新型コロナウイルス最前線

第6回
新型コロナ感染症対策の今

世界中で大問題となっている新型コロナウイルス感染症。本連載では、その動向や対策などを紹介しています。

今回は、法務省と連携した「#広がれありがとうの輪」プロジェクトの進捗状況に焦点を当てるとともに、賛同企業や自治体、新型コロナウイルス感染症対策推進本部地域支援班の取り組みもお伝えします。


新型コロナ対策推進本部と
国民の距離を近づけたい

 昨年12月から感染防止対策の徹底と、医療従事者をはじめ感染者やその周囲の人々への差別や偏見の解消・防止を図るために始めた「#広がれありがとうの輪」プロジェクトは、現在多くの自治体や企業、団体と連携して多様な取り組みを進めています。

 これまで同プロジェクトを周知してきたことで、たくさんの「ありがとう」の声を集めることができました。こうした声を、最前線で新型コロナウイルス感染症と闘う医療従事者や感染防止対策に取り組む人たちに届けていくことが次の役割だと感じています。

 今回、法務省と一緒に同プロジェクトを進める機会を得られました。共通して持っている思いは、正しい情報を一人でも多くの国民の皆さんに伝えるということです。「ありがとう」を届けると同時に、知らないうちにしてしまっているかもしれない新型コロナウイルス感染者への偏見や差別を防ぐために、法務省とともに正しい情報を発信していきます。

 なぜ、この状況でこのプロジェクトをするのかを聞かれることがありますが、新型コロナ対策推進本部、そして国の思いは「国民のいのちを守りたい」に尽きます。


不安を思いやりやエールに!

 法務省では今年3月9日から、厚生労働省や協賛企業・団体と連携して、新型コロナウイルス感染症に関する差別や偏見をなくすための人権啓発キャンペーンを展開しています。

 新型コロナウイルス感染症に関する差別・偏見が発生しており、法務省の相談窓口にも今年2月までの1年間で約2300件の相談がありました。

 新型コロナウイルス感染症は気をつけていても、誰もが感染する可能性を持っています。そうしたなかで、根拠の乏しい情報への過剰な反応や心ない言葉は多くの人を傷つけます。厚生労働省と連携して、不安を思いやりやエールに変えていきます。


「#広がれありがとうの輪」プロジェクト



 

<賛同企業・自治体の取り組み>

●賛同 ヤフー株式会社
 ヤフーは最前線で新型コロナウイルスへの対応にあたっている医療従事者を応援したり、逆に医療従事者の思いを共有できる場としてYahoo!ニュースのサービス内にコメント投稿機能を設けています。医療現場の最前線で対応にあたっている方たちへの応援メッセージのほか、医療現場の現状など、たくさんのコメントが集まっています。
 新型コロナウイルスへの対応にあたっている医療従事者の方への応援メッセージをぜひお寄せください。

サポートしたいあなたへ
医療従事者応援まとめ

「#広がれありがとうの輪」プロジェクトに賛同
Yahoo!ニュースの医療従事者応援施策


●賛同 Facebook Japan株式会社
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、Facebook Japanは利用者の皆様の安全を守り、正確な情報を提供するコミュニティの支援に取り組んでまいりました。
 このたび、「#広がれありがとうの輪」の取り組みに賛同し、公式Facebookページでの発信やFacebookプロフィールフレームを通じて、コミュニティへの参加を促していきます。

公式Facebook


●賛同 うえしまもえ(ゆる絵描き)
 新型コロナウイルス感染拡大のさなか、日夜戦ってくださっている医療従事者の方々に感謝申し上げます。わたしにも微力ながらなにかできることはないかなあと思っていた折にお声がけいただき、ロゴマークを描かせていただきました。ホっと気持ちがほころぶような、心の健康のお手伝いができたらなと。「ありがとう」というささいな一言は、ときに心によく沁みます。医療従事者の方々そして日本中の人々の心に、あたたかいひだまりができることを願って。


●賛同 日本労働組合連合会(連合)
 医療・介護現場で闘っている人、荷物を運んでくれる人、スーパーやコンビニなど生活必需品を扱う人、電車を運行してくれるなどインフラを担う人…今日も私たちの生活は、たくさんの人のお仕事に支えられています。
 連合は、全ての働く人々に感謝を込めて、素敵なキーメッセージ「#広がれありがとうの輪」を全国一斉配信し、励まし合うことで感染症に強い社会の実現をめざします。

公式HP

ユニオニオン公式Twitter

 

<座談会:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部 ONE TEAMでコロナを乗り越える(前編)>

 新型コロナウイルス感染症対策推進本部の地域支援班、保健班、クラスター班のメンバーに、各班の取り組みを通して見えてきたことや感じたこと、国民や自治体、医療機関に知ってほしいことを語り合ってもらいました。


「何でもやります」のスタンスで

──各班の役割や、これまでの取り組みを教えてください。

佐々木●新型コロナウイルス感染症対策推進本部の地域支援班は、本部の各班や関係課室と都道府県との橋渡しをする役割を担っています。地域の感染状況と対策の状況を把握しとりまとめるとともに、各地域の施策の企画や運営を支援しています。自治体との関係が深い保健班保健班やクラスター班、DMATなどからあがってくる各地域の情報も集約し、連携の調整をするのも当班の役割です。

近藤●保健班は主に保健所の支援をしています。新型コロナウイルス感染症(以下、コロナと略)の流行により、保健所は普段の仕事ができなくなっています。コロナが発生した地域の保健所は混乱をきたしていることが多いので、「なんでもやります」というスタンスで支援に入り、体制づくりや業務のサポートをします。

千島●私は地域支援班DMATに所属しています。DMATというと、災害時にがれきの下に医療を届けるイメージがあると思いますが、地域支援班DMATではコロナのクラスターが発生した病院や施設に支援に行き、保健班と同様に体制づくりや業務のサポートをします。

島田●クラスター班で国立感染症研究所FETPに所属しています。保健所を中心に自治体が実施している疫学調査のお手伝いとして、聞き取りをしたり、データにまとめたりして、感染者の傾向や感染経路を明らかにするのがメインの仕事です。千島さんのように、病院や施設に調査を目的として支援にも入ります。近藤さんと一緒で、「なんでもやります」と伝えながら、現地の人たちと一緒にコロナ対策をしています。

寺谷●特に急激な感染拡大がみられるときには、地域支援班は都道府県の行政機能の全般を支援します。一定の数を超えたり大きなクラスターになる前に、専門性や業務継続に強い人材、物資、情報などを送ることで拡大を防いで収束を早めることができます。


少しのテコ入れで現場は実力を発揮できる

──支援をしていて、どんなことを感じていますか。

近藤●大きな波を経験していない地域で急速な感染が拡大すると混乱しやすいので、寄り添いながら第三者の目を入れて落ち着いてもらうという意味での支援に入っているのですが、支援に行くと謝られてしまうことが多いです。予防をしていても発生してしまい、いくつかの要因が重なると感染が拡大してしまうことはあるので、申し訳なく思う必要はありません。

千島●病院も一緒で、「申し訳ない」と萎縮している職員の人たちに出迎えられることがあります。支援に入ると、誤った対策を打っているわけではないので、ほんの少しテコ入れをすればいろいろなことが回りだしますね。以前、施設でクラスターが発生し支援に入ったのですが、施設の職員だけで対応し、自治体や関連病院からの支援をうまく受けることができずに施設の職員だけで対応していたことがありました。職員の人たちが安心したのを見て、支援に入ってよかったと思いました。

島田●大きな病院や、感染防止体制をしっかりつくっているところなどは独自に分析をし、「自分たちでなんとかしなければ」と思ってしまいがちですが、支援に入ることで一緒に検証をしていくこともできます。
 また、人が足りず、うまく回っていない、そうした中小病院や施設を支援していくことで一緒に原因を探り、感染拡大防止に努めていきたいと思います。

寺谷●自治体との関係性を深めながら、状況を注視して支援のタイミングを逃さないようにしています。支援と受援、さらにほかの地域への支援などの経験と学びを深めて、地域と国全体が強くなることにつなげていきたいです。

(次号へ続く)



 

◎自治体の声

<広島市から>

平本恵子さん
広島市健康福祉局保健部医務監(新型コロナウイルス感染症対策本部)

 広島市では、感染者が急増した昨年12月下旬、厚生労働省DMAT及び国立感染症研究所FETPの先生方に来庁いただき、本部体制の強化や患者情報のデータベース化、感染状況の分析、広報作成の指導など、幅広い支援を行っていただきました。これにより、市内8区で発生した患者情報や施設情報が本部内で円滑に共有され、速やかに治療や調査を進めることができました。さらにクラスター対応についての指導で、保健センターの職員の知識・技術の向上につながり、クラスターの収束に結びつけることができました。

<沖縄県から>

糸数 公さん
沖縄県保健医療部 保健衛生統括監

 昨年夏、沖縄県における感染拡大時に厚生労働省の地域支援班の派遣をお願いし、対策本部内に席を設け、約1カ月間さまざまなアウトブレイク対応に共にあたっていただきました。県医師会との会議では国の立場から説明をしていただき、病床確保の協力が得られたほか、通知類の疑義照会への丁寧な対応は現場の助けになりました。また、助言を受けて対策本部に施設クラスター対策班や検査企画チームを設置したことが、現在の体制強化にもつながっています。地域支援班の方々が受援側の立場を理解して支援を行っていたことが強く印象に残っています。

 

 

出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年4月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省