新型コロナウイルス最前線

第5回
新型コロナワクチンの副反応について

世界中で大問題となっている新型コロナウイルス感染症。本連載では、その動向や対策などを紹介します。

前号に引き続き「新型コロナワクチン」や「#広がれありがとうの輪」プロジェクトについてお伝えします。また、昨年末に公開されたHP「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」についても紹介します。

 

――これまでに認められている副反応にはどのようなものがありますか。

予防接種室●現在、開発中の新型コロナワクチンの副反応については、どのようなものが起こりうるか確認されているところです。日本への供給を計画している海外のワクチンでは、接種後に、ワクチン接種と因果関係がないものも含めて、接種部位の痛みや、頭痛・倦怠感・筋肉痛等の有害な事象がみられたことが論文等に発表されています。

 また海外で既に実施されている予防接種においては、まれな頻度でアナフィラキシー(急性アレルギー反応)が発生したことが報告されています。もし、アナフィラキシーが起きたときには、接種会場や医療機関ですぐに治療を行うことになります。


――アナフィラキシーではどのような症状が出ますか。治療法はありますか。

予防接種室●薬や食物が身体に入ってから、短時間で起きることのあるアレルギー反応です。じんま疹などの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状が急に起こります。血圧の低下を伴い意識レベルの低下や脱力を来すような場合をアナフィラキシーショックと呼びます。

 特定のワクチンだけに起きるものではなく、さまざまな医薬品やワクチンの投与後に報告されています。たとえば、インフルエンザワクチン接種後の副反応疑い報告では、因果関係があるかどうか分からないものも含め、1シーズンで、約20件のアナフィラキシーが報告されています。

 予防接種後に、息苦しさなどの呼吸器症状がみられれば、接種会場や医療機関で、まず、アドレナリン(エピネフリン)という薬の注射を行います。そのあと、症状を軽くするために、気管支拡張薬等の吸入や抗ヒスタミン薬、ステロイド薬の点滴や内服なども行います。

 すぐに対応が可能なよう、予防接種の接種会場や医療機関では、医薬品などの準備をしています。


――副反応が起きた場合の補償はどうなっていますか。

予防接種室●一般的に、ワクチン接種では、副反応による健康被害が、極めて稀ではあるものの避けることができないことから、救済制度が設けられています。救済制度では、予防接種によって健康被害が生じ、医療機関での治療が必要になったり、障害が残ったりした場合に、予防接種法に基づく救済が受けられます。新型コロナワクチンの接種についても、健康被害が生じた場合には、予防接種法に基づく救済を受けることができます。
 

厚生労働省のワクチンに関するページ(2021年2月9日現在)





「#広がれありがとうの輪」プロジェクト
 

<賛同企業・自治体の取り組み>

●賛同 TikTok Japan
 TikTokでのプロジェクト開始から約1カ月で、「#広がれありがとうの輪」に関する動画の総投稿数1.8万本、総視聴回数5,300万回、総いいね数280万回、総シェア数9.2万回を超え、多くのユーザーの皆様にご参加・共感いただきました。
 投稿動画の中では、感染症対策のために働く方々への感謝はもちろん、感染予防に取り組む一人ひとりや家族・友人など身近な人に対する感謝やエールの言葉が多く生まれています。また、コメント欄にも医療従事者の方々への感謝や「みんなで乗り切ろう」など前向きな言葉が寄せられ、まさに温かい感謝の輪が広がる取り組みとなっています。


●賛同 吉本興業株式会社
 吉本興業では、全国の常設劇場(一部除く)にてカラテカ・矢部太郎「大家さんと僕」の漫画を起用した感染予防啓発動画を毎公演前に上映。今後オリジナルデザインの不織布マスクを無料で配布する予定です(数に限りあり)。
 また、会社ロゴを使用してメッセージを公式SNSで発信。所属タレントも発信し、会社一丸となって感染予防に取り組んでいます。

公式Instagram

公式Twitter


●賛同 Kawasaki Thanks Bridge Project実行委員会
 コロナ禍で困難な職務に従事しておられる医療従事者・介護従事者などの皆様に、私たちの感謝の意を伝えると共に、感染拡大防止をPRすることを目的とした市民レベルの活動「Kawasaki Thanks Bridge Project」を発足。医療関連従事者への理解と共感を得る・感謝の気持ちを伝える動画配信やwebでのPR活動や市民の皆様と医療従事者を結ぶ活動を行います。

Kawasaki Thanks Bridge Project


●賛同 熊本県山鹿保健所
 熊本県山鹿管内では、大規模クラスターが発生するなど、新型コロナウイルス感染対策で医療従事者は長期戦を強いられています。
 このような状況の中、医療従事者の皆様へこれまでの対応に関する感謝とエールを送りたいという想いや罹患された方等への差別偏見の防止を図ることを目的として本プロジェクトを企画しました。

熊本県HP



<新型コロナウイルス感染症を数字やグラフで見える化>

 厚生労働省は、昨年末にHP内に「データからわかる―新型コロナウイルス感染症情報―」を設け、新型コロナウイルス感染症に関するさまざまなデータを公開しています。その意図や内容について健康局難病対策課の南川一夫課長補佐にお聞きしました。



みなみかわ・かずお●平成20年、厚生労働省に医系技官として入省。平成21年に発生した新型インフルエンザA/H1N1の対策に携わる。平成28年、福島県立医科大学の医療研究推進センター長(特任教授)、平成30年、厚生労働省の医療技術情報推進室長を歴任。令和2年1月、新型コロナウイルス感染症発生以降、クラスター対策・感染症情報関係業務に従事している。現在、「データからわかる―新型コロナウイルス感染症情報―」のシステム構築等を担当している。


――新型コロナウイルス感染症状況に関するデータ公開ページ「データからわかる―新型コロナウイルス感染症情報―」を作成した意図を教えてください。

 今回新たに新型コロナウイルス感染症に関するデータを可視化したページを作成した大きな目的は、国民の皆様に新規陽性者数や重症者数、死亡者数の推移などの事実を的確に知ってもらうことで、予防や対策への意識を高め、適切な行動をとってもらうことです。

 これまでも厚生労働省のHPにおいて新型コロナウイルスの感染状況に関する情報提供は行ってきましたが、データはさまざまなページに分散していたため、「わかりにくい」「調べにくい」という課題がありました。

 そこで新たな公開ページを作成し、感染状況等に関する基本的なデータをまとめグラフで見える化したのです。


――「データからわかる―新型コロナウイルス感染症情報―」では新規陽性者数の日別の推移や人口10万人あたりの数、性別・年代別の数、累積など、1つのグラフにまとめられています。これら情報を発信するにあたって工夫された点はありますか?

 国民の皆様といっても様々な状況の方がおります。まずは誰にでも分かりやすく、直感的に状況が把握できるよう、なるべくシンプルにグラフ中心のデザインにしております。

 それと併せて様々な状況下にも役立つよう▽都道府県単位での視覚化、▽スマホへの対応、▽英語での提供、▽データのダウンロード――などのこれまでにない機能を付与しています。

 例えば、都道府県単位でみられることにより、仕事の関係で「出張しないといけないかもしれない」というとき、出張先の新型コロナウイルスの感染状況を確認できるため、出張の延期やWeb会議での代用等の契機になるかもしれません。また、出張したとしても、移動中にスマホで状況を確認することにより、現地で必要な感染予防策を着実に取る、より強い動機になることを期待しています。

 外国の方々にも適切な行動をとってもらえるよう英語による情報提供ページも作成しています。また、感染状況の事実を様々な形で利用したいとの専門家等のニーズに答えるため、これらの根拠データはダウンロードできるようにしています。


――担当者として国民に対して「データからわかる―新型コロナウイルス感染症情報―」をどのように活用してもらいたいですか?

 国民の皆様ひとりひとりの置かれた状況に応じて見るグラフも異なるでしょうし、人によって感じ方は様々だと思います。

 ただ、日本で新型コロナウイルス感染拡大を阻止し、重症や死亡につながる人を1人でも減らしたいという思いは、皆さん共通でお持ちだと思います。このページの情報を様々な場面で確認し、的確に事実を把握することが、いろいろな形で日本における感染拡大防止につながっていくことを心より期待しております。


「データからわかる―新型コロナウイルス感染症情報―」





 

出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年3月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省