新型コロナウイルス最前線

第26回
長引く症状との付き合い方
~コロナ罹患後の症状に悩んでいる方へ~

本連載では、新型コロナウイルス感染症の動向や対策などを紹介しています。今回は罹患後症状について、神奈川県川崎市健康安全研究所所長で、「診療の手引き別冊 罹患後症状のマネジメント」の編集委員座長の岡部信彦さんに聞きました。


岡部信彦さん
川崎市健康安全研究所 所長

 

◎罹患後症状で悩んでいる方々がいます

——新型コロナウイルス感染症にかかった後、症状が改善せずに持続する方もいるようです。どのような症状が多いのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症に罹患した後、「なんだか、(コロナ罹患前と比べて)違う。体調が良くない気がする」と訴える方がいることがわかっています。我々は、これを新型コロナウイルス感染症の罹患後症状と呼んでいます。

これまでの国内外の研究などによると、代表的な罹患後症状には、倦怠感、呼吸困難、筋力低下、集中力低下、脱毛、睡眠障害などがあるとわかってきています。罹患後症状は、目に見える症状もあれば、目に見えず外見ではわかりにくい症状もあることから、周りの理解が得られにくく悩みを抱えている方もいます。




——罹患後症状は、どういった人に現れるのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症に罹患し入院された方を対象に実施した厚生労働省の研究事業では、入院時の重症度が高かった方、治療中に人工呼吸器管理を使用した方、女性、中年者(41~64歳)において、罹患後症状を訴える割合が多かった、と報告しています。多くの方は、時間の経過とともに症状が改善するとされるなか、長引く症状に悩んでいる方もいることが現状です。

罹患後症状については、世界的に研究が進められている最中であり、まだわかっていないことも多いことから、今後も国内外の研究に期待しています。

——症状が長引いていると感じた場合、どうすればいいのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症に罹患した後、感染性は消失したにもかかわらず、長引く症状があるときには、かかりつけ医などや地域の医療機関を受診し相談しましょう。

かかりつけ医や地域の医療機関などでは、ほかの疾患による症状の可能性も含めて診察します。罹患後症状の多くは、時間経過とともに症状が改善することが多いとされていますが、その過程で、症状を和らげるなどの各症状に応じた対症療法をすることもできます。症状がつらい場合は、我慢せず受診をしましょう。
 

◎罹患後症状への理解を深め寄り添った対応を

——かかりつけ医でなくてもいいのでしょうか。

コロナの流行によりかかりつけ医を持つことの大切さが広まりましたが、若者や働く世代など、日頃、医療機関を受診する機会が少ない方などは、かかりつけ医を持っていない方が少なくありません。そのような場合は、地域の医療機関を受診し、ご自身の症状について相談してみましょう。一人ひとりの症状や、症状の程度に合わせた対症療法を受けることもできますし、専門医等へ紹介することも可能です。




——最後に、読者へのメッセージをお願いします。

罹患後症状に悩む方へのケアについては、医療者側の理解が追いついていないという専門家の意見もあります。我々は、かかりつけ医や地域の医療機関などで罹患後症状に悩む方に適切に対応できるよう、国内外の知見を盛り込んだ「診療の手引き別冊 罹患後症状のマネジメント」を作成し、医療現場などにお届けしています。罹患後症状に悩む方が必要な医療を受けられるよう、これからも取り組んでいただきたいと思います。

この機会に、改めて、新型コロナウイルス感染症罹患後に、長引く症状に悩んでいる方がいることを知っていただきたいです。目に見えない症状もあり、職場や学校など、なかなか周囲の理解を得られず悩んでいる方もいます。罹患後症状に悩む方に、「気のせい」「気の持ちよう」などと言わず、寄り添った対応をすることが大切です。


〈罹患後の症状について〉
「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について」の情報をHPにまとめています。リーフレットやQ&A、各都道府県における罹患後症状に関するホームページ一覧などについて、掲載しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00402.html


新型コロナウイルス感染症の罹患後症状
(いわゆる後遺症)に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html

 

出  典 : 広報誌『厚生労働』2022年12月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省