第36回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和4年7月15日(金)15:00~18:00

場所

オンライン

議題

1.第4期がん対策推進基本計画に向けた議論のとりまとめ
2.がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討
3.職域におけるがん検診の実態把握に向けた取組

 

議事

議事内容
○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第36回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の岩佐と申します。よろしくお願いいたします。
 本日の検討会につきましてはYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。委員の皆様方におかれましては、参加中、基本的にマイクをミュートにしていただき、御発言の際には挙手等いただきまして、こちらのほうから、もしくは座長のほうから指名がございましたら、初めにお名前をいただいてから御意見、御発言いただくようお願いいたします。
 初めに、構成員の変更について申し上げます。本年6月まで公益社団法人日本医師会常任理事の羽鳥裕構成員に御参加いただいておりましたところ、改めまして、今回公益社団法人日本医師会の黒瀨巌様に構成員として御参加いただくこととなりましたので、黒瀨様に一言御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○黒瀨参考人 ありがとうございます。日本医師会の黒瀨でございます。本日から参加させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 よろしくお願いいたします。
 また、前回5月の検討会の際、倉敷市保健所健康づくり課課長の河本伊津子様に御参加いただいているところですけれども、前回機器トラブルで御挨拶をいただけなかったところですので、もしよろしければ一言御挨拶をいただければと思いますが。
○河本構成員 失礼いたします。岡山県倉敷市保健所の保健師、河本と申します。今回から正式に構成員にならせていただきます。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
○がん対策推進官 ありがとうございます。
 本日の出欠状況でございますが、全ての構成員の方に御参加いただいております。
 また、本日、参考人といたしまして、弘前大学医学部附属病院医療情報部、松坂方士参考人をお招きしておりますので、御承知おきいただければと思います。
 それでは、以降の進行につきまして、大内座長のほうからお願いいたします。
○大内座長 皆様、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 では、最初に事務局より資料の確認をお願いいたします。
○事務局 事務局です。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。資料は事前にメールでお送りさせていただいておりますが、厚生労働省のウェブサイトに掲載しております。議事次第、資料1、資料2、資料3、資料4、及び参考資料1から8がございますので、御確認ください。
 資料の不足、落丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。
 それでは、大内座長、議題をよろしくお願いします。
○大内座長 では、議題1「第4期がん対策推進基本計画に向けた提言案」に移ります。現在、令和5年度から施行予定である第4期のがん対策推進基本計画の策定に向けて準備を進めております。がん予防・がん検診の分野は、第3期基本計画に引き続き、重要な分野別施策になります。前回5月の第35回本検討会で皆様からいただいた御意見を踏まえて、提言案としてまとめております。
 まずは事務局から資料1について説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。
 資料1「第4期がん対策推進基本計画に対するがん検診のあり方に関する検討会からの提言案」について御説明いたします。前回5月に開催した第35回の検討会では、「がん検診受診率向上のための取組」「適切な精度管理の実施」と「科学的根拠に基づくがん検診の実施」の3点について、現状と課題、検討の視点を踏まえ、対応案を提言する資料を準備し、構成員の皆様にはその方向性に対して御賛同いただいた上で、各項目について御議論いただきました。したがって、本検討会の第4期基本計画に対する提言取りまとめ案としまして、前回の資料を基礎に御議論いただいた内容を反映して資料1を準備しました。提言の趣旨を踏まえた順序の入れ替えはございますが、内容に大きな変更はなく、前回資料からの修正点は赤字でお示ししております。本日は、資料1でお示しした提言案について構成員の皆様に御意見をいただき、本検討会としての提言を取りまとめさせていただきます。本日の検討会を踏まえ、大内座長には、資料1を活用して、政府の策定する「がん対策推進基本計画」の立案に関与し、本検討会と連携するがん対策推進協議会で本検討会からの提言を御発表いただく予定です。
 まず、1つ目の課題「がん検診受診率向上のための取組について」です。資料3枚目から22枚目に変更はございません。
 資料23枚目の対応案には次の5点を提案しています。1つ目、国民生活基礎調査によるがん検診受診率の目標値を60%に引き上げること。2つ目、職域におけるがん検診の受診率を継続的に把握できるよう検討を行ってはどうか。また、個人単位の職域における受診状況について、自治体においても把握できるよう検討を進めること。3つ目、職域におけるがん検診の適切な実施に向け、事業主や保険者その他の関係者の意見を聴き、まずはそれぞれが実施可能な取組や関連する課題の整理を行うこと。4つ目、「がん検診のアクセシビリティ向上策等の実証事業」や各自治体における取組などから得られた知見を横展開し、より科学的かつ効果的な受診勧奨策を推進すること。5つ目として、危機時において一時的に縮小することがあっても、がん検診提供体制自体のリカバリーが速やかに行われることができるよう、リカバリーを促進する施策に関する研究を実施すること、でございます。
 前回の検討会では、がん検診の受診率をどのように把握するか、その調査方法について、中長期的視点を踏まえて御議論いただきました。次期基本計画におきましては、これまでと同様、国民生活基礎調査によって受診率を把握し、どのがん種についても検診受診率の目標値50%を達成してはいませんが、がん種・都道府県によっては、既に受診率60%を達成している部分も確認されていることから、現状より高い受診率に向けて目標を設定しております。
 中長期的には、職域におけるがん検診の受診状況についても、個人単位で把握できるよう検討していく視点を御議論いただきました。関連して、職域におけるがん検診については継続的に受診率を把握できるよう、実施可能な取組や関連する課題の整理を行うことから始めること、有効な受診勧奨策を推進し、受診率向上に努めること、危機時においてがん検診提供体制が一時的に縮小する場合であっても、速やかに受診率が回復するような対応に関する研究を実施することを確認いたしました。
 事務局からは以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 それでは、1つ目の課題「がん検診受診率向上のための取組について」、主に対応案に御意見がある方はお願いいたします。祖父江構成員。
○祖父江構成員 第1項めに国民生活基礎調査による受診率でモニタリングをするというふうに書いてあるわけですが、これが自己申告によるもので、当面これでモニタリングはするのですけれども、今まで自己申告によるデータの妥当性というのは、検討をきちんとしてこなかったような気がします。当面これでやると。ただ、長期的には第2項めに書いてあるように、職域も含めて個人の受診状況をきちんと把握して、実施数から受診率を計算するというほうに持っていくのでしょうけれども、短期的にはそれは無理なので、国民生活基礎調査による検診受診率で行くわけですが、自己申告の妥当性を研究班等で一度確認してはどうかということを入れておいたらどうでしょうか。
○大内座長 研究班で確認すべきということなのですが、事務局のほうでいかがでしょうか。
○がん対策推進官 御意見ありがとうございます。
 現時点においてある程度網羅的かつ安定的に取れるデータとしては国民生活基礎調査のみというところで、これまでも目標の評価指標としてきたというところです。当然これらを評価指標とする中で一定程度信頼はあるという認識の下、進めてきていたところですけれども、おっしゃるとおりほかの指標と比べてどうなのかという点については、改めて確認をしていくということも必要かと思っております。
その意味では、次の2項目における継続的に把握できるような仕組みを考える中で、これらの妥当性も検討するのがいいような気もしておりますが、具体的にどのような形で行うのがいいかというところについては、先生方からも御意見を頂戴しながら進めたいと思います。
○大内座長 では、手を挙げておられる中山構成員。
○中山構成員 中山でございます。
 2点あります。1つ目は国民生活基礎調査によるがん検診受診率のところですけれども、これは前回の検討会後に自治体から幾つか質問が届いていたのですが、基本的にこれは国のがん検診受診率なのか、自治体の検診受診率なのかというところで、国民生活基礎調査のため、自治体個々の分は求めようがないのですが、そこが誤解されている雰囲気があるので、国ならば国、あるいは国・都道府県といったように明確化しておいたほうがいいのかなと思いました。
 もう一点は、職域のがん検診の受診率のところで、個人単位の職域における受診状況について、自治体で把握できるよう検討を進めてはどうかというところですが、かなり中長期的にやっていくという考え方としては賛成ですけれども、短期的にやるにしては、インフラの整備とか法的整備とか、かなり時間がかかるので、その辺をもう少し細かく書くならば書いたほうがいいし、短期的に第4期だけでは検討が難しいということであれば、そういうふうに位置づけたほうがいいかなと思います。
 以上です。
○大内座長 対応案の2点について御意見をいただきました。1点目は、目標値を60%に引き上げる。これはどこがということを記載すべきではないかということです。
 2番目については、「把握できるよう検討を進めてはどうか」とありますので、検討を進めていることでよろしいですか。先生の御意見をここに書き留めますけれども、特に必要でしょうか。
○中山構成員 できないものではないと思うのですが、かなりハードルが高いなと思っていますので、もし書くのであれば、かなり一生懸命やらないと難しいなと思っています。
○大内座長 では、確認させていただきます。
 では、若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 若尾です。よろしくお願いします。
 先ほど祖父江構成員がおっしゃったことと少しかぶるかもしれないのですが、それも含めて2点あります。
 1点目は、国民生活基礎調査というものが自己申告であるということなのです。ここに答える国民が、自分が受けているものががん検診なのかどうかということが分からないといけないわけです。ちょっと言葉は悪いですが、今やがん検診自体がイベント化しつつあって、受けておしまいというような方が多いかもしれません。そこで、こちらも啓発という形になると思いますけれども、職域で受けても、それから地域で受けても、自分が受けているものががん検診であるということが分かるような、つまり、がん検診自体の理解を深めるような啓発を行ったらいいと思います。具体的に申し上げますと、対策型検診と任意型検診それぞれにがん検診の項目がありますので、それぞれ目的が違うわけですが、受診率の向上ががんの死亡率低下につながるのですよということも含めた啓発活動の提案をいたします。国民生活基礎調査によるがん検診受診率というものに対しては、がん検診自体の啓発が入るといいなと思います。
 もう一点は職域のがん検診ですけれども、男性に比べて女性のがん検診受診率はおおむね低いです。それはなぜかというと、働き盛りの女性は非正規や派遣が多かったりして、職域でのがん検診受診に遭遇する機会が少ないからだということも一因ではないかなと思うのです。なので、職域におけるがん検診というものの課題を見る視点を少し変えたほうがいいのかもしれないと思います。正規で働く多くの男性は、職域でのがん検診というものに触れる機会が多いのですけれども、子育てや介護が忙しいから女性が受けないのではなく、非正規などで受ける機会が少ないということもあるかもしれないので、その点の原因調査も含めて職域における適切ながん検診の推進というものを進めていっていただきたいなと思います。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、中野構成員、お願いします。
○中野構成員 2つ目の丸についてです。冒頭から祖父江委員ほか御発言があったとおり、2つ目の丸の「個人単位」のところは、前回も触れたとおりですが、すぐ実現可能には結びつかないと皆様も御理解していらっしゃると思いますので、文章はこのままでいいのかなと思いつつ、より分かりやすくなるのでしたら、「中長期的な視野に立って」というニュアンスのことは書くのかなと思います。いずれにしろここで「個人単位」と入ったのは、ある意味でよかったと思っております。
 以上でございます。
○大内座長 では、井上構成員、お願いします。
○井上構成員 井上です。
 同じ点で追加の発言です。職域やら自治体やら、本来であれば受診率を把握するときに区別しなくても、個人単位の情報としてマイナンバーのような形で入ってくれば、新型コロナワクチンの接種の記録のように一元管理はできるはずで、これも今すぐにということではないですけれども、確かに中長期的視野に立って今から検討するということが、比較的早期にデータリンケージなどがどんどんできるようになっていますので、将来実現していくのではないかと思います。先ほど他の先生がおっしゃられましたように、今すぐという話ではないですが、中長期的視野について書き込んでおいたほうがいいと考えておりますので、マイナンバーなどを含めて利用可能なもので、職域、自治体検診に限らず把握できるような仕組みを検討すべきということを書いていただけますとありがたく存じます。
 以上です。
○大内座長 では、松田構成員、お願いします。
○松田構成員 福井県健康管理協会の松田でございます。
 先生方の御指摘に全く賛成であります。私は、国民生活基礎調査による受診率は、当面致し方ないかと思いますが、いずれ職域におけるがん検診の受診状況をも把握して受診率を求めるべきだと思います。ですから、「検討を行う」ではなくて、そういう受診率の算定を目指すと書いていただきたいと思います。あとは個人単位ということも非常に重要で、これは自治体が未受診者を把握してリコールをするという意味合いだと思うので、これも目指さないといけないと思います。
 先ほど井上構成員が御指摘になったマイナンバーですが、実は先月からはマイナンバーを使ったマイナポータルで、市区町村で受けたがん検診の結果を自分でも確認できると聞いています。ですから、職域におけるがん検診はなかなか把握できないということも理解できるのですが、いずれ誰が職域で受けているかをしっかり把握する方向に向かわないといけないと思います。2つ目の丸については、「検討を行う」「検討を進める」ではなくて、「この方向に向かう」ことが必要だと思います。
 以上です。
○大内座長 では、今回は参考人としてのお立場ですが、日本医師会メンバーの交代がありましたので、黒瀨先生、お願いいたします。
○黒瀨参考人 ありがとうございます。参考人になるのですけれども、ちょっとだけお話をさせてください。
 先ほど井上先生あるいは松田先生がおっしゃられましたように、マイナンバーカードをPHRとして、一元管理のためのツールとして使うのは非常にいいと思います。その中で私どもが申し上げたいのは、今、よく言われるかかりつけ医の機能あるいは制度というところがございますけれども、かかりつけ医機能の強化というのは、私ども日本医師会も積極的に取り組んでいるところでございますので、できればかかりつけ医が受診勧奨するとか、そういった視点もこの中に入れていただいて受診率をアップさせるというところを。かかりつけ医もぜひこの中に組み込んでいただければと考えております。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、2つ目の課題の「適切な精度管理の実施について」、事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。
 2点目「適切な精度管理の実施について」御説明します。資料25枚目のこれまでの議論については前回から変更はございません。
 資料26枚目ですが、市町村における指針に基づかないがん検診の実施については、前回の検討会におきまして科学的根拠に基づくがん検診の実施で取り扱う方が望ましいという御意見をいただきましたので、移動させております。また、職域におけるがん検診の精度管理に関して、「保険者及び事業主が精密検査結果を把握し精度管理を行うことは困難であり、『職域におけるがん検診に関するマニュアル』の周知等で精度管理の徹底を図ることには限界がある」と追記しております。
 資料27枚目から資料36枚目に変更ございません。
 資料37枚目の対応案には次の5点を提案しています。1つ目、自治体における検診の精度管理を、レセプトやがん登録情報を活用する方法にシフトできるように推進すること。2つ目、都道府県は、管轄する市町村のがん検診の実施状況を踏まえ、市町村に対し必要な指導や助言等を行うこと。3つ目、精密検査受診率の目標値を引き続き90%とし、精密検査受診率の低い市町村の実態の把握に努めること。4つ目、職域におけるがん検診の精度管理を可能とするため、保険者がレセプトやがん登録情報などを活用して感度、特異度、精密検査の受診状況などを把握できるよう技術的支援を行うこと。5つ目、各自治体において精密検査を実施できるがん診療連携拠点病院等の医療機関リストを作成・公表することを推進する。特に職域においてがん検診の結果を通知する際に精密検査実施医療機関リストを同封すること、でございます。
 前回の検討会では、自治体、職域におけるがん検診の精度管理について、レセプトやがん登録情報を活用した把握方法を御議論いただきました。特に地域保健・健康増進事業報告に対する自治体からの精度管理報告では、レセプトやがん登録情報を活用し、より効率的に精度管理指標を利活用していく方向性を確認しました。都道府県が管轄する市町村に対し、精密検査実施状況を踏まえた指導・助言を行っていくことは変わりません。精密検査実施率については、自治体間の差が大きく、精密検査受診率は第3期基本計画に引き続き90%を目標値として設定しますが、精密検査受診率が低い市町村の実態把握に努めることを御提案いただきました。職域におけるがん検診の精度管理としてレセプトやがん登録情報を活用する方向性に変更ございません。また、精密検査を受診しやすい環境づくりとして、各自治体で精密検査実施医療機関リストを作成・公表し、特に職域でがん検診を受診した方にも御利用いただけるよう準備することを確認しています。
 事務局からは以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、2つ目の課題「適切な精度管理の実施について」、御意見のある方はお願いいたします。祖父江構成員。
○祖父江構成員 祖父江です。
 26ページの現状と課題のところで、今まで全然発言していないものを言うのは何なのですけれども、第3期計画の中で指標として用いられているのが、精検受診率に関しては指標として用いられていて、その改善に対して取り組まれていると。地域保健事業報告でこれだけ集めているわけではないのです。がん発見率とか要精検率とかいっぱい集めているのですが、それに関しての指標はあまり設定されていないのです。すなわち、あまり利用されていないという現状があって、ですから、そのことを考えると、それがまた次の職域のがん検診のところで感度、特異度、レセプト、がん登録を使って、それを利用したほうがいいということをつなげるのに、地域保健事業報告の中で幾つかのデータに関して利用されずに終わっていると。これを利用されないのだったら、もうちょっと簡素化するということの流れに持っていくために、その地域保健事業報告のデータが精密検査の受診率以外には利用されていないということは、現状として指摘しておくべきではないかなと思います。
 連動して、37ページ目の対応案のところでも、職域においてはレセプト、がん登録を利用して感度、特異度なのですけれども、では、市町村のがん検診に関してはそれをしなくていいのかというと、そうでもないのです。それを統一的に行うために一番重要なのが判定区分の標準化というのがあります。そのことを進めると、地域職域を通じて同じ方法でがん検診の感度、特異度が測られて、それを比較するということができるので、判定区分の標準化を地域、職域を束ねて、またいで行うことも必要ではないかなと思いました。
 以上です。
○大内座長 私もそう思います。地域と職域は同じく扱うことになると思う。そのほうがいいのですが、祖父江構成員が言われたように、判定区分というのが職域で使われているのです。その部分が団体ごとに整合性が取れていなかったり、いわゆる対策型がん検診と職域におけるがん検診の中で、カテゴリー分類とか精密検査基準とか、そういったものの言葉の使い方そのものも異なったりしておりますので、その辺をきちっと精査して統一化を図るということには大変意義があると思います。
 では、中山構成員、お願いします。
○中山構成員 中山です。
 37ページの対応案のところですけれども、レセプトやがん登録情報を活用するという動きが見られてきた。そういう方法がだんだん確立してきたということで、そういう方向に推進していくのはいいのですが、実際自治体とか地区医師会の先生方とお話をしていますと、感度、特異度と言われても、100%ではないのかとか、そもそもそういう数字を見慣れたことがないというのが医療者の間でもすごく多いので、この結果を解釈できるのかというところにまだ非常に大きなハードルが残っていると思いますので、その辺の解釈の仕方とかも。後で松坂先生のほうから説明があるかもしれませんけれども、そういった解釈の仕方等についてもマニュアルのような形で整備をしたほうがいいのかなと思います。
 以上です。
○大内座長 では、若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 若尾です。
 対応案の一番下ですが、特に職域において結果を通知する際に精密検査を実施できる医療機関リストを同封してはどうかという提案がありますが、特に子宮頸がんのように若い年齢が対象のがんなどの場合は、紙ベースよりもウェブのほうが見やすかったり、そのまま予約につながったりする可能性があります。 そこで、これは「同封」だけではなく、ウェブ上で受診機会へのリンクができるような、そんな仕組みを想定し、「同封」だけではなく、ここに何と書いていいか分かりませんけれども、「ウェブを使って」とか、オンラインでリンクができるような形式にしてはどうか、というようなことができたらいいなと思います。
 以上です。
○大内座長 検討させていただきます。
 では、黒瀨参考人、お願いします。
○黒瀨参考人 ありがとうございます。
 今の若尾委員のお話にも重なるのですが、もうちょっとデジタルトランスフォーメーションを考えたほうがいいと思うのです。例えば自治体の多くはいまだにがん検診、あるいは特定健診の結果を手書きで患者さんに渡して、手書きでその自治体に報告しているところが圧倒的に多いと思うのですが、自治体にしっかりとした精度管理をしていただくためにも、ほかの余計な労力をかけないということも考えないといけないと思うので、その点では、医療機関で検診を受けたものが御本人にもあるいは自治体のほうにもデータとして送られるというシステムを、セキュリティーの問題とかいろいろ難しいところがあると思うのですけれども、そこをきちんと解決してあげて、ひな形を自治体あるいは地区医師会に配って利用していただくということも考えていただくといいのではないかなと思いました。
 以上でございます。
○大内座長 ありがとうございます。
 ほかに御意見ございますか。よろしいですか。
 それでは、第3点目に移らせていただきます。「科学的根拠に基づくがん検診の実施について」。事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。3点目「科学的根拠に基づくがん検診の実施について」御説明します。
 資料39枚目には変更ございません。
 資料40枚目には、先ほどの「適切な精度管理の実施」の部分で申し上げたように、市町村における指針に基づかないがん検診の実施についての部分を移動させてきております。また、新たな検診項目を導入する際、本検討会としては、死亡率減少効果を確認するという基本姿勢を明確にしつつ、がん検診事業を客観的に分析・評価する指標の検討が十分でないことを課題として挙げています。
 資料41枚目と42枚目は、資料43枚目にある対応案の流れから順番を入れ替えております。
 資料41枚目における年齢調整死亡率は、今後検討する国際比較の一例であることから、「国際比較例」としています。
 資料43枚目の対応案には次の4点を提案しています。1つ目、がん対策としての適切ながん検診実施のために、現在行われている対策型検診の水準を上げ、適格な対象集団への受診勧奨とプログラムの管理・評価を行う組織型検診の構築に向けた議論を深める必要があること。2つ目、日本のがん検診の進捗や課題を整理するため、諸外国におけるがん検診の仕組み、対象者への個別勧奨法、がん検診受診率、年齢調整罹患率、年齢調整死亡率について、経年的な比較調査を実施すること。3つ目、市町村において、指針に基づいて実施されるがん検診と基づかないがん検診を区別する必要があること。指針に基づかないがん検診の効果検証が進むよう検討すること。特に指針に基づくがん検診が十分にできている市町村においては、指針に基づかないがん検診の効果を検証したい研究者や企業をマッチングするような仕組みについて検討すること。4つ目、新たに対策型検診として実施する検診に組み入れるまでのプロセスについて明確化すること、検診項目の更なる適正化が進むよう検討することを挙げております。
 前回の検討会では、日本のがん検診の中長期的な方向性として、現在の対策型検診の水準を上げ、適格な対象集団への受診勧奨とプログラムの管理・評価を行う組織型検診を目指すことを確認しました。その上で、現在行われている日本のがん検診の進捗や課題を客観的に評価するため、諸外国におけるがん検診の仕組み等を経年的に比較することの重要性について御議論いただきました。
 現行のがん検診としては、市町村において、指針に基づくがん検診と基づかないがん検診を明確に区別することで住民に正しくがん検診を知っていただき、まずは指針に基づいたがん検診を確実に実施いただくこと。一方で、指針に基づかないがん検診を実施する場合には、その効果検証が進むよう、研究者や企業とマッチングする仕組みを検討することが提案されました。さらに、新たな検診項目を組み入れるプロセスも明確化し、検診項目の適正化が進むように検討していく方向性も確認いたしました。
 事務局からは以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、3つ目の課題「科学的根拠に基づくがん検診の実施について」、対応案が示されましたので、御意見をいただきます。では、中山構成員、よろしくお願いします。
○中山構成員 よろしくお願いします。
 指針に基づかないがん検診ということですけれども、長らくがん検診に関するガイドライン作成に携わってきたのですが、多くの検診が有効性に関する証拠自体があまりはっきりしないというものが多くて、ガイドラインの中では研究に対する課題という形で、どういう研究をやらないといけないのかと明示してきたという歴史があります。その中で、研究班会議の中にそういった指針に基づかないがん検診をおやりになっている先生方をお呼びして、こういう形で一緒にやりませんかということを提案したようなこともあるのですが、なかなか現実的にうまくいかなかったという経緯があります。
 我々はそういうことをやっているところと対立をしていきたいというわけでは全くないので、できる限りそういうところとうまく研究をして成果を出していく。それを国民に還元していくというのが本来がん対策としては求められていると思いますので、ぜひその点では厚生労働省に間に入っていただいてマッチングできるような形ができていただければ、それはかなりウェルカムかなと思います。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、祖父江構成員、お願いします。
○祖父江構成員 43ページ目の「検討の視点」の1番目、2番目辺りで、新しい検診の技法が確認のための時間を要し過ぎているというところです。今、これを解消するにはまずは研究をきちんとやるということが必要なのですけれども、ここ数年、AMEDで大規模な有効性評価研究をきちんとサポートしていると。この辺りは評価できると思うのですが、それをさらに促進するために、大規模な研究を行うためのインフラ整備というものが必要だということを一つ明記していただきたいと思います。
 それから、研究自体が促進されても、実際の対策型検診を導入するためにガイドラインをきちんとタイムリーに整備していくということが必須なのですが、そこのところの仕組みも非常にウイークなので、そこをまたきちっと強化するということも明記していただきたいと思います。
○大内座長 祖父江先生、今の御発言ですが、対応案のどこに入れますか。
○祖父江構成員 対応案の中の、これは違う項目として挙げることが必要かと思いますけれども、研究を促進するという意味での項目ですね。
 それから、ガイドラインを作成するための仕組みというのも、今は国立がんセンターに頼りきりのところがあるのですが、そこのところもきちんとサポートすべきだと思います。
○大内座長 これは非常に大事で、先ほどの中山構成員の意見とも重なるのですが、日本からきちっとデータを出していく日本人のためのデータですね。最近になってAMED等でこういった大規模な研究が可能になってきましたので、これを踏まえて、提言のような形でここに書き込むことは大変重要だと思います。
 事務局のほうからいかがでしょうか。
○がん対策推進官 御意見ありがとうございます。
 1点確認したいところとしましては、先ほど研究のインフラとおっしゃられたところですけれども、具体的にどういったことを想定されているのかという点については確認をしたいと思っております。その点を教えていただけますでしょうか。
○大内座長 祖父江先生、先ほどの中山先生の御意見もそうですが、多分これは別項目で、対応案を検討してから入らなくてはいけない。ただし、「検討の視点」の2番目、新たに対策型研修として実施する場合に、このプロセスの中に入ると思うのです。「開発や検証の取組の意欲がそがれないように」ということで、まさにそうなのですけれども、それを具体的に対応案に書き込むということでいかがでしょうか。
○祖父江構成員 ちょっといいですか。岩佐推進官の質問に対して、一体何がインフラ整備として必要なのかということですが、AMEDは一応資金は提供してくれるのですけれども、大規模試験を行うためのコーディネーティングセンター機能とかデータセンター機能というものが日本では成熟していないのです。臨床試験に関してはある程度成熟して機能しているのですが、大規模な、数万人を対象とするような試験に対するコーディネーティングセンター機能というのが、アメリカ等ですと、コントラクト・リサーチ・オーガナイゼーションという民間の調査会社が請け負うような仕組みがあるのですが、日本においてはそれがまだ成熟していないので、そういうことをサポートしていくようなことが必要である。これが研究者個人の負担になってしまっているのが非常に研究を阻害していると思います。
 以上です。
○大内座長 貴重な意見をありがとうございました。
 対応案の中に盛り込めるよう検討を重ねたいと思います。
 では、若尾構成員、お願いいたします。
○若尾構成員 若尾です。
 先ほど中山構成員や祖父江構成員がおっしゃったように、新たな対策型としてのプロセスなのですが、これを簡単に「指針に基づかない」と言ってしまうのは、女性特有のがんなどの場合は特にあるかなと思いますので、新たな推進といったことには力を入れていただきたいなと思います。
 それと同時に、偽陽性とか過剰診断などの不利益な項目というものも分かりやすく周知したほうがいいと思いますので、偽陽性とか過剰診断などに対する不利益をこうむることもありますよということを付け加えたらいいかなと思います。
 もう一点は、41ページにあった海外との比較のグラフですが、あれもしっかりと国民の皆さんに知っていただくために、ずっと経過を国民でウオッチしていきたいなと思いますので、海外との比較、諸外国におけるがん検診の仕組みやどのような受診率の差があるのかということの啓発もここには書き込んでいただきたいと思います。
 以上です。
○大内座長 がん検診受診率にも関わるのですが、貴重な御意見をいただきました。
 では、井上構成員、お願いします。
○井上構成員 お話を聞いているとほとんど皆さんとポイントが重なっております。まず、対応案の赤い字のところですけれども、諸外国との経年的な比較調査というのは非常に有効だと思っていまして、ぜひこれを対応案として書くと同時に、きちんと実施していけるといいなと思っていますし、年を経るにつれて状況も変わってくる、あるいは変わってこないということもありますので、ここは経年的に、継続的にということを強調して書いていただきたいと思います。
 3番目ですけれども、全く先生方と同じ。特に若尾構成員がおっしゃいましたように、私はこの文章を読んでいて、「特に」から後の「がん検診が十分にできている市町村においては、指針に基づかないがん検診の効果を検証したい」と。「指針に基づかない」というところが、まだ基づいていないのだけれども、将来もしかしたら有効かもしれないという意味がむしろネガティブに取られてしまう、意味が完全に反映されたフレーズにはなっていないと感じましたので、せっかく研究して、もしかしたら基づくがん検診の中に入ってくるかもしれないという新しい検診手法に関してという意味合いをここに含めおいたような記述に変えていただければと思いました。
 以上です。
○大内座長 福田構成員、お願いいたします。
○福田構成員 福田でございます。
 新たな対策型検診の組入れについてですけれども、これは当然やっていくプロセスの検討の中で有効性を検証すると。これは第一だと思うのですが、一方で、これは公的なお金を使って自治体で実施していくものになりますので、費用対効果についても将来的には少し検討が必要かなと考えています。なので、今の対応案の文言の変更が必要とは思わないのですが、プロセスの明確化のところで将来的には費用対効果も含めて議論されることを希望いたします。
 以上、コメントです。
○大内座長 福田先生、ありがとうございました。福田先生御専門の費用対効果なのですが、がん検診の効果検証の中に入っているのですけれども、費用対効果というのはすぐにデータが出てこないというのが現状でして、私も先生のほうにお願いしているのですが、なかなか時間が取れなくて、多くの研究班で同じ課題を抱えていると思うのですが、これは先生のお立場でどのようにしたら費用対効果の解析が適切に進むのか、御意見をいただければと思います。
○福田構成員 費用対効果の分析方法に関しては今、少し検討しているところで、研究班等でまとめて提示していきたいと思っているところですが、これを例えば新たに入れるときのプロセスの一部として、そういうものをこういう手続で検証をその場でしていくような形を取り入れるべきかと思います。今、参考に考えているのが、ワクチン接種について新たなものを取り入れるときには費用対効果も考慮してという方向に動いておりますので、そういうものを参考にしながら。ただ、簡単にすぐできるかというと、そうではないので、どうすればいいかというところがあって、対応が遅れているところもございまして、申し訳ありません。
○大内座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見ありますか。先ほど祖父江構成員から御提案があった件については、事務局とも協議して対応させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する構成員あり)
○大内座長 では、これまで3つの課題について構成員の皆様から御意見をいただきました。以上の御意見を取りまとめて、がん対策推進協議会で本検討会からの提言としてお伝えしたいと思います。
 続きまして、議題2「がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討」に移ります。資料2につきまして、本日参考人として御出席の弘前大学、松坂先生から御報告をお願いいたします。
○松坂参考人 弘前大学の松坂です。よろしくお願いいたします。
 今日は「がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討」という内容でお話をいたします。
 まず、がん死亡率を低下させるためのがん検診ですけれども、これには科学的根拠が確立したがん検診プログラムの選択、徹底した精度管理の実施、高い受診率という3つを得るという必要があります。特に今後我が国の有効ながん検診の実施のためには精度管理が鍵になると考えています。現在、健康増進法に基づくがん検診での精度管理の手法は、以下の2つが確立されています。1つ目は実施体制の評価指標ということで、「事業評価のためのチェックリスト」を用いて未整備点を把握して改善していくということです。
 2つ目が実施水準の中間指標、いわゆるプロセス指標です。具体的には精検受診率、要精検率などを算出して、検診プログラムを評価して改善していくということです。
 私たちの研究班では、直接的な実施水準の指標として感度、特異度を新たに導入すべきであると考えております。がん検診の感度、特異度、その有効性につきましては、前々回のこの検討会で祖父江構成員が発表されましたので、そちらを御参照ください。
 今回私が強調したいのは、要精検、つまり、陽性者は、市町村が追跡してがんの有無を把握しますけれども、異常なし(陰性)の者のがんの有無は把握できないということです。この陰性者のがんを把握するためには、検診情報とがん登録情報の照合ということが必要になります。
 先ほど御紹介した「事業評価のためのチェックリスト」、特に都道府県用ではがん登録情報の利用による偽陰性の把握とその体制の整備を求めておりますけれども、残念ながら達成している都道府県はほとんどないというのが実情です。ですので、これまでのがん検診の取組の中でこのデータ照合というところは取り残されてきた課題であると認識しています。
 がん検診情報とがん登録情報の照合ですが、確認が必要なのは、がん検診情報というのは市区町村の管理です。一方、がん登録情報は都道府県の管理です。そのため、データを照合するためには必ず片方のデータを他の管理区域に移送する必要があります。この後に御説明する技術的な理由から、都道府県がん登録室でデータ照合が実施されますので、具体的なデータ移送の方向は市区町村から都道府県です。
 データ照合によるがん検診の精度管理のためにはどのような体制を整備すべきかということは、2017年から19年の厚労科研松田班で既に整理をされております。3つあります。1つ目ががん検診精度管理事業の体制です。これには受診者情報と検診結果が正確に記録されているということを含みます。2つ目がデータ照合場所と個人情報の取扱いの整理。3つ目が照合データの正確な解釈ということです。
 これら3つをクリアして実際に精度管理を実施した3つの県を御紹介いたします。1つ目は青森県です。青森県は全40市町村のうち20市町村が参加しました。これらの市町村はがん検診情報を青森県に移送しました。青森県は事業委託先である弘前大学に移送しました。弘前大学には既に全国がん登録データベースシステムが設置されておりますので、これを使ってがん登録と照合して照合データを得ました。この照合データを弘前大学でそのまま評価を実施したという流れです。
 和歌山県は、和歌山市が参加しました。和歌山市は、この受診者情報という検診結果を含まないものを和歌山県立医科大学に移送して、和歌山県立医科大学では全国がん登録データベースシステムを用いて照合しました。照合データをもう一回和歌山県に戻して、和歌山県ではそれとがん検診情報を照合することによって、先ほど弘前大学でつくられたような照合データを得ました。さらに、これを匿名化して、先ほど御紹介した精度管理の技術支援を行っていた厚労科研松田班に移送して、そこで評価を実施しました。
 島根県では5市町が参加して、がん検診情報を島根大学に移送して照合して、得られた照合データを匿名化して、先ほどの技術支援を行っていた厚労科研松田班に移送して評価を行うという流れでした。
 御覧のように自治体によって整理が異なるのですが、個人情報の保護ということがこの2つのデータ照合には障壁にはならないということは、ここで確認いたします。
 実際に個人情報のどのような整理でデータ照合を行ったかということですが、まず照合というお話になると、必ず受診者本人の同意が必要ではないかということが話題になります。その点につきましては、(1)がん検診が健康増進法と健康局長通知に基づいて実施されており、(2)その目的を実現するためには精度管理が必須であるということ、(3)「個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」では、がん検診の精度管理のための情報提供を第三者提供の例外として認めているということから、いずれの3県も受診者本人の同意は不要と整理をしました。
 がん登録データの利用は、法律で定められた審議会から承認を得ております。また、市区町村から都道府県への個人情報の移送は、青森県と島根県は上記の(1)(2)(3)によって審査不要と整理をしました。ただし、和歌山市は必要最低限の情報を移送するという条件で承認を得ましたので、県にはがん検診情報を移送しない、つまり先ほど御紹介したように、受診者情報のみ移送するという形になりました。これは健康増進法に基づくがん検診ではデータ照合が可能であるという整理ですので、職域であったり、人間ドックであったりというような健康増資法に基づいたものではない検診については、このような整理は不可能です。
 先ほどの3県のうち、実際に感度と特異度の算出が可能なデータの形で集計をしたのは和歌山県と青森県です。
 これが和歌山県和歌山市のデータ、感度、特異度になります。
 こちらが青森県20市町村の集団検診での感度と特異度になります。注意していただきたいのは、この2県では偽陰性などの定義が異なっていますので、比較ができないということです。精度のばらつきを検出して改善していくこと、まさに精度管理なわけですが、このためには同じ定義で算出して比較するということが必要です。これについては私たちの研究班で進めていくということになっております。
 これまで御紹介しましたように、個人情報の保護ということは、感度、特異度の算出には障壁になりません。大きな問題になるのは、社会一般のがん検診に関する知識の不足です。
 一例を御紹介します。これはNHKが平成29年6月29日、青森県による公表の前日です。報道機関とは青森県の公表の後に報道するという約束でしたけれども、それを一方的に破って前日に報道されました。内容は、「胃がん・大腸がん検診で4割見落とされた可能性」という内容です。
 7月13日、国立がん研究センターからこのNHKの報道内容、つまり、4割が見落としの可能性というのは不適切であるという旨の声明が出されました。その間、青森県の担当者は、46都道府県のがん対策担当者に電話で騒動を謝罪しております。ただし、青森県事業の内容とその公表については謝罪をしていません。これは青森県のプライドだと思っています。
 また、私にも多くの医師から青森県事業に対する批判のメールが届きました。青森県事業は見落としを露呈させるものだとか、精度管理の内容を公表してはいけないという内容でした。このことは報道機関や医師のがん検診に対する知識が不足していることが一因で起こったものと考えています。
 例えば偽陰性ですけれども、がん検診のそもそもの目的は、がん死亡リスクの低下です。一方、このときの和歌山県や青森県での偽陰性の定義は、がん検診では異常なし、いわゆる陰性の判定だったけれども、一定期間内にがんと診断された症例ということです。赤線を引いておりますがん死亡とがん診断ということはイコールではないですので、全ての偽陰性症例ががん死亡するわけではありません。例えばがん検診の後にそのほかの検査で偶然に早期のがんが発見される場合などは、その検査を受けなければ次回のがん検診で発見された可能性がありますので、必ずしもこれを見落としと判断するのは正しいことではないと思います。
 また、症状が出現した後に発見されたがんでも、治療効果が十分にある場合などはがん死亡を避けることができます。ただ、社会一般で偽陰性イコールがん死亡という誤解が多いということも残念な事実です。
 がん登録ではこのような発見の経緯を正確に把握できないという限界点はありますけれども、大事なところは、偽陰性がんの把握ということががん検診実施水準の中間指標を算出して、精度管理を徹底するためのものである。そのために重要なことなのであって、見落とし等の検討ということはまた別であるということです。
 また、感度というお話になると、必ず感度を上げなければならないということが話題になります。けれども、感度を上げると必然的に特異度が下がります。そうしますと、がん死亡率の低下という利益が得られる可能性はありますが、不必要な精検や偶発症などの不利益は必ず増大します。ですけれども、残念ながら感度100%というあり得ない数字が理想的であるという誤解が多いのもまた事実です。実際には感度と特異度をモニタリングしてバランシングするという、まさに精度管理の取組が必要になります。
 まとめます。有効ながん検診のためには、直接的な性能の評価指標である感度、特異度を用いた精度管理が必要です。そのためにはがん登録情報の利用が必須です。個人情報を十分に保護しながらデータ照合を実施することが可能です。ただ、重要なのは、偽陰性症例は見逃しではないなどといったがん検診に関する基本的な知識の普及ということでして、この点に関しましては、現在の厚労科研斎藤班「がん検診の利益・不利益等の適切な情報の提供の確立に関する研究」などの取組が重要であると考えています。
 もう一つ重要なのは、国際的にがん罹患率やがん死亡率などを比較して、がん対策全体の中でのがん検診の成果を検証するということですので、現在の厚労科研の松田班の取組もとても大事なものだと考えております。
 最後になりますが、先ほど私に届いた批判のメールのうち、がん検診の精度管理状況を公表してはいけないというものがありましたが、それについては、私は明確に反対の立場です。精度管理の状況とその改善に向けた取組を公開して、一般市民のがん検診に対する信頼を醸成するということが今後の有効ながん検診の推進に大きく寄与するものと考えております。
 以上です。今日はお時間をいただきましてありがとうございました。
○大内座長 ありがとうございました。
 ただいま松坂参考人から「がん登録を利用したがん検診の精度管理方法の検討」と題しまして発表いただきました。御質問のある方はお願いいたします。祖父江構成員。
○祖父江構成員 祖父江です。
 がん登録との照合で感度を測定するという具体的な方法について説明いただきありがとうございました。
 10ページ目のスライドでやや気になった点があるのですが、先ほど感度を上げると、必然的に特異度が下がります。それは同じ性能であればそうなのですけれども、検診の精度管理の中で感度、特異度を測る目的は、ユニットを県単位でなくて、検診機関別に感度、特異度を測定して、感度、特異度が低いところを高いところに両方とも上げるというのが目的だと思うのです。
 だから、バランスを取るのでなくて、細かいユニットでばらつきを見て、性能の悪い感度、特異度を示している検診機関に対して、両方とも上げるというのが目的だと思うのですけれども、そこはどうなっていますか。
○松坂参考人 おっしゃるとおりだと思います。バランスというか、精度管理はばらつきを把握してならしていくというところが最終的な基本的な取組のものだと思いますので、祖父江先生のおっしゃるとおりだと思います。
○祖父江構成員 ありがとうございます。
 それから、11ページ目の2ポツ目に「がん登録情報の利用が必須である」と書いていますが、レセプトでもできますので、よろしくお願いします。
○松坂参考人 分かりました。
○大内座長 よろしいでしょうか。
 では、松田構成員、お願いします。
○松田構成員 松田です。
 御発表、どうもありがとうございました。
 実は福井県では継続的に県の事業として偽陰性例の把握をしております。5がん全てについてです。そこで、先生がお話しになった偽陰性の定義ですけれども、私たちは基本的には中間期がんという立場を取っております。中間期がんの中にも、先生がお話しになったような自覚症状が契機で見つかったがんだけではなくて、たまたま定期的な検査とかで見つかったものもあります。そういうものを大きな問題にする必要はないと思いますが、まず偽陰性の定義をはっきりさせる必要があると思いますし、偽陰性となった原因がどこにあるのか細かく検証して、改善につなげるということが本来は必要かと思います。先生、いかがでしょうか。
○松坂参考人 そのとおりだと思います。私たちの研究班では偽陰性の定義をまず確定させて、それに基づいて感度、特異度を算出するということを昨年は行いまして、今後も継続していくということで考えております。
 ただ、がん登録情報を用いた際の問題として、先ほどの10枚目で示しましたように、その発見経緯を正確に把握するということがなかなか難しいです。初診の病院でそのまま医療が完結して、がん登録へ届け出られた場合には、恐らくこの経緯はある程度ははっきりするのですけれども、例えば紹介された先とか、さらに紹介された場合に、初めての発見の経緯をなかなか正確に把握できないという問題が今のがん登録ではありますので、特に初診が診療所だった場合に、法律で義務化されていないところだった場合には難しいというところがありますので、この発見の経緯は今後の課題であるとは思います。ただ、研究班では偽陰性の定義には用いませんが、偽陰性の場合の発見経緯の割合は示した形で推移を見ていくということは必要だと議論しています。
○松田構成員 ありがとうございます。
 先生、もう一つ、得られた偽陰性率等の結果をどのように公表するかということについてお聞きしたいと思います。例えばかかりつけ医を中心とする医師会の先生方にはどういうふうに公表し、一般市民に対してはどう示すのでしょうか。
○松坂参考人 感度、特異度の示し方については、示すことは当然大事なのですが、どのように解釈をして、その数値をもってどのように取り組んで精度改善につなげていかなければならないかというところについては、これを一緒に公表しなければならないと思いますので、それについては私たちの研究班で作成するつもりです。
 さらに、一般市民の方々には精度管理、がん検診の有効性を高める取組というところまで感度、特異度と一緒に説明しないと、何でこういう数値を出しているかというところが分からないと思いますので、そこも先ほどの斎藤先生の研究班と一緒になりながら、がん検診とはそもそも何だろうということも踏まえて公表の内容をつくっていきたいと思っています。
○松田構成員 分かりました。ありがとうございました。
○大内座長 ただいまの松田構成員からの発言の中の偽陰性の定義に関してですが、「中間期がん」と呼ぶこともありますし、問題となっているのは、今日松坂参考人が発表されましたスライド7と8の和歌山と青森県のデータですが、追跡期間が異なります。和歌山の場合は2年間、青森県の場合は1年間となっています。この偽陰性の定義、中間期がんの定義を、英語では「Interval cancer」と言っていますが、定めるべきだと思うのですが、この件に関しまして構成員の皆様から御意見はありますか。松田構成員。
○松田構成員 以前は私もいろいろな考え方をしていたのですが、現在は次回の検診までに見つかったがんとしています。ですから、1年に1回の検診であれば、1年以内に次の検診を待たずに見つかったがん。子宮頸がん、乳がん、胃がんについては、原則2年に1回ということなので、2年以内に見つかったというふうにするのが妥当ではないかと考えます。
 以上です。
○大内座長 ほかに御意見はありますか。祖父江構成員、中山構成員、いかがでしょうか。
○祖父江構成員 祖父江です。今の松田構成員の意見に賛成です。
○中山構成員 中山です。松田構成員の御提言に賛成しております。
○大内座長 対策型がん検診の中では、指針の中で検診間隔が明記されていますので、基本的にはそちらだろうと思っております。
 斎藤班でがん検診の利益・不利益に関する調査をされていますので、利益・不利益の中に偽陰性あるいは中間期がんが入りますので、その辺の検討もされているかと思いますが、今日は斎藤先生が御出席でないので、申し訳ないのですが、事務局のほうからこの定義について引き続いて検討されるよう依頼されてはいかがでしょうか。
○事務局 事務局です。承知しました。
○大内座長 資料2に関しまして、ほかに御意見等ございますか。祖父江構成員。
○祖父江構成員 今の7、8ページの表の見方の中で、がんの定義に関しては、今の偽陰性の定義と統一するということでいいのですけれども、陽性、陰性のほうです。先ほど出てきた一次スクリーニングでの判定の区分が統一されないと。これは研究班で定義するのではなくて、もともとのデータが統一されていないとこれは比較にならないわけです。だから、ここを統一するのが、判定区分をいろんな検診機関のところで統一していただかないと、感度、特異度がきちんと比較できないということです。
 補足説明でした。
○大内座長 大変重要なコメントをありがとうございました。
 ほかに御意見ありますか。
 では、報告事項に移らせていただきます。報告事項1「協会けんぽ・健康保険組合における被保険者のがん検診について」ですが、資料3を用いて事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。資料3「協会けんぽ・健康保険組合における被保険者のがん検診について」御説明いたします。こちらの資料は、当省保険局保険課が例年協会けんぽ・健康保険組合に事業状況調査を実施している中、がん検診に関する調査事項がございます。先ほど資料1「がん検診の受診率向上のための取組」において、「職域におけるがん検診の受診率を継続的に把握できるよう検討を行ってはどうか」と提言しており、既存の取組を有効活用して、職域におけるがん検診の受診率を継続的に把握する取組例として今回準備しております。今後も保険局保険課と連携して、保険者におけるがん検診の実施状況をより精緻に把握できるよう努めてまいりたいと思います。
 それでは、内容を御説明します。資料2枚目をお願いします。まず、我が国の医療保険制度の体系ですが、今回お示しする協会けんぽ・健康保険組合の加入者数は、65歳までの医療保険加入者数のうち約65%と被用者保険の大半を占めていることが分かります。
 資料3枚目をお願いします。協会けんぽの報告からお示しします。
 資料4枚目には、協会けんぽの加入者が受診する健診について、被保険者、被扶養者別にお示ししています。被保険者の健診として生活習慣病予防健診が実施されていますが、この中に大腸がん、肺がん、胃がん、女性には子宮頸がん、乳がん検診を含んで実施しています。一方、被扶養者の特定健康診査にがん検診項目は含まれておらず、被扶養者は市町村でがん検診を実施いただいております。
 資料5枚目には、協会けんぽの被保険者に実施されるがん検診の検診項目が示されています。5つのがん種における検診項目としては、指針に基づく検診項目と同じですが、乳がんを除く受診対象者の初回対象年齢が指針とは異なっています。
 資料6枚目には、協会けんぽにおける被保険者のがん検診の受診者数の推移をお示ししています。胃がん、肺がん、大腸がん検診を含む生活習慣病予防健診を受診した方の数は、経年的に増加していることが確認されます。生活習慣病予防健診を受診した方が、必ずしも胃がん、肺がん、大腸がん検診のそれぞれを受診しているとは限りませんが、受診対象者のうち50%前後で受診率が増加していることが確認されます。子宮頸がん、乳がん検診は2年に一度受診となっていますが、計上された報告からは、どの方が当該年の受診対象者であったか確認できないため、どの受診対象者も2年に一度受診していると仮定した上で、各年度の2分の1を受診対象者として推定すると、被保険者における子宮頸がん、乳がん検診の受診者数は経年的に増加しており、受診率は20%前後での推移と推定されます。
 続いて、健康保険組合の報告をお示しします。
 資料8枚目には、健康保険組合事業状況調査の概要をお示ししており、健康保険組合の運営指標の参考としていただくことを目的に、健康保険組合の事業状況等に関する情報を調査しています。令和元年度調査では、全1,378組合のうち1,244組合から回答をいただきました。
 資料9枚目には、健康保険組合におけるがん検診の実施状況について、がん種ごとに被保険者、被扶養者別にお示ししています。回答いただいた健康保険組合において、ほとんどのがん種、被保険者、被扶養者でがん検診を実施していただいていることが確認されます。健康保険組合ごとに実施されている検診項目は異なりますので、右の表では実施されている代表的な検診項目をがん種ごとにまとめております。
 資料10枚目には、健康保険組合において、がん検診が生活習慣病予防健診を含む一般健診で実施されているか、人間ドックまたは別で実施されているかを調査しています。どのがん種、被保険者、被扶養者においてもメインは人間ドックの枠組みで実施されていることが確認されます。
 資料11枚目には、健康保険組合において、がん種ごとの受診対象者に関する調査結果をお示ししています。各がん種において対象年齢を設定して実施していることがメインであるということが確認されます。
 資料12枚目には、健康保険組合において、保険者におけるがん検診の費用負担についてお示ししています。赤枠の「一部負担または全額負担」ですが、例えばある年齢未満の方は一部組合が補助して、それ以上の年齢の方は全額組合が補助するというように、対象者の年齢等の条件によって負担内容が変わり、「一部負担」と「全額負担」が併存する場合を指すものと認識しております。
 資料13枚目には、健康保険組合における被保険者のがん検診の受診者数の推移をお示ししております。がん種ごとに回答いただいた組合数が異なるため、5つのがん種それぞれにおける回答組合数を平均したところ、500組合弱の回答となっております。また、回答した組合ごとの「がん検診の対象者基準」はいずれも不明かつ相違しており、前提をそろえた実施率の算出が不可能なため、受診者数を経年で列記しています。平成29年度前後で受診者数の増減はございますが、どのがん種も傾向として経年的に緩徐な受診者数の増加が確認されます。
 資料3につきましては、事務局から以上です。
○大内座長 ありがとうございました。大変貴重なデータですね。
 それでは、資料3について御質問のある方は挙手願います。松田構成員。
○松田構成員 松田です。
 事務局に御質問とお願いです。市区町村が行う対策型検診では、例えば乳がん検診の場合は、40歳以上で2年に1回となっています。協会けんぽでもそのような年齢設定で2年に1回、偶数の年齢では検診費用に補助が出るとお聞きしています。ただ、両者では年齢の計算の仕方が異なります。協会けんぽの40歳とは、年度末の時点で40歳の方を言います。ですから、現在39歳であっても、誕生日が来て40歳になる方は40歳の扱いです。一方、市区町村の検診の場合は、年度初め、具体的に言うと4月1日時点で40歳になっている方を40歳と定義をしているように思います。これから市区町村のがん検診と職域における検診を同じようにやっていくためには、ぜひ年齢の統一が必要ではないかと思うのですが、御検討いただけないでしょうか。
○大内座長 事務局のほうから何かありますか。
○事務局 保険局保険課の方、コメントありますでしょうか。
○保険局保険課 オブザーバー参加させていただいております厚生労働省保険局保険課の大山と申します。いつも大変お世話になっております。
 協会けんぽの年齢につきましては、今、定義が年度末40歳となっているところかと思いますが、今、御指摘いただいたとおり、年齢をそろえて統一的に受診を促していくということは大事な観点かと思いますので、その課題認識につきましては、我々保険課のほうから協会けんぽのほうにお伝えさせていただいて、検討をさせていただきたいと思います。今、明快な回答は申し上げることができませんが、貴重な御意見として承りたいと思います。
○松田構成員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○大内座長 今、松田構成員が御指摘の点は非常に大事でして、地域がん検診と職域がん検診において対象年齢が違うということですね。ですから、第4期の計画に向けて、地域と職域を全体的に見るための組織型検診に向かうべきだということで、このような対象年齢について、あるいは対象者への通知についても皆さんで議論を深めていただければと思います。今日は大変貴重な御意見をありがとうございました。
 では、若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 若尾です。ありがとうございます。
 すごく貴重な資料を見せていただいて、興味深いなと思ったのですが、先ほどおっしゃった受診対象者の年齢というものをこうやって見ると、組織型の検診とは違うなと思うので、こういった点も今後改善というのかな、協会けんぽや組合のほうでそろえるような方向に行ってもらえるといいなと思ったことが1点。
 もう一点は、乳がん検診と子宮頸がん検診は女性だけだと分かるのですが、その他の3つの検診の男女の違いというものが出せるのであれば、そこでも男女の性差による受診の動向というものを知りたいなと思ったので、これは今、出してくれというわけではないのですけれども、今後こういった機会があるとしたら、そこもお願いしたいなと思います。
 以上です。
○大内座長 保険局保険課の方、答えられますか。
○保険局保険課 厚生労働省保険局保険課の大山でございます。貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。
 まず、協会けんぽにつきましては、一般健診を受診されている方というのが3つのがんの受診者に含まれてまいりますので、その受診をされた方の男女が何名だったかというのは、元のデータで確認することができるかと思いますので、これはこちらのほうで取りまとめ次第、参考情報として共有させていただければと思っておりますので、検討を進めたいと思います。
 他方で、健康保険組合につきましては、その調査内容の中で男女比までを答えている健保、答えていない健保というのが混在しておりますので、あまり参考にならない男女比データの提供となってしまうことから、今後のその調査を精査し改善をしていくことでそういったデータも取れるような検討をしていきたいと考えている次第でございます。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、中川構成員、お願いいたします。
○中川構成員 ありがとうございます。
 事務局及び保険局保険課の大山様にお尋ねしたいのですが、かつて保険局保険課さんで平成26年度の健保連データをまとめられたことがあったと思うのです。これは私も大変参考にさせていただいていますが、冒頭お話があったように、職域でのがん検診受診率を継続的に把握するという中で、今後こういった調査をまたなさって公表されていくのか、そこを教えていただけますでしょうか。
○大内座長 保険課の方、お願いいたします。
○保険局保険課 厚生労働省保険局保険課、大山でございます。御質問いただきましてありがとうございました。
 このたび、冒頭事務局から申し上げたとおり、事業状況調査によって健康保険組合に関するがんの検診情報というのは情報収集しておりましたが、現在、全医療保険者が回答を行います日本健康会議の全数調査という調査施策があるのですが、そこにこのがん検診の調査項目を移しまして、統一的に健康保険組合の回答を求めるような仕様にしていきたいと思います。日本健康会議の調査内容というのは、情報を集計した上で公表しておりますので、こういったものは公表を進めていけるものだと考えております。
 協会けんぽのほうにつきましては、これは協会けんぽとの相談となりますが、今、お出しさせていただいたような情報を経年的に追いかけて、こういった検討会の場にお出しさせていただくことはおおむね問題ないかと思っておりますので、この検討会を通して公表させていただくということは継続的に実施できるものと考えております。
○中川構成員 ぜひよろしくお願いいたします。
○大内座長 ありがとうございました。
 それでは、河本構成員、お願いいたします。
○河本構成員 大変貴重な資料を見させていただいて本当にありがとうございます。
 市町村の立場から申しますと、1人でも多くの住民の方に検診を受けていただきたいという気持ちで毎日取り組んでおります。今回この資料を見させていただいて、職域でもすごくたくさんの方が受けてくださっているというのがよく分かりましたし、高齢化になっており、働く年齢がどんどん上がっておりますので、職域でがん検診を受けていただけるというのもすごく大事ですし、女性の就業率も上がっていきますので、女性のがんについても職域のほうで受けていただけるというのが分かりました。
 私も今、中川先生がおっしゃったのと全く同じ意見で、今後もこのような資料を見せていただける機会をつくっていただけるとありがたいです。
○大内座長 ほかに御意見ございますか。
 今回出されたデータについては皆さん非常に歓迎されていると思うのですが、より精緻なデータで、しかも継続的にこういったものを示していただきたいというのが構成員の皆さんのお考えだと思います。引き続いてよろしくお願いいたします。
○若尾構成員 ちょっとだけ追加でいいでしょうか。
○大内座長 どうぞ。
○若尾構成員 今、出している5ページですが、健診項目に「便潜血反応検査」「胸部レントゲン検査」「胃部レントゲン検査」とありますが、多分協会けんぽでもこのように書かれていると思います。受けている人は、これが大腸がん検査、肺がん検診、胃がん検診だと思っていない人が少なからずいると思います。ですので、先ほどの第4期への提言というところでも述べましたが、一般の人たちが受けているものががん検診かどうかということが理解されるような情報提供、そういうことをする上でも、協会けんぽの健診項目の「便潜血反応」は大腸がん検診なのだ。括弧をしてでもいいのです。「胸部レントゲン検査」は肺がん検診なのだ、「胃部レントゲン検査」は胃がん検診なのだということが分かると、国民生活基礎調査への反映もより正確度を増すのではないかなと思ったので、ちょっと加えさせてもらいました。
 以上です。
○大内座長 若尾構成員の御指摘は、ここに「便潜血反応検査(大腸がん検診)」とかというふうに付記されていれば、より分かりやすいということですね。
○若尾構成員 はい。
○大内座長 そのことが一般の健康診断の中に入ってしまっていて、がん検診と考えていないのではないか、誤解されているのではないか。そういったことも含めて全体を見直してはいかがかという御提言になると思います。
○若尾構成員 そうです。私がたまたま企業などで話をする機会をいただいたときに、「大腸がん検査を受けていますか」と聞くのですが、ほとんどの人が、いやあ、お尻からカメラを入れていないから、受けていないというふうな感覚を持っているような気がします。なので、これは括弧書きをしてがん検診であるということを示したほうがより理解が進むのではないかなと思います。
○大内座長 ありがとうございました。
○河本構成員 今の若尾先生の話に追加なのですけれども、住民の方からはがん検診がどういった検査かという問合せがあります。先生が今おっしゃられたように、大腸がん検査、便の潜血検査なのですけれども、ファイバー検査だと思って、怖いから受けたくないなとかいう声もありますし、逆にファイバーの検査が受けられると思って申し込みたかったのにという御意見も結構あります。胸部レントゲン検査も結核の検診と肺がんと両方の目的でされているかと思うのですが、そちらもなかなか分かりにくいという御意見を住民の方からいただきますので、今、若尾先生がおっしゃったとおりだなと思って聞かせていただきました。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見ありますか。よろしいですか。
 では、続きまして、報告事項2「企業での検診受診率と実施率について」に移ります。
 では、中川構成員から御報告をお願いいたします。
○中川構成員 中川でございます。
 先ほどの御発表に関連するのですが、今日の議論でも職域でのがん検診受診率の把握というのが大きなテーマになっております。あまり完全な形ではないのですけれども、私が関わってきました2つの調査について御発表させていただきます。
 まず最初は、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」の中で推進パートナー企業に対しての受診率の調査を1ついたしております。これは参考資料7により詳しいデータがございます。もう一つは、この企業アクションと大同生命との共同調査によって、小規模な事業所の経営者、また会社での実施率の調査。こちらのほうは参考資料8にまとめてございます。
 まず、「がん対策推進企業アクション」のパートナー企業に対するアンケートでありますが、そもそも「がん対策推進企業アクション」は厚生労働省の委託事業でありまして、簡単に言うと、職域でのがん対策を推進するための啓発事業であります。平成21年度から14年目の事業でありまして、「企業アクション」で検索いただきますと、ここのところかなり充実したホームページもつくってございます。私が14年間議長をさせていただいております。
 申し上げたように啓発事業でありまして、3つのミッションを掲げております。がん検診の受診率向上のための啓発。企業の中でがんを知っていただくような努力。それから両立支援ということ。この中でこの取組に賛同していただける企業・団体を「推進パートナー」と呼び、それを広く募集しております。今回は1,836社に対してアンケート調査を行いました。21年12月から今年の1月まで。704社。企業と健保です。回答率は38%であります。
 こちらが企業、こちらが健保ですけれども、御覧のように大企業中心です。健保については5,000名以上の健保が最も多いということで、こちらは大企業中心の調査になったわけであります。
 資料4の3ページ目です。企業、健保別の受診率をここに掲げてございます。会社規模別にも出しております。ちょっと細かいので割愛いたしますが、ちなみに健保の受診率については、先ほど私が保険局保険課の大山様にお尋ねした平成26年度のデータです。少し古いですが、ほぼこれは重なっておりました。ただ、設問は、国が推奨する5つのがん検診について、直近年度の検診受診率。したがって、乳がん、子宮頸がんに関しては正しい聞き方ではないのです。これはもともと啓発事業で、この調査についても義務ではありません。したがって、なるべく簡便にということで、その辺が少し正確ではない。
 もう一つ、企業アクションと大同生命さんとのコラボレーションでありますが、こちらは大同生命さんが毎月レポートを作成しておられます。
 これが今回の調査票ですけれども、業種、売上げ、こんなことも聞く中で、景況感とか、こういったものは毎月聞かれているようですが、今回そこに加えてがん対策についても受診率を含めた設問を加えている。そういうたてつけになっております。
 資料4の4ページ目ですけれども、こちらのほうは、簡単に言うと中小企業の経営者に訪問等で直接ヒアリングするという形になっております。令和2年度と3年度に調査をしたのですが、共に社員数5人以下の小規模事業所が最も多いということで、こちらは小規模事業所でのがん検診での受診実態ということになります。
 経営者のがん検診受診率、そして会社としての実施率を聞いています。これは共に直近2年なのです。これは先ほどのパートナー企業とはちょっと違います。これを直近2年にしたのは、令和2年度の調査が2021年1月、2月だったと思いますが、コロナの影響で、直近1年にするとなかなか全体像が見えないということで、2年にして、令和3年度もそれを踏襲したという事情がございます。
 まず、経営者のがん検診受診率ですが、これは参考資料8のほうのグラフです。男女で分けておりますが、乳がん検診、子宮頸がん検診は4割に達するというものでありました。一方、従業員に実施したがん検診の実施率は、御覧のようにあまり高いとは言えないという結果です。
 この2つの調査は多少課題がありまして、まず企業アクションの調査ですが、検診対象者数、受診者数の実数調査は行えていません。また、検査項目についての調査も行っていません。加重平均を使ってはいるものの、それは被保険者数の実数で重みづけをしています。本来はこの辺を使うべきなのですが、それができていないということです。
 大同生命のサーベイについても、対象者数ということを限定しておりません。ただ単純に経営者の受診率あるいは実施率を出していますので、その辺に限界があるのは確かであります。それから、先ほどの設問の項目です。
 少し補足の説明をします。まず企業アクションの推進パートナーアンケートですけれども、全体にすると、これは会社、健保を含めた受診率でありまして、これを2年度にわたって比較しますと、若干減少が見られて、少なくともがん検診の受診率は上がっていないということ。資料7に詳しくありますが、クラスター分析等によって受診率アップにつながる取組、受診勧奨、費用負担等について、どういったことをすればいいかということ。例えばがん検診の受診状況を把握する仕組みがあるとか、精密検査の受診状況の把握とか、費用負担、「受診率に効く12の取り組み」というのを算出、導き出しまして、そして各企業、アンケートに答えてくださった700余りに全てアドバイスレポートという形で、まずは受診率を同規模企業の受診率、あるいは同業種企業の受診率と併記する形でそれぞれに出しております。また、この12の取り組みでありますが、今年度、令和3年度、2年度、各社に対して実施したか、しないか。そして先ほどの同規模企業あるいは同種の企業についての取組比率と併せて個別のレポートを送っている。こんなこともしてございます。
 大同生命との話でありますが、資料8には年代別の受診率なども記載してございます。企業アクションの社員さんと小規模事業所の経営者と並べてみますと、これまた直近1年、2年という問題があるのですけれども、乳がん、子宮頸がんのほうはかなりイーブンな感じですが、大腸がん、肺がんのほうは少し経営者のほうが下がるということも分かっております。
 経営者の受診率と会社での実施率を並べておりますが、実施率がまだまだ低いという問題がありました。
 それから、経営者の方にがん検診の受診の延期あるいは実施控えを聞いてみますと、5%の方が現在も実施を控えているという数字が出ておりまして、実際に経営者の受診率を令和2年、3年と比較しますと、僅かながら減少に転じている。同様に、会社での実施率についても令和2年度、3年度で若干下がっているというデータも出ております。
 経営者に関しては、がん対策に関する関心の度合いを聞いています。「大いに関心がある」「関心がある」「あまり関心がない」。これによって実は経営者の会社でのがん検診の実施率が大きく異なることが分かりました。全てのがんにおいて経営者の関心によって会社でのがん検診の実施率が大きく変わるということが分かりました。実はがん検診とは別ですが、両立支援についても伺っておりまして、これについても、例えば勤務時間の変更等、全ての項目について、やはり経営者の関心が重要であるということが分かりました。
 駆け足になりましたが、以上でございます。ありがとうございました。
○大内座長 ありがとうございました。
 それでは、資料4について御意見をいただきます。黒瀨参考人、お願いいたします。
○黒瀨参考人 ありがとうございます。大変貴重なデータを見せていただいて感謝しております。特に小規模の企業ですと、経営者の健康意識というのは非常に大きく影響するのだなということもよく分かりました。
 1点教えていただきたいのですが、資料4の3ページの受診率に関してです。企業の規模あるいは健保の規模、両方とっても規模が大きくなればなるほど基本的にはどのがんの受診率も高くなるのかなと思って拝見していたのですが、5,001名を超えるといきなり受診率が逆に下がってしまっているように見えるのですが、これは企業の特色みたいなものがあってということなのでしょうか。そこの解釈を教えていただければと思うのですが。
○中川構成員 そうですね。例えば企業側で見ますと、20名以下の企業でかなり高いわけです。この規模の会社でこのアンケート調査に答えられるという会社は、経営者等が恐らくかなりがん対策に関心を持っているのだと思います。ですから、そもそもこういった調査はバイアスが非常にかかるのだろうなと思ってございます。小さい企業でこれに答えるような企業というのはがん対策を非常にしっかりやってきている、そんなバイアスがあるのだということだと思います。
○黒瀨参考人 ありがとうございました。
○大内座長 ほかに御意見、御質問ありますか。
 企業アクションということで、中川先生等が取り組まれておりまして、大体中身が見えてきたかと思います。中川構成員、これに関して全体的なコメントをもう一度お願いいたします。
○中川構成員 やはり大企業のほうが充実したがん検診を行っているということは間違いありません。それに比べて、会社の規模が小さくなると経営者の受診率も実施率も下がる。ただ、その中で小さな企業であっても経営者の意識というのが非常に重要であって、そういう意味では、小規模事業の経営者に対する啓発というのを今後もしていく必要があるだろうなということ。また、こういったバイアスがある中でも今後継続的に受診率等のデータを取っていきたいなと思っておりまして、その調査の実施等に関して構成員の先生方から御意見をいただくということもウェルカムでございますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、報告事項はこれにて終わりにいたします。
 そのほか御意見のある方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。
 予定の時間よりは早いのですが、今回は提言に関するまとめの議論がメインだったのですが、事務局の方々が非常に頑張っていただいて議論の整理をされて、それで提言案が出されました。それについて皆さんから御意見をいただきましたので、改めて調整させていただきたいと思います。
 では、本日の議論は以上とさせていただきます。
 事務局から連絡事項をお願いします。
○がん対策推進官 ありがとうございます。本日は様々な御意見、御議論をいただきましてありがとうございます。
 次回の検討会の詳細につきましては調整の上、また御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議は以上とさせていただきます。お忙しい中、ありがとうございました。
 

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健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線3825)