2025年11月28日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第8回議事録

日時

令和7年11月28日 13:00~

場所

オンライン開催

出席者

田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、赤沢 学委員、木﨑 孝委員、大寺 祥佑委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、後藤 温委員、野口 晴子委員、能登 真一委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、福田 敬専門委員、鳥海  弥寿雄専門委員、岡本 渉専門委員、国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官

<事務局>
梅木医療技術評価推進室長 他

議題

○ トルカプ錠に係る総合的評価について

議事

○費用対効果評価専門組織委員長
早速、トルカプ錠に係る総合的評価についての御議論をいただきますが、前回、先生方に御議論いただきましたトルカプ錠に係る総合的評価に対する企業からの不服意見聴取を行った上で、再び先生方に御議論をいただきたいと思っております。
まずは事務局から説明をお願いいたします。

(事務局・国立保健医療科学院より説明)

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず、本製品に係る総合的評価に対する不服意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。

(意見陳述者入室)

○費用対効果評価専門組織委員長
では、始めさせていただきます。
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内で、トルカプ錠の総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
それでは、始めてください。

○意見陳述者
○○です。本日は意見陳述の時間をいただきありがとうございます。それでは、資料に沿って御説明させていただきます。
スライド2を御覧ください。
本日は、10月の専門組織で決定した、こちらの2点について意見を述べさせていただきます。
スライド3を御覧ください。
エベロリムス性よりもCDK4/6阻害薬のほうが奏功率が優れるため、CDK4/6阻害薬と比較する基本分析のほうが妥当との御判断でした。しかしながら、1つ目の■のとおり、抗がん剤の臨床試験の有効性評価項目としては、御存じのとおり、奏功率よりもPFSのほうが重視されています。そのPFSで見ますと、フルベストラントに対するハザード比は、アベマシクリブが0.86、エベロリムスが0.65で、エベロリムスのほうが優れることが示されています。今回の費用対効果評価では、弊社分析及び公的分析のいずれも、このPFSハザード比を用いて追加的有用性の評価とICERの計算が行われていますので、両剤の有効性を比較する場合はPFSに基づくほうが整合性が担保されます。
また、御指摘いただいている奏功率自体も、2つ目の■に記載のとおり、内分泌療法に対する上乗せ効果は両薬剤で同等であり、顕著な差は認められません。したがいまして、有効性の観点から比較対照、ひいては分析枠組みを選択いただくのでしたら、むしろ、PFSで優れるエベロリムスと比較したその他分析を採用するほうが妥当と考えます。
続きまして、スライド4を御覧ください。
ここからは、postMONARCHのOSハザード比が1を下回ると判断することが妥当でないと考える理由を御説明いたしいたします。公的分析がOSの推定に利用しているPetrelli論文の回帰直線に関しては傾きが0.56であることは示されていますが、切片を含めた回帰式は示されていません。
公的分析は、postMONARCHのOSハザード比を0.92と推定されていることから、PFSとOSのハザード比がいずれも1となる、図の青い三角をアンカーとした回帰直線に基づいてOSを推定されていると考えますが、この場合、PFSハザード比が1を下回れば必然的にOSハザード比も1を下回ることになります。今回のように、OSハザード比が1を下回るか否かが争点となっている場合に、このような前提を置くことは適切ではありません。
しかも、この直線にトルカプ錠の臨床試験で得られたPFSハザード比0.46を当てはめた場合、推定OSハザード比は白丸の0.70となり、実際の臨床試験結果である0.80を大幅に下回りますので、公的分析の推定はOSの過大評価になっています。
仮にPetrelliの回帰直線を用いるのであれば、患者特性が分析対象集団と一致するトルカプの臨床試験の結果、つまり、赤い三角をアンカーとすべきであり、この場合のpostMONARCHのOSハザード比は赤丸の1.02と推定されます。
スライド5を御覧ください。
公的分析が引用したもう一つの論文では、PFSの信頼区間の上限値が0.60を下回ればOSが有意に優れるとされています。
しかし、postMONARCHのPFSハザード比の信頼区間上限値は1.23ですので、この0.60を大きく上回っており、OSが1を下回ると判断できるほどのベネフィットではありません。
さらに、この論文の結語では「OSにおいて臨床的に意味のある差が得られるかどうかは、最終的なOSの結果でしか確認できない」と述べられています。
スライド6を御覧ください。
postMONARCHのPFSハザード比の95%信頼区間をPetrelli論文の回帰直線の傾きに適用してOSハザード比を推定すると、青い三角をアンカーとした場合は青色で塗った部分、赤い三角をアンカーとした場合は朱色で塗った部分となり、OSハザード比の推定値は1の上下限に広い幅を持ちます。
このように、不確実性が大きなPFSから推計したOSも、また不確実性が大きく、OSハザード比が1以上となる可能性と、1を下回る可能性と同程度ですので、1を下回る可能性が高いと判断することは妥当ではないと考えます。
スライド7を御覧ください。
今回の分析対象集団であるホルモン受容体陽性かつHER2陰性患者は、病勢進行後に使用可能な次治療の選択肢が多く、病勢が進行してから死亡に至るまでのPPS、ひいてはOSは、この次治療の効果に強く影響を受けますので、PFSとOSのハザード比の相関は弱くなります。
実際に、基本分析に用いたpostMONARCH中間解析において、CDK4/6阻害薬のPFSハザード比は0.86であったにもかかわらず、この時点の死亡率はCDK4/6阻害薬のほうがプラセボ群よりも高くなっています。
この点について、専門医のお立場から、○○先生の御意見をいただきたいと思います。先生、お願いいたします。

○意見陳述者(専門家)
御紹介いただきました、乳腺の専門家であります私のほうから少し御意見を述べさせていただきます。
今、御説明いただきましたように、ホルモンレセプター陽性・HER2陰性の集団というものはポストプログレッションサバイバル PPSですね、これが非常に長く、今回のようなpostMONARCH試験の後も、未使用のホルモン療法剤、化学療法、あるいは最近ではADC、それから、PARP阻害剤など、多数の選択肢が残っており、実臨床下でもそれらをうまく使って、長く患者さんに治療するというものが一般的です。
それらの効果の影響について、結果、今回得られるようなpostMONARCHのPFSでの差というものはどうしても薄まってしまいます。postMONARCHのPFSのハザード比が0.86というものはあまり大きなベネフィットではなくて、その信頼区間も非常に広いために、OSのハザード比が1を上回る可能性というものは十分あるのではないかなと思います。
また、そもそも、PFSからOSを推定することは臨床的にあり得ない。もしPFSからOSが推定判断できるのであれば、臨床試験で長い期間と多大なリソースをかけてOSを確認する必要はないというようなことになってしまうのではないかなと思っております。
よろしくお願いします。

○意見陳述者
先生、ありがとうございました。
スライド8を御覧ください。
公的分析から示されたOSハザード比とICERの感度分析、それから、価格調整係数の関係を図に示しています。OSハザード比は、値が0.01変わるだけでもICERが大きく変化し、0.1の幅の中にICERの区分が3区分含まれるほど、結果に対する感度が高い重要なデータであることがお分かりいただけると思います。
95%信頼区間が広く、不確実性が極めて大きいPFSハザード比から、このように重要なOSハザード比を0.01レベルの精度で推計すべきではなく、実際のOSデータを利用する必要があると考えます。
スライド9を御覧ください。
総合評価に関する弊社意見のまとめです。1つ目の■のとおり、臨床的により重要なPFSで見れば、エベロリムスのほうが優れますので、治療効果の観点で比較対照を選ぶのであれば、エベロリムスと比較したその他分析の結果に基づいて総合評価を行うべきと考えます。間接比較に問題があることは弊社も承知しておりますが、NICEでは本剤の評価に用いられたことを踏まえますと、OSの推定に基づく基本分析結果を採用するよりは適切と考えます。
次に、2つ目の■のとおり、仮に基本分析を採用する場合でも、PFSハザード比を基にOSハザード比が1を下回ると判断することは妥当ではないと考えます。
したがいまして、3つ目の■のとおり、postMONARCHのデータを用いるのであれば、OSハザード比は結果に対する感度が高い重要なデータですので、推定に基づいて評価するのではなく、OSデータの公表を待つべきと考えます。
スライド10を御覧ください。
postMONARCHに類似したアベマシクリブの臨床試験のPFS公表からOS公表までの期間を踏まえますと、postMONARCHのOSデータは来年2月前後、遅くとも来年末までに公表されると想定されます。
なお、仮に現在の評価案で価格調整を行った上で、将来、1を上回るOSハザード比が公表された後に再評価を行っていただいたとしても、厳しい要件を全て満たして薬価が引き上げられることはほぼ不可能と考えますので、正しい評価結果に応じた薬価に戻ることはないという点を念のため申し上げます。
最後に、医療経済学の専門家として、○○先生に御意見を伺いたいと思います。先生、よろしくお願いいたします。

○意見陳述者(専門家)
○○でございます。
今回提案されている方法というものは、かなり仮定に仮定を重ねた案だと感じております。もちろん、医療経済評価というものは何らかの仮定を置いて結果を出さないといけない、判断をしないといけないというのは重々承知しておりますけれども、この中においてもこのPFSのデータ、しかも、それが幅をかなり持っている状態でOSを推定し、さらに、これを価格に生かすというものはあまりにも不確実性が大きいということだけでなく、先ほど○○先生からも御指摘ありましたとおり、では、そういう評価をスタンダードにしていいのかという、もっと大きな問題を惹起するものだと考えています。
そういう意味では、全くデータが今後も出てくる見込みがありませんというのであれば最後の手段として許容され得る手段と考えますが。
少し待てば出てくるという状況下であれば、やはり考え直すべきだと考えております。

○意見陳述者
弊社からは意見は以上でございます。よろしくお願いいたします。

○費用対効果評価専門組織委員長
企業からの意見陳述のございましたとおり、公的分析に対する指摘がございましたので、その指摘に対して公的分析から御意見等はございますでしょうか。

○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
我々からは特にございません。よろしくお願いします。

○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、委員の方々から御質問等をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。

○意見陳述者
ありがとうございました。

(意見陳述者退室)

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論を進めていきたいと思いますが、企業からの不服意見がございましたが、改めて、科学院からこちらについて追加での御説明は何かございますでしょうか。

○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
以前より御説明しているとおりなのですけれども、我々はPFSからOSのハザード比を推定して、その推定結果を用いて算出しているわけではありません。あくまでPFSがOSのダイレクトポイントであり、PFSが延長した場合、臨床試験上はいろいろ議論がありましょうが、実際の臨床実地環境ではPFSとOSが相関しているという考えは妥当なのではないか。そういう見解に基づいて、このような分析をさせていただいたという次第であります。
以上です。

○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。
なお、御議論に当たっては、企業からの不服意見を踏まえて、企業からの提案と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきますようよろしくお願いいたします。
先生方、御意見いかがでしょうか。
では、○○委員、どうぞ。

○○○委員
1つ確認したいのですけれども、分析の枠組みをつくるときに、企業が言われているエキセメスタンとエベロリムスを企業は提案しているのですが、公的分析では現状のものを提案していて、どういう形で企業が納得して分析枠組みがなったかという根本を教えていただきたいのです。

○費用対効果評価専門組織委員長
では、これは科学院さんのほうでいかがでしょうか。

○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
私の記憶の限りでということですけれども、こちらは事前に我々と企業のほうで合意したものではありませんで、専門組織で御議論の上で、企業が御提案されたエキセメスタン+エベロリムスの併用療法を感度分析として取り扱う、その他の分析として取り扱うという合意がなされたものと理解しています。

○○○委員
結局、そのときの議論が十分でなかったため、このような議論が続いている気がします。それについて、方法として合っているのかどうかを聞きたいのです。

○費用対効果評価専門組織委員長
では、○○委員の御質問に対して私のほうからですけれども、その時々の実情に合わせてベストな議論をさせて進めてきているということであります。、最初から、ある程度、落としどころが分かっていれば、それなりの工夫もできたのですが、蓋を開けてみないと分からないところがあったということかなと思います。先生を含めて、最適な議論をした結果、今、ここに至っているというような御理解のもとで、さらに必要な議論を進めていただきたいなと思っております。

○○○委員
では、そうであれば、そのときの結論を出した理由がやはり今回、企業の方が言われた意見に対する反応になるべきだと思うのですけれども、それはどうなのでしょうか。つまり、今みたいに全くデータがなかったから両方採用しましょうという話であれば、やはり同じ土俵にして評価しなければいけないし、ただ、そのときには今回の分析対照がいいという結論が出ていて、でも、仮に代替案もあるという話であれば、それはそういう形ですればいいのですけれども、結局、企業の方が納得していないから同じ議論で何度もぶり返しているような気がして仕方がないのですけれども、あまり建設的な方法だと思えないので質問しています。

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
もし議論として必要であれば、この場も含めて議論を続けていくべきと思いますが、一応、制度や仕組みとしてプロセスがありますので、それに沿った形でここに至っていると御理解いただければとは思っております。
こういう特殊な議論ですので、全ての方々が納得のいくと言ったら変ですけれども、対立する議論を全ての関係者で納得できるようなものに落とすというのは、多少難しい点はあろうかと推察します。データが十分でない面も含めて、制約があるというのは少し御理解いただきながら御議論を進めていただきたいなと思っています。ただし、○○委員のおっしゃることはもっともでありますので、今後の分析枠組みにおいては、できるだけきちんとした議論を進めていきたいなと改めて思っているところであります。
今の○○委員のお話に関わり、先生方のほうから御意見があればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
大変重要な御指摘だと思います。この後の品目も分析枠組みの議論がありますが、ぜひそういう観点から建設的な御議論をいただきたいなと思っております。よろしいでしょうか。
では、その他の論点について、先生方からいかがでしょうか。意見書では幾つか御意見をいただいていますが、この場で御発言して、御説明等が必要であればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
事務局さん、○○委員は御欠席であると伺ったのですが、○○委員のほうはいかがでしょうか。

(○○委員入室)

○費用対効果評価専門組織委員長
○○先生、いかがでしょうか。
○○先生には幾つか御議論をいただいていますが、御専門の立場から、今までの議論を踏まえつつ、何かコメントがあればいただきたいと思います。

○○○委員
私はここまでの議論に参加していなかったので、詳しい内容は分からないところはあるのですが、意見書に書かせていただいたおり、現時点ではこの解析が最大限ではないかというところと、postMONARCH試験のOSが出れば、再解析の必要があるかというものは注視してあげるのが企業に対しても、国民に対してもよいのではないかと考えました。
以上です。

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○○先生からは、治療選択が多数あるので、現段階の結果が薄まるのではないかというような御指摘もありました。
つまり、postMONARCH試験で成績の議論をしている中において、その後の治療ステージの中においても多数の治療選択があるというようなお話があり、結果として、それらの治療選択をすることによって、現段階の治療成績の差というのでしょうか、インパクトが薄まってしまうという御発言もありました。そこで、データの解釈として、何か御意見があったらいただきたいと思います。

○○○委員
これは多分、その議論がされていたのだろうと思うのですが、OSが伸びていき、治療が増えていくことで、その辺りがどんどん薄まっていくというのは仕方がないので、どうしてもやはりPFSの評価とか、現時点の評価をするしかないということかと思っています。

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
その他の先生方、いかがでしょうか。御意見等あればお願いいたします。
よろしいでしょうか。
先ほども事務局から御説明ありましたけれども、先生方の御意見を伺いますと、今回は、議論を十分尽くしたということで、公的分析の内容を支持するものが大多数ございました。それを踏まえて議決に入らせていただきたいと思います。
○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。

(○○委員退室)

○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、議決に入らせていただきます。
○○委員、○○委員を除く先生方の御意見を参考に、トルカプ錠に関する費用対効果を総合的に評価いたしますと、トルカプ錠に係る総合的評価について、専門組織で決定された総合的評価のとおりとするということでよろしいでしょうか。

(首肯する委員あり)

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、専門組織で決定された総合的評価を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告いたします。
なお、企業に対する内示及び中医協に提出する資料に関しましては委員長に一任していただくということでよろしいでしょうか。

(首肯する委員あり)

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。