生活保護と福祉一般:社会福祉法人

3. 社会福祉法人

(1)沿革:公益法人に対する特別法人として、社会福祉法人制度が創設されました。

  • 社会福祉事業に対する社会的信用や事業の健全性を維持する上で、公益法人に代わる新たな法人制度を確立する必要がありました。
  • 強い公的規制の下、助成を受けられる特別な法人として創設されました。=憲法第89条の「公の支配」に属しない民間社会福祉事業に対する公金支出禁止規定を回避することが可能になります。

(2)社会福祉法人が行う事業

  • 社会福祉事業のほか、公益事業及び収益事業を行うことができます。

公益事業とは

  • 社会福祉と関係のある公益を目的とする事業です。
  • 社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれがあってはなりません。
  • 公益事業の剰余金は社会福祉事業又は公益事業に充てなければなりません。

(例)

  • 介護老人保健施設(無料低額老人保健施設利用事業を除く。)の経営
  • 有料老人ホームの経営

収益事業とは

  • その収益を社会福祉事業又は一定の公益事業に充てることを目的とする事業です。
  • 社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれがあってはなりません。
  • 事業の種類に特別の制限はありませんが、法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるものや投機的なものは適当ではありません。

(例)

  • 貸ビルの経営
  • 駐車場の経営
  • 公共的な施設内の売店の経営

(3)設立要件等

  • 社会福祉法人が、安定的で適正な運営ができるように、設立の際に、役員や資産等について一定の要件を課しています。

1 役員等に関する主な要件

  • 理事
    1. 1.定数は6名以上であること。
    2. 2.各理事と親族等特殊の関係のある者が、一定数を超えないこと。
    3. 3.社会福祉事業についての学識経験者、地域の福祉関係者が含まれていること。
  • 監事
    1. 1.定数は2名以上であること。
    2. 2.財務管理に識見を有する者、社会福祉事業に識見を有する者が含まれていること。
    3. 3.他の役員と親族等の特殊の関係がある者であってはならないこと。
  • 評議員
    1. 1.評議員の定数は理事の定数を超えること。
    2. 2.各評議員及び各役員と親族等の特殊の関係がある者であってはならないこと。
    3. 3.社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者であること。
  • 評議員会  全ての法人において必置とすること。

2 資産等に関する主な要件

  • 施設を経営する法人
    原則として、社会福祉事業を行うために直接必要なすべての物件につき、
    • 所有権を有していること
    • 国若しくは地方公共団体から貸与若しくは使用許可を受けていること
    のいずれかが必要です。
  • 都市部等土地の取得が極めて困難な地域においては、民間から敷地部分についてのみ貸与を受けることが認められます。この場合、地上権又は賃借権の設定が必要です。
  • すべての不動産について貸与又は使用許可を受ける場合には、1,000万円以上の基本財産を有していることが必要になります。
  • 特別養護老人ホーム、保育所等、一部の事業については上記要件を緩和する通知が示されています。
  • 施設を経営しない法人
    原則として1億円以上(委託費等で安定的な収入が見込める場合は、所轄庁が認める額)の基本財産を有していることが必要です。
    居宅介護等事業、地域・共同生活援助事業、介助犬訓練事業又は聴導犬訓練事業については、上記要件を緩和する通知が示されています。

3 所轄庁

  • 主たる事務所の所在地の都道府県知事が所轄庁となります。
    ただし、以下に該当する場合は、それぞれに定める者となります。
    • 主たる事務所が市の区域内にあり、実施している事業が当該市の区域を越えない法人は当該市の長(特別区の区長を含む)。
    • 主たる事務所が指定都市の区域内にあり、実施している事業が同一都道府県内の二以上の市町村の区域にわたる法人等は指定都市の長。
    • 実施している事業が二以上の地方厚生局の管轄区域にわたり、厚生労働省令で定めた法人は厚生労働大臣。

(4)規制・監督と支援・助成

  • 社会福祉法人については、規制・監督と支援・助成を一体的に行い、安定的な事業の実施を確保するための仕組みが制度化されています。

規制・監督

  • 社会福祉法人の設立の際には、必要な資産の保有や法人の組織運営等に関して一定の要件を課しています。
  • 適正な施設運営を確保するため、運営費の支出対象経費、繰入れ等に関する規制を行っています。
  • 事業収入は原則として社会福祉事業にのみ充てられ、配当や収益事業に支弁できません。
  • 法人の適正な運営を担保するため、役員の解職勧告や法人の解散命令等の強力な公的関与の手段が法律上与えられています。
  • 事業を実施するために寄付された財産はその法人の所有となり、財産分与(持分)は認められません。また、解散した場合の残余財産は、定款の定めにより他の社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者または国庫に帰属します。

支援・助成

  • 施設入所者(利用者)の福祉の向上を図るため、社会福祉法人による施設整備に対し、一定額を補助しています。
    社会福祉施設の整備・運営
  • 社会福祉事業の公益性にかんがみ、また、その健全な発達を図るため、法人税、固定資産税、寄付等について税制上の優遇措置が講じられています。
  • 社会福祉事業の振興に寄与することを目的として、社会福祉法人の経営する社会福祉施設の職員等を対象とした退職手当共済制度を設けています。
    • 給付水準は国家公務員に準拠
    • 国及び都道府県による補助(各1/3)