第35回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和4年5月25日(水)13:00~16:00

場所

オンライン

議題

(1)第4期がん対策推進基本計画に向けた議論
(2)子宮頸がん検診におけるHPV検査導入の検討
(3)がん検診のアクセシビリティ向上策等の実証事業の紹介

 

議事

議事内容
○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第35回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日、事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の岩佐と申します。よろしくお願いいたします。
 本日の検討会はYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。また、委員の皆様方におかれましては、参加中、基本的にマイクをミュートにしていただきまして、御発言等ある場合には挙手もしくは挙手ボタンを押してお知らせいただければ、こちらから指名いたします。最初にお名前をいただいてから、御意見、御発言をいただければと思います。
 初めに、構成員の変更について申し上げます。本年3月まで大阪市健康局健康推進部健康づくり課課長の田中構成員に御参加いただいておりましたが、異動に伴いまして、後任として、倉敷市保健所健康づくり課課長の河本伊津子構成員に御参加いただけるようになっております。本日、若干遅れているようですので、また後で御紹介できればと思います。
 構成員の出欠状況でございますが、現在、検討会の構成員定数10名に対しまして、出席の構成員が10名となっております。
 また、本日、参考人といたしまして、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室の青木大輔参考人、静岡社会健康医学大学院大学社会健康医学研究科の山本精一郎参考人にもお越しいただいておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、以降の進行につきまして、大内座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○大内座長 皆さん、こんにちは。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、事務局より資料の確認をお願いいたします。
○事務局 事務局です。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。資料は事前にメールでお送りさせていただいておりますが、厚生労働省のウェブサイトにも掲載しております。議事次第、資料1、資料2、資料3、及び参考資料1から4がございますので、御確認ください。
 資料の不足、落丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。
 それでは、大内座長、議題をよろしくお願いします。
○大内座長 では、議題1「第4期がん対策推進基本計画に向けた議論について」に移ります。現在、令和5年度から施行予定であります、第4期がん対策推進基本計画の策定に向けた準備を開始しております。がん予防・がん検診の分野は、第3期基本計画に引き続き、重要な分野別施策になります。2月に書面持ち回りで開催しました第34回の本検討会で議論を開始しておりますが、この次の回、7月予定の第36回検討会で提案を取りまとめられるよう、本日は提案の骨子を議論していただきます。
 まずは、事務局から資料1について説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。資料1「第4期がん対策推進基本計画に向けた議論の整理」について御説明いたします。こちらは、前回2月の第34回がん検診のあり方に関する検討会でいただいた御意見を踏まえまして、第4期基本計画に向けた課題を、検診受診率の向上策、適切な精度管理、科学的根拠に基づくがん検診の3点に集約させていただきました。本日は、3つのそれぞれの課題に対して、検討の視点、対応案をお示ししておりますので、それぞれの課題ごとに、一度お時間をいただき、検討の視点、対応案に対して構成員の皆様に御意見いただき、御議論をお願いしたく存じます。
 それでは、資料のページを進めてください。まず、1つ目の課題、「がん検診受診率向上のための取組について」です。
 資料3枚目には、がん検診受診率向上に関する検討会の方向性を、令和元年度版「がん検診のあり方に関する検討会」における議論の中間整理から引用しております。
 がん検診の受診率向上のため、こちらでお示ししているポイントは、自治体が科学的根拠に基づくコール・リコール等の受診勧奨に着実に取り組むこと。
 国が、個人の受診状況等に関するデータの効果的な利活用など、無関心層等の未受診者に対するより効果的なアプローチ方法等の検討を行うこと。
 女性の受診率の向上のため、世代ごとに適したアプローチやアピールの工夫、女性にとってがん検診を受けにくいと感じる障壁を減らすための効果的な方策や環境整備について検討を行うこと。
 「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の普及に取り組むこと。
 職域における検診受診状況の把握や、精度管理、精検受診率の向上に関する取組について、引き続き検討すること。また、将来的に自治体検診と統一化されたデータ・フォーマットの作成とデータの集約を検討すること。
 職域におけるがん検診のあり方について、保険者や事業主、検診団体等、幅広く職域の関係者を交えた検討を行っていくことでございます。
 資料4枚目には、前回の検討会でいただいた構成員の皆様の御意見を集約し、受診率向上に関する現状と課題をまとめております。
 ポイントは、いずれの検診でも受診率は増加傾向でしたが、ほとんどのがん種で50%の目標を達成していないこと。
 がん検診を受けない、または受けにくい理由の把握と、それに対する改善策が不十分であること。特に、これまで検診未受診者に対する、自治体からの情報提供が十分でないこと。
 男性と比較して受診率が低い女性のがん検診受診率向上のため、世代ごとに適した受診勧奨等の工夫の検討や、女性が受診しやすい環境の整備が十分でないこと。
 保険者及び事業主が精密検査結果を把握し、精度管理を行うことは困難であり、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」の周知等で精度管理の充実を図ることは現実的でないこと。
 退職等によって、職域から自治体でがん検診を受診する者について、本人同意の上で自治体に対して職域でのがん検診受診状況を共有すること。職域で受診機会がない者について、自治体が実施するがん検診に関する情報提供を行う等の自治体と職域との連携の取組が十分でないこと。
 全国民を統一的にカバーする組織型検診が実現できていないこと。自治体や職域を超えて統一的に受診状況等のデータを把握する仕組みが準備できていないことに集約しております。
 資料5枚目は、がん検診受診率に係る第3期基本計画中間評価をお示ししています。受診率の目標値50%を達成できていないこと、個別受診勧奨は約8割、再勧奨は約5割の自治体で実施されていました。
 資料6枚目は、国民生活基礎調査による、調査ごとの各がん種における検診受診率の推移をお示ししております。
 資料7枚目から11枚目は、がん種ごとに、69歳までの都道府県別の検診受診率を示しております。がん種によって60%を超える都道府県がありますが、子宮頸がんは全体的に受診率が低くなっています。
 資料12、13枚目は、新型コロナウイルス感染症による影響でがん検診受診率が低下したことを示しています。第3期基本計画の後半で経験した、新型コロナウイルス感染症流行によるがん検診への影響に対して、がん検診提供体制自体のリカバリーを図るため、資料13枚目にございますが、厚生労働省から、がん検診を含んだ受診勧奨を実施したことをお示ししております。
 資料14枚目は、受診率向上に資するがん検診受診勧奨策を検証するために、令和2年度から令和4年度にかけて実施している「がん検診のアクセシビリティ向上策等の実証事業」を紹介しています。詳細は、議題3において山本精一郎参考人に御紹介いただきます。
 資料15枚目から20枚目は、がん検診を受診しやすい環境づくりとして、各都道府県で実施している取組を紹介しています。資料15、16枚目は、無料クーポンを活用して、県内どこでも受診できる長野県、福岡県の取組。資料17、18枚目は、土日や早朝・夜間に検診できる栃木県、山口県の取組。資料19、20枚目は、職域におけるがん検診の受診促進として、埼玉県、兵庫県の取組がございます。
 資料21枚目は、オンライン資格確認等システムと自治体中間サーバとの関係性から、パーソナルヘルスレコード(PHR)の仕組みを示したものです。職域で実施される検診につきましては、法に基づいて実施されるものではないため、オンライン資格確認等システムに格納されておりません。健康増進法に基づき実施される自治体が実施主体のものについては、自治体中間サーバに格納される仕組みになっております。
 資料22枚目は、がん検診の法的位置づけの経緯を示しています。法的な位置づけは、その時々の社会の状況も踏まえて見直されてきました。
 資料23枚目は、がん検診受診率向上のための取組に関して、検討の視点と対応案を示しています。
 検討の視点として、1つ目、受診率を向上させるため、がん検診の教育・普及啓発や受診勧奨を地道に取り組むとともに、科学的な知見を踏まえ、より効果的な対策を実施する必要があること。
 2つ目、受診率をより正確に、より精緻に把握することができるように検討するべきであること。
 3つ目、受診しやすい環境の整備も重要であり、関係者の意見を聴きながら、必要に応じて法的な位置づけを見直すことも含め、あらゆる手段について検討を行うべきであること。
 4つ目、新型コロナウイルス感染症の流行例のように、社会情勢等によるがん検診への影響が最小限となるような取組も検討すべきであることを挙げさせていただきました。
 事務局からの対応案として、1つ目、がん検診受診率の目標値を60%に引き上げること。
 2つ目、実証事業や各自治体の取組等から得られた知見を横展開し、より科学的かつ効果的な受診勧奨策を推進すること。
 3つ目、職域におけるがん検診の受診率を継続的に把握できるよう検討を行うこと。個々人の職域における受診の情報について、自治体においても把握できるよう検討を進めること。
 4つ目、職域におけるがん検診の適切な実施に向け、事業者や保険者その他の関係者の意見を聴きながら、まずはそれぞれが実施可能な取組や関連する課題の整理を行うこと。
 5つ目、危機時において、がん検診提供体制自体のリカバリーが速やかに行われることができるよう、リカバリーを促進するような施策に関する研究を実施することを挙げております。
 1つ目の課題に関して、事務局からは以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 1つ目の課題、「がん検診受診率向上のための取組について」の提言がございました。
 では、皆様方から意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 祖父江構成員。
○祖父江構成員 この視点、対応案で今までの議論が網羅されていると思うのですけれども、抜けている視点として検診間隔のことがあるかと思います。現在、乳がん、子宮頸がん、胃がんについても2年に1回という検診間隔ですけれども、それが必ずしも守られていない。毎年受けるというのが基本になってしまっているところがあるので、個人の受診状況、検診間隔が今後長くなるような検診メニューが幾つか想定されていますので、それを適切に管理できるようなシステムが望まれる。現状としては、検診間隔が適切に守られていないところがありますし、それに対応するようなシステムの開発といいますか、その仕組みの開発が必要じゃないかと思います。
 以上です。
○大内座長 祖父江構成員から、がん検診の検診間隔についての記載が必要であるということです。よろしいでしょうか。
 ほかに御意見ありますか。
 中川構成員。
○中川構成員 中川です。
 23ページに職域のがん検診についての記載があるのですが、対応案の○の3つ目、4つ目です。職域のがん検診に関しては非常に大きな課題になっているわけですが、私、がん対策推進企業アクションという、厚労省の同じ健康局がん・疾病対策課の委託事業の議長を14年間行っていまして、職域でのがん検診に関しては様々な経験もしてまいったのですが、職域がん検診の大きな問題の一つに、職場でのがん情報の取扱いが、例えば精検受診率の把握などに非常に大きな影響を与えている。この職域でのがん情報の取扱いについては、検討が既に始まってガイドライン等も出されていると思いますけれども、ここを徹底する必要があるのだろうなと思っておりますので、御検討いただければと思います。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。がん情報についてですね。
 では、挙手されている方で、中山構成員。
○中山構成員 中山です。
 検討の視点、23ページの2番目、がん検診受診率をより正確に、より精緻に把握することができるよう検討すべきというところで、下の対応案も考えてみると、結局のところは、職域でも受けて、住民検診も受けるという方がおられたりするわけでしょうけれども、それを個人単位で把握するというかなり精緻な方向を目指すべきなのか。それは、恐らく理想なのですけれども、かなり難しいという印象を抱いています。この国で検診の提供体制が多種多様で複雑なので、理想としては、そういう統一の方法で把握するということだろうと思いますけれどもね。
 その一方で、これまで国民生活基礎調査ということで、国全体とか都道府県単位でも受診率を測定してきたので、そういう方向でずっといくべきなのか、それとももう少し理想の方向を目指すべきなのかということは非常に重要な視点ですので、それは引き続き検討して、どっちの方向を目指すべきなのかというところはちょっと議論していただきたいと思います。
○大内座長 大変重要な提案ですね。
 検討の視点の2番目に、受診率をより正確に、より精緻に把握することができるよう検討すべきとあるのですが、確かに国民全体の受診率を把握できていませんので、これは大きな課題ですので、多分、検診の在り方についての方向性として、第4期に向けての大きな柱になるかもしれません。了解しました。
 松田構成員。
○松田構成員 松田です。
 中山構成員がおっしゃったことと一部共通するのですが、私は、がん検診における最大の問題点は職域における検診だと思っています。職域におけるがん検診に法的な根拠がないということもありますが、職域で受けられない人たちがいます。しかも、自治体には、健康増進法で住民に対してがん検診を提供する義務があるのですが、誰が職域で受けられないのかが自治体には全く分かりません。ですから、コール・リコールが重要であることは、そのとおりだと思いますが、誰に対してコールを改めてしないといけないのか、その対象が分からないと日本のがん検診は前進しないと思います。
 もう一つ、職域で受けられない人たちに対して、受けやすいようにする施策がまだ前進していないと思います。将来的には職域におけるがん検診に法的な根拠を持たせるということだと思います。それができるまでは、前回のマニュアルに書き込んだ「職域でがん検診を受けられない人に対しては、自治体の検診を受けられるように便宜を図る」を、もう一歩進めて、事業主や事業所は、職場で受けられない人が自治体の検診を受けられるように特別休暇を与えるというところまで、ぜひ踏み込んでいただきたいと思います。
 最後に、受診率の把握なのですが、60%にするということに私は賛成ですけれども、一体何で計測するのかということははっきりさせないといけないと思います。従来どおり、国民生活基礎調査でいくのか、あるいは組織型検診ということで、名簿上で管理できるのか、将来的には名簿上での管理だと思うのですが、今回の第4期の計画で国民生活基礎調査を重視するのかどうかが今後の大きな課題かなと思います。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 それでは、若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 若尾です。よろしくお願いします。
 今、議論しているのは、第4期がん対策推進基本計画に向けてのがん検診受診率向上のための取組という項目だと思いますので、今まで中山構成員や松田構成員が言われたのとちょっとかぶるところもあるのですけれども、言わせていただきます。
 がん検診受診率という言葉の定義さえも、自治体が行う検診、もしくは国民生活基礎調査という形になるわけですが、一般の私たち検診を受ける者にとっては、それが何を意味して、どういう目的で使っているかということが分からないのですね。ですので、このがん検診受診率というものの統一を図っていただきたいなと思います。特に、国民生活基礎調査は即時性がないのですね。5ページで示していただいた数値を見ても分かるとおり、これは何年でしたか、大分昔の数字を使うわけですね。この即時性のない国民生活基礎調査を中間評価にしなければならないということ自体が、私にとってはちょっとおかしいなと思うのです。
 それで、がん検診受診率というものをすぐに即時性があるものに変えろというのは無理ですけれども、第4期の基本計画に向けては、がん検診受診率のあるべき姿というものを明確にする。もしくは、法的根拠で、全国どこにいても、どの市区町村であっても、がん検診受診率と言ったらこれを指すという方向性を目指してほしいなと思います。これは、がん検診受診率に関する私の意見です。
 それから、今までやってきた方法、コール・リコールも含め、それをより一層とかさらにという言葉をよく使いますが、今までずっとやってきて、それがわずかな効果しかないということは、同じ路線でやっても、多少の効果はあっても、大きな変化はないと思います。今回、コロナ禍でよく分かったのですけれども、ワクチン接種に懐疑的であった日本人の接種率があれだけ伸びたのは、あらゆる場面、あらゆる機会、あらゆるタイミングでコロナ禍についての情報を流したからだと思うのですね。そこで、第4期に向けては、がん検診受診率向上のための取組として、今までの路線ではなく、広報活動に大きな力を注いでほしいなと思います。
 こちら、最後の私の意見なのですが、女性の乳がん検診とか子宮頸がん検診の受診率が書いてある表を見ても分かるとおり、乳がん検診、子宮頸がん検診は、国民生活基礎調査では比較的高いのですが、自治体の検診受診率で見ると、実際はそんなに高くないのです。これは、明らかにジェンダーギャップと言ってもいいのではないかなと思うのです。女性は非正規雇用で働いていて、企業や会社、それから働いているところでの受診というものになかなかアクセスできなかったりする。しかも、基礎自治体のがん検診の情報がなかなか得られにくかったりする。こういう状況。しかも、女性は働き盛りになりますので、女性のがん検診に対する取組が非常に不足していると思います。
 今までの社会通念とか職域の検診に頼り過ぎていたところが、とても多く見受けられるのではないかなと思いますので、ここに対する配慮は、次期のがん対策推進基本計画のがん検診の受診率向上に向けて、重点的に書き込んでいただきたいなと思います。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 それでは、羽鳥構成員、お願いします。
○羽鳥構成員 日本医師会の羽鳥です。
 皆様の言われたことに同意します。検診の受診率を60%に上げようというのも賛成です。保険証が今度、マイナンバーカード1本になって、保険証を使わなくてもよくなるというぐらい電子化されるようなことを国は目指しているわけですので、そういう意味では、がん検診を受診したかどうかを、EHR/PHR、マイナンバーカードで、いつ受診したかは、最低限、まず第一歩として入れていくのはどうかということを提案したいと思います。
 それから、検診の受診率を諸外国と比べると、80%、90%の欧米、カナダ、オーストラリアと比べるとかなり低いわけですので、諸外国との比較をもっと国民に知らしめてもらうのもいいのではないかと思います。そういう意味では、例えば諸外国でやっているような、がん検診を受けていない場合には、いわゆる生命保険加入料が高くなるなどディスインセンティブをつける必要もあるのではないかなと感じます。
 2つ目、松田先生がいつも御指摘の、職域におけるがん検診、全く同意で、自治体のがん検診も受けられるようにしてくれれば、受けられる人はたくさんおられますので、それを何とかプッシュしていくような方法を考えていただきたいと思います。先ほど若尾先生がおっしゃっていた、女性の非正規雇用の方が受けにくいといいましても、自治体のがん検診だったら比較的受けやすいし、休業に対しても補助できるようなことであればいいと思います。
 もう一点、いわゆる健康経営の観点から言うと、職域のがん検診は任意であるからといって、社長さんとか事業主が把握しないことが多いのですけれども、それでは不十分ということで、事業主へのインセンティブ、健康企業の評価項目にがん検診の受診率、2次精検率はどうかということも評価の対象にしていただくのも大事なことじゃないかなと思います。
 3点目、内視鏡検診も成績がかなり上がってきていると思うので、次期の検診では、今回、バリウムの評価が多かったと思うのですけれども、胃がんの内視鏡検診も評価の対象に入れていただければと思います。
 以上です。
○大内座長 最後の胃がん内視鏡検診について、コメントありがとうございました。この提言がされたのは、今から6年前ですね。内視鏡検診が入ったわけですけれども、その評価もほぼ中間期を過ぎましたので、そろそろ次期に向けて。今の胃がん検診の在り方については、X線撮影と内視鏡が併記されています。それから、年齢についても50歳以上が原則なのですが、40歳代も当面の間はという記載がありますので、その当面の間についての検討を今回しなければいけないということかと思います。
 では、中野構成員、お願いします。
○中野構成員 大分意見も出そろった感じがしますが、改めて事務局がまとめられた視点を見ますと、飛躍的に向上させたいとお書きになっており、気持ちは分からないでもないです。後半に書かれている、地道に取り組むしかないのかなというのが本音のところと思います。
 それ対応案ですが、先ほど来、皆様がおっしゃっているとおり、60%に引き上げることが今の段階ではいいのかなと思います。しかし、これが国民生活基礎調査をベースにしていることを考えると、この60という数がどういうふうに変化していくか、比較という意味では、この60が生きていくのではないかと思います。また見方を変えると違った数に当然なっていくということを今、改めて思いました。
 今度は事務局に確認です。今回、各県、長野県以下、福岡、栃木、山口の事例を出していただいています。これは、自治体間で乗り入れできるとか、夜間も検診できるといういい例を挙げていらっしゃる。一方、乳がんと子宮頸がんの受診率のグラフを見ますと、山口県と福岡県の受診率が逆に低いような数になっています。これはあえてその数で、これから頑張るという意気込みの項目として挙げられているのか、確認したいです。せっかく例示を挙げられているので、お気持ちをお聞きしたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
○大内座長 事務局のほうで答えられますか。
○がん対策推進官 事務局でございます。
 この受診率と取組の内容自体を連結して、我々のほうでも必ずしも掲載しているわけではないところです。恐らく、各自治体において、例えば受診率が低いから、上げるためにいろいろな方法を考えなければならないということで、いろいろな取組を工夫されているところもあれば、しっかり対策している。それらによって、結果として受診率が高くなっているところもあるのかなと思っておりますので、受診率とタイアップした形でピックアップしたものではないということで御承知おきいただければと思います。
○中野構成員 山口と福岡は、これからいい結果に向かうだろうという気持ちが入っているということですかね。
○大内座長 よろしいでしょうか。
○中野構成員 はい。
○大内座長 では、中川構成員。
○中川構成員 すみません、先ほどちょっと言い忘れたのですが、23ページの職域におけるがん検診の受診率の継続的把握、これは非常に重要なことなのですけれども、この中で、大企業と中小企業、事業所の規模によってかなりばらつきがあります。大企業については、かなりよくなってきている。大企業に関しては、被扶養者の問題だと思っていますし、中小企業・小規模企業の場合には、従業員そのものの問題。ですから、職域におけるがん検診の受診率についても規模別の評価が必要だということを指摘しておきたいと思います。
 以上です。
○大内座長 では、井上構成員。
○井上構成員 井上でございます。
 皆様の意見で、私の思っていることをほとんど代弁していただいているのですけれども、受診率向上のためというところで、向上の方策を考えなければいけないと考えられます。何より把握するというところが、エネルギーを割いてもなかなかうまくできないところは、羽鳥構成員がおっしゃっていたように、マイナンバーという新しい仕組みを活用するというのが、将来的に非常に重要なことかなと思っていまして、それを繰り返し発言させていただければと思いました。
 コロナ禍でワクチン接種のときに、いろいろな医療機関で優先接種を受けたり、あるいは自治体からお手紙が来るのを待って受けに行ったりということが、全て同じ方法でもなくて、途中から変わったりということも、マイナンバーのおかげで情報が一括されて、誰が何回打っているというのが証明できるところまでこぎつけているというのを、私たちは目の当たりにしたわけです。検診に関しても、その人がどういう検診を何回受けているかというのは、そこにひもづく情報でうまく分けられるので、まずはその仕組みの一番大本として1人1レコードで把握できるのはマイナンバーしかありません。そちらにきっちり注力して、把握できる仕組みをまずはつくるというのは、意外に短期でできるのではないかと思っています。
 まず、それに取り組むかどうかというところの差だと思うので、ぜひコロナの経験を踏まえて、一歩かじを切っていただくために、書き入れていただくといいかなと思いました。
 以上です。
○大内座長 検討させていただきます。
 福田構成員、お願いいたします。
○福田構成員 福田でございます。
 受診率の目標についてなのですが、国全体として従来50%でやったのを60%に引き上げるというのは賛成でございます。そちらに向かうべきだと思います。
 一方で、本日の資料で都道府県別に見ると、既に60%を達成しているところもありますし、がん種によっては40%以下のところもある。余り離れた目標を掲げても、活動がうまくいくのかというところもありまして、例えば、国全体としては60%だけれども、都道府県別にそれぞれ実現をこの何年間でやっていこうというところをつくっていくような考え方もあるのではないかなと思いまして、コメントさせていただきました。特定健診の場合にも受診率目標を挙げていますけれども、たしか特定健診は保険者に義務づけられていますので、保険者の種類別に目標値が違う設定がされていたと思いますので、それを受けると、都道府県別というのも並行して考えていただくというのもあるかなと思いました。
 以上でございます。
○大内座長 一通り意見をいただきましたので、1つ目の課題については以上とさせていただきたいと思います。
○若尾構成員 若尾ですが、1点言い忘れたことがあるのですけれども、よろしいですか。
○大内座長 どうぞ。
○若尾構成員 18ページ、先ほどの山口県の好事例ですが、昨年の9月から12月まで平日夜間に実施する乳がん検診、子宮がん検診、大腸がん検診。これは、特に女性で死亡率が上がっているものに焦点を合わせたのかなと想像するわけですが、この9、10、11、12の4か月間、土曜日・平日の夜間を実施した結果、受診率がどう上がったのかという効果を、この検討会の中のどこかで教えていただきたいなと思います。
 がん検診をどうして受けないのですかと言うと、日にちが合わないとか時間の調整が難しいということがよく出てきますが、山口県がこうやって、短期ではあっても、休日・平日の夜間の受診をしますよという案内をして、山口県民にどの程度、この効果が出ているのかということの情報共有をしていただきたいなと思いますので、山口県の関係者の方にはお手数をかけますが、情報提供をお願いしたいなと思います。
 以上です。
○大内座長 では、続きまして、2つ目の課題に移ります。「適切な精度管理の実施」につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。2つ目の課題である「適切な精度管理の実施について」御説明します。
 資料25枚目に、がん検診の精度管理に関する検討会の方向性を、令和元年度版「がん検診のあり方に関する検討会」における議論の中間整理から引用しております。
 適切な精度管理の実施のため、こちらでお示ししているポイントは、市町村及び検診実施機関は、実施すべき精度管理上の取組として、自治体は、検診実施機関にがん検診事業を委託する際には、仕様書に記載されている内容の確認に努めること。自治体は、仕様書に記載されている内容に基づいて実際にがん検診が実施されたかどうか、委託終了後の確認に努めること。
 また、国は、今後、都道府県が、市区町村が実施するがん検診について、検診実施機関ごとのプロセス指標算出や評価等に関する技術的助言に努める等、都道府県の生活習慣病検診等管理指導協議会及びがんに関する部会の役割を明確化すること。
 「今後の我が国におけるがん検診事業評価のあり方について」は、必要な見直しを検討することでございます。
 資料26枚目に前回の検討会でいただいた構成員の皆様の御意見を集約し、精度管理に関する現状と課題をまとめております。
 ポイントは、精密検査受診率は、多くのがん種で目標を達成しておらず、精密検査受診未把握率や精密検査未受診率が改善されていないこと。精密検査実施率の改善に向けた対策やチェックリスト実施率が十分ではないこと。
 また、指針に基づかないがん検診の実施率が85.4%と高い状況で、指針に基づかないがん検診を実施している自治体において、指針に基づいた5つのがん検診を適切に実施しているか把握できていないこと。自治体のがん検診の実施状況において、指針に基づく検診項目を十分に認識しているか把握が十分ではないことに集約しております。
 資料27、28枚目に、第3期基本計画中間評価での精密検査受診率、指針に基づかないがん検診の実施率をまとめております。資料27枚目からは、精密検査受診率が、がん種によって異なり、大腸がんは約7割である一方、乳がんでは目標値9割をおおむね達成していることが見てとれます。次の28枚目には、指針に基づかないがん検診の実施率は、85.4%と高い状況であることが示されております。
 資料29から33枚目は、がん種ごとに、74歳までの都道府県別の精密検査受診率を示しています。目標値である90%を達成しているものもありますが、達成していないものもございまして、都道府県間の差が顕著に見られております。
 資料34枚目は、がん検診の精密検査を受診できる医療機関をホームページに掲載している、三重県と奈良県の取組を紹介しています。
 資料35枚目は、保険者が実施する大腸がん検診の精度管理指標について、レセプトを用いた、祖父江先生の厚生労働科学研究班の取組を御紹介しています。職域におけるがん検診におきましても、精検受診率、感度、特異度を把握できる取組になっています。
 資料36枚目は、令和3年度市区町村におけるその他のがん検診の実施状況調査を示しています。5つのがん種以外の検診実施率は、こちらでは81.3%となっており、前立腺がん検診が78.1%と最も高くなっています。
 資料37枚目に、適切な精度管理の実施に関して、検討の視点と対応案を示しています。
 検討の視点として、1つ目、精密検査受診率は十分な改善傾向を認めていませんが、目標を達成している自治体もあり、自治体による差が大きいことが改善のヒントとなり得ること。
 2つ目、精密検査の受診勧奨とともに、精密検査を受診しやすい環境も検討すること。
 3つ目、職域における精度管理の実態把握や、さらなる改善策について検討を行うこと。
 4つ目、指針に基づいた5つのがん検診以外の検診の実施についての考え方を挙げさせていただきました。
 事務局からの対応案として、1つ目、精密検査受診率の目標値を引き続き90%とすること。
 2つ目、職域においてがん検診の結果を通知する際に、精密検査実施医療機関リストを同封できるよう、各自治体におけるリストの作成・公表を推進すること。
 3つ目、職域におけるがん検診の精度管理を可能とするため、レセプトやがん登録情報等を活用して状況把握できるよう技術的支援を行うこと。
 4つ目、自治体に対しては、指針に基づいた5つのがん検診を適切に実施する観点から、精度管理の目標達成を重点的に推進するように強く推奨すること。
 5つ目、5つのがん検診以外の検診を実施する場合については、検診の有効性等について一定期間内に中間評価等を検証することを推奨すること。
 6つ目、都道府県は、管轄する市区町村に対し必要な指導・助言等を行うこと。
 以上の6点を対応案として記載しております。
 2つ目の課題に関して、事務局からは以上です。
○大内座長 では、2つ目の課題であります精度管理の実施に関しまして御意見をいただきます。
 では、祖父江構成員。
○祖父江構成員 祖父江です。
 37ページ目、班研究の結果を引用していただいてありがたいと思っておりますが、職域においてレセプト等を利用して感度、特異度を測るというのが現実に可能なわけですけれども、レセプトを用いると一定期間のがん罹患状況は分かるのですけれども、横軸というか、スクリーニングの判定、陽性、陰性、表をつくる際の縦のほうの区分ですけれども、それが検診機関ごとに統一されていないというのが非常に問題なのですね。だから、スクリーニングの判定区分の統一化を進めるということが、この感度、特異度測定を相互に比較するといった観点では非常に重要なのですけれどもね。
 その判定区分の統一化というところについて、今、21ページ目、自治体のがん検診に関しては、検診機関等から自治体システムへ流れる。この過程においての標準的なフォーマットを定める。これはデジタルデータですので、その試みが進められているのですけれども、同様のことは、職域においても日本医師会を中心に、検診機関から保険者あるいは実施主体にデータを移送する際の検診標準フォーマットをつくろうとしています。自治体と職域でのデジタルデータの移送の部分に関して、標準的なものを決める際にぜひ連携して行うと、統一の指針といいますか、統一のフォーマットが作成できるのではないかということで、そこのところは注視していただきたいと思います。それが1点です。
 それから、2点目、検討の視点のところで、精密検査受診率が十分な改善傾向を認めていないということですけれども、私の視点としては、こうした精密検査受診率はきちんと評価されて、ある程度改善傾向があるのだと思います。これはアクションが取りやすくて、精検受診率が低ければ高くするということが分かりやすい。一方で、市区町村で地域保健事業報告等で測られているほかのパラメータ、特にがん発見率を見て、精度管理に活用し、それが改善されたという事例が余りないと思います。
 地域保健事業報告を見てもらうと分かると思うのですけれども、その実施要領の細かさといいますか、複雑さというものが、市区町村の保健師さんにとって負担が過度になっている点があるので、きちんと使える指標を測るために、そういうものを絞って、地域保健事業報告の実施要領をできるだけ簡素化するということが1つ必要なのではないかなと思います。
 第3点目は、また37ページに戻っていただけますか。下から2つ目で、5つのがん検診以外の検診を実施する場合についてということですけれども、検診の有効性とともに、デモンストレーションプロジェクトのような場合は、不利益、安全性のほうをきちんと見る。併記してもらいたいと思います。
 以上です。
○大内座長 第3点目は、対応案の中に安全という言葉を加えていただきたいという要望でしょうか。
○祖父江構成員 そのとおりです。
○大内座長 では、検討させてください。
 第1点目の御提案は皆さんもそう思っていらっしゃると思うのですが、先ほど受診率の把握のためという課題の中で、スライド21番の絵が出ましたけれども、マイナポータルをうまく使うべきじゃないかということです。多分、多くの方がそう思っていらして、日本医師会でも進めていらっしゃると思うのですが、検診標準フォーマットと連動した形で統一フォーマットを検討してはいかがかということですが、これについて、日医からの構成員、羽鳥先生、御意見ありますか。
○羽鳥構成員 日本医師会で標準フォーマットのことをずっと担当としてやってきておりました。それで、当初、保険者の方も、こんなお金にならないものを何でということで、なかなか大変だったのですけれども、今、多くの保険者に理解してもらっています。1つは、コードをそろえるということです。例えば、肺がん検診でもいろいろな表現の仕方をされる先生方がおられますから、それを共通のコードにしていこうということをやっているところで、今は95%ぐらいの保険者の団体の方から御協力を得られています。
 あと、今、自主的にやっているところもあるので、厚生労働省が何らかのプッシュしていただければ、そのフォーマット自体は皆様無料で提供できるような状態になっておりますので、ぜひ御活用していただきたいと思います。
 それから、祖父江先生がおっしゃっていた、21ページ目のデータをここでもそろえていくということは、まさに国も推進しているところですけれども、いいタイミングだと思うので、次期はぜひ実現していただければと思います。
 以上です。
○大内座長 これに関連しまして、事務局のほうから御発言があるようです。
○がん対策推進官 今回、こういう形で図としてはお示しさせていただきました。国全体として、こういう仕組みがあるような状況の中で、情報を適切に集めていくためには、ここを活用しないわけにはいかないというところはあると思っております。
 一方で、先ほど来、マイナンバーということも言われておりましたが、マイナンバーを使った形でのこの仕組みに乗せていくには、一定の法的な整理も必要になってくるというところで、一足飛びにはそこにはなかなか行けないところであるというところで、その必要性、法的な位置づけといったことも含めて、今後しっかりと議論した上でやっていかないといけないのかなと思っているところですので、様々な関係者の御意見を聞きながら課題を整理し、法的な手当て等が必要であれば、そういった方向の検討も含めて、しっかりと対応していくというふうに進めていきたいと思います。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、中山構成員、お願いします。
○中山構成員 中山です。
 ちょっとポイントを絞ってお話ししますと、今、オンライン資格確認等システムとかのデジタル化の話なのですけれども、検診はいまだにほとんど紙の媒体で行われています。結果の報告、精密検査結果の把握とか、全て紙でやられていて、自治体の人や医療機関の負担が非常に大きくなっているので、これはコロナの件でデジタル化を急速に進めざるを得ないということは国民も理解しましたので、第一歩はこの形でオンライン資格確認等システムなどを活用して、ぜひ進めていただきたいと思います。
 それから、37ページ、検討の視点の1ですけれども、精密検査受診率については、目標を満たしている自治体もあるし、そうでない自治体もあって、様々な問題があるのだろうということでありまして、私が今、関与している東京都などでは、そもそも精密検査を受けたか、受けていないのか、さっぱり分からない、未把握というのが非常にたくさん存在するのですが、医師会の先生方にお話を聞くと、結果説明の日を別途設けて、そこに来てもらうことにしているのだが、ほとんど人が来ない。検診は受けているけれども、結果を聞きに来ないので、しようがなく電話したり、連絡が取れないという状態で、半ばイベントのように検診を受診している方も多いと聞いております。
 なので、こういうのは自治体によって状況が全然違うと思いますから、その辺のところ、なぜこうなっているのかのバリアを調べて、対応できるものは対応していくというところですけれども、余り精密検査受診率の向上だけにこだわってしまうと、本当にマンパワーを食い尽くしてしまうところになるので、祖父江構成員がおっしゃったような、レセプトやがん登録情報の活用ということにシフトすべき時期が来ているのかなと個人的には思っています。
 以上です。
○大内座長 若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 若尾です。ありがとうございます。
 先ほど中山構成員がおっしゃった、がん検診を受けることが1つのイベントになっているというのは、なるほどそうだなと思ったのですけれども、ここから精密検査を受診するというところに行動変容させるためには、精密検査を受けることが当たり前だと思わせるような仕掛けが必要だと思うのですね。例えば、職域にしても自治体にしてもそうなのですけれども、精密検査の受診が必要だという人は、必要ですよと言うのと同時に、どこで受けますかというような提案ができる仕組みづくりをしたらどうかなと思います。
 もし、先ほど事務局のほうでおっしゃった、法的な根拠というものが重要であるのであれば、労働安全衛生法とか健康増進法のはざまで、がん検診に対する法的根拠がないということの中で、できる範囲で行動変容を起こすような工夫はぜひとも必要なのだろうなと思います。ただ、イベントと化しているがん検診を受け、そのがん検診を受けた結果、これこれ、こういうわけで精密検査が必要です。そして、その精密検査は、こことこことここ、もっとあると思いますけれども、受けられます。あなたはどこで受けますかという流れができ上がったら、よりいいなと思います。
 それから、もう一点、今、お示しいただいている37ページの検討の視点の一番最後、指針に基づいた5つのがん検診以外の検診の実施についてというところがありますが、これは指針に基づいたものをがん検診と言い、指針に基づかないものは、その地域の行政サービスというすみ分けを明確にするということも1つの案かなと思いますので、それぞれの自治体の財政状況によっても違うと思いますし、それから、効果率というか、指針には基づいていないけれども、効果は期待できるというもの。でも、死亡率を待っていたら、今の検診受診者にとっては不利益をこうむることになるという扱いのものもあると思いますので、ここはがん検診と行政サービスとのすみ分けも1つの方法だという形で読めるような工夫もお願いしたいなと思います。
 以上です。
○大内座長 では、井上構成員。
○井上構成員 同じページの今と同じ項目に関してなのですけれども、がん検診の精度管理の話なので、そもそもこの指針に基づいた5つのがん検診以外の検診の実施について、どう考えるかという根本的な視点というのは、その後の「科学的根拠に基づくがん検診の実施」という項で別に出してもいいのではないかと考えます。私にはこの場所にこれが来るのに違和感がありまして、もし御賛同いただけるようでしたら、この後、対応策についても、ここに関係するものはこの後のところに移して、根本的な議論として示したほうがいいのではないかと思いました。
 以上です。
○大内座長 大変貴重な点、ありがとうございました。検討させてください。井上構成員から意見があったのですが、「適切な精度管理の実施について」、構成員の方々から意見をいただきましたので、整理させていただきます。
 続きまして、3つ目の課題として「科学的根拠に基づくがん検診の実施」につきまして、説明を事務局からお願いします。
○事務局 事務局です。3つ目の課題である「科学的根拠に基づくがん検診の実施について」御説明します。
 資料39枚目に、科学的根拠に基づくがん検診の実施に関する検討会の方向性を、令和元年度版「がん検診のあり方に関する検討会」における議論の中間整理から引用しております。
 科学的根拠に基づくがん検診の実施のため、こちらでお示ししているポイントは、指針に定めるがん検診の種類・検査方法の選定基準は、ガイドラインにおいて、死亡率減少効果を認め、かつ不利益も比較的小さいと考えられる推奨グレードAまたはBとして示されているものを基本とすることが適切であること。ガイドラインを基本としつつ、検討会で包括的に議論を行っていくこと。
 また、国は、自治体が自らの地域で実施する検診を検討する際に、科学的根拠に基づいたがん検診を行うことができるよう、指針に定められていない検査方法についても、それぞれの検査についての推奨グレードに関する情報を市町村に提供していくこと。
 国は、ガイドラインで定められていないがん種についても、必要に応じて科学的根拠の収集に取り組むとともに、その他の科学的根拠の収集が必要な課題についても、引き続き厚生労働科学研究等で対応していくことが必要であること。
 市区町村は、科学的根拠に基づいたがん検診の実施に努め、都道府県は必要な指導・助言等を行うよう努めるべきであること。
 死亡率減少効果が明らかな検査方法が既に存在するがん種に関しては、新たな検査方法及びそのがん種に係る死亡率減少効果の代替指標の在り方について、諸外国の動向も踏まえ、検討を行うこと。
 国は、国民の理解を得られるプログラムとするため、費用対効果等に関する分析・評価に関する取組を進めるべきであることでございます。
 資料40枚目に、前回の検討会でいただいた構成員の皆様の御意見を集約し、科学的根拠に基づくがん検診の実施に関する現状と課題をまとめております。
 ポイントは、特に新たな検診項目を導入するに当たって、費用対効果等、がん検診の事業を客観的に分析・評価する指標の検討が十分ではないこと。
 厚生労働省内の関係部局との連携が十分でないこと。
 がん検診を含めた我が国のがん対策等が有効に実施されているかの評価が不十分であり、諸外国との比較が重要ですが、定期的な調査が不足していることに集約しております。
 資料41枚目には、新たな検診項目の導入例として、直近の胃がん検診における胃内視鏡検査の経緯をお示ししております。2008年の検討開始から8年後の2016年に検診項目に導入しておりますが、2021年現在、自治体における実施状況は依然として48%です。
 次のページ、お願いします。資料42枚目には、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの年齢調整死亡率に関する国際比較をお示ししております。日本の大腸がん、子宮頸がん、年齢調整死亡率は相対的に高くなっていること。乳がんは相対的に低いですが、年齢調整罹患率が上昇傾向にあることが示されています。
 資料43枚目には、科学的根拠に基づくがん検診の実施について、検討の視点と対応案を示しています。
 検討の視点として、1つ目、がん検診の分野においても新たな方法が提案されていますが、死亡率減少効果の確認や実施体制の確保に時間を要し過ぎており、科学技術開発の恩恵を十分に享受できない可能性があること。
 2つ目、新たに対策型検診として実施する検診に組み入れるまでのプロセスが不透明かつ煩雑で、開発や検診の取組の意欲がそがれている可能性があること。
 3つ目、統一されたプログラムの下、適格な対象集団を特定し、対象者を個別に勧奨する組織型検診の実現を目指している中で、指針に基づかないがん検診が、十分な検証なしに実施されている点は問題であること。
 4つ目、現に実施中のがん検診についても、がんの疫学的動向も踏まえ、その効果を継続的に評価できるようにする必要があること。
を挙げさせていただきました。
 事務局からの対応案として、1つ目、がん対策としての適切ながん検診実施のために、現在行われている対策型検診の水準を上げ、適格な対象集団への受診勧奨とプログラムの管理・評価を行う組織型検診の構築に向けた議論を深める必要があること。
 2つ目、新たに対策型検診として実施する検診に組み入れるまでのプロセスについて明確化し、検診項目のさらなる適正化が比較的容易になるよう検討すること。
 3つ目、指針に基づいた5つのがん検診以外の検診について、検診が進むような手法を検討してはどうか。特に、指針に基づくがん検診が十分にできており、それ以外のがん検診を実施してみたいという自治体と、検診の効果を検証したい企業や研究者をマッチングするような仕組みについて検討すること。
 4つ目、がん検診を含めた我が国のがん対策の有効性を評価するため、がんのリスク因子、年齢調整罹患率、年齢調整死亡率の諸外国との比較が可能となるよう、これらの年次推移を明らかにできるよう取り組むことを挙げております。
 事務局から以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、皆様から意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 中山構成員。
○中山構成員 中山です。
胃がんの内視鏡検査の導入に関して一番よかったことというのは、マニュアルを整備して、このマニュアルに沿ってやりなさいということを提示したということだったと思います。かなりしっかりとしたルールが決められて、それに沿って行われている。余り外れたことは行われないということで、非常に意味は深かったと思うのです。
 ただ、今、48%の自治体が内視鏡検査を実施しているというのは、中小の自治体では内視鏡検査のキャパシティーがないので、中核市ぐらいまでしかできないということは当時の検討会でも示されています。今もやっているのはそのぐらいまでかなというところで、これからはキャパシティー問題ということが非常に重要になってくると思うのです。そうなってくると、新しい検診を期待する声は大きいのだけれども、地域格差ということが非常に容易に起こり得る。それから、ハイリスク検診ということを考えたりしていくと、検診を提供する人と検診の提供を受けられない人が生じてくるので、その辺りをどうするのかということを引き続き議論していただきたいと思います。
○大内座長 祖父江構成員。
○祖父江構成員 43ページ目の一番最後に、諸外国と比較しろということが書いてありますが、42ページ目のグラフは非常に大きな意味がありまして、単独で見ていると、大腸がんとか子宮頸がんとか、日本はそんなに悪いようには思えないのですけれども、諸外国と比べるとむしろ悪いということが非常によく分かる例だと思います。ですから、諸外国でやっているがん検診に学ぶことが恐らく多いのです。そのことを記述してほしいですね。年齢調整死亡率だけじゃなくて、諸外国でどのような形でスクリーニングされているのかということを学ぶ。
 その1つの回答というか、サゼスチョンがOECDのレポートとして2019年に出ています。日本のがん検診は、この点が悪い。一番悪いのは、ナショナルガイドラインがないからだとなっています。そういうことをきちんと理解して、こういう報告といいますか、まとめの中に取り込んでいくほうが僕はいいと思います。今後、さらに諸外国での仕組み、うまくいっている好事例、日本国内だけじゃなくて、それを取り込んでいく努力をすることが必要だと思います。
 以上です。
○大内座長 祖父江構成員の今のお言葉ですが、OECDの評価も厳しい。海外でのがん検診に関する国際会議等でも、日本について説明すると、よく分からないと言われるわけです。提案の中に何度か出てきていますけれども、organized screeningという言葉ですね。これでないと多分OECDは認めてくれない。要は、制度そのものとしてきちんと考えてやらないと、外国からも評価されないと思います。国民の皆さんを全体的にカバーできるような検診の在り方が基本ですので、それに向けてどうするか。地域・職域のみならず、全体を可視化できるような形で、しかも精度の高い検診を幅広く実施し、死亡率低減に結びつくということが基本かと思いますが、その点がなかなか議論されてこなかったと感じております。
 この議論は極めて重要でして、第4期の基本計画の中に、私としては盛り込みたいと思っています。そのための方向性を皆さんで検討していただければと思っております。
 では、羽鳥構成員、お願いします。
○羽鳥構成員 今の大内先生が言われたことは、第4期で実現していただきたいと思います。
 それに反するようなことで申し訳ないのですけれども、PSA検診はがん対策の委員会では否定的でありますが、その一方で、泌尿器の学会などでは、泌尿器の先生方、泌尿器から出てこられている先生は、PSA検診は大事だということをおっしゃいます。神奈川県は多くの市町村でしているのですけれども、このPSA検診をいわゆるがん検診ではなく、血液の特定健診の
血液付加項目として採用されています。科学的根拠をつくり出すようなことをしているのかというと、そうではないような、ちょっと逃げのような方法でやっているところもあります。
 それから、もう一点、次の第4期に向けて、何回も前から言っていますけれども、膵臓のことを少し真剣にやってほしいなと思います。恐らく数年後にはがん検診の受診率が上がっているということもあるでしょうし、内視鏡検診が上がったということもあるでしょうけれども、膵臓がんによる死亡数、絶対数は、恐らく胃がんの死亡数を超えてしまうだろうということもあるので、そろそろ検診として何ができるかという検討をやっていっていただければと思います。
 その2点をお話ししました。以上です。
○大内座長 ありがとうございます。
 それでは、若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 若尾です。ありがとうございます。
 今、ちょうど42ページがありますが、このデータ、とても衝撃的で、多くの国民、特に女性はこれを知らないと思うのですね。このグラフを見れば、いかに働き盛りの女性特有のがん、つまり子宮頸がんと乳がんの死亡率が下がっていないかということが、よく分かると思います。そして、特に子宮頸がんや乳がんは、切って治ってよかったねというがんではなく、その後のその人の人生に関わる。例えば、妊孕性に関してもそうなのですけれども、若い世代にかかって、それで手術をして助かってよかったというだけではない、死亡率減少だけでは測れないものがあります。
 なので、科学的根拠はとても大切で、そこに死亡率減少効果というのは一理ありますが、先ほども祖父江構成員から諸外国から学ぶという御意見も出てきましたけれども、この死亡率だけを見ても、女性のがん検診がうまくされてこなかったということが分かります。ですので、この科学的根拠に基づくがん検診の実施というところで、今、示していただいている42ページは、本当に多くの国民に見てもらって、多くの都道府県がこれを対策の中に入れ、各市町村がこのがんに対する精密検査の受診率をアップできるような対策に持っていけるように、第4期の中では重点的に項目として挙げていただきたいなと思います。
 つまり、死亡率減少という科学的根拠は重要ですけれども、患者本位のがん医療及び尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築というのも、第3期のがん対策推進基本計画では目標の一つでしたので、女性にとって重要な子宮頸がんや乳がん、それから女性は大腸がんが多かったりして死亡率が上がっているのですけれども、そういう生活の質に対する視点も忘れないでいてほしいなと思います。
 以上になります。
○大内座長 では、井上構成員、お願いします。
○井上構成員 同じようなところの指摘なのですけれども、死亡率というのは国の全体の死亡率として、こうやって比較することが可能になっていながら、ほかの指標については、これまでスライドでさんざんお見せいただいたとおり、比較可能な評価指標というものがなかなか出てきていない、あるいは評価が不十分な現状です。諸外国との比較ができるように何ができるかということを考えますと、先ほど言っていたマイナンバーというものが使われることによって、国全体としての値をデータベースとして整理することができるので、それの前提で、こういう情報はここから持ってきてくっつけておかなければいけないかを考える必要があります。
 今あるもので出せないとか出せるという議論よりは、新しい海外の事例も学びながら、海外でデータを出している国で、どういうデータはどういうデータベースを使って、どこから持ってきて、最終的に指標として出してこられているのかというのをよく調べて、諸外国と比較可能なように、日本の近未来の評価指標の基となるデータベースの構成を考えていったほうがいいのではないかと思っていまして、その辺も少し書き込めるといいのではないかなと思いました。
 以上です。
○大内座長 では、松田構成員。
○松田構成員 松田です。
 これまで座長をはじめ、先生方が御指摘されたとおりだと思います。私は今、諸外国との年齢調整死亡率の比較がようやく出てきたことを、非常にうれしく思います。私たちが今やっている日本のがん検診の位置づけが一体どうなのかということが、ここに如実に現れています。世界的に広く行われている大腸がん、乳がん、子宮頸がん検診における日本の現状を認識すべきです。祖父江構成員が御指摘になったように、諸外国に学ぶ日本の問題点は、まず、受診率が低いことです。受診率が低いといっても、正確な受診率がよく分かりません。加えて、精検受診率が、乳がんを除いてかなり低く、とりわけ大腸がんが低い状況にあるわけです。
 あと、受診率に関して言うと、OECDのお話が先ほど出ましたが、日本の受診率はプログラムデータではなくて、あくまでサーベイデータという位置づけになっています。日本のがん検診が世界からどのように見られていて、どうしないといけないか。進むべき方向性は、大内座長が御指摘になったように、「組織型検診」だということをぜひ今回明記していただきたいと思います。
 そして、指針外の検診ですが、今、5つの検診が指針に則ったがん検診として行われているわけですけれども、指針外の検診に予算的なあるいは人的な資源を割いている場合ではなくて、まずは指針にのっとった検診にぜひ力を入れて、より効果を上げたいと思います。
 以上です。
○大内座長 では、中野構成員、お願いします。
○中野構成員 皆さん、諸外国との比較について、祖父江構成員をはじめ、御発言され私も皆様の御意見に賛同したいと思いますが、単なる比較というよりも、さらに目的をきちんとしていくべきと思う次第でございます。
 それから、ここでは科学的根拠に基づく実施ということです。いろいろ書かれておりますが、対象がん種の見直し、検査項目の見直しは、第4期だけで済む話ではないと思います。中期的なものと長期的に検討すべき内容が分かるような形で書かれると、さらにいいのではないかと思います。
 そして、対応案の3つ目の○ですが、1行目に、検証が進むような手法を検討してはどうかと書かれています。私の理解不足なのですが、5つのがん検診以外の検診について進むような手法を検討するという、この文章どおりでよろしいのでしょうか。その意味をもう一遍事務局にお尋ねしたいと思います。お願いいたします。
○大内座長 事務局で説明できますか。
○がん対策推進官 この点につきましては、上のところの問題意識との比較となりますけれども、結局、対策型検診以外の検診が適切な検証もなく実施されているというところで、その点については、先ほども行政サービスという見方もあるのではないかという御意見もありましたし、必ずしも全てが悪と言い切れるものではないというニュアンスもあるのかなと認識しております。そうであれば、それらが適切に効果をもたらしているのかということを検証するということとセットでやるべきではないかという問題意識からすると、それらをきちんと効果の検証をするということとセットでできるような手法について検討すべきではないかという意味での記載になってございます。
○中野構成員 そこまで聞くと内容が分かります。ありがとうございます。
○大内座長 では、中川構成員。
○中川構成員 ありがとうございます。
 科学的根拠に基づいてがん検診を進める必要があるということは、もう論をまちませんが、その中で、最近では、血液あるいは尿1滴で多くのがん種のリスクが分かるといったこともかなり広まってしまっていて、臨床現場ではかなり混乱もあると思います。どこまでをがん検診と言うのかという議論にもなるのかもしれませんが、がんの早期発見という意味では、ある程度整理が必要なのではないかなという気がします。
 それから、膵がんの問題を羽鳥構成員が御指摘になられたこと、私も全く同感でして、膵がんのウエートががんの臨床現場では非常に高まっていますので、すぐにはいかないかもしれませんが、ここに関しての議論を継続的に進めていただければと思います。
 以上です。
○大内座長 膵がん、よく分かります。何らかの形で盛り込めればいいのですが、がん検診の手法としては確立されていないのですね。そもそも論から言えば、基本的に科学的生化学な、大腸検査もそうですし、あとは多くは画像診断ですね。ですから、今はリキッドバイオプシーとか、いろいろな新たな方法がありますので、どこまでがん検診と称するのかという定義づけも必要なのでしょうけれども、基本的には、この検討会で扱っているのは5つのがん検診についてですので、それについて、まず記載する必要があると思います。今後検討すべき課題の中で、中川先生が言われたことが扱えるかどうかについても検討していただきたいと思います。
 では、福田構成員、お願いします。
○福田構成員 福田でございます。
 このスライドの下のほうの新たな対策型検診を入れるときに、含めるプロセスを明確にし、というのは賛成するところですが、先ほど中山先生からも胃がん検診の件で御指摘ありましたけれども、新たなものをやろうとしたときに、キャパシティーというか、体制とか、これは人もありますし、機械設備もあると思うのですが、そこも一緒に検討されるのだと思います。ぜひそれを盛り込んでいただく必要があるのではないか。
 というのは、これまでも費用対効果という話が出ていますけれども、それぞれの費用対効果を考えるのは、この新たな検診を実施するための費用というのは考えるのですが、そのための設備とか体制とかを一から準備しなければならないとなると、通常考える費用対効果とは別に、その投資的な意味の費用がかかるところの検討も必要になると思いますので、ぜひ組み入れるプロセスの中に新たな体制なり設備が必要かどうかという辺りも加えていただけるといいかなと思いました。
○大内座長 よろしいでしょうか。
 構成員の皆様からいただきました御意見を基に、これから事務局のほうで骨子をまとめて、次回、7月の検討会にお示しできるように準備いたします。また、その過程で、この件について確認作業も入るかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では、議題2に移ります。「子宮頸がん検診におけるHPV検査導入の検討」につきまして、資料2を基に青木参考人から報告をお願いします。
○青木参考人 ただいま御紹介いただきました慶應義塾大学医学部産婦人科の青木でございます。それでは、このスライド下段に示してあります厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)子宮頸がん検診におけるHPV検査導入に向けた実際の運用と課題の検討のための研究、この研究班の研究代表者を務めていることから、この研究の中で検討してきた点を中心に御説明いたします。
 次をお願いしていいですか。まず、現行の子宮頸がん検診の概要をお示ししております。自治体が実施主体となって行われる健康増進事業としての子宮頸がん検診の概要であります。この図にありますように、医師が直視下で専用の器具を使って、子宮頸部より擦過法によって細胞を採取し、細胞診標本を作成後、顕微鏡下でスクリーニングを行い、異常細胞が認められれば要精検となります。陽性です。精密検査としては、コルポスコープ下の組織診が行われます。それが確定診断となるわけです。
 このように、細胞診上で異常細胞が見つかりますとコルポスコピーが行われ、異常所見の部分からの組織診が行われます。そして、病理組織学的に診断がCIN1あるいはCIN2であった場合には、原則として経過観察。そして、CIN3や浸潤がんが見つかれば治療に進むというのが子宮頸がん検診の主たる流れということになります。前がん状態に位置づけられるCIN(子宮頸部上皮内病変)は、HPVの感染によって引き起こされることが分かっていますので、今回は子宮頸がん検診へのHPV検査の導入について検討いたしました。
 はい。まず、HPVについて説明いたします。がん検診で見つかるHPV検査陽性は、そのほとんどが一過性の感染であることが分かっています。図に示しましたように、感染しても急速に消退し、ピンクの部分です。その一部が持続感染を経てCINに進展することが示されています。この図によれば、HPV感染は24か月で8割が消失してしまうことを示しています。
 はい。CINの発生には、HPVの持続感染が重要であると言われています。この図は、細胞診が陰性だけれども、HPVが持続感染している者とHPV未感染者を比較したものです。細胞診陰性でHPV持続感染者からCIN3以上が発生する確率は、感染確認から6年で32%になると示されています。一方で、HPVが陰性ならば、そのほとんどが発生しません。したがって、HPVの多くは消失するが、持続感染者からCINが発生し、その一部が浸潤がんに移行するということになります。
 はい。次に、2020年に発出されました有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版の内容について、ごくごく簡単に示しておきたいと思います。このガイドラインでは、細胞診の単独法、HPV検査単独法、そして両者の併用法の3つの検診手法について、年齢と受診間隔、さらに推奨度が示されています。現行の細胞診単独法が20歳以上に推奨されているのに対して、HPV検査を含むがん検診については、30歳以上で推奨されていることに注意が必要です。併用法だけ推奨度がCとなっているのは、浸潤がん減少効果については大差はないものの、特に陽性者数を不利益の指標とした場合に、細胞診単独法やHPV検査単独法よりも併用法で明らかに大きいために、併用法はCと判定されています。
 HPV検査陽性者の大半は、その時点では病変を有さず、そのごく一部が数年後に有病者となり得るため、これらのリスク保持者の長期間の追跡管理が検診の効果に大きく影響することから、HPV検査を用いた検診は、実現可能性のあるアルゴリズムの構築と検診の精度管理を含めて、適切な検診の運用ができる場合にのみ実施すべきであるということが述べられています。
 はい。このスライドは、3つの検診手法の長所/短所をまとめてみました。
 細胞診の長所は、特異度がHPV検査より高いこと。一方で、感度が低いことが短所として挙げられます。したがって、検診間隔を空けることが難しくなります。
 HPV検査の場合は、長所としては感度が高いこと。検診間隔を5年程度にできること。一方で、特異度は低下するので、偽陽性者が増えることが短所となります。
 そして、一番下段の併用法では、最も偽陽性率が大きいことは先ほど述べたとおりです。さらに、検診のアルゴリズムが複雑になることが短所として挙げられます。そのために、新たな体制整備あるいは人員確保が必要ということになるわけです。
 はい。ここで、がん検診のアルゴリズムについて説明しておきます。
 がん検診では、有効性の証明された検診手法の選択も大切だが、検診結果ごとにどのような検査(精密検査)をいつ行うかなどを定めることが必要で、これを定めたものを「アルゴリズム」と言っています。
 これを遵守することで、がん検診の目的(死亡率減少/罹患率減少)を達成することができると考えられます。言い換えれば、幾らよい検診手法があっても、その後の精密検査から確定診断、治療に至るまで適切に行われないと、がん検診の効果が得られないということになるわけです。
 したがいまして、がん検診の受診者、提供者を含めて、現状で実現性のあるアルゴリズムを定めることが必要になります。
 はい。班研究では、主として有効性の評価研究として行われた細胞診単独法、HPV検査単独法、HPV検査/細胞診併用法、それぞれのアルゴリズムについて、要精検の定義、精密検査の内容、リスク保持者、これはHPV陽性/細胞診陰性のことを指しますが、これらの追跡管理方法などを検討いたしました。
 はい。世界的に見ますと、有効性の評価研究で用いられたアルゴリズムであっても、多種多様なアルゴリズムが報告されており、研究班では、これらのアルゴリズムのパターンについて整理いたしました。その結果は、このスライドのとおりでありまして、現行の細胞診は3つのパターン、HPV単独法も3つ、併用法は2つのパターンに分類されました。今回は、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」で示された結果より、HPV検査を用いた検診のうち、推奨度AのHPV検査単独法によるアルゴリズムを例示することといたします。併用法については、国のプログラム、いわゆるナショナルプログラムとして採用されている国は、今回検索した範囲ではありませんでした。
 なお、HPV単独法は3つのパターンに分けられますが、1つは、HPV陽性者に全例コルポ・組織診を行うもので、研究のみです。残りの2つのパターンは、HPV検陽性者に細胞診でトリアージを行う方法と、HPV陽性を16・18型陽性と、それ以外とに分けるということがございまして、それぞれ精密検査の方法を変えるやり方で、アルゴリズムより複雑になります。オーストラリアで採用されているものであります。
 HPV検査を用いた方法は、いずれにしてもHPV陽性だが細胞診陰性、いわゆるリスク保持者のマネジメントがかなめになってまいります。
 はい。このスライドは、複雑なアルゴリズムを分かりやすくするために、アルゴリズムを構成する精密検査の種類について説明するために作成したスライドであります。このスライドには、実際に国のプログラムとして動き出している英国とオランダのHPV単独法によるアルゴリズムを例示しておきます。
 イギリスでは、HPV検査の後、陽性者は直ちに細胞診によるトリアージ精検が行われ、陽性であれば確定診断としてコルポ・組織診が行われ、陰性であれば12か月後にHPV検査を再検、陽性であれば細胞診、陰性であればさらに12か月後にHPV検査を行うというものであります。右側のオランダの場合は、HPV検査が陽性であれば、直ちに細胞診によってトリアージ精検が行われ、陽性であればコルポによる確定精検、陰性であれば6か月後の細胞診が追跡精検として行われます。
 この両者の違いは、ブルーで示しました追跡精検の内容であります。イギリスは、HPV検査が繰り返され、HPVの持続感染検出に軸足を置いています。オランダは、追跡精検として細胞診が行われ、HPV感染の結果生じる細胞の形態的変化を検出することに軸足を置いているというわけであります。
 はい。このスライドには、追跡精検としての細胞診と、HPV検査の長所/短所を示してみました。
 細胞診は、現在のインフラが使えること。ASC-US以上はコルポ診・組織診などで、判定結果に対する取扱いが明確であります。短所としては、診療で行われる細胞診、例えばCINの経過観察等でございますが、これとの違いが現場で誤認されやすい。初回検診と追跡精検の方法が異なるので、受診者を明確に区別する必要があること。HPV検査より感度が低い等々であります。
 一方、HPV検査の長所は、HPVの持続感染によって病変が発生するというエビデンスを論拠としていること。検査結果に対する取扱いが、初回検診と同じ方法なので理解しやすいかもしれません。追跡精検が陽性であれば細胞診、陰性であれば次回検診という具合であります。精検手法として、細胞診より感度が高いことも長所として考えられます。短所は、受診者を含む検診関係者のアルゴリズムの理解が必要なこと。HPV陽性/細胞診陰性、すなわちリスク保持者が増加すること。HPV陽性者の経過観察の方法についてコンセンサスが必要なこと。受診者への説明が複雑になること。保険診療としては現状ではできないことなどが挙げられます。
 はい。リスク保持者、すなわちHPV陽性かつ細胞診陰性の管理方法についての課題についてまとめてみました。
 HPV検診では、HPV検査が「病変」ではなく「HPV感染」を検出する検査であるため、HPV陽性者の多くは、トリアージ精検として行う細胞診検査では異常を認めず、その時点では病変を有さないリスク保持者、すなわちHPV陽性/細胞診陰性であります。したがいまして、このHPV陽性/細胞診陰性者に対する精密検査には、直ちにコルポ診・組織診はふさわしくなく、長期的な経過観察による追跡精検の過程での病変の発見が大切となります。実際、我が国の研究におけるHPV検診でのHPV陽性/細胞診陰性者の割合は5~10%程度と報告されています。この数字は、現行、行われています細胞診単独法、細胞診では、ASC-US以上が要精検となりますが、この要精検率約2%と比べて、かなり大きいことになります。
 はい。実際にアルゴリズムを運用する際の問題点を指摘した論文があります。このスライドには、カナダ・モントリオールでのHPV単独法による検診のアルゴリズムを示してあります。この報告によれば、そもそもHPV検査ではなくて細胞診が行われてしまった者が受診者の9.3%、マル1のところでございます。そして、その左下のトリアージ精検としての細胞診を行わずに放置されてしまったという者が要精検者の54.5%、左脇のマル2であります。トリアージ精検陽性だが、確定精検としてのコルポ・組織診が行われずに放置された者は72.6%、右側のマル3であります。
 このように、このアルゴリズム、プロトコルを遵守することは非常に難しいということが示されておりまして、このプロトコルについて、医療従事者に持続的な教育が必要であると筆者は結論づけているということでございます。
 次のスライド、お願いします。このスライドには、アルゴリズムの運用に関連する課題を示しています。
 HPV検査を含む検診は30歳以上が対象です。そして、20歳から30歳未満は細胞診であります。したがいまして、30歳未満と30歳以上によって、検診手法と次の検診の時期が変わってくるわけでありますので、受診勧奨等は可能かという問題がございます。
 検査結果によって次の精検の時期が異なってきます。そうしますと、結果把握に基づく精検受診勧奨は可能かという問題があります。
 HPV陽性者に対して、トリアージ精検としての細胞診や次のHPV検査を追跡精検として行う場合、現行では厳密な意味では保険適用ではないわけであります。
 したがいまして、精度管理のしやすいアルゴリズムであるか否か。そして、個々の受診者の経時的な結果の把握と管理が必要であること。すなわち、データの収集管理体制の確立、それに関わる人員の確保ということが重要になってくると考えております。
 はい。今、考えておりますHPV検査導入までのスケジュールと、研究班と厚労省の役割分担を考えてみました。あくまでも案ということでございます。
 研究班では、2023年度までにエビデンスに関する調査検討を行い、HPV検査キットの要件、検体の取扱い等の基準、そして診断までのアルゴリズムの提案、検診結果の管理方法、運用体制の提案などを計画してまいりたいと考えています。その間、厚労省のほうでは、保険適用の問題等について検討いただきたいと思っています。
 2023年度以降は、導入の準備段階と位置づけています。研究班では、検診機関・医療機関を含めた体制整備、検診の精度管理のためのモニタリングの準備、チェックリスト案の提案などを行い、最終的に医療従事者及び検診対象者への情報発信の準備は厚労省にお願いしたいところであります。
 はい。最後にまとめてまいりたいと思います。
 (1)HPV検査を用いた検診のアルゴリズム内の未確定の部分がまだあります。諸外国の有効性評価に関する研究でHPV検査陽性者に対する対応はまちまちであります。追跡精検として細胞診を用いるのか、HPV検査を用いるのかは、まだ決めることができていません。日本の現状を踏まえて選択するための根拠について、現在、調査検討中であります。
 (2)HPV検査を用いた検診を運用する際の主な課題としては、複雑化するアルゴリズムに関連する課題。体制整備あるいはデータ収集管理体制の確立が必要であります。具体的には、検診対象者の確定、精検対象者の結果の経時的把握、検診受診勧奨、精検受診勧奨、そして、それぞれの再勧奨。トリアージ精検、追跡精検は保険適用の範囲にするのか否か。
 そして、2つの方法、すなわち30歳未満と30歳以上のそれぞれ細胞診とHPV検診、2つの方法によるアルゴリズムの併存を管理できるのか。複雑なアルゴリズムに対応するため、検診関係者への持続的教育、受診者への適切な説明が必要であります。その他、細かいことにはなりますが、HPV検査キットの選定要件、あるいは細胞診について液状化検体法導入の可否なども課題となってまいります。
 HPV検査を子宮頸がん検診へ導入しようと考えた場合には、この(1)の未確定部分を決め、そして(2)の課題などに対する検討と対策が必要と考えられます。
 以上です。御清聴ありがとうございました。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、ただいまの御説明に関しまして、構成員の方から意見をいただきます。いかがでしょうか。
 中山構成員。
○中山構成員 医療側がどういう診療体制で、こういうリスクを帯びた人たちに対応していくのかを決めるというルールづくりという研究班という位置づけなのですけれども、実際上、HPVに慢性感染している方がCIN、腫瘍性病変の発生がじわじわと長期間にわたって起こっていくわけです。その場合に追跡精検というのが非常に重要なわけですけれども、一方で、あなたはこういうリスクが高いと言われて、本当にちゃんと医療機関の言うとおりに受診が続けられるのかどうか。
 その辺のコンプライアンスの問題というのは、海外でも非常に問題視されている部分なのですけれども、この辺が分からない状況で、ルールだけ決まったら、すぐ導入という話になるのかどうかというところなのですけれども、この辺についてはどうお考えになられますでしょうか。
○青木参考人 今、中山構成員が言われたとおりでありまして、追跡精検と称しましたけれども、そこの部分を適切に行うということが大変大事なポイントになります。したがいまして、これはそれ以前の追跡精検がどういう結果であったのかをきちんと把握して、まとめの真ん中ぐらいに書きましたけれども、そういう意味での精検受診勧奨を行うことと、来なければ再勧奨も行うという検診の一環として捉えていく必要があろうかと思っています。そのことを受診者も検診の提供者も十分理解していないといけないなと今は考えています。大変大事な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。
○大内座長 若尾構成員。
○若尾構成員 若尾です。
 今、中山構成員と青木先生がおっしゃったことと本当に丸かぶりするのですが、専門家がいろいろなエビデンスに基づいてルールをつくってくださることは非常にありがたいし、科学的根拠に基づいたものを提案してくれるということは非常にありがたいのですけれども、受ける女性にしてみると、受診間隔が短いというのは非常にハードルが高いのですね。その上に、私たちはがん教育を受けてこなかったので、がん検診受診というもの、それから、そもそも子宮頸がんはどうしてなるのかということの正しい情報を持っていないことが多いと思います。
 ですので、女性にとって受診間隔の延長、つまりHPV検査をすると、それだけで受診間隔が5年になるんだよ。だけれども、その後のいろいろなアルゴリズムが複雑になるんだよということを知っている女性はほとんどいないのではないかなと思うわけです。そこで、今、検討していただいていることを、今後、女性の子宮頸がん検診をするに当たって、日本でおなじみの子宮頸がんの細胞診とHPVというウイルスに対する検査というものの、単独もそうですけれども、併用を含めた、がん教育になってしまうのかもしれないのですが、とても重要な問題なので、早期から広く国民に啓発していただきたいなということを強く思いました。
 そして、私たちが受けるわけですので、どの検診を最終的に取り入れられるか分かりませんけれども、どの検診を取り入れるにしても、実際に受診する女性の意見は最大限尊重してもらいたいなということを私は強く思いますので、それをここで述べさせていただきました。
 以上です。
○青木参考人 がん教育という観点でしょうか。そういった点は全く同感でありますので、そういう言葉で括っていいかどうか分かりませんが。
○若尾構成員 がん教育と、受ける立場の女性の、しかも働き盛り、女盛りに子宮頸がんというもののリスクに立ち向かうわけですけれども、そこに対する深い配慮というものも必要ですので、そこもしっかりと配慮した上でお願いしたいなと思います。
○青木参考人 そういったファクターに関しても、このアルゴリズムを決定するという段階で十分配慮しなければいけないと認識しています。
 それから、確かに間が空くというのは非常に大切なことで、受診者の90%強は間が空けられるという大きなメリットがありますので、今は細かい点ばかり御説明して、そこにフォーカスが当たってしまいましたけれども、HPVが陰性であれば5年ぐらい空けられて、その方々は9割。今はそういう方も2年置きということになっていますので、そういった最大のメリットは生かしてまいりたいと思っています。ありがとうございました。
○大内座長 では、松田構成員。
○松田構成員 松田です。青木先生、ありがとうございました。
 先生にはHPV単独検診について御説明いただきました。たとえアルゴリズムが複雑であっても、そのやり方が正しいということになれば、私は、そのアルゴリズムで導入すべきだと思っております。その一方で、できるだけ検診体制は単純であったほうがもちろん分かりやすいです。20代は細胞診単独で、30歳以上はHPVが入ってくると、それでも分かれますね。検診間隔も異なります。30歳以上のHPV単独検診で言うと、トリアージ精検があって、次に追跡精検というものがあるのですが、仮に追跡精検を経過観察という扱いにすると一体どうなるのでしょうか。精検を受ける人が相当脱落するという懸念があるのですが、もう少しアルゴリズムが単純化される可能性というのはあるのでしょうか。
○青木参考人 アルゴリズムを単純化するという先生のお考えには僕も同感ですので、なるべく単純にしたい。しかし、実はCINになってしまった人も多くは経過観察になりますので、全て経過観察という医療の中に入ってしまうことになろうかと思います。そうしますと、次回の受診勧奨をどうするのかといった大きな問題が出てまいります。ですので、実は経過観察といっても、その内容に関して経時的な結果の把握ということに含めないと、次回の受診勧奨ができないという問題も生じてまいります。その辺りも含めて、今、文献調査等々を行っていますので、何らかのいいアイデアを出せるものなら出してまいりたいと考えているところです。
 以上です。
○松田構成員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
○大内座長 祖父江構成員、お願いします。
○祖父江構成員 前にも聞いたことがあることなのですが、14ページ目で、HPV+細胞診陰性者の割合が5~10%、細胞診単独、ASC-US以上で陽性とした場合に2%ですと、少なくともこの数字に基づいて言うと、細胞診単独での要精検率は2%で、HPV単独はニアリーイコール10%、併用の場合は12%と思ったらいいのですか。
○青木参考人 併用の場合も、HPV+と細胞診陰性者というのが、今ここに示したように精検受診者の10%程度でありますから、ほとんど変わりません。要するに、先生がおっしゃるように、細胞診陽性者がこれに加わりますので、12~13%が併用の場合の要精検ということになります。
○祖父江構成員 そうすると、最初のガイドラインで併用のみがCになっていて、HPV単独がAであるという理由は、この要精検率の違いでは説明できないということですか。
○青木参考人 偽陽性者が増えるということです。すなわち、不利益が増えてしまうということになります。
○祖父江構成員 偽陽性者というのは、ほとんど要精検と同じですけれどもね。
○青木参考人 ここでは、HPV+/細胞診陰性と書いてあります。これは、トリアージ精検の結果で言っているわけですね。要精検率は、細胞診単独だと少し落ちることになります。ここで示した10%という数字は、医療の中で経過観察をしなければならない人が出てくるという数字を示しているということになります。
○祖父江構成員 HPV単独の場合の要精検率はニアリーイコールでもないのですか。
○青木参考人 片方陰性、片方陽性であれば要精検というふうに併用の場合はなってしまいますので、ベースラインの要精検率は高くなると思います。
○祖父江構成員 ガイドラインのときは、研究ベースのデータで決めたのでしょうから、このデータとはちょっと違うのでしょうけれども、日本の現状でのこういうデータも加味してガイドラインの推奨レベルを決めるべきなのかなとちょっと思っていたので、質問しました。
 以上です。
○大内座長 では、若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 ありがとうございます。
 今、祖父江構成員がおっしゃった、このページ、気になっているのですけれども、併用すると偽陽性者率が最も高いという表現をされたのですが、数字で言うとどのくらいの違いが出てくるのか分かりますか。
○青木参考人 これは、ガイドラインそのものに記載があるのですけれども、今こういう場ですので正確な数字をすぐに申し上げられないので申し訳ないのですが。
○若尾構成員 そんなにすごく正確でなくてもいいのですが。
○青木参考人 倍ということはなかったかなと思っています。HPV単独ですと、細胞診に比べて1000人当たり偽陽性は42名増加することになります。これはガイドラインの数字です。併用だと、1000人当たり101人増加です。その意味で不利益が最大になるということで評価されています。
○若尾構成員 分かりました。「最も」とか、日本語の印象はすごくファジーなので、できるだけ数字でお示しいただけると分かりやすいなと思ったので、お尋ねしました。ありがとうございます。
○大内座長 中山構成員。
○中山構成員 ガイドラインという言葉が出たので、御説明しますと、ここに示されている国内のデータは、皆、ガイドラインで評価した後に出てきた国内のデータですので、こういうものを本来は引用すべきなのですけれども、ガイドラインを評価するときにまだ出ていなかったということなのです。だから、併用法でやったら、足し合わせたらおおむね同じぐらいじゃないのという形ですけれども、恐らくそのぐらいで、10%に2%を足して12%ぐらいの要精検率になる可能性があるということでございます。
○大内座長 ありがとうございました。
 よろしいでしょうか。では、2の議題については、これにて終了いたします。
 次に、議案第3「がん検診のアクセシビリティ向上策等の実証事業の紹介」を、本日、参考人として来られております山本精一郎先生のほうから御説明願います。
○山本参考人 山本です。よろしくお願いします。今日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。大規模実証事業については、幾人かの構成員の先生方には既に御説明しているので重複するところがあると思いますが、御了承ください。
 次、お願いします。
 その次、お願いします。大規模実証事業、この後、全体の組織の構成をお示ししますけれども、我々が取り組んできたがん検診受診率向上のノウハウを集約して、がん検診受診率及び精検受診率の向上の方法を開発し、自治体や保険者にて実証を行い、全国に普及するという事業であります。
 実証事業チームとしては、日本対がん協会と、我々国立がん研究センターの受診率向上をやっていたところと、それから民間事業者として受診率向上に取り組んでこられたキャンサースキャンさんと、健保組合の受診率向上を目指してお仕事されているプロセシングさんというところとチームを組みまして、これまでのノウハウを確認し、新たな方法を開発して、その効果を調べ、それを広げるという事業となっています。基本的には、自治体の方がされる受診率向上対策のお手伝いをするという形になっています。
 もともとの公募要領に、真ん中のところにあるマル1のナッジ理論やソーシャル・マーケティング手法等を用いた効果的な勧奨方法、マル2の特定健診とがん検診の同時実施や市区町村等の境界を越えて受診できるがん検診など、受診者が受けやすい方法の活用、それから、マル5の新型コロナ対策というものが載っていたことなのですけれども、それに加えて、マル3、自治体によるがん検診実施手順のベストプラクティスの共有、マル4、これまでに構築したネットワークを利用し、開発した方法の普及というものを新たに加えて、この実証事業としています。
 具体的には、R2年度はほとんど終わりの時期に採択されましたので、余りできなかったのですけれども、昨年度は、後で自治体の数が出ますけれども、幾つかの自治体、それから、健保組合さんと組んで、彼らと一緒に実証率向上に取り組んできました。我々は、もともと受診勧奨について主に取り組んできたのですけれども、その中でいろいろなことが分かってきており、勧奨の方法を変えるだけでは不十分だということで、それ以外の検診実施体制とかについても、これまでのノウハウをいろいろお伝えしながらやってまいりました。できるだけ県の方にも入っていただいて、その後の横展開ができるような形でやってまいりました。
 今年度で終了ということなので、今年度の受診率自体の結果は活用できないかもしれませんけれども、今年度やったことで分かったことも含めて、最終的な報告書なり、それからベストプラクティスのパッケージやマニュアルのようなものの作成を、この実証事業のアウトプットとして出していきたいと思っています。
 次のスライドをお願いします。この実証事業は、厚生労働省が委託してPwCさんが運営事業者として、実際にはア、イ、ウ、エという4つの事業があるのですが、その中のがん検診の受診率向上を行うというものであります。先ほど、下の図については御説明しましたので、次に移っていただけますでしょうか。
 R3の右のほうを見ていただきたいのですけれども、この青く示したところが今日御報告させていただくところです。厚生労働省調査の分析、好事例の紹介、自治体アンケート調査というものを基に、ベストプラクティスやチェックリストの作成を行っていきたいと思っております。本来ならばいろいろな自治体に行ってヒアリングを行いたいところだったのですけれども、コロナの影響でオンラインになってしまったのですけれども、我々が知ることのできた好事例をいろいろ聞いたりしているところであります。
 それから、実際に自治体や健保さんと組んで行ってきた受診率向上策としては、検診ガイドの個別配布。通常は各戸配布、家ごとに配布するのですけれども、それを個人配布に変えるとどうなるのかということとか、勧奨資材、再勧奨資材の利用によって受診率がどれぐらい上がるのか。複数のがん検診を一緒に受けたほうが、受診率が上がるということがありますから、何らか複数がん検診を推奨・勧奨できる方法はないかということとか、ウェブ申込みを利用することによって新たな掘り起こしなり、複数がん検診の勧奨ができやすいのではないかとか。それから、セット受診、これも複数受診に関係するのですけれども、セットでお勧めするといいのではないかとか。
 それから、すみません、これは今回報告がないのですけれども、日付指定することによって、この日に行かなくてはいけないと御本人が思うことによって、日付指定というのはこちら側から日付を指定するということなのですけれども、そのような方法のほうが受診率は上がるのではないかということとか、SNSの利用。
 それから、精密検査受診についても勧奨資材を作成したり、コロナ下での受診勧奨資材を作成。
 それから、未申込者。多くの自治体では、年度の初め、もしくは前年度の終わりに検診を受ける人の申込みを募るところが多いのですけれども、そのときに申し込まなかった人に年度途中で勧奨するとどうなるのか。
 それから、社保から国保へ切り替える時期に、スムーズに受診勧奨、自治体での受診につなげられるようなことをすればどうかといったことで、最後の社保の件は、現在データを自治体からいただくところで、まだ結果が出ていないのですけれども、このようなことについて取り組んでまいりまして、昨年度は20市町村2健保組合と一緒にやってまいりまして今年度も10市町村と8健保組合と進めているところであります。
 次、お願いします。最初のベストプラクティス・パッケージ、チェックリスト作成の取組ということです。先ほど、どなたか構成員の方からもお話があったのですけれども、これまでの取組をさらに進めていくということでは、それだけでは足りないだろうと思っておりまして、実際、市区町村の受診率を見ると、すごく高いところもあるのですが、めちゃくちゃ低いところもあって、何でこんなに低いんだろうとか、何でこんなに差があるんだろう。我々と一緒にやっていると、ちゃんとやっているように見えるんだけれども、全然低いところがあったりして、もっと何か大きなものを見落としているのではないかという思いが、ずっとやっている中で我々にもありました。
 なので、もうちょっと根本的なところから何か探すことができないかということで、厚生労働省のがん・疾病対策課さんが毎年行われている「市区町村におけるがん検診の実施状況調査」というものと「市町村がん検診受診率」も報告されているので、それと年度を合わせて突合することによって、これは1700の自治体全部についてのデータがある、すばらしい調査なので、その2つの調査をくっつけることによって、受診率の高い自治体とはどういうところなのかを分析しようということを行いました。
 これは大腸がんについての解析結果なのですけれども、もともとこのような目的のために取られたデータではないので、必ずしもきれいな結果が出ているわけではないのですが、例えば特定健診と同時受診が全員可という自治体は、全員不可の自治体に比べて6%、受診率が平均的に高いとか、全員に個別勧奨している自治体のほうが4%平均的に高いとか、集団検診について、定員がない自治体は定員がある自治体に比べて2.4%高いとか。これは、いわゆる統計的に有意なものなのですけれども、集団検診について、全員費用負担がない自治体は、全員費用負担ありの自治体にくらべて3%高い。個別検診についても、どこか1か所に電話をかければいいということをやっている自治体、余りないですけれども、そこのほうが2.7%高いとか、個別検診について、予約が必要な自治体のほうが3.9%高いといった結果が出ました。
 これは乳がんについてもほぼ同じであったので、どのがんについてもある程度言えることなのではないかと思うのですけれども、基本的には人口規模が違うとか、都会とそうじゃないところで検診の提供の仕方が大分違っているので、一概には言えないのですけれども、平均的にこのぐらいの差が出るということがあるので、こういう非常に基本的な情報からお伝えしていく。このデータだと、きっちりパーセントも出ているので利用できるかなと思っているのですが、受診率に特化した調査ではありませんでしたので、我々がいいと思っているような実績があるような項目も含めた調査を別途企画して、現在、調査を行っているところです。
 次のページ、お願いできますでしょうか。これがその調査項目で、昨年度の最後、3月から今年度にかけて、今の厚生労働省さんの調査の項目と一部重複するところもあるのですけれども、受診率に特に関係しそうな項目です。特に、特定健診の受診率が高いところはがん検診も高いという傾向がありますので、特定健診についての体制も含める形で調査を行っておりまして、回収割合がまだ低いところがあります。ちょっと延長して、5月いっぱいぐらいで集めまして、まず、横断的な集計を行った後に、昨年度の検診受診率の結果が出たところで突合して、先ほどの解析をより進めた解析を行いまして、最終的な報告書というか、マニュアルに含めたいと考えています。
 次、お願いいたします。うまくいっているところに聞くのが大事だろうということで、好事例として、これは例えば複数受診についてなのですけれども、左側に示しましたのは東京都のA区。ここは受診率が非常に高いところではあるのですけれども、男性では平均2.4、女性では2.6種類のがん検診を受けていらっしゃるということで、高受診率につながっているようです。左側で、乳がん検診を受けている方の中で大腸がん検診を受けた人の割合を出しておりまして、2020年が74.3%と非常に高い割合で大腸がん検診も受けていらっしゃるということになっています。子宮頸がん検診についても、子宮頸がん検診を受けた中で大腸がん検診を受けた人が2020年は74.9%と、かなり高い、一緒に受けていらっしゃる。
 これは同時に受診とは限らなくて、乳がん検診を受けた中で、同じ医療機関で検診を受けている人がその下の表になっております。大腸がん検診、子宮頸がん検診も6割ぐらいということで、乳がん検診、子宮頸がん検診をやっている婦人科中心の病院で、大腸がん検診をやっていないところもあるので、その場合はほかの病院に行って受けないといけないということになりますので、多少下がっておりますけれども、右のほうの胃がんとかで見ると、9割近い方が同じ病院で受けていらっしゃるということが分かりました。
 それに比べて右側の表は他県の例なのですけれども、同じような集計をしたところ、子宮頸がん検診を受けた中で大腸がん検診を受けている人が、これは病院ごとに示しているのですが、一番上の病院では19.6%、次が13.4、16.3、12と、1割強しか受けていらっしゃらない。真ん中の、うち同一の場所で受診というのは0となっていますけれども、真ん中の2つは産婦人科なので、大腸がん検診はもともと提供されていなかったのですけれども、このように提供機会が違っている。
 あるいは、一番上の市民病院と一番下の病院は大腸がん検診を提供もしているのですけれども、1割、2割ぐらいしか受けていないようなことになっておりまして、乳がんでも同じです。同じ病院で受けている人は一番右に出ているのですけれども、1%とか4%ぐらいしか受けていないということで、東京都と余りにも違うということがあります。これは集計の仕方は同じで、その年に受けた人のリストをいただいて、その中で同じ病院で受けた人、同じ年に受けた人を調べているので、全く同じ解析をしているのですけれども、このように違う。
 もちろん、東京だと病院が多いということもあるのですけれども、それ以外に、実際に受診している東京都A区の幾つかのクリニック、中規模の検診をたくさん提供しているところにお伺いしたところ、右の下に書きましたが、受付時に複数受診の勧奨をしている。つまり、この検診も受けませんかということを言っているとか、かかりつけ医なので、受診や受療の際にがん検診の勧奨をしている。すなわち、今年、これを受けていないから、これも受けたほうがいいのではないかということをされている。区の受診券がシールタイプになっているので、それがいいのではないか。これは、シールだと何でいいのかというのを現在検討しているところなのですけれどもね。
 このように医療機関にて複数受診を勧奨するようにお願いするとか、提供していない検診についても受診勧奨できるようなチラシなどを置くということが有効かもしれないということで、この右のほうの自治体で、婦人科系で大腸がん検診を提供していないところの医療機関に、新たに大腸がん検診をやってもらうことは難しかったのですけれども、大腸がん検診もあなたは対象ですよというチラシを置かせていただきました。ただ、そのチラシで受診率が高くなったかどうかということは調べられないので、効果がどのぐらいあったかということはちょっと分からないのですけれども、そういう取組も行ってみたというところであります。
 次のスライド、お願いします。これは先ほど言いました、ネットによる集団検診の申込み、京都府についてのデータなのですけれども、それをすることによって複数受診の勧奨ができないか、あるいは新規受診者の開拓ができないかということを示した表になっています。
 左側の図を見ていただくと、2020年度、ウェブ予約で1.6個のがん検診を受けられていた。ウェブ予約以外では1.5個ということで、余り変わらなかったわけです。女性についても1.9と1.8ということで、0.1多いということですけれども、誤差範囲だと思います。
 それで、ウェブの申込みの画面に複数受診を勧奨するような文言を入れたのですけれども、それが2021年度の結果で、ウェブ予約は1.5、ウェブ予約以外は1.6。下の女性でも2.0、1.9、ほぼ変わらない、効果は余りなかったという結果でした。
 京都府は、府で一括してウェブ予約のシステムを利用できるようになっておりまして、がん検診以外でも、府が行っているいろいろな予約について市区町村が利用できるようになっているのですけれども、健康とかがん検診によらず、全ての市区町村の申込みができるようになっているので、画面の融通が余り利かないということがあって、そういう意味でうまく複数受診を勧奨できなかったので、今年はもう一回画面を変えて試しているところであります。
 それに対して、右側は同じところなのですけれども、ウェブ申込み以外とウェブ申込みで、黄色で示したところですけれども、新規の方の割合がどう違うのかというのを見たものであります。最初の胃がんについては人数が少なくて、ここで物を言うことはよくないのですけれども、例えば、ウェブ申込み以外では新規の方の割合が22.4%なのに対して、ウェブ申込みでは60%ということになっています。胃がんについては人数が少ないのですけれども、隣の大腸がんだともっと人数が多いのですが、そこでも11.1%と29.8%ということで、3倍近く新規の割合が多い。肺がんについても3倍ぐらい新規の割合が多い。乳がん、子宮頸がんについても新規の割合が多い。
 2021年については、さらに新規の方が多くなっているということで、新しい方法というか、ウェブ申込みによって新規の方の開拓ができるということはそうだろうということがあります。
 ただ、この数字を見ていただくと、ウェブ申込みの人の数が全然少ないので、周知が足りないということがあると思いますので、ウェブ申込みもやっていますよということをいかに周知していくかということが非常に重要な課題と考えています。実際、周知の機会というのも、どこの自治体も広報紙というものを毎月発行しているので、その中でがん検診についてのページというのが、毎月、もしくは何か月に1回もらえるみたいなので、そこにこのQRコードを入れるとか、そういうこともやっているのですけれども、自治体の広報を必ずしもみんなが見るというか、見ない人も多いと思うのですけれども、なかなか周知が難しいということはあるので、周知方法をいろいろ検討していくことが引き続き大事かなと思っています。
 それから、ウェブ申込みをすると、eメールとか電話番号の情報が利用できるようになりますので、その人たちに対してショートメールを送ったり、来年度の勧奨のメールを送ったりすることもできるということで、さらに利用価値がある、利用可能性がある方法だと思っております。ただ、ウェブ申込みをするのに、1つの自治体で契約するのはかなりお金がかかるということがあったりすると思いますので、京都府のように県で一括して契約するなり、そういうウェブ申込みができるような方法を安く提供できるというのが1つ課題かなと考えています。
 次のスライド、お願いします。これは、オプトイン・タイプとセット受診勧奨を比較したものですけれども、京都府の別の市区町村では左側の申込書を使っていました。すなわち、その年にその方が受けられる検診について、御本人に○をつけてくださいということで申込みをしてもらうものです。
 これだと、対象者の方は検診というのは自分で選ぶものだという感じになってしまうのですけれども、実際、厚労省さんによって、先ほどから議論がありますように、推奨するがん検診というものがありますから、これはぜひ市区町村としては受けてくださいということで、右のほう、R3は社保の方向けの案内なのですけれども、女性のがん検診フルコース+肝炎対策があなたにとってお勧めですよという書きぶりをしまして、これを受けることが推奨されているのですということが分かるようにした上で、その中で受けない、受けたくないというものについては×をつけてくださいという方法を取りました。
 これは単純に言うと、オプトイン、すなわち○をつけるタイプと、オプトアウト、○を外すタイプ、受けないものを外すタイプと思われるかもしれませんけれども、自治体の方、我々もそうなのですけれども、オプトアウト・タイプをするときに非常に気になっていたのは、本人が知らないうちに全部受けることになっちゃって、こんなはずじゃなかったということになってはいけないということで、今までのやり方というか、申込みと全然違うスタイルに変えて、まず違っていますよとしたり、このようにオプトアウトではなくてセット受診という形でお勧めするということで、自治体の方とかなり工夫して、単純にだまし討ちみたいにならないように苦労してやったところであります。
 この自治体さんも、国保、特に高齢者の方とかは分からないかもしれないから、一遍に変えるのはちょっと不安だということで、国保については変えなかったのですね。社保についてのみ変えたということで、左側の結果は国保についての結果です。すなわち、同じような申込書を続けたもので、青いバーがR1、オレンジがR2、灰色がR3になっていて、R1からR2はコロナのせいでがたっと落ち込んで、若干盛り返したものの、R1の水準までは戻っていない。あるいは、ほぼ同じ水準、ちょっと低いぐらいになったというのが国保の同じやり方をした結果です。
 右側の社保については、R3だけ、今回の新しいセット受診を勧めるタイプにしたところ、青いところからオレンジ、R2は社保については余り下がっていなかったみたいなのですけれども、R3でセット勧奨にすると多くのがん種で伸びた。すみません、これは受診率じゃなくて、データがまだ出ていないので申込割合です。受診率については、新たにちゃんと確認する予定ですけれども、これは申込者の割合なのですが、セット受診にすると多くのがん種で伸びたということがありました。男性でも同じような結果が出ていました。
 この右側の子宮と乳に比べて、肺とか大腸のほうが低いというのがあると思うのですけれども、これはオプトアウトされたということです。もともと全部セットで申し込んでいる形になっているのに、受診率が違うのは、自分で受けたくないと×をされた人がある程度いたということも表しているものかと思います。これで十分に伝わったかどうかというのは分からないところですけれども、特に混乱はなかったと伺っています。
 次のスライドをお願いいたします。これは、精密検査の受診に関しての試みなのですけれども、自治体の方々は、データとしてはデータベースのような形で、割と持っていらっしゃる。検診の受診に関してのデータベースあるいは精密検査の受診に関してのデータベースは持っていらっしゃるのですけれども、それを使って傾向の分析をされていないことが多いので、我々が、非常に簡単な集計ではあるのですけれども、例えばこれであれば、東京都のA区で、医療機関ごとに精密検査の受診率を出しました。こういうことをすると、どこの病院が高くて、どこが低いのか、どこの病院が全体の精密検査の受診率に影響を与えているのか、よく分かるということがあります。
 この中で精密検査受診率の高いところにヒアリングを行ったところ、結果を説明する際に、要精検であればその場で精密検査の予約を取ってあげる。東京だからかもしれませんが、検査センターみたいなところがあるので、そのときに予約を取ってしまうとか、あるいは精密検査を受診できる施設を紹介する。予約まではしないけれども、そこまで紹介することをされているということが分かりましたので、これがほかのところでもできるかどうかということはあるのですけれども、高いところは高いなりの理由があることが分かったということであります。
 次のスライドをお願いいたします。これは、先ほどから女性の検診についての話題が出ていますけれども、京都府のある市において、年度途中における検診機会の追加というのをされました。これは、京都の割と北のほうの市町村ですけれども、秋ぐらいで検診が終わってしまうのですね。我々のこれまでの事例の中で、冬場に追加検診をするとかなり対象者が来てくださるという経験がありましたので、それをお勧めしたところ、検診提供機関と相談して機会をつくってもらった。
 実際の担当課の中では、雪が降っている冬にやったって来ないだろうとか、10月までだってまだ空いているスロットがあるのに、それでも来なかったのだから来ないだろうとか、コンビニとか道の駅でやる必要があるのかという意見があったのですけれども、やってみようということでやったところ、1月12日にやりましょうということになって案内を作成して、これも電話申込みとウェブ申込みをQRコードでできるようにした。それから、コロナ禍でもがん検診は不要不急ではありませんといった分かりやすいチラシを作って送付したところ、17日に送付して21日でウェブが満員になってしまった。
 下のほうに、今回受診しようと思った理由と、受診してよかった点が出ていますけれども、申込み方法がよかった、すなわちウェブがあったからよかったというのと、短時間でできる。これは、お買い物の帰りに10分でできますということを書いてあったのですね。実際、2つで10分だったそうで、皆さん、非常に喜んだ。本当に買い物の帰りに10分でできた。女性だけの検診だったので、男の人がいなくてよかったとか、オペレーションが非常に上手で、寒い中、車の中で問診を行って、その後検診カーに行って、1つの検診だけだと5分、2個で10分ぐらいで実際は終わったそうなので、そういうことがよかったというのと。
 左側だと短時間でよかったというのがあるのですが、案内来たからというのが非常に多くて、案内来たから申し込んだという、非常にシンプルというか、ちゃんと届くとそれだけで受診する。それは分かりやすいチラシだったからだと思うのです。あと、完全予約だったとか、そういうことでコロナのことも安心だったということで、非常にいい事例だったかなと思うので、この市町村では今年も絶対やるとおっしゃっていました。
 次、スライド、お願いします。これは、東京都のA区についてなのですけれども、毎年の検診の中で新規の方がどのぐらい参加されているのか、あるいは継続受診はどのぐらいなのか。幾ら新規の方が入っても、継続受診の方が増えないと受診率が上がらないのではないかという仮説がありましたので、見たところ、2017年に36.9%の大腸がん受診率があった中で、次の年も受けた人は30.6%で、6.4%が受けなかった。新たに受けた人が7.1%で、結局37.7%と、同じような水準。次の年も離脱した人が6.3%、新しく来た人が6.5%で、水準としては同じ。次の年も同じということです。
 実際、2017年より前の古いデータも併せて解析したのですけれども、同じ受診率で推移していて、この中には継続受診の方も入ってしまっているので、新規だけではないのですけれども、受けない人と新しく受ける人がとんとんなので受診率が上がらないということがよく分かったので、いかに歩留まりをよくするか、毎年受けていただくかということが大事かなと考えております。
 特に、下のほうを見ていただくと、新しく受けた人の中で離脱する人、すなわち次の年に受けなかった人が、例えば2018~19では43.8、2019から2020では56.1と、半分ぐらいの方が次の年には受けないのに対して、リピート受診されている方の中では、その前も受けた方では離脱者が少ないということで、この場合、大腸がんなので毎年ですけれども、何年か続けてきてもらうという習慣づけができることによって、かなり継続受診につなげることができるのではないかということで、それに対してどのようにしていけばいいかということを現在取り組んでいるところです。
 例えば、最初に説明しました日付指定だと、前年度来た日にもう一回受けましょうということをやるのが基本の形のようですけれども、効果はまだ分からなかったのですけれども、栃木県ではそういうものをずっと前からされているそうです。そうすると、日付指定をして、もしその日が合わなかったら連絡してくださいという形で連絡したところ、1割ぐらいの方しか変更を言ってこないということがあるようでした。ただ、栃木県では、その前と後の比較ができないそうで、効果は分からないのですけれども、日付指定によって受診者の方から大きな混乱があるということはないように伺っております。
 次のスライドをお願いいたします。初めにありましたようにインタビューを行って、これ以外にも行動科学的な方法を用いて資材を幾つか作成しました。インタビューの中で皆さんがおっしゃっていたのは、ちゃんとコロナ対策をしているということが分かれば行きますと答えていらっしゃったので、そのことをきっちり書くという形の資材になっているところです。
 以上で終わるのですけれども、初めにも言いましたが、どうやっても上がらないところは結構あって、何か大きなものを見逃しているのではないかということで、まず、この基本からやりましょうというような、松、竹、梅じゃないですけれども、そのような形の推奨を最終的にはしていきたいなと思っておりまして、その中で、既存のデータの簡単な集計とか、それは非常に強力な対策を立てるための道具であることが分かりましたので、そういうことについても伝えられるようなマニュアルを作っていきたいなと考えております。
 以上で説明を終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。
○大内座長 ありがとうございました。
 構成員の方から御意見ありますか。コメントがあれば、どうぞ。
 若尾構成員。
○若尾構成員 ありがとうございます。
 今、山本先生からの説明を聞いて、うん、うんと納得した者の1人なのですけれども、毎年、年度初め、もしくは3月のうちに、その年の検診と言われるもの、ほぼ全ての情報が市区町村からどっと来るのです。そのときに、何を受けたらいいのかということがとても混乱します。しかも国が推奨する5つのがん検診という、厚労省に載っている5つのがん検診の表がそのまま載っているわけではなく、何々を受ける人は何ページを見てくださいとか、申し込むときには何ページを見てくださいという、非常に分かりにくい紙ベースで来るのです。
 なので、先ほどQRコードで読み込んで、オプトインでもいいし、それから、もしできるのであれば、あなたにはこれがお勧めですよというセット受診みたいな、誰も迷わない受診の推奨の仕方というものが市町村から来ると、受ける人はすごく多くなるのではないかなと思いました。
 もう一点は、冬場、1月、2月の間、こんな寒いときに来る人はいないだろうと思ったけれども、案内を出してやったら多くの人が来たというのは、最初の年度初めの情報で混乱して受けそびれた人だと思います。そういう人たちは、少なからずどこの市区町村にでもいると思うので、年度初めの情報提供と、年度半ば、もしくはその年の最後の11月、12月に、1月、2月になったらこれをしますよという2段構えの情報提供の成功例を今、示してくれたのではないかなと思いましたので、こういった好事例を、各市区町村、もしくは都道府県を通してでもいいのですけれども、基礎自治体に伝わるようにしていただけるといいかなと思いました。ありがとうございました。
○山本参考人 そのとおりだと思います。ありがとうございました。
○大内座長 では、井上構成員、どうぞ。
○井上構成員、大変おもしろい結果を御提示いただき、ありがとうございました。
 10ページ、これがすごく魅力的で興味があったのですけれども、しようがないといえばしようがないのですけれども、右側のセット勧奨をしたことによって申込率が上がったように見えているのが、実際にセット受診勧奨に変えたのがよかったのか、新型コロナ感染拡大からちょっと時間が経って、みんな来る、次は行こうと思った瞬間と、ちょうど時期が重なったために上がって見えるのかを区別できないのが、非常にもったいないと思っています。右側のやり方というのは非常に魅力的だなと、私の専門家としての立場というよりも、むしろ、こういうものが来たらどう思うのだろうかと、自分がその立場に立った場合に右側のほうが非常に魅力的に見えるのです。
 次のこの研究事業の中で、今年、令和4年度にこれをもう一回検証できるのかは分からないのですけれども、新型コロナ感染拡大の影響をできるだけ受けない中で、このセット受診勧奨に変えることによる申込率への影響というのを、これからで結構ですので、確認していただけるといいなと思いました。ありがとうございます。
○山本参考人 ありがとうございます。
 この自治体では、国保についてはやらなかったと先ほどお伝えしたのですけれども、去年、これでうまくいったと考えたので、恐る恐るですけれども、今年度は国保についても右のタイプにしているということなので、国保についての結果が今年見られるかなと思いますし、ほかのところでも、先ほど若尾構成員から話もあった、年度初めのやつは分かりにくいというので、それは本当にそのとおりなので、我々が相談を受けた場合には、こういうふうに変えたほうがいいよということをお伝えして、我々は分かりやすいと思っているのですけれども、分かりやすいものに変えている中で、セット勧奨を推奨するようなものも作っているところもありますので、そこでも効果が見られるかなと思っています。ありがとうございます。
○井上構成員 追加で、12ページの検診機会の追加というところもとてもおもしろいのですけれども、残念なというか、同じ理由なのかもしれませんけれども、場所をこういう便利なところにしたのがよかったのか、追加したからよかったのかというところが見えると、もっとやり方の改善を具体的に各市町村が考えて、追加することにつながるのか、変更していくことにつながるのかなと思ったので、この辺ももしできれば、場所の問題なのか、後から追加勧奨したことがよかったのか、あるいは追加勧奨の時期がよかったのか、その辺のところを検証し、理由を探っていただくとありがたいなと思います。産業が農業だったりすると、繁忙期と非常に仕事が少ない時期とあると思います。よろしくお願いします。
○山本参考人 ありがとうございます。
 我々が通常やっているのは研究としてランダマイズしたりしているわけじゃなくて、市町村の事業の中でできる範囲ということでやっているところで、効果が出るように、いいことを何個もやりたいというのが自治体のほうにもあって、なかなか1個だけにしましょうと言えないところもあるのですけれども、総合的な感想とか、そういうものも含めて、何が効果があるかというのは、おっしゃるとおり分けていくことが大事だと思っておりますので。
○井上構成員 すみません、遮ってしまったのですけれども、インタビューベースでも十分ですので、そんな研究デザインでという話じゃなくても、中身の理由づけが見えてくるかと思うので、ぜひできる範囲でお願いします。
○山本参考人 ありがとうございます。
○大内座長 ありがとうございました。
 祖父江構成員。
○祖父江構成員 祖父江です。
 実は、この実証研究の評価委員をやっているので、よく知っているのですけれども、1点確認が、今、市町村のがん検診の受診者層の年齢がすごく高いですね。余り高齢の方には受診勧奨はいかがかなというところもあるのですけれども、その辺り、区別して対応されているのかどうか、ちょっとお聞かせください。
○山本参考人 ありがとうございます。
 今回の結果の中では、年齢ごとに効果も幾つか見ておりまして、ウェブ申込みとかは若いほうの掘り起こしに大きく貢献していることが分かっているような結果がありましたので、そういうものをぜひ積極的に進めていきたいなと思っています。高齢の人に勧奨しないようにということはやっていませんけれども、年齢ごとに効果を。
 あと、今回報告しなかったのですけれども、各戸に配布する場合と、個別で検診ガイドを送る場合も、年齢ごとに幾つかの年齢に区切ってやったりしているので、そこでも年齢の効果が見られて、若い人のほうが効果があるとか、逆ということも分かってきたり、がん種ごとの違いとかも分かってきたりしているので、年齢のことは考慮しながら進めたいと思います。ありがとうございます。
○大内座長 ありがとうございました。
 時間も押してきましたので、今日の議論は以上といたします。
 では、次回以降につきまして、事務局からお願いいたします。
○がん対策推進官 先生方、長い時間にわたりまして、ありがとうございました。
 次回検討会の詳細につきましては、また7月頃を予定してございますが、調整の上、御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、ありがとうございました。
 

照会先

健康局がん・疾病対策課

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