野兎病について
病原体
Francisella tularensis グラム陰性小桿菌
感染動物
自然界では、マダニなどの吸血性節足動物を介して、主に齧歯類やノウサギの間で維持されており、これらの動物から直接または間接的に人に感染する。
感染経路
野兎の剥皮作業や調理に従事した際に感染することが多い。リス、ムササビ、ニワトリ、ネコなどとの接触や、マダニの刺咬からの感染例も報告されている。通常ヒトからヒトへの感染はない。
発生状況
北米、北アジアからヨーロッパにいたる、ほぼ北緯30°以北の北半球に広く発生している。
我が国においては、1999年の千葉県での発生を最後に報告がなかったが、2008年に青森県、福島県、千葉県で合計5例の感染が報告された。
我が国においては、1999年の千葉県での発生を最後に報告がなかったが、2008年に青森県、福島県、千葉県で合計5例の感染が報告された。
潜伏期
3日が中心に、多くが7日以内に発症
診断と治療
- (1)臨床症状
潜伏期間後に、突然の発熱(38~40℃)、悪寒・戦慄、頭痛、筋肉痛、関節痛などの感冒様の全身症状が認められる。
その後、弛緩熱として長期化する。野兎病菌の感染力は極めて強く、目などの粘膜部分や皮膚の細かい傷はもとより、健康な皮膚からも侵入できるのが特徴である。皮膚から侵入した野兎病菌はその部位で増殖し、侵入部位に関連した所属リンパ節の腫脹、膿瘍化、潰瘍または疼痛を引き起こす。病原菌の侵入部位によって様々な臨床的病型を示す。 - (2)病原体診断
[1] 菌分離(リンパ節穿刺液、手指の原発巣、口腔液、血液)
[2] 凝集試験 - (3)治療
ストレプトマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質の筋肉内投与が有効。
発症予防
流行地では、死体を含めた野生動物との接触を避け、マダニや昆虫の刺咬を防ぐ。生水の飲用をしない。野生動物を喫食する際には十分加熱する。