未来(あした)のつぼみ


大きな制度改正でなくとも、日々の地道な積み重ねが厚労行政の可能性を広げています。ここでは、厚生労働省の若手職員たちの取り組みや気づきを紹介します。




高校生に考えてほしい
人生100年時代の社会保障
~社会保障教育モデル授業の開発~

 社会保障とは何でしょうか。読者の皆さまには、中学・高校で勉強したご記憶があるでしょうか。試験に向けて「社会保険」「公的扶助」といった用語を覚えたことはあっても、「社会保険料を支払う意義」、さらには「社会保障の本質」まで掘り下げて学んだ、という方は多くないのではないかと思います。

 次世代の主役となるべき若い世代が、変化する社会における社会保障について当事者意識を持って考えられるようになることは非常に重要で、これまでも教材の作成・配布や教員向け研修を行ってきました。そしてこのたび、本年度入学の高校1年生から新学習指導要領に基づく「公共」の授業が始まることを見据え、改めて現役の教員等にヒアリングしたところ、「厚生労働省作成の教材は内容のレベルが高く、使用する学校が限られる」、「授業のやり方等の具体的な実践例を知りたい」などのご意見をいただきました。これを踏まえ、学校現場の社会保障教育へのハードルを下げられるよう、有識者による検討会と高校教員による開発チームを中心に、高校生向けモデル授業を開発することになりました。

 まず、社会保険の仕組み等の総論と、公的年金保険または公的医療保険という各論を題材として、主体的・対話的で深い学びを実現できる4種類のモデル授業案を作成しました。この案の検証授業や映像資料用の授業撮影をしようとしたところ、ちょうど新型コロナウイルス感染症の影響で休校や時短授業等の措置が行われており、当初想定していた時期には実施できず、感染拡大状況をにらみながら実施可能な日程を探ることとなりました。そのようななかで実施していただいた授業では、教員の生徒を引き付ける話術と、高校生の鋭い意見や活気ある議論を拝見することができ、担当者としても大いに勉強になりました。

 こうして、関係者の多大なご尽力により、高校生が人生100年時代の社会保障について「自分ごと」として考えるための素材を多く盛り込んだモデル授業を完成させることができました。本年4月上旬には、モデル授業の指導案等を掲載した指導者用マニュアルと、モデル授業を活用した実際の授業映像を収録した指導者用映像資料を、全国の高等学校等に配布しました。
 
 今後は、社会保障教育が1つでも多くの学校で行われるよう、モデル授業の周知を行っていきます。そして、若い世代が、この国の社会保障の未来について考える力を養えるよう支援していきたいと思います。
 


 

・指導者用マニュアルはこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24485.html




 
出  典 : 広報誌『厚生労働』2022年5月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省