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はじめに
2024年の我が国の経済は、33年ぶりの高水準となった春季労使交渉の賃上げや改善が続いている企業部門の動きを背景に、家計部門も一般、パートそれぞれでみた実質賃金がマイナスから脱するなど、緩やかな回復が続いた。名目GDPは初めて600兆円を超え、2020年5月から始まった今回の景気回復局面は、2024年12月の時点で、過去4番目の55か月以上に達しており、過去の局面と比較すると相対的に長期的なものとなっている。
雇用情勢は、完全失業率の改善がみられたほか、女性・高齢者を中心に労働参加が進み、労働力人口、就業者数、雇用者数が過去最高となった。有効求人倍率はほぼ横ばいであったが、人手不足感の更なる高まりがみられ、大企業、中堅企業及び中小企業で人手不足感が強いものとなっている。
賃金については、現金給与総額が4年連続で増加し、実質賃金は3年連続で減少したが、一般、パートそれぞれではマイナスから脱した。2023年と比較すると、現金給与総額については、所定内給与、特別給与ともに増加したが、その範囲は、事業所規模5~29人の中小規模の事業所等にも広がっており、賃金全体としては、力強い動きとなっている。
「令和7年版労働経済の分析」では、第Ⅰ部「労働経済の推移と特徴」において、2024年の労働経済をめぐる動向を確認するとともに、第Ⅱ部「労働力供給制約の下での持続的な経済成長に向けて」において、労働力供給制約の下での持続的な経済成長を実現するための対応について分析を行った。
第Ⅰ部では、第1章「一般経済の動向」において、GDPの動向、経常利益、投資、倒産等の企業部門の動向、個人消費、消費者物価等の家計部門の動向を確認するとともに、第2章「雇用情勢の動向」では、求人、失業の動向、雇用者数の動向を示すとともに障害者、外国人等多様な労働者を取り巻く状況等を確認した。第3章「労働時間・賃金等の動向」においては、我が国における労働時間、賃金、有給休暇等の動向、春季労使交渉の動向等を確認した。
第Ⅱ部では、労働力供給制約の下での持続的な経済成長を実現するための対応について、労働生産性の向上に向けた課題、社会インフラを支える職業の人材確保、企業と労働者の関係性の変化や労働者の意識変化に対応した雇用管理といった三つの観点から分析を行った。第1章では、労働力供給制約の下で持続的な経済成長を実現していくためには、労働生産性の向上が重要であることを、国際比較により示すとともに、産業横断的にソフトウェア投資をはじめとする無形資産への投資を積極的に進める必要性について、詳細な分析を行った。
第2章では、高齢化に起因する社会構造の変化を踏まえ、「社会インフラを支える職業」に着目し、分析を行った。具体的には、これらの職業が直面する人手不足の現状について、求人数や就業者数等のデータを用いて明らかにするとともに、職業の特徴と魅力を整理した。また、社会インフラを支える職業を構成する「医療・保健・福祉」「保安・運輸・建設」「接客・販売・調理」の三つのグループについて、それぞれにおける新規人材の確保、既存人材の定着、及び長期的なキャリアを支える制度への対応について、詳細な検討を行った。
第3章では、日本的雇用慣行の変化や転職市場の拡大、ワーク・ライフ・バランスへの関心の高まりなど、雇用を取り巻く環境に様々な変化が生じていることを踏まえ、こうした変化に対応した雇用管理について検討を行った。具体的には、転職市場の拡大等を背景に、企業と労働者の関係性が変化していることを示すとともに、長期的な視点から労働者の働く意識の変化を明らかにした。また、アンケート調査等を活用し、世代間における働く意識の違いや、継続就業意欲を高めるための雇用管理について分析を行った。

