外国人労働者の視点で考える 日本の職場の好きなところ・驚いたところ

日本で働く外国人労働者数は2016年に100万人を超え、さらに昨年には初めて200万人を超えました。
外国人労働者の方々は、今や日本全国で活躍しています。6月は「外国人雇用啓発月間」です。
この機会に本特集では、日本における外国人労働者の現状にスポットを当て、雇用の狙いや増加に伴う労働環境の変化、支援策などについて、実際に働く外国人や雇用する事業者の声を交えながら紹介します。

外国人労働者の「今」

●外国人労働者とは
日本で働く外国人労働者は、出入国管理及び難民認定法で定められている在留資格の範囲内で就労活動が認められています。

●在留資格や就労形態
日本で就労する外国人の在留資格は、就労が認められるもの、身分に基づくもの、就労の可否は指定される活動によるもの、就労が認められないものの4つに大別され、就労形態は次の5つになります。

(1)専門的・技術的分野の在留資格
教授や高度専門職、経営者・管理者、弁護士、医師、研究者、語学教師、介護福祉士など。
(2)特定活動
経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者や、外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデーなど。
(3)技能実習
人材育成を通じた国際貢献が目的で、技能実習生として活動するもの。
(4)資格外活動
留学生のアルバイトなどで、本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内(1週間28時間以内など)で認められる。
(5)身分に基づく在留資格
永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者などで、活動に制限がないため、日本人と同様にさまざまな分野で活動が可能。

<Part1 解説>
日本の労働環境はどう変わる?~外国人労働者の活躍~

日本で働く外国人労働者数(約200万人)も外国人雇用事業所数(約32万カ所)も、直近では右肩上がりの状況が続いています。
外国人材が増えている今、労働現場はどのような姿になっているのでしょうか。
そして、国はどのような支援を打ち出しているのかについて、厚生労働省の担当者に聞きました。


解説:大久保 透弥
職業安定局外国人雇用対策課


企業への新しい風に 全国各地で活躍する外国人
昨年の外国人労働者数が200万人を超えたことが一つの大きなトピックになりました。一時はコロナの影響で増加率が鈍化したものの、外国人労働者数は増加傾向にあり、今回の200万人という数字につながっています。

在留資格別に見ても、2008年は日本人の配偶者の方などが含まれる「身分に基づく在留資格」が約半数でしたが、だんだんと「専門的・技術的分野の在留資格」や「技能実習」などの就労が認められる在留資格の人たちの割合が増えてきています。

外国人労働者の方々は、「日本で得た知識や技能を使って自分の国で起業をしたい」「故郷に大きな家を建てたい」といった目標や目的を持っている人もいれば、先に日本に来ている人から聞く「日本で働くことの魅力」に背中を押されて日本を選ぶ人などさまざまです。

そして、外国人労働者数の増加に伴い、外国人を受け入れる企業(事業所)数も増えてきています(図)。最初の一人を雇用するハードルはまだまだ高いようですが、外国人を雇ってみた企業からは「問題なく働けている」「文化や考え方が違うことが刺激になっている」「海外の知見を取り入れることで会社全体の活性化につながっている」などのポジティブな声が聞こえており、各地で外国人が活躍していることを実感しています。



現場の声を聞きながら必要な支援ツールを作成
外国人を雇用することに対するポジティブなコメントがある一方、外国人の雇用に漠然とした不安を感じている企業も少なくありません。

たとえば、事業主や人事担当者には、文化や言語の異なる外国人に「どのように話をしたら誤解が生じないか」「職場のルールや人事労務制度をどのように説明すればいいか」という不安があるようです。そうした場合には、厚生労働省で作成している労務管理や就業規則の説明ツールなどをぜひ活用してみてください。

また、外国人特有の事情に配慮した雇用管理改善の取り組み(一時帰国のための休暇制度整備や社内マニュアルの多言語化など)を行い、外国人労働者の職場定着などに努める事業主に対して、一定の要件を満たす場合に、助成金(人材確保等支援助成金:外国人労働者就労環境整備助成コース)を支給しています。

外国人にも、労働関係法令は日本人と同様に適用されます。外国人だからという理由で特別な手当を付けなければいけないということも、日本人より低い待遇で雇ってよいということもない点は押さえておきましょう。

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6月は「外国人雇用啓発月間」です。
今後も外国人労働者数の増加が想定されるなかで、外国人の雇用管理改善は大変重要になります。この機会にぜひ、外国人の雇用に関するルールなどを改めて確認していただき、外国人労働者の皆さんも事業主の皆さんも、困ったり悩んだりした際は、お近くの労働局・ハローワークまでご相談ください。


人事労務に関する3つの支援ツールはこちら


 

出典 : 広報誌『厚生労働』2024年6月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省