第37回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和5年1月30日(月)14:00~17:00

場所

オンライン

議題

(1)報告
   1.新型コロナウイルス感染症によるがん検診・がん診療への影響(2021年度)
   2.がん検診の代替指標について
   3.がん検診事業のあり方について
   4.職域におけるがん検診の実態について
(2)議論
   新たなステージに入ったがん検診の総合支援事業

議事

議事内容
○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第37回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課、原澤と申します。昨年の8月に岩佐の後任として着任いたしましたので、御挨拶を兼ねてよろしくお願い申し上げます。
 本日の検討会はYouTubeにて配信してございます。委員の皆様方におかれましては、参加中は基本的にマイクをミュートとしていただき、発言の際にミュートを切って、初めにお名前を申し上げていただいてから御意見、御発言等をしていただくようにお願い申し上げます。
 それでは、まず初めに構成員の出欠状況について確認させていただきます。現時点の検討会構成員の定数は11名でございます。本日御出席いただいている構成員の先生方は、現時点で9名となっております。中川先生からは遅れて御参加いただける旨の御連絡を頂戴しております。福田先生も遅れて御参加される予定と伺ってございます。
 また、本日は、参考人といたしまして、国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部の高橋宏和参考人にお越しいただいておりますので、御承知おき願います。
 それでは、以降の進行を大内座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○大内座長 皆様、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 初めに事務局より本日の資料の確認をお願いします。
○事務局 事務局です。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。資料は事前にメールでお送りさせていただいておりますが、厚生労働省のウェブサイトに掲載しております。議事次第、資料1、資料2、資料3-1、資料3-2、資料4、資料5、及び参考資料が1から5までございますので、御確認ください。
 資料の不足、落丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。
 それでは、大内座長、議題をよろしくお願いします。
○大内座長 議題1の報告事項1つ目、「新型コロナウイルス感染症によるがん検診・がん診療への影響(2021年度)」に移ります。
 資料1につきましては、高橋参考人から御報告をお願いいたします。
○高橋参考人 よろしくお願いします。国立がん研究センターの高橋と申します。
 新型コロナウイルス感染症によるがん検診及びがん診療などへの影響につきまして、2021年度の評価について御報告いたします。
 これまで研究班では、コロナの影響を一番強く受けた2020年度の報告をしたところですが、その翌年の2021年度の報告をいたします。
 まずは2020年度、にどのような影響があったかについて、簡単におさらいをします。がん検診の受診者数への影響は、地域保健・健康増進事業報告が出ており、これは全国の住民検診の実数をまとめている悉皆性の高い、信頼性の高いデータとなりますが、2020年度はその前の3か年度に比べると、がん検診の受診者数は、指針で示す5つのがん種においておよそ1割から3割減少していました。
 内訳は、個別検診に比べると集団検診がより減少しており、がん種別では、胃がん検診が最も減少していました。
 続いて、院内がん登録の状況です。年度でなくて年の評価になりますが、2020年の院内がん登録のデータでは、全がん種で平均およそ5%の減少が認められました。
 続いて、がんの外科手術数についての評価です。2020年度においては主要な20の外科手術は前の2年と比べて15%ほど減りました。内訳は、特に感染程度の高い地域において、また疾患別では、症状のない疾患、例えば検診に関わるがん種などが大きく減少しました。
 2020年度にこれらが減った要因としては、1つ目は緊急事態宣言に伴う政府や専門学会の通知。2つ目はがん検診の実施者、これは市町村や保険者、事業主に当たりますが、これらによる実施の延期や中止。3つ目はがん検診の受診者の感染のおそれによる受診控え。4つ目はこれらを受け入れる立場にあるがん検診の実施機関並びに医療機関のキャパシティーが減ったことなどが挙げられました。ここまでが2020年度の評価です。
 これからが2021年度の評価となります。がん検診の受診者数は地域保健・健康増進事業報告がまだ報告されていないため、現時点で把握できる協力機関から頂けたデータの発表となります。
 1つ目が聖隷福祉事業団です。こちらは青、黄色、赤の折れ線グラフがあります。このうち赤い折れ線グラフが2021年のものとなります。青い折れ線グラフがコロナ前の2019年のものですので、これと比べると、4、5、6月は赤い線が青い線をやや下回っているものの、それ以降は赤い線が上回っているという評価でした。
 黄色い線で示した昨年度に比べるといずれも上昇していることから、実数で見ると、住民検診では2021年度はコロナ前の2019年に比べると0.5%増加。職域検診では1.6%増加し、聖隷福祉事業団においては、おおよそコロナ前の水準まで回復しているという状況が報告されています。
 続いて、全国労働衛生団体連合会の会員機関のデータです。こちらは6か年のデータを棒グラフに示しており、左側が住民がん検診、右側が職域のがん検診になります。左側の住民がん検診から見ますと、これらの折れ線グラフにおいて、特に6つあるうちの右から2番目の2020年度は大きく落ち込んでおり、いずれのがん種も同様の傾向です。一方で、2021年度は住民検診においては、落ち込みのおよそ半分ほど回復している状況にあります。
 一方、右側の職域のがん検診においては、2020年の落ち込み、または2021年のそれに伴うリバウンドは明らかではありませんので、職域のがん検診はあまりコロナの影響を受けなかったという評価になります。住民検診で同様の比較をした場合、13.5%減少。やや大きい減少に感じますが、2020年度の24.4%に比べると、ある程度回復しています。職域検診は2.7%増加ですので、こちらもコロナ前まで増加していました。
 続いて対がん協会の38支部のデータです。対がん協会は、住民検診、職域検診がおよそ6対4程度で実施されているため、やや住民検診の傾向が強いということがデータより伺えます。各がん種、左から2019、2020、2021年度の受診者数の棒グラフになりますが、2020年度で減少したおよそ半数程度が2021年度で回復していました。
 こうしたことから、がん検診の受診者に関しては、職域検診は、2021年度はコロナ前まで回復しており、住民検診はまだ回復し切れていないという評価となりました。
 続きまして、院内がん登録の2021年のデータです。こちらは2021年をコロナ前の2018、2019年の平均と比較しています。右側の中ほどにあります2020年と2021年のそれぞれのがん登録数の比を見ますと、2020年は95.9%で、およそ4%減少しましたが、2021年は101.1%と、コロナ前の水準まで回復しています。
 また、この登録数を月別にプロットしたところ、全症例と自施設の治療症例が、ほぼ同じようなトレンドであるということから、自施設症例に限定して今後の解析を進めました。
 こうして2か年の月別のがん登録者数の推移を見ます。2つある図の上が登録数になりますが、赤い折れ線グラフが前2年と比べた当月の増減比となります。ピンク色で囲った月、2020年4月から5月、7月から8月、2021年5月から7月辺りで少し落ち込みが見られます。
 一方で、下の図を見ますと、こちらはコロナの新規患者数のグラフになりますが、これらの感染者のピークとピンク色で示したがん登録数の落ち込みが必ずしも一致していないことから、このデータからはがん登録者数と感染者数の関連は見られませんでした。
 これより、がん登録数の推移は、2020年は大きく減ったがん種が幾つかありましたが、2021年はおよそ回復しました。一方で、2021年もまだ減少しているがん種、胃と喉頭がんはまだ減少が続いていました。
 過去7か年のがん種別の登録数の推移を見ますと、右から2番目にある2020年は、どのがん種においても大きく落ち込んでおり、2021年はそれより少し回復し増加に転じていました。
 ここで、2015年から2019年のトレンド、例えば大腸を見ますと、少しずつ右肩上がりの上昇トレンドにあり、2021年はこのトレンドラインには乗っていということから、まだ想定よりは少ないという可能性も示唆されています。
 懸念されるのは、がんの発見が減少後に、リバウンドして多く発見されることですが、今後のモニタリングの中で解析が必要になるかと思います。
 続いて手術件数です。大阪大学の関連施設の外科手術症例の4か年の推移となります。2020年に落ち込んでいますが、先ほどのがん検診やがん登録数のような2021年の回復は見られず、横ばいもしくは微増程度です。そのため、手術件数に関しては、2021年度も引き続き低い水準にあることが懸念されます。
 同じく大阪大学関連施設による胃がんのステージ別の症例を示します。左から2019、2020、2021年となっており、特に青いstage1はがんの進行度が低い症例となりますが、2019年は43%であったものが、2020年は38%、2021年は39%であり、stage1が減少し続けていました。一方で、術前の化学療法の割合は、少しずつ増えていました。コロナ禍においてステージの早い症例が少なくなり、2021年もその傾向が続いている状況でした。
 また、がん患者の受療行動に関して、第2回目のウェブアンケートを行いました。第1回目、第2回目、それぞれ実施されたのが2021年12月と2022年11月ですので、およそ1年の間があります。1問目に、コロナの影響がありましたかと伺ったところ、14%から9%に減少しました。
 その影響を受けた方に内訳を伺ったところ、日にちの変更やオンラインの診療に変更したというのが2回目に多く見られました。そのため、がん患者の受療行動に関してはまだ影響があるものの、2022
年は2021年に比べ、影響が軽減されたことが示唆されました。
 以上よりまとめますと、2021年の評価としては、がん検診の受診者数はおおむね増加しており、職域検診は回復しているものの、住民検診はまだ1割ほど減少している。
 がん登録に関しては、およそコロナ前の状況まで回復していますが、依然回復が追いついていないがん種もありました。
 今後もステージ別の評価などは追跡する必要があります。 手術件数におきましては、2021年は2020年に比べやや増加しましたが、コロナ前の水準までは回復していないことから、引き続き大阪大学関連施設以外のデータも集めた上で、対策などへの基礎的な資料にする必要もあります。恐らく手術をする病院において、コロナの患者が増えることによるキャパシティーの減少などが考えられますので、多面的な評価が必要になります。
 ウェブの調査では、少しずつ治療などへの影響は軽減されてきているものの、まだ続いているため、引き続きの情報提供等々の対策が必要となります。
 研究班からの提案としては、昨年の再掲となりますが、モニタリングを適切に実施することにより状況を正確に把握すること。それによってがん検診やがん医療へのアクセスを確保すること。こちらはある程度確保できているため、今後は有事に備えた、平時における医療圏などを超えたアクセスの確保の方法を検討していく必要もあるかと思います。
 さらに、がん検診やがん医療に関する適切な情報提供が重要となります。有事のときに情報が混乱することが懸念されることから、平時のうちから十分な情報提供体制を構築する必要があります。
 加えて、他国と比べるとデータが公表されるまでの時間がかかることと、悉皆性にやや乏しいことから、国を挙げて即時性のある検診やがん医療のデータの収集・モニタリングや評価体制の構築を検討していくべきと考えます。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 ただいま高橋参考人から資料1。これはコロナウイルス、COVID-19の影響。2年目になりますけれども、そのデータについて詳しく御説明いただきました。
 資料1につきまして御質問、御意見がある方はお願いいたします。祖父江構成員。
○祖父江構成員 祖父江です。
 検診の受診者数がコロナの影響で減りました、あるいは診断症例数が減りましたというのは、影響としてはそのとおりだと思うのですけれども、最終的に確認すべきは、コロナの影響によってより進行したがんが増えたのか、あるいはそれに伴ってがん死亡者が増えたのかというところなのでしょうけれども、これを見ていくためのデータとしてはどんなものをモニタリングする予定なのか。受診控えとか診療控えがそれぞれの進行がんの増加、死亡の増加がもしあったとすると、それにどのように寄与しているか、関連しているかというのをどのように解析していく予定なのか、その辺りのお考えをお聞かせください。
○大内座長 どうぞ。
○高橋参考人 ありがとうございます。
 今の御質問のように、懸念されるところは、一時的に検診やがん医療を受診される方が減ったことによってリバウンドが起こると。それによってかえって進行したがんや死亡者数が増えるのではないかということです。各国のシミュレーションのデータなどもこのような試算を出しており、これらによると、検診のアクセスが阻害された期間が長ければ長いほど、また、阻害された度合いが高ければ高いほど、リバウンドが大きいということが懸念されています。
 一方で、国際的な状況を見ますと、コロナの2年後、3年後のデータはまだ多くは出ていない状況です。一部の地域や限られた医療機関などによって、2年目以降のリバウンドの増加というのも散見されますが、国レベルの報告はありません。
 では、我が国はどうかというと、がん検診やがんの医療に関しては、御紹介したデータを引き続きモニタリングするとともに、がん登録者数や死亡者数においても公的データを用いた年次推移などを分析し、加えて詳細ながん種ごとの解析なども試みていこうと考えています。
 以上です。
○大内座長 では、中山構成員。
○中山構成員 2つあるのですけれども、1つは精密検査の受診の問題で、昨年末に日本肺癌学会でワークショップが開かれたのですが、検診で本来指摘されていたのに、精密検査未受診で1年半、2年後にかなり悪い状態で病院に来られたという方がいろんな病院で目立つようになってきた。だけど、量が分からないというようなワークショップが開かれたのですが、私たちが介入研究とかをやっていましても、実際に研究の介入の検診の部分は受けても、精密検査で病院に来ないという人が2020年はかなり目立ちましたので、その辺の定量的な分析をぜひやっていただきたいというのが1つ。
 もう一つは、院内がん登録のデータで胃がんの減少が異常に目立つので、あそこをもう少し深掘りをしていただかないと。量としてはかなりインパクトの大きいがん種なので、あそこがなぜ2年目も引き続き減少したままなのかというところをちょっと御検討いただきたいと思います。
○大内座長 高橋参考人、御意見ありますか。
○高橋参考人 ありがとうございます。
 1つ目の精密検査の受診者数も減っているのではないかということ、あとはそのモニタリングが必要ではないかということは懸念されます。
 がん検診は、初めの検査を受けるだけでは終わらず、一連のプログラムとして精密検査を受けること、必要があれば治療をすることで初めて死亡者の減少につながります。そのため、がん検診を受けたけれども、精密検査には行かないということは、問題であり、そのモニタリングは重要です。
 精密検査の受診率は、住民検診では各自治体で把握しているため、受診率より1年後となりますが、データの分析をいたします。
 地域保健・健康増進事業報告は、受診率が1年後に公表されますが、精密検査の受診率は2年後に公表されます。2020年の精密検査の受診のデータが来年度公表されたのち、それの分析を行う予定です。またそのデータの公表も検討いたします。
 院内がん登録における胃がん登録者の減少の原因についてですが、特に胃がんについては、2015年から2019年は若干減少しているトレンドにもあることから、減少の幅はほかのがん種に比べると大きい可能性が示唆されています。また、胃がん特有の原因も指摘されております。1つは、胃がんの検診が平成28年の指針改正により内視鏡検診が推奨されたため、検診の現場においてパラダイムシフトが起こっており、バリウム検診が内視鏡検診に変化しつつあり需要と供給のバランスや、提供者側のキャパシティーの問題等々も懸案事項としては考えられます。胃がんの減少の原因については、引き続き分析します。
 ありがとうございます。
○大内座長 私からも補足させてください。先ほど高橋参考人のスライドに経時変化がございましたが、2016年度から胃がん検診の指針改定がありまして、ここに胃X線に加えて胃内視鏡検診がスタートしております。検査内容のパラダイムシフトも影響しているのではないかと思います。もう一つは、X線検査によるがん検診の受診者数がかなり減っているのではないかという印象もありますので、その辺について研究班でもデータを今、解析されていると思います。
 よろしいでしょうか。
 では、井上構成員の御質問、お願いします。
○井上構成員 ありがとうございます。
 私から2つ質問がありまして、1つはお話に出ていたものですけれども、胃がんの減少が気になります。検診のいろいろなイベントがこの年にあったということから説明するのも1つだと思いますが、自然減という可能性もあります。特に世代でピロリ菌を持っている人が減ってきて胃がんがどんどん減っていますので、単なるそのトレンドにたまたまコロナが重なってしまっているのではないかという気もしています。がん登録がそもそも検診に振り回されるものであってはならず、これはあくまで罹患の実態だと思います。いずれにせよ原因はきちんと追求しておかなければいけないと思いますので、その辺を考慮いただきたくお願いいたします。
 もう一つは、一番最後のスライドです。今後の対応策として、がん検診やがん医療へのアクセスの確保ということがよく言われるのですけれども、具体的にはどうしたら確保につながるのか、お考えが何かありましたら教えていただきたいと思います。
○高橋参考人 ありがとうございます。
 コロナ禍においてアクセスが阻害された、バリアになる要因としては、政府や学会などからのアナウンスの可能性があります。コロナがまだどういうものか分からなかった2020年の春先の状況において、不要不急の検査などは控えるようにというメッセージの一部に含まれたことのも影響があるかと思います。
 その後、医療機関などがアクセスの確保のために、コロナの感染対策や、がん検診の重要性の情報提供なども多方面から行われたこともふまえて、平時のうちからがん検診やがん医療へのアクセスすることは不要不急ではない、重要なものだという情報を提供することが事前の措置になるかと思います。
 また、様々な有事が想定されますが、状況によっては、検診などよりもほかに振り向けなければいけないような状況も想定されるため、状況に応じたネットワークを構築し、有事にそなえるべく医療者側の対応について議論する場を設けることが重要かと思います。
 情報とネットワークがキーワードになるのではないでしょうか。
○大内座長 では、松田構成員、お願いします。
○松田構成員 福井県健康管理協会の松田でございます。
 高橋参考人、どうも御報告ありがとうございました。
 今後日本のがん検診を考えていく上で職域が非常に重要だろうと思います。参考人が御報告いただいた住民検診に比べると職域検診の減りが少ないという状況なのですが、がん検診のアクセスを考える上でも、職域の検診がなぜ減っていないのかということは極めて重要だろうと思います。
 住民検診では、市区町村の感染状況あるいは医療機関のキャパシティーに加えて、本人の意向で受診する、受診しないが決まるかと思うのですが、職域では住民検診に比べると受診に対する強制力がある程度働いているのではないかなと思います。労働安全衛生法に基づく検診と違って、職域におけるがん検診には法的な根拠はありませんが、がん検診を行っている職域では受診するよう求められていると私は想像します。高橋先生、いかがでしょうか。
○高橋参考人 特に職域においては様々なバリエーションがあります。ご指摘のように、労働安全衛生法による法定検診としてがん検診が実施されるのであれば、強制力が非常に強いため、受診率は100%に近くなります。
 一方で、高齢者医療確保法に基づく保険者が提供するような特定健診においても、保険者によっては受診勧奨などによって、ある程度強制力のかかった介入のような形になるため、有事の際においても職域の検診が影響を受けづらいという可能性はあると思います。
 一方で、これは今回の受診者数の増減にかかわらず、このような強制力が少しかかるような職域のがん検診においては、そもそも適切に実施されているかという検証も必要になりますので、これはまたほかの議題となりますが、住民検診とは違う、職域に応じたアプローチを本検討会や研究班などによって、実施される保険者や事業主などに正しい情報として提供することも必要になるかと思います。
 ありがとうございます。
○松田構成員 ありがとうございました。
○大内座長 では、若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 若尾です。よろしくお願いします。
 私も今まで他の構成員の方がおっしゃったことと少しかぶるところもあるのですが、4点あります。
 1点目は、外科手術の年次推移を示していただいたグラフがあったと思うのですけれども、あの外科手術の中で消化器外科の手術件数を年次推移でお示しいただいていますが、上部消化器、つまり、胃がんと、大腸がん関係、言い換えれば下部消化器と合わさった手術件数になっているのかなと想像したのです。もしこれが上部と下部消化器で分かれていれば、胃がんがとても落ち込んでいるということが、外科手術の件数から見ても分かるのかな、それともそれはあまり関係ないのかなと思いましたので、この傾向をちょっと知りたいなと思った次第です。
 2点目ですけれども、皆さんがおっしゃっているように、職域でのがん検診はとても安定しているなと思いました。これは強制力があるというか、それが当たり前の位置づけになっているからなのだろうなと想像するわけですが、職域でのがん検診の中で女性特有のがん、乳がん検診と子宮頸がん検診は、地域もそうですけれども、もともとが低いのです。女性特有のがん検診が職域でも地域でも低いというのは、もしかしたらオプションの位置づけということが考えられるのかもしれないので、この点もちょっと考慮したいなと思いました。
 それから、今後の対策の中でモニタリングの重要性ということをおっしゃってくれましたが、これは本当に大切だなと思うのです。モニタリングをする上で、今後コロナが5類に入るということも含まれるわけですけれども、現時点においてもそうですが、検診の機関もしくは手術などをする医療機関のスタッフがコロナの影響で受診や患者の受入れがなかなかできなかったということなのか。それとも一般住民もしくは患者自体がコロナに罹患して、検診や病院を受診することができなかったのか。これも分けて分かるといいなと思いました。
 最後にもう一点です。今後の対応策の中に「即時性のあるがん検診・がん罹患データ収集システムの構築」とありますが、これもずっと長く言われていることだと思うのです。即時性を改善するための具体的な提案をちょっと入れてもいいのかなと思いました。
 以上です。
○大内座長 高橋参考人、4点ありましたけれども、答えられる点についてどうぞ。
○高橋参考人 ありがとうございます。では、簡単に。
 1つ目は外科手術に関しては大阪大学の土岐先生から提供していただいているデータであり、上部と下部の分離など、恐らく対応可能かと思います。今後詳細な分析を検討いたします。
 2つ目は職域の女性のがん検診受診率が低いという懸念です。乳がんおよび子宮頸がんになりますが、これまでも受診率の議論でもありますように、利便性、特に若い女性が検診にアクセスしやすいような状況をつくることを、職域におけるがん検診の提供者などにその方法なども含めてお伝えしていく必要があるかと思います。
 3つ目の医療スタッフがコロナに感染して減っている影響なのか、それとも受診者がコロナに感染して減っているのかというところは非常に興味あるところですが、これを解析するには恐らく本研究班だけではデータが十分ではないため、ほかの研究班などの動向も見ながら検討したいと思います。
 4つ目の即時性のあるデータに具体策をということですが、今回のコロナの影響を国際的に見たときに、オランダやオーストラリアなどは半年後には、月ごとのがん登録者数やがん検診の受診者数を把握して、全世界に公表しているため、データ化して受診者数を一元管理する体制が確立していると推測します。今般のDXの流れも踏まえて、日本全体でこのような医療データの収集に本腰を入れるべきかと思います。
 ありがとうございます。
○大内座長 中野構成員、どうぞ。
○中野構成員 2点質問がございます。1点目は先ほどの松田構成員と全く同じ質問です。職域と住民検診、6ページに示されたヒストグラムですが、住民検診は明らかにV字回復の形をしておりますが、職域はそれなりに右肩上がりで、職域においては、先ほど参考人からも御説明がありましたが、それぞれの職場での対応、アクション、働きかけの度合いが強かったのだろうかと考えた次第です。先ほど参考人から御回答されたとおりかなと、聞いておりました。
 2点目でございますが、11ページのがん登録の数でございます。2つ目の矢羽根の5%以上増加した部位として膵臓、乳、子宮体、腎盂尿管、膀胱、白血病と出ておりますが、現時点で研究班におかれまして、増えた部位について御見解、御見識か何かあったら教えていただきたいなと思います。よろしくお願いいたします。
○大内座長 高橋参考人、2点目の件について。
○高橋参考人 ありがとうございます。
 御指摘の増加したがんについては、なぜこれが増加したかについては、研究班で解析が必要だろうと思います。特に膵臓がんの増加が目立つため、コロナの影響を受けてなぜ増加するのかというメカニズムについては、より多くのデータに基づいて分析いたします。現時点ではクリアな回答が、準備できない状況です。
○中野構成員 いいえ。興味ある点なので、ぜひ引き続きよろしくお願い申し上げます。
○大内座長 河本構成員、お願いします。
○河本構成員 倉敷市保健所の河本でございます。
 先ほどから職域の話がたくさん出ていますので、住民検診の現状を少し御紹介したいと思います。私どもの市でも今日の報告と同様に2020年度の受診がかなり落ち込みました。現場の状況を申し上げますと、例えば胸部レントゲン検診、肺がん検診は、医療機関での個別方式と、地域の公民館をお借りして、検診車を巡回して集団検診の方式を併用して実施をしているのですが、2020年度は集団検診の会場の密を避けるため、小さな公民館ではなくて大型ショッピングモールの広い駐車場をお休みの日にお借りしたりとか、並び列の距離を取りたいというお声が多いので、足形を置いたり、消毒をいろんなところに置いたりと、様々な対策を実施したのですが、市民の方からは人が密になって集まるところはやはり怖いという声が多く聞かれました。
 市といたしましても、住民の皆様に向けてあらゆる機会にがん検診は不要不急の外出には当たらないことを啓発してまいったのですが、新型コロナの影響は想像以上に大きかったと感じております。
 2021年度以降は国の報告と同じように受診状況もだんだん回復してまいりましたので、今回の報告と同じような傾向だと感じた次第です。
 以上です。
○大内座長 特に御質問ではないですね。
○河本構成員 はい。
○大内座長 では、福田構成員、お願いいたします。
○福田構成員 恐れ入ります。福田でございます。
 本日、コロナの影響で2020年度の落ち込みと2021年度は少し回復してきているというお話をいただきました。ありがとうございます。
 私が気になっているのはちょっと離れてしまうのですが、医療経済の観点から言うと、これが医療費にどう影響しているのかなというところでありまして、昨年11月ぐらいに2020年度の国民医療費が発表になって、前年度と比べるとかつてない大幅な減少になっていたと理解しています。コロナの影響と言われていると思いますけれども、その中でも疾患別の統計を見ると、がんについては、例えば循環器とか筋骨格とかから比べると減少幅が少ないと理解しています。ただ、やはり減少はしていますので、ちょっと気になっているところではあるのですが、この辺り、御覧いただけると大変ありがたいなと思ったりしているところでございます。コメントでございます。
○大内座長 ありがとうございました。
 では、黒瀨構成員、お願いします。
○黒瀨構成員 よろしくお願いします。ありがとうございます。
 先ほども住民検診のお話が出ておりましたけれども、住民検診の特に個別方式の場合には、多くの方がふだんかかりつけ医の先生のところで、外来に行ったついでに検診も受けるというパターンも結構あるわけです。減っている内容が、例えばかかりつけ医を持っている方がどれくらい減っているのか。かかりつけ医を持っていない方々が減っているのであれば話はよく分かると思うのですが、もしかかりつけ医を持っている方にとっても、検診の受診率が下がっているのだとすれば、かかりつけ医側からしてももう少し努力の余地があるのかなと思うのですけれども、これを統計で見るのはなかなか難しいと思うのですが、何か見解等ございましたら教えていただきたいと思います。
 以上でございます。
○大内座長 高橋参考人、何か御意見ありますか。
○高橋参考人 かかりつけ医のあるなしについては、これまで検討していないため、可能であれば、データを共有いただけますと詳細な分析ができますので、ご検討いただけますと幸いです。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。こちらのほうでも公衆衛生委員会等で検討してみます。
 もう一点、職域に関しても同じような傾向がありまして、特に小規模事業所の方は、ふだんのかかりつけのところで検診を受けるという方が非常に多い。いわゆる集団検診というよりも個別検診で受けられる方が多いので、同じようにかかりつけ医がどれくらい関与しているのか。それによって受診控えが抑制できているのかというところの視点で、もし一緒にあれでしたら考えていただければと思います。
 ありがとうございます。
○大内座長 それでは、次の事項に移らせていただきます。報告事項2つ目「がん検診の代替指標について」ですが、資料2につきまして、中山構成員から御説明をお願いいたします。
○中山構成員 よろしくお願いいたします。
 資料2を御覧になっていただいていると思いますが、厚生労働科学研究費のがん対策推進総合研究事業で、死亡率減少効果ががん検診の有効性評価の指標として用いられてきたのですけれども、この測定には非常に時間がかかるということで、それの代替指標というものはないのかというテーマで研究をさせていただきました。
 これは世界の各国のガイドラインとかで実際に使われている実例があるのかというところをレビューをしまして、それでまとめたということでございます。
 実際に対象として調査をさせていただいたのは、Cochrane共同計画とか、アメリカのUS Preventive Service Task Forceとか、アメリカのCancer Societyとか、NCCN、その辺のところと、それからIARC、World Endoscopy Organization(WEO)、国際内視鏡財団とかのガイドラインや指標について検討させていただきまして、検討臓器は子宮頸部、大腸、乳房という形でさせていただきました。
 大体のサマリーというのはこんな感じでして、3つのがん検診のうち乳がんに関しましては、世界のどんなガイドラインにつきましても、死亡率減少効果のみが評価指標という形でこれまで行われてきたわけで、ほかの代替指標というのは今まで全く検討されていませんが、浸潤がん罹患率というのが子宮頸がんでは近年よく用いられておりますし、大腸がんに関しては、感度とか罹患率とかtest performanceという言葉が特にアメリカのガイドラインではよく使われているわけです。
 これらのがんの特性というのは、検診でがんそのものを見つけるというよりは、前がん病変が検診で見つかって、そこからがんになって、浸潤がんになっていく、自然史がかなりはっきりしているし、前がん病変を切除すると、がん、浸潤がんというのが減っていくということが大体分かっているというものでございます。
 これは、子宮頸がんに関してどういう指標がいいのかというのを2010年にEUのガイドラインで示されたものであります。ランク1から6までありまして、ランク1が一番強い指標ということで、子宮頸がん検診の場合は、子宮頸がん死亡の減少というのが一番堅いものですが、2番目、3番目として子宮頸がんの罹患。これはstage IB以上という形ですので、いわゆる浸潤がんというものを含んだものですけれども、ランク2、ランク3の浸潤がん罹患率に関しましては、ここまでは絶対指標という形で子宮頸がんの評価については用いてもよいという指針がEUでは出ております。
 大腸がんですが、外側からはすごくわかりにくいところでございまして、これはアメリカの一番有名なガイドラインであるUS Preventive Service Task Forceで、大腸がん検診の評価というのを何回かやっているわけですが、2002年のバージョンに関しては、死亡率減少効果を評価したということが本文中に出てまいりまして、こういう検証が行われていない当時、全大腸内視鏡とか注腸検査というものは証拠不十分という形で、推奨しないということが明記されていたのですけれども、その6年後の2008年版になりますと、便潜血検査の化学法についてはRCTの有効性の結果がもう出ていましたが、S状結腸鏡というものに関しては、2008年の時点では研究をやっている最中で、まだ論文が出ていなかったのですけれども、2008年バージョンのところで全大腸内視鏡や便潜血免疫法、便潜血とS状結腸鏡併用法というものが全部推奨されています。
 推奨の根拠は後から見てもなかなか分からないのですけれども、ガイドラインを見てみますと、数理統計モデルを用いて利益・不利益バランスを評価したというところなのですが、そこの根底になる部分は、死亡率減少効果が確認されている化学法とそれぞれの方法の感度を比べてというところになりましたので、この辺から感度というものを代替指標としてUS Preventive Service Task Forceは評価するようになってきたというところかと思います。
 その8年後の2016年バージョンのところも似たようなところでありまして、便DNA検査とかCTコロノグラフィに関しては死亡率に関する研究は全く行われていないのですが、利益・不利益バランスを数理統計モデルを使ってやった。感度・特異度の評価をガイドラインの中では充実させているというところで、この辺のところの判断基準がなぜこういうふうになったのかは分からないのですが、大腸がん検診受診率が当時低かったので、どの検診手法が優越であるかという順位づけを行わないという形で本文には明記されていますので、恐らく受診率向上のために選択肢を広げて判断基準を広げようとした可能性があるのかなと推察しています。
 ただ、感度を比較しますというやり方だと、何でも許容してしまうという方向に流れるという可能性がありますので、その辺を理論武装している代表的な論文がございまして、これがLordという人がInternal of Medicineに出したものでございます。基本的にここは新しい検査法の評価スキームということでがんには特化しているわけではなくて、循環器の疾患とかいろんなものも論文中には比較をしているわけです。見ていただきますと、新しい検査法と標準検査法を比べて感度が高いかというのを見ているのですけれども、途中で出ているところは、それで実際に治療効果があるのか、ないのか。つまり、発見したものに対して、発見が増えてくると治療効果がちゃんとあるのかというところであるとか、真ん中のところに出てきますけれども、では、新しい検査で発見が増えたということになっても、それは一体どんなものを見つけているのかということを問題にしています。
 既存のものに比べて同じような病気を見つけているのか、それとも全く違う種類の病気を見つけているのかをちゃんと明確化すること。これは、がんの分野だと過剰診断のことを言いたいのだろうと思います。つまり、標準検査法では見つけることが難しかったけれども、早期発見をぜひしないといけないというものが新しい検査法で見つかるのか、見つからないのかというところを明確化しろというような理論武装の形になっているかと思いますので、かなり理解しやすい形になったかと思います。
 このスキームが複雑で、どういう方向で話を組み立てればいいのかというところが分かりにくいというところがあります。これをブラッシュアップしたのが次にお示ししますようなWEO方式というものでございます。
 これは国際内視鏡財団が主にCTCであるとか大腸がんの内視鏡を評価するに当たって、感度・特異度だけで比較するのではなくて、もう少し実際の検診の現場に落とし得る、検診に導入できるかどうかを評価するためのスキームを考えたというものでございます。タイトルに「IARC方式」というのをバーで重ねていますけれども、実際にこれを中心になって考えたGraeme.P.Youngという方々など、WEOの中で疫学の方々がその後できましたIARCのグループでも同じように検討をして理論武装したというものなので、「WEO/IARC方式」という形で名前がつけられています。
 大腸がん検診では死亡率減少効果がRCTで確認されているのは、大腸がんの場合には便潜血の化学法という昔の方法とS状結腸鏡という方法ですが、それと感度・特異度を比較するときにどうするのかというお話でございます。
 このやり方は、4つのやり方でステップを踏んで証拠を積み上げていきなさいという形なのですけれども、第1相というのが研究室レベルで行うような、がんの患者さんと健常者を集めてきてどのぐらい新しい検査法が見つけられるのかというやり方です。
 第2相のやり方が一応前向き研究での発見例の解釈、どんなものが見つかるか、前がん病変はどのぐらい見つかるかということを評価します。研究の方法としては、理想的なペア検査とありますが、これは同じ人に対して2つの方法をやって比べるということです。既存の診断のやり方と新しいものを同じ人に対してやってみて、どのぐらい違うのかを前向きに見ましょうという、比較的小規模な、臨床研究としてよくやられそうな方法です。
 第3相、第4相のところから検診として使えるかどうかを評価するというやり方で、第3相は1回だけ検診をやって比べてみる。第4相は、検診というのは毎年とか、繰り返してやりますので、繰り返してどうかということを見ているというものですけれども、基本的にはランダム化比較試験でやるべきである。しかも割付をしたものを全員。検査を受けるか受けないかにかかわらず、そういう割付したものを全員で見るIntention-to-screen解析を必須要にしています。
 第3相、第4相の無作為化比較試験としてやるやり方をTest performance研究と呼んでいるわけですが、基本的にはRCTで、がんがどのぐらい発見されるかという発見率を指標にしています。今まで検診の研究は、発見率というのはどうしても偏りが生じるから、評価指標にしてはいけないということをずっと言われてきましたが、このTest performance研究は発見率であるとか中間期がん、検診と検診の間に発見されるがんを指標にしましょうということです。追跡期間は非常に短くて済むということになりますし、イベントも死亡に比べて結構多くなりますから、サンプルサイズも小さめで済む。数千人ぐらいでいけるということになります。
 第4相の場合は、実際検診を繰り返してやったら費用がどのぐらいかかるとか、繰り返し検診のリクルートに何人ぐらい参加するのかとか、診断までにちゃんと精密検査をどのぐらい受けてくれるのかということ、検診に必要な精度管理の情報も収集する考え方です。
 これは実際の使用例で、大腸がんに関しましては、2016年にWEO方式が提示されて以降、それを踏襲する研究がかなりたくさん出ています。S状結腸鏡という方法に比べてS状結腸鏡の発見率を1とした場合に、CTCとか全大腸内視鏡がどのぐらい発見率が増えるかという検討をしています。ANというのがAdvanced neoplasiaということで、いわゆるポリープだけれども、がん化リスクが高いと言われる前がん病変を指しています。CRCというのが大腸がんを示していますが、これで見ますと、全大腸内視鏡はIntention-to-screen解析、つまり、無作為化比較で割り付けられた人全員を比較しているもので見ますと、全大腸内視鏡ではS状結腸鏡に比べてハザード比が1と、あまり変わらないということなので、発見率が増えませんでした。
 下のPer protocol解析というのは、割り付けられてちゃんとその検査を受けた人だけを解析したものですけれども、それで見ると1.45とか1.49という数字が出ていますから、1.5倍近く発見率が増えたということです。ということは、ちゃんと検査を受けた人に関してはがんの発見率が増えたのだけれども、実際その検査を受けた人がすごく少なかったということになります。赤のラインの下のところに参加率というのを出していますが、これはくじ引きで割り付けられたけれども検査を受けなかった人が、全大腸内視鏡ではS状結腸鏡に割り付けられた人の0.63倍という形になりまして、かなり下がってしまいますということになります。
 これも同じやり方で、便潜血免疫法の発見率を1とした場合に、全大腸がどのぐらいになるのかというところです。Per protocol解析にすると4.22とか2.28という形になりますので、ちゃんと検査を受けていただくと発見率が飛躍的に向上しますけれども、実際くじ引きで割り付けられても受けない人がかなり出てくるので、Intention-to-screen解析にしますと、そんなに発見率が上がらなかったり、有意差がなくなってしまうというものでございます。
 これは複数回検査のRCTという形で、この場合は3群に3万人を分けて、便潜血免疫法を2年に1回の4回提供するというのと、S状結腸鏡と全大腸内視鏡をベースラインの1回のみという形で、発見率を比べてみたという形になります。4.5とか2.3という数字が出ていますけれども、これは何々と比較してということではなくて、発見率そのものを示しているわけですが、4回やったのと1回やったのを比べてみると、4回やった便潜血のほうがIntention-to-screen解析ではAdvanced neoplasiaの発見率が高くなってしまう、大腸がんの検出率も高くなってしまうというもので、一番下に書かれている参加率が物すごく差が出てしまうというところが出ているわけなので、恐らく今までの検診の有効性評価研究と違って、参加率がどうしてもすごく変化してしまうという臓器についての情報が見えるというような研究の仕方であると思います。
 この考え方は大腸がんだけではなくて、肺がんとか子宮頸がんとかでももう論文が出始めています。これは4-IN THE LUNG RUN trialというもので、低線量CTを用いた肺がん検診について、一応1年に1回の検診というところで死亡率減少効果を示す論文が出ているのですけれども、ヨーロッパでは2年に1回でどうだろうと。放射線の被爆線量を減らしたいとか、リソースが足りないというところがあるので、2年に1回に減らせないかという形の無作為化比較試験であって、これも評価指標が、右の下に書いていますけれども、アウトカムはstageI/II例の切除ができる症例の累積発見率ということになりますから、これもTest performance研究という位置づけです。現在進行中で3~4年ぐらいでデータが出てくる形になるかと思います。
 この代替指標を利用するに当たってどんなバイアスが挿入されるのかというところです。この表で左側は子宮頸がんに使ったような浸潤がん罹患率減少効果というものですが、これは自然歴、前がん病変を放っておいたらどうなるのかというリスクが分かっているという条件が必要になりますし、研究手法としては無作為化比較試験をやってという形にはなると思いますけれども、この場合もどのぐらい追跡期間が必要なのか、前がん病変を放置したら何年後ぐらいに浸潤がんになるのかというのが分からないところもありますので、あまり短い研究だと効果は過小評価をされるというところになります。
 過剰診断ということに関しては、無作為化比較試験なので、すごく入ってくるということはないのでしょうけれども、多少なりともそういうものが入ってくる可能性は一応あります。
 右側の大腸がんとかで使っているTest performance研究というものに関しては、確かに発見率だけを使うというところがちょっとありますので、これは何々と比較してどうかという形なので、既存の検診手法があるというのが前提条件で、しかもそれがちゃんと今までの有効性評価が行われてきているというものでないとどうしてもいけないという形になりますから、全く何にも診断方法がない状態で新しい検診手法を見つけました、では、これで感度・特異度だけでやりますというわけには使えないという条件ははっきりしていますので、そこのところに御注意いただきたいと思います。
基本的にこの代替指標というのは研究期間を短くすることが可能なもので、うまく活用すればいいのですけれども、今よく行われているのは検診回数、対象年齢などの再評価を行うというのは非常に適していると思いますが、既存の検診手法で死亡率減少効果があるということが前提条件になるので、実際の利用できる範疇というのはかなり限られているというところになるかと思います。
 これからゲノムの研究とかいろいろ出てくると思いますが、その辺に利用可能かというところになりますと、今、お話をしたようなところになりますし、ゲノムで見つけようとしているものと今までの検診手法で見つけようとしているもののスペクトラム、どんなものが見つかるのかというところの基礎的な解釈をまずはしっかりやらないと、なかなかこの方法は使えないのかなというところでございます。
 以上でございます。
○大内座長 ありがとうございました。
 ただいまの資料2につきまして御質問、御意見を承ります。祖父江構成員。
○祖父江構成員 祖父江です。
 海外での評価事例を検討してまとめてくださったのはいいのですけれども、そのお題が「死亡率減少につながる頑健性の高い」ということですから、死亡減少効果を判断するということにポイントを置くとすると、1つは浸潤がん罹患で代替するというのはあるでしょうけれども、一番検討すべきは、既に死亡減少効果が確立した検査法があって、第二の方法として検討するときに期間を短くできないかと。ここのところが一番需要が高いところだと思うのです。その際に、第1相、第2相とかいう形でまとめるということが示されていますけれども、もうちょっとペアで行う検査。同じ人に2つの異なる検査を同時に行って、その結果を見ると。感度と言っても、どちらが発見のきっかけになっているかを加味した上で、仮に新しい検査法が既存の死亡減少効果が確立した検査法で発見される例を全て発見できていたら、死亡減少効果というのはそれだけで保証されるのではないですか。
○中山構成員 全部を発見されているとなれば、それはおっしゃるとおりだと思います。
 あとは発見される病変のスペクトラムの解析というところで、余分に見つけている分が一体どんなものかということだけをきっちり確認すればいいというので、恐らく両者が完全に一致するかどうかというところはやってみないと分からないところがあるとは思いますけれども。
○祖父江構成員 だから、感度と言うと数だけの問題になるのだけれども、2つの検査を同時に行うということで重なりが確認できるわけです。既存の死亡減少効果が確立している検査で発見される発見例を全て発見できたら、死亡減少効果はあるでしょう。
○中山構成員 おっしゃるとおりだと思います。それは、ちゃんとそういうことになっていればということですね。分かります。
○祖父江構成員 そういうことがこの検査法の中の数字に出てこないのですか。
○中山構成員 出てこないですね。これは第2相のところでペアテストでやるというところになっていますけれども、WEO方式、IARC方式というのはもう少し先のところも考えていて、そういうところにプラスして、実際のプログラムとして成立するのかどうかというところもかなり深く考えられているというものでございます。
○祖父江構成員 いや、深く考えるのではなくて、短期の間に死亡減少効果を評価するためにどうするのかということです。別に深く考える必要はなくてですね。このために問題をものすごく複雑にしているように思いますけれども。これはコメントです。
○中山構成員 はい。
○大内座長 若尾構成員。
○若尾構成員 若尾です。
 とても素人的な質問になってしまうと思うのですが、乳がんの場合は死亡率の減少という指標で見るということが確立されているということで、コメントが全く報告されていないのですが、今のお話を伺っていると、将来ポリープならポリープで、これがどういうふうに進展していくのか分かっているので、死亡率減少ということではなく、ポリープ等を発見するということが代替指標になるというふうに受け取ったのです。
 そういう考えを乳がんのことに重ね合わせますと、乳がんで片側を治療された方、たくさんいらっしゃると思うのですが、そういう方の健側もしくは術側の組織の残りの部分をエコーで検査をして発見したら、それが将来どういうふうに死亡率につながるのかということも考慮に入れてもいいのではないかなと思ったのです。
 もし全然見当違いなことをお尋ねしているとしたら申し訳ないのですが、今のお話を聞いていると、死亡率減少につながることを代替指標にするというようなことでしたので、私のこの疑問に対してどんなふうにお答えしてくれるのかお尋ねいたします。
○中山構成員 検診の有効性評価ガイドラインというのは、少なくとも日本の状況だと、平均的なレベルの健常者、つまり、がんと診断されていない方を対象にしてこれまでエビデンスを蓄積してきたという形になりますので、既に手術をされた方に対してという形になりますと、そういうデータ自体を集めてこなかったということもあるし、実際に世の中にそういうものがあるのかということも、実はあまりないというところになるので、恐らく今のところ、それに対する返答というのは何もできかねるというところになるかと思います。
 そういうものを評価するのだったら、患者さんの集団に対してそういう研究をしてみるとか、その方に対して新しい方法をやってみたら、既存の方法とどのぐらい比較になるのかということは考えないといけないですけれども、今までその辺は全く考えられていないと思います。恐らくその辺は大内先生のほうが御専門なので、いかがでしょう。
○大内座長 中山先生が今回まとめていただいたのは、世界的に代替指標として通用している項目を整理されたわけでして、今、若尾構成員がおっしゃられたように、乳がんには残念ながらサロゲートがないのです。今まで証明されていないということで、これは確かに事実なのです。例えば子宮頸がんのCINとか大腸がんの線腫というものの自然史が明らかになっていて、放っておけば死亡率に直結するということになる。そういうものがあれば使えるのですけれども、もちろん乳がんの中でも幾つかパラメータを考えることはできます。例えば非浸潤がん、DCISの発見率が寄与するか。これについては相当前からやられているのですが、なかなか死亡率の評価と結びつかない。
 実はJ-STARTに関しては、セカンダリ・エンドポイントとして累積進行乳がん罹患率を見ようとしているのですが、これは祖父江構成員と一緒に考えたサロゲートなのですけれども、これはまだ代替指標として確立されていないのです。世界で初めてこれを見ようとしているのですが、ただし、それが見えたとしても、死亡率減少効果までたどり着かないと、そこまで証明し切れないと使えないという大きなジレンマに陥ってしまいます。ただし、これは既にプロトコルに書いてあるとおり粛々と解析しております。なので、超音波上乗せ群における累積進行乳がん罹患率が、マンモグラフィ単独群における累積進行乳がん罹患率と比較して減少するかが、いずれ明らかになります。ただし、繰返しになりますが累積進行乳がん罹患率が本当に代替指標、サロゲートマーカーとなり得るかということについては、さらに追跡して死亡率減少効果と結びつくという根拠を示さなければいけないわけです。そういったことを含めて今、J-STARTでは研究を進めております。
 祖父江構成員、何か御意見ありますか。
○祖父江構成員 死亡率減少効果の代替指標として提案するということと、死亡率減少効果が認められている検査がある部位のがんに関しての何か代替指標を考えるということはちょっと違う話なので、最終的には死亡減少効果と確認されたものをやるのでしょうけれども、既に既存のものでやるときにショートカットができるということがこの議論の一番のポイントだと思います。死亡減少効果そのものの代替指標というのを考えるというのはなかなか難しいことだと思います。
○若尾構成員 ごめんなさい。ちょっと言葉が足りなかったかもしれない。今、乳がんになる女性の方は8人に1人とか9人に1人と言われているので、体験者の方が非常に多くて、10年たつと一般の健常者と同じ乳がん検診を受けるわけです。でも、反対側の健常側、もしくは残っているところはリスクが高いわけです。そのリスクが高いという人は結構な数の群があると思うのですが、その方たちの今のエコー検診の、そのうち結論が出ますというのをずっと言われているのを待っているのではなくて、代替指標として使えるような検証なり検討なり研究なりが行われていて、そういう一群のある程度のリスクを持っている方で、もう健常者として同じような検診を受けている群に対しての代替指標があればいいなと思ったので、それはまだないと思いますので、一応意見として申し上げました。ここでの議論はできないと思いますので、これで結構です。
○大内座長 ありがとうございました。
 続きまして、報告事項3つ目「がん検診事業のあり方について」に移ります。資料3-1を準備ください。では、事務局から説明願います。
○事務局 事務局でございます。
 資料3-1「がん検診事業評価報告書の更新について」御説明いたします。
 がん検診事業評価報告書の見直しについて経緯を簡潔にお示しします。がん検診の精度管理・事業評価については、平成20年に「今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について 報告書」として初めて方針が示されたところです。平成20年以降も、国、厚生労働省研究班、国立がん研究センター等は連携して、全国の精度管理指標のモニタリング、指標の見直しを行ってまいりました。がん検診における精度管理は、「指標の設定」「指標のモニタリング・評価」「評価のフィードバックと改善」を繰り返すことが重要でございますが、精度管理水準の改善に応じて指標を修正することにより、さらに高い精度を目指した適切な管理が可能となります。このたび、報告書の見直しが10年以上行われていないため、現状を踏まえた修正などについて、厚生労働科学研究班「がん検診事業の評価に関する研究」において検討しました。
 令和4年2月4日持ち回り開催の第34回「がん検診のあり方に関する検討会」の参考資料5において、「がん検診事業のあり方について(案)」をお示ししましたが、プロセス指標の見直しが未完成でございました。今回、プロセス指標の見直しも終了しましたので、新たなプロセス指標を研究班代表の高橋宏和参考人にお示しいただき、令和4年度版の「がん検診事業のあり方について」を発出する予定としています。
 資料3枚目は、報告書見直し前後の主な内容をお示ししております。更新版では、がん検診に関する基本的事項、日本におけるがん検診の実施方法、精度管理手法、受診率向上、全体像・今後の課題について主に見直しております。
 報告書の見直しに伴い、がん検診の指針も一部変更予定です。現在、指針6ページに記載されている事業評価について、平成20年の報告書を参照するところ、更新版に変更する予定です。
 事務局からは以上です。
○大内座長 続きまして、資料3-2につきまして高橋参考人から説明をお願いいたします。
○高橋参考人 よろしくお願いいたします。
 がん検診事業の評価について御報告します。
 10年来改正されていない精度管理の評価方法について、一昨年と昨年度に検討しました。しかし、プロセス指標に関する議論がまだ固まり切れていない状況でした。
 昨年度に終了した研究班ですが、その後、がん検診の精度管理に関する研究班、また祖父江先生が研究代表の職域におけるがん検診の研究班などと協力して、プロセス指標の議論を続けてきました。
 基本的に考え方は、目指すべき感度や特異度に基づいた指標を設定すること。方法は、性・年齢階級別のがんの罹患率を基に算出すること。目指すべき感度や特異度に基づいて要精検率やがん発見率の基準値を算定することとしました。
 このプロセス指標はがん検診事業を評価する一つの指標となっており、短期的な指標として、例えば自治体などが行うがん検診を評価するために使われる指標であり、がん検診を行った後の受診者数や要精検者数などから算出します。
 もう一つ短期的な指標としては、がん検診を行う前に準備ができているかを確認するチェックリストを用いて評価します。長期的な指標としては死亡率の減少ですが、評価まで時間がかかることから、がん検診の年度の評価については、プロセス指標は2つあるうちの1つの指標です。
 プロセス指標はがん検診の工程を評価するもので、がん検診の受診者数、要精検者数、がん発見数などから簡単な計算式で求めることができます。
 このプロセス指標の解釈は、例えば精検受診率は、3期計画では90%という目標値が示されていますが、がん検診で精密検査が必要と言われた方は、本来全員が受けていただくことが望ましい指標です。一方で、精密検査を受診しない方は、未受診者、未受診率となりますが、自治体などが行うがん検診では、どちらか分からない未把握も出てきます。
 そのため、90%以上を目指すのであれば、精密検査を受けない方、また把握していない方の割合を減らすことが精密検査の受診率の向上につながります。100%が望ましいという指標と比べ、要精検率やがん発見率、陽性反応適中度は、高過ぎても低過ぎても問題がある指標であり、この場合何か問題があるのではないかと、そのがん検診のプロセスをチェックする必要があります。
 例えば対象者が高齢に偏っていて有病率が高かったとか、逆に低年齢者が対象者となっているために罹患率が低かった、有病率が低かったなどの評価もできます。一方で、検査精度そのものが低かったなどという問題もこのような分析からわかりますので、プロセス指標をチェックすることによってがん検診の質を上げることができます。
 それでは、およそ15年前にこのプロセス指標がどのように決まったかということですが、簡単にいうと、例えば乳がんの精検受診率を47都道府県のデータを高い順にプロットして、低いほう、図の右側の都道府県のボトムアップを図ることに重きが置かれましたので、目標とする値というのはトップ10%、およそ都道府県のトップ5つの平均値を目標値としましょうということになりました。
 一方で、許容値は上から70%とされ、47都道府県ですので、33か34番までぐらいの都道府県までの値を許容しましょうという、科学的な根拠というよりは、実際に基づいた値の決め方が平成20年に行われました。
 一方で、がん検診の精度管理の状況は年々向上しています。これは都道府県、市町村の努力の結果かと推測しますが、例えば上の精密検査の受診率は、徐々上がっていることが示されています。要精検率や陽性反応適中度は高くても低くてもいけないという指標ですので、どちらがいいというわけではありませんが、いずれにおいても全体として改善が見られます。こうしたことから基準値を見直したほうがいいのではないかという機運が高まりました。
 一例として大腸がんのプロセス指標をどのぐらいの都道府県が達成しているかという数を示しています。左は要精検率で、下側の四角で囲ってある数字が47都道府県のうちクリアしている都道府県の数になります。要精検率については13年間であまり変化はありませんが、右上の精検受診率の四角の中を見ますと、2005年の当時は7つだった都道府県が最近では33都道府県。左下のがん発見率で見ますと、30だった都道府県が45に増えており、おおよそ住民検診の質は向上が認められるという評価となりました。
 このような中で新しい基準値をどのように定めるかというところが議論されました。いろいろなアイデアや決め方がある中で、専門家の間で、多くの議論がされました。コンセプトとしては、これまでベンチマークで設定した基準値はクリアしてきたので、理想的な環境でがん検診を行った場合はこのぐらいの値をクリアできるだろうという値を求めることになりました。
 左側の旧基準値を決める際に用いたデータに対して、右側が新基準値を決めるときに必要としたデータです。特に赤い字で示してあるところが新しく採用されたパラメータであり、子宮頸がん検診のCIN3以上の発見率や、非初回受診者の2年連続受診者割合を乳がんや子宮頸がんに適用しました。
 それに加えて感度や特異度、これは測定できなかったため指標にはできませんでしたが、鋭敏にがん検診を評価できるため、感度や特異度に関するデータを、望ましい環境で行われた場合のがん検診のデータから抽出することを試みました。
 また、対象年齢は、胃がんは指針では50歳以上とされましたので、胃がんの年齢をこれに合わせたことと、子宮頸がんは20歳から74歳、もしくは69歳ですが、ほかのがん種に比べると年齢階級が非常に多かったところから、ほかのがん種で用いられている40歳以上とそれ未満で区切り、3つの年齢区分としました。
 プロセス指標の算定式を下の四角の中に示します。基本的な考え方は、これらプロセス指標に用いられる要精検率やがん発見率、陽性反応適中度は、計算式において有病率、感度、特異度の3つのパラメータから算定できることから、感度、特異度、有病率を決めると、要精検率や発見率、陽性反応適中度などが求められるという考えに基づいています。
 肝となりますのは、基となる感度と特異度、がんの発見率をどう決めるかということですが、感度と特異度はがん検診のガイドラインのデータを基に感度を抽出しました。
 特異度は、先ほどの計算式の中から1マイナス要精検率で近似されますので、要精検率の上位70%の都道府県の値を基に特異度を算定しました。また、がんの発見率は、直接測ることができないため、がんの罹患率で近似値を求めました。これらは性・年齢階級別、受診歴別に基準値をそれぞれ算出して、それらを年齢構成で再構築する方法でこれらの基準値を求めました。
 一例として大腸がんの基準値を求めた流れを示します。まず感度をガイドラインから抽出し、特異度を1マイナス要精検率で求め、がんの罹患データをがん登録データから抽出し、3つのパラメータを設定しました。
 その後、算定式に沿って新しい基準値を算出し、構成される年齢の分布によって再構築し、最終的にがんの発見率や陽性反応適中度を求めました。理想的な環境において発見率や陽性反応適中度が算定されましたが、ここで1つ問題が発生しました。このようなやり方で実際の状況に一致するようながん種がある一方で、例えばがん発見率などにおいて乖離が大きながん種もありました。この乖離をどのように解消するか、議論が重ねられました。実情から外れたデータを基準値とした場合に、現場の医師や検診の実施者が戸惑うのではないかとか、もあまり目安にならないのではないか等々の意見があり、これを集約・再解析するのに時間を要しました。
 理想的な環境で求められたデータを実測値と比べてどのぐらい乖離があるかを示します。黒い折れ線と青い折れ線が一致していれば理論値と実測値がおおよそ合っていると解釈されます。大腸がんはおおよそ一致しており、このデータでよいと判断されました。
 一方で、乖離が大きかったがん種としては、肺がんと乳がんがあります。肺がんの乖離が大きかった理由としては、検診以外で胸部X線など、検診を受ける機会のある方が多く存在する可能性、また肺がんの検診に使われている胸部X線検査そのものの感度が実際はもっと低い可能性を加味して、ようやく理論値と実測値が合ってきました。
 一方で、乳がんも乖離が大きかったがん種ですが、乳がんは2年に1回の検診間隔が推奨されていますが、特に職域などにおいて毎年乳がん検診を受診する方も多いことが想定されます。そのため、連続受診している方がある程度いるということを加味して、2年ではなくて1.4年でようやく乳がんの実測値と理論的な値が合ってきました。そのため、理想的なデータをそのまま使えるがん種と、ある程度実際の状況に合わせてパラメータを見直す必要があるながん種もあり、ようやく新しい基準値が示されました。
 一つの値を示しましたが、全国の年齢階級・男女比・初回非初回に基づいて算出したため、これまでプロセス指標を基にがん検診の精度管理を行っていた住民検診においてはおおよそそのまま受け入れができる市区町村もあるかと思いますが、職域におけるがん検診においては、年齢構成などが若年層に偏っており、そもそもがん検診がどういうものかとか、精度管理をどのようにやればいいというところから議論しなければならないこともありますので、職域におけるがん検診においてこの一つの値を参考とせず、それぞれの状況に合わせた基準値を算出するなどの調整が必要ではないかと思います。
 具体的な算出方法に関しては、職域のがん検診研究班の祖父江先生と共同して報告書をお示しすることを考えております。
 私からは以上です。
○大内座長 それでは、資料3-1と3-2について御質問、御意見がある方はどうぞ。祖父江構成員。
○祖父江構成員 高橋参考人に補足しますと、用いた値、特に要精検率が地域保健事業報告に基づいているので、この値がまずは地域のほうで当てはまるものなのですけれども、職域のほうで性・年齢あるいは初回・非初回の部分というのが違うので、代表値としては違う値を提示すべきであるということはすごく言われておりまして、議論を始めると言っておられましたけれども、もともとデータがそんなにないので、議論もしようがないのです。なので、早急にこの分布の違いを加味した上での代表値というのを職域のほうでも計算をして提示する方向で行きたいと思っております。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 職域についてもこれを提示するという方向で動いています。
 ほかに御意見等ありますでしょうか。
 資料3-1の4ページに「報告書見直しに伴う指針の変更箇所」が示されておりますので、これが今後発出されることになります。よろしいでしょうか。
 では、続きまして、報告事項4番目「職域におけるがん検診の実態について」です。資料4につきまして事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。資料4「被用者保険におけるがん検診の実施状況について」御説明いたします。
 こちらの資料は、「保険者データヘルス全数調査」の調査結果の一部です。同調査は、日本健康会議における「健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025」の目標数値の達成状況等の把握のほか、データヘルスや予防・健康づくりの取組状況について、市町村国保、健保組合、共済組合、国保組合、協会けんぽ、広域連合といった全保険者一斉に調査を実施するもので、健保組合、共済組合、全国健康保険協会及び国保組合に対する任意のアンケート調査です。今回令和4年に実施した令和3年度調査からがん検診に関する項目も含め、その結果を当省保険局保険課がまとめました。職域におけるがん検診の実態を継続的に把握する手段の一つとして本資料を活用したいと考えております。
 まず、日本の医療保険制度において、被用者保険者である協会けんぽ・健康保険組合・共済組合の加入者数は、65歳までの医療保険加入者数の約70%を占め、被用者保険の大半を占めております。次のページから調査結果をお示しします。
 こちらは全被用者保険者によるがん検診の実施状況です。いずれのがん検診においても保険者単独あるいは事業主と共同で実施している保険者が多くなっています。被扶養者に対するがん検診では、保険者単独のほか、自治体がん検診への受診勧奨を実施する保険者も一定存在しております。
 資料4枚目から8枚目には、がん種ごとにどのような検査を実施しているか、市町村が実施することを推奨するがん検診を定めた「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づく検査方法や、参考資料5「令和4年度市区町村におけるがん検診の実施状況調査」で報告されている指針外の検査方法に対して、それぞれ実施の有無を調査しています。資料4枚目は胃がん検診で実施された検査方法についてお示ししています。
 資料5枚目は子宮頸がん検診、資料6枚目は肺がん検診、資料7枚目は乳がん検診、資料8枚目は大腸がん検診で実施された検査方法をお示ししております。
 資料9枚目は、全被用者保険者におけるがん検診の受診機会についてお示ししています。がん検診を単独で実施している保険者よりも定期健康診断等の健診と併せて同じ機会に提供する保険者が多いです。被保険者・被扶養者といった資格区分別では、受診機会に大きな傾向の違いはありませんでした。
 資料10枚目は、全被用者保険者におけるがん検診の実施範囲についてお示ししています。がん検診ごとに傾向に大きな違いがあり、特に肺がん検診については基本項目として加入者全員に実施されることが多いです。胃がん・子宮頸がん・乳がん・大腸がんにおいては、希望者へのオプションあるいは一定条件下で提供することが多いですが、その割合は子宮頸がん、乳がんで多くなっています。
 資料11枚目は、全被用者保険者におけるがん検診の費用負担にかかる保険者の補助についてお示ししています。いずれのがん検診においても、一律で「全額補助」あるいは「一部補助」を実施している保険者が多いです。他方で、対象者により補助の有無や補助割合が変動する保険者も一定存在しています。
 資料12枚目からは、がん検診を実施している保険者において、がん検診の対象者・受診者数を集計しました。がん検診の対象者・受診者数の集計定義については、市町村が実施することを推奨するがん検診を定めた「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づく対象年齢、受診間隔を設定しています。
 資料13枚目は、がん種別ごと・集計属性ごとに対象者数・受診者数いずれも回答している保険者のみを集計対象として、健保組合と共済組合におけるがん検診の対象者・受診者数をお示ししています。胃がん、肺がん、大腸がん検診については50%を超える受診率が確認される一方、子宮頸がん、乳がん検診の受診率は低くなっています。
 資料14枚目は、全被用者保険者におけるがん検診の要精密検査の対象者把握と受診勧奨の状況をお示ししています。要精密検査対象者を把握している保険者はおよそ3割程度であり、そのうち7割以上が対象者に受診勧奨を実施しています。受診勧奨を行う保険者のうち8割以上はその後の受診状況を確認し、本人からの情報提供やレセプトによる確認が多いようです。
 資料15枚目は、健保組合と共済組合におけるがん検診の要精密検査対象者数をお示ししています。こちらは、がん検診の結果から要精密検査となった者を把握している保険者のうち、がん種別ごとに対象者数・受診者数・精密検査受診者数いずれも記載している保険者のみを集計対象としています。なお、ここで参考にお示ししている要精密検査率とは、がん種別に保険者ごとのがん検診受診者数における精密検査対象者数を表しています。
 資料16枚目からは、参考資料として国保組合を加えて保険者種別に調査結果をお示しておりますので、御確認いただければ幸いです。
 資料4について、事務局からは以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 それでは、資料4につきまして御質問、御意見を承ります。いかがでしょうか。中山構成員。
○中山構成員 初めての調査ということで、情報がしっかりよく分かったと思うのですけれども、ショッキングだと感じたのは、子宮頸がんとか乳がんがオプションという位置づけがかなり目立っていて、その結果、受診率がほかのがん検診に比べて低いという問題です。職場で女性がちゃんとしたサービスを受けにくいという環境にあるのがすごくよく分かったということで、何がバリアだったのだろうというところなのですが、働いている女性がこの2つのがん検診の主な対象者になるので、ここを詰めていって体制を整備しないといけないなというのがかなり認識されたというところです。
○大内座長 若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 若尾です。ありがとうございます。
 今おっしゃってくださったことと全く同じことを考えていたのですが、主に3つあります。
 1つは、女性の乳がん、子宮頸がん検診がオプションとしての位置づけにされているということは、このがん検診の在り方を検討する上では大きな問題だなと思いますので、この改善はとても重要なことだと思います。
 2点目です。5ページのグラフを見たときに、事業所でのがん検診の幾つかの種類をお示しいただいたのですが、その中で子宮頸がんの自己採取というものがあったと思います。職域で子宮頸がんの自己採取を行っているのが一定数あるということは、もしかしたら受診率を上げるということを目的としているのかなと思ったのです。がん検診の本来の目的を理解していない。受診率を上げるために子宮頸がんの自己採取を推奨しているということがあるとしたら、むしろ誤解を与えることになるので、ここはチェックをすることが必要だなと思いました。
 3点目ですけれども、7ページ、8ページに「その他」という分類があるのです。「その他」というのは一体何なのか。分かる範囲で教えてください。
 以上です。
○大内座長 2点目、3点目の御質問について、事務局のほうで何か回答ございますか。
○事務局 ありがとうございます。
 2点目の子宮頸がん検査における自己採取については、どういった目的でそういうことをしているかというのは、このアンケート調査だけではお答えしにくいところだと思うので、また今後の検証というところがあると思います。
 3点目のところ、乳がん検診等で「その他」の検査はどういったところが報告されているか。実際に調査に当たっていただいた保険局保険課の方から、分かる範囲で結構でございますので、お答えいただけますでしょうか。
○保険局保険課 厚生労働省保険局保険課でございます。本日、御意見いただきましてありがとうございます。
 今、御指摘いただきました乳がん検診と大腸がんの「その他」の項目について、こちらのほうで確認しまして、改めて回答させていただければと思います。申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
○大内座長 よろしいでしょうか。
○若尾構成員 はい。
○大内座長 では、井上構成員、お願いします。
○井上構成員 ありがとうございます。
 せっかく手を挙げたのですけれども、他の構成員も御指摘になっていました女性のがんがオプションのサービスであるというところが、私もここの中では一番重要な問題だと考えております。そもそもオプションという位置づけからオプションでない位置づけに変えていく必要があると感じました。これはコメントです。
 もう一つ、聞き逃したかもしれないので、確認だけさせていただきたいのですが、12ページの資料「がん検診の対象者・受診者数の集計定義」は、結構最近の調査にもかかわらず、胃がんの対象者が41歳以上となっています。実際には50歳以上に引き上げて行われているところもたくさんあると思いまして、分母が41歳以上で、受けた人が51歳になっていますと、その分分母が増えるので検診受診率が減ってしまうと思われます。解釈が間違っているかもしれないので教えてください。
○大内座長 これは保険局になりますか。
○事務局 そうですね、保険局保険課の方、いかがでしょうか。当課もアンケート調査項目を決める時に連携しておりますので、私のほうか、いずれかでお答えしようと思いますが、まず保険局保険課の方からお答えいただけますでしょうか。
○保険局保険課 ありがとうございます。厚生労働省保険局保険課でございます。
 12ページで表示させていただいております対象者、受診者についてでございますが、受診者につきましては、対象者のうち受診者として御報告いただいている数になりますので、いずれも41歳以上あるいは40歳以上の対象者のうち受診したものを御報告いただいているというデータでございます。
 もし健康局がん・疾病対策課から補足があればお願いいたします。
○事務局 ありがとうございます。
 補足です。40歳以上、41歳以上に対象者を決めた理由としては、恐らく職域検診で胃部X線検査を実施しているところもまだまだあると予想したためです。その場合、指針では40歳以上、1年に1回も当分の間認めていますので、まずは初回の調査というところで幅広に41歳以上の者を対象として今回調査をする趣旨で、調整させていただきました。
 ただ、先ほど井上構成員が御指摘いただいたとおり、指針では50歳以上、2年に1回というところがありまして、今回内視鏡の検査を実施している保険者も比較的多くみられましたので、今回の結果を踏まえて今後の調査方法を変えていければと考えております。
 以上です。
○大内座長 どうぞ。
○井上構成員 ありがとうございます。分母と分子がずれると思いも寄らぬ評価になってしまうこともあるので、せめて対象年齢を聞いたりして分けながら解析したほうがいいのかもしれません。
 ありがとうございました。
○大内座長 では、松田構成員。
○松田構成員 ありがとうございます。
 職域におけるがん検診の報告、保険者でのがん検診ですが、職域におけるがん検診の実態と問題点が浮かび上がったと思います。とりわけ乳がん、子宮頸がん検診が提供されない、受けられないということです。今回の調査から国民生活基礎調査と比較性のある受診率を求めることができるのでしょうか。もう一つは、職域で受けられない人たちは市区町村の検診を受けることがあろうかと思うのですが、その数字は今回の調査では把握ができないのか。お伺いしたいと思います。
○大内座長 事務局、回答できますか。
○事務局 1点目の受診率の把握という部分については、この調査が初回であるものの、多くの保険者の方々に御協力いただきました。回答率というところでは、今後も保険者と連携して調査の精度を上げていく必要もあるところでございますが、本調査を少しずつ精度を上げていくことで受診者の把握というところにもチャレンジできるのではないかと期待しております。
 2点目のところにつきましては、まず一度保険局保険課の方からお答えいただけますでしょうか。
○保険局保険課 厚生労働省保険局保険課でございます。
 申し訳ありません。もう一度御質問をお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。申し訳ありません。
○松田構成員 職域でがん検診を受けられない人、要するに保険者が提供するがん検診を受けられない場合、市区町村のがん検診をお受けになる方があろうかと思うのです。その人たちはこの調査では把握が全くできないのでしょうかという質問です。
○保険局保険課 松田構成員、御質問いただきましてありがとうございます。
 こちらについては、基本的には保険者が実施するまたは事業主が実施するいずれかのがん検診に対して受診したもののみを把握しているものでございまして、自治体ががん検診の受診勧奨をした結果の受診率などはこちらの調査では網羅できていないような状況でございます。また、保険者においてそれらの数が把握できるかどうかというところは、こちらのほうでは確認ができていないところでございます。
 以上でございます。
○松田構成員 分かりました。ありがとうございます。
○保険局保険課 ありがとうございます。
○大内座長 では、高橋参考人。
○高橋参考人 すみません。参考人という立場で発言をお許しいただきありがとうございます。
 1点、14ページにあります精密検査の対象者の把握につきまして、3割の方が保険者より把握されているということですが、保険者のヒアリングを行ったところ、把握のできない理由として、個人情報保護法により、市区町村の検診はこれらを把握するための個人情報保護の除外規定に当たる一方、職域ではこれに引っかかるために精密検査の把握がしにくい、もしくはできない状況です。そのため、把握するにはオプトアウトのような形で事前に確認しているところもあるようです。職域において精検受診率を上げるに法律の立てつけを議論する必要があることを御配慮いただけますと、職域におけるががん検診の質向上につながりますので、コメントさせていただきました。
 ありがとうございます。
○大内座長 ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 では、以上をもって報告については終了させていただきます。
 次に、2の議論、「新たなステージに入ったがん検診の総合支援事業」に関して、資料5に基づいて事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。資料5「今後のがん検診の受診率向上に資する方策について」御説明いたします。
 「新たなステージに入ったがん検診の総合支援事業」は、がん検診受診率向上に効果の大きい個別の受診勧奨・再勧奨を実施するとともに、子宮頸がん検診・乳がん検診の初年度対象者にクーポン券を配布するものです。また、精密検査未受診者に対する受診再勧奨にも取り組んでいます。本事業のうち、クーポン券事業についてこれまで議論してまいりました。
 資料3枚目は第33回「がん検診のあり方に関する検討会」の資料再掲ですが、子宮頸がん検診・乳がん検診のクーポン券利用状況をお示ししております。クーポン券利用率は特に子宮頸がん検診で全国平均値8.7%と低い状況です。
 子宮頸がんの罹患は20歳代で上昇するため、この年齢層での子宮頸がん検診受診率の向上は重要な課題です。クーポン券を初年度対象者に送付する意図は、子宮頸がん検診の啓発と、初回のみならず、その後も継続してがん検診を定期的に受診していただくよう受診行動の変容を促すことです。将来的ながん検診受診率の向上につなげるために、クーポン券の利用率向上を含めた、クーポン券の効果を高める方策について検討することとなりました。
 クーポン券利用率向上に向けて、子宮頸がん検診について、若い世代への教育や普及啓発を実施していく必要性についてこれまで御議論いただきました。
 特に20歳代への啓発について、クーポンの利用率向上にもつながる好事例が求められ、普及啓発・教育に関して、自治体における事例を収集し、効果的と思われる取組例を周知することの提案がございました。
 令和4年度「新たなステージに入ったがん検診の総合支援事業」の実施状況等の報告において、具体的な市町村の取組について情報収集を行いました。「SNSを活用した啓発」「イベント等での啓発例」「学校と連携した啓発例」「その他の取組例」に分けて、資料8枚目から御紹介します。
 まず、SNSを活用した市町村の取組例です。Facebook、Instagram、Twitter、LINEを使ってがん検診の実施内容を掲載し、受診勧奨や予約状況の周知を実施している市町村がございました。市町村のホームページ、メールやメールマガジン、市町村独自のアプリを利用した取組も報告がございました。
 続いて、イベント等での啓発例です。乳がんのピンクリボン月間を利用した普及啓発や、乳幼児健診等の集団健診を利用した周知、ショッピングモールでの普及啓発やがん検診の実施、新型コロナウイルスワクチン接種会場でのがん検診の啓発、企業との連携による啓発を実施している市町村がございました。
 学校と連携した啓発例です。がん検診に関する出張講座を実施したり、小中学生、高校生に対するがん教育において、子宮頸がん検診の啓発を行っています。大学や専門学校、看護学生に対する普及啓発を実施している市町村がございました。
 最後に、その他の取組例です。防災無線、コミュニティラジオ、地域のケーブルテレビ、公民館を利用してがん検診の案内、受診勧奨を実施している市町村がございます。大学生の夏期休暇に合わせた子宮頸がん検診受診期間の設定でしたり、同時期にクーポン券を送付する例、市町村間相互乗り入れ制度を実施している市町村もございました。
 資料12枚目には、工夫した取組例を報告いただいた市町村におけるクーポン券利用率と、報告がなかった市町村のクーポン券利用率を単純に比較したものをお示ししています。前年度調査したクーポン券利用率を活用しており、あくまで参考値として取組の有無とクーポン券利用率の関連を調査したところ、子宮頸がん、乳がん共に、取組ありの市町村の方が、取組なしの市町村よりクーポン券利用率が高い傾向にありました。
 今回市町村の取組例を紹介しましたが、ここで今後のがん検診の推進策について、次の3点から検討いただきたく存じます。
 まず、市町村における取組を経年的に追跡する必要はございますか。普及啓発・教育に関して、市町村における好事例を紹介しましたが、実態把握としてさらに調査できることはないか、御意見いただきたいと存じます。
 続いて、現行の事業をより有効に実施するために、より効果的に考える観点から普及啓発・教育においてどのような工夫が必要でしょうか、御意見いただきたく存じます。
 最後に、市町村におけるSNS等の利用等、がん検診受診率が特に低い若年者に正しく確実に情報を伝えるためにはどのような工夫が必要でしょうか。また、市町村におけるがん検診の受診勧奨について、ソーシャル・インパクト・ボンドといった民間業者との連携についてどのように考えるか、御意見いただきたいと存じます。
 事務局からは以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 ただいまがん検診の総合支援事業について、事務局から資料が提供されましたが、最後の視点にありました3点を含めて、まず御意見等をいただきたいと思います。いかがでしょうか。若尾構成員。
○若尾構成員 若尾です。ありがとうございます。
 今回「新たなステージ」と上段についているということは、今までの「より一層努力する」とかということではなく、本当に「新たなステージ」というような提案をしていかなければいけないなと思うのですが、先ほどから何度も言われていますけれども、女性特有の乳がん検診、子宮頸がん検診がまるでオプションのような取り扱われ方をしているという既存の考え方、思い込みというのを、女性も含めて、企業も含めて、市町村も含めて変えてもらうような。例えば、国が推奨するがん検診は男性は3種類だけれども、女性は5種類であるということを明確にするというような言い方も必要なのかなと思います。いつまでもオプションのままでは本当に何も変わらなくて、微増はするかもしれませんけれども、大きく変わるということはないと思います。
 幾つかの対策を取れば受診率が上がるということをおっしゃっていたので、対策を取れば上がるのですね。だけど、今までの延長線上の対策ですと、そんなに大きな変化にはならないと思うので、ここは大きく、今までのどうしたら乳がんや子宮頸がんの受診率が上がるのだろうという見方ではなくて、乳がん検診、子宮頸がん検診は国が推奨する検診ですよということをもう少し徹底していただきたいなと思います。
 もう一点です。市町村におけるSNS等の利用とか、若い方にがん検診の受診率向上のための啓発ということをいろいろされていると思いますけれども、産業界や行政機関の連携だけではなく、民間の協力もとても大きいと思います。今回の中では民間団体の活動とか啓発というものに触れられていないように見えました。ですので、ここは産官民連携によるがん検診の受診率啓発活動というものにも注目し、がん検診の在り方、明確な位置づけとして民間団体の協力というものもはっきりと求めたらいいのではないかなと思いました。
 以上です。
○大内座長 貴重なコメントをありがとうございました。
 第1点目、特に乳がん、子宮頸がん、女性がん対策を改めて強調してはいかがかということですが、御指摘のとおりだと思います。男性3つのがん種と、プラスで女性は2種目あるわけですけれども、これについての取組が弱かったのではないかと。
 国際的ながん検診ネットワークを考えますと、基本的には死亡率減少効果が世界的に示されているものの中で、乳がんと子宮頸がんというのは第一に取り組まれていることでして、これに大腸がんが入るわけですが、そういった観点からすると、日本のがん検診ということが、私がこう言うのはちょっと問題かもしれませんけれども、国際的視点に立てば、今、若尾構成員がおっしゃったことがもっともなことだと思います。ですので、新たなステージに入ったということそのものについて議論を改めて喚起するような形でいくことについては、多分皆さんも合意されると思うのですが、いかがでしょうか。
(首肯する構成員あり)
○大内座長 それも含め、まず御意見をいただきます。松田構成員、どうぞ。
○松田構成員 ありがとうございます。
 乳がんと子宮頸がんの無料クーポン券が以前にも配布されました。その結果、利用率がとても低いということが明らかになったわけですが、なぜ受診をしないのかという調査、特に20歳の女性の声をぜひ聞いていただきたいと思います。なぜ受けないのか。それに基づいて、受ける必要性なりの情報提供、あるいはどうすれば受けやすくなるかという対策を講ずるべきだと思います。
 40歳の乳がん検診に関して言うと、先ほども職域で受けられない、オプション検査になっているという話があったので、このクーポンが届いた40歳の女性には必ず職場、事業所が乳がん検診を受けさせると。職場で適用できない場合には市区町村の検診を受けに行くことができるように便宜を図る。私は前から、がん検診を受けるために従業員が年休を申請するのではなく、職場が特別な休暇を与えてほしいと言っています。そういう対応をした事業所なりにはインセンティブを与えるとか、女性のがん検診は極めて重要ですから、そのような対応に歩み出さないといけないと思います。
 今回、職域のがん検診についてさんざんお話をさせていただいたのですが、乳がん、子宮頸がんのクーポン配布を機に職域でがん検診を受けやすい体制をぜひつくるべきだと思います。20歳の女性はそれだけではとても対応できそうにないので、どうすれば受ける気になるのかという生の声。20歳の女性あるいは10代の女性の声を聞いていただきたい。それに基づいた対応を取るべきだと思います。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。
 ただいまの松田構成員の御意見は、3項目ありました2番目、現行の事業をより有効に実施するためにどのような工夫が必要かということに関連すると思うのですが、ここについては、もちろん今の御意見をいただいた上で検討を進める必要があると思います。
 挙手されている方がおられますので、そちらを優先します。では、中山構成員。
○中山構成員 今、松田構成員がおっしゃったことと全く同じですけれども、いきなりこれを民間業者に委託して何かをやれということではよくなくて、ワクチンの接種行動とかを見ても、予防活動というのは、年齢が若くなればなるほどなかなか行動変容してくれないということは明らかなので、20歳代の女性あるいは30歳代の女性にどうやってクーポン券を活用してもらうのかということに関しては、実際使った立場の方、使わなかった立場の方に詳細な聴き取り調査をやって、どういう条件、どういうハードルが解消されればなるのかというところをまずは調査をすべきかなと思いますので、その辺のところをやっていただきたいと思います。
 以上です。
○大内座長 では、井上構成員。
○井上構成員 質問半分ですが、最初のポイントで、市町村における取組を経年的に追跡する必要があるかという点について、当然モニタリングしていかなければいけないので、その内容のフォーカスをある程度決めないといけないと思います。これだけ見ると、やったほうがいいと当然思うわけですが、「必要はあるか」というのは、もうやめたいと思ってこのように書かれているのか、それとも純粋にこういう取組をしたほうがいいのかどうかということをここで問われているのか、よく分からなかったので教えてください。
○大内座長 事務局のほうで答えられますね。
○事務局 事務局です。
 市町村における取組を経年的に追跡する必要があるかどうかについては、今後も調査する必要はあると思っています。今回初めて、市町村の工夫した取組について、市町村に少し報告の負担を持っていただいて自由記載で回答いただいたところでした。こういったところで、今、御感想いただいたように、調査していく必要があるというところ、実態が分かることで対策、課題等が見えてくるところもあると思いますので、引き続き調査項目に取組例の報告ができるような部分を設けて今後もやっていきたいと思っています。
 以上です。
○井上構成員 ありがとうございます。
 効率的に質問する内容も答えやすい内容にするなどの工夫をすれば、十分モニタリングしていく有用性はあるかと思いますので、よろしくお願いします。
 以上になります。
○大内座長 では、祖父江構成員、お願いします。
○祖父江構成員 受診率を上げるということもあるのですけれども、2番目の「より有効に」とか「より効果的に」という観点でいくと、適切な受診間隔というのも重要な点でありまして、2年に1回というものが、子宮頸がん、乳がん、あるいは胃がんでもそうなのですが、必ずしも守られていないところがあって、今、ちょうどマイナポータルで個人の受診歴を個人レベルで参照できるという仕組みが普及しつつありますので、そういうことを利用して、必ずしも頻回受けることが効率的ではなくて、適切な受診間隔で受診するということを普及啓発、教育するという観点も重要なのかなと思いました。
 以上です。
○大内座長 受診間隔は非常に大事でして、がん検診には利益と不利益がございますので、今、祖父江構成員がおっしゃったことはきちっと明記すべきだと思います。
 では、河本構成員、お願いします。
○河本構成員 様々な取組例の紹介、ありがとうございます。
 1つ目の今後経年的に市町村の取組を追跡する必要があるかということですけれども、この検討会だけでなく、様々な形で、できましたら画像のようなものも入れていただいて好事例を紹介していただけると非常に参考になりますので、今後も具体的に紹介というか、追跡していただけると大変ありがたいです。
 2つ目の工夫ですけれども、特に子宮頸がん検診については、20歳から受診できますので、大学生や専門学校生などの学生さんも多く含まれることから、学校との連携は不可欠だと考えております。
 3つ目にも関わるのですけれども、私どもの市町村でも自治体が直に啓発するのは限界もあって、若い世代の心に届く啓発というのはなかなか難しいなと考えております。来年度は地元の商業施設と大学と連携しまして、若い世代が多く集まる場所で産学官連携ということで、学生さんの若い感覚をしっかりお聞きして取り入れた啓発のイベントもさせていただくように、計画をしております。1人でも多くの方に検診を受けていただきたいなと思っていますので、また今後で学生さん、若い世代の生の声がたくさん聞けましたら、この検討会でも御紹介できる機会がつくれたらいいなと思っております。
 以上でございます。
○大内座長 では、高橋参考人、どうぞ。
○高橋参考人 
 今後の推進策についてのコメントです。先ほど12ページのスライドで、取組がある自治体のほう受診率が高い傾向があることから、このような市区町村にインセンティブを与えるというのも一つの方策かと思います。アイデアしては、保険者努力支援制度の評価項目の中にがん検診が含まれておりますが、大まかな内容の項目であるため、取り組みを適切に評価するような項目に修正するとよいかと思います。また、これは保険者においても活用できますので、がん検診の適切な実施をした保険者に対してインセンティブをつけることを検討してもよいかと思います。
 以上です。
○大内座長 ありがとうございました。参考にさせていただきます。
 では、福田構成員、お願いします。
○福田構成員 子宮頸がんに関してですが、先ほどもありましたが、若年の頃から定期的に検診を受診するような習慣を身につけるのが重要だと思うのですが、ちょっと気になっているのはHPVのワクチン接種との関係で、御案内のとおり、積極的な推奨をしばらくしてこなかったですが、今年度からまた推奨するようになって、しかも過去何年間かワクチン接種をしなかった方についてキャッチアップするということもやっていますから、今後増えていくと思うのです。そのときにちょっと恐れているのは、ワクチンを接種したから検診はもういいやという考え方になってしまわないかということです。そこを若い段階のところで適切に教えていく、あるいはそういう誤解がないかというのをヒアリング等で聞いていただくとか、両方重要なのだということを伝えていくことに力を入れるとか、実態把握ということもありましたので、ワクチン接種をしたかどうかと受診したかどうかという関係とか、その辺りももし可能だったら把握していけるといいのではないかなと思います。
○大内座長 中野構成員。
○中野構成員 先ほど河本構成員から自治体の悩みを含め御苦労されている点、私も経験がありますのでよく分かります。本当にいろんなことをなさっているので、それが有効になればいいなと思います。
 好事例紹介がありますので、これを横展開で共有されたらいいのかなと思いますので、やはり追跡は必要だと考えております。
 それから、普及啓発・教育は、どこかに出ておりましたが、若い方、高校生ぐらいから早め早めに教育していくということが大切だと感じております。教育には幅広い対応が必要かなと思います。
 また、未受診者の未受診理由を把握ということで、既に過去にも指摘を受けています。調査をされているかどうか分かりませんが、改めて未受診者が、クーポンが届いても受けなかった理由をお聞きになったらどうかと思います。
 若人の方に対してのアクセスは、SNS等々を頻繁に使われると思います。前にも申し上げたと思いますが、厚労省にも20歳代の方がいらっしゃるので、職員の方からも声を聞いて、より身近な存在になって、物事が動いていけばいいなと思います。
 また、民間業者との連携ですぐ思いつくのは、予算の関係で自治体ごとにはできないかと思いますが、有名人の起用とか、ドラマや、映画ができれば等、だんだんそういうふうになるわけですが、何か一つきっかけができればいいなと考えます。
 20歳の方の親御さん世代というのは、まさに御自身のがんが気になる世代だと思います。親御さん世代も娘さん世代への勧奨ができるように、一緒になって働きかけることも一つの考えではないかと思います。親子検診のようなこともできるのかなとちょっと思いつきでしゃべらせていただきました。いろんな知恵を出し合って進むしかないと思います。
○大内座長 ありがとうございました。
 ほかに御意見ありますか。いかがでしょうか。若尾構成員、どうぞ。
○若尾構成員 先ほど産官民と申し上げたのですが、民間業者の協力もあればあったにこしたことはないのですが、私が申し上げた民というのは、いわゆる体験者や支援団体などが行っているがん検診受診に関する啓発活動のことを申し上げました。各都道府県にいろんなそういう団体があるのです。それぞれに行政などと連携して活発な啓発活動を行っています。そういう活動もこの対策「市町村におけるSNS等の利用等」というところには入っています。行政が思いつかないようなことを体験者は気づいたりすることがよくありますので、民間業者もここに入っていただけるといいなとは思うのですが、業者ではなく、本当に一民間団体との連携も視野に入れたらどうかなと思って申し上げた次第です。
 以上です。
○大内座長 ほかに御意見ありますか。
 では、以上にて議論は終了とさせていただきます。
 事務局から連絡事項をお願いします。
○がん対策推進官 事務局でございます。
 長時間の御議論ありがとうございました。
 次回の検討会の詳細等につきましては、調整した上で、また改めて御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、構成員の皆様方、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございました。
○大内座長 ありがとうございました。
 

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線3825)