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2023年7月28日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第4回議事録
日時
令和5年7月28日(金)13:00~
場所
オンライン開催
出席者
田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、髙橋 祐二専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他
議題
○ピヴラッツに係る企業分析報告について及び公的分析レビュー結果について
議事
- 議事内容
- ○費用対効果評価専門組織委員長
続きまして、ピヴラッツ点滴静注液に係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について御議論いただきたいと思います。
対象品目について企業分析が提出されておりますので、企業からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容について先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず、本製品に係る企業分析に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者入室)
○事務局
事務局でございます。
委員長、企業の方の準備が整いましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内でピヴラッツ点滴静注液に係る企業分析についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
では、始めてください。
○意見陳述者
よろしくお願いいたします。お手元の資料でということでしたので、画面なしで御説明させていただきます。企業分析結果の概要を御説明させていただきます。
スライドの内容としましては、対象疾患の説明、それから、今回のモデルで使用しました臨床試験の成績を紹介させていただきまして、最後に、費用対効果分析モデルを御紹介させていただきます。
では、2ページ目の「くも膜下出血後の脳血管攣縮について」から始めさせていただきます。
この薬剤の対象疾患はくも膜下出血でございます。脳動脈瘤性のくも膜下出血が発症し、病院に搬送された場合、病院で応急の止血処置がされます。これが図の右上になりますが、止血処置としましてはこういう医療用のクリップで血を止める方法と、カテーテルでもって三次元コイルを留置する方法がされております。
このように止血が成功しますと、次に2段目に入りますが、患者さんは病院の中で回復を待つことになります。病棟から一般病棟に移って、回復して、退院。その後、社会復帰になりますけれども、この中で脳動脈瘤の破裂からおよそ大体4日から2週間、14日の間に強力な脳血管の攣縮が起こることが言われています。この原因としましては、漏れ出した赤血球からのエンドセリンによって強力な血管収縮がもたらされるということなのですが、これによりまして患者さんがお亡くなりになられたり、あるいは脳梗塞に陥ったり、それから、遅発性の神経脱落症状。こういったことを呈することが言われております。
3ページに移りますと、そういったところで、この脳血管攣縮の好発時期である大体2週間の間にターゲットを置きまして、このクラゾセンタンを24時間の点滴静注をするのが投与方法でございます。最大で14日目までの投与になります。
このような投与方法を用いまして、既に国内では第Ⅲ相試験が2本実施されております。その結果について御紹介させていただきます。
次の4ページ目にお進みください。国内の臨床試験としましては、このコイリング後の術後の患者さんを対象としました305試験。それから、クリッピング術後の患者さんを対象としました306試験。この2試験が実施されております。それぞれ、患者数221名。これは全くたまたま同数の患者さんがそれぞれの試験にランダム化されて、クラゾセンタン10mg/hあるいはプラセボを投与する試験でございます。
この投与期間、それから、観察期間も含めまして、この図の下にあるように、DSAあるいはCT等を撮りまして、これによって脳血管攣縮の有無あるいは脳梗塞の有無を捉えることによって、こういった画像による所見、それから、臨床症状による所見の発現頻度を見るという趣旨の試験でございました。
5ページ目に移っていただければと思います。5ページ目には中等度以上の脳血管攣縮の発現割合を示しております。
御覧いただけるように、プラセボに対してクラゾセンタン10mg/h群で発現頻度を下げておりまして、統計学的に有意という結果でございました。この結果は2試験の併合解析の結果で、当然ながら、単体の試験でもそれぞれの試験におきましてプラセボに対する優越性は検証されております。
このように脳血管攣縮が起きますと、関連した臨床的な症状が起こるわけです。それが次の6ページ目に書いてございます。
このような臨床的な症状をMorbidity/Mortalityイベントと定義しまして扱っておりました。Morbidity/Mortalityイベントの定義としましては、この画面の右にありますように、患者さんが亡くなった場合、あるいは脳血管攣縮に関連した新規脳梗塞が発現したような場合、それから、血管攣縮に関連した遅発性神経脱落症状が発生した場合にイベントありとカウントしまして、イベントの発現頻度を調査する形でございました。
グラフで見ますと、プラセボに対して同様に、クラゾセンタンが非常に発現率を下げている。統計学的に有意でありまして、これも併合解析の結果でございますが、試験単体でもそれぞれプラセボに対する優越性を検証しております。Morbidity/Mortalityイベントがこの試験でのプライマリーエンドポイントでございました。
1枚めくっていただきまして、全体の分析のほうに移らせていただきます。
今回は、対象とする疾患集団としましては脳動脈瘤によるくも膜下出血後の患者でございます。比較対照技術名は術後集中治療・管理。すなわち、クラゾセンタンを投与していないプラセボ群と位置づけております。分析の立場と費用の範囲はここに書かせていただいたとおりで、使用する効果指標は質調整生存年(QALY)でございます。
次の8ページ目はシステマチックレビューでございます。システマチックレビューをまず実施いたしまして、7つの臨床試験まで絞り込んでおります。
その7つの臨床試験は全てクラゾセンタンの試験でございますが、7つの試験の質を評価しましたところ、2012年、MacdonaldらのCONSCIOUS-3という試験。この表で言うと2段目でございます。それから、2022年のEndoらの試験。この2つがいずれもバイアスリスクが少なく、信頼性の高い研究であると我々では判断しております。そのうちのEndoらの2022年の試験につきましては日本人集団を対象とした2試験の併合解析の試験でございます。
さらに、この試験の結果を日本での承認申請においてクラゾセンタンの有効性・安全性を評価する上で最も重要な検証的試験と位置づけておりました。この試験が先ほどのスライドで説明した結果でございます。この試験をもちまして追加的有用性ありと判断しまして、今回のモデルに組み込む形といたしました。
9ページ目に進みまして、費用対効果分析モデルを御説明させていただきます。今回の分析モデルの中には、この諸試験の中で用いたMorbidity/Mortalityイベントの結果をモデルの中に組み込む形といたしました。
その理由としましては、この青い枠に書かせていただいているとおり、このM/Mイベントを主要評価項目と位置づけて、承認審査の根拠となったこと。それから、くも膜下出血患者の状態を最も適切に表した指標と考え、それをモデルに組み込む形といたしました。
組み込んだのは急性期のところでございますが、それがその下の図に書かせていただいております。ピンクの枠、脳動脈瘤くも膜下出血患者をクラゾセンタン治療群と術後治療・管理群、プラセボ群に分けまして、それぞれに死亡、DINDあるいは新規CI、健康。この3つの状態に分けました。この3つの状態の患者の分布につきましては、先ほどの臨床試験での患者の分布を用いております。プラセボ群も同様に患者の分布を当てはめております。
ここで、この早期の患者の状態を6か月の健康状態まで外挿するために先行研究を用いました。ここから、3か月の患者の状態から6か月後の患者の状態を予測、そのつなぎを予測するような先行研究でございました。この先行研究がModified Rankin Scoreでの変化を基に患者の状態の変化を表した試験で、今回の試験結果を死亡、DINDまたはCI、健康を便宜的にModified Rankin Scoreに当てはめをいたしております。
具体的には、死亡がランクの6、DINDやCIが3~5、健康状態が0~2というふうに当てはめて、3か月の健康状態を基に、この先行研究の患者の変化を使いまして、6か月後の患者の分布を予測しております。
○事務局
事務局でございます。
時間となりましたので、終了してください。
ICERの結果のみ御紹介いただけますでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
お願いします。
○意見陳述者
ICERにつきましては125万円となりまして、区分としましては500万円以下と判断しております。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、委員の方々から御意見、御質問はございますでしょうか。
いかがでしょうか。よろしいですか。
では、私から、9ページ目で6か月時点の健康状態をmRSから推計されていることになっておりますが、ここの妥当性とか検証みたいなものについてはどのようにやっているか、お答えいただいてもよろしいでしょうか。
○意見陳述者
この死亡、それから、DINDまたはCI、健康を、お手元の資料では17ページ目に、Appendix 5になりますが、Modified Rankin Scaleの定義がございましたので、この定義に照らして、この死亡あるいはDINDまたはCI、それから、それ以外の最も適切と思われるところに当てはめております。
○費用対効果評価専門組織委員長
今の御説明で十分分かりましたので、大丈夫です。
その他、先生方、御意見がないようでしたら、これで終了として。
では、○○委員、お願いします。
○○○委員
くも膜下出血後の血管攣縮は非常に大切な問題なのはよく分かるのですけれども、最初のときに発生率が50~55%とイントロダクションでされたと思うのですが、M/Mイベントの効果のところでプラセボが34.1%で、この薬が14.9%というのですけれども、55%と34%の間は強力な攣縮はあるが、今、言われた死亡とか新規脳梗塞とか、そういうものが出なかったと理解したのですけれども、それでいいですか。
○事務局
御理解のとおりでございます。脳血管攣縮の発現頻度が高く出ておりまして、必ずしも100%症状が出るわけではございませんでしたので、その結果になります。
○○○委員
私は首から下が専門なのでよく分かっていないのですが、血管攣縮はこういう新規脳梗塞とか遅発性神経脱落症状で見つけるのではなくて、何か画像とかそういうもので、攣縮はあるけれども、こういうMorbidityのようなことは起きないということがあるということでしょうか。
○事務局
はい。今回の臨床試験の中では特に頻繁に画像を撮っておりましたので、さらに脳血管攣縮が見つけやすい状態ではありました。
一般診療の場合にここまで頻繁に画像を撮るわけではないような気がしますので、一般診療では、もちろん、画像は撮りますけれども、症状から疑われる場合は画像を撮っていく形にするのではないかなと推測しております。
○○○委員
画像とこういうシビアなMorbidityとの乖離が20%ぐらいあるかもしれないということですね。ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。
続きまして、科学院から5分以内でピヴラッツ点滴静注液に係る企業分析についての公的分析のレビュー結果の御説明をお願いいたします。続いて御質問させていただきます。
では、始めてください。
○国立保健医療科学院
科学院です。ピヴラッツに関する公的分析のレビュー結果について御説明します。
1ページ目ですけれども、製造販売業者による分析の課題として以下の4点を挙げさせていただいております。この4点について、それぞれ御説明いたします。
2ページ目ですけれども、1点目はクラゾセンタンの有効性の根拠とする研究データについてでありまして、製造販売業者はシステマチックレビューにより、クラゾセンタンとプラセボに関するRCTを7試験(6文献)特定しているところです。しかし、製造販売業者は薬事承認に用いられた第Ⅲ相のRCTの2試験を用いて追加的有用性の評価あるいは経済評価を実施しているところでありますが、その他の論文のデータの利用可能性についても検討させていただきたいということで、課題として挙げさせていただきました。
3ページ目、2点目ですけれども、脳血管攣縮に関連したイベントについてでありまして、製造販売業者の分析モデルでは、ディシジョンツリーモデルとマルコフモデルを組み合わせることによって分析を実施しています。このディシジョンツリーモデルの部分では、くも膜下出血発症後のModified Rankin Scaleの分布を3水準に分類して決定しているところですが、その中にパラメーターとしてModified Rankin Scaleの分布としては、製造販売業者は遅発性虚血性神経障害あるいは脳梗塞を発症したものがModified Rankin Scaleの3~5に相当する。このように定義することでModified Rankin Scaleの分布を求めているところです。このことについては、いわゆるModified Rankin Scale自体を評価したデータも存在することから、この妥当性についてさらに検討させていただきたいと考えています。
4ページ目ですけれども、QOL値等のパラメーターの算出方法についてですが、Modified Rankin Scaleの健康状態に基づいてマルコフモデルを用いて分析しているところですけれども、このモデルで用いられているQOL値あるいは死亡ハザード比といったパラメーターについて、もとのデータソースではModified Rankin Scale1水準ごとの値が示されていますが、製造販売業者はこれらの値を各健康状態に当てはめる際に、Modified Rankin Scaleの分布を考慮せずに単純平均していて、その値を代入しているということであります。しかし、このことの妥当性について少し検討させていただきたいということで課題の3点目を挙げさせていただきました。
4点目、分析期間についてですけれども、製造販売業者は、分析の開始年齢を57.8歳と設定した上で、分析期間を生涯(24年)の分析を実施して、ICERを推計しているところです。しかし、24年経過時点では両群ともに半数以上の患者さんが生存されているということですから、これが十分に長い分析期間と言っていいのかどうかについて精査させていただきたい。このような趣旨になります。
以上、4点挙げさせていただきましたが、6ページ目、レビュー結果による再分析の必要性についてはありで、今後、再分析について検討させていただければと考えています。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
委員の方から御意見、御質問はございますでしょうか。
いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
ありがとうございました。
(意見陳述者退室)
○事務局
事務局でございます。
企業の方の退室が確認できましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。
○○先生、御意見をいただいてもよろしいでしょうか。
○○○委員
あまり大きな問題はないかもしれないのですけれども、やはりModified Rankin Scaleの分布をきちんと当てはめる必要があるとは思いました。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
その他の先生方、いかがでしょうか。
科学院さんの御説明にあったとおり、幾つか論点というか、注意深く確認すべき点があるということでありましたが、いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、議決に入らせていただきます。
議決に入る前に、○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
(○○委員退室)
○事務局
事務局でございます。
○○委員の退室が確認できましたので、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、○○委員を除く先生方の御意見をまとめますと、企業の分析につきまして、決定された分析枠組みに沿って分析がなされていないということでよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
先ほどの皆様方の御意見をまとめますと、次に、企業の分析データ等の科学的妥当性は妥当でないと考える部分があるということでよろしいですね。
(異議なしの意思表示あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○事務局
事務局でございます。
委員の先生方の意見をおまとめいたしますと、企業の分析データ等の枠組みについては。
○費用対効果評価専門組織委員長
分析が妥当、ある程度なされているということになりますね。
○事務局
枠組みはなされているというふうになろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
大変失礼いたしました。私のほうで修正させていただきます。
もう一度、最初から先生方の御意見をまとめさせていただきますと、企業の分析につきまして、決定された枠組みについては、沿って分析がなされるということで、今、御指摘のとおりということで整理させていただきます。
また、企業の分析データ等の科学的妥当性は妥当でないと考える部分があるということについても、先ほど先生方と御確認をさせていただきました。
最後に、公的分析によるレビュー実施により再分析を実施するという結果の妥当性はおおむね妥当ということでよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、公的分析において再分析の方針を科学院より表明していただくことといたします。