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2024年4月26日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第1回議事録
日時
令和6年4月26日(金)13:00~
場所
オンライン開催
出席者
田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、朝野 和典専門委員、岩田 敏専門委員、福田 敬専門委員、国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他
議題
○ パキロビッドパックに係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について
議事
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、パキロビッドパックに係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について御議論いただきたいと思います。
対象品目について企業分析が提出されておりますので、企業からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容について先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは、事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、本製品に係る企業分析に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者 入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内で、パキロビッドパックに係る企業分析についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
では、始めてください。
○意見陳述者
意見陳述者の〇〇と申します。本日は、このような貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。
それでは、資料の2枚目を御覧ください。分析枠組みです。
分析対象集団として決まった、重症化リスク因子を有するSARS-CoV-2による感染症患者(小児を除く)となっております。なお書きとして、本邦のSARS-CoV-2変異株流行状況(オミクロン株流行以降)やワクチン接種状況を考慮するとなっております。比較対照技術はモルヌピラビルです。分析の立場と費用の範囲はそれぞれ、公的医療の立場、公的医療費のみと、中医協の分析ガイドラインに従っております。効果指標はQALYで、設定した分析期間は生涯、割引率はガイドラインどおり、それぞれ2%となっております。
3枚目を御覧ください。本剤とモルヌピラビルの追加的有用性を検証するためにSRを実施いたしまして、このスライドはその結果の概要でございます。
クリニカルクエスチョンとして、対象集団は成人または体重が40kg以上ある12歳以上のCOVID-19患者、介入技術は本剤、比較対照はモルヌピラビル、アウトカムがCOVID-19に関連した入院または全原因死亡割合、研究デザインはRCTでございます。
SRの結果、7件の文献が組入れ基準を満たしました。そのうち4文献は本剤のピボタル臨床試験でありますEPIC-HRに由来するものでありまして、1つが主論文で、3つが関連研究でございました。7つのうち残りの3つは、モルヌピラビルの国際共同第Ⅲ相試験(MOVe-OUT)に由来する研究文献で、1つの文献が主要な文献。そして、残りの論文は関連研究でございますが、本剤とモルヌピラビルを直接比較したRCTは見当たりませんでした。
4枚目を御覧ください。こちらはSRによって選択された本剤ニルマトレルビル/リトナビルの研究の概要でございます。
試験名はEPIC-HRでございます。試験デザインは二重盲検無作為化比較試験でございます。介入技術は本剤で、日本の用法・用量と同じでございます。比較対照技術はプラセボ、主要評価項目はCOVID-19に関連する入院または全原因死亡でございます。
5枚目を御覧ください。こちらはSRによって選択された比較対照技術モルヌピラビルの研究の概要でございます。
試験名はMOVe-OUTで、試験デザインは本剤と同様、二重盲検無作為化比較試験でございます。介入技術、比較対照技術、モルヌピラビルの用法・用量は日本と同じでございます。主要評価項目は、全原因入院または全原因死亡でございました。ただ、副次評価項目として、EPIC-HRと同じ、COVID-19に関連する入院または全原因死亡となっていると捉えていましたので、今回は間接比較が可能でございました。
6枚目を御覧ください。こちらは非常に重要なスライドだと感じております。
SARS-CoV-2変異株(オミクロン株以降)やワクチン接種者が組み入れられたRCTについて、オミクロン株優勢期かつワクチン接種者が組み入れられたRCTとして、モルヌピラビルのPANORAMIC試験や本剤のLiu, et al、中国のRCTもSRにおけるスクリーニング対象となりましたが、いずれも患者背景やアウトカムが組入れ基準を満たしませんでした。
具体的には、モルヌピラビルのPANORAMIC試験のアウトカムは全原因入院または全原因死亡であり、本剤のEPIC-HR試験は全原因入院がアウトカムに規定されていなかったため、両試験を用いた間接比較をすることは困難でございました。一方、ニルマトレルビル/リトナビルの中国のRCTですが、こちらはそもそも、成人の既に入院している患者さんが対象であり、アウトカムか全原因死亡及びSARS-CoV-2 RNAクリアランス期間であったため、EPIC-HRとの間接比較は困難でありました。PANORAMIC試験と中国のRCTの間接比較については、両試験間で患者の併存疾患の分布が大きく異なるにもかかわらず、こちらは自社の臨床試験ではないため、集計データしか入手できず、間接比較における患者背景の調整は困難であると考えました。
PANORAMIC試験に関しては本剤においても現在実施中であることはウェブサイトに公表されておりますが、2024年4月時点で、まだ患者さんはリクルートメントしている最中でして、結果は公表されていません。一方で、分析モデルに挿入するほとんどのインプットパラメーターはSARS-CoV-2変異株やワクチン接種が考慮されたものが使用されております。こちらは参考資料として当資料の14枚目から18枚目に記載されております。
追加的有用性を検証する上で、基本的に同じ条件で、さらに患者背景が調整されているのが好ましいと思っておりまして、本剤の患者公表データが唯一入手できるEPIC-HRと同時期に実施されたものと比較することに妥当性があると考えております。そして、ベースラインの患者さんが重症かどうか、ワクチンを打っているかどうか、入院率がどうか、死亡率がどうかということは全てオミクロン株以降、そして、ワクチン接種者のデータを使用しておりますので、獲得QALYや生涯に発生する費用等はオミクロン株もしくはワクチン接種が十分考慮されていると考えております。
次のスライドを御覧ください。7枚目です。こちらは本剤とモルヌピラビルの間接比較のデザインでございます。
直接比較のRCTがないため、アンカーを有する間接比較を実施いたしました。本剤、EPIC-HR試験は自社試験ですので、患者公表データが使えることから、本剤の臨床試験の患者公表データを用いて、モルヌピラビルのMOVe-OUT試験に効果修飾因子を合わせにいったという方法でございます。
具体的には、性別、年齢、人種、肥満、糖尿病、冠動脈疾患、COVID-19の症状発症時期、ベースラインのCOVID-19の血漿、ベースラインの重症度等を効果修飾因子として背景を充てていたということでございます。
アウトカムとしては、COVID-19に関連する入院または全原因死亡となっております。
8枚目を御覧ください。こちらは間接比較の結果の概要でございます。
本剤はプラセボ群と比較してCOVID-19に関連する入院または全原因死亡の割合を●●%、こちらは黄色のところでございますが、減少させることが示されました。一方、モルヌピラビル群では、こちらは公表データしか使えませんので、論文で報告されたとおりの数字となっておりまして、この赤の部分が該当します。●●%、リスクを減少させております。
効果修飾因子を合わせた結果、EPIC-HRのESSが●●になりました。この合わせた集団とモルヌピラビル群の臨床試験の結果を比較しております。その結果、本剤はモルヌピラビル群よりも入院または全原因死亡の減少割合を比較すると●●%、リスクを減少させることが示され、かつ統計的な有意差も認められております。このことから、本剤はモルヌピラビルに対して追加的有用性を有すると考えております。
9枚目を御覧ください。こちらは費用対効果分析の設定の概要でございますので、お手元の資料を御覧いただければと思います。
10枚目を御覧ください。こちらは分析モデルのフローでございます。こちらもお手元の資料を御覧いただければと思います。
次のスライドをお願いします。11枚目です。こちらは結果の概要でございます。
ニルマトレルビル/リトナビルはモルヌピラビルに対してドミナントであることが示されました。具体的には、増分効果、増分QALYが0.042、増分費用が-7,101円で、効果が増加して、費用が減少しておりますので、ドミナントであると考えております。
次のスライドを御覧ください。こちらは確率的感度分析の結果でございます。
左側のプロットが第4象限に位置し、本剤がモルヌピラビルに対してドミナントである確率は75.10%と示されております。
13枚目を御覧ください。最後のスライドで、費用対効果評価結果に基づく価格調整係数でございます。
本剤は、モルヌピラビルに対して追加的適用性を有し、かつ分析の結果もドミナントであることから、有用性加算等の価格調整係数は1.0と考えております。一方で、モルヌピラビルは費用対効果評価結果に基づいて、薬価が今後調整されることが想定されております。その調整された後の薬価を用いて仮に分析してみたところ、本剤のモルヌピラビルに対するICERは1万5000円程度となり、少し結果は変わりますが、価格調整係数に変更はないと考えております。
意見陳述は以上でございます。御清聴いただきましてありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、委員の方から御質問はございますでしょうか。
いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。
続きまして、科学院からパキロビッドパックに係る企業分析についての公的分析のレビュー結果の御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
お願いします。
○国立保健医療科学院
お手元の費-3-4の資料を御参照ください。「ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッドパック)に関する公的分析のレビュー結果」について御説明します。
1ページ目、分析の課題と我々が考える点について4点ほど書かせていただいています。
2ページ目ですけれども、1点目は有効性に関するエビデンスの解釈についてであります。
製造販売業者による追加的有用性の評価及び費用対効果分析では、評価対象技術及び比較対照技術の第Ⅲ相試験であるEPIC-HR試験とMOVe-OUT試験の間接比較により治療効果を推計しているところです。しかし、これらの臨床試験についてはCOVID-19デルタ株の流行以前にワクチン未接種者を対象に行われているものであるため、対象患者が分析枠組みの分析対象集団に合致するとは言えないような状況ではないかと考えております。また、オミクロン株の流行以降、ワクチン接種者では運用及び死亡イベントの発生率等が変動しているものと考えられまして、現時点では治療効果が大きく異なっている可能性があるのではないかと考えています。
また、3ページ目です。
モルヌピラビルの臨床試験において、MOVe-OUT試験ではプラセボと比べて有意な入院または死亡の減少効果が認められた一方で、オミクロン株の流行以降でワクチン接種者が大半を占めるPANORAMIC試験においては、プラセボに対して有意な重症化予防効果は認められなかった経緯がありますことから、やはりこの辺りは慎重に検討する必要があるのではないかなと考える次第です。
4ページ目です。
以上より、どのようなデータを参照して、どういうふうに追加的有用性あるいは費用対効果を検討するのか、検討させていただきたいと考えています。その際には、先ほど製造販売業者の方からもありましたように、費用対効果評価において比較対照技術であるモルヌピラビルが標準治療に対して追加的有用性が示されていないものと評価されているため、そのことをどのように考えるかも併せて検討する必要があるのかなと考えている次第です。
5ページ目ですけれども、2点目、発症平均年齢についてであります。
御提出いただいた分析では、レセプトデータの解析結果を使用し、COVID-19発症患者の平均年齢を28.5歳とされておりました。しかし、当該データについては重症化リスク因子を有さない患者も含むため、分析対象集団により合致したデータソースを用いる必要があるのではないかと考える次第です。
6ページ目ですけれども、入院費用等のパラメーターについてであります。
製造販売業者に御提出いただいた分析では、IQVIAソリューションズジャパン株式会社から購入した病院システムデータを用いることによって1入院当たりの期待入院費用を推計しているわけでありますが、推計方法によっては違う値が出てくることもありますので、この推計方法の妥当性について検討する必要があるのではないかと思います。
7ページ目ですけれども、4点目の非関連費用の計上についてであります。
製造販売業者の分析では1人当たり国民医療費を34万6000円。こちらが計上されていますが、この費用はいわゆる非関連医療費、このCOVID-19の治療とは関連しない医療費であると考えられるため、ガイドラインの規定に基づいて、非関連費用については含めずに分析を行うことが適切であると考える次第です。
8ページ目です。
以上の点から、今後、再分析を実施させていただきたいと考えている次第です。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
委員の方から御質問はございますでしょうか。
いかがでしょうか。よろしいですね。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
(意見陳述者 退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。
まず、臨床の御専門の先生方から御意見をいただければと思いますが、○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
○○でございます。
今回もプレゼンの中でもあったように、新型コロナウイルス感染症の流行株の変化とかワクチンなどによって病態は流行初期と比べて本当に大きく異なってきていることは御承知のとおりだと思います。特にパキロビッドとかラゲブリオの臨床試験はいずれもオミクロン株流行前で、ワクチン普及前に実施されたもので、現在のオミクロン株流行期でワクチン接種が進んだ状況においては重症化リスクの状況を考慮した検討が行われないと、例えばオミクロン株下でも特に重症化のリスクが高い集団で検討するとか、そういうことが行われないとなかなか、現在における有用性の適切な評価は難しいのではないかなと思っています。
一方で、あまり検討の中には入っていないですけれども、抗ウイルス薬の効果として、ウイルスの排せつ期間の短縮とか実際の症状改善までの期間短縮も臨床的には意義のあることかなと考えています。基本的に、現段階までで入手できるデータから導き出せる結果は企業分析のとおりで、ある程度限界があるのではないかなとは思っていますが、科学院から様々な疑問点が出されていて、それに沿って再分析を実施することについては賛同したいと思います。
以上でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
ありがとうございます。お時間をいただきまして、COVID-19の診療治療における幾つかの臨床的な変化について述べさせていただきたいと思います。
4月から治療薬に対する補助がなくなって、抗ウイルス薬の自己負担が始まりました。御存じのように、この自己負担は1回の治療で、パキロビッドで10万円、ラゲブリオで9万5000円、ゾコーバで5万円という、非常に高額のため、1回の1割から3割負担としてもほとんど処方を希望する患者がいなくなりました。当然、これはインフルエンザ並みという概念が広がっていることも相まっております。処方する機会が激減しておりますが、最も安価であるところのゾコーバの処方がわずかに出ている状況になってきております。
しかしながら、このようなことは、結果的に重症化する患者には抗ウイルス薬の効果は有効かつ必要だと思いますので、抗ウイルス薬の処方が高額な治療費のために行われなくなったことは、特に経済的に余裕のない重症化リスクを有する高齢者の治療にとっては好ましくない状況であり、現場は強い危機感を有しております。
もちろん、どのような患者が結果的に重症化するのかを焦点を絞って特定するのは、現在、十分な科学的エビデンスがありませんが、重症化する患者は一定程度存在しております。一方、製薬メーカーの本音としては、全く処方されないよりも、効果を認めつつ、薬価を下げ、処方してもらえるようにすることも希望していると推測いたします。
次に、感染症としてのCOVID-19の状況と抗ウイルス薬の有効性比較の評価方法について意見を述べさせていただきます。
抗ウイルス薬の主要評価項目は、デルタ株までは重症化抑制でありましたことはこの委員会でも非常によく議論されておりました。オミクロン株ではこのような重症化が見られなくなったということで、副次評価項目であるウイルス量の減少や症状の改善の早期化及び罹患後後遺症の発症は統計学的に評価可能な項目となっております。
このうち、客観的に評価可能なウイルス量の減少は、それが臨床効果と相関するかは明らかではありません。例えばデルタ株までは、発症後も咽頭などの上気道ではなく、肺や気管支といった下気道でウイルスは増殖し、発症時軽症でも、発症後しばらくして高率に肺炎の併発・増悪が起こり、強く重症化する症例が多く見られました。このため、抗ウイルス薬を投与してウイルスの増殖を抑えることは、重症化を抑制することに一定の合理性がありました。
ところが、オミクロン株では肺炎はほとんど併発せず、咽頭のウイルス量のピークは、資料にもありましたけれども、発症時がピークであります。その後で開始された抗ウイルス薬の効果はウイルスの減少スピードを加速することであり、果たして抗ウイルス作用が病態にどのような影響をするのか、不明であります。
また、別の評価項目であります症状改善の早期化は、鎮痛解熱剤や鎮咳剤など、対症療法でも同等の効果が得られ、費用対効果の分析において症状改善を抗ウイルス薬のカテゴリーで比較することの問題点があると思います。
とはいえ、先ほど申しましたように、重症化する人は少数ながら存在しますので、重症化の機序やウイルス量との関係を解析し、抗ウイルス薬の有効性を今後も適切に判断していく必要があると考えます。
さらに、罹患後症状、いわゆるLong COVIDについては、インフルエンザや他のウイルス性気道感染症でも同様の症状が起こり得ることが報告されています。このため、臨床研究を行うときにこれらの合併の影響を除去しなければなりません。
ところが、風邪は普通に皆さんも年に数回罹患します。特に長期観察が必要なLong COVIDへの評価はより厳密なプロトコルが要求されます。また、ワクチンや既感染歴の有無でも後遺症症状の発現率が異なることもエビデンスとして分かってきております。RCTを行う場合には、既往やワクチン接種歴、抗体価による判定など、免疫状態に関する因子の調整が必要です。
さらには、呼吸器疾患を有する患者、あるいは抑鬱傾向の患者は罹患後症状が発症しやすいとする報告などもあります。このような基礎的な病態の調整もまた必要だと思います。
このように、Long COVIDという客観的診断基準のない病態を対象とする薬剤の有効性を評価するには、現在まで報告された臨床研究では科学的に十分であるとは言えず、そのため、現在、ゾコーバでより精度を高めたプロトコルに基づく盲検化したRCTが実施中と聞いております。その結果が出るまでは薬剤の有効性の科学的な評価は困難であると考えております。
以上のような背景を踏まえまして、パキロビッドについての意見をこれから述べさせていただきたいと思います。
パキロビッドパックについては、オミクロン株流行下にワクチンを打っていない重症化リスクのない患者と、ワクチンを打った重症化リスク因子のある患者を対象としたEPIC-HRではなくてEPIC-SR試験の結果が『The New England Journal』に4月に発表されております。結果のみを申し上げれば、重症化率も症状改善までの期間も安全性もプラセボと有意差がなかったということでありますので、科学院の公的分析再分析ではこの新しいRCTを用いて行われるのではないかと考えております。
一方で、観察研究も含めたオミクロン株流行下ワクチン普及後の研究をメタ解析した論文も発表されております。例えばラゲブリオに関するメタ解析の報告では、全体では重症化抑制効果は見られていたが、ワクチン接種群では有意差が得られていない結果でありました。ラゲブリオに関する本専門家委員の結果を支持するものでありました。
一方、パキロビッドに関しては、ワクチン接種群でも重症化抑制効果は有意であるというメタ解析の報告もございます。EPIC-SR試験に加えて、メタ解析の成績も加味した解析を希望いたします。
以上の点から、再分析は必要と考えております。
以上でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。全体を俯瞰したお話で、大変勉強になりました。
今の先生方の御意見を踏まえて、その他の先生方、御質問、コメントはございますでしょうか。
いかがでしょうか。
科学院さん、今のお話しの中で、新しい試験の報告などもございましたが、何か追加でコメントはございますか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
○○先生が御指摘いただいたように、EPIC-SR試験は本年の4月初旬に『The New England Journal of Medicine』誌で公開されているのは我々も把握しておりますので、それらのデータを活用しながら、今後、検討させていただければと考えている次第です。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、御意見がなければまとめさせていただきますが、よろしいでしょうか。
それでは、議決に入らせていただきます。○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
(○○委員 退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
先生方の御意見をまとめますと、企業の分析につきまして、決定された分析枠組みに沿って分析がなされているということで、まずはよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
残り2つで、次に、企業の分析データ等の科学的妥当性は妥当ではないと考えられる部分があるということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
最後ですが、公的分析によるレビュー実施により再分析を実施するという結果の妥当性はおおむね妥当ということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、今、先生方からいただいた御意見を踏まえながら、公的分析において再分析を実施していただくことにさせていただきます。よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、パキロビッドパックに係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について御議論いただきたいと思います。
対象品目について企業分析が提出されておりますので、企業からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容について先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは、事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、本製品に係る企業分析に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者 入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内で、パキロビッドパックに係る企業分析についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
では、始めてください。
○意見陳述者
意見陳述者の〇〇と申します。本日は、このような貴重な機会をいただきまして誠にありがとうございます。
それでは、資料の2枚目を御覧ください。分析枠組みです。
分析対象集団として決まった、重症化リスク因子を有するSARS-CoV-2による感染症患者(小児を除く)となっております。なお書きとして、本邦のSARS-CoV-2変異株流行状況(オミクロン株流行以降)やワクチン接種状況を考慮するとなっております。比較対照技術はモルヌピラビルです。分析の立場と費用の範囲はそれぞれ、公的医療の立場、公的医療費のみと、中医協の分析ガイドラインに従っております。効果指標はQALYで、設定した分析期間は生涯、割引率はガイドラインどおり、それぞれ2%となっております。
3枚目を御覧ください。本剤とモルヌピラビルの追加的有用性を検証するためにSRを実施いたしまして、このスライドはその結果の概要でございます。
クリニカルクエスチョンとして、対象集団は成人または体重が40kg以上ある12歳以上のCOVID-19患者、介入技術は本剤、比較対照はモルヌピラビル、アウトカムがCOVID-19に関連した入院または全原因死亡割合、研究デザインはRCTでございます。
SRの結果、7件の文献が組入れ基準を満たしました。そのうち4文献は本剤のピボタル臨床試験でありますEPIC-HRに由来するものでありまして、1つが主論文で、3つが関連研究でございました。7つのうち残りの3つは、モルヌピラビルの国際共同第Ⅲ相試験(MOVe-OUT)に由来する研究文献で、1つの文献が主要な文献。そして、残りの論文は関連研究でございますが、本剤とモルヌピラビルを直接比較したRCTは見当たりませんでした。
4枚目を御覧ください。こちらはSRによって選択された本剤ニルマトレルビル/リトナビルの研究の概要でございます。
試験名はEPIC-HRでございます。試験デザインは二重盲検無作為化比較試験でございます。介入技術は本剤で、日本の用法・用量と同じでございます。比較対照技術はプラセボ、主要評価項目はCOVID-19に関連する入院または全原因死亡でございます。
5枚目を御覧ください。こちらはSRによって選択された比較対照技術モルヌピラビルの研究の概要でございます。
試験名はMOVe-OUTで、試験デザインは本剤と同様、二重盲検無作為化比較試験でございます。介入技術、比較対照技術、モルヌピラビルの用法・用量は日本と同じでございます。主要評価項目は、全原因入院または全原因死亡でございました。ただ、副次評価項目として、EPIC-HRと同じ、COVID-19に関連する入院または全原因死亡となっていると捉えていましたので、今回は間接比較が可能でございました。
6枚目を御覧ください。こちらは非常に重要なスライドだと感じております。
SARS-CoV-2変異株(オミクロン株以降)やワクチン接種者が組み入れられたRCTについて、オミクロン株優勢期かつワクチン接種者が組み入れられたRCTとして、モルヌピラビルのPANORAMIC試験や本剤のLiu, et al、中国のRCTもSRにおけるスクリーニング対象となりましたが、いずれも患者背景やアウトカムが組入れ基準を満たしませんでした。
具体的には、モルヌピラビルのPANORAMIC試験のアウトカムは全原因入院または全原因死亡であり、本剤のEPIC-HR試験は全原因入院がアウトカムに規定されていなかったため、両試験を用いた間接比較をすることは困難でございました。一方、ニルマトレルビル/リトナビルの中国のRCTですが、こちらはそもそも、成人の既に入院している患者さんが対象であり、アウトカムか全原因死亡及びSARS-CoV-2 RNAクリアランス期間であったため、EPIC-HRとの間接比較は困難でありました。PANORAMIC試験と中国のRCTの間接比較については、両試験間で患者の併存疾患の分布が大きく異なるにもかかわらず、こちらは自社の臨床試験ではないため、集計データしか入手できず、間接比較における患者背景の調整は困難であると考えました。
PANORAMIC試験に関しては本剤においても現在実施中であることはウェブサイトに公表されておりますが、2024年4月時点で、まだ患者さんはリクルートメントしている最中でして、結果は公表されていません。一方で、分析モデルに挿入するほとんどのインプットパラメーターはSARS-CoV-2変異株やワクチン接種が考慮されたものが使用されております。こちらは参考資料として当資料の14枚目から18枚目に記載されております。
追加的有用性を検証する上で、基本的に同じ条件で、さらに患者背景が調整されているのが好ましいと思っておりまして、本剤の患者公表データが唯一入手できるEPIC-HRと同時期に実施されたものと比較することに妥当性があると考えております。そして、ベースラインの患者さんが重症かどうか、ワクチンを打っているかどうか、入院率がどうか、死亡率がどうかということは全てオミクロン株以降、そして、ワクチン接種者のデータを使用しておりますので、獲得QALYや生涯に発生する費用等はオミクロン株もしくはワクチン接種が十分考慮されていると考えております。
次のスライドを御覧ください。7枚目です。こちらは本剤とモルヌピラビルの間接比較のデザインでございます。
直接比較のRCTがないため、アンカーを有する間接比較を実施いたしました。本剤、EPIC-HR試験は自社試験ですので、患者公表データが使えることから、本剤の臨床試験の患者公表データを用いて、モルヌピラビルのMOVe-OUT試験に効果修飾因子を合わせにいったという方法でございます。
具体的には、性別、年齢、人種、肥満、糖尿病、冠動脈疾患、COVID-19の症状発症時期、ベースラインのCOVID-19の血漿、ベースラインの重症度等を効果修飾因子として背景を充てていたということでございます。
アウトカムとしては、COVID-19に関連する入院または全原因死亡となっております。
8枚目を御覧ください。こちらは間接比較の結果の概要でございます。
本剤はプラセボ群と比較してCOVID-19に関連する入院または全原因死亡の割合を●●%、こちらは黄色のところでございますが、減少させることが示されました。一方、モルヌピラビル群では、こちらは公表データしか使えませんので、論文で報告されたとおりの数字となっておりまして、この赤の部分が該当します。●●%、リスクを減少させております。
効果修飾因子を合わせた結果、EPIC-HRのESSが●●になりました。この合わせた集団とモルヌピラビル群の臨床試験の結果を比較しております。その結果、本剤はモルヌピラビル群よりも入院または全原因死亡の減少割合を比較すると●●%、リスクを減少させることが示され、かつ統計的な有意差も認められております。このことから、本剤はモルヌピラビルに対して追加的有用性を有すると考えております。
9枚目を御覧ください。こちらは費用対効果分析の設定の概要でございますので、お手元の資料を御覧いただければと思います。
10枚目を御覧ください。こちらは分析モデルのフローでございます。こちらもお手元の資料を御覧いただければと思います。
次のスライドをお願いします。11枚目です。こちらは結果の概要でございます。
ニルマトレルビル/リトナビルはモルヌピラビルに対してドミナントであることが示されました。具体的には、増分効果、増分QALYが0.042、増分費用が-7,101円で、効果が増加して、費用が減少しておりますので、ドミナントであると考えております。
次のスライドを御覧ください。こちらは確率的感度分析の結果でございます。
左側のプロットが第4象限に位置し、本剤がモルヌピラビルに対してドミナントである確率は75.10%と示されております。
13枚目を御覧ください。最後のスライドで、費用対効果評価結果に基づく価格調整係数でございます。
本剤は、モルヌピラビルに対して追加的適用性を有し、かつ分析の結果もドミナントであることから、有用性加算等の価格調整係数は1.0と考えております。一方で、モルヌピラビルは費用対効果評価結果に基づいて、薬価が今後調整されることが想定されております。その調整された後の薬価を用いて仮に分析してみたところ、本剤のモルヌピラビルに対するICERは1万5000円程度となり、少し結果は変わりますが、価格調整係数に変更はないと考えております。
意見陳述は以上でございます。御清聴いただきましてありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、委員の方から御質問はございますでしょうか。
いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。
続きまして、科学院からパキロビッドパックに係る企業分析についての公的分析のレビュー結果の御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
お願いします。
○国立保健医療科学院
お手元の費-3-4の資料を御参照ください。「ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッドパック)に関する公的分析のレビュー結果」について御説明します。
1ページ目、分析の課題と我々が考える点について4点ほど書かせていただいています。
2ページ目ですけれども、1点目は有効性に関するエビデンスの解釈についてであります。
製造販売業者による追加的有用性の評価及び費用対効果分析では、評価対象技術及び比較対照技術の第Ⅲ相試験であるEPIC-HR試験とMOVe-OUT試験の間接比較により治療効果を推計しているところです。しかし、これらの臨床試験についてはCOVID-19デルタ株の流行以前にワクチン未接種者を対象に行われているものであるため、対象患者が分析枠組みの分析対象集団に合致するとは言えないような状況ではないかと考えております。また、オミクロン株の流行以降、ワクチン接種者では運用及び死亡イベントの発生率等が変動しているものと考えられまして、現時点では治療効果が大きく異なっている可能性があるのではないかと考えています。
また、3ページ目です。
モルヌピラビルの臨床試験において、MOVe-OUT試験ではプラセボと比べて有意な入院または死亡の減少効果が認められた一方で、オミクロン株の流行以降でワクチン接種者が大半を占めるPANORAMIC試験においては、プラセボに対して有意な重症化予防効果は認められなかった経緯がありますことから、やはりこの辺りは慎重に検討する必要があるのではないかなと考える次第です。
4ページ目です。
以上より、どのようなデータを参照して、どういうふうに追加的有用性あるいは費用対効果を検討するのか、検討させていただきたいと考えています。その際には、先ほど製造販売業者の方からもありましたように、費用対効果評価において比較対照技術であるモルヌピラビルが標準治療に対して追加的有用性が示されていないものと評価されているため、そのことをどのように考えるかも併せて検討する必要があるのかなと考えている次第です。
5ページ目ですけれども、2点目、発症平均年齢についてであります。
御提出いただいた分析では、レセプトデータの解析結果を使用し、COVID-19発症患者の平均年齢を28.5歳とされておりました。しかし、当該データについては重症化リスク因子を有さない患者も含むため、分析対象集団により合致したデータソースを用いる必要があるのではないかと考える次第です。
6ページ目ですけれども、入院費用等のパラメーターについてであります。
製造販売業者に御提出いただいた分析では、IQVIAソリューションズジャパン株式会社から購入した病院システムデータを用いることによって1入院当たりの期待入院費用を推計しているわけでありますが、推計方法によっては違う値が出てくることもありますので、この推計方法の妥当性について検討する必要があるのではないかと思います。
7ページ目ですけれども、4点目の非関連費用の計上についてであります。
製造販売業者の分析では1人当たり国民医療費を34万6000円。こちらが計上されていますが、この費用はいわゆる非関連医療費、このCOVID-19の治療とは関連しない医療費であると考えられるため、ガイドラインの規定に基づいて、非関連費用については含めずに分析を行うことが適切であると考える次第です。
8ページ目です。
以上の点から、今後、再分析を実施させていただきたいと考えている次第です。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
委員の方から御質問はございますでしょうか。
いかがでしょうか。よろしいですね。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
(意見陳述者 退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。
まず、臨床の御専門の先生方から御意見をいただければと思いますが、○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
○○でございます。
今回もプレゼンの中でもあったように、新型コロナウイルス感染症の流行株の変化とかワクチンなどによって病態は流行初期と比べて本当に大きく異なってきていることは御承知のとおりだと思います。特にパキロビッドとかラゲブリオの臨床試験はいずれもオミクロン株流行前で、ワクチン普及前に実施されたもので、現在のオミクロン株流行期でワクチン接種が進んだ状況においては重症化リスクの状況を考慮した検討が行われないと、例えばオミクロン株下でも特に重症化のリスクが高い集団で検討するとか、そういうことが行われないとなかなか、現在における有用性の適切な評価は難しいのではないかなと思っています。
一方で、あまり検討の中には入っていないですけれども、抗ウイルス薬の効果として、ウイルスの排せつ期間の短縮とか実際の症状改善までの期間短縮も臨床的には意義のあることかなと考えています。基本的に、現段階までで入手できるデータから導き出せる結果は企業分析のとおりで、ある程度限界があるのではないかなとは思っていますが、科学院から様々な疑問点が出されていて、それに沿って再分析を実施することについては賛同したいと思います。
以上でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
ありがとうございます。お時間をいただきまして、COVID-19の診療治療における幾つかの臨床的な変化について述べさせていただきたいと思います。
4月から治療薬に対する補助がなくなって、抗ウイルス薬の自己負担が始まりました。御存じのように、この自己負担は1回の治療で、パキロビッドで10万円、ラゲブリオで9万5000円、ゾコーバで5万円という、非常に高額のため、1回の1割から3割負担としてもほとんど処方を希望する患者がいなくなりました。当然、これはインフルエンザ並みという概念が広がっていることも相まっております。処方する機会が激減しておりますが、最も安価であるところのゾコーバの処方がわずかに出ている状況になってきております。
しかしながら、このようなことは、結果的に重症化する患者には抗ウイルス薬の効果は有効かつ必要だと思いますので、抗ウイルス薬の処方が高額な治療費のために行われなくなったことは、特に経済的に余裕のない重症化リスクを有する高齢者の治療にとっては好ましくない状況であり、現場は強い危機感を有しております。
もちろん、どのような患者が結果的に重症化するのかを焦点を絞って特定するのは、現在、十分な科学的エビデンスがありませんが、重症化する患者は一定程度存在しております。一方、製薬メーカーの本音としては、全く処方されないよりも、効果を認めつつ、薬価を下げ、処方してもらえるようにすることも希望していると推測いたします。
次に、感染症としてのCOVID-19の状況と抗ウイルス薬の有効性比較の評価方法について意見を述べさせていただきます。
抗ウイルス薬の主要評価項目は、デルタ株までは重症化抑制でありましたことはこの委員会でも非常によく議論されておりました。オミクロン株ではこのような重症化が見られなくなったということで、副次評価項目であるウイルス量の減少や症状の改善の早期化及び罹患後後遺症の発症は統計学的に評価可能な項目となっております。
このうち、客観的に評価可能なウイルス量の減少は、それが臨床効果と相関するかは明らかではありません。例えばデルタ株までは、発症後も咽頭などの上気道ではなく、肺や気管支といった下気道でウイルスは増殖し、発症時軽症でも、発症後しばらくして高率に肺炎の併発・増悪が起こり、強く重症化する症例が多く見られました。このため、抗ウイルス薬を投与してウイルスの増殖を抑えることは、重症化を抑制することに一定の合理性がありました。
ところが、オミクロン株では肺炎はほとんど併発せず、咽頭のウイルス量のピークは、資料にもありましたけれども、発症時がピークであります。その後で開始された抗ウイルス薬の効果はウイルスの減少スピードを加速することであり、果たして抗ウイルス作用が病態にどのような影響をするのか、不明であります。
また、別の評価項目であります症状改善の早期化は、鎮痛解熱剤や鎮咳剤など、対症療法でも同等の効果が得られ、費用対効果の分析において症状改善を抗ウイルス薬のカテゴリーで比較することの問題点があると思います。
とはいえ、先ほど申しましたように、重症化する人は少数ながら存在しますので、重症化の機序やウイルス量との関係を解析し、抗ウイルス薬の有効性を今後も適切に判断していく必要があると考えます。
さらに、罹患後症状、いわゆるLong COVIDについては、インフルエンザや他のウイルス性気道感染症でも同様の症状が起こり得ることが報告されています。このため、臨床研究を行うときにこれらの合併の影響を除去しなければなりません。
ところが、風邪は普通に皆さんも年に数回罹患します。特に長期観察が必要なLong COVIDへの評価はより厳密なプロトコルが要求されます。また、ワクチンや既感染歴の有無でも後遺症症状の発現率が異なることもエビデンスとして分かってきております。RCTを行う場合には、既往やワクチン接種歴、抗体価による判定など、免疫状態に関する因子の調整が必要です。
さらには、呼吸器疾患を有する患者、あるいは抑鬱傾向の患者は罹患後症状が発症しやすいとする報告などもあります。このような基礎的な病態の調整もまた必要だと思います。
このように、Long COVIDという客観的診断基準のない病態を対象とする薬剤の有効性を評価するには、現在まで報告された臨床研究では科学的に十分であるとは言えず、そのため、現在、ゾコーバでより精度を高めたプロトコルに基づく盲検化したRCTが実施中と聞いております。その結果が出るまでは薬剤の有効性の科学的な評価は困難であると考えております。
以上のような背景を踏まえまして、パキロビッドについての意見をこれから述べさせていただきたいと思います。
パキロビッドパックについては、オミクロン株流行下にワクチンを打っていない重症化リスクのない患者と、ワクチンを打った重症化リスク因子のある患者を対象としたEPIC-HRではなくてEPIC-SR試験の結果が『The New England Journal』に4月に発表されております。結果のみを申し上げれば、重症化率も症状改善までの期間も安全性もプラセボと有意差がなかったということでありますので、科学院の公的分析再分析ではこの新しいRCTを用いて行われるのではないかと考えております。
一方で、観察研究も含めたオミクロン株流行下ワクチン普及後の研究をメタ解析した論文も発表されております。例えばラゲブリオに関するメタ解析の報告では、全体では重症化抑制効果は見られていたが、ワクチン接種群では有意差が得られていない結果でありました。ラゲブリオに関する本専門家委員の結果を支持するものでありました。
一方、パキロビッドに関しては、ワクチン接種群でも重症化抑制効果は有意であるというメタ解析の報告もございます。EPIC-SR試験に加えて、メタ解析の成績も加味した解析を希望いたします。
以上の点から、再分析は必要と考えております。
以上でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。全体を俯瞰したお話で、大変勉強になりました。
今の先生方の御意見を踏まえて、その他の先生方、御質問、コメントはございますでしょうか。
いかがでしょうか。
科学院さん、今のお話しの中で、新しい試験の報告などもございましたが、何か追加でコメントはございますか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
○○先生が御指摘いただいたように、EPIC-SR試験は本年の4月初旬に『The New England Journal of Medicine』誌で公開されているのは我々も把握しておりますので、それらのデータを活用しながら、今後、検討させていただければと考えている次第です。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、御意見がなければまとめさせていただきますが、よろしいでしょうか。
それでは、議決に入らせていただきます。○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
(○○委員 退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
先生方の御意見をまとめますと、企業の分析につきまして、決定された分析枠組みに沿って分析がなされているということで、まずはよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
残り2つで、次に、企業の分析データ等の科学的妥当性は妥当ではないと考えられる部分があるということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
最後ですが、公的分析によるレビュー実施により再分析を実施するという結果の妥当性はおおむね妥当ということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、今、先生方からいただいた御意見を踏まえながら、公的分析において再分析を実施していただくことにさせていただきます。よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。

