2025年4月25日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第1回議事録

日時

令和7年4月25日 13:00~

場所

オンライン開催

出席者

田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、赤沢 学委員、木﨑 孝委員、大寺 祥佑委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、能登 真一委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、福田 敬専門委員、野﨑  博之専門委員、髙橋 祐二専門委員、国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官

<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他

議題

○ レケンビ点滴静注に係る総合的評価について

議事

○費用対効果評価専門組織委員長
レケンビ点滴静注について、公的分析による再分析結果が提出されておりますので、公的分析からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析結果の審査並びに費用対効果評価案の策定について、先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは、事務局から説明をお願いいたします。

(事務局・国立保健医療科学院より説明)

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、まず本品目に関わる公的分析の再分析結果に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。

(意見陳述者入室)

○費用対効果評価専門組織委員長
私は、費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内でレケンビ点滴静注の総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答させていただきます。
では、始めてください。

○意見陳述者
では、始めさせていただきます。企業の〇〇と申します。本日は、レカネマブの費用対効果評価について意見陳述をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
まず、スライド2を御覧ください。ここでは我々の分析と公的分析班が実施した再分析の方針の違いについて御説明いたします。
まず、企業の分析では、マルコフモデルを用いて長期推計を行っているのに対し、C2Hと公的分析班による再分析におきましては、我々の分析の長期推計とそれに伴うレカネマブの有効性の反映方法に課題があるとして、標準治療群についてのみ我々の分析モデルで得られた結果を踏襲し、レカネマブ群では、新たに構築したモデルが使用されております。
この新たに構築したモデルにつきましては、こちらの1から4に表でまとめておりますとおり、いずれも科学的妥当性に大きな問題があると考えております。
次に、スライド3を御覧ください。我々が実施した分析は、共生社会の実現を推進するための認知症基本法が求める基本理念や方向性に基づき、AD当事者様、介護者様の実態を反映した分析を実施しております。ADの病態を反映するべく、マルコフモデルを用いて長期推計した分析及び301試験のOLE期を活用した長期有効性の推計など、ピアレビューにも耐え得る分析として今後広く社会に発信していく価値があると自負しております。
次に、スライド4を御覧ください。C2Hと公的分析班によって新たに構築されたモデルの問題点を御説明させていただきます。
端的に申しますと、新たに構築されたレカネマブ群の分析手法は科学的妥当性を欠いていると申し上げざるを得ないかと考えております。
具体的には4つお示ししております点、すなわちまず1つ目、レカネマブ群のみマルコフモデルを使わずに評価している点。次に、病期全体の延長期間の5.3か月を含めMCI期のみ外挿している点。そして、3つ目といたしまして、病態推移への影響を考慮せず軽度AD、中等度ADの滞在期間を標準治療と同じと仮定している点。最後に、生存期間全体の短縮を重度ADのみで調節している点。これら4つの設定につきまして、科学的な妥当性の課題があると考えております。
次にスライド5を御覧ください。我々の分析に用いたマルコフモデルは、海外の主要な医療技術評価機関で標準的に採用されております信頼性の高い検証されたモデルです。一般的にマルコフモデルでは患者の健康状態を複数の病期に分類し、死亡を含むほかの状態への遷移を確率で示すことで長期推計を実施いたします。我々のマルコフモデルでは、使用した病態推移確率が301試験の病態推移とほぼ一致していることを学会が提案する基準を用いて検証しております。すなわち、実臨床を表した推移であることを確認しております。
左の2でお示ししております図は、我々の分析で使用したマルコフモデルによる推計結果です。レカネマブ投与によって、その後の各病態の平均滞在期間が変化することが示されております。これをマルコフ連鎖と呼びます。ここで得られた結果を平均滞在期間としてまとめた結果が、右下3の棒グラフとなります。
次に、スライド6を御覧ください。C2Hと公的分析班は、我々の分析の長期効果の推計を課題として新たなモデルを構築するとしましたが、実際には標準治療群で我々が作成したマルコフモデルをそのまま踏襲した一方で、レカネマブ群におきましては、そもそも課題として指摘されておりました長期推計ができていないものになります。このレカネマブ群でマルコフモデルを使用しないことによる問題点は、主に次の2点になります。
まず、左の図のとおりレカネマブ投与対象集団への影響のみが考慮され、その後の病期への影響が反映されておりません。そして、レカネマブ群でのみ病態推移による死亡リスクの変化も反映されないことになります。
次に、スライド7を御覧ください。続きまして、介護者QOL値の反映方法に関する再分析における問題点について御説明させていただきます。具体的には主に2点になります。
まず、1点目ですが、重度ADの介護者に対するQOL値の設定がなく、介護者QOLの低下が大きい重度AD期間の影響が全く反映されておりません。
そして2点目ですが、軽度AD、中等度ADの滞在期間への影響が考慮されておらず、当該介護者QOLへの影響も全く反映されない結果となっています。そのため、新たに構築されたモデルにおける介護者QALYの増分はMCI期における0.012QALYのみとなり、認知症の人がほかの人々と支え合いながら共生する社会が目指されているにもかかわらず、AD重症化によって悪化する介護者QOLの実態が介護者のQALYにはほとんど反映されないことになっておりますので、介護者がよりよい状態の患者様とより長く接することができる、この価値が著しく軽視された分析になっていると言わざるを得ないかと思います。
次に、スライド8を御覧ください。我々の分析では共生社会を実現するためには、介護負担によるQOL減少のみを介護者QOLとして捉えるのではなく、患者様と過ごす時間の充実を含め介護者QOL全体を評価するべきだという考えに基づいております。その考えにより、当初よりAdditive approachを採用しております。1月に行われた専門組織Ⅱで、C2Hと公的分析班は患者QOLから介護負担分を介護者QOLとして減じるDecrement approachを採用していました。この手法は、患者の死亡によって介護者のQOLが改善される。そして、患者の各病期の滞在期間が延長するほど介護者のQALYが減少するというCarer QALY trapと呼ばれる課題が生じることが知られております。その後、このCarer QALY trapを回避すべきという我々の主張に合理性が認められ、再分析におきましては前述した別手法が選択されています。
なお、この別手法は、再分析報告書の中で何度も引用されておりますNICEの手法とも異なる形になっております。しかしながら、この別手法では、軽度、中等度、重度ADの介護者QOLが全く反映されていないところになりますので、こちらはこちらで新たな課題が生じていると考えております。
それに対しまして、我々の分析で採用しましたAdditive approachでは、介護者QOLを患者QOLにそのまま加算することで、患者とともに過ごす価値など介護者QOL全体を反映することができると考えております。
次に、スライド9を御覧ください。3点目といたしまして、長期有効性の推計方法に関する再分析の問題点について御説明します。
左の図でお示ししておりますとおり、現在では48か月までの長期OLEデータが得られており、レカネマブの投与継続によって有効性は継続し、かつ、変化量の群間差は非線形に拡大していることがお分かりいただけるかと存じます。また、ハザード比も大きな変化はなく、信頼区間内の値となっております。
一方で、再分析の手法では、18か月時点の評価データのみをレカネマブの効果としており、信頼性が低いと考えます。また、18か月で投与を中止するモデルとなっていることによって、18か月を超える投与継続が考慮されておらず、長期投与による効果拡大も想定されていない分析となっております。
次に、スライド10を御覧ください。最後の論点になりますが、投与中止後の有効性について御説明します。
C2Hと公的分析班は、投与中止後の有効性をハザード比1と設定しており、すぐに効果がなくなる仮定としております。しかしながら、長期投与経験を有する日本の専門家は、すぐに有効性がなくなることはないと意見しており、海外の評価機関であるNICEが招聘した臨床専門家も、患者の状態が直ちに悪化する可能性は極めて低く、効果減弱シナリオを設定するべきと指摘しております。
これらのことからも投与中止後の有効性が全くないと設定することは、分析結果の信頼性を著しく低下させると考えております。
次に、スライド11を御覧ください。投与中止後の有効性につきまして、新しいエビデンスを提示させていただきます。
こちらは856例を対象としたレカネマブの臨床第2相試験である201試験からの、18か月間の投与完了後のフォローアップ結果となります。21か月時、つまり投与中止後3か月時点でエンドポイントでありますADCOMS、ADAS-cog、CDR-SBの全てのデータでプラセボとの変化量が拡大することが示されました。このことより、投与中止後すぐに効果がなくならないという臨床専門家の意見を支持する結果となっており、ハザード比1という設定は適切ではなく、最低でも効果減弱シナリオなどの検討をすべきと考えます。
最後になりますが、スライド12を御覧ください。

○事務局
失礼いたします。すみません、時間となりましたので、以上とさせていただいてもよろしいでしょうか。

○意見陳述者
あと30秒くらい駄目ですか。

○事務局
申し訳ございません。

○費用対効果評価専門組織委員長
お時間になりましたので、一旦ここで切らせていただいて、あとでまたお時間があれば御説明いただきたいと思います。
今の御説明に関して、委員の方々からの御質問に移りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○○委員、お願いします。

○○○委員
御説明どうもありがとうございました。
家族のQOLを考えるという考え方は非常に理解できるものではあるのですけれども、家族のQOLと言ったときに、要するに薬剤による影響だけではなくて、様々な社会的経済状況がどうしても入ってくると思うんですね。こういうのを医療経済学ではコンタミネーションと呼ぶのですけれども、家族のQOLというのは非常に複雑だと思うんですよ。いろいろあると思うのですけれども、薬による影響の因果はどうやって切り分けられたのですか。

○意見陳述者
○○先生、ありがとうございます。企業の○○と申します。
おっしゃるように、こちらの薬による影響、それからそうではないそれ以外のところの影響の部分というのは非常に難しいとは思いますが、そういったところも含めまして、なかなか切り分けの難しい点、当社におきましては全体の介護者様のQOLをQOL値という形で含める形に採用しました。
公的分析から2つ御提案いただきましたところは、やはり課題がありますので、まず1つ目のDecrement approachにつきましてはCarer QALY trapという問題、それから、2つ目につきましては、さらにそれよりも過大に過小評価されているところもありますので、その2つの方法ではない方法ということになりますと、学術界におきましてもまだまだコンセンサスが得られていない点になるかと考えております。
本日は、〇〇先生にも御同席いただいておりますので、〇〇先生からもコメントをもしいただければ幸いと思いますが、いかがでしょうか。

○意見陳述者(専門家)
〇〇でございます。重要な御指摘ありがとうございます。
もちろん、患者さんのQOLに比べて家族のQOLというのは、患者さんだけではなくて、その家族が置かれている状況にも依存するというのは○○先生のおっしゃるとおりだと思います。基本的には、この介助者のQOLも患者のQOLと同様に、あくまで認知症の重症度とひもづけてQOLをはかっているという意味では、重症度の変化におけるQOLの低下という話と、薬剤によるQOLの低下というのはダイレクトに評価できるものではなくて、あくまでも薬剤によって重症度の変化のスピードをコントロールできれば付随してQOLも変わる。その前提自体は多分患者さんと介助者で同じだと考えています。
ただし、例えば、UKの評価などでも居宅の患者さんと施設の患者さんにおいて、特に介助者のQOLをどう評価するか。これは単純に施設に入ったら家族のQOLが改善するというアプローチはUKのNICE、あるいはアメリカのICER組織、どちらもとっておりません。そういう意味では○○先生のおっしゃるように、非常に交絡が多い領域ではあると思います。ただし、交絡が多いから全く考慮しないというのは世界の潮流ではなくて、あくまで多い中で最大限どう評価していくかということだと思います。
貴重な御指摘ありがとうございます。

○○○委員
どうもありがとうございました。

○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員いかがでしょうか。○○委員どうぞ。

○○○委員
さっきの5ページの、例えば最初のステージから次のステージへの影響という話で、マルコフでは延長しているという話をしていたのですけれども、実際の臨床のデータとして本当に認知障害から認知症または中度で、つまり、これは薬剤の特性からして臨床データとして本当にその後が延長するかというデータは今の時点では多分ないと思うので、結局あくまでもモデルによる推定があって、でも、実際にそうなるかというのは全く分からない状態でそれを主張するのは非常に難しいのではないかと思ったのですけれども、データから本当の実臨床としてこうなりますよということは言えるのでしょうかという質問です。

○意見陳述者
御指摘いただきまして、ありがとうございます。おっしゃるところは、まさにそのとおりかと考えております。
まず前提といたしまして、今回のレカネマブの301試験は生存期間の延長までアウトカムにしていないところがございますので、このデータ自体は今回の治験では得られないということになります。現在進めていただいているレジストリ研究などで今後こういったところは明らかになる可能性はあると考えております。
一方で、今回の分析におきましては、日本を含めて今、海外でも認知症の重症度によって死亡リスクが上がることが報告されておりまして、今回私どもが活用させていただきましたのは、日本のデータにおきまして実際にMMSEという認知機能の基準が悪化することによって死亡率が上がっていくというデータをモデルに組み込んだものになります。ですので、実際の疫学データを基に今回算出した結果、このような結果になったということになっております。

○○○委員
ありがとうございました。それは分かるのですけれども、つまり、薬によって認知障害が進むのを抑えられるというデータが本当に各ステージごとにあるのかという話で、各ステージごとから死亡率が変わるよというのは疫学的には分かるのですけれども、薬によって延びたその後、ずっと延び続けるのかというところがよく読み取れないと思ったので質問しました。

○意見陳述者
ありがとうございます。今回は各ステージごとの病態推移確率をモデルに反映させていただいておりますので、実際に301試験で得られた病態推移を基にしていることになっておりますので、このあたりは反映ができているのではないかと考えております。
〇〇さんから何か補足ありますか。

○意見陳述者
ありがとうございます。付け加えるとするならば、自然病態推移は301試験からとっているのと、その後の長期については大規模の研究からの文献データをとっております。それに対してレカネマブのプラセボに対するハザード比を掛けて病態推移を算出しているものになりますので、そういった形で長期推計を行っていることになります。これは特に、認知症で特別に変わったものではなくて、例えば、抗がん剤等でも同様のマルコフモデルの推計が行われていますので、特段奇異なシミュレーションになっているわけではないと考えております。

○費用対効果評価専門組織委員長
○○委員、よろしいでしょうか。

○○○委員
がんの場合は、ある程度エビデンスがたくさん蓄積されているので、そこでも何となく分かるのですけれども、こういう新しいお薬に関しては本当にそうなのかなというところがちょっと疑問にはなる。むしろ新しくデータが出たあとに再主張されるようなことでも遅くはないのではないかと個人的には思っています。

○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員いかがでしょうか。
先ほどプレゼンで少し時間がなかったという印象ですが、どうしても何かコメントしたい点があれば、このあと少しお時間とりますけれども、企業さんのほうは大丈夫でしょうか。

○意見陳述者
ありがとうございます。最後の部分の触りだけ少しお時間いただいてもよろしいでしょうか。

○費用対効果評価専門組織委員長
では、わずかですけれどもお時間とりますので、どうぞお願いします。

○意見陳述者
すみません、御配慮いただきまして、どうもありがとうございます。
最後のスライドなのですけれども、我々としてお伝えしたいところといたしましては、我々の分析は公的分析班が指摘しております長期推計上の様々な課題に耐え得るエビデンスを有していると考えておりますし、それにあたって適正な分析手法を用いていると自負しております。今回、特例というところを設けていただきまして、レカネマブの費用対効果評価をこういった形で企業分析、公的分析併せて評価するという機会をいただいておりますが、価格調整の影響のみならず、認知症の当事者とその御家族にもたらす価値を広く社会に適切に示していく機会であると認識しております。ですので、ぜひ適正に評価できる分析を御判断いただけますと幸いでございます。
お伝えしたいところは以上でございます。どうもありがとうございました。

○費用対効果評価専門組織委員長
委員から御質問等なければ、これで質疑応答を終了したいと思います。
では、○○委員、お願いします。

○○○委員
1点だけ確認させていただきたいのですが、スライドの11ページで、第II相試験の投与中止後のフォローアップにおけるADCOMSやCDR-SBの推移図が掲載されていましたが、3か月以降のデータは収集されていないという理解でよろしいですか。

○費用対効果評価専門組織委員長
企業さん、いかがでしょうか。

○意見陳述者
○○先生の画面が映りまして、もしかしてお話しされていたかもしれないのですけれども、こちらの音声が聞こえておりませんでしたので、申し訳ないのですが、もう一度お話しいただけますでしょうか。

○○○委員
スライド11ページの201試験で、18か月間の投与完了後の3か月のフォローアップのデータが提示されていますが、投与完了・中止後3か月以上のフォローアップデータはお持ちでしょうか、お持ちではないのでしょうか、という質問です。

○意見陳述者
201試験ですけれども、3か月以降はギャップ期間に入りまして、3か月以降にフォローアップとしてのデータはございません。

○○○委員
ありがとうございます。薬剤の投与終了後すぐに効果がなくなるということはないと考えますが、3か月以降の状況として、効果が投与中止後でも拡大するのか、プラセボとの群間差が一定のままなのかということに関しては、この情報からも全てが解決するわけではないという理解でよろしいですよね。

○意見陳述者
御指摘ありがとうございます。私どもも今回のデータをもちまして、効果がどれくらい続くのかまでは論じられないと考えております。
また一方で、投与中止後すぐに効果が全くなくなることはないということは、こちらのデータでもお示しできたと考えておりますので、ここは何らかの効果減弱シナリオであったり、そういった検討をするべきではないかと私どもは考えている次第でございます。

○○○委員
分かりました。ありがとうございます。

○費用対効果評価専門組織委員長
その他の先生方、よろしいでしょうか。
それでは、企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。

○意見陳述者
ありがとうございました。こちらでトラブルがあり大変失礼いたしました。
失礼いたします。

(意見陳述者退室)

○費用対効果評価専門組織委員長
それでは議論に先立ちまして、今回企業から公的分析について御意見がございましたので、科学院から何か御意見等追加でございますでしょうか。

○国立保健医療科学院
ありがとうございます。国立保健医療科学院です。
何点か補足の情報を御提供させていただきたいのですけれども、まず、企業のスライドの4ページ目、どこの健康状態の期間が生存期間の延長に伴って延びるかという問題なのですけれども、確かに企業側が御主張するとおり、5.3か月の延命期間においてMCIの期間のみが延びるというエビデンスは存在しないわけでありまして、これは我々が分析するに当たって設定した仮定になります。ただし、この5.3か月の期間をほかの重症度に割り当てた場合、重度の状態というのは当然ながらQOL値が低い状態になりますので、現状よりもさらに獲得するQALYの大きさが小さくなることから、企業側にとって最も有利な条件で分析を行ったものと認識しておるところです。
また、企業側スライドの9ページ目ですけれども、こちらは新たに御提出いただいた48か月目までのデータなのですが、少し企業側の方が誤解されているのかもしれませんけれども、我々も投与継続中においては差が拡大するということは全く否定していないところでして、こちらのデータは48か月まで投与が継続されているということですから、差が開いているという我々の見解と齟齬があるものではないと考えています。
また、10ページ目、先ほど少し議論がありましたけれども、ハザード比を1とするということを投与中止後すぐに効果がなくなると表現するところは少し誤解があるかなと考えておりまして、ハザード比1というのは効果がなくなるのではなくて、効果が維持されるという設定であると御認識いただいたほうがよいのかなと認識しています。
企業側の説明にもありましたけれども、NICEなどで議論されている効果がなくなるシナリオというのは、投与終了後すぐにこの差がなくなるという設定でありまして、効果が減弱するというのは、差がなくなるスピードをどの程度に設定するかという議論でありまして、効果が維持されるハザード比1になるというシナリオは、NICEの考えているシナリオよりも少しジェネラスなシナリオになるのではないかと公的分析としては考えているところです。
我々からは以上です。

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。なお、御議論に当たっては、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきますようお願い申し上げます。
改めて論点を先生方と共有させていただきますが、有効性に関する推計、患者及び家族介護者のQOL値の設定、費用の推計方法、モデルの再構成があります。あと、後ろのほうでできれば公的医療の立場と公的医療・介護の立場の違いについて、中医協の報告も踏まえてのお話ですけれども、御議論させていただきたいと思っております。
ではまず、臨床の御専門の先生が御参加されていると思いますので、先に御意見いただきたいと思いますが、○○先生、いかがでしょうか。

○○○委員
○○でございます。
我々臨床の立場からすると、企業側の10枚目のスライドに「日本のExpert Opinionでの意見」というのがありますけれども、そのExpert Opinionの人たちの教育を受けているのが、多分我々なんですね。ですから、どうしてもそこで受けている教育の結果という言い方は変ですけれども、企業側の言っているところはある程度理解できるところがあります。例えば、効果がやめてからの持続の問題とか、48か月のOLEのデータであるとか、そういうところは教育を受けているとそう感じるところもあるのですが、ただ、48のOLEにすると、あれはADNI試験のもともととの差が開いているという話になってくるだろうとかそういうことを考えると、費用対効果のための分析という立場からするとどうなのかなということと、あと、●●という感じがいたします。
それから、介護の問題に関して、確かに介護者が御家族であって、そういう人が長く幸せな状態にいることはいいことだというのは、確かに共生モデルとしては正しいのですけれども、では、認知症の患者さんのどれくらいの方々に御家族がいる状態で介護を受けているかというのはここでは示されていないし、現実的には一人暮らしの人の認知症というのがかなりあって、そうするとそれは最初からそういうものがないので、前後をAdditive approachでは説明できないのではないかなと思いました。
以上です。

○費用対効果評価専門組織委員長
○○先生、ありがとうございました。
今の先生の御意見を踏まえながら、先生方からコメントをいただきたいと思いますが、委員の皆様方から御意見があればお願いします。
○○先生、お願いします。

○○○委員
先ほどの公的分析からの追加のお話で、5.3か月という余命の延長をMCIの部分につけたということで、企業側にはむしろ有利な仮定になっていることは理解いたしました。
比較対照群は、もともとのオリジナルのマルコフモデルになっていて、レカネマブ群のほうでマルコフモデルでないモデルになったのかどうか。あまりモデルの構造そのものが両群で違うと、比較そのものが少し苦しいのかなという印象を持ったのですけれども、その辺はいかがでしょうか。

○国立保健医療科学院
ありがとうございます。少しその点も企業の皆さんを含めて誤解があるのかなと認識しているのですが、我々、介入群も比較対照群も両方ともマルコフモデルは使っておりませんで、御説明させていただいた我々の構築したモデルに基づいて推計を行っているところです。ただし、分析において必要な様々なパラメーターのうち、多くのものが企業がマルコフモデルに基づいて推計したものを用いて、企業の御見解を最大限尊重するという立場から、そういう形で分析させていただいた次第でありまして、分析自体はマルコフモデルは使っていないところになります。

○○○委員
ありがとうございます。両群同じようなモデルの構築になっているという理解でよろしいでしょうか。

○国立保健医療科学院
はい、そのような理解で結構です。

○費用対効果評価専門組織委員長
その他いかがでしょうか。
○○委員、意見書に同じようにモデルに関しての御質問・コメントがありましたが、今の流れで何か追加でございますか。

○○○委員
今の説明である程度理解はできたのですけれども、今回の論点の1から3を全て反映しようとすると企業が構成したモデルで分析ができないため、公的分析では改めてモデルを構築されたという説明がありましたが、どの範囲であれば企業のモデルが利用できて、どの論点を加えることによって利用できなくなるのかを説明いただけると、論点ごとによってモデルの適切性についても評価できるのではないかと思い、コメントさせていただきました。

○費用対効果評価専門組織委員長
科学院さん、いかがでしょうか。

○国立保健医療科学院
ありがとうございます。我々、投与期間とアウトカムの関係というか、投与期間が延びれば延びるほどアウトカムは広がるけれども、投与期間が短くなればその分だけ小さくなるという関連性において分析させていただいているのですけれども、その関連性みたいなものはマルコフモデルの中では、企業が御提出されたマルコフモデルそのものを使ってもそこがうまく設定できなかったので、今回新たにモデルをつくらせていただいたのですけれども、先ほど少し時間がなくて御説明できなかったのですが、企業のモデルをそのまま使ってもある程度のところまでは我々の見解を反映することができるわけでして、先ほどの公的分析の資料の参考5-1、43ページから45ページまでにQOLの問題ですとか、介護負担の問題ですとか、比較的論点になりにくいような部分のみを変更した形で分析を行った結果をお示しさせていただいております。この企業のモデルをそのまま用いて必要最小限の変更を行ったモデルにおいても、分析結果というのは我々がお示しした別ケースのモデル結果と大きくは解離していないところですので、どのようなモデルを使っても似たような結果が得られるものなのかと考えている次第です。

○○○委員
治療効果とその投与期間の関連性から、既存のマルコフモデルではうまくいかないため、公的分析では新たにモデルを構築されて検討されたという理解でよろしいですか。

○国立保健医療科学院
そのような検討だと思います。

○○○委員
分かりました、ありがとうございます。

○費用対効果評価専門組織委員長
○○委員、お待たせしました。どうぞお願いします。

○○○委員
ありがとうございます。質問ではなくて意見なのですが、Carer QALY trapについて企業側の説明では、それを回避する方法としてAdditive approach、つまり介護者のQOL値の絶対値を用いて、つまり患者さんと家族2人分のQALYの延長を認めてほしいという御意見だったと思うのですが、やはりそれは患者さんのQOLよりも健常な御家族のほうがそもそもQOL値は高いわけで、患者さんよりも大きいQALYを獲得することになると思うんですね。2人分以上のQALYを獲得する、それをレカネマブの効果として認めるということですので、それは過大推計になるだろうと考えますので、公的分析のほうがよりCarer QALY trapを解消する方法として私は理にかなっていると考えました。
以上です。

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
その他の委員いかがでしょうか。御意見もしくは御質問でも構いませんが。
先生方の意見書を拝見すると、基本的には公的分析の再分析を支持するという形だったのかなと思います。それを踏まえて1点先生方と確認させていただきたいのですが、先ほどお話しした公的医療の立場と公的医療プラスの介護の立場の違いについてです。今回のお薬及び病態特性で介護が一つ重要なテーマですので、いわゆる費用対効果の結果としてどちらを中医協等に報告していくかについて少し議論させていただきたいと思っております。
科学院さんの資料を見ますと、32ページや33ページがそちらに当たります。これは公的医療の立場と介護を入れた立場それぞれで2ページ分の結果が出ておりますけれども、ほとんど変わらないという理解でよろしいですか。変わらないんですね。もっと結構インパクトがあるのかなと思ったのですけれども、そうすると、介護のインパクトはあまりないということになるのでしょうか。

○国立保健医療科学院
ありがとうございます。御指摘のとおりで、直感的なイメージを申し上げれば、5.3か月生存期間が延びたものがMCIの期間だったり、あるいは軽度の認知症の期間だったり延ばすことになるので、その段階ではほとんど介護等の影響が少ない状況ですので、あまり介護費用等に外部負担が影響しないような設定になっているのかなと考えています。

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
今回は結果としてプラス介護の費用対効果はあまり変わらないという形ですが、報告するときにどちらの立場で報告したらいいのかということです。論点として上がっていたわけなので、介護を入れたものでの費用対効果はこうなった、という御説明のほうがいいのかなとは個人的には思っているのですが、これについて何か先生方から御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、介護の取扱いについてこれだけ苦労し、なおかつ、いろいろな議論をしてきたわけなので、今回は公的医療プラス介護の立場での結果を費用対効果として報告するような形にしたいと思います。ありがとうございます。
あともう一つ、価格調整について今回特殊なケースになっておりますので、次に価格調整の方法について確認していきたいと思うのですが、科学院さんのほうで価格調整に関わるところで1QALY500万円についての算定をされたところを少し追加で御説明していただいてもよろしいですか。たしか、資料の後ろのほうに説明がついていたと思いますが。

○国立保健医療科学院
ありがとうございます。資料といたしましては、科学院の提出した資料の48ページ目、巻末の参考7。

○費用対効果評価専門組織委員長
科学院さん、落ちましたかね。事務局さん、いかがでしょうか。

○事務局
一応まだお名前はあるのですけれども、ちょっと電波が弱いのかなと。

○費用対効果評価専門組織委員長
では、改めて復習ですけれども、今回この品目についての価格調整の考え方や在り方、中医協の議論を科学院さんが戻ってくる間に御説明いただいてもよろしいですか。

○事務局
御質問ありがとうございます。事務局でございます。
本品に関しまして、価格の調整に関しては現在の価格とICERが500万円/QALYとなる価格、その価格差の25%を引き下げる、もしくは引き上げるということで決まってございます。
その際におきまして、いわゆる価格の下げ止めと上げ止めというところが、下げ止めが15%、上げ止めが10%ということがレケンビにおける費用対効果評価で中医協等で議論させていただいておるところです。

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
科学院さんがお戻りになられたので続けていただきたいのですが、今、事務局から今回の品目の価格調整の特性をお話ししていただきました。よろしくお願いいたします。

○国立保健医療科学院
マイクのほう失礼いたしました。
資料の参考7の48ページ目になりますけれども、算出方法といたしましては、今回のケースでは閾値が1QALY当たり500万円ということになりますので、閾値の値と増分QALYの値からレカネマブ群で許容される増分費用の値をまず算出いたしました。例えば、増分QALYが0.28であれば140万円まで許容されるという計算になります。
この値を用いて、現在推計されている増分費用と増分費用の許容額との差、すなわち費用対効果がよくなるためにレカネマブ群でどれほど費用を引き下げる必要があるのかという額を算出いたしました。例えば、増分費用が463万円であれば、463万円から140万円を引いた323万円分の引き下げが必要になるという計算になります。
ここで、323万円がどのくらいの割合に当たるかを3ポツ目で計算いたしまして、例えば、レカネマブ群のレカネマブ費用が458万円であれば、それで割ることによって0.7という計数が算出できました。
このことから調整後の薬価というのは、元の薬価に対して計数が0.7の場合は1引く0.7の0.3を掛けることによって、ICERが500万円/QALYに到達する価格が算出できると考えております。その結果が資料の35ページ目にお示ししているものになります。
以上です。

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
こちらの算出方法についてですけれども、新しい取組なので先生方に一度御確認いただきたいと思うのですが、何かコメント、逆に言うと異論があるかどうかをいただければと思いますが、いかがでしょうか。
科学院さん、こういう計算以外に多分選択肢はほとんどありませんよねと、一応念のため確認するのですが。

○国立保健医療科学院
恐らくそんな難しい計算ではなく非常にシンプルな計算なので、こういう計算が標準的なのかなとは考えています。

○費用対効果評価専門組織委員長
ということですけれども、いかがでしょうか。こちらもよろしいでしょうか。
価格調整について事務局さんから追加で何かコメントございますか。説明するものがあればお願いします。

○事務局
事務局からは特に追記するようなことはございません。

○費用対効果評価専門組織委員長
では、○○委員、どうぞお願いします。

○○○委員
今回、新しく価格調整の方法をこのような形で導入されたと思うのですけれども、ここに至る経緯みたいなものか何かお話しいただければありがたいかなと思うのですが。

○費用対効果評価専門組織委員長
では、事務局さんから、また追加で少しコメントいただいてもよろしいでしょうか。

○事務局
レカネマブの価格調整に係る経緯と伺っておりますけれども、そちらでお間違えないでしょうか。
レカネマブに関しましては、前回令和5年度のときに新規薬価収載された際に、従来にない高額な医薬品であることも含めまして中医協等に諮って出させていただいた結果、今回のような結果となった次第でございます。

○○○委員
高額ということで今回は少し今までと違う方法をとったということでしょうか。

○事務局
今回、費用対効果評価をより活用していく観点から、この有用性系加算等の調整範囲を現行の方法でなくということで今回用いたような方法が提案され、それが承認されたということになってございます。

○○○委員
そうしますと、これからもこのような方法がとられていくという理解でよろしいのでしょうか。

○事務局
あくまで今回は事例としてそれを検討するという形になってございますので、今後また見直し議論等で議論させていただく次第でございます。

○○○委員
ありがとうございます。

○費用対効果評価専門組織委員長
あと、その他委員の先生方いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、そろそろまとめさせていただきたいと思いますが、○○委員どうぞ。

○○○委員
今までは加算の範囲という話だったのですけれども今回はなかったよという話ですと、実際に加算はどのくらい試算分を超えているのかというのが今の説明ではよく分からなかったのですが、それはどのくらいなのですか。

○費用対効果評価専門組織委員長
これは科学院さんに聞いたほうが分かりやすいですかね。

○事務局
すみません、事務局から回答させていただいてもよろしいでしょうか。
本品目に関しましては40%の加算がついてございます。今回15%の下げ止めに引っかかったとしても、その加算の範囲内に収まるというところが現在の試算になってございます。

○○○委員
であれば、ある意味でちょっと方法が変わっても、今までとそんなに変わりはないという認識で大丈夫でしょうか。

○事務局
あくまでも今回に関してという結果となってございます。

○費用対効果評価専門組織委員長
事務局さん、ありがとうございます。
では、議決に入りたいと思いますが、先生方の意見書及び今までの討議を踏まえますと、基本的には公的分析を支持するというお話であったかと思います。数点の論点がありましたけれども、基本的には実データを中心に保守的に分析されたものを採択するという形になろうかと思います。
それでは、議決に入らせていただきます。
先生方の御意見を参考に、レケンビ点滴静注に関する費用対効果については、公的分析による再分析結果を費用対効果評価案として決定するということでよろしいでしょうか。

(異議なしの意思表示あり)

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、以上の再分析結果を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告いたします。
なお、内示及び中央社会保険医療協議会に提出する資料に関しては、委員長に一任していただくということで、こちらもよろしいでしょうか。

(異議なしの意思表示あり)

○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。