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平成22年5月13日

労働基準局安全衛生部労働衛生課

労働衛生課長        鈴木 幸雄(5490)

主任中央じん肺診査医  桐生 康生(5494)

(電話・代表) 03(5253)1111

(直    通) 03(3502)6755

報道関係者各位


「じん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会」報告書について

~最新の医学的知見等を基に、じん肺健康診断のあり方についての報告書がまとまりました~


 じん肺法においては、じん肺に関し、粉じん作業に従事する労働者に対する健康診断が行われ、このじん肺健康診断については、昭和53年基発第250号労働省労働基準局長通達において、「じん肺診査ハンドブック」(昭和54年改訂)に記載された内容を基本として行うこととしています。

 医学の分野では新しい検査方法の普及が進むとともに、じん肺に関して新たな医学的知見の集積がなされてきたところでもあり、これに伴い、厚生労働省においても調査研究を行うなど、知見の収集に努めてきました。

 今般、環境大臣から中央環境審議会に対し「石綿健康被害救済制度の在り方について」の諮問が行われ、同審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会において、石綿肺に関する最新の医学的知見等が示され、石綿健康被害救済法の趣旨に照らした石綿肺の取扱いにかかる考え方等が検討されました。

 じん肺をとりまくこれらの状況を踏まえ、じん肺法におけるじん肺健康診断のあり方について、最新の医学的知見を基に、平成22年4月より、有識者による「じん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会」(座長:中原俊隆 京都大学大学院医学研究科教授)を開催し、必要な見直しについて検討を行いました。

 今般、本検討会の報告書が別添のとおり取りまとめられましたので、公表します。また、本報告書のポイントについては以下のとおりです。

 最新の医学的知見や石綿健康被害救済法における石綿肺の取扱いを踏まえた、じん肺健康診断についての検討結果

1.粉じん作業についての職歴の調査
・じん肺法では職業性のばく露によるじん肺を取り扱うことから、従来通り、事業者や同僚等の情報から従事状況の確認を行うことを基本とする。

2.エックス線撮影検査及びエックス線写真の読影
・じん肺の所見の有無は胸部エックス線写真により判断することを基本とし、既に撮影された胸部CT写真がある場合、じん肺にかかる診断の参考にとどめる。

3.胸部臨床検査
・じん肺及びじん肺の合併症の健康管理に役立てるため喫煙歴の情報を把握することは重要であり、じん肺健康診断結果に記載することが適当。

4.合併症に関する検査
・じん肺の合併症にかかる検査方法等については、新たな医学的知見を収集する等、今後さらに知見の収集に努めることが必要。

5.肺機能検査
・じん肺の閉塞性障害を評価する指標である1秒率に加え、その程度を評価する指標として%1秒量を用いることが適当。
・%肺活量や%1秒量が一定程度低下している場合には、動脈血液ガスを的確に評価するため、低酸素血症の指標である動脈血酸素分圧(PaO2)に加え、ガス交換障害の指標である肺胞気動脈血酸素分圧較差(AaDO2)を考慮することが適当。
・肺活量及び1秒量の正常予測値として、外国人のデータを基にしたBaldwinらによる予測式等が用いられてきたが、80歳以上を含めた日本人データを基に日本呼吸器学会が2001年に提案した予測式を用いることが適当。
・じん肺の肺機能検査の結果、著しい肺機能障害と判定する基準については、以下のとおりとすることが適当。
 ・%肺活量が60%未満の場合
 ・1秒率が70%未満であり、かつ、%1秒量が50%未満である場合
 ・%肺活量が60%以上80%未満である場合、1秒率が70%未満であり、かつ、
  %1秒量が50%以上80%未満である場合、または、呼吸困難度が第III度以
  上である場合であって、動脈血酸素分圧(PaO2)が60 Torr以下であること、
  または、肺胞気動脈血酸素分圧較差(AaDO2)が限界値を超えること。
・フローボリューム曲線の検査から求められる最大呼出位から努力肺活量の25%の肺気量における最大呼出速度(V()25)については、値のばらつきが大きく、他の指標に比べて信頼性に乏しいことから、肺機能検査の結果の判定に用いないこと。
・肺機能検査の結果及び2次検査の実施の判定に当たっては、粉じん作業の職歴、エックス線写真像、既往歴及び過去の健康診断の結果、自覚症状及び臨床所見、その他の検査等を含めて総合的に判断すること。

6.その他の検査
・近年実施されている気管支肺胞洗浄等の検査方法については、新たな医学的知見を収集する等、今後さらに知見の収集に努めることが必要。

7.その他
・肺機能検査及び検査結果の判定等に関する改定の前に、じん肺管理区分が管理4と決定され、療養を要するとされた者等について、継続して健康管理が行われることが適当。

 厚生労働省においては、本報告書等を踏まえ、関係法令等の改正を行うべく所要の手続きを開始することとしています。

※肺機能検査の指標である「%肺活量」とは、年齢、性別、身長により予測される正常値に対する肺活量の割合(%)、「1秒率」とは努力肺活量(できるだけ大きく息を吸った状態から、できるだけ速くはき出した時の空気量)に対する1秒量(1秒間にはき出した空気量)の割合(%)、「%1秒量」とは年齢、性別、身長により予測される正常値に対する1秒量の割合(%)を指す。

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