、喉が渇く・たくさん水を飲む/トイレの回数が増える/体重が減る/疲れやすくなる――などの症状が出ることがありますので、心当たりがある際は、医療機関の受診をお勧めします。

【PickUp】
食事・運動・体重管理・禁煙など生活習慣の改善がカギ

2型糖尿病の予防には、生活習慣の改善が非常に重要です。以下の方法を実践することで、糖尿病のリスクを低下させることができます。

1. バランスの取れた食事
野菜、果物、全粒穀物、魚、豆類などを中心とした食事を心がけ、糖分や脂肪分の多い食品を控えめにします。1日3食規則正しく食べることや、間食はヘルシーなスナックを選ぶことが大切です。

2. 適度な運動
週に150分以上の有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)を目標に、少なくとも週3日、できれば毎日やりましょう。筋トレも取り入れると効果的です。階段を使う、歩く距離を増やすなど、日常生活のなかで身体を動かす機会を増やすこともお忘れなく。

3. 体重管理
健康的な体重を維持すること、特に腹部肥満を避けることが糖尿病予防につながります。

4. 禁煙
喫煙はインスリン抵抗性を高め、糖尿病リスクを増加させるため、禁煙をお勧めします。

これらの生活習慣の改善は、糖尿病の予防だけでなく、全体的な健康状態の向上にも寄与します。日々の小さな工夫を積み重ねて、健康的な生活をめざしましょう。

なお、1型糖尿病が生活習慣と関係なく発症することや、2型糖尿病の発症に、体質など生活習慣以外の要因が関与していることにも留意が必要です。

治療は個々の状況に合わせて主治医や専門医と相談

糖尿病を発症した場合、良好な血糖コントロールを維持して合併症の発症・進展を予防するため、定期的に医療機関で治療を受けることが重要です。
糖尿病の治療方法は、患者の状況や糖尿病のタイプによって異なります。1型糖尿病では、インスリン注射による治療が不可欠です。2型糖尿病では、まず食事療法や運動療法を行い、血糖値の変化などを見ながら内服薬などによる治療を実施します。

・食事療法:バランスの取れた食事を心がけ、カロリーや糖分の摂取量をコントロールします。
・運動療法:個々の生活スタイルに合わせて、医師や専門家と相談しながら運動プランを立てます。
・薬物療法:食事や運動だけでは血糖値がコントロールできない場合は、経口血糖降下薬や注射薬が使用されます。2型糖尿病でもインスリン注射が必要になることもあります。


1型糖尿病でも2型糖尿病でも、糖尿病による合併症等を予防・管理するため、定期的に眼底や腎臓、歯周病などの検査を受けましょう。

治療は個々の状況によって異なるため、主治医や専門医と相談しながら、最適な治療計画を立てることが重要です。定期的な受診や生活習慣の見直しが、良好な血糖コントロールに役立ちます。

糖尿病への社会的偏見や治療に関連する誤解

糖尿病を発症した場合、さまざまな社会的偏見(スティグマ)に直面することがあり、治療に関連する誤解も存在します。

【糖尿病に関するスティグマ】
糖尿病は生活習慣のみが要因で発症するわけではないのに、甘いものの食べ過ぎや運動不足と結びつけられ、「自己管理ができていない」というレッテルを貼られることがあります。

【治療にまつわる誤解】
食事療法・運動療法など治療が面倒であるという認識や、インスリン使用に対する抵抗感、周囲の理解不足などがあります。

これらのスティグマは糖尿病患者の精神的健康や社会的関係にも影響を与えることがあり、それを防ぐためにも、教育や啓発活動により糖尿病に関する正しい知識を広め、理解を深めることが重要です。

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出典: 広報誌『厚生労働』2024年11月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省