健康・医療結核とBCGワクチンに関するQ&A
結核について
BCGワクチンについて
平成25年度以降のBCG接種について
結核について
問1.結核ってどんな病気ですか?
結核は、結核菌という細菌が体の中に入ることによって起こる病気です。人が生まれてはじめて結核菌を吸い込んだ場合、10~15%の人ではその後1、2年のうちに発病しますが、その他の人では菌は冬眠状態でしぶとく体内に留まることになります。このようにして結核菌が体内に潜んでいる人が、その後何らかの都合で身体の抵抗力が落ちると、潜んでいた菌が活動を始め、結核を発病してしまうことになります(菌が体内に留まったケースの10~15%程度と言われています)。
結核菌は主に肺の内部で増えるため、咳、痰、発熱、呼吸困難等、風邪のような症状を呈することが多いですが、肺以外の臓器が冒されることもあり、腎臓、リンパ節、骨、脳など身体のあらゆる部分に影響が及ぶことがあります。特に、小児では全身に及ぶ重篤な結核につながりやすいと言われています。
問2.結核は今でも発生しているのですか?
結核はわが国の主要な感染症の一つです。
結核の発生は人口の多い大都市部で多い傾向にあります。また、BCG接種の影響もあり、日本では小児の患者は少なく、高齢者の発症が大部分を占めます。
結核の発生状況等に関するより詳しい情報については、厚生労働省の結核登録者情報調査年報集計結果をご覧下さい。
BCGワクチンについて
問3.BCGってなんですか?
BCGは結核を予防するワクチンの通称であり、このワクチンを開発したフランスのパスツール研究所の研究者の名前を冠した菌:Bacille Calmette-Guerin(カルメットとゲランの菌)の頭文字をとったものです。
この菌は、本来牛に感染する牛型結核菌を時間をかけて弱めたものであり、1921年に初めて新生児に投与されました。以後、1924年には日本にも菌がもたらされ、わが国においても長い歴史があります。また、1965年には日本の菌(Tokyo 172 strain)からつくられたBCGワクチンがWHOの国際参照品に指定されています。
問4.BCGワクチンにはどのような効果がありますか?
BCGは結核を予防するために接種するワクチンです。その効果について、多くの文献を総合的に評価した結果、乳幼児期にBCGを接種することにより、結核の発症を52~74%程度、重篤な髄膜炎や全身性の結核に関しては64~78%程度予防することができると報告されています(Colditz et al, 1995)。また、一度BCGワクチンを接種すれば、その効果は10~15年程度続くと考えられています。
日本の結核患者の発生率は米国の4倍程あるにも関わらず、小児に限ると米国の小児の患者の発生率を下回っており、その一因は米国で広く接種されていないBCG接種の効果ではないかと言われています。
問5.腕にBCGワクチンの痕が残るのが嫌なので、目立たない所に接種することはできませんか?
BCGワクチンは、上腕外側のほぼ中央部に接種するものとされており、その他の場所への接種は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)上認められていません。また、肩の部分に接種を行うと、ケロイドを生じやすいことが報告されています。定められた場所への接種をお願いします。
問6.BCGワクチンを接種することで、どのような副反応が起こりますか?
BCGは長きに渡り、世界中で安全に使用されてきたワクチンです。リンパ節の腫れや局所・全身の皮膚症状などの比較的軽度な局所反応は一定の頻度でみられますが、骨炎や全身性のBCG感染症、アナフィラキシーなどの重大な副反応の報告は稀です。
平成25年度は約90万人が接種されていますが、厚生労働省に届けられた定期のBCGワクチン接種に関する副反応報告数は174件で、リンパ節の腫れが74件と最も多く、次いで皮膚症状が40件報告されています。比較的重い疾患としては骨炎が10件、全身性のBCG感染症が2件報告されています。
問7.BCGワクチン接種後に、接種した場所がジクジクになってしまいましたが、病院に行った方がいいですか?
BCGワクチンを接種してから2週間くらい経つと、針の痕に一致して発赤や硬結が生じ、その後化膿してかさぶたを作ることがあります。このような反応は、BCGワクチン接種後には一般的にみられるものであり、特に接種後5~6週頃に最も強く現れるとされています。
通常は、接種した場所を清潔に保つことでこれらの症状は治りますが、数ヵ月以上に渡りジクジクしている場合や、針の痕が互いに癒合して大きな潰瘍になってしまった場合には、稀に治療をすることもありますので医療機関を受診して下さい。
問8.コッホ現象ってなんですか?
問7のような症状は、接種してから5~6週頃に最も強く現れるとされていますが、結核に感染している人にBCGワクチンを接種した場合、接種してから1週間~10日以内(多くの場合は3日以内)に同じような症状がみられることがあります。一種のアレルギー反応によるものと考えられていますが、このような現象を「コッホ現象」と呼びます。
コッホ現象は結核菌に似た菌(非結核性酸菌)に感染した場合でも発生することがあるので、必ずしも結核に感染していることを意味するわけではありませんが、このような症状が発現した場合には、速やかに接種医療機関を受診して下さい。
なお、平成17~21年度に厚生労働省にコッホ現象として報告された814例を検証した結果、コッホ現象に伴う重大な障害は認められなかったと報告されています。
問9.BCGワクチン接種後の骨炎はどのような病気ですか?どれくらい発生しているのですか?
BCGワクチンは弱毒化した生きた菌を接種しているので、極めて稀ながら菌が骨に感染した場合には、骨炎を起こしてしまう可能性があります。大腿や上腕の骨に発生することが多く、局所の痛みや腫れ、歩行への影響などで気付かれることが多いです。一般に、後遺症を残す確率などは高くありませんが、抗結核薬投与の他、外科的な施術が必要な場合もあります。 国際的には、BCGワクチン接種後に骨炎等が発生するリスクは3,300~108回接種して1回程度であるとされています。日本における報告は平成26年度において10件(平成26年度接種数:約90万回)であり、その発生率は国際的に想定される範囲を超えるものではありません。
平成25年度以降のBCG接種について
問10.BCGワクチンの接種はいつ行えばよいですか?
平成24年度まで、BCGワクチンの接種は生後6ヵ月に至るまでに接種することとなっていましたが、平成25年度以降は生後1歳に至るまでの間に接種することと変更されました。 なお、標準的な接種は生後5ヵ月から8ヵ月の間に行うこととされています(ただし、地域における結核の発生状況等の事情を勘案する必要がある場合は、必ずしもこの通りではありません。)。
問11.BCGワクチンの接種時期はなぜ変わったのですか?
BCGワクチンの接種は、平成17年までは4歳未満の児童を対象に行われていましたが、世界保健機関(WHO)の勧告等を受け、乳幼児の結核予防効果を高めることを目的として、平成17年に生後6ヵ月までの接種に対象が変更されました。
しかし、乳児期に接種するワクチンの数が増え、全てのワクチンを接種できる十分な期間を設ける必要が生じたことから、生後1歳までの接種とすることと変更されました。また、平成17年以降多くの接種が生後3~4ヵ月に行われるようになり、髄膜炎などの重大な乳幼児の結核が減った一方、これら生後3~4ヵ月のお子さんを中心に、BCGによる骨炎の副反応報告が増えてきました*。このような報告数の増加が本当に骨炎の発生が増加したことによるのか、診断技術の進歩等により骨炎が発見し易くなったためなのか、現在のところはっきりしていません。
また、仮に、本当に骨炎の発生が増加していたとして、BCGワクチンを接種する時期を早めたことが骨炎の増加に繋がったのか、その因果関係もはっきりしていません。しかしながら、比較的免疫能が未熟な乳児早期でのBCGワクチン接種が、骨炎の増加に影響を与えている可能性も否定できず、生後5~8ヵ月を標準的な期間として接種することとなりました。
なお、結核の発生状況により乳幼児が結核に罹るリスクは変わってきますので、生後5~8ヵ月という標準的な接種期間に関しましては、地域の実情に応じて異なることがあります。
* 骨炎・骨髄炎の副反応報告数:
平成13~16年;1.25件/年
平成17~23年;4.14件/年
(平成17年以降、BCGは毎年約90~100万回接種しています。)
問12.私の自治体では、生後5~8ヵ月よりも早い時期にBCGワクチンを接種することが勧められていますが、何故ですか?
BCGワクチンの接種時期は、平成17年に4歳未満から6ヵ月未満に変更されましたが、これは乳幼児の結核予防効果を高めることが目的であり、接種時期が早められるとともに髄膜炎などの重大な乳幼児の結核は減りました。
標準的な接種期間は生後5~8ヵ月となっていますが、結核の発生状況により乳幼児が結核に罹るリスクは変わってきますので、地域の実情に応じ、それ以前に接種を行う場合もあります。お住まいの自治体からの案内に沿って、確実にBCGワクチン接種を受けることが重要です。
問13.長期に渡る入院等により、1歳までに接種できなかった場合はどうなるのですか?
BCGワクチンの接種は生後1歳までに行うこととされていますが、この期間に、長期に渡る入院を余儀なくされた等の理由により、接種をすることができない場合もあります。このような特別の事情(※下記参照)があることにより予防接種を受けることができなかったと認められた場合は、4歳に至るまでであり、その特別の事情がなくなった日から2年を経過するまでであれば定期接種の対象となります。
※特別の事情とは、以下に該当するものをいいます。
(1) 次のイからハまでに掲げる疾病にかかったこと(やむを得ず定期接種を受けることができなかった場合に限る。)
イ 重症複合免疫不全症、無ガンマグロブリン血症その他免疫の機能に支障を生じさせる重篤な疾病
ロ 白血病、再生不良性貧血、重症筋無力症、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、ネフローゼ症候群その他免疫の機能を抑制する治療を必要とする重篤な疾病
ハ イ又はロの疾病に準ずると認められるもの
(2) 臓器の移植を受けた後、免疫の機能を抑制する治療を受けたこと(やむを得ず定期接種をうけることができなかった場合に限る。)
(3) 医学的知見に基づき(1)又は(2)に準ずると認められるもの。