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第40回ILO懇談会議事概要
大臣官房国際課
日時 令和6年4月23日(月)13:30~15:30
場所 中央合同庁舎5号館 専用第21会議室
議題
1.第350回ILO理事会の報告
2.未批准条約について
第155号条約(職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約)
第190号条約(仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約)
2.未批准条約について
第155号条約(職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約)
第190号条約(仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約)
議事
- 1.第350回ILO理事会の報告
政府側から資料に基づき説明を行った。労使からの発言は無かった。
- 2.未批准条約について
(1)第155号条約(職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約)
政府側から資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
(労働者側)
これまでの間第155号条約の批准に向けて課題とされてきた第17条に関して、「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会報告書」 において、建設業等以外の業種の混在作業場所における連絡調整が明記されるとともに、審議会においても、この法改正に向けた準備が進められていると側聞している。これによって連合としては批准に向けた大きな障壁は無くなったものと承知をしている。その上で、政府からの報告において、本条約は原則としてすべての労働者について適用することとされており、関係省庁と協力して精査中とあるが、特にこの点において大きな課題は生じていないという理解で良いかを確認させていただきたい。
連合としては、第155号条約は中核的労働基準であり、早急な批准が必要だと認識している。また、厚生労働省のビジネスと人権検討会の報告書でも述べられているが、我が国は労働安全衛生分野におけるトップランナーであり、本来は他国にこの批准を働きかけて、知見の共有を行うべき立場にあるものと認識している。早期に第155号条約を批准することで、労働安全衛生分野におけるリーダーシップを世界に示していくべきである。
(政府側)
第155号条約の批准については、関係省庁も含めて検討しているところ。条約の批准にあたっては、法制上の課題が無いか丁寧に確認する必要があり、この場で断定することはできないが、法制上の課題についてはこれからも丁寧に精査を進めていきたいと思っている。また、労働安全衛生分野におけるリーダーシップについて頂戴したご意見も踏まえて対応していきたいと考えている。
(労働者側)
政府から関係諸国の状況等についても説明をいただいたところ、批准にはほとんど障壁が無いように思える。第155号条約については中核的労働基準でもあるので、出来るだけ早く、批准を視野に入れてご検討いただければと思う。
(政府側)
批准に向けた課題の整理は、随分進んできていると認識はしている。一方で、条約の批准に当たっては法制上の確認がかなり厳格に必要になるため、進めていけるように、関係省庁とともに取り組んでいきたいと考えている。
(使用者側)
第155号条約は中核的労働基準に入っており、また安全衛生は労働者にとって重要であるだけではなく、企業価値にも大きな影響を与えるものだと思っている。日本における安全衛生の実践が、第155号条約を批准している国々と比べて遅れているとは言えず、厚生労働省がまとめた「国内の労働分野における政策手段を用いた国際課題への対応に関する検討会」の報告書においても、労働安全衛生分野でリーダーシップを発揮していくと提言いただいたと認識をしている。
また、今年のILO総会では、中核的労働基準の反復討議が議題になる。2017年から2023年の状況を振り返ると、労働安全衛生が基本的原則に加わったことは非常に大きな影響を与えると思っている。基本的原則の5つの分野が相互補完的であって、それぞれが強化し合う関係にあるという話も出てきており、是非、早期に批准をしていただきたい。
政府は、批准にあたって条約と国内法制の整合性や各国の状況をしっかりと確認をしていただいているが、引き続きスピード感を持って早期の批准に向けた検討を進めていただきたい。
(政府側)
法制上の課題の整理については、先ほど申し上げたとおりとなる。二以上の企業の作業場における協力義務については、法令改正の必要性も含めて検討が必要であるため、そういった点も含め、進めていきたいと思う。
- (2)第190号条約(仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約)
- 政府側から資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
(使用者側)
ハラスメントは、相手方の尊厳や人権を傷付ける、あってはならない行為である。第190号条約の批准については、暴力とハラスメントを禁止する法律の整備や、違法となる行為の定義付け、法的な担保の仕方等、整理が必要だと認識をしている。衆参両院の附帯決議において、ILO第190号条約の早期批准という項目があり、我々としても重く受け止めている。第190号条約の批准に向けた検討について、我々も積極的に関与したいと思っている。
第190号条約の諸外国の状況の調査についてお伺いしたい。
(政府側)
「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」においても、有識者の方から、まず各国のハラスメントの法制がどうなっているのかを調査をするようにとご指摘をいただいており、今事務局の方で鋭意作業をしている。海外法制に詳しい先生のご知見もいただきながら、検討会に提出ができるよう進めているという段階である。
(使用者側)
第190号条約の批准に向けての法体系の検討は、各国の法体系が複雑で多岐に渡っており、調査も難しい面があると思っている。しかし、批准に向けて検討する際に有用な情報であるため、鋭意着実に、なるべく早く調査に取り組んでいただきたい。
(労働者側)
本条約に関する課題認識と、調査を直ちに進めるべきという思いは、使用者側と全く同感である。加えて、既に第190号条約を批准、発効しているのはイギリス及びカナダ、そして未発効ではあるものの批准しているのはドイツだと認識している。先進国が次々と批准していることについて、どのように受け止められているかをお伺いしたい。また、早く調査結果をお示しいただけるようお願いしたい。
(政府側)
まず、各国の状況の受け止めということについて、G7の中で第190号条約を未批准である国は日本とアメリカだけであるという状況は承知している。一方で、ハラスメント禁止規定のあり方や、この条約による保護の対象に非常に広い概念が含まれるといった論点についてどのように考えていくのかということもあり、慎重な検討が必要と考えている。
調査については検討会を行っている状況で、夏頃には報告書を取りまとめる予定となっている。調査をするにあたって、衆議院・参議院の附帯決議において、ILO第190号条約の早期批准という項目が入っていることも重く受け止めている。まずは主要国で本条約を批准している国を中心に、検討会で有識者の方に資料提供できるようにしたい。
(労働者側)
第190号条約の課題を、ハラスメントの定義・禁止規定という点と、保護の対象者という点に分類したのは適切である。例えば、パワハラやセクハラのような行為に紐づけられるハラスメントと、求職者や就職志望者に対するハラスメントのような対象者に紐づけられるハラスメントがある。このような分類の下、規制される行為をどのように特定し、規制することを検討されているのかお伺いしたい。また、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産、育児休業に関するハラスメントなど様々なハラスメントがあるが、それ以外にどのようなものが想定されて、どこまで検討されているのか教えていただきたい。
(政府側)
ハラスメントについて、現在、雇用機会均等法、労働施策推進法、育児・介護休業法において、それぞれにセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産によるハラスメント、また育児休業・介護休業等に関するハラスメントを規定している。
第190号条約ではハラスメントを法令で禁止することを求めており、どういった行為を禁止するのかがある程度明確でないといけないとまず考えられる。
一方で、民法上の不法行為や、安全配慮義務違反に含まれる債務不履行のような不法行為についても、ハラスメントと言われているものもあると認識している。このようなものの適合性をどのように考えていくかが課題だと考えている。
ハラスメントの検討状況等という話につき、「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」においては、ハラスメントの現状と対応の方向性というのを大きな軸として議論いただいている。その中において、社会的にも関心を集めているカスタマーハラスメントや就職活動時におけるセクシュアルシュアルハラスメントについても議論していかないといけないと考えている。
(労働者側)
ハラスメント行為とハラスメントの対象者とを分けることが必要だと申し上げたのは、例えば就職志望者に対するセクシュアルハラスメントは、行為で言えば、セクシュアルハラスメントで整理がなされているのではないか、という意味である。加えて、本条約の定義に含まれる行為として何が必要なのかということをお伺いしたい。
(政府側)
就職志望者中の方に対するセクシュアルハラスメントについては、第三者へのセクシュアルハラスメントというような形になり、雇用管理の措置義務の対象ではなく保護の対象の問題だと認識している。各国の状況、特に批准している国で、どのような法制になっているのかを見ていくのが重要だと思っている。
(労働者側)
各国の批准の状況をお調べいただき、どのように条約が解釈されていて、どのような分類をして、何が残っているのかということを是非調べていただきたい。また、民法などにも言及があったが、他の法令との関係で、関連省庁と現時点で調整していることがあればお伺いしたい。
(政府側)
ハラスメントということだと、カスタマーハラスメントについては、第三者からの行為という形の整理になる。他省庁については、消費者庁や業所管官庁がある。カスタマーハラスメントについては、令和4年に企業対策マニュアルを作成し、関係省庁と意見交換をしている。
(労働者側)
カスタマーハラスメントの定義は、「カスタマーハラスメントの企業対策マニュアル」にある「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」では足りないのかをお伺いしたい。また、第190号条約の批准に向けた課題は、ハラスメントの定義・禁止規定と、保護の対象者という2点だけでよろしいのかを再度確認したい。
(政府側)
まず、カスタマーハラスメントの定義について、企業や業界により、顧客等への対応方法・基準は多種多様であるため、企業対策マニュアルにおいては、マニュアルを策定した際の調査や企業からのヒアリングを踏まえ、おおよそこういうところがカスタマーハラスメントの概念ではないかという形でお示しをしている。これが法制的になじむかどうかは、労働政策審議会の場でのご議論だと思っている。そういったところも含めて、まずカスタマーハラスメントとして読めるのかどうかという部分として、今行っている検討会でご議論をしていただくというところかと思う。
第190号条約の批准の課題が2種類で足りるのかについては、批准国は未だ39カ国という状況で、実際に批准にあたって、その39カ国がどういったところをクリアしたのかを調べないと難しいものであると思っている。そういったことも踏まえて、外国、特に先進国の批准が一つの参考になると考えている。
(労働者側)
第190号条約は第155号条約に比べて批准に向けた検討が遅れているのではないか。法令上の課題があることは理解できるが、日本政府が条約採択に賛成したことも踏まえ、速やかな批准をお願いしたい。第190号条約について、ILOの担当者と実務者レベルで協議したことはあるのか。
(政府側)
第190号条約については、実務者レベルでの協議には至っていない。
ILOの見解という点については、条約勧告適用専門家委員会のコメントもまだ少ない状況であり、まずは他国がどのような形で批准しているかを調査して進めていきたい。
(使用者側)
カスタマーハラスメントについては、業種業態によってかなり違いがある。発生した事案がカスタマーハラスメントであるかどうかを現場で容易に判断できるかということと、どのように対応するのが良いのかということを合わせて議論をしていくことが重要だと思っている。以上