2023年3月24日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第12回議事録

日時

令和5年3月24日13:00~

場所

オンライン開催

出席者

田倉 智之委員長、斎藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員 中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、弦間 昭彦専門委員、山口 正雄専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官

<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他

議題

○ テゼスパイア皮下注の分析枠組みについて

議事

○費用対効果評価専門組織委員長
 まずは、前回、先生方に御確認いただいたテゼスパイア皮下注について、その分析枠組みに対する企業からの不服意見聴取を行った上で、再び先生方に御議論いただきたいと思います。
 まずは、事務局及び公的分析から説明をお願いいたします。
 
(事務局より説明)
 
○国立保健医療科学院
 国立保健医療科学院です。
 公的分析の案について御説明いたします。まず1点目ですけれども、先日来繰り返しになりますが、製造販売業者の主張は理解するところなのですが、やはり論点となるのは、抗IL-5抗体が投与されている患者を企業が言うようなOverlap患者における好酸球性炎症の素因が強い患者であるというふうに解釈してよいのかどうか、またはそのような意図に基づく手法がどの程度実施されているのかということであると認識しています。これらの状況について、定量的なデータというのは不明であることから、先日も専門組織において議論いただいて、臨床の先生方からもコメントをいただいてきましたが、それらは製造販売業者の主張を必ずしもサポートするものではなかったというふうに認識しています。
 また、費用対効果の観点から申し上げますと、一般に処方内容というのは医師や患者等の選好に大きく依存する場合があるため、このような使用実態に基づく集団の定義というのは慎重に対応すべきであると考えます。そのため、公的分析としましては、臨床家のおおよそのコンセンサスとして、診療ガイドラインの記述を参照しまして、分析枠組みを提案したところです。
 また、オマリズマブの取扱いについてですけれども、費用対効果評価のガイドラインでは比較対照技術を市場シェアの最も高いものとはしておらず、オマリズマブを比較対照技術とすることは費用対効果評価の分析ガイドラインに反するものではありません。臨床現場で一定程度使用されていれば、比較対照技術に選定し得るものであり、製造販売業者の推計に基づいたとしても、その程度の使用実績があれば、過去の品目の実績からは比較対照技術の候補になり得るものというふうに考えています。
 また、2点目についてですけれども、分析可能性に関する懸念についてですが、先月の専門組織で述べさせていただいたとおり、新たに追加された分析集団については、分析の実施可能性について十分に検討できているとは言えない段階であります。しかし、新たに追加された分析対象集団の取扱いは、そのようなことを前提とした上で、専門組織からの御指示をいただいたものと認識しており、実際に分析実施の過程でそれらが困難であることが明らかになれば、その時点で対抗について検討させていただきたいと考えているところです。
 また、IgE抗原感作陰性かつ血中好酸球数150以上の集団について、どのような観点から製造販売業者が分析不能と主張しているのか現時点では分かりませんが、分析枠組み上でIL-5抗体、IL-4抗体の有効性は同等であるということを前提にしているので、そのような仮定の下で間接比較等を用いることによって分析するなど、分析上の検討が必要になるものと考えております。
 我々からは以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、議論に先立ちまして、まず本製品の分析枠組みに対する企業からの不服意見聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
 
(意見陳述者入室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 私は費用対効果評価専門組織委員長です。
 早速ですが、10分以内でテゼスパイア皮下注に係る分析枠組みに対する企業からの不服意見の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
 では、始めてください。
 
○意見陳述者
 ありがとうございます。○○の○○です。
 本日は、前回2月24日に続き、意見陳述のお時間をいただき、ありがとうございます。
 早速始めさせていただきます。各スライドの右下にページ番号をつけておりますので、御参照ください。
 まず2ページ目を御覧ください。前回の御審議の結果、決定された基本分析は、図のグレーの帯の部分、Overlap患者における臨床実態との乖離及び実施可能性の問題が残ったままになっております。
 3ページ目を御覧ください。図の左側に現在の基本分析、右側に実際の処方データに基づく既存製剤の投与患者割合を示しております。現在の基本分析は、実際の投与患者割合が2割にも満たないオマリズマブが、8割以上の患者の比較対照とされるものであり、臨床実態と著しく乖離しているのは明らかです。
 黒字の2ポツ目に記載のとおり、適正な分析評価を行うためには枠組みが臨床実態に即していることが必要であり、臨床実態と乖離する基本分析の枠組みでは、テゼスパイアの費用対効果は正しく評価いただけないと考えております。
 4ページ目を御覧ください。図の左側に基本分析、右側に弊社案を示しております。弊社案は、投与されている生物学的製剤の作用機序に基づいて分析対象集団を分類するものであり、実際の投与患者割合を反映し、臨床実態に即した枠組みとなります。1ポツ目に記載のとおり、各製剤が作用する炎症経路から考えますと、抗IL-5クラス抗体と抗IgE抗体でコントロールされている患者はそれぞれ明確に好酸球性喘息とアトピー型喘息に分類することが可能です。
 2ポツ目に記載のとおり、抗IL-4抗体のデュピルマブのみ明確な分類が困難ですので、作用する主たる炎症経路からアトピー型喘息に分類していますが、デュピルマブが投与されている患者は、より安価なオマリズマブのほうが比較対照となりますので、分析枠組みとしては保守的、つまり、テゼスパイアにとっては不利な分析となります。
 5ページ目を御覧ください。前回の御審議の際に、弊社案は考え方が逆との御指摘があったとのことですが、1ポツ目に記載のとおり、診療ガイドラインでは、喘息診断において治療反応性を評価することが重要とされていること、及びそれに基づく治療実態を踏まえますと、投与される薬剤の作用機序に基づいて分析集団を決定する弊社案の考え方は妥当なものと考えます。
 2ポツ目に記載していますが、現在の各種ガイドラインでは、診断や治療選択において、IgE抗原感作に基づくアトピー性素因よりも好酸球性素因のほうが重視されていますので、仮にデータからOverlap患者を分類するのであれば、一律にアトピー型喘息とするよりも、むしろ好酸球性喘息とするほうが適切と考えます。
 しかし、3ポツ目に記載のとおり、アトピー型であれ、好酸球であれ、Overlap患者を一くくりにしますと、臨床実態との乖離はどうしても避けられませんので、喘息の病態を反映しつつ、実態に即した枠組みとするには、弊社案が最良の方法と考えます。
 6ページ目を御覧ください。基本分析は、既存の生物学的製剤の効果が全て同等であることを前提にしていますが、IgE抗原感作陽性の患者でも、ぜんそくの病態や増悪に関与する炎症経路は様々であるため、生物学的製剤の効果はその作用機序に応じて異なります。
 事実、図にお示ししたとおり、オマリズマブを抗IL-5クラスであるメポリズマブやベンラリズマブに変更することで増悪回数が減少したというエビデンスがあることからも、IgE陽性患者の中には、薬剤の効果が異なる患者が間違いなく存在しております。
 前回に続き、専門医のお立場から○○の○○先生に補足いただきます。
 ○○先生、よろしくお願いいたします。
 
○意見陳述者(専門家)
 よろしくお願いします。○○の○○です。
 スライド6にありましたように、オマリズマブでは、コントロールが不良な症例において抗IL-5クラスに切り替えると発作の頻度が減るといったことは実際の診療でも頻繁に経験します。少し古いデータになるのですけれども、前任地の○○でオマリズマブを一度でも使われた患者さんについて○○例ございまして、そのうちの○○例でやはり切替えがありました。切り替えたというのは、やはり効果がよくなかったからということなのですけれども、切り替えた方とそうでなかった患者さんの背景を見ますと、両者とももちろん感作はあるのですけれども、感作の数、抗原の数は差がなく、むしろ切り替えたほうが統計学的な有意差はないのですけれども、IgEのほうが少し高い。切り替えたほうの総IgE値が○○で切り替えなかったほうが○○です。好酸球についても切り替えたほうが○○と高くて、切り替えなかったほうは平均値で○○、マックスが○○までというデータを持っております。まだペーパーにはしていないのですけれども、このように実臨床でも、オマリズマブを使っていても抗IL-5クラスに切り替える患者さんが○○はいるということであります。
 また、スライド4にオマリズマブが2割程度しか使われていないというデータがありましたけれども、これは実体験でも納得できます。
 また、2割程度の患者さんにしか使用されていないオマリズマブを8割以上の集団で比較対照とするのは、やはりちょっと違和感がありますので、かけ離れた分析になってしまうのではないかと懸念します。
 スライド5の考え方が逆という点ですけれども、これは私も当初、何か変な感じがしたのですけれども、実際のところ、逆にバイオの効果から重症喘息さんの病態が分かってきたというのが実情であります。重症喘息研究の中ではそういった流れになっております。ですので、特に好酸球と感作の有無だけで成人の重症患者さん、特に成人の重症患者さんというのはアトピー性皮膚炎や小児喘息とは違って、より好酸球で動いているということが分かってまいりましたので、感作の有無というところに大きく重きを置くのはちょっと問題かなと考えております。
 繰り返しになりますけれども、抗IL-5クラス抗体や抗IgE抗体というのは、その効果を見ることで真の病態把握につながるということだと思います。
 以上です。ありがとうございます。
 
○意見陳述者
 先生、ありがとうございました。
 続いて、7ページ目を御覧ください。基本分析の対象集団の設定方法と分析ガイドラインの記載を対比して、問題点を列挙しております。こちらに3点お示ししておりますように、問題点が幾つかございまして、これを併せますと、基本分析の枠組みは分析ガイドラインの原則にも反するものではないかと考えております。
 8ページ目を御覧ください。上段の分析実施可能性については、基本分析は好酸球数のみ高い患者をさらに好酸球数1,500以上と未満で細分化していますが、そのような集団での臨床試験データは存在しないため、実施不可能と考えております。
 下段の感度分析の扱いについて。現在、弊社案の枠組みで感度分析を実施することとされていますが、現行制度では、感度分析の位置づけや取扱いは明記されておらず、基本分析のみに基づいて評価が進められることから、適正な評価結果を得るためには、より適切な弊社案の分析枠組みを基本分析に置いておくべきと考えます。
 ここで、○○の専門家のお立場から○○先生に補足いただきます。○○先生、よろしくお願いいたします。
 
○意見陳述者(専門家)
 ○○でございます。
 私は第1回には参加しておりませんが、今回の論点は、やはりこの会社案と公的分析案とどちらが臨床実態により近いかということだと思います。基本的には、どちらが近いかということは、プロセスではなくて分けた結果で判定されるべきというふうに考えます。その意味では、先ほど○○先生からもありましたように、実態に反した形の結果が出てしまう分析が唯一の正解として扱われるというのは、私はちょっとそごがあるのではないかと感じております。
 それから、最も安いものを比較対象とすべきだということに関しましても、先ほどお示しいただいたように、全ての患者さんについてオマリズマブを使うということは、最も安いということだけを見て、その有効性に差があるかもしれないというところを見ていないということで、私は妥当な分析ではないと考えます。あくまで感度分析という現行の制度の中での使われ方が不明瞭なものではなくて、どちらも、双方とも重要な分析であるとして判断をいただくというのがより妥当な姿だと考えます。
 以上です。
 
○意見陳述者
 先生、ありがとうございました。
 最後になりますが、9ページ目に弊社案の枠組みをお示ししております。使用されている生物学的製剤で分類する弊社案は、治療実態や軍籍ガイドラインに即し、信頼性の高い分析が可能となりますので、こちらを基本分析としていただきたくお願い申し上げます。
 弊社からの説明は以上となります。ありがとうございました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、委員の方及び企業から御質問はございますでしょうか。
 ○○先生、お願いします。
 
○○○委員
 確かに実態と少し離れているのではないかという意見はありますけれども、基本的に実態というのが本当に最適な治療を反映していると言えるのかというと、一般の呼吸器科医という立場からすると、きっちりとした治療選択の基準はなく使われているようには思うのです。そういった意味で、感度分析と基本分析の両方やるというのは本当に興味が深いわけですけれども、感度分析をどういう位置づけですればいいというふうに考えられますか。
 
○意見陳述者
 御質問ありがとうございます。やはり感度分析は不確実性を評価するものですので、どちらが確実というのを最初に答えを出すのではなく、結果と使うデータの信頼性も踏まえながら同等に評価いただくのがいいと思います。ただし、冒頭から申し上げておりますとおり、現在の基本分析というのはあまりにも実態とかなり違いますので、やはり臨床実態に沿った形での基本分析、弊社のほうの枠組みを基本分析として評価いただくのが妥当ではないかと思います。
 この点、○○先生から補足いただければありがたいです。
 
○意見陳述者(専門家)
 ありがとうございます。○○先生からもサジェスチョンいただいたとおり、感度分析というものも、ある意味で主従という関係が成り立ってしまうと、実際に現行の制度では従たる分析というものが配慮される機会はほぼなくなってしまうと考えています。
 もちろん私自身としては、先ほど申し上げたような理由で企業分析に分があると、より臨床実態に近いというふうに考えておりますが、ここが即断できないということであれば、例えば米国なんかでは一部、複数のシナリオをbase case analysisのような形で運営しているものもございますので、そういう形も一つあり得るのかなと考えています。どちらが優れているかということを即断ができない状況下で、例えば90対10であれば、90を基本分析として採用するというのは私は妥当だと思いますが、51対49のときに実質的に49が評価されなくなるというようなやり方は、価格に使うので一意に定めないといけないということを考慮しても、少し矛盾があるのではないかなと、個人的にはそのように考えます。
 これはあくまで運営方法という形であって、より妥当であるかどうかという話は先ほど申し上げたとおりです。
 
○○○委員
 これが実際に現実的にできるかどうかは、そういった考え方もあるというふうに受け取ってよろしいですね。
 
○意見陳述者(専門家)
 ありがとうございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他の方々、いかがでしょうか。
 ○○先生、どうぞ。
 
○○○委員
 質問があるのですが、先ほど抗IgE抗体、オマリズマブを使っている方で、IL-5、あるいはその受容体に対する抗体へ切り替えて、効果が見られたということを教えていただきました。確かにIL-5抗体や、IL-5受容体抗体の効果の強さを示唆するデータであると感じますが、その逆の切り替えについてはいかがでしょうか。つまり、オマリズマブに変えたときに同じようなデータが得られるのか、あるいはオマリズマブに切り替えることは効果がないとお考えか、教えていただけないでしょうか。
 
○意見陳述者(専門家)
 ありがとうございます。先生も御経験されていると思いますけれども、その可能性は少ないと考えています。といいますのは、歴史的にゾレアが一番最初に出ましたので、実際にゾレアが基本分析で使われているようなことが起こっているわけですね。82%の人たちにゾレアから始めました。でも、半分は効果がなかったので、抗IL-5クラスに移りました。そういう実態が出ていますので、その人たちをもう一回ゾレアに戻すことはないと考えます。
 
○○○委員
 ありがとうございます。確かに最初、オマリズマブがかなり使われていた状況を経て、このような切り替えのデータが得られるということは理解いたします。
 もう1つの質問です。使用実態についてデータを見せていただいて、興味深く拝見しました。このIL-5関連の抗体、それから、デュピルマブ、オマリズマブの使用比率の近未来的な予想はどのようにお考えでしょうか。
 
○意見陳述者(専門家)
 日本のデータは多分ないと思うのですけれども、やはり効かなかったらスイッチされていくと。最終的なスイッチのパターンを見ると、多くはやはり一番がゾレアから抗IL-5クラスに、次が抗IL-5クラス内での抗IL-5に行くということで、最終的にはやはり抗IL-5クラスが一番多いのかなと思っております。
 また、その次にデュピルマブが入ってきますし、テゼスパイアについては使用実態がまだまだ分からないところでありますので、それについては御容赦いただきたいと思いますけれども、ゾレアについては今以上に増えるということはないと考えています。減ることはあっても、増えることは残念ながらがらないかなと考えています。
 
○○○委員
 ありがとうございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他の方々はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ○○先生、お願いします。
 
○○○委員
 御説明ありがとうございます。1点、先ほどの○○先生の御質問と少し重なるところがあるのですけれども、スライドの6ページのところにオマリズマブからベンラリズマブなどに切り替える、コントロール不能例に対して切り替えるというところで効果がある患者さんがいるということは理解できるのですけれども、その次のページのスライドに、オマリズマブと比較して治療効果が高いという薬剤間の比較をしているわけではないですよねというところの確認と、6ページのスライドは、オマリズマブ治療後の年間増悪率、ベンラリズマブに変更後の増悪率というのが書かれているのですが、原著の論文を見るとベースラインもありましたよね。そこが記載されていなくて、何を言っているかというと、オマリズマブでも効いている患者さんはいらっしゃるよねということで、この辺りをどう考えればいいのかというところを、漠然とした聞き方で申し訳ないのですけれども、説明していただけると助かるのですが。
 
○意見陳述者(専門家)
 ありがとうございます。これはやはり成人喘息の患者さんが好酸球性の炎症、特に粘液痰というたんが気道に詰まることが多いのですけれども、そこが今注目されているのですが、そこを取ってくれるのが抗IL-5クラスなのですね。好酸球を抑えてくれる。オマリズマブにはそういう力がないので、確かに小児喘息のアトピー素因が非常に強い患者さんで季節性に増悪が増えるという患者さんにはオマリズマブは効くかもしれないですけれども、先ほどお示ししたように、オマリが効くだろうということで入っても、実験例では半数の患者さんが効果がないということで切り替えられているというのは、高額な生物製剤ですので、効果がなかったらみんな使わないです。患者さんも医者側も使わないので、やはり切り替えざるを得ない。切り替えた結果、よかったから使っているということですので、これは2つのバイオマーカーだけでは説明がつかないです。様々なバイオマーカーが重要であるというのは出ているのですけれども、臨床では使えないので、今、代用しているというところです。
 
○○○委員
 揚げ足を取るつもりはないのですけれども、ただ、その説明だと、半数はオマリズマブでもコントロールできるという理解でよろしいのですね。
 
○意見陳述者(専門家)
 そうですね。ですので、82%という基本分析の中の4割の患者さんが、当時はこれはデュピルマブが出ていない時代、ほとんどがデュピルマブを使っていない患者さんなので、臨床実態のデータとほぼほぼ近いのかなと思っております。
 
○○○委員
 もし御存じだったら教えていただきたいのですけれども、こういうOverlapしているような患者集団を対象に、例えばオマリズマブとベンラリズマブを直接比較したような臨床試験とか臨床研究というのはないものなのでしょうか。
 
○意見陳述者(専門家)
 ございません。Overlapと言われる、Overするところの感作があるかどうかというのは、これは本当にOverlapと言えるのかなというところですね。感作があるというだけで、申し訳ないですけれども、マーカーとしての重きは恐らくないものを使ってOverlapとしているのはすごく違和感がございました。
 
○○○委員
 ありがとうございました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
 
(意見陳述者退室)
 
○事務局
 事務局でございます。
 企業の方の退室が確認できましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 企業からの御意見がございましたが、事前に科学院から何か意見はございますでしょうか。
 
○○○専門委員
 すみません。○○ですけれども、ちょっと時間がもうあれなので、現時点での私の意見ですと、やはりオマリズマブを、このままでそれが基本分析、それだけというのは多少厳しいかなと思っていて、一つは、感度分析というのをもう少し生かすことができるようなことがあればいいなと思ってはいます。もう一つは、○○先生が言われたような形で、意見としては、多分、もう少しオマリズマブの比率を下げるようなものがあれば、またそれはいいのかなと思いました。
 すみません。退席させていただきます。申し訳ありません。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 貴重な意見をありがとうございました。お疲れさまでした。
 では、戻らせていただいて、科学院さんのほうから何か御説明ございますか。
 
○国立保健医療科学院
 国立保健医療科学院です。ありがとうございます。
 企業側の主張に対して何点かコメントさせていただければと思うのですけれども、企業側のスライドの2ページ目、3ページ目で、企業側は使用実態と比較対照技術の割合が一致していないということを問題視していたのですけれども、企業側の主張は非常に誤解を生じさせるものであると考えています。費用対効果評価における比較対照技術の構成割合と実臨床における使用実態は直接は関係していません。費用対効果評価においては、比較対照技術を1つ選択するという観点から代表的な薬剤が選ばれているものになります。例えば企業が主張するようなベンラリズマブを比較対照技術として選択したとしても、NDBによる集計では、そのシェアはオマリズマブより少ない15%程度ということであって、それをもって企業の集計によれば60から80%の集団を代表することになるわけでありまして、これもまた臨床実態を全く反映していないわけであります。
 このように比較対照技術の構成割合と実臨床における使用実態をリンクさせるような議論は非常にミスリーディングで、少しその点御検討いただければと考えています。
 それから、4ページから5ページ、6ページ目の辺りですけれども、そもそも先ほど来繰り返していますように、薬剤の使用に基づいて患者を分割する、分析対象集団を分割するというのは、使用実態が医師や患者の選好に大きく依存する場合があるため、基本的には避けるべき手法なのではないかと考えています。
 具体的には、IL-5抗体が投与されてている患者、これがOverlap集団における好酸球性炎症の素因が強い患者と本当に解釈していいのか。そのような意図に基づかない手法が一体どの程度あるのかということは全く分かりませんので、なかなか厳しいのではないかなと考えるところです。
 それから、7ページ目ですけれども、Overlapの症例を、本来、IL-5抗体の治療効果が高い患者とそうでない患者に切り分けるべきだというような主張、それから、IL-5抗体の治療効果が高い患者がいるんだという企業側の主張ですけれども、これについては、製造販売業者の主張は正しいのではないかなと考えています。しかし、残念ながら、そのような適切な切り分け手法というのが存在しないことから、臨床家のおよそのコンセンサスとして診療ガイドラインの記述を参照し、適用可能で最も安価なオマリズマブを比較対照技術として選定したものでありまして、ここも技術的になかなか困難なのではないかなと考えています。
 それから、8ページ目、分析実施の可能性については、そのような分析ができないような可能性も否定できないと思います。また、好酸球数1,500以上の集団というのはかなり少ない割合を占めていると推測されることから、こちらは感度分析として実施するというのも一案かもしれないなと考えています。
 我々からは以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 今の御意見も踏まえながら議事を進めさせていただきたいと思いますが、○○先生、先ほどの○○先生の話も踏まえながら、改めてコメントをいただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
 
○○○委員
 今の科学院の方の説明も伺いながら、使用実態というのをどのように扱うべきか、そもそも重きを置くべきでないのか、非常に悩むところです。分析の結果や過程に関して、臨床医がこれは違うのではないか、受け入れづらいのではないかという方法で最終的な分析結果が出てくるとしたら、それはよくないのではという気持ちです。使用実態を反映させて、多く使われる製品が勝つのも変だと思いますが、現在の使用実態としてオマリズマブの使用が少ないのは確かです。ただし、オマリズマブこそ効く方もいるのは確かです。一方、IL-5関連の抗体のほうが効く方も確かにいます。それぞれの抗体製剤で著効する患者さんがいますので、それがまた議論を難しくしていると思います。大きな集団においてオマリズマブが比較対照技術であると決めつけてしまうことについては、臨床の立場からすると違和感が残る感じがいたしました。
 そして感度分析に関しては、位置づけをもう少し重きを置くようにすれば、企業も納得するのではと感じました。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。オマリズマブの取扱いというところで臨床実態の観点からお話をいただいたと思っておりますし、あと、従来議論のありました感度分析の取扱いについて少し整理をしていく必要もあるという御意見だったかと思います。
 その他の委員の先生方、いかがでしょうか。○○先生、意見書で御意見をいただいていたようですけれども、先生から何かコメントございますでしょうか。
 
○○○委員
 私もやはり使用実態に基づいた形では、逆といいますか、患者さんの病態に基づいた意思決定とはそぐわないような印象をどうしても受けてしまいます。
 それから、オマリズマブの使用実態と少し離れているのではないかということですけれども、オマリズマブというよりも、一連のお薬をいろいろ使う中でオマリズマブの費用を代表として使うということであれば、それはそれでいいのかなというふうにも思っております。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。使用実態のお話に関しては、結果としてのお薬の処方の割合で議論するよりは、もう少し工夫をすべきという御意見かなと思って伺っておりましたが、その他の先生方、いかがでしょうか。
 では、先に感度分析の取扱いについて先生方と整理をしていきたいと思います。感度分析はこの議論に全く必要ないというか、関係ないということではなくて、議論に意味があるからこそ実施していると理解して進めているところですけれども、○○委員、意見書いただいているなかで、宜しければこの感度分析の取扱いについて先生の御意見を少し御解説いただければと思います。
 
○○○委員
 そんな意見というほどではないですが、先生と同じで、それが必要だとこの組織で判断したから感度分析をしているのであって、ちょっと企業の言い分は断定が過ぎるように思います。ただ、○○先生もおっしゃったように、明文化してどういう扱いにするかというのは、これからの議論が必要かもしれません。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。1つは感度分析の位置づけについて、事務局などを通して企業さんにはしっかり御説明いただいたほうがいいのではないかなと思って伺っていたのと、この感度分析については、○○委員も御意見いただいていますし、私もそう思うのですけれども、アプレーザルの中において利用されるというか、結果が反映されるということでありますので、今回全く無意味ではないと考えているところであります。
 念のために事務局さんのほうに、この感度分析の取扱いについて立てつけ等で何か手続的なものがあれば伺いたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
 
○事務局
 事務局でございます。
 感度分析の取扱いにつきましては、分析のガイドラインに基づいて行われるものでございますけれども、基本分析と感度分析の結果をそれぞれ見ながら総合評価の際に議論されるものというふうに承知しているところでございます。
 以上でございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。基本分析があり、感度分析があって、多少、関わる議論があった場合においては、さらに追加の分析等もあり得るということでありますので、今、その第一段階としての感度分析の位置づけとさせていただいているという理解で進めておりますが、これについて何か委員の先生方から御意見ございますでしょうか。よろしいですか。
 そういう観点で、感度分析についてはそれなりの意味があって、活用していくという方針でこの専門組織では共有させていただければと思います。
 それを踏まえて、今回、企業側からの御指摘があった点について、先生方に整理をしていただきたいと思います。いずれにせよ、オマリズマブの使用実態、例えば薬剤の使用率などをどのような形で分析に反映していくかというところでありますが、何かこの点に関して先生方、御意見ございますでしょうか。
 企業さんの不服意見も考慮し、今まで議論して積み上げたものを基本にしたうえで、公的分析案を基本としつつも、企業さんが指摘している点の一部については、感度分析という形で整理をするということが考えられます。まさに血中好酸球数が150μL以上かつIgE抗原感作陽性の集団の取扱いについては、チェックの意味も含めて感度分析をして、その結果を踏まえてまた組織で次の方向性と言ったら変ですけれども、議論していくということが一つの選択肢かと思って伺っておりました。これについて委員の先生方、御意見いかがでしょうか。
 ○○先生、臨床家の立場からいかがでしょうか。
 
○○○委員
 まさにそうだと思います。感度分析として資料は作ったものの位置づけが低いままで、あまり考慮されないとすると、かなり偏ったものになる印象があります。同じぐらいの重きを置くというのも変ですが、感度分析もきちんと考慮することが満たされれば、企業の考えも酌み取ったことになると思いますし、臨床的にも受け入れやすいと思います。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 科学院さんのほうから、方法論とか、具現性の面で何かコメントがありましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 科学院です。
 ○○先生から少し臨床とそごがあるというお話をいただいていると思うのですけれども、我々は比較対照技術をオマリズマブだというふうに選択したときに、そのオマリズマブ単品をさしているわけではなくて、オマリズマブ、IL-5抗体、IL-4抗体、これらが恐らく全て比較対照技術の候補となり得るというか、比較対照技術になり得る性質のものなのですが、そのうち最も安価であるオマリズマブの価格で分析上代替しているというふうに考えていただくと、少しその臨床実態ともそごというか、感覚にも多少は寄っていくのではないかなというふうに考えるところです。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○先生、今のコメントに対して、いかがでしょうか。
 
○○○委員
 でも、結局オマリズマブを選んでいるんでしょうと言われかねないと思います。ただ、オマリズマブ以外の製剤であるベンラリズマブ、メポリズマブをもし選ぶ場合には、通常のやり方と違うことに関して強力な裏づけが必要なので、ちょっと危険という気持ちも持ちます。抗体製剤を全部鑑みながら、今まで決めた方法に従ってオマリズマブを選ぶということはやむを得ないと感じますが、感度分析などの形でデータの充実も望ましいと思いました。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。ガイドラインを含めた基本方針にのっとって、他の製剤についても情報量を増やしていただきたいというお話であったかと思います。議論がある部分ですので、もしよろしければ、多分手間もかかるのかもしれませんが、企業側の意見を踏まえた感度分析という形での念のためのチェックをして、その内容について必要であればまた専門組織で議論していくという方向で考えていく方針で、先生方、いかがでしょうか。
 異論がなければそういう方向性で少し議論を進めさせていただきたいと思いますが、よろしいですかね。
 その点を整理させていただいた上で、あともう一つ論点として上がっておりました血中好酸球数が1,500μL以上の集団について整理をさせて頂きます。これは科学院さんからもお話しがありましたが、分析の実現性も少し考慮して、感度分析みたいな形で行うという方向の議論もあるかとは思いますけれども、いかがでしょうか。
 科学院さんからこの点に関して何か追加でコメントはございますか。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。1,500以上、分析枠組み全体が分析不能となってしまうと、またそれはそれで問題ですので、分析実施の可能性等を検討するために感度分析にしていただくのはいいのではないかと、そんなにポピュレーションの多い集団でもないので、そういうふうに思うところです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 今までの議論、整理について先生方から御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 あと、念のためですけれども、Overlap集団についての薬剤の使い分けについて、これは臨床家の先生方から御意見がありましたけれども、薬剤の使用割合から集団分類をするということは少し乱暴であるというような御指摘であったと思いますので、この点は基本的にそれを踏襲する形で整理をさせていただければと思います。
 その他、この品目について、先生方から全体を通して御意見ございますでしょうか。一応、企業さんからの不服意見について個別に議論し、対応策について、多少は限界がありますけれども、整理をさせていただいたつもりですが、いかがでしょうか。
 ○○委員、ありますか。
 
○○○委員
 本当に難しい問題で、全体の方向は合意です。今後、こういった企業からの不服意見が、まだ企業のほうも納得できないで不服意見のやり取りが続くということはルール上あり得るのでしたでしょうか。それとも、どこかで着地できるということになるのでしたでしょうか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 これは事務局さんにお答えいただいてもよろしいでしょうか。
 
○事務局
 事務局でございます。
 不服意見につきましては、各専門組織それぞれ分析枠組みを分ける段階、企業分析の結果報告の段階、そして総合的評価の段階にそれぞれ1回ずつ不服意見を述べる機会が用意されてございます。仮に今回企業が望まないような結果になったとしても、一応不服意見としては、枠組みについては今回で決定されるということでございますけれども、企業の意見をできるだけ尊重した形で感度分析というふうな形で分析をすることとなってございます。また、それらを踏まえて最終的に総合的評価のときにも不服意見の機会というのはございますので、各回1回ずつではございますけれども、そのような機会を設けているところでございます。
 以上でございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 ○○委員、よろしいでしょうか。
 
○○○委員
 ありがとうございました。理解しました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、議決に入らせていただきますけれども、基本的には公的分析を前提として、企業側の不服について感度分析で対応していくという方向、すなわち、感度分析については意味があるという整理をさせていただきました。
 それでは、議決に入る前に、○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
 
(○○委員退室)
 
○事務局
 事務局でございます。
 ○○委員の先生方の退室が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 それでは、議決に入らせていただきます。
 先生方の御意見を参考に、テゼスパイア皮下注に関する費用対効果評価については、公的分析案を基本とする形とさせて頂きます。ただし、テゼスパイア皮下注に係る分析枠組みは、公的分析案の分析枠組みを基本としつつも、感度分析として、血中好酸球数150μL以上かつIgE抗原感作陽性の集団の取扱いについて製造販売業者の提案する分析を実施することとし、また、前回提案のあった血中好酸球数1,500μL以上の分析については感度分析として分析可能性も含めて検討を実施するということとさせていただきます。よろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。