閣議後記者会見概要

H21.05.19(火)10:38~10:58 省内会見室

広報室

会見の詳細

閣議等ついて

大臣:
閣議については特別御報告はありません。新型インフルエンザの現在確定している人数は159名です。

質疑

記者:
WHOで渡辺副大臣がフェイズ6への引き上げについて慎重な考えを示したのですが、WHOは日本の感染の広がりに関心を抱いていると言われています。大臣はフェイズ6への引き上げについてはどのようにお考えですか。
大臣:
これはWHOの判断に任せなくてはいけません。このような状況なので、残念ながら私自身はWHOの総会に参加できなかったのですが、先般イギリスの保健大臣のジョンソンさんが私のところにお見えになりましたので、フェイスツーフェイスで色々な議論を交わしました。どの国の担当者も自分の国の国民の生命と健康を守るということと、社会生活、国民の自由、経済活動、こういうものとのバランスを取ってということで、通常の季節性のインフルエンザとほとんど症状が変わらないように軽めだということでそのような御判断を、例えばジョンソンさんはなさったのだと思います。各国の担当の大多数の御意見がそういうことであったので、渡辺副大臣もそういう趣旨で発言なさったんだと考えております。私たちはもちろんWHOの勧告、決定を注意深く見ていきますけれども、元々、WHO自身がH5N1の鳥インフルエンザ対応を前提としていたわけです。WHO自身が柔軟にということを言っていますし、我が国は、今、先程申し上げたように159名出ているわけですから、この人たちの状況を観察し、どういう症状であるか、タミフルの有効性がどうであるか、こういうことを見た上で総合的な判断をすれば良いと思っています。国際的な行動計画も日本の行動計画も一つの前提を置いてのことなので、最終的に、迅速かつ柔軟に一番国民の健康を守るのにどの方策が良いか、そういうことは各国の責任者が決めれば良いと思っています。
記者:
自治体の対応についてですが、東京都は空港の健康観察について本来は1週間すべきところを帰国直後に1回連絡を取っただけにという方針を進めていると、大臣としては自治体が臨機応変に現状に合わせて変えるのが良いのか、できれば国の考え通りに基準に従ってやった方がいいのかどのようにお考えですか。
大臣:
人的資源が無限にあるならば、念には念を入れた方が良いですけれども、お医者さんの数も保健師さんの数も残念ながら限られています。予算的なものも限られています。だから、今からやるべきことは、優先順位の付け方だと思います。住民をフェイスツーフェイスで知っていて、かなり細かく追っていけるような自治体と、東京や大阪のように1千万単位の住民がいるようなところでのやり方は当然違うと思います。国は基本的にこういう方向だという方向性を示した上で、相当現場に任せて良いのではないかと思います。例えば、PCRの検査を全部国立感染症研究所でやったらとても時間的に間に合いません。各地の衛生研究所などの研究機関、検査機関がありますから、基本的に個々での検査でそれをよしとするという方向でやっていくようにしております。現場の一番やりやすい方向を考えながら、しかし、それでやった場合に大きな落とし穴があって、住民の健康を守れなくなるよという時には国が介入しなければいけない。そういう方向でやっていこうと思っています。
記者:
麻生総理が先週の安心安全実現会議で厚生労働省の分割について言及されました。大臣も同じような意見を以前からされていたと思いますが受け止めを。
大臣:
省庁の編成をどうするかというのは、時代の要請に応じて変えなくてはいけないと思います。私が若い頃勉強していたフランスでは内閣が変わる度に省庁編成を変えていたような記憶があります。そこまでやらなくても良いのでしょうけど、十年位の単位で見直すことは結構だと思います。厚生労働省のみならず、例えば、総務省、国土交通省。厚生労働省の仕事が一人の大臣でやりきれませんよというのなら、私は国土交通省も総務省も同じだと思います。例えば、地方財政、地方税の話と、通信の話はまったく違います。国土交通省にしても、建設の話と輸送の話はやっぱり違いますということはあるので、これは一度どうすれば行政の効率化に繋がるかという視点を忘れない形で省庁再編成をやるのも良いと思います。今から議論をするための一つの問題提起として重要だと思っています。どういう風に分けるかというのはプラスマイナスあります。いつも申し上げているように、お医者さんの過重労働というときに、労働大臣としてそこにいてやるほうが遙かにバランス取れたことをできる可能性があります。しかし、片一方で、労働行政を司る大臣と医療行政を司る大臣が二人いて、激論をする形によって問題解決するということもありえます。最終的に国民の為に良い結果が出るにはどうすれば良いかとういことはあると思います。皆さん方、厚生労働省を担当する記者さんも同じだと思いますが、体がいくつあってももたないというような状況であることは皆さん方も私も同じなので、やはり役割分担がもっとあった方が楽だという気はしますけれども、そういうことだけで物事は決められません。重要な問題提起だとして、今後国民的な議論をやるべきだと思っています。
記者:
今日11時半から大臣直属のアドバイザリーボードの立ち上げということですが、このアドバイザリーボードの狙いについてお聞かせ下さい。
大臣:
政府全体の諮問委員会があります。これは政府全体にとって大事なことで、私たちの決定に大きく先生方の御意見が反映する形になっています。ただ、皆さん方の報道を見ていてもそうですが、必ず二人位の先生を出して、違う意見を並べられている。それは非常にバランスが取れていると思います。例えば、「通常型の季節性インフルエンザ対応の方向にシフトを切っても良いのではないか」と言う意見を支持する専門家のお医者さんもいれば、「いや、まだちょっと早いよ。もっと厳しくした方が良いよ」という方もおられます。そういう意味で比較的若手で、政府の全体の諮問委員会は教授以上ということだったので、助教授の皆さんも含めて比較的元気が良くて時間もある程度取っていただいて、言ってみればセカンドオピニオン、サードオピニオンを求めるという意味で作りました。実は先週に内々に決まっていたのですが、皆さんの時間がなかなか合わなくて今日やっと時間が合いました。そういう方々の御意見を聞き、更に政策決定の参考にしたいということであります。お一人は神戸大学の先生なので今の現場で対応なさっているので、朝急遽こちらに向かって来られてますから、そういうことが聞けると思います。先生方の御意見は皆さん方にも聞いていただいて、カメラの頭撮りも可能なようにしております。
記者:
今週中に行う国内対策の見直しを行うということをグループの中で検討するというそういう位置づけではないのですか。
大臣:
実を言うと、年金問題でも医療の問題でも介護の問題でもそうなのですが、複数の意見を持った方々、とりわけ厚生労働省に対して批判的な方々もずっと集めて来ました。ですから、そういう方々の意見も聞く必要があるということで、既にアドバイザーの先生方には電話でセカンドオピニオン、サードオピニオンを求めております。それで政策の幅が持てると思いますので、すでに意見を聴取して参考にさせていただいています。あくまで参考にするということで、最終的には政府の責任において、そういう提言や御意見を基にして政策決定をします。出来れば今週中に厚生労働省で素案を作って対策本部全体の方針として決めたいと思っています。迅速性が要求されますので、今日急遽お集まりいただいて、先生方が私に対して色々な厳しい意見を含めておっしゃって下さっているということをお伝えするということです。
記者:
昨日大臣がおっしゃった水際対策の縮小というのは、やはりメキシコ便とかアメリカ便でやっている機内検疫を縮小していくとかやめるとかそいういう方向でよろしいですか。
大臣:
最終的には、今、何が必要かというと、関西ですでに159名見つかっているわけですから、当然国内にもうウイルスが蔓延しているというのを想定していいと思います。関西だけではなくて、おそらく。新幹線に乗って、そういうウイルスを持っている方が東京に来られれば、東京にも当然蔓延している可能性があります。そうすると、そこに人的資源を割かないといけない。検疫を全くやめるというわけではありません。段階的に縮小する。何日にどのレベルに下げていくかというのは今からの検討課題ですけれども、最終的には、連休前というか、通常のレベルに下げるということになると思います。むしろ、そこに国立病院機構から相当先生たちが行かれていますから、それを戻して、国内患者の治療の方に優先的に当たらせたいと思います。ただ、一気に、今日からゼロですよというわけにはいきませんから、その縮小の時間、どれぐらいかけて、どういう段階でやるかと、これを例えば、今日の会議でも検討するということです。
記者:
関連ですけれども、週内に何らかの素案を、先ほど出すというようなお話をされましたけれども、いわばトレードオフの関係で、国内対策を強化する一方、水際をある程度限定的なものにさざるを得ないという考え方からすれば、今のお話はまさに、週内にも機内検疫をやめるという受け止めでよろしいのでしょうか。
大臣:
その可能性もあるということです。最終決定は、政府全体の総理の下での決定がありますので、その可能性もあるということです。つまり、論理的に、医学的に見ても、関西でああいう状況であるわけです。それで、成田で今のまま続けることにどれだけの意味が、医学的にあるのですかという批判が、医療関係者からも来ています。ただ、もちろん、成田空港でウイルスに感染した方をそこで止めるということは、それは意味のないことではありません。ただ、まさに人的資源が限られていますから、どちらの方にシフトするかということで、0対100だったのを、今日から100対0と、そういう感じではなくて、10対90、20対80、30対70と、こういうふうに移行していくという、そのスピードをどれぐらいのスピードでやるかという問題です。いつも申し上げているように、水際対策で100%成功すると思っていませんから、これはあくまで時間稼ぎです。もちろん中に入ってくる可能性がある。まさに中に入ってきた。ですから、いろいろな点で、もう起こったことは起こったことですから、これに対して、いかに対応するか、いかに適切に対応するかということを、日々刻々と変えていかないといけない、そういう方向でやりたいと思っています。
記者:
積極的疫学調査を、もうこれで何日か経っているわけなのですが、これの結論というのはいつ正式に発表されるご予定でしょうか。
大臣:
これも11時半からの会議で議論したいと思っています。例えば、どこから病原体が来たのかというか、最初の高校生、バレーボール部でしたか、あの子が誰からうつって、そのうつした人が神戸港から来たのか、関西空港から来たのか。これがわかればわかった方がいいのですが、それに精力を費やすよりも、むしろ、それだけの人的資源があれば、160人の人の症状を調べて、科学的にこういう状況で、従って、季節性のインフルエンザと同じ対応でいいですよというように変えることができるので、むしろ、人的資源の使い方はそちらではないかなというふうに思っています。出てきた159人が、全部その高校生から来ているならいいですよ。だけど、全く違うところから、あの高校生と何の接触もないところから、二次感染、三次感染というのが起こっている以上は、それは兵庫県、大阪府については、いろいろなところに既にウイルスが存在していて、それは誰が持ち込んだかということを、今、一所懸命調べることにどこまで意味があるのだろうかと思います。人が無限にいれば、やってもいいですが、先ほど言ったように優先順位なのです。私は、優先順位は、今は、この新型インフルエンザの日本における状況を正確に把握して、患者の状況を正確に把握して、そして、それを基にして、政策をつくるという方がはるかに重要だと思っています。優先順位の決め方、これは政府がやらないといけない。そのためのいろいろな資料は集めると、そういうことだと思います。
記者:
今の状況を正確に把握するために、今、疫学調査をやっているのであって、今のお話の流れだと、疫学調査をすることに、もうあまり意味がないというふうに聞こえたのですが、そういうことなのでしょうか。
大臣:
疫学調査ということの中身の話であって、私が言ったのは、疫学調査ということではなくて、正確にお答えしていなかったかもしれないですけれども、どこから病原体が来たのかと、最初のウイルスを誰がどの空港から持ってきたのかに精力を注ぐよりも、まさに今言ったような、医学的な疫学的な調査をやった方がいいと、そういうことです。積極的疫学調査という言葉が一人歩きしているけれども、普通の人の言葉で言うと、誰があのウイルスを日本に持ち込んだかを探偵のように探しまくる暇があれば、今罹っている人の治療に専念して、そして、更なる感染防止策をとる、そのための医学的な専門的な知見を集めると、それの方が優先順位でなかろうかと、そういうことを申し上げたのです。私はなるべく役所的な言葉を使いたくないので、積極的疫学調査って何ですかと、何をもって積極的疫学調査というのですかと、誰も答えられない。私も悪いのだけれども、そういうふうに書かれているのをそのまま読んでしまうのだれども、実を言うと、今、私が申し上げたかったポイントはそういうことです。
記者:
昨日の全国知事会で、各知事の方から、医療体制を整える等の目的で、財政的な支援を求める声がかなりあったかと思うのですが、その点に関する今の大臣のお考えをもう一度教えてください。
大臣:
今、審議している補正予算案が通れば、これは潤沢な基金がそこにあります。例えば、地域医療再生行動計画で、たしか、3,100億円積んでありますので、これが活用できますので、そういう意味で、一日も早く補正予算を通していただきたいというふうに思っております。これまでの第一次、第二次補正、そして、今年度の本予算、この中にもインフルエンザ対策として、相当のお金が積んでありますから、そういうものも使うことができます。ただ、やはり一番額が多いのは、今、審議して、今日から参議院で始まる補正予算の中に入っていますから、これも基にしたいと思っています。ただ、補正予算が通るまでにどうしても必要な財政的な支出があって、それを何とかしてくれというふうに地方公共団体から求められた時には、財務大臣、総務大臣、総理と相談して、それは手当てをすると、そういうことです。
記者:
疫学調査の関連なのですが、濃厚接触者をリストアップして、感染拡大防止を図るのも、大きな目的の一つなのですが、それよりも医学的な知見を集める方に専念した方がいいということでしょうか。
大臣:
そうではなくて、私が申し上げたのは、ウイルスがどこから入ってきて、どの空港からとか、神戸港からだろうかとか、誰が持ってきたかとかそういうことではないということです。濃厚接触者、感染防止が重要なのです。だから、一斉休校しているわけなので、感染防止に手を抜けということは申し上げてはおりません。そこは誤解のないようにお願いします。感染防止策はちゃんととります。ただ、大阪府知事からもあるように、では一週間後に見合わせて、また更に一週間、また更に一週間、どんどんどんどん休校をエンドレスに続けていくのですか、そういうことではないと思います。したがって、その時には、政策の転換をやるためには、その論理的な裏付けが必要ですから、そういう意味で、今の症状がどうであるということを早く出してくださいということを、地方からも要請されていますので、そういうことを優先的にやることは意味があることだと、そういうふうに申し上げています。
記者:
感染経路を遡ることは、他の地域にどれだけ広がっているかということを把握するのに大事だと思うのですが。
大臣:
全く大事でないということを言っているわけではありません。優先順位をあなたならどうつけますかと、私ならそういう優先順位をつけると考えています。年金の問題と同じです。人的資源が無限にあって、全部やれるなら、それに越したことはないけれども、それはやはり優先順位をつけてやらないといけないので、優先順位のつけ方が政治の課題だということを申し上げているのです。まさに、今おっしゃったように、その優先順位のつけ方では困りますよという専門家もたくさんおられる。したがって、いろいろな意見を聞いて、決定するということです。大臣は今どう思うのだと言うから、私はそういうように思いますということを申し上げたのです。

(了)