2022年7月1日 第175回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年7月1日(金) 14:00~16:00

場所

厚生労働省省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

【公益代表委員】
 荒木委員、川田委員、黒田委員、佐藤(厚)委員、藤村委員、水島委員
【労働者代表委員】
 梅田委員、川野委員、櫻田委員、東矢委員、冨髙委員、世永委員
【使用者代表委員】
 池田委員、鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、兵藤委員、山内委員
【事務局】
 鈴木労働基準局長、青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、古舘総務課長、松原労働条件政策課長、竹野監督課長、吉村労働関係法課長、溝口職業安定局雇用政策課長、田村雇用環境・均等局有期・短時間労働課長(労働基準局併任)、田邉労働関係法課総括調整官、長澤労働条件企画専門官、竹中医薬・生活衛生局生活衛生課課長補佐(労働基準局労働関係法課併任)

議題

  1. (1)無期転換ルールについて
  2. (2)「経済財政運営と改革の基本方針2022」等について(報告事項)
  3. (3)副業・兼業の促進に関するガイドラインについて(報告事項)

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、ほぼ定刻で皆様おそろいということですで、ただいまより第175回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会も会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施をいたします。
本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の安藤至大委員、両角道代委員、労働者代表の北野眞一委員、八野正一委員が欠席と承っております。
議事に入ります前に、事務局の異動について報告をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 労働条件政策課の長澤でございます。
6月28日付で事務局に異動がございましたので、紹介をさせていただきます。
まず、労働基準局長の鈴木でございます。
続きまして、総務課長の古舘でございます。
続きまして、監督課長の竹野でございます。
最後に、労働関係法課長の𠮷村でございます。
事務局からは以上でございます。
○荒木分科会長 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
本日の議題に入りたいと思います。
本日の議題(1)は「無期転換ルールについて」です。
事務局から簡単に説明をお願いいたします。
○有期・短時間労働課長(労働基準局併任) 事務局の田村でございます。
前回、無期転換ルールと多様な正社員の労働契約関係に関する現状等の御説明をさせていただきましたが、今回から論点の御議論をいただきたいと考えております。
お手元資料No.1を御覧ください。資料の1ページ目に目次を記載しておりますが、3ページ目の論点一覧を御覧いただければと思います。
3ページ目に前回御確認いただきました論点項目の一覧をおつけしております。本日は、このうち、無期転換ルールに関する見直しについての(1)から(4)までの論点について御議論いただければと思っております。
4ページ目に、それぞれの論点項目に関して具体的な論点を挙げさせていただいております。この具体的な論点につきましては、これ以降の関連する各箇所において御説明させていただきます。
資料の5ページ以降が総論になります。まず6ページ目を御覧ください。
6ページ目ですけれども、総論について、無期転換ルールの活用状況についてどう考えるか、転換ルールは有期契約労働者の雇用の安定や企業の雇用管理にどのような効果・影響があったと考えられるか、転換ルールに関する見直しの方向性についてどう考えるかという論点を挙げております。
総論につきましては各論ともかなり関連してくると思いますので、本日総論の部分について御意見をいただいた上で、また各論の議論が終わった後に全体的な御意見もいただければと思っております。
この6ページ目の参考の部分は、多様化する労働契約のルールに関する検討会においてどんな議論がなされたかということで、参考でおつけしております。
前々回の報告書の御説明の際にも御説明したところですけれども、まず、○の1つ目として、長期雇用を希望する有期契約労働者にとって、無期転換ルールの導入の目的である雇用の安定に一定の効果が見られる。
2つ目で、更新上限の導入は大きく増加していない、他方で、制度の十分な活用への課題や望ましくない雇止め、権利行使を抑止する事例等も見られる。
3つ目として、現時点で無期転換ルールを根幹から見直さなければならない問題が生じている状況ではないが、企業の実情に応じて適切に活用できるようにしていくことが適当。
4点目として、今後、引き続き状況を注視し、必要に応じて改めて検討する機会が設けられることが適当。
これが検討会においてなされた議論の御紹介です。
続いて、7ページ目以降が各論の論点です。まず8ページ目を御覧ください。
8ページ目からは、無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保についてです。
論点として、まず、無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保についてどう考えるか。
具体的にはということで、多様化する労働契約のルールに関する検討会の報告書の中では幾つか対応策も示されておりますので、それらについてどう考えるかということをお示ししております。
1つ目のポツで、無期転換ルールの労使双方に対するさらなる周知について。
2つ目で、使用者から個々の労働者に対して、無期転換申込権に関する通知を行うことについて。これに関しては通知の方法やタイミング内容等を含むとしております。
まず、8ページの下の参考のところは、論点の1つ目のポツの周知に関する部分です。
検討会における議論としては、行政は、無期転換ルールの趣旨や内容についてさらに効果的な周知に取り組むことが適当である。
2つ目の○で、使用者に対しては、事例なども含めて周知するとともに、無期転換後に適用される労働条件を就業規則に規定する必要があることを周知することが適当。
3つ目の○で、労働者に対するさらなる周知にも取り組む必要がある。※にありますように、現行でも無期転換申込権を行使した場合には、新たに成立する労働契約について、労働条件明示が必要である旨について改めて周知することが適当とされたところです。
9ページ目からは行政の周知に関する資料をおつけしています。
9ページ目は、まず、これまでやってきた行政の周知の取組として、ポータルサイトの開設やインターネットを活用した周知広報、モデル就業規則の作成等の取組を記載しております。
それから、10ページ目ですけれども、こちらも今申し上げたような各種の周知ツール、ポータルサイトを御紹介しているものです。
11ページ目に現行のモデル労働条件通知書における無期転換ルールに関する記載例をおつけしております。赤い枠囲みをしている部分ですけれども、左側については、有期雇用特別措置法に基づく無期転換ルールの特例に関して、特例対象者への通知事項をモデル通知書に記載しています。
それから、右下の赤枠については、無期転換ルールの説明についてこのモデル通知書の中でもお示ししているところです。
それから、12ページ目は現行のモデル就業規則における記載例ということで、モデル就業規則の中で無期転換申込みができるといった規定ですとか、定年に関するような規定の記載例を盛り込んでいるところです。
続いて、13ページ目からは使用者から労働者への無期転換申込権に関する通知についての関連資料です。
まず13ページ目ですけれども、検討会における議論の紹介です。一番下の下線部分で、使用者が要件を満たす個々の労働者に対して、無期転換申込機会の通知を行うよう義務づけることが適当であるとされたところですけれども、その理由として、上のポツにございますように、労働者は使用者を通じて無期転換の情報を入手する割合が高いこと、使用者から説明を受けている有期契約労働者のほうが無期転換権を行使するかどうかということを決めることができているとみられること、無期転換後の労働条件は各社により異なりうること、無期転換権の行使をためらう労働者には、転換後の労働条件が不明確であることがその原因となっている可能性があるので、転換後の労働条件を労働者にとって明確なものにすることが労働者の選択を容易にすると考えられること、紛争の未然防止につながると考えられること。こうしたことから、使用者から通知をすることが適当とされたところです。
続いて、14ページ目です。この通知に関して、具体的な方法についてです。検討会においては、通知の義務づけについては、無期転換は労働契約の期間に関わる重要な事項であることを踏まえると、労働基準法15条に基づく労働条件明示の明示事項とすることが適当であるとされたところです。
それから、15ページ目は通知のタイミングについてです。通知のタイミングについては、検討会の報告においては、更新の都度申込みの有無について労働者が判断する契機となることなどから、無期転換申込権が発生する契約更新ごとのタイミングが適当とされたところです。
これは、下のイメージ図を御覧いただきますと、①、②、③のタイミングを記載しておりますけれども、③の無期転換権が発生する契約更新ごとのタイミングが適当であろうとされたところです。
なお、上の四角囲みの※で記載しておりますけれども、①の申込権が初めて発生するより前のタイミングで使用者から無期転換制度の説明を行うことが望ましい旨、周知することが考えられるとされたところです。
続いて、16ページ目を御覧ください。16ページ目は通知の内容についてです。これについては、無期転換後の労働条件は各社各様である一方、無期転換後の労働条件が分からなければ労働者は無期転換するかどうか決めることができず、権利の行使をためらうことが考えられることから、使用者から労働者への無期転換申込機会の通知等とともに、無期転換後の労働条件も併せて通知することが適当であるとされております。
具体的にはということで、通知事項としては、労働基準法15条に基づく労働条件明示の対象事項、これは労働基準法施行規則の5条1項に記載されていますけれども、この各号全ての事項を通知することが適当であるとされています。
これに関して、下に※を4つほど記載しています。※の2つ目ですけれども、この通知と同じタイミングで無期転換せずに、有期労働契約を更新した場合の労働条件も併せて説明することが望ましいとの意見。その下の※で、使用者から面談等の形で意向確認や疑問への対応を行うことが望ましい旨の周知。それから、その下の※で、無期転換した労働者の実績についても周知することが望ましいと考えるといった意見も御紹介しているところです。
2つ目の黒ポツですけれども、無期転換後の労働条件に関して、別段の定めを設けた場合には、この別段の定めの内容を反映した労働条件を通知するのが適当であるとされています。
この際に、※に記載しておりますけれども、契約更新の時点では無期転換後の具体的な就業の場所や従事すべき業務等を特定できない場合には、想定される内容を包括的に示すこととしても差し支えないものと考えられる、ただし、できるだけ具体的に行われることが望ましいといった指摘がなされているところです。
3つ目の黒ポツですけれども、別段の定めがない場合には、現に締結している有期労働契約の労働条件と同一となる旨を通知することが適当であるとされています。
それから、その下で、労働基準法15条において書面で明示することとされているものは書面事項とすることが適当であるとされたところです。
17ページについては現行の労働条件明示の概要ですので、説明のほうは省略いたします。
18ページ目ですけれども、転換申込機会と無期転換後の労働条件の通知のイメージです。例えば労働条件通知書に以下のような記載を入れることが考えられるということで、無期転換申込機会の記載例として、「あなたが本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、本契約期間の末日の翌日から無期労働契約での雇用に転換します」といった記載を入れることが考えられます。
それから、無期転換後の労働条件の記載例についてはいろいろな記載の方法があると考えられますけれども、ここではパターンを3つほど記載しております。
パターン1としては、本契約からの変更の有無である場合には、該当する就業規則の条項を記載していただく。パターン2としては、変更がある場合には、変更内容を別紙に書いていただく。パターン3としては、それぞれの項目ごとに変更があるかないか。ある場合には変更後の労働条件を記載するといった方法が考えられるということで、イメージでおつけしています。
19ページについては、現行のモデル条件通知書の記載要領の中で、就業規則と併せて明示するときの取扱いについて記載しているものですので、参考としておつけしております。説明は省略いたします。
ここまでが通知に関する部分です。
20ページ目以降が、次の論点項目であります無期転換前の雇止め等についてです。
まず21ページ目の論点ですけれども、1つ目として、無期転換前の雇止めやその他の無期転換回避策と見られるもののうち、無期転換ルールの趣旨、雇止め法理や裁判例等に照らし、問題があると考えられるケースへの対応についてどう考えるか。
2つ目で、更新上限設定に関する紛争の未然防止や解決促進のための方策についてどう考えるか。
具体的には、検討会報告書で示された以下の対応策についてどう考えるか。1つ目、使用者から個々の労働者に対して、労働条件の明示の際に、更新上限の有無及びその内容を明示することについて。2つ目で、使用者から個々の労働者に対して、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合には、労働者の求めに応じて上限設定の理由を説明することについて。
それから、3つ目の○ですけれども、無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱いへの対応についてどう考えるか。こうした論点を挙げさせていただいているところです。
22ページ目には、いわゆる労働契約法19条に規定されました雇止め法理に関する説明の資料をつけております。無期転換申込権発生前の雇止めについても、この雇止め法理に照らして司法で有効性が判断されるということになります。
23ページ目ですけれども、まず論点の1つ目の○に関連する部分として、検討会の報告書における議論です。紛争の未然防止及び早期解決を図る観点から、無期転換ルールの趣旨、労働契約法19条や裁判例等に照らして問題があるケース等について考え方を整理し、無期転換ルールの趣旨や内容とともに周知するとともに、個別労働関係紛争解決制度の助言・指導においても活用していくことが適当であるとされたところです。
次に、これに関して、無期転換前に雇止めが行われるケースの具体例ごとの考え方について、検討会ではそれぞれ考え方を整理しております。これを資料の24ページ目から26ページ目までにつけております。
この資料については検討会において整理したものですけれども、一番左側の欄に無期転換前に雇止めが行われるケース等の具体例を①から⑩まで記載しております。この具体例ごとに、一番右側に関連裁判例があるものについては関連裁判例を示した上で、それも踏まえて真ん中の考え方を整理したものです。この考え方については、これまでもQ&Aや通達等で示してきた部分もございますけれども、一部関連裁判例等も踏まえて考え方を整理したものです。
例えば①の部分ですけれども、無期転換申込権が発生する直前に合理的な理由のない雇止めが行われるようなケース。これに関する考え方としては、契約更新について合理的な期待が生じている状況で、使用者が他に合理的な理由がなく、無期転換申込権の発生を回避することを目的として雇止めを行った場合、当該雇止めは客観的合理性・社会的相当性が認められないと判断され得るといった考え方を整理しているところです。検討会においては、こういった考え方を整理して周知していくことが適当とされたところです。
25ページ目の具体例については関連裁判例等があるものではございませんが、こういった無期転換前に雇止めが行われるケースについて考え方を整理したものです。
26ページ目、⑨までがQ&A等の考え方を整理したものです。
①から⑨までは、無期転換前に行われる雇止めとして、いわゆる望ましくない例として挙げたものになりますけれども、⑩は当初の契約締結時から更新上限を設定して無期転換申込権発生前に雇止めをするというようなケースです。⑩自体は直ちに問題になるというものではなく、その具体的な状況によって判断されるということになります。考え方の部分に記載しておりますけれども、当初の契約締結時から更新年限や更新回数の上限を設けることが、直ちに違法となるものではない。使用者と労働者の間で合意がなされた場合には労働契約の内容となり得る。「ただし」ということで、雇用継続を期待させるような使用者側の言動があったなど、雇用継続への期待が生じている場合には、労働契約法19条、雇止め法理の第2号に該当し得るということになりますので、当該雇止めは客観的合理性・社会的相当性により判断されることになるといった形で整理しているものです。
続いて、こういった整理を踏まえまして、27ページですけれども、労働局において個別労働関係紛争解決制度、民事上の紛争についての解決制度がありますけれども、こういった制度を活用していくことが考えられるとされたところです。
28ページ目からは更新上限に関する論点に関わるものです。
28ページ目の上の更新上限設定への対応について、これに関しては、検討会の報告書においては、先ほどの論点のところでも御説明しましたけれども、更新上限の有無及びその内容の労働条件明示の義務づけについては、労働基準法施行規則で現行も明示する事項とされている「更新する場合の基準」の中に含まれることの明確化を図ってはどうかとされました。
それから、2つ目で、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合には、労働者からの求めに応じて上限を設定する理由の説明の義務づけ。これについては、労働基準法に基づく有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準に規定を追加することが適当ではないかとされたところです。
この更新上限を定めることに関連して、その下の部分ですけれども、契約更新のタイミングで更新上限が設定された場合には、多くの場合には労働者は同意を余儀なくされることから、司法判断においては自由意思による同意の有無について厳格に認定される傾向があります。これを踏まえて、更新上限の有無及び内容の明示をしたことや、労働者が異議を唱えず契約更新に応じたことのみでは有効な合意が成立したとは認められず、更新の合理的期待は必ずしも消滅しないことを周知する必要があるといったことを指摘しているところです。
29ページ目については参照条文ですので、説明は省略いたします。
30ページについては、更新上限の有無とその内容について、仮に労働条件通知に記載する場合のイメージということでおつけしているものです。
31ページ目からが、無期転換前の雇止め等の論点の3つ目の無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱いに関わる部分です。これに関しては、検討会の中でもいろいろと議論があったところです。
1つ目の○に記載しておりますとおり、無期転換申込みを行ったこと等を理由として不利益な取扱い(解雇、雇止め、労働条件の引下げ、嫌がらせ等)を行うことについて、立法(労働契約法)で禁止規定を措置すべきとの意見もあったところです。
2つ目で、「一方で」ということで、無期転換に際して「別段の定め」により労働条件を転換前より不利益に変更することがおよそ許されないわけではないことから、何が禁止される不利益取扱いに該当するかという整理が難しく、また、申込みを行ったこと等を理由として行われたものか否かの認定が困難な事例も想定され、立法措置を取った場合にその解釈・適用に疑義が生じかねないことを懸念する意見、上記の問題に関して事例の積み重ねが不足しているため、立法化は時期尚早との意見もあったところです。
3つ目で、現行法の下でも報復的な不利益取扱いや無期転換申込みを妨害する不利益取扱いは、その内容に応じて、労働契約法や民法の一般条項、判例法理等による司法救済の対象となるものであり、違法とされる行為に関して考え方の周知の徹底を図っていくことが適当であるとされたところです。他方、権利行使の妨害抑止につながるよう、多様な政策的手法の中で方策を検討することが適当であるとされていたところです。
32ページ目に参考資料としておつけしておりますのは、無期転換申込権が発生して転換する以前あるいは転換した後に考えられる不利益取扱いの例を示したものです。
より具体的な資料を33ページ目におつけしておりますけれども、これは検討会で示した資料で、若干細かくて恐縮なのですけれども、転換する前と転換した後でそれぞれどのような不利益取扱いが考えられるか。例えば、解雇・雇止め、事実行為、配転・降格、労働条件引下げといった不利益取扱いが考えられるところですけれども、それに対して現行法でどのような対応が考えられるかということを整理したものです。
特に一番下の青い枠囲みをしているところですけれども、無期転換のタイミングで労働条件を引き下げることについて、これに関しては無期転換後の労働条件を「別段の定め」で不利益に変更するということもあり得る中で、その場合と重なりうる問題ということで囲っております。具体的には、申込みをしたことを理由に使用者が無期転換後の労働条件を個別合意によって引き下げる場合ですとか、就業規則の新設・変更によって引き下げるような場合が考えられます。
これに関する現行法における対応としては、例えば個別合意の場合であれば個別合意の真意性によって判断することとなりますし、もし仮に使用者が提示した労働条件に労働者が同意しなければ「別段の定め」は成立しないので、有期契約時の労働条件が存在することになります。それから、就業規則による「別段の定め」についても労働契約法の中の就業規則の法理によって判断されることになるというものです。
34ページについては参照条文ですので、説明は省略いたします。
ここまでが無期転換前の雇止め等に関する部分です。
35ページからは通算契約期間とクーリング期間に関する論点になります。
36ページ目ですけれども、論点としては、通算契約期間及びクーリング期間についてどう考えるか。
通算契約期間については、検討会における議論として、ヒアリングでは雇用の安定の観点から通算契約期間を短くすべきという意見もあれば、通算契約期間の短縮は雇用の柔軟性や雇用意欲の低下につながる恐れがあり、現行の取扱いを維持すべきとの意見もあったところです。無期転換ルールが実質的に適用されるに至った施行後5年経過時からそれほど長期間たっていないこと、特に変えるべき強い事情がないと考えられることから、制度の安定性も勘案すれば、現時点で制度枠組みを見直す必要が生じているとは言えないと考えられるとされたところです。
なお、企業独自の転換制度として5年よりも短い期間での転換制度を設けているケースも見られるところであり、こうした事例の周知等により、5年を待たずに無期労働契約化や正社員化する取組も併せて促進していくことが適当であるとされたところです。
その下のクーリング期間についての議論です。クーリング期間についても同様に、現時点で制度枠組みを見直す必要が生じているとは言えないと考えられるとされたところです。
一方で、契約更新上限を設けた上でクーリング期間を設定し、期間経過後に再雇用することを約束して雇止めを行うことは、労働契約法18条の趣旨に照らして望ましいものとは言えないことについて、さらなる周知を行うことが適当であるとされたところです。
37ページには、このクーリング期間に関して、現行のQ&Aの中でも一定の周知をしているところですけれども、具体的には上の2つ目の○で、先ほどの検討会の報告書の中でも指摘されたようなクーリング期間を設定し、再雇用を約束した上で雇止めを行うことなどは法の趣旨に照らして望ましいものとは言えない旨を周知しているところです。
資料No.1の論点に関する説明としては以上になります。
続いて、資料No.2を御覧ください。
資料No.2については、無期転換ルールに関する見直しについて、これまでの173回、174回の分科会においていただいた意見を事務局においてまとめたものです。総論に関する御意見や全般的な御意見を先に記載した上で、無期転換に関する議論を項目の順番に沿って並べさせていただいているものです。具体的な中身の説明については省略させていただきます。
それから、本日、参考資料として参考資料No.1からNo.5までおつけしております。
この中で、参考資料No.2に関して、前回、御意見をいただいて、追加したデータがございますので、その御紹介をさせていただきます。
参考資料No.2の15ページ目を御覧ください。
15ページ目の無期転換希望の有無及びその理由に関するデータですけれども、前回、有期契約労働者のうち、正社員としての働き口がなかったから有期契約労働者として働いているといった方々についての状況を見たほうがいいのではないかというような御指摘がありまして、上の棒グラフを御覧いただきますと、4本目が有期契約労働者のうち、正社員として働き口がなかったから選択した方。これらの方々については、無期転換することを希望する割合が38.7%ということで、全体と比べると割合としては高くなっている状況が分かります。
それから、その下の希望する理由、希望しない理由の部分でも、一番右端の欄に正社員としての働き口がなかったからという方々の回答をおつけしておりますけれども、右の希望しない理由を御覧いただきますと、例えば3つ目の契約期間だけなくなっても意味がないから、それから、その3つ下の頑張ってもステップアップが見込めないから、無期労働契約でなく正社員になりたいから、といった回答が高くなっている状況です。
それから、もう一つ追加したデータがございまして、35ページです。
35ページ目のデータについては、その前のページで勤続年数の上限の設定状況というものをおつけしていますけれども、これについて有期契約労働者の職務タイプ別にどういう状況になっているのかというような御指摘がございました。
全体については、勤続年数の上限を設けている割合としては14.2%という状況でしたけれども、それを職務タイプ別に御覧いただきますと、例えば正社員同様職務型や別職務・同水準型については上限を設けている割合が少し高くなっているという状況になっております。
そのほか、この参考資料については、今回の論点に関連した参考資料を追加しているところです。
それ以外の参考資料につきましては、関連条文や関連する裁判例、それから、参考資料No.5で、前回、検討会のヒアリングの資料のうち、各企業における状況が分かるようなヒアリング結果について一覧にしてお示ししたところですけれども、今回のヒアリングの概要資料は、ヒアリングにおいて制度運用の改善要望等をいただいた部分について抜粋しておつけしておりますので、参考にしていただければと思います。
資料の説明は以上になります。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
本日、回線の状況があまりよくないようで、音が途切れ途切れになるという御指摘をいただいておりますので、発言の際にはなるべくゆっくり発言していただきますようお願いいたします。
それでは、議論に入りたいと思いますけれども、資料No.1は(1)から(4)に分かれております。
そこで、それぞれについて議論していきたいと思いますけれども、まず、(1)総論について皆様より御質問、御意見があればお願いいたします。
なお、総論については各論とも密接に関連しておりますので、各論の議論が一巡した後、再度総論に返って議論したいと考えておりますので、そういうことも前提にこの時点で何か総論について御発言があれば承りたいということでございます。
なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、発言希望ということをチャット欄に書き込んでお知らせください。
それでは、どうぞ御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
総論に関して発言させていただきます。まず、現行の無期転換ルールにつきましては、一定、有期契約労働者の雇用の安定に資する政策だと考えており、労働組合としてもその定着に向けて取り組んでいるところです。現場の声を聞くと、無期転換ルールについて雇用の安定につながる政策であるという受け止めが聞かれる一方で、なかなか活用が進まないという声や、労働相談などを通じて、制度の趣旨と異なるクーリング期間の濫用的な利用がされている事例もあると承知しています。また労働条件面での課題も明らかになっているところですので、今般の見直しに当たっては実態を踏まえつつ、制度趣旨に沿った適切な対応に向けた検討および見直しが必要と考えています。
資料No.1の6ページに論点が示されていますが、見直しにあたっては、有期契約労働者の雇用の安定に資するよう無期転換回避への対策を強化していかなければいけないと考えており、労働者保護の観点から議論していただきたいと考えております。
また、無期転換労働者の処遇の改善については、前提として無期転換前のパートタイム・有期契約労働者といわゆる正社員との不合理な待遇差の是正を実現していくことは言うまでもありません。その上で、無期転換後のパートタイム労働者と正社員との同一労働同一賃金に基づく是正を進めることはもとより、全ての無期転換労働者の処遇改善を促進する方策についても議論すべきだと考えております。この後、各論でそれぞれ議論していくかと思いますけれども、その前提として意見として申し上げておきます。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
兵藤委員。
○兵藤委員 ありがとうございます。兵藤でございます。
総論の3つの論点、6ページのところを確認させていただきまして、申し上げたいと思います。
無期転換ルールにより無期転換した方と、企業独自の制度により無期転換した方の合計が、データの中で確認しますと158万人に上るという推計がされておりますことから、雇用の安定に無期転換ルールが大いに寄与していると評価できると言えます。
加えまして、ヒアリングの結果によりますと、企業側から従業員の安心感や定着率の向上につながっていると評価されております。
労働者側からも様々なキャリアを展開できる点が評価されていること、また、無期転換ルールは本来労使間で決めることができる契約期間に関し、法律が介入するという極めて強い効果を持つ規範であることを踏まえますと、現時点で無期転換ルールを根幹から見直す必要はないのではないかと考えます。
しかし、他方、無期転換ルールの実効性を高める方策をデータや企業実態に基づいて多角的に検討していくことが望ましいと考えます。
また、望ましくない事例等もございますが、その紛争の未然防止を図る観点から、このルールの周知徹底をどのように図っていくかということを中心に、今後、議論を進めていくのが適当と考えております。
ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
よろしければ、総論についてはまた各論が終わった後にも議論することといたしますので、先に参りたいと思います。
次は、(2)無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保について御意見をいただきたいと思います。
どうぞ、どの委員からでも結構です。お願いいたします。
川野委員。
○川野委員 ありがとうございます。
初めに、1点確認させていただきたいと思います。資料No.1の16ページの中段の黒ポツ2個目に、「別段の定め」がある場合、それを反映した通知を行うとの記載がございます。そもそも「別段の定め」は、ルール導入時の国会答弁でも無期転換に伴って新たな職務や職責が増すように変更されることが期待されており、それに応じた労働条件を労使で話し合って決定するための制度と説明されていたと理解しておりますが、そのような理解でよいか確認させてください。
○荒木分科会長 それでは、事務局よりお願いいたします。
○有期・短時間労働課長(労働基準局併任) 事務局です。
「別段の定め」については、御指摘のとおり、転換のタイミングで労働条件、職務の変更がある場合には、それに伴って労働条件を見直すこともあるでしょうということで、労使で話し合うなどにより定めることができるものでございます。
○荒木分科会長 それでは、事務局よりお願いいたします。
○有期・短時間労働課長(労働基準局併任) 事務局です。
「別段の定め」については、御指摘のとおり、転換のタイミングで労働条件、職務の変更がある場合には、それに伴って労働条件を見直すこともあるでしょうということで、労使で話し合うなどにより定めることができるものでございます。
○川野委員 ありがとうございます。
その上で意見と要望を申し上げたいと思います。
先ほど申し上げた国会答弁やルール導入前の第99回の本分科会でも、厚労省から無期化後の労働条件は引き上げられるように定められることが望ましいと言えるとの答弁があったことを踏まえると、制度の趣旨としては、労働条件の引上げが念頭に置かれていたと言えます。それらを踏まえると、「別段の定め」は本来の趣旨に則った適切な運用を促すことが大変重要であり、無期転換に伴う職務や職責等の変更に応じた適正な処遇改善の取組が進められるべきだと考えます。
また、賃金等の処遇改善を行わないにもかかわらず、無期転換に伴って遠隔地への配置転換や職務上の責任の増加といった変更のみを行うような法の趣旨に反するケースも実態として存在しています。「別段の定め」の趣旨を踏まえれば、無期転換申込みを事実上抑制するような労働条件だけを提示することがあってはならず、望ましくない事例であることも併せて周知徹底をして未然防止を図るべきだと考えています。
そのような取り組みを行うことで、無期転換ルールが魅力的な制度としてより多くの有期契約労働者に活用されることになり、雇用不安の解消、キャリア形成、処遇改善が進んでいくことになると考えていますので、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
東矢委員から手が挙がっておりました。お願いいたします。
○東矢委員 ありがとうございます。
まず1点目ですが、資料No.1の13ページになります。検討会報告の内容としまして、無期転換申込権の通知を義務づけることが適当とする旨が記載されており、また、労働者が無期転換申込権の行使をためらう原因というところには、転換後の労働条件の予想と実際の間にギャップがある、あるいは不明確であるといったことが指摘されております。このことを踏まえますと、通知に当たっては、転換後の労働条件をあらかじめ明確に示して、労働者の選択を容易にすることが無期転換の促進には大変重要ではないかと考えております。
続いて、2点目ですけれども、同じく資料No.1の15ページ目です。無期転換申込機会の通知のタイミングについて、転換権が発生する契約更新ごとが適当という検討会報告の内容が記載されておりますが、参考資料のNo.2の21ページには、無期転換ルールの内容について知っていることがあると回答した有期契約労働者は4割弱にとどまっているとのデータがございます。
また、労働相談の中では、労働組合がない職場、特に中小企業では、使用者側も含めて、無期転換ルールを知らないことが原因で、本来無期転換申込権が発生している労働者に対する雇止めが行われて、その結果、後日トラブルになっているといったケースも見られるところです。
それらを踏まえますと、無期転換ルールそのものについては、雇用契約の締結時を含めて契約更新ごとの周知を義務づけるなど、一層の周知徹底を図っていくということが重要ではないかと考えております。
以上2点です。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインのほうで池田委員、発言をお願いいたします。
○池田委員 どうも御指名ありがとうございます。
私からは転換申込機会の確保について申し上げたいと思います。
初めに、無期転換ルールについて知らないと回答する有期契約労働者は、御自身が無期転換を希望するか否か分からないと回答する割合が高くなっているというデータがありますが、これは、労働者が無期転換権を行使するか否かを適切に判断するため、何らかの措置を検討する必要性を感じるところでございます。
加えて、転換後の労働条件が不明確であることが原因で、無期転換申込権の行使をためらう労働者がいるという検討会報告書の指摘もございます。
ですので、これらのことを考慮すれば、先ほども同様の御意見があったかと思いますが、転換後の労働条件も含めて、要件を満たす個々の労働者に対して無期転換申込みの機会を通知することが望ましいのではないかと考えます。
その上で、通知のタイミングについて申し上げたいのですが、一般的な無期転換ルールを周知するのではなく、個々の有期契約労働者の方に対して個別に通知するということを考えますと、無期転換権が初めて発生する前のタイミングで通知した場合、無期転換の期待を生じさせ、紛争を惹起させかねません。したがって、資料にありました③の無期転換権が発生する契約更新ごとのタイミングとすることが適当ではないかと考えます。
また、資料の15ページの※にある事前に無期転換制度の説明を行うことが望ましいとする点について申し上げます。無期転換ルールを周知する上では、例えば11ページにあるような労働条件通知書に記載する方法や社内イントラネットに掲載する方法など、企業の実態に応じた様々な周知方法を認めることが重要と考えます。説明という方法に限定しない形で推奨することを検討願いたいと思います。
私は以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、佐藤晴子委員、お願いいたします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
私からは、転換申込機会の確保の中の通知の内容とタイミングに関して1つずつ意見を申し上げたいと思います。
まず、通知の内容に関してなのですけれども、意見の前に、もし御説明の中であれば、よく聞こえなかったので、聞き漏らしているかもしれないので教えてください。
資料No.1の16ページで、1つ目のポツに※が4つありますけれども、4つ目の社内の有期契約労働者に対して無期転換申込権が発生したこと等を通知するタイミングで、無期転換した労働者の実績についても周知することが望ましいと考えられるとあるのですが、この実績を社内の有期契約労働者に対して周知するというのはどういう目的でこの※が望ましいと書かれたかと。この辺り、分かるところがあれば教えていただければと思います。その上で意見を申し上げたいと思いますので、一旦お願いします。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○有期・短時間労働課長(労働基準局併任) 事務局です。
こちらの御指摘については、実際にその企業の中で転換した方がいらっしゃるかどうかというのが安心して転換できるかというところの参考の情報になりますし、もう少し言えば、この実績としては、例えば人数だけではなく、実際にどういうふうに働いているかということも含めて示すことが転換するかどうか判断する参考になるというような御意見があったところです。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
途中音声が途切れたので、趣旨が違っていればすみません。要は、情報提供を受ける有期契約労働者にとってポジティブな情報として捉えられるためにこういった記載があるということで理解をしましたけれども、そうしますと、参考資料No.2で御紹介があった中で、例えば9ページなどに企業の規模による無期転換者の数とか傾向が載っているのですけれども、企業規模が小さいほど無期転換権を行使した方が少ないという傾向、あるいは同じ参考資料No.2の10ページを見ますと、例えば宿泊業や飲食サービス業など、産業によっては無期転換をした方が少ないという傾向が見てとれます。
これが現状だとしますと、今、御説明があったような必ずしもポジティブな情報として有期契約労働者が捉えるということは一律には言えないのかなということもちょっと心配になりますので、本当に一律に実績を周知するのがよいと言うのかどうかというところは少し慎重に検討する必要があるのではないかというのが内容に関しての意見です。
次に、通知のタイミングに関して、池田委員からも御発言がありましたけれども、さっき意見と言いましたが、質問でした。失礼しました。15ページで、私も池田委員と同じで、③のタイミングがそぐわしいかなと考えておるのですけれども、この無期転換権が発生する契約更新ごとのタイミングというのは、具体的にどのタイミングのことを言っているのかと。例えば5年目の有期契約の終了の日の一定の前のタイミング、例えば1か月前に契約更新の面談を行うというケースは多くあろうかと思います。こういった場合に、その1か月前の時点では通算5年を超えていないわけなのですけれども、この時点で無期転換の申込機会の通知等を行えば義務を履行したことになるのかどうかと。それで改めて5年を超えたタイミングでは通知をしなくてもいいのか、それとも、やはり5年を超えていないので、5年を超えたところからカウントされるのか、このタイミングをどういうふうに理解するのかというところについて教えていただければと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、事務局からお願いします。
○有期・短時間労働課長(労働基準局併任) 事務局です。
この14ページ目の通知の方法のところで、労働基準法15条に基づく労働条件明示事項とすることが適当であると検討会報告ではされたところです。
現行の労働条件明示については、労働契約の締結に際し、明示するということになっています。無期転換に関する通知のタイミングをもしこのとおりにするということであれば、無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結の際に行うということが考えられるところです。
先ほど御指摘のあった面談が例えば6年目の有期労働契約の締結に際しての面談ということであれば、その面談の場で併せて通知することで、この③の無期転換権が発生する契約更新のタイミングで通知をするということになると考えられるところです。これについては、現行の労働基準法に基づく労働条件明示のタイミングの考え方と変わらないと考えているところです。
○佐藤(晴)委員 結論のところが聞こえないので、もう一度お願いします。すみません。
○有期・短時間労働課長(労働基準局併任) 失礼いたしました。要は、現行の労働基準法15条の労働条件明示と明示のタイミングの考え方としては変わらないと思っておりまして、現行も、例えば次の有期労働契約が始まる1か月前に面談をして、そこで労働条件明示をするということであれば、そこで併せて無期転換権や無期転換後の労働条件についても明示していただくということが考えられるところです。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
そうしますと、例えば1か月前のタイミングで通知を行えば義務を履行したことになるという理解でいいというお答えでしょうか。
○有期・短時間労働課長(労働基準局併任) 御指摘のとおり、そこで有期労働契約の労働条件明示と併せて行えば、無期転換に関する通知も義務を履行したということになると考えております。
○佐藤(晴)委員 音声が途切れましたが、多分大丈夫だと思います。承知しました。ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
私も無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保について、資料に記載のとおり、まずは労使双方に対する無期転換ルールのさらなる周知徹底に取り組むべきだと思っております。
資料13ページに記載のとおり、労働者は無期転換ルールについて使用者を通じて情報を入手することが多いことから、労使双方がしっかり正しい情報を知るためにも、さらなる周知徹底に取り組んでいただきたいと思っております。
特に無期転換後の労働条件の変更については、合理性の判断が非常に難しいため、事例を含めた周知をお願いしたいと思っております。無期転換に当たり、労働者の長期のキャリア形成支援の観点、また、経営環境の変化に伴う事業の統廃合の懸念などから、労働条件の変更を打診するケースもあると思います。事業者及び労働者双方の希望を踏まえて、お互いに納得した上で変更することが重要ですが、事業者としては、事前にその変更の合理性についてしっかりと認識しておくことが必要と考えております。
また、無期転換後に労働者が高いモチベーションを持って一層の活躍につながっている好事例など、無期転換権の効果的な活用事例についてもぜひ情報収集をしていただき、水平展開など周知徹底をお願いしたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、3つ目の論点に移りたいと思います。(3)無期転換前の雇止め等についてという論点でございます。
御意見、御質問等がありましたら、お知らせください。
オンラインの櫻田委員、お願いいたします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
まず、資料No.1の23ページの無期転換前の雇止め等に対する対応についてです。無期転換前の雇止めやその他の無期転換回避策について、問題のあるケース等について考え方を整理し、無期転換ルールの趣旨や内容とともに周知をするとの対応策が記載されております。実際には、裁判にまで至らないと雇止め等の有効性を司法で判断されることはないわけで、労働者が泣き寝入りということになってしまっているのが実情ではないかと思っています。労働相談等でも、転換申込権の発生前の合理的理由のない雇止めなどについて一定の相談が寄せられております。
そのようなことを踏まえますと、報告で提案されている法の趣旨、問題となるケースの周知や個別労働紛争解決制度の助言、指導での活用という対応では不十分なのではないかと考えております。無期転換前の雇止め等に対してはさらなる対応を検討する必要があるのではないかと思っております。
2点目は同じく資料No.1の28ページですが、更新上限設定の対応について、同じ資料No.1の24ページから26ページまで、無期転換前の雇止めについて、個別契約で使用者が一方的に更新上限を設定しただけでは、雇用継続に対する労働者の合理的期待は失われるものではないということや、就業規則の変更によって一方的に更新上限を設定した場合は不利益変更に当たるというような具体例を挙げた考え方が整理されております。このようなことを広く周知する必要があるのではないかと思っております。
雇用の原則は、期間の定めのない労働契約が基本と考えておりますので、更新上限設定そのものが望ましくないと考えているところです。少なくとも資料No.1の28ページに掲げられている上限設定をする理由の説明の義務づけについては、更新上限の新設や変更を行う場合、労働者の求めの有無にかかわらず、設定理由の説明を使用者に義務づけることが必要ではないかと思っております。
3点目ですが、同じく資料No.1の31ページです。「多様な政策的手法の中で方策を検討することが適当」との記載が最後のところにありますけれども、無期転換申込みを行ったことなどを理由とした不利益取扱いについては許されないことは明確であり、現行法等の周知徹底にとどまらず、権利行使の妨害防止に資するような具体的な方策を検討すべきであると考えております。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、山内委員、お願いいたします。
○山内委員 ありがとうございます。
それでは、私から1点意見を述べさせていただきます。
資料No.1の31ページ、もしくは報告書の13ページ、無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱いについて意見を述べさせていただきたいと思います。
まず初めに、有期契約労働者の無期転換を抑止することを目的とした、例えば「別段の定め」において労働条件を著しく引き下げるといった行為など、ここに記していただいているとおり、申込みを妨害する不利益取扱いについては、法の趣旨に照らし合わせて望ましくないことは明らかであると考えております。
一方で、同一労働同一賃金の法改正が行われたことを機に、多くの企業において雇用形態間の処遇バランスを整えるような対策を講じてきております。例えば業務内容や職責を少し広げることと併せて、無期転換後の処遇を向上させるなどの事例も現実的にあるかと思われます。
また、無期転換後の労働条件の決め方は各社それぞれの運用によるところが大きく、仮に処遇の一部に労働条件の低下する内容があったとしても、それが無期転換申込みを行ったことを理由とするものなのか、それとも適切な労働条件の提示によるものなのかの判断は非常に難しくて、これに関する判例の集積も十分でないと承知しております。
以上のことから、不利益取扱いを禁止する新たな措置を設けることにつきましては、多種多様な無期転換の方法を抑制することにもつながるおそれがありますので、現時点では行うべきではないと考えております。
なお、資料のナンバーNo.1の34ページに添付いただいてございますように、労働条件の不利益変更は労働契約法の7条もしくは10条において、また、回復については同じく16条において、法的な救済措置が手当てされていますので、むしろこのようなルールを周知していくことが重要ではないかと考えております。
私からの意見は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 ありがとうございます。
では、私のほうからも1点、上限設定に関して申し上げたいと思います。
初めに、資料ですけれども、参考資料No.2の34ページです。勤続年数の上限設定に関する調査結果というのが出ておると思います。こちらを見ますと、更新上限を設定している企業は20年4月時点で14.2%、前回調査と比較しても大きく増加しているわけではないと理解しています。
また、一般的に、労働条件は使用者と労働者の間で合意により決定されるもので、裁判例でも更新上限を設定すること自体が違法ということにはなっていないと理解しております。
一方で、最初の契約締結日後のタイミングで更新上限を設けることについて、裁判所では更新上限に対する労働者の同意について自由意思であったのかどうかというのを厳しく審査していると理解しています。
労使紛争を未然防止する観点からは、労働者の求めに応じて上限を設定する理由を企業側から説明するということを義務づけること自体は検討し得るものなのだろうと考えます。
他方、労働者からの求めがない場合にもそうした説明を義務づけるかどうかということなのですけれども、これは、企業実態を見ますと、集団説明会のような形式で説明をする場合であるとか、こうした労働条件の明示、伝達は様々な形式で行われていると想定されますので、そういった実情を踏まえますと、個別説明ということについては、労働者からの求めに応じて行うという提案が妥当なのではないかなと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
そのほかに(3)の論点についていかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、(4)に移ります。(4)は通算契約期間及びクーリング期間についてという論点です。この点について御質問、御意見があればお願いいたします。
梅田委員、お願いいたします。
○梅田委員 ありがとうございます。
1点目は、資料No.1のスライドの36ページ目になります。クーリング期間について、望ましくないケースのさらなる周知を行うことが適当とされております。参考資料No.2の41ページ目にデータが示されており、クーリング期間を置いていない事業所が多いということが分かりますが、検討会でも悪用されているケースについても指摘がなされているところです。
また、私どもの労働組合による労働相談でも、契約更新上限を設けた上でクーリング期間を設定し、契約期間経過後に再雇用することを約束して雇止めといったケースを把握しております。それらを踏まえますと、報告が示すように、さらなる周知にとどめてよいのかと考えており、個別の事例など、さらなる実態を把握し、それに基づいた見直しを検討すべきではないかと考えております。
2点目ですが、同じく資料No.1の36ページにあります通算契約期間について、企業独自の転換制度に関する周知等の記載があります。小売・流通業におきましては、人事制度の見直しを行ったところも多くありますし、無期転換の希望を聞いた上で5年を待たずに無期化する事例、それから、多くは1年から3年ということですが、一定の年数経過後は条件なしで無期転換する制度を導入した事例もあると聞いております。ぜひこのような好事例の周知もいただければと思います。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
鈴木委員。
○鈴木委員 ありがとうございます。
私からも通算契約期間とクーリング期間についてそれぞれ意見を述べさせていただきたいと思います。
初めに、通算契約期間についてです。企業が有期雇用労働者を無期転換ルールによって無期転換させるということなのか、あるいは会社独自の制度によって5年より短い期間で無期転換させるのか。これは各社が置かれている状況に応じて運用も異なってくるものだと理解しております。
また、企業のヒアリング結果によりますと、例えば一人前になったかを見極めるのに5年程度かかるというような指摘もあると承知しています。
もとより、通算契約期間を短くした場合、雇用の柔軟性が失われるということも考えられますので、通算契約期間は5年を維持するということが適当と考えます。その上で、5年よりも短い通算契約期間で無期転換できる制度を設けている好事例を周知していくということが重要と考えます。
次に、クーリング期間について申し上げたいと思います。参考資料の企業ヒアリング結果を見てみますと、有期契約労働者の中には長期雇用を望んでいない者がおられ、またクーリング期間を廃止するということを希望する声はないという結果もみられます。
働き手の就労ニーズが多様であることを考えますと、クーリング期間には雇用機会をプラスに働かせる役割も一面兼ね備えていると思いますので、この仕組みを見直す必要性はないと考えます。
他方で、契約更新上限を設けた上でクーリング期間を設定し、期間経過後に再雇用することを約束して雇止めするということは立法趣旨に照らして望ましくありません。この点について一層の周知徹底を図ることが大切だと思います。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。
それでは、ほかに御意見等がなければ、この第1の議題については以上ということにさせていただきます。
次回は(5)無期転換後の労働条件の項目から議題の議論を始めたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
それでは、議題(1)は以上とさせていただきまして、次は議題(2)に移ることにいたします。
説明者が交代いたしますので、しばしお待ちください。
○総務課長 それでは、議題(2)につきまして御説明をさせていただきます。事務局の総務課でございます。
資料No.3「『経済財政運営と改革の基本方針2022』等について」という資料を御覧ください。
先月6月7日になりますが、幾つか政府方針が取りまとめられております。本分科会に関係する部分について御報告をさせていただきます。
資料1ページ目から経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針というものになります。
資料の2ページは会議の概要になりますので、説明は省略させていただきまして、3ページを御覧ください。
関係する部分に下線を引かせていただいております。第2章の1(1)人への投資と分配というところの下に、括弧書きで、多様な働き方の推進という項目がございます。ここで、下線の部分になりますけれども、働く人の個々のニーズに基づいてジョブ型の雇用形態を始め多様な働き方を選択でき、活躍できる環境の整備に取り組むということで、その下のパラグラフ、こうした観点から労働契約関係の明確化に取り組むということ、それから、裁量労働制を含む労働時間制度の在り方について、実態調査の結果等を踏まえ、さらなる検討を進めること、こういったことが盛り込まれております。
また、その下のパラグラフの中では、良質なテレワークの促進や副業・兼業の推進が盛り込まれているほか、資料の一番下段になりますけれども、(3)スタートアップへの投資というところで、情報開示等を通じた副業・兼業の促進等により、円滑な労働移動を図ることとされております。
副業・兼業の取組につきましては、これから説明するほかの政府方針にも記載がございますけれども、本日、この後の議題で改めて御説明をさせていただきます。
続いて、資料4ページからは新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画というものとフォローアップの関係になります。
資料5ページは会議の関係になりまして、6ページ以下に具体の記載がございます。
Ⅲの(2)④に副業・兼業に関する記述がございまして、成長分野・産業への円滑な労働移動を進めるため、副業・兼業を推し進めるということとし、このために、労働者の職業選択の幅を広げ、多様なキャリア形成を支援する観点から、副業・兼業を許容しているか等について、関連するガイドラインを改定し、情報開示を行うことを企業に推奨することとされております。
また、その下、(5)の③女性の就労の制約となっている制度の見直し等といたしまして、配偶者の収入要件がある企業の配偶者手当は女性の就労にも影響を与えているということから、労働条件でありますので、強制はできませんけれども、労使において改廃・縮小に向けた議論が進められることを期待するということが盛り込まれております。
また、一番下、⑤の働き方改革の推進という項目の中で、時間外労働の上限規制の法遵守の徹底を図ることとされております。
7ページになります。こちらのほうがフォローアップ、同じく閣議決定になりますけれども、その内容となっております。
Ⅰの1の(2)スキルアップを通じた労働移動の円滑化の下に、主体的なキャリア形成を支える環境整備という項目がございます。この中で、解雇無効時の金銭救済制度について、4月に取りまとめていただいた法技術的な論点に関する検討会の報告書を踏まえ、労働政策審議会の御審議をいただくということが盛り込まれております。
その下の(5)の括弧書きで新しい働き方の推進という項目がございます。この中で、多様な正社員を労使双方にとって望ましい形で普及促進する等のために、労働条件明示事項の対象に就業場所・業務の変更の範囲を追加すること等について、労働政策審議会の御審議をいただくということ、それから、その下のポツの中で、時間外労働の上限規制につきまして、適用猶予の業種等に対する2024年4月からの適用に向けて、相談体制の充実など、円滑な適用に向けた取組を行うこと、あわせて、自動車運転者の改善基準告示の見直しを行うことといったことが盛り込まれております。
それから、資料の一番下になりますが、(4)Fintechの推進の中で、資金移動業者の口座への賃金支払いについて、労働者保護が図られるよう、資金移動業者が破綻した場合の保証制度等のスキームを構築しつつ、労使団体の皆様の御意見をいただきながら、2022年度、できるだけ早期の制度化を図るということとされております。
最後に、資料8ページから規制改革実施計画の内容となります。
9ページは会議の概要となっております。
10ページから具体の記載内容になりますが、資料の左に番号が振られております。
5が労働時間制度、特に裁量労働の見直しについてということで、aとb、2つ記載がございます。
aにつきましては、これからの労働時間制度に関する検討会で今御議論いただいているところでございますけれども、令和4年度中に一定の結論を得ること、それから、裁量労働制については、労使双方にとって有益な制度となるよう、十分留意をして検討を進めること、検討会の結論を踏まえ、必要な措置を講ずることといったことが盛り込まれております。
また、同じ箱の下、bとございますけれども、労働基準法上の労使協定等に関わる届出等につきまして、本社一括届出の対象手続の拡大等について検討を行うこととされております。
その下、6につきましては、既存の各種制度の活用・拡充として、副業・兼業、既存の労働時間制度等について好事例の周知等に取り組むこととされております。
最後に資料11ページを御覧ください。
7のところになりますが、職務等に関する労働契約関係の明確化として、今年4月、この分科会でも御報告をさせていただいておりますが、多様化する労働契約のルールに関する検討会の報告書を踏まえ、労働政策審議会において労使双方にとって望ましい形で労働契約関係の明確化が図られるよう御検討いただくということが盛り込まれております。
また、資料の下段、18になりますけれども、柔軟な働き方を促進するための施策として、年5日以内とされている時間単位年次有給休暇について、労働者アンケート調査等を踏まえ、必要な措置を検討することとされております。
政府方針は重複する内容が出てくる部分もございますが、記載されている内容は以上となっております。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして何か御質問、御意見等があればお願いいたします。
世永委員。
○世永委員 ありがとうございます。
経済財政運営と改革の基本方針2022についてです。
冒頭、多様な働き方につきましては、労働者が選択したくなる環境の整備こそが重要であるということを申し上げておきます。
資料No.3の3ページに、「多様な働き方を選択でき、活躍できる環境の整備に取り組む」との記載があります。このこと自体が重要との認識に相違はないわけですが、制度をどのように構築するかは個別労使の判断に委ねるべきであり、副業・兼業やジョブ型雇用を政策的に普及・拡大する必要は高くないと受け止めています。長時間労働の是正などの働き方の見直しを進めることこそが重要であると認識しているところです。
また、基本方針では、労働移動等を進めるとの記述が随所に見られますが、移動先の労働条件が魅力的であることや産業の将来性、安定性といった安心して働くことができる環境整備など、労働者のやりがいや働きがいの観点が重要であることは当然です。
そのような観点から見れば、骨太の方針等で示されている裁量労働制の見直し、事業全体を担保した成長資金の調達、解雇の金銭解決制度の検討など、その必要性について疑問があるものも多くあります。
したがって、雇用政策につきましては、労働者保護の観点に立った検討が必要であるということを改めて申し上げておきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
鈴木委員。
○鈴木委員 ありがとうございます。
ただ今、世永委員から御指摘がありましたように、多様な働き方を労使でしっかり話合いをする中で進めていくことを基本に置くべきという点は、私も同感でございます。
そうした前提で、裁量労働制について一言述べさせていただきたいと思います。
時間と場所にとらわれずに柔軟に働くことができる環境を整備することは、働き手の働きがいや働きやすさにプラスになる面があります。他方で、個別企業ではいかんともしがたい硬直的な制度に目を向けるべきと思っております。
労使双方にとって有益な制度となるように議論するということが示されており、大変重要な指摘であると思っております。ただ、検討に当たっては、前も申し上げさせていただきましたが、裁量労働制の適用労働者の8割の方が満足している実態や、回帰分析の結果によりますと、制度を適用することで労働時間が著しく長くなる、健康状態が悪化するといった影響はないということも踏まえる必要があると考えます。
そうした観点から、裁量労働制の対象が適切な形で広げる議論が今後されることを改めて期待しているということを申し上げたいと思います。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、第2の議題については以上ということで、第3の議題に移りたいと思います。(3)副業・兼業の促進に関するガイドラインについてです。
これも事務局からお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
資料No.4の副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定に関しまして御説明申し上げたいと思います。
資料No.4の1ページをベースに御説明申し上げます。
まず、趣旨のところでございますけれども、副業・兼業につきましては平成29年の働き方改革実行計画におきまして、労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で副業・兼業の普及促進を図るという方向性が示されまして、それとともに、長時間労働を招かないよう、企業は副業・兼業者の労働時間や健康をどのように管理すべきかを盛り込んだガイドラインを策定することとされたところでございます。
これを受けまして、趣旨の1つ目の●でございますけれども、厚労省におきましては、企業も労働者の健康を確保しながら、安心して副業・兼業に取り組むことができるよう、平成30年に労働時間管理や健康管理等についてお示ししました「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定いたしました。
その後、令和2年に成長戦略実行計画等を踏まえまして、ガイドラインを改定させていただきまして、労働時間管理や健康管理のルールを明確化するなどいたしまして、副業・兼業の促進に向けて環境整備を進めてきたところでございます。
1の●の2つ目でございますが、今般、本年6月7日に閣議決定されました「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」、「経済財政運営と改革の基本方針2022」におきまして、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点などから、副業・兼業の拡大促進に取り組んでいくことが決定されたところでございます。
これを踏まえまして、副業・兼業を希望する労働者が適切な職業選択を通じ、多様なキャリア形成を図っていくことを促進するため、ガイドラインを改定いたしまして、企業に対し副業・兼業への対応状況についての情報公開を推奨していくことといたしました。
具体的な内容につきましては、2の改定の概要を御覧いただけばと思いますが、ガイドラインの企業の対応という項目がもともとございますけれども、こちらに新たな項目として副業・兼業に関する情報の公表についてというものを追加いたしまして、その中で、「企業の対応」において、①、②とございますように、副業・兼業を許容しているか否か、また、条件付許容の場合は、その条件について自社のホームページ等において公表することが望ましいことを記載すること、それに加えて、「労働者の対応」におきまして、適切な副業・兼業先を選択する観点から、企業から公表される情報を参考にすることを記載することとさせていただいているところでございます。
今般の副業・兼業の促進に関するガイドラインの改定につきましては、副業・兼業を許容しているか否かなどの情報を公表することを企業に推奨することを通じまして、職業選択に資するという考え方を取っておりますことから、その観点の担当である審議会、先んじて6月21日に開催されました労働政策審議会職業安定分科会におきまして報告させていただいたところでございますが、これまでのガイドラインの策定の経緯等を踏まえまして、本日、改めて労働条件分科会でも報告させていただくものでございます。
具体的な内容につきましては、2ページに現行と改定案というものをつけさせていただいておりますので、御参照いただければと思います。
3ページ以降は閣議決定の本文やその他参考資料をつけさせていただいておるところでございます。
本日の当分科会での御報告を踏まえまして、7月上旬にガイドラインを改定することを予定させていただいております。
改定後のガイドラインは、引き続き当省におきまして周知啓発に努めてまいりたいと考えております。
事務局からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして何か御質問、御意見があればお願いいたします。
世永委員。
○世永委員 ありがとうございます。
働き方改革における副業の普及促進に関する説明を伺いました。
これは業種、業態を絞った発言になりますけれども、人流・物流を担うドライバーの場合、副業によって休憩・休息のための時間確保に関する状況把握が困難になるおそれもあります。
過去には副業に起因したトラックドライバーの睡眠不足によって高速道路での多重追突により、多くの死傷者を生じる事故が発生しています。また、本業と副業の労働時間を通算して過労死認定された事例もあります。
人流・物流を問わず、過重労働の防止、安全運行の確保の観点に立つと、労側としては業種によっては副業を認めるべきではないところもあるのではないかと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
佐久間委員、お願いいたします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
まず、この副業・兼業ガイドラインの改定については、たしか2年前になりますけれども、労働(雇用)と労働(雇用)ということで、時間外の勤務の時間の管理等を協議してきたと思います。
今回、このガイドラインに当たっても「報告」事項として、本分科会でご説明をいただきましたが、当然、労働者が複数の企業に勤めるということになると、やはり労働時間の関係は労働条件と密接に関係があるので、これは「報告」事項ではなく、本来は労働条件分科会において、しっかり審議を行うことが必要ではないかと私は思います。
先般の職業安定分科会においては、「男女の賃金差」についての項目の公開というのが要請されました。企業規模に応じ、義務として、あるいは努力義務として審議されましたが、従業員の規模によって公開事項のランクを設けていますけれども、同じ時期に公開ということになると、この副業・兼業のほうも推奨とはいえ、やらなくてはいけないということにもなってくるのかもしれませんから、その辺も留意していただきたかったと考えます。
あと、ガイドラインのほかに、これから「Q&A」みたいなものが出てくるのではないかと思うのですけれども、使用者側とすれば、労働移動を促進するというのは、中小企業対中小企業の移動が一番多いと思うのです。ですから、もちろんこのガイドラインでは副業・兼業を推奨しましょう、やりましょうという方向にはあるのですけれども、使用者側が労働者からの申告がなく、兼業・副業を実施しているのかを全然把握していない状況で、何か事故があった場合,使用者の責任となってしまうと困ります。ですから、Q&Aでも推奨の文言を入れると同時に、例えば「労働者からの申告があった場合」とか、そういう文言を追加していただくと良いのではないかと思います。なお、副業・兼業の公開が、企業にとって求職をされる方、取引をする事業者の選別として、あまり極端につながらないよう、配慮をお願いをしたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
オンラインから池田委員、お願いいたします。
○池田委員 どうもありがとうございます。
私からは1点意見を申し上げておきたいと思います。
新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画等でも取り上げられていますように、副業・兼業の促進は労働者の自立的なキャリア形成や企業におけるイノベーションの創出につながる取組だと考えております。
ただ、その一方で、副業・兼業を行う労働者の実態としては、多様なキャリア形成を図るという趣旨のものよりも、収入確保のためにダブルワーク、トリプルワークをしているという趣旨のもののほうが多くを占めているという実態がございます。
ですので、そうした方も含めて、副業・兼業が過重労働につながることがないように、各社は注意をしていく必要があると考えます。
政府におかれましても、副業・兼業の拡大、促進に取り組むに当たっては、雇用型か非雇用型かを問わず、健康面に配慮することなどについて注意喚起など、より一層の御対応をお願いしたいと思います。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、オンラインの鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。
私のほうからは1点質問です。
今回のガイドラインの改定に当たって、副業・兼業を許容しているかどうか、条件付許容の場合はその条件について公表することが望ましいとなっています。
既に現行のガイドラインにおいては副業・兼業を制限することが許されるのは安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止、それから、誠実義務に支障がある場合は制限できますということになっていると思います。
お伺いしたいのは、今日の本論からはややずれる話ではあろうかと思うのですけれども、例えば副業・兼業を認めるかどうかという判断に当たって、副業・兼業先がどういうものなのかというのを会社としても確認していく必要があろうかと思うのですが、そういった際に、例えば経済安保上あるいはそれに類するような何らかの懸念があるのではないかというような場合、あるいは副業を認めた後にそうした事実が確認された場合というのは、先ほど申し上げた秘密保持義務や誠実義務などの要件に当てて企業側は判断をしていくということでよいのかどうかというのが一つ。
また、副業・兼業の要件をつける場合は、その要件を公表しましょうということだと思いますので、要件の公表に当たっては、このガイドラインに則した4つの要件、4つの留意点を踏まえつつ、その内容を例えば咀嚼というか、層別というか、ブレイクダウンするような格好で、企業独自の要件を設けてそれを公表していくということも当然に認められるという理解でよろしいか、この2点についてお伺いできればと思います。
○荒木分科会長 それでは、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
鬼村委員からの御質問についてお答え申し上げます。
まず1点目でございますけれども、現行のガイドラインにおきまして、今、鬼村委員からもお話がございましたように、労働者は使用者の業務上の秘密を守る義務を持っている、その上で、就業規則等において業務上の秘密が漏えいする場合には副業・兼業を禁止する、または制限することができることとしておくこと等の対応が考えられるということを記載させていただいているところでございます。ほかにも記載がございますけれども、この現行のガイドラインを踏まえますと、鬼村委員がおっしゃったような形の記載、対応は可能であると考えております。
それから、2つ目でございます。今回、公表を推奨するということをお願いするわけでございますけれども、先ほどお話しいただきましたように、現在4つの留意点などを就業規則で定めることが考えられるとしているところでございます。このガイドラインを踏まえまして、個々の企業の様々な事情に応じて条件を定めていくことは可能であろうと考えているところでございます。
事務局からは以上でございます。
○荒木分科会長 鬼村委員、よろしいでしょうか。
○鬼村委員 ありがとうございます。承知しました。
○荒木分科会長 そのほかにいかがでしょうか。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
ご説明いただいた副業・兼業の公表の件ですが、今回は、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点ということで提案いただいておりますけれども、先ほど池田委員からもあったとおり、生活のために複数の仕事をせざるを得ない労働者が多いという実態も既に本分科会でも議論、共有したとおりだと思います。世永委員からあったとおり、複数の業務を行うことで長時間労働が非常に懸念されること、労働者の健康面も含めて考えれば、副業・兼業は政府が積極的に普及促進するようなものではないと考えております。やはり就労、就業時間の把握方法も含めて個別労使が十分に協議をした上で判断すべきものだと考えているところです。
今回、ガイドラインを改定して公表を推奨していくということですが、請負や委託のような形で働く方たちも含めて、労働者に健康被害が生じないよう改めて徹底する必要があると思います。今後周知を行う際には、当然のことながら、企業が安全配慮義務を含めた適切な措置を講じていくことが非常に重要であるということについて改めて周知徹底していただきたいと考えております。
また、佐久間委員も御発言されておりましたが、このガイドラインの改定につきまして、今回、報告というかたちになっていますけれども、労働政策に関する重要な事項だと考えておりますので、当然のことながら、三者構成の下でしっかり議論を決定していくことが原則であるということは改めて申し上げていきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 労使双方からの御意見をいただいたところでございます。
副業・兼業というものを行っていただくというときに、ガイドラインでも記載していますとおり、労働者の健康を確保しなければなりませんし、そこを中心に考えていくことは当然だろうと考えております。
労使双方から同じ懸念と同時に心強いお言葉もいただいたと私どもとしては考えておりますので、周知啓発に際しましても、労使のお力もお借りしながら、そういう形で労働者の健康被害が起こらないような形となるよう、できるだけ努力してまいりたいと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、本日の議事はここまでとさせていただきます。
最後に、次回の日程等について事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、以上で第175回労働条件分科会は終了といたします。
本日はお忙しい中御参加いただきまして、どうもありがとうございました。