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2018年5月15日 第1回歯科技工士の養成・確保に関する検討会 議事録

医政局歯科保健課

○日時

平成30年5月15日(火)15:00~17:00


○場所

厚生労働省共用第8会議室
(中央合同庁舎第5号館20階)
東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

○歯科技工士の養成・確保に関する事項について

○議事

○堀歯科保健課歯科衛生係員 それでは、ただいまより第 1 回歯科技工士の養成・確保に関する検討会を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。座長が決まるまでの間、事務局で進行させていただきます。本日は第 1 回目ですので、はじめに本検討会の構成員を名簿順に御紹介いたします。昭和大学客員教授の赤川安正構成員です。

○赤川構成員 赤川です。どうぞよろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 札幌市保健福祉局保健所 母子保健・歯科保健担当部長、秋野憲一構成員です。

○秋野構成員 秋野です。どうぞよろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 全国歯科技工士教育協議会会長、尾崎順男構成員です。

○尾崎構成員 尾崎です。よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 弁護士法人小畑法律事務所代表弁護士、小畑真構成員です。

○小畑構成員 小畑です。よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 株式会社コアデンタルラボ横浜代表取締役社長、陸誠構成員です。

○陸構成員 コアデンタルの陸と申します。よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 桑名歯科医院院長の桑名良尚構成員です。

○桑名構成員 桑名です。よろしくお願いします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 公益社団法人日本歯科技工士会会長の杉岡範明構成員です。

○杉岡構成員 杉岡と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 株式会社オムニコ代表取締役社長の高橋勝美構成員です。

○高橋構成員 高橋です。よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 アルモニア代表の傳寶弥里構成員です。

○傳寶構成員 傳寶と申します。よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 公益社団法人日本歯科医師会常務理事の三井博晶構成員です。

○三井構成員 三井と申します。よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 また、本検討会ではオブザーバーといたしまして、文部科学省高等教育局医学教育課薬学教育専門官の福島哉史専門官に御出席いただいております。

○文部科学省福島専門官 文科省の福島です。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 続きまして、事務局の紹介をいたします。歯科保健課長の田口です。

○田口歯科保健課長 田口です。よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 歯科保健課課長補佐の古田です。

○古田歯科保健課課長補佐 古田です。よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 歯科保健課課長補佐の和田です。

○和田歯科保健課課長補佐 和田です。よろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 大臣官房審議官の椎葉は、公務のため遅参する予定です。最後になりましたが、私、歯科保健課歯科衛生係の堀と申します。よろしくお願いいたします。

 それでは、事務局を代表し、田口歯科保健課長より御挨拶を申し上げます。

○田口歯科保健課長 改めまして、歯科保健課長の田口です。本日はお忙しい中、本検討会に御出席いただき誠にありがとうございます。また、日頃から医療行政の推進に当たり御理解・御協力をいただき重ねて御礼申し上げます。

 さて、我が国は世界有数の長寿国となっておりますが、介護を必要とする高齢者の方々が増加をしていることも事実です。こういった状況の中で、高齢者の口腔機能の維持・向上を図っていく観点から歯科技工士等の歯科専門職種の重要性がますます増加するものと考えております。本検討会では、歯科技工士の養成と確保、この 2 点を中心に議論を行っていただければと考えております。国民に安全で質の高い歯科医療を提供する観点から、歯科技工士教育を充実させ、より質の高い歯科技工士を輩出していくことは必要不可欠であろうと考えております。その一方で、就業されている歯科技工士に関しては、約半数が 50 歳以上であることなど、担い手の高齢化が進み、人材不足が懸念されております。口腔機能の回復に対する需要が高まり、ますます歯科技工士の担う役割は大きくなることから、歯科技工士を養成し確保していくことは大変重要であると考えております。今回は、本検討会第 1 回目ですが、各構成員の皆様方におかれましては、既存の考えにとらわれることなく、歯科技工士の養成・確保に当たっての必要な御意見を賜りますことをお願い申し上げ、簡単ではありますが私からの挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 今回の検討会につきましては公開となっておりますが、カメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。お手元に議事次第、座席表、構成員名簿、そのほか資料は 1 3 まで、また参考資料は 1 2 までをお配りしております。乱丁・落丁等ございましたら、お知らせいただければと思います。

 続きまして、本検討会の座長についてお諮りしたいと思います。資料 1 が開催要綱ですが、開催要綱第 3 条第 2 項におきまして、「座長は構成員の互選により選出する」とされております。どなたか、御推薦いただけますでしょうか。

○尾崎構成員 それでは、昭和大学の客員教授でいらっしゃり、現在厚生労働科学研究で歯科技工士に係る研究の代表研究者をされていらっしゃる赤川先生を推薦させていただきたいと思います。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 ただいま尾崎構成員より、赤川構成員を御推薦するといった御意見がありました。皆様方、いかがでしょうか。

                                   ( 異議なし )

○堀歯科保健課歯科衛生係員 それでは、皆様方に御賛同いただきましたので、赤川構成員に座長をお願いしたいと思います。赤川構成員におかれましては、座長席にお移りいただき、以後の議事運営をよろしくお願いいたします。

○赤川座長 赤川です。推薦をいただきましたので、座長を務めさせていただきます。先ほど田口課長からお話がありましたように、歯科技工士の養成・確保の問題は、大変重要なテーマであり、今後の歯科医療をめぐる大きな論点の一つになるものと認識しています。構成員の皆様の御協力を得て、良い形で検討を進めていきたいと思いますので、どうか御支援のほど、よろしくお願いいたします。

 それでは、座って進めさせていただきます。本日の議事に入る前に、先ほどの資料 1 の開催要綱を御覧ください。第 3 条第 4 項に「座長はあらかじめ座長代理を指名する」ということがありますので、座長代理を指名させていただきたいと思います。座長代理を全国歯科技工士教育協議会会長の尾崎構成員にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし )

○赤川座長 ありがとうございます。それでは、尾崎先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○尾崎座長代理 ありがとうございます。よろしくお願いします。

○赤川座長 それでは、議事に移ります。本日は、この事務局で準備いただいた資料 2 からに基づいて議論を行いたいと考えております。それではまず、事務局から資料の説明をお願いいたします。

○和田歯科保健課課長補佐 事務局です。お手元の資料 2 、資料 3 を御用意ください。まず資料 2 は、「歯科技工士を取り巻く現状等」です。本日は第 1 回目の会議ですので、最初に歯科医療全体の説明をした後、歯科技工士の現状などについて総論的に説明させていただきたいと思います。

 右下の番号、スライド 2 は、「今後の年齢階級別人口の推計」です。棒グラフと折れ線グラフが書かれております。棒グラフは人口を示しており、 4 つの階級に分けたものです。折れ線グラフは人口に対する 65 74 、あるいは 75 歳以上の人口の割合を示しております。御承知のとおり、我が国では少子高齢化が進んでおり、棒グラフで示している人口、この中の赤あるいはオレンジで示されている部分は高齢者の数が増加していることを示しています。結果的に折れ線グラフで示している人口に占める高齢者の割合が、年々増加していることを示しております。人口動態は今後の歯科医療の需要、あるいは歯科技工士を含む歯科医療関係職種の役割を考える上で重要な論点の 1 つになってくるのではないかと思っております。

 スライド 3 を御覧ください。「歯科保健を取り巻く状況について」、 5 つのデータを示しております。上段が口腔内の状態を示すデータ、下段が歯科受診の状況を示すデータ、左側から右側にいくにつれて、年齢を重ねていくデータを示しているところです。近年の特徴としては、一番左上のグラフですが、子供のむし歯、う蝕が減少している点、また高齢者に関して言えば、右下のグラフになりますが、先ほどの人口動態の変化にも影響してきておりますが、高齢者の増加によって歯科診療所を受診する高齢者の割合が増加しているということです。直近の平成 26 年の結果で、 41% 65 歳以上であるということが示されております。歯科医療機関に掛かる患者像が大部変化していることがお分かりいただけるかと思います。

 スライド 4 を御覧ください。こうした状況を踏まえ、「歯科治療の需要の将来予想」を示したイメージ図です。この図自体は保険局医療課で作成されたもので、今回の診療報酬改定に際し新たにリニューアルされたものです。図の下段に示されている赤の点線部分が、先ほどの説明にも関連しますが、患者さんの数や需要を示しております。歯科診療所で受療する高齢者の患者さんが増加することで、外来に来られる方から通院できない方まで様々な場所で歯科診療を提供するケースが増加してくることを示しております。他方で青い線と緑の線で囲まれた部分ですが、歯科治療の全体の需要は、人口の減少、あるいはむし歯の減少で相対的に減少してくることが予想されておりますが、治療自体は受診患者の状況に伴い、これまで歯の形態回復を中心とした、いわゆる「治療中心型」と呼ばれるものから、口腔機能の回復などを念頭においた管理あるいは連携を要する治療の需要が相当程度増加していくことをイメージ図として示したものです。

 スライド 5 を御覧ください。この資料は、昨年末に当課で取りまとめた「歯科保健医療の需要と提供体制の目指すべき姿」、いわゆる「歯科保健医療ビジョン」です。図の上段に記載されているのが歯科保健医療の需要、下段が需要に対して目指すべき提供体制の姿となっております。歯科保健医療の需要自体は先ほどの考え方とほぼ同じで、患者さんや歯科治療の需要の変化等の要素により、口腔機能の回復あるいは維持・向上に関する需要が増えてくることが予想されることをイメージとして示したものです。その需要に対応するために、図の下段ですが、歯科医療機関の中で完結していた歯科医療は、地域包括ケアシステムに象徴されるように、地域における歯科医療機関の役割を明示しつつ、関係機関あるいは関係職種と連携しながら歯科医療を提供していくことが求められることをイメージとして示したものです。

 スライド 6 を御覧ください。これまで申し上げたのが歯科保健医療全体のイメージ、あるいは動向ですが、ここからは歯科技工士に関する各論になります。先ほど説明した「歯科保健医療ビジョン」自体は歯科医師に関する内容を中心にまとめたところですが、このスライドの下段に示しているように、一部歯科技工士に関する提言も盛り込まれております。地域包括ケアシステムにおける歯科医療機関などの役割の中で、歯科衛生士、歯科技工士の人材確保が大きな課題となっていることが提言に盛り込まれております。

 続いて、スライド 7 を御覧ください。ここからは、歯科技工士の役割や位置付けについて説明いたします。ここで示しているのは「歯科技工士法」です。歯科技工士法につきましては、歯科医師法制定から遅れること約 7 年、当時は歯科技工法という法律で制定されたところです。と言いましても、法律に書かれている内容自体は、現状とほぼ同じで、歯科技工士の定義や歯科技工所の定義、また、歯科技工の業務に関する内容が規定されているところです。

 スライド 8 を御覧ください。歯科技工に関しては、歯科技工士法の第 2 条に定義が規定されているところです。一般的に歯冠修復物や欠損補てつ物の製作工程に関しては、図で示しているように大別すると 2 つに分けられます。 1 つは、中ほどに示している医療機関の中に歯科技工室があり、一連の工程が医療機関の中で完結するパターン、もう 1 つは、歯科技工所と呼ばれる歯科技工を独立して行う事業所に一部の工程を委託するパターンの 2 つに分けられます。いずれの工程にしても、現在の歯科技工は、写真で示しているようなワックスという材料を用いて作成された歯の型に金属を流し込む工程が中心となっているところです。

 続いて、スライド 9 を御覧ください。「 IT 技術を活用した新たな歯科技工物等の製作」です。先ほど説明した歯科技工技術が一般的ではありますが、歯科技工技術自体も日々進歩しており、この写真で示している CAD/CAM 装置を用いた歯科技工技術が普及しつつあります。現在は、従来型の技術と、ここで示している新たな技術とが共存している状況になっております。

 続いて、スライド 10 を御覧ください。実際に、こうした歯科技工業に関わる歯科技工士の状況について、幾つかのデータを用いて説明いたします。このデータは就業歯科技工士についてで、中ほどに就業歯科技工士数の年次推移を示しています。就業歯科技工士数については、 2 年に 1 度行われる衛生行政報告例で数を把握しております。全体として見ると、やや横ばいになっている状況で、平成 28 年時点で 3 4,640 人です。その下が就業場所別に見た就業歯科技工士です。就業歯科技工士の約 7 割が歯科技工所に勤務しているという実態です。残りの 3 割弱は、病院・診療所に勤務しています。

 続いて、スライド 11 を御覧ください。「就業歯科技工士 ( 年齢階級別 ) の年次推移」です。全体の数については、先ほど説明しましたが就業歯科技工士について 5 つの階層に分けて示したデータです。このデータを御覧いただくとお分かりいただけますように、一番色が濃い青の部分、これが 60 歳以上、その次に色が濃い部分が 50 歳~ 59 歳で、このスライドの下に、 50 歳以上の数を参考で示しています。近年の傾向は、 50 歳以上の割合が非常に増加している状況です。他方で 29 歳未満の若手の歯科技工士は、平成 16 年時点では 6,600 人であったものが、直近では約 4,000 人と 3 分の 2 まで減少しているという状況になっております。

 続いて、スライド 12 を御覧ください。このデータは、就業歯科技工士を男女別で比較した年次推移です。傾向を見ていただくと、男性の就業者数がやや減少しており、女性の就業者数がやや増加しているという状況になっております。折れ線グラフは全体の就業者に占める女性の割合ですが、微増傾向となっており、平成 28 年時点で約 19% となっております。社会全体として、女性にとって働きやすい環境をどのように整備していくのかというのが議論されておりますので、歯科技工士に関しても議論が必要ではないかと考えております。

 続いて、スライド 13 を御覧ください。「歯科技工士免許登録者数等の年次推移」です。こちらのグラフは、歯科技工士の免許登録者数と従事者数との関係を示したグラフです。棒グラフの青の部分が免許登録者、赤の部分が従事者数となっております。割り算をしたものが緑色の折れ線グラフの所です。平成 28 年のデータで見ていただきますと、 11 8,000 人が免許登録者数に対し従事者数は 3 4,640 人。実際に割り算をしてみると、 29.3% となっております。したがって、潜在的な歯科技工士をどれだけ掘り起こしていけるかということも考えていく必要があるのではないかと思っております。

 続いて、スライド 14 を御覧ください。 2 つデータを示しております。 1 つは就業場所別就業歯科技工士数、下段が規模別の歯科技工所数となっております。上段の就業場所別歯科技工士数につきましては、平成 28 年から、より詳細に把握することが可能となっております。傾向としては一番左側の平成 8 年を見ていただきますと、青い部分の歯科技工所で就業される方が増えてきています。下段の規模別の歯科技工所数ですが、こちらも平成 28 年の調査から 5 名以上の所について、より詳細に把握できるように見直しを行ったところです。傾向としては青で示されている、いわゆる一人技工所で勤務される方が多くなっている実態となっております。

 続いて、スライド 15 を御覧ください。就業歯科技工士の中で特に若い方の就業者が減少している背景には、データで示していますが、歯科技工士養成施設、あるいは入学者が減少していることが考えられます。このデータは、全国歯科技工士教育協議会から提供いただいた資料で、棒グラフが養成施設数、折れ線グラフが入学者数になっております。 18 歳人口がピークであった平成 4 年度の養成施設が 72 校、入学者数が 2,992 名であったのに対し、直近の平成 29 年度、一番右側ですが、養成施設が 52 、入学者数が 927 と顕著に減少しているところです。

 続いて、スライド 16 を御覧ください。「歯科技工士養成課程の内訳」です。養成課程につきましては、大きく 2 つに分けられます。従前、厚生労働大臣が指定し、現在は都道府県知事に業務を移管しているので、都道府県知事指定施設となっている所が 43 課程あります。また、文部科学大臣指定となっている養成課程が 11 課程あります。合わせると 54 課程となっております。修業年限別に見ていただくと、多くは 2 年課程となっており、 2 年制が 45 課程、 3 年制が 6 課程、 4 年制が 3 課程となっております。

 続いて、スライド 17 を御覧ください。少し話は変わりますが、ここからは「歯科技工士に係る制度改正」について 3 点説明いたします。まず 1 点目は、「歯科技工士における医療職俸給表 ( ) 初任給基準表の改正について」です。そもそも医療職俸給表の適用を受ける歯科技工士に限定される内容ですが、この改正内容につきましては、表で示しているように短大卒が 1 つであったものを、短大 3 卒と 2 卒に細分化し、高校卒を削除したところです。

 スライド 18 を御覧ください。 2 点目は、「歯科技工士国家試験の全国統一化」です。この改正では法定受託事務として都道府県知事が実施していた国家試験について、指定試験機関を定め、平成 28 年試験から全国統一化しております。現在も都道府県で行われていた試験内容となっており、筆記試験と実技試験の両方の形式で行われています。

 続いて、スライド 19 を御覧ください。 3 点目が、記憶に新しいところですが、「歯科技工士学校養成所の教育内容の単位化 ( 大綱化 ) 等」に関することです。主な改正は 2 つあり、 1 つは、従前は時間数で定められていた教育内容を単位制に改め、もう 1 つは、教員の要件について、歯科医師 2 人以上というのが最低条件であったものを削除させていただき、歯科医師又は歯科技工士、いずれかの職種であれば構わないという運用にしたところです。

 続いて、スライド 20 を御覧ください。こうした歯科技工士の状況を踏まえた予算上の対応について、 3 点説明いたします。まず 1 つ目は、平成 26 年度に創設された「地域医療介護総合確保基金」です。この基金につきましては、都道府県が医療従事者の確保のために必要な事業として実施する場合などは本基金の活用が可能となっているところです。歯科技工士を活用した事業例については、このスライドの下段に示している事業例になりますが、歯科技工士の確保対策の推進、あるいは歯科技工士養成所の施設・設備整備という事業例を示しているところです。

 続いて、スライド 21 を御覧ください。また平成 29 年度からは、「歯科補てつ物製作過程等の情報提供推進事業」を行っております。この事業は、中ほどの図で示しておりますが、医療機関内で製作される歯科補てつ物が、患者さんに対して、どこで誰が作っているのかという情報を明示することにより、患者さんに対して安全で安心な歯科医療の提供に資することを目的としている事業です。この事業自体、今年度、昨年度ともに、日本歯科技工士会に委託しているところです。

 続いて、スライド 22 を御覧ください。「中小企業等経営強化法にかかる取組について ( 医療分野 ) 」です。この取組につきましては、生産性を向上させるための取組に関する経営力向上計画を策定した中小企業、あるいは小規模事業者などに対して税制措置、あるいは金融支援措置が受けられるものです。この経営力向上計画につきましては、その内容に応じて各所管省庁が認定を行っておりますが、厚生労働省は医療分野を担当しており、全体の認定件数は 2,879 件、このうち歯科技工所が認定されたケースは 139 件となっております。具体的な認定事例につきましては、スライドの下段に示しておりますが、多くは CAD/CAM を導入し生産性向上をした取組です。

 最後のスライド 23 を御覧ください。「歯科技工士に係る研究」について説明いたします。歯科技工士に関しましては、厚生労働科学研究を活用し、お示ししている 2 課題を実施しております。いずれも 29 年度から実施しており、今年度末に取りまとめる予定となっております。 1 つ目は歯科技工業の多様な業務モデルに関する研究です。内容は、歯科技工所における勤務実態あるいは歯科診療所と歯科技工所間の委託契約方法などを調査した上で、労働環境等の改善に資するマニュアルの策定を予定しております。 2 つ目は、歯科衛生士及び歯科技工士の免許取得者の就業状況等に関する研究で、複数の養成施設の御協力を得て、卒後の就業状況などを把握し、具体的な方策を提示することを予定しているものです。資料 2 については以上です。

 続いて、資料 3 を御用意ください。 1 枚紙ですが、資料 3 は「歯科技工士に関する検討経過と主な制度改正」について、平成元年以降に行われたものをまとめたものです。先ほど説明した内容も一部含まれておりますが、検討経過としては、左側から 2 番目の列に示しております。これまで平成 4 年、平成 13 年、平成 26 年の 3 回にわたり、歯科技工士の養成、あるいは質の向上という観点で検討会が開催され、報告書が出されたところです。その右隣の列ですが、歯科技工士に関することとしては、平成 6 年に「歯科技工法」を「歯科技工士法」に見直しをした点、平成 8 年と平成 25 年の 2 回にわたり、歯科技工指示書の記載事項を変更する等の見直しを行っております。また右隣の歯科技工士教育・試験に関することですが、平成 6 年と平成 16 年に 1 学級定員の見直しを行いました。また直近ですが、平成 28 年には、各都道府県で実施されていた歯科技工士国家試験の全国統一化、また平成 30 年には、歯科技工士教育内容を時間制から単位制に見直しを行うなどの対応を図ったところです。一番右側の列ですが、歯科技工所に関する取組としては、平成 25 年に歯科技工所の構造設備基準について、当時通知であったものを省令に位置付けたところです。

 資料 3 については以上です。また参考資料として、過去 2 回の検討会の報告書などを配布しておりますので、適宜御参照いただければと思います。事務局からは以上です。

○赤川座長 どうもありがとうございました。歯科技工士を取り巻く現状、問題点、あるいは論点を多彩な視点から整理をいただきました。資料 3 では、制度改正というか、いい形で変わったところを説明いただきました。そういう中で、この検討会のテーマであります歯科技工士の養成と確保というこれら 2 つの大きく違うところ、あるいは場合によっては重なってもいますが、いろいろな視点や観点から検討を行う必要があると考えます。今日は第 1 回ですので、養成と確保、これら両方のテーマに関して、幅広く構成員の皆様の御意見をいただき、それらを整理して次回以降どのような形で進めるかを考えて行きたいと思います。従いまして、先ほどの資料 2 3 に対する御質問でも結構ですし、資料を踏まえて、あるいは現状で構成員の皆様がお持ちのいろいろな経験や直面している課題等について、自由な御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。

 どうぞ遠慮なさらずに、第 1 回ですから、自由に御発言をお願いいたします。まず、養成ということになると、当然養成校のお話が出てきますが、尾崎先生、学校が抱える問題、あるいは修業年限の延長などの論点もありましたが、協議会としていかがでしょうか。

○尾崎構成員 資料 2 のスライドの 15 ページにありましたように、歯科技工士養成施設に入学してくださる方々の入学者数が激減しております。一番多かった平成 7 8 、年度と比較しますと、平成 29 年度は 3 分の 1 以下になっているのが現状です。当然のことながら卒業者数も減るということになります。その結果、多くの歯科技工所、歯科診療所から各養成施設には求人を頂いているわけですが、それにお応えすることはできないという状況です。すなわち、歯科技工士の需要は多いのだけれども、供給がそれに追い付かないのが現状ではないかと考えております。

 では、入学者を増やせば良いという話になりますが、各養成施設ともに入学者を増やすため最大限の努力をしているにもかかわらず、残念なことに歯科技工士を希望していただける若い方々が、ここにきて非常に激減しているのが現状ではないかと考えております。以上です。

○赤川座長 なるほど。各学校や養成所でいろいろと努力されているのだけれども、なかなか入学者が増えないと。すなわち、定員をかなり割っているということですか。学校の数も 3 分の 1 に減ってきて、各学校における入学者も減っていて、定員が十分確保されていないと。

○尾崎構成員 はい。いわゆる定員に対する充足率も 6 割を切っていて、 5 割少ししかないのが現状です。

○赤川座長 わかりました。個々の学校では、そのような状況に対するいろいろな対応をされ、きっとホームページの充実、オープンキャンパスの開催、高校訪問など、いろいろと努力をなさっていることでしょう。

○尾崎構成員 はい。

○赤川座長 協議会として、何か全体的な取組などはされていらっしゃるのでしょうか。

○尾崎構成員 協議会全体としては、各養成施設と情報交換をきちんとして、どのような方法を取ることによって、入学者、入学を希望してくださる方が増えるのかといったようなディスカッションをするとともにホームページ等に動画を掲載する等を行っています。また、歯科医師会様では 8020 テレビに「歯科技工士のお仕事」という動画を載せていただいております。そういうものも活用しながら、全技協全体としても入学者確保の努力を行い、また、各養成施設では高校訪問をするといった努力をしているのが現状です。

○赤川座長 わかりました。ほかの構成員の方、いかがでしょうか。

○高橋構成員 今尾崎先生がおっしゃったように、やはりどうしても少ないと。そして、その大きな理由が知られていないことだと思うのです。私ども業界としては、それに対してどういうサポートができるかですが、 1 つは毎年、あるいは 2 年に 1 回、全国各地でオフィシャルな歯科商工協会なりが主催する展示会があるわけです。そこに、高校生を呼ぶという手段を取ってみたのです。とにかく何でもいいから人が集まるから来てくれという、学校単位でお願いをしました。前回横浜でやったときは、確かに何人か来ることは来るのですが、来たところで、高校 3 年生の何も分からない人が、歯科とはこういうものなのだよと。ユニットから何からいろいろ機械を見て、細々した材料を見ていくのですが、やはり基本がないので、何か行ってきたら疲れたんだよというぐらいで終わってしまうという。残念ながら、こちらへどうやって引き寄せたらいいかということをやってみたのですが、余りいい結果ではなかったように思います。

○赤川座長  なかなか難しいですね。

○桑名構成員 それこそ平成の最初の頃、 3,000 人ぐらい歯科技工士が卒業、入学されている当時は、 1.5 倍から 2 倍ぐらいの希望者があったわけです。そのときも認知度はどれだけあったのかというと、恐らく今と変わらないぐらいの認知度ぐらいしかなかったのではないかと想像はできるのです。そうすると、知っている人はある程度はいるのだけれども、しかしそこからなかなか希望されないというのもあるのかなという気がします。特に平成 15 年度以降から軒並み希望者が減ってきているというのは、何か違うところに原因があるのかなと。もちろん子供の数が減ってきているというのはあるとは思うのですが、それ以上に何かしら歯科技工に対する魅力が減ってきているのかなという思いがあるとともに、学校の数も減ってきています。平成 10 年当時は、歯科技工士の数が多いという話が多分あったと思いますが、その頃から入学者数も少しずつ減ってきているから閉校しないといけないという経営的な問題で減ってきているのか、また平成 21 22 年には歯科衛生士を 3 年制に変えたときに、結構教室が足りなくなってしまって、歯科衛生士を 3 年制にするための教室を確保するために、歯科技工士を閉校したといった所もあると思うのです。そのようなことで、全国の 5 6 校はなくなっているとは思います。三重県も、今は歯科技工士学校はないのです。当時、衛生士学校を 3 年制にするために、技工士学校を閉校したという経緯があります。ですので、技工士の認知度が平成の頭と今とでそれほど変わっているのかなというのは疑問に思います。

 それから、学校はアピールなどのできる限りのことはやっていると思います。それでももっと足りなくて、では何をすればいいのかと言ったり、もう少し制度自身を何か変えていかないと難しいのかなという思いはあります。

  赤川座長 認知度という点で言えば、ちょうど今週の週刊ダイヤモンドに

「20年後も医学部・医者で食えるのか?医歯薬看の新序列」という特集が組まれていて、その中に医療職が全部書いてあるのですが、なぜか歯科技工士が書かれていないのです。看護師や臨床検査技師、もちろん歯科衛生士も書かれてあるのに、歯科技工士は書かれていない。こういうことからしても、認知度がまだ十分ではないのかなと、読んでいて思いました。ほかに御意見はいかがでしょうか。どのようなことでも結構です。今は養成のテーマの問題点がだんだんとはっきりしてきたように思います。

○杉岡構成員 今、桑名先生がおっしゃったとおりだと思います。私は、今は日本歯科技工士会の代表を務めておりますが、私が歯科技工士を志した理由は非常に不純で、受験に失敗して、たまたま母親が、こういう仕事があり、当時はすごく良い仕事だということで、「どう、そういう仕事を望んでみたら」と言われ、北海道から一番近い岩手医大付属の技工士学校に行きました。その当時は全く歯科技工士などという職業も知りませんでしたし、歯が何本あるかということも知らないような人間だったのですが、たまたまその学校に行ったところ、自分の人生が 180 度変わるぐらい良い仕事に巡り合えて、今は本当に歯科技工士になってよかったと思っています。

 縁があって、たまたまそこで教員として 7 年残って、約 200 名の歯科技工士の卵を育てましたが、今でもその多くの人たちといろいろな連絡を取り合っています。やはり、どの世界もそうだと思いますが、今を生きている者は、その世界で次の世代が少しでも良い環境で生きていただきたいと思うのが、皆さん、人としての想いだと思います。私も次の世代の歯科技工士が少しでも良い環境で、歯科技工士になって本当によかったなと、思ってもらいたいと、今日も検討会に臨んでおります。

 今の歯科技工士が少なくなっているという話ですが、実は平成 28 年の歯科医師と歯科技工士の国家試験の合格者の比率を見てみますと、歯科医師 1 人に対して歯科技工士は 0.49 人なのです。これは余り変わっている数字ではなくて、いろいろな検討会の数字でも歯科医師 3 人に対して歯科技工士 1 名ぐらいがいいのだろう、あるいは歯科医師 2.5 名ぐらいがいいのだろうなという時代がありました。それからすると、決して今の卒業数は少ないわけではないのです。

 一番大事なことは、 2 枚目のスライドの 13 ページにありますように、免許取得者が 12 万人近くいるのに、その 3 割しか歯科技工士として働いていない。つまり、先ほど私が歯科技工士を勧められたとき、母は歯科技工士という職業はすごく良い仕事だと皆が言っていると。だから歯科技工士に挑戦してみたらと言われたのですが、今はそれがなかなか社会に評価されていないということが大きな理由だと思っております。その結果が、正にこの 13 ページの資料だと思います。そういうことを総合的に考えてお話したほうがいいのかなと思っております。

○赤川座長 歯科技工士の免許を持っている方が 11 8,000 人もいるにもかかわらず、実際には 3 4,000 人、3割しか歯科技工士として仕事をしていないと。

○杉岡構成員 ただ、これは課長補佐に補足していただければ良いのですが、免許を取っても亡くなったからといって全員が返納しているわけではないので、免許を持っている人はこれだけいるのですが、実際に働ける人は果たしてこれだけいるかというと、そうとは限らないと思います。

○赤川座長 そうですか。わかりました。

○三井構成員 我々は歯科医院側で雇用する側なのですが、私も開業して 30 年ぐらいですし、うちにも常勤の歯科技工士の先生がおります。この 30 年の時代の経過を見ていますと、やはり昔はむし歯というものが国民病であったと。削って詰めて、削って被せてという確率の治療頻度がものすごく高かったのです。ですから、今、杉岡先生からも話がありましたが、歯科医師何名に技工士という、 30 年前は最も数がいった時代。ですから、そのような意味で、技工士の先生方皆さんの勤務環境が非常に悪かったのです。うちの医院でも、診療所は 8 時に終わりますが、技工室は 9 時まで開いているということだったわけです。昨今のうちの診療所の、こういう会議に出てきて仕事をさぼっているというのも非常にあるのかもしれませんが、私は 7 時まで仕事をしていますが、うちの技工士は定刻の 6 時に退室するというような形で、大分そこの部分は技工士さんの総数は減ってきているかもしれません。なぜ技工士さんの離職率が高かったかといいますと、やはりそのような職場環境や長時間労働などがものすごくありました。しかし、今は全体的にはその部分は改善されてきているのではないかと思いますが、一層の改善は必要であると。

 それから先ほどから出ていますように、技工士といわれる職業の認知度の問題です。うちの技工士さんに聞いても、なぜ技工士学校へ行ったのですかというところでは、やはり、おじ様が歯科医師であって、「いいよ」というような、内々の推薦があって、昔は入ってきたというところがあるかなということです。現在歯科医師会では、地域医療の介護総合確保基金を使われて、各都道府県で衛生士や技工士がどのような職種であるかというスポットのコマーシャルを、テレビで流されている所もあるようです。それから、 8020 は今年が 30 周年になります。歯科医師会としては、衛生士、技工士にスポットを当てた映画の作成をしまして、今の若い方は、テレビよりも映画や DVD のようなもののほうが媒体として非常に影響力が大きいということで、歯科医師会としては、職を広めるということで、今年はそのような活動を計画しているところです。以上です。

○赤川座長 ありがとうございました。歯科医師会でも、いろいろなサポート事業をしているということですね。ほかにいかがですか。

○傳寶構成員 私は、この 7 割に入っている一人歯科技工士のオーナーです。今、県の技工士会の役員もさせていただいていて、現場の学生とお会いすることもありますし、教員の先生方とお話することもありますし、現場の若い技工士さんとお話する機会も多いのです。今、学校の先生からよく言われるのは、高校に技工士学校の案内に行こうとしても、高校のほうでことわられることが多いと、もう技工士学校は結構ですと言われることがあると。それがどうしてかというと、今は少子化になって、親御さんがお子さんの就職先や進路に対してかなり意見を述べることが多いと思うのです。親御さんが歯科技工士を検索すると、明らかにもう悪い評判しか歯科技工士のことでは上がってこないのです。長時間労働だとか、給料が低いということしか上がってこないので、まず親御さんが歯科技工士になることをお子さんに勧めないのです。

 その 1 つとして表れているのは、歯科技工所の 2 代目、お子さんがもうラボを継がないのです。別の職種に行かれるラボの 2 代目さんが多いのです。昔は家内工業だったこともあり、お父さんの技工所をそのまま継がれるお子様が多かったのですが、今は少し大きなラボになってもなかなかお子さんが継ぐというところは。もちろん継がれる方もいらっしゃるのですが、労働環境などを見ると、なかなか継ごうという気にならないということ自体が、歯科技工に対しての、やりがいはもちろんあって、私もやりがいがあって仕事をしているのですが、客観的に見たときに、やりがいだけで暮らしていけるのかというと、またそれは別の話なのです。そういうことで、今は SNS で何でも調べられるので、そういう評判があって歯科技工士になろうとは思わないという意見も聞きますし、実際にそうなのかなと思っています。

○赤川座長 そうですか。深刻な問題を提起していただきました。

○陸構請員 コアデンタルの陸です。今、傳寶さんが言われましたように、その前の三井先生のお話では非常に環境がよくなっているということでしたが、現場を見ると、まだまだ残業の問題も含めて、有休の取り方にしても、非常に厳しい環境にあるのではないか。多くは、そういう環境にあるのではないかと感じます。それから、先ほどの学校からの学生が少なくなったのは、もちろん頭数もそうなのですが、今日も学校の先生が来られているのに非常に言いにくいのですが、実際に出てくる学生の質もかなり低下しているような気がします。

 それはどういうところかというと、学力やそういう部分ではなくて、むしろ家庭の躾、あるいは自分たちが教えるまでもなく、徒弟制度というか、 1 つ先輩が教えたりという職人的なものがたくさん残っていますので、そういう技術的なものを教えていかなければいけないという部分がたくさんあるのです。やはり叱るという行為が出てくると、今の若い人は叱るということに対して非常に抵抗があって、こんなことを言ってはあれですが、すぐに心が折れてしまったり鬱の状況になったりする人が、私どもの社員の中でも非常に増加しております。そういうところをもう少し改善していかないと、逆に教育に時間が掛かってしまう。今までのように、ちょっと見て覚えろというようなことを口走っていると、もう辞めていくという環境になっていますので、その辺りも改善していかなければいけないところではないかと感じています。

○赤川座長 その改善は歯科技工士学校の教育の中で、もう少ししっかりやってほしいということですか。

○陸構成員 そういうところがどういう形で教育できるかは分からないのですが、私どもももちろん新人教育の中に、そういうものもできるだけ組み入れるようにはしています。

○赤川座長 わかりました。ほかにはいかがですか。

○秋野構成員 札幌市の秋野です。私は、今日は地方行政の立場で参加させていただいております。北海道でも、近年、歯科技工士の養成校が 2 つ閉校になりました。 1 つは、北海道内の地方都市にあった養成校ですが、学生が集めることが難しくなって閉校になりました。もう 1 つは、北海道立だったのですが、耳の聞こえない方が手に職をつけるための学校でしたが、こちらも人が集まらなくなって閉校となりました。なかなか入学志願者が集められなくなっているという状況で、先ほどお話があったように歯科技工士の職というか、ひょっとしたら歯科医療全体かもしれませんが、この入学者数の推移のグラフを見ていると歯科医師が過剰になって歯科医療のイメージが世論的に報道等で否定的に言われるようになったのと少し一致をしているのかなと。本来、歯科技工士さんは、私のイメージで言えば、先ほど杉岡会長がおっしゃったように、手に職をつけるという意味合いが非常に強くあって、公務員と同じように不況時には非常に強い職であったはずなのですが、現在はそうなっていないところが難しい恒常的な問題なのかなと思います。とはいえ、今のこの日本の超高齢社会の現状を考えると、日本は人口は減っていきますが、高齢者の数はそれほど減らないので、高齢者の歯の数も多く残るとなれば、歯科の補てつ物、歯科技工というものの重要性は変わることがないのです。私の地元の歯科医療関係者も、将来の歯科技工士不足を非常に心配している方も多いですし、行政的な側面からも歯科医療の適切な市民、県民、道民の歯科医療の確保というのは非常に重要ですから、しっかりと関わっていかなければいけないと思っております。特効薬的な、抜本的な解決方法はなかなか難しいとは思うのですが、それでも、しっかり小さなことでも、できるところからやっていかなければならないのではないかと思います。

○赤川座長 わかりました。北海道立でも閉鎖されたのですね。

○三井構成員 今、卒業されてくる若い技工士さんの質の問題のお話がありましたが、私たちも小学校などに学校医として赴きますが、教育の現場にはいろいろなモンスターがおりますから、本当に難しいのです。それと、ゆとり世代の問題です。我々の医院でも、従業員を雇用します。ちょっと怒ると、次の日に辞めます。もう、本当に辛抱ができないのです。ですから、それは学校教育なのかと。うちの小学校などでもよく協議になるのですが、学校教育ではなしに、もっとベースの問題で、昔は大家族制であったり、おじいちゃん、おばあちゃんがいたりとか、いろいろな所でそういうものがありました。だから、昔がよかったということだけではないのですが、今はなかなか学校でそこまで求めると非常に厳しいのです。私は京都府歯科医師会ですから、京都府歯科医師会も技工士学校を頑張って続けているわけですが、やはりずっと定員に満たない状態です。その分を、歯科医師会の会費から補助を持ってきて、何とか学校存続ということで、今の京都の会長も絶対に学校をやめることはないと。何があっても続けるのだということでやっていただいています。そうすると、定員割れしているのに、そこまで子供たちを選んで入学させることもできないという問題もあります。とことんの子は、やはり入学をお断りする子もいますし、途中で退学させるお子さんもいます。しかし、最低限のレベルがどんどん下がっているという現状もあります。ですから、学校は学校で努力もされている部分はあるかなとは思うのです。

 これは、技工士問題やいろいろな問題で話しているのですが、話をしている間に養成校がどんどん潰れるのが最大の。もしも技工士という職種が認知されるようになっても、今度は行く学校がないということになっては駄目なのです。ですから、ここを協議する中で、いかに養成校を守っていくかというところも非常に大事なポイントではないかと思いますので、その辺りの部分も協議していただければ有り難いです。

○赤川座長 わかりました。大変重要な点を指摘していただきました。ほかの構成員の方、あるいは何か言い足りないことがある構成員の方はいらっしゃいますか。

○桑名構成員 資料の 11 ページを見ていただけますか。歯科技工士の就業者数が、ずっと 3 5,000 人前後で微減しているとは思います。恐らく、日本で今必要な歯科技工士の数がそれぐらいなので、例えば何かがあって辞めたところで、誰かしらがその仕事を増やしたりしながらでも、 3 5,000 人いればいいというような、技工物自体の数はどうなのでしょうか。減ってきているのでしょうか。そんなに差はないのでしょうか。

○赤川座長 補てつ物の数、あるいは技工物の数でしょうか。

○和田歯科保健課課長補佐 義歯の需要自体は、特に総義歯が顕著に減少していることが、社会医療診療行為別統計で明らかになっております。ただ、補てつ物全体の需要については、先ほど御発言があったように高齢者の方が増えてきていて、歯の残っている方も増えてきているので、総量自体は余り変化がないと考えております、

○桑名構成員 そういうものが効率化されてきて、技工士さんの仕事量を簡便にすることはこれからできるのかもしれないのですが、それでもやはりこれぐらいの数をキープしていこうと思うと、今のような毎年 1,000 人は最低限ほしいというのであれば、三井先生が言われるように学校の確保が必要になってきて、なくなってしまえば困りますし、それこそ今は定員が 5 割以下になってきている学校はもうそろそろ閉めないとという所には、ある意味これは地域の人たちのインフラですので、そのときは公的な資金などを使ってでも、やはり残していかないといけないのかなと。三重県は本当になくなってしまいますから、明らかに 30 年後に技工士がいなくなってしまう県に今、私はいますので、どうなっていくのかなと。流通もよくなって他県にというようなことも可能なのですが、でもやはり見えるところでできるに越したことはないなと思って、心配ではあります。

○赤川座長 そうですね。一方で今盛んに言われている AI 、この AI が進んで、あと 20 年後には社会が、あるいは産業が大きく変わると言われている時代に、歯科技工物の作り方だとか、いろいろなことも大幅に変わることになるでしょう。そうすると、また若い人たちが参入してくるのではないかという気もいたします。

○高橋構成員 歯科技工士というのは、学校を出て最大限 3 年辛抱したら非常に良い職業だと感じると思うのです。その人の性格がもともと向いていなければそれはどうしようもないですけれども。例えば、それは経済的な形を見ても、 3 年たった後に同世代の通常の仕事に就いた人と比べたらはるかにそれから上には上がると思うのです。今の技工士の給与というか、所得という形でいけばです。ある程度になった人は、言葉は変なのですけれども、ラボの社長と飲んだときに、「いやー BM もベンツも飽きたから、次は何を買おうか」という話が出ました。半分冗談で半分本気なのです。

 そのように、あるところまで行ってしまえば経済的には非常に良いのです。その辺がもう少し理解できればと言っても、それは確かに 20 代の学生では難しいとは思うのです。その辺を学校なりで、大変だけれども「こういう良い面もあるよ」ということを少しアピールしたらどうかと。

○赤川座長 それは、何かデータみたいなものはあるのですか。例えば、大規模な歯科技工所に勤める歯科技工士の。     給与所得とかの。

○高橋構成員 例えば、水準的なものは出せます。給与でこのぐらいの所得があると。

○赤川座長 そういうデータがあったら、高橋構成員の言われていることが見えますよね。一方で、お話の中からは、 3 年の間に辞める人がいる、あるいは多い、ということですか。

○高橋構成員 そうだと思います。

○赤川座長 もし辞めたら、もう歯科技工士はやらないのですか。

○高橋構成員 そうです。先ほどどなたかがおっしゃっていましたけれども、親が技工士でも、息子は絶対に継がないと。悪いところだけを見てしまうのです。親がやっていて、更に継いだ人というのは伸びていくと思うのです。

○赤川座長 なるほど。

○和田歯科保健課課長補佐 高橋構成員からお話があった、いわゆる離職率の問題ですが、先ほどのスライドの 23 枚目で御説明いたしましたが、歯科技工士の免許取得者の就業状況に関する研究を実施しており、今年度末に取りまとめる予定になっております。実際に歯科技工士として働いていない方が、他の仕事に就いているのか、就いていないのか実態がよく分からないものですから、研究班の結果なども少し活用させていただいて、必要に応じてこの検討会で情報提供させていただければと思います。

○赤川座長 わかりました。それはありがたいことです。

○三井構成員 そういうデータを捉えるときに、歯科医師ももちろんなのですけれども、今は歯科大学でも男女比が、ある大学では 5 割以上を女子学生が占めているという状況です。京都の技工士学校でも、入学者に女子が多いのです。そうすると、うちでも経験があるのですけれども、結婚すると離職される方があるので、男女比というようなところ。だから、ライフステージでどのように変わっていくかというデータも出していただけたらと思います。

○和田歯科保健課課長補佐 三井構成員からお話があった、ライフイベントに遭遇して離職される方ももちろんいると思います。それ以外の事情で離職されている方もいるかもしれません。両方の要素について分析したほうがよろしいのかと思います。

○赤川座長 わかりました。 23 ページの上段に書かれているもう 1 つの厚生労働科学研究が進んでいて、自分が代表者をさせていただいています。今データをまとめつつあって、まだ分析が十分でないので、ここで先走って言うのも躊躇しますが、少しだけお話します。1ヶ月の残業時間をとりだして分析してみると、歯科医院で働いている歯科技工士の時間は、歯科技工所で働く歯科技工士の時間より有意に短い。こういう結果がわかっています。

 それから、職務内容について持っている意識を聞いています。「自分は今の仕事に興味を持っている」とか、「誇らしく思う」という項目では、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」が多く、結構良いのです。ところが、「社会の人々は私の仕事を尊敬するに値する仕事だと思っている」という項目では、歯科医院勤務の歯科技工士では「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」が 4 割ですが、歯科技工所に勤める歯科技工士では 5 割以上です。すなわち、ここが 1 つのポイントだと思うのです。恐らく職業的な問題があるのかなと。もう 1 つ、「私は仕事をしていて着実な人生設計がたてられる」という項目では、「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」が歯科医院勤務では3割ですが、歯科技工所勤務では6割です。

 まだまだ分析途中ですが、このように、少しずつ問題が見えているようです。先ほど経済的には 3 年たったら、と言われたのですが、どうやらそんなことでもないようにも思えます。これらのデータがすべて分析・整理できたら、みなさまに情報提供をいたします。こういうデータが出つつある、ということを少し知っておいていただければ、と思います。

○小畑構成員 教育というか学生の確保の部分については、先ほどもお話がありましたように、学生の質が下がっているなどという人は結構多くいます。これは技工士学校だけではなくて、衛生士学校も歯学部も全てそうだと思うのです。ちょっと何か言ったら辞めてしまうとか、すぐに文句を言うとか、すぐに訴えるとか、どこかへ駆け込むというのは、技工士さんだけではなくて、今はドクターもすごく多くなってきているのが現状です。そういう現状だということを把握した上でどうするかということを考えていかなければいけないのかというところが 1 つあります。

 技工所さんも技工士会さんもいろいろ頑張られていて、どうやって学生を確保するのかというのは、本当に様々やっていただいていると思うのです。先ほどもお話がありましたように、親御さんが勧めないとか、高校の進路指導の先生が「絶対に行くな」と言う。まず、そこの段階というのがものすごく出てきているのかと思います。選択肢が、昔はそういうところまではなかったのですけれども、「技工士学校だけは行くな」という進路指導の先生もいると聞いています。

 それでは、なぜそのように言うのかというところに立ち返っていくと、もちろん経済的に安定してやり甲斐を感じてやっている技工士さんも多いと思うのです。赤川先生が言われたように、別の研究のデータにもありましたし、今も少しコメントにもありました。歯科医院に勤めている方や大手の技工所に勤めている方もおりますが、実際には大半が一人技工所なわけです。技工士学校を卒業した後のビジョンを考えたときに、なかなか難しいと感じる人がすごくいるのではないか。歯科医師とか衛生士であれば、勤務する箱があって、そこに勤務して何かする、そこから考えられる、修行を積んでいくというのはできるかもしれません。技工士さんの場合、一人技工所、二人技工所というのが大半で 7 8 割ということを考えると、本人のビジョンもなかなか進まない。

 実際に技工士として登録というか、事業所としてあっても、事実上何も動いていない方もたくさんいる。今回の厚労科研のアンケート調査のときにも、宛先不明で戻ってきたのがかなりの数になりました。私の知合いの技工士さんも勤務しているときには良かったのですけれども、独立してみたらなかなか難しい。これは技工士さんだけの問題ではなくて、先生との関わりで、先生側の問題とかいろいろあるのですけれども、それでなかなか経営が難しくなって破産したりという例も実際にあります。 1 つ何かやれば特効薬という話ではないですけれども、やはりそういう多角的なところで考えていかなければいけないのかというところはすごく感じています。

  赤川座長 なるほど、多角的なところで考える、ということですね。

○傳寶構成員 先ほどの先生のデータにあったように、辞めていく若い技工士さんたちに、「技工が嫌になったのか」と理由を聞くと、皆、「技工士は嫌にはなっていない」と答えるのです。技工自体は辞めたくはないのだけれども、将来的ビジョンが特に女性にはあります。大手のラボでしたら産休制度が大分整ってきた所もありますが、ほとんどがないのです。辞めた後に戻ってこられるのか、技術を維持していく、更に進歩していかなければいけないということで、戻ることに対してかなり不安を抱いている。

 そのことからすると、今は CAD/CAM があるので戻りやすい。 CAD オペとして戻ることもできますし、家で実際にラボから提供されたパソコンを家に置いて、産休中も休みを取らないで、家で CAD のデザインをして、ラボの仕事を続けるという就業方法をされている所も出てきています。ラボのほうでもいろいろ考えてやってきてはいると思うのです。救いなのは、技工が嫌いで辞めたわけではないというのが多くて、「それではどうして」と聞くと、ラボの場合は少人数なので 1 番は「人間関係」というのが多いのです。大人数だといろいろな人がいるからまだいいのですけれども、どうしても小規模になると人間関係が一度崩れてしまうと駄目というのがあります。

 そこで一番改善できるとすれば、認知度が低いというのがありました。前に美容師さんとお話をしたことがあるのですが、大体同じなのです。仕事が終わった後に練習して、給料体制も、美容師と歯科技工士は割と似ていると思うのです。最初の頃は低くて、丁稚ではないですけれども。何が一番違うのかというと、技工士は、私のように自費の仕事をしていれば患者さんに会いますけれども、保険の仕事をしているとまず患者さんに会うことはない。それで、自分がやったことに対するお褒めの言葉というものがないので、やり甲斐を今一つ感じづらい。ただ、美容師さんはお客さんを相手にするので、うまくできたらうまくできただけ褒めてもらえる。歯科技工士はそれがほぼないに等しいのです。

 一人ラボが多いというのは、 1 つその理由もあると思うのです。やった分だけの見返りが自分にとって、お金もですけれども気持的なものでも、先生とのコミュニケーション、信頼関係を築くこともできるというのもあって、そこで一人ラボがどうしても多くなっていくというのは、そこが 1 つ原因ではあるのかと思うのです。それなので、若い技工士さんが 3 年以内に辞めてしまうというのは、特にその 3 年ぐらいの間は絶対に歯科医院に行くことがない。今の技工所は行かせることもあって、「セットの立会いを見させてもらいなさい」と。そういうことをもう少し業務の中でしていったりする。大体歯科技工士学校は、歯科衛生士学校と一緒だったりするのが多いので、歯科技工士学校と歯科衛生士学校でコミュニケーションをもうちょっと取ったりして、ロールプレイングなどができたりすると、またちょっと変わってくるのかとは思います。

○赤川座長 そうですね。本当は患者さんの前にいるのが一番いいのですが、例えばいろいろな形で ICT を使えば、診療室と技工所を結んでと、いうような形もできるかもしれないのです。少し頭を柔らかくすれば、何かいろいろとできそうな気はしますが。

○傳寶構成員 それなので、資料の 21 ページのようなカードがあると、少しは顔が見えるようにはなる。そうすると、技術的にもしっかりしなければという気持ちにもなりますし、いいのかなと思います。

○赤川座長 最近は野菜を買いに行っても、「赤川さんが作っています」などと書いてあります。トレーサビリティというか、作った責任や「製作者の見える化」というのは重要なことです。

○小畑構成員 認知度を上げるというのは、学校とか CM とか、今だったら多分 YouTube にバンバン出すといいのかもしれません。一方で、歯科医院で、「この義歯は技工士さんが作っています」とは書いていないです。「このクラウンとか補てつ物は技工士さんが作っています」と書けば、歯科医院に患者さんは来ているわけですから、それをみて歯科技工士という職業があるのだと。

 もっと言うと、できれば誰が作ったのだとか、どこの技工所に出しているというものを、例えば受付にでも、どこかに書いてくれれば、これはこういう所で作られているのだと。先ほど赤川先生が言われたように、誰が作ったか顔が見える。それだけで認知度は一気に上がると思いました。そうすると、技工士さんの認知度、実際にいろいろな患者さんがいますし、御家族もいるし、お子さんもいる。こんなものを入れてもらった、こんな素敵な職業があるのだということは一番手っ取り早いかなと思いました。

○赤川座長  21 ページの情報提供推進事業というのは、あくまでパイロットの形でやっているのですか。それとも、ほぼほぼ全国の歯科医院でやっているのですか。そういうわけではないのですか。

○和田歯科保健課課長補佐 あくまでもモデル事業としてやっております。日本歯科技工士会に事業を委託しており今のところ 2 県で実施していると伺っています。また、検討会で情報提供いただければと思いますが、本事業について、非常に患者さんの評価も高いという結果も頂いております。

○三井構成員 今は 2 県でのモデル事業です。一応義務付けではないけれども、法規的には技工のあれを全部残してきちっとするという法的整備はされていますよね。

○和田歯科保健課課長補佐 いや、あくまでこれは予算事業として行っているものなので法的な位置づけはありません。

○三井構成員 このモデルではなくて、別件の法規として、技工物のトレーサビリティの部分で全部伝票を残してという部分の整備はされていますよね。

○和田歯科保健課課長補佐 書類等の保管に関しては、各種法律等で規定されていますが、本事業で行われているような補てつ物等が、どこの歯科技工所で誰が作ったかを明示する仕組みはありません。他方で、この事業を通じて、間接的に歯科技工士を患者さんに知っていただくことで、歯科技工士さんの仕事に対するモチベーションを上げていくような効果も期待しています。

○杉岡構成員  1 つ戻りますけれども、日本歯科技工士会は 3 年に 1 回歯科技工士の実態調査をやっています。 N 数は約 1,300 でやっています。離業して、転職したいかという調査の一番直近は 2015 年です。今年は調査年になっていて、その 1 つ前の 2015 年です。離業して、他に転職したいかというのは、勤務者で 27.7 %、自営者では 22.4 %ということで、 5 ポイントぐらい勤務者のほうが多いです。さらに 3 年前の 6 年前になると、勤務者で 37.5 %、自営者で 31.8 %で 6 ポイントぐらい勤務者のほうが、離業して転職したいと。その理由を多い順に言うと、給与の不満、労働時間の不満、将来性、健康面と続いています。今までお話があった中で共通していると思うのです。

○赤川座長 今言われた数字をお聞きすると、一番直近の調査だと、勤務者でその前の調査の時より 10 %ぐらい減っていますね。これは何か考察されていますか。

○杉岡構成員 経年的に見るとばらつきがあります。

○赤川座長 そうですか。でも、少しは変化しているのですね。これは離職、転職した人ではなく、したいと思っている人、ということですね。

○杉岡構成員 したいと思っている人です。現在そう思っているという人の調査です。思っているかと問われたときの調査です。

○赤川座長 わかりました。またそういう調査データも、随時議論のときにお話していただければと思います。他に御意見はありますか。結構広範囲に、いろいろな論点を言っていただきました。

○陸構成員 先ほど傳寶さんが言われていた、技工士がちょっと離れるという件です。私どもの所で、 3 年ぐらい前から、今まではパートを一度も雇ったことがなかったのですけれども、だんだん技工士さんが減ってくるということで、パートも活用していくようなスタンスを会社として取らないと、これからはなかなか厳しいかもしれないと。 3 時間なり 4 時間といった、いろいろな勤務体系の方を、それぞれ自分たちがスタンスを変えて、自分たちの仕事を 3 時間分お手伝いしてもらう、 4 時間分お手伝いしてもらう、というような仕事のスタイルに自分たちが変化していこうということを話しました。

 特に、女性が子育てをしながら仕事をするというところにターゲットを当てて募集したら、結構来ていただけました。それでいろいろ話を聞いてみると、技工経験が浅い人から何年もやられた人もいました。やはり、子育てをしていますので特に時間のことを気にしていました。個人のとか、 2 3 人の技工所に勤めていて、「 3 時に帰る」と言っても、「仕事が残っているから片付けて帰ってくださいね」と言われたりするようなことも多々あったりする。幼稚園に迎えに行くのに、ここを 3 時に出なければいけないから 3 時に終わる、というようなスタイルを取ってもらえるのなら、私は技工の仕事はそんなに嫌いではないのだという方が非常に多いので私もびっくりしました。

 現在は、大体 15 名ぐらいの女性のパートにラボの中で働いていただいているのですが、結構良い結果が出ています。ちょっとセクハラになってしまうかもしれないのですけれども、おばさんと言いますか、ちょっと年の多い人もいます。先ほど、若い人の心が折れるなどという話をしましたけれども、そういうフォローも結構できたりします。最近の子供は掃除をしないとか、技工学校でも掃除はクリーニングのおばさんが来るのだという環境の所もあるものですから、私どもの所では、散らかして仕事をしていると、パートの人たちが、「もっときれいにしてから次の仕事をしなさいよ」みたいな、そういうところも注意してくれたりします。総合的には比較的良い結果が出ているのではないか。もちろん時間に帰れるというのと、パートの 1 時間当たりの給料というのも、その辺でレジを打ったりしているよりも、技工の国家試験を持っているほうが、そんなにたくさんは出せませんけれども少しは良いというところもあるのかもしれません。今はそのような状況で、パートも積極的に取り入れています。

○赤川座長 要するに多様な働き方ですよね。ずっと 8 時間働くのではなくて、部分、部分で働く、というのもありますよね。このパートの方々は、全員が歯科技工士免許を持っていらっしゃるのですか。

○陸構成員 そうです。それを条件に募集しました。

○赤川座長 なるほど、わかりました。他にはいかがですか。皆さんからいろいろな御意見、あるいは論点を頂いたので、少し整理をして、次回にはどのような形で展開しようかと、考えてみることにいたします。本日は、言いたいことがあったら全部言って帰っていただきたいと思います。

○杉岡構成員 日本歯科技工士会の代表として、養成について少し御意見を申し上げます。今までいろいろなお話を聞いていてなのですけれども、冒頭に課長補佐からお話がありましたように、類似の検討会が平成になってからこれで 4 回目なのです。第 1 回が平成 4 年にされています。そのときの目的が、「近年歯科技工所の急速な増加や就業意識の変革等により、若い歯科技工士の離職、歯科技工士養成所の入学者の減少といった問題が提起されており」と、 26 年前の委員会開催の目的がこう書かれています。今と何ら変わらないのです。結局は 26 年たっても、検討会で出された報告書に沿ってきちんと政策を進めないからこんな環境になってしまっているのだと思っています。今回の検討会で出たことを政策としてきちんと前に進めていただきたいということです。

 養成については、養成校に入ることと、養成されて出ていくこと、入りと出の問題を少し整理して考える必要があると思っています。まず入りについては、歯科技工士という職業を知ってもらうというのは先ほどもありましたとおり、これは大事なことだと思っています。日本歯科医師会も映画を作って広めていただけるというお話も聞いていますので、是非積極的に参加したいと思っています。まずは歯科技工士という職業を知ってもらうこと。

2 つ目は、先ほどから議論がありました、歯科技工士という職業に対する悪いイメージが結構広まっていますので、これを少し払拭しなければならない。それではどういう手があるのか、というのを皆さんで御相談したいのです。本当に歯科技工士になって良かったと思っている人も大勢いますので、是非そういう人たちの声を、もっともっと社会に広がるように何か考えていただきたい。

 それから、魅力ある教育をしていただきたい。先ほどありましたように、これから話す出にも関係してくるのですけれども、魅力ある教育をしていただきたいということ。私は、北海道の養成校の非常勤講師を 2 校かかわっています。「どうして歯科技工士になろうとしたの」と聞くと、「やはり医療に携わりたかったのです。その中でも、自分は物を作ることがすごく好きなので、その両立ができると思って歯科技工士になりました」というお話がありました。「それは是非生かしていただきたいですね」というお話をします。今の環境を見ると、せっかく学んで免許を取っても、模型に向き合って毎日を過ごすという、ちょっと医療とは懸け離れた環境が、先ほども御意見がありましたけれども、多いのかなと思っています。もう少し、歯科技工士が医療に関わっているということが実感できて、使命感を持って仕事ができる、そういう教育をしてもらいたいということ。

 出については、 7 割以上が歯科技工所に勤務するわけですから、その歯科技工所が求める歯科技工士教育を是非していただきたいということ。これは大学教育でも、どんな大企業に就職できるかということが、大学の評価につながるわけですから、しっかりと歯科技工所に勤められる歯科技工士を教育していただきたいということ。

 それから先ほど言いましたように、高齢化社会の中で、歯科技工士の業務の在り方を少し見直していただく。それは法律を変えるという大きなことではなくて、業務の在り方を見直していただいて、先ほども言ったように、少し医療に携わっている実感が持てるような環境にしてもらうということ。

 最後に、やはり歯科に関わる関係者が、国民医療費と歯科医療費の差が余りにもありすぎます。もう少し歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、そして歯科関係企業が協力して、もっともっと歯科の医療費の社会的評価を高める運動をして、その中で歯科技工士の労務環境もきちんと整備していただくことを提案いたします。

  赤川座長 わかりました。入学のことと教育と、出てからのことですね。

やはり、多くの問題があることが非常によくわかりました。確かに、医療に関わる実感というのが本当にキーなのだ、と思います。それが、先ほどの尊敬というところにもつながってくるのかもしれません。他にはいかがでしょうか。

○秋野構成員 医療に関わる実感ということで、北海道の歯科診療所の事例を1つ紹介したいと思います。私は行政の中でも割と介護に携わる経験が長く、高齢者の歯科医療をどのように確保していくのかということを仕事にしてきた経験があります。各地の事例を見ていく中で、高齢者の歯科医療は、恐らく、小さな 1 人の先生がやられているような歯科診療所だけで全て高齢者の歯科医療に対応するのではなくて、口腔外科ように 2 次医療的な、高次歯科医療を担うような、通常の歯科医院のもう 1 つ上の高い機能を持った歯科診療所、病院歯科でもいいのかもしれませんけれども、そういう歯科診療所が日本には求められてくるのだろうと思います。

 北海道でも、そういう形でやっている割と大手の歯科診療所があります。そこには実際に歯科技工士さんが雇われています。チーム歯科医療の一員として、歯科医師と歯科衛生士と一緒に、恐らく歯科医師のデンチャーのセットのときには歯科技工士さんも横に立ち合い、高齢者の反応や喜んでいる姿を見られるような環境もあります。高齢者の歯科医療のこれから考えていく上でも、チーム歯科医療、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士がチームの一員として働くようなロールモデルというものもこれからは必要と思います。まだ日本ではそんなに普及していないと思いますけれども、地域では実際にそのようにやられている先進的な事例もありますので、歯科技工士のあり方も、ある程度経験を積んでベテランになったときに 1 人で開業していくという形はもちろんあるべきだと思うのですけれども、若いうちはチームの一員として働くような時期がちょっとあってもいいのではないでしょうか。厚労科研も動いているようですので、そういうロールモデルも是非検討していただければと思います。

 話は逸れるのですけれども、私は保健所という、歯科技工士さんを指導監督する立場もあります。そこで今日の論点とは若干逸れるのかもしれませんが、昨年 9 月に厚生労働省の歯科保健課のほうから、無届歯科技工所における歯科技工の防止についてという通知を出していただいております。私ども行政にとっても非常に有り難い通知です。実際のところ、病院に対する医療監視などに比べると、歯科技工所に対する指導監督というのは、私は歯科医師なので関心がありますけれども、行政の通常の一般職員はそれほど関心が高いとはちょっと言えないものですから、時々こういう通知を国のほうから働きかけをしていただけると、自治体職員も勉強できるので大変有り難いです。

 無届けの歯科技工所は違法状態ですから、仮に構造設備等の違法状態によって歯科技工所の経費を浮かせるようなことが行われているとすれば、真っ当にやっている歯科技工所さんの処遇にも影響を与えることになります。最悪、国民に対して有害、粗悪な歯科補てつ物が供給されることになりかねませんので、行政としてもしっかりやらなければいけないと思います。

1 つ行政がウィークポイントとしては、歯科技工所さんの実態を行政がよく分かっていないということがあります。今回の厚生労働省の通知を実効性を持ってやるためには、是非地域の歯科技工士会か、あるいはその地域の歯科医師会といろいろ話合いをさせていただくことが必要。行政は歯科医師会とはだいたい話合いをする機会はあるのですけれども、歯科技工士会とは余り話し合うような機会がほとんどの行政が多分乏しいと思います。今回の通知についても、背景等を正確に理解していない可能性もあります。そこは是非、歯科技工士会と連携を取って、地域の歯科技工士さんから、違法な歯科技工所というのはしっかり監督しないと、地域住民のためにならないということを言っていただけると、行政も動くかと思いますので、地方行政と歯科技工士会との連携をしっかり取っていくことが必要と思います。

○赤川座長 わかりました。他にはいかがですか。

○傳寶構成員 無届けのことに関してですが、昨年横浜でありました。住所が同じで、歯科技工所があるにもかかわらず、同じ住所で、部屋番号を隣にして、新しく歯科技工所の申請をして通ってしまったという話がありました。それで、実際に保健所のほうに電話をして、「それを認めては駄目だったのではないですか」という話をしました。今のところはあくまでも横浜市だけですけれども、届出が出たときに、その届出が出た所に監査には行かない。どういう所で、どういう設備があるかということを見には行かないことになっているみたいです。住所だけだと、部屋が違ったので、データの中では別の所という認識で受けてしまったということです。実際には動いてくれて、見に行ったら、その部屋は空で、隣の部屋で一緒にやっていたということがありました。その技工所さんは開業届を取り消しました。

 そういうことがあって、技工士会のほうでも指導はしますけれども、もう少しチェックができるようになってほしいということはお伝えしました。届出の無効の 1 つに、ラボの設置構造基準というのもあります。今までの一人ラボは、大体が自宅の一室なのです。そうすると宅地なのです。今は、宅地ではラボは開業できないです。商業地か工業地帯でないとできない。それも、住所だけだと分からないでしょうから、「それを調べていただけますか」とお伝えしたら、「それはまた管轄が別の課なのでちょっと難しい」と言われてしまいました。その辺も神奈川の技工士会としてはうまく行政と連携して、通知の紙を作ってくだされば保健所では配ってくれると言っていただけました。そのように技工士会からもなるべくうまくアプローチができるようにはしていきたいと思います。

 あとは介護のことです。今、歯科技工士は介護の点数が付かないので、訪問介護で先生が行かれるときに、技工士を連れていきたくても保険点数が付かないので、先生が自腹を切ることになるので、連れていけないということが起こっています。できればその辺も改正していただければいいなと思います。それの 1 つの理由が、神奈川では、義歯刻印のボランティア活動というのをしています。老人介護施設に名前を登録している歯科医師の管轄下で、朝ご飯と昼ご飯の間に、入所者の入れ歯を預かって、名前を入れて、清掃をしてあげてから返すというボランティアをしています。そういうことも、今はボランティアですけれども、その介護士の役にも立つのです。どうしても入れ歯を取り間違いもあるみたいなのです。そういうこともうまく行政の方と話し合って進めていければいいと思います。そうすると、また更に認知度も上がってくるのでいいと思います。

○赤川座長 はい、わかりました。

○桑名構成員 ラボの届出の話なのですけれども、基本技工所というと歯科医院に必ず入れているわけですから、歯科医院のほうが確認を取る。今、三重県では全部チェックしています。歯科医院がラボが保健所へ届け出たもののコピーを確認させてもらって、保健所は当然歯科医院に入っていますから、そのときにちゃんと提携しているラボをチェックするという状況なので、無届けでは歯科医院には出せないわけです。それでは成り立たないというシステムになっていると思うのです。

○三井構成員 無届け診療所に関しては、厚生労働省のほうから日本歯科医師会、それこそ今の話のように、全ての技工所が歯科医院につながっているわけです。うちは会員だけですけれども、そういう所で各都道府県には、そのような無届け技工所はなくなるようにと。今ならば、無届けでも罰則規定はありません。遅れると、ひょっとすると罰則規定もあるのではないですか、というような形で各都道府県のほうにはお願いしております。どれだけの効果が上がっているかというのはまた別なのですけれども、そういうことはないように、我々歯科医院としてもきちんとした技工所で、それこそそういう無届けの技工所が、ひょっとすると保険の補てつ物でも、海外技工に出されているとか、そのようなこともあり得ます。やはり、患者さんの安心・安全のために、そういう部分に関しては日本歯科医師会としても発出させていただいています。

 技工士さんのそのような活躍の場、我々が良かったなというのでは、厚生労働省のほうもいろいろな所で前回から色調検査であるとか、それから歯技工加算であるとか、そのような部分の評価はしていただいています。実際に医院にいる技工士さんは、それこそ歯技工加算でも、そのときにパッと見て、入ってよかったと。ですから、ラボにおられる技工士さんにその辺をどのようにフィードバックできるのか。また一番の問題は、我々が一番偉そうにものを言うというところは反省しなければいけないのかなと。本当に技工士さんあっての歯科医業ですから、一緒にやっていく。

 ただ、本当に厚生労働省のほうも考えているなと思うのは、今回の CAD/CAM については、医院に CAD/CAM があっても、 CAD/CAM は保険算定できない。やはり、そのような部分できちんとして、歯科医業全体として守っていこうというところで、そういう設定もしていただいているというところで、我々歯科医師会のほうも、その辺は重々理解して一緒にやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○秋野構成員 歯科技工所の指導監督にどれぐらい地方自治体が労力を割くかというのは、地方自治体に委ねられています。先ほどもお話したように、病院などに比べて優先順位が低いという現状が恐らくあるのだと思います。ただ、それは歯科技工所というものと歯科補てつ物に対する認識が自治体職員には足りないというのが 1 つ大きな原因なので、そこは歯科技工士会との交流があれば、少しずつですけれども、恐らく認識が上がっていくのではないかと思います。

 先ほど桑名構成員からもお話がありましたけれども、無届けの技工所に関する情報収集は、行政が全部しらみつぶしにやるというのは限界があるので、そこは歯科医師会、歯科技工士会としっかり連携を取って、違法行為に行政機関として適切に対応していければと思います。

○赤川座長 ありがとうございました。まだまだご意見などあろうかと思いますが、ちょうど時間になりましたので、本日の議論はこの辺で終わらせていただきます。本日、構成員の皆様から頂いた意見や提案を踏まえて、次回以降の検討会では、それらを個別に議論していきたいと思います。その進め方に関しては事務局と相談をさせていただきます。事務局のほうから何か、連絡事項、その他がありましたらお願いいたします。

○堀歯科保健課歯科衛生係員 本日は御議論を頂きましてありがとうございました。今後の検討会の進め方については、赤川座長と相談させていただきながら決めさせていただきたいと考えております。次回の会議の日程については 7 月上旬を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○赤川座長 それではこれをもちまして本日の検討会は閉会とさせていただきます。皆様、貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

 


(了)

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