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2018年9月26日 第8回高齢者医薬品適正使用検討会議事録
医薬・生活衛生局
○日時
平成30年9月26日(水) 17:00~19:00
○場所
田中田村町ビル8階 会議室8E
東京都港区新橋2-12-15
○議題
(1)構成員等からの情報提供
(2)高齢者の医薬品適正使用の指針(追補)骨子(案)について
(3)その他
○議事
○医薬安全対策課長 まだお二方お見えでございませんが定刻ですので、これから検討会を始めさせていただきます。まず、佐藤の後任で7月から着任しました関野でございます。冒頭進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
開会に先立ちまして、幾つか事務連絡を申し上げます。まず、本日の会議は公開で行っておりますが、傍聴の皆様におかれましては、既にお配りしております留意事項、注意事項等をお守りいただきますようにお願いいたします。カメラ撮りに関しましては、議事が始まる前までとさせていただいておりますので、その旨、御理解と御協力のほどをお願いします。
次に、今回の会議に当たりまして、構成員の交替がございますので紹介をさせていただきます。公益社団法人日本医師会の城守構成員です。
○城守構成員 城守でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○医薬安全対策課長 それから公益社団法人日本看護協会の熊谷雅美構成員です。
○熊谷構成員 日本看護協会の熊谷でございます。どうぞよろしくお願いします。
○医薬安全対策課長 続いて、前回の会議以降、事務局にも人事異動がありましたので紹介します。7月31日付けで総務課長に着任いたしました鳥井課長です。
○総務課長 鳥井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それから、本日の議題(2)の関係で、具体的な取組を行っていただいております参考人の先生方を紹介したいと思います。まずお一人目ですが、舛友一洋先生です。
○舛友参考人 舛友です。よろしくお願いします。
○医薬安全対策課長 もう一方ですが木村琢磨先生です。
○木村参考人 木村です。よろしくお願いします。
○医薬安全対策課長 それでは、これより議事に入りたいと思います。本日も先生方、お忙しい中、そして足元の悪い中、御参加いただきましてありがとうございます。この後の進行を印南座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○座長 それでは、議事を進めてまいります。始めに、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○課長補佐 それでは事務局より配布資料の確認をさせていただきます。お手元にお配りした資料は、一番上から議事次第、配付資料一覧、開催要綱、裏面に構成員名簿、出席者名簿、座席表となります。その後に資料1、「高齢者医薬品適正使用の指針(追補)の骨子(案)」、資料2-1、「ここまで出来る薬剤情報の利活用~“うすき石仏ねっと”の挑戦~」、資料2-2、「外来診療・在宅医療」。参考資料として「高齢者医薬品適正使用の指針(追補)のコンセプトについて」。
また、以下は構成員の机上配布のみとなりますが、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」というオレンジ色の冊子、「高齢者の薬と今」となっております。本日の資料は以上です。机上資料として配布しております「高齢者の薬と今」の冊子につきましては、第5回高齢者医薬品適正使用検討会にて構成員の樋口先生より御発表いただいた内容を、NPO法人高齢社会をよくする女性の会にて再編纂し、冊子として取りまとめられたものです。検討会の先生方に是非御覧いただきたいとのお申出により、今回配布をさせて頂いております。樋口先生、ありがとうございます。
○印南座長 よろしいでしょうか。過不足等ございませんでしょうか。それでは、樋口先生、せっかくですので一言お願いします。
○樋口構成員 今日は、欠席の予定でおりましたところ、何だか都合がついてしまい飛び入りで参加させていただきまして申し訳ございません。昨年末に、私どもNPOの高齢者の在宅での服薬実態調査を行いまして、プレゼンをさせていただきました。その後、このような本を作りまして、そして9月8、9日に私どもNPOの全国大会が川越でございまして、その折、この薬品の問題の分科会には、こちらから水上先生と島田先生に御出講いただきましたし、この本の中には座長代理の秋下先生と平井みどり先生に御執筆いただきまして、会場で宣伝いたしましたところ、みんな、こうした本を求めていたらしく、あっという間に200部も売れまして、もちろんNPOですからもうけるつもりはないですけども、2刷、3刷となりそうで、皆様の御協力のおかげでございます。また、いろいろな素人の声をここからお聞き取りいただければ有難いと存じます。印南先生、御配慮いただきまして、本当にありがとうございました。
○印南座長 それでは次に、本検討会で御検討いただいた高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について、事務局から説明をお願いいたします。
○課長補佐 本検討会で御検討いただきました高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)につきましては、5月29日に都道府県を通じて全国の医療機関、薬局等へ周知をいたしました。改めまして、先生方には、作成・取りまとめに御尽力いただき、大変ありがとうございました。指針(総論編)につきましては、表紙や目次等を付け、図表を見やすい形に整備し、体裁を整えたものを作成しましたので、本日、先生方の机上にお配りしております。これと同じものは、PDF版でホームページにも掲載させていただいておりますので、医療機関、薬局等への周知の際に御活用いただければと思います。以上です。
○印南座長 それでは、議事次第に沿って議事を進めてまいります。議題(1)は、高齢者の医薬品適正使用の指針(追補)の骨子(案)についてです。前回検討会では、今年度作成する指針のコンセプトについて御議論いただき、患者の療養環境ごとの留意点を取りまとめる方向で御了承いただきました。本日は、このコンセプトに基づき、作成する指針の骨子(案)について、ワーキンググループで取りまとめられた結果の御報告をお願いします。それでは、骨子(案)について、ワーキンググループで主査をお願いしております秋下構成員から御説明をお願いします。
○秋下座長代理 秋下です。よろしくお願いします。資料1が、今回ワーキンググループで作成した骨子(案)になります。まずはじめに、指針の表題についてなのですが、前回までの検討会では、指針(詳細編)としておりました。しかし、患者の療養環境ごとの留意点といった今回のコンセプトを踏まえますと、詳細編というよりはどちらかというと、総論編を補完する形になりますので、追補という表現に修正しております。
前回の検討会にて、構成員の先生方より指針(追補)のコンセプトに関して御意見を頂き、了承されたものを参考資料としてお配りしております。このコンセプトに基づき、ワーキングにて骨子(案)を作成しました。指針(追補)のコンセプトにつきましては、参考資料を御覧いただければと思います。患者の療養環境の特徴を踏まえた留意点として、大きく3つの形を想定しております。1つ目は、外来・在宅医療について、2つ目は回復期・慢性期等入院医療についてです。これは急性期後の入院医療ということで、地域包括ケア病棟に入院されている患者も、こちらに含まれます。
更に3つ目は、その他の療養環境として、介護医療院や老健施設等の介護施設に入所されている患者を想定したものになります。特別養護老人ホームについては、前回、ワーキングで御議論いただいた際には、3つ目の「その他の療養環境」に含むと整理されたところではありましたが、患者の療養環境の特徴という観点から、医師が常駐している施設とそうでない施設で区別してはどうかということで、特別養護老人ホームについては、1つ目の外来・在宅医療の部分に含まれるという整理をしています。サ高住についても同様です。1から3部のどの環境に該当するかについては、骨子(案)に施設の種類も含めて記載しております。
続きまして、資料1の骨子(案)についてです。「はじめに」の部分には、指針の目的、患者の療養環境ごとの多剤服用の現状を記載し、その後、1部、2部、3部とそれぞれの患者の療養環境における処方確認・見直しの考え方、入院から退院、入所から退所といった療養環境移行時における留意点、処方検討時の留意点、多職種の役割、チームの形成について記載をしています。
更に「おわりに」として、患者・国民への啓発及び患者本人、家族の意向を尊重した薬物療法の考え方を記載することとしております。以下、詳細については事務局より説明をお願いします。
○課長補佐 それでは、事務局より説明をさせていただきます。資料1の骨子(案)について、順に説明をさせていただきます。資料1の1ページ目を御覧ください。まず、「はじめに」の部分について説明いたします。「はじめに」は導入部分になりまして、(1)指針の目的、(2)多剤服用の現状について記載することとしています。また、資料中、点線で囲まれた部分は、総論編にも記載がある内容です。指針(追補)の目的につきましては、総論編にもありますように、ポリファーマシーにおける診療や処方の際の参考情報を提供することを意図しており、今回は患者の療養環境ごとの留意点に関する追補として、先ほど秋下先生から御説明がありました3部構成としていること、指針の主たる利用者は、医師、歯科医師、薬剤師とするが、服薬支援、情報共有等の点で、看護師やほかの職種についても参考にしていただくこと。更にその場合は、職種と役割を明確に記載することとしております。
(2)の多剤服用の現状につきましては、今年度、厚生労働省の調査事業で、多剤服用の実態調査を実施しておりますので、その結果も含めて、療養環境ごとの実態、リスクの特徴について記載する予定です。
続いて、26行目、第1部を御覧ください。第1部は外来・在宅医療になります。1.は、処方確認・見直しの考え方です。総論編で患者の服薬状況に加え、生活環境等を含めた情報を十分に把握し、CGAを行うことが推奨される旨を記載しておりますが、それに加えて、長期的な安全性、服薬アドヒアランスの維持、QOL向上の視点、長期通院中の処方確認等を挙げています。
続きまして、2.では入院からの移行時における留意点として、専門医との協議・連携、多職種等からの情報収集と処方見直しプロセスの実施、地域包括ケアを担う医療・介護関係者等との留意点の共有を挙げています。専門医との協議・連携につきましては、特に退院後、地域の診療所等に患者さんが移った際に、専門医の処方をしている薬について、なかなか変更しづらいといった懸念点から挙がった項目でもあります。
続きまして3.では、処方検討時の留意点として、(1)に非薬物的対応の重要性の確認を挙げています。ここでは各種非薬物的対応のほか、非薬物的対応から薬物療法への切り替えの判断についても記載することとしています。
続きまして、(2)ポリファーマシー関連の問題の評価、(3)処方の優先順位と減量・中止とありますが、ここは総論編でも記載している内容となりますが、今回は患者さんの療養環境の観点からの留意点として記載することとしております。
19行目の4.では、地域内多職種の役割、チームの形成として、地域包括ケアを担う医療・介護関係者等との協力、施設内又は地域内での情報共有とチームの形成、お薬手帳の活用、服薬アドヒアランスの改善等を挙げています。
続いて2ページ目26行目第2部になります。第2部は、急性期後の回復期・慢性期の入院医療になります。1.は入院時の処方見直しの考え方です。先ほど1部でも説明しました総論編における記載に加えて、ここでは急性期の病状が安定してきた段階での処方の確認・見直し、在宅や施設療養への療養環境移行に対する考慮、入院前の医師・薬剤師との情報共有を挙げています。
続きまして、2.では、入院中から退院までの留意点としまして、1部同様、専門医との協議・連携、院内多職種等からの情報収集と処方見直しプロセスの実施、退院に向けた地域のかかりつけ医や薬剤師との連携、情報の引継ぎのほか、地域包括ケアを担う医療・介護関係者等との留意点の共有を挙げています。
3.の処方検討時の留意点については項目立てとしては1部と同様なので、説明は省略いたしますが、ここについても急性期後の回復期、慢性期にある患者を想定した留意点を記載することとしています。
4.は多職種の役割、チームの形成になります。処方見直しチームの形成につきましては、総論編にも記載したところですが、ここでは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった、リハビリ関係の職種についても言及しています。更に情報の一元化、共有のほか、処方変更の効果や有害事象の発現等に関する定期的なフォローアップ、服薬アドヒアランスの改善を挙げています。
続きまして、3ページ目19行目からを御覧ください。第3部はその他の療養環境として、常勤の医師が配置されている介護施設、すなわち介護医療院、介護療養病床、介護老人保健施設が該当します。1.は入所時の処方確認・見直しの考え方です。先ほど1部でも説明した総論編における記載に加えて、長期的な安全性と施設内の薬剤管理、QOLの向上の視点を挙げています。
続きまして、2.では入所中から退所までの留意点として、1部、2部同様、専門医との協議・連携、多職種等からの情報収集と処方見直しプロセスの実施、かかりつけ医への連絡調整、更に在宅復帰の場合は、在宅に向けた服薬環境の調整に加え、2部と同様に、退所に向けた地域のかかりつけ医や薬剤師への情報の引継ぎ・連携や、地域包括ケアを担う医療介護関係者等との留意点の共有を挙げています。
ここで、3項目に、かかりつけ医との連絡調整とありますが、こちらにつきましては、入所後薬を見直す際のかかりつけ医への連絡でございまして、5項目目にある、退所に向けた地域のかかりつけ医とある所については、在宅復帰する場合の情報提供ということで、両者を書き分けています。
続きまして、3.処方検討時の留意点は、項目立てとしては、これも1部2部と同様ですが、老健や介護医療院等における患者を想定した留意点を記載することとしています。
4ページ目です。8行目から、4.多職種の役割、チームの形成になります。処方見直しチームの形成については、施設の現状を鑑み、ここでは「可能であれば」という文言を入れています。それ以外の部分は、1部と同様の記載になります。
最後、17行目からは「おわりに」となります。ここでは、患者・国民への啓発と、患者本人・家族の意向を尊重した、薬物治療の考え方を挙げています。患者・国民への啓発につきましては、総論編にも記載しているところではありますが、重要な部分になりますので、追補においても記載することとし、今回は、患者・国民への啓発としては、服薬情報を医師や薬剤師に正しく伝えることの啓発ということで、最後の行を追加しています。
また、2つ目の○の患者本人・家族の意向を尊重した薬物治療の考え方につきましては、これも患者中心の考え方というのは、総論編にも記載しているところですが、今回は、患者本人・家族の意向を尊重するということの必要性についても、CGAやアドバンス・ケア・プランニング等にも触れながら記載することとしています。以上、資料1の説明になります。
○印南座長 ただいまの秋下先生の御報告と、事務局の説明を踏まえ、指針(追補)の骨子(案)について、御意見がありましたらお願いします。骨子(案)自体の修正追記のほか、内容についても、記載したほうがよいと思われるものがあれば、御示唆いただければと思いますが、いかがでしょうか。
○城守構成員 確認なのですが、ポリファーマシー、この総論編も拝読させていただいたのですけれども、服薬によって起こる有害事象の概念は理解いたしますし、多剤から剤量を減らし、減量していくということに、大きな流れは間違いないと思うのですが、ただ、疾患によっては、特に高齢者の方はいろいろな疾患を持っておられて、それぞれに適切な服薬をされて、処方されて、その結果として、適正というとおかしいですが、やや服薬量の多い状態になっているという場合がございます。ですので、このポリファーマシーの総論、そして追補を出されるに当たって、ややもすると国民、患者さんに対して多く飲むと駄目なのだという誤解を招く可能性というものが、私はあるのではないかなと思っておりますので、そのあたり、勝手にお薬を減らさないという意味において、医師、そして薬剤師等によって適正な処方を受けているにもかかわらず、受けているということを前提にしつつ、その処方の適正化が図れないかという意味であるということを、どこかに記載をしていただいたほうが私は良いような気がします。そういう記載がなかったような気もするので、それだけお願いできればと思います。以上です。
○秋下座長代理 その点は承知しておるつもりです。総論編のほうでは、少し注意喚起の面があったのかなと思いますが、この1年で世の中も少し変わってきておりますので、むしろ必要性の部分ということは、きちんと書き込んでおくことは、今、城守構成員からおっしゃっていただいたように、重要な視点かと思います。あと、第1部、2部、3部に分かれておりますので、そういう所での見方の違いというのもあるかと思いますので、そういうことも含めて書き込みたいと思います。
実は、この骨子(案)も前回のワーキングの前までは、「処方見直し」という言葉が並んでおりまして、要するに、減薬ありきみたいに見えるということも議論になりまして、処方確認・見直しというような表現にさせていただいています。2.では「移行時における留意点」のような書き方に変えたりというようにさせていただいておりますので、その点は意識して対応させていただきたいと思います。
○印南座長 ほかにございますか。
○伴構成員 伴でございます。このタイトルなのですが、今回お配りいただいた総論編という冊子を見て、今度出てくるのが追補ということになるのですが、追補というのは、ごく足らないところを若干補いますよ的なニュアンスが強いと思うのです。総論編ときたら各論編で例えば「療養環境ごとの留意点」とか、そういうようなタイトルのほうが、両方イーブンな重みのある報告書ですよというようなニュアンスが出るのではないかと思います。
○秋下座長代理 ごもっともな点ではあります。実はその詳細編というネーミングにしていたのは、まさに総論編に対しての各論編のようなニュアンスなのですが、そうすると皆さんが期待されるのが、何か薬効別とか疾患別というようなものになってしまうのではないかと。コンセプトの所でも議論いただきましたように、疾患ごとの話をする場ではなく療養環境別ということなので、今、御指摘いただいた点を踏まえると、この場でいい言葉がございましたら、是非御提案いただければ有り難いと思います。
○平井構成員 先ほどの御説明でありました3ページの2.の所で、「かかりつけ医が」という言葉が2つあって、区別して付けているというようにおっしゃったのですが、そこのところがうまく理解できなかったのです。というのは、なぜかといいますと、専門医との協議連携は、専門医の視点からなかなかお薬の調整というのは難しいということがあると思いますが、では誰がこのお薬の例えば処方見直しなり整理をしたりするときに、誰が中心になったらいいのかというのが分からないというのはよく聞かれることですので、そういうことを含めて、このかかりつけ医という所の区別の御説明をもう一度お願いしたいと思います。
○課長補佐 資料1の3ページ目の2.の3つ目の○に、まず「かかりつけ医への連絡調整」と書いてありますが、ここは患者さんが施設に入所する際に、そこの施設でお薬の処方を確認して、見直しするといった場合に、その大元のかかりつけ医と連携、調整をするという意味で書かせていただきました。
○平井構成員 入所前にかかっておられるかかりつけ医へという意味ですよね。
○課長補佐 そういう意味です。
○平井構成員 その方とそれから5つ目の○に、医師、これはまた別なのですか。
○課長補佐 はい。かかりつけ医は同じかかりつけ医なのですけれども、ケースとしまして5つ目は退所時にそのかかりつけ医と、また復帰するので、情報の共有ということです。
○平井構成員 そういうことですか。別の人という意味ではなくて、状況の違いという意味ですね。
○課長補佐 はい、そういうことです。
○平井構成員 分かりました。ありがとうございます。
○印南座長 先ほどの話に戻るのですが、この追補という言葉に代わる何かいい言葉が思い付かれる先生がいらっしゃったら、この場で言っていただけると大分助かると思うのですが。もし出なかったら、これはもう事務局にお任せするということになりますけれども。
○美原構成員 やはり先ほどおっしゃったように療養環境別で、そのままで一番分かりやすいと思いますけれども。
○秋下座長代理 そうすると、療養環境編というようなものですかね。
○印南座長 1つは療養環境編という御提案がありましたが、ほかにはないでしょうか。これで決まりでしょうか。
○伴構成員 伴でございます。先ほどちょっと大体提案したつもりだったのですが、総論編と書いてありますので、各論編として括弧して療養環境ごとの留意点。括弧の中の文言は、また検討してもっと短いものがあれば、入れていただいたらいいかなと思います。
○秋下座長代理 括弧の中に括弧が続くのが見栄えがよろしくないかなと思っていましたが、完成版では総論編も外に出ているので、悪くないかもしれません。いかがでしょうか。
○伴構成員 この冊子の表紙に、四角の中に総論編と書いてございますので、そこに各論編が入って、その後ろに括弧が入ってると。こういうイメージで私は言いました。
○印南座長 いかがでしょう。そんなに本質的な差はないと思うのですが、多少好みの問題はあるかもしれません。どうしましょうか。
○医薬安全対策課長 いろいろな御提案、ありがとうございました。今幾つかいただいた案を、一応並べておくという言い方は失礼なのですが、候補として残しておいて、最終的にこれから執筆に入りますので、名は体を表すではないですが、その内容に相応しいタイトルを、また改めて再確認していただくという方法もあるかと思っています。
当初我々が今日提案した追補というものも、従来議論してきた結果としての言い方だったと思いますし、総論編を受けた形でのそれを内容的に補うものというような捉え方をしておりまして、そんなに違和感はなかったのですが、今日御意見いただきましたので、またこの辺り、書いてみてからというか、少し時間を頂けたら、また相応しい名前になってくるのではないかなと考えているので、取りあえず幾つか頂いた案はお預かりする形でいかがかと考えます。
○印南座長 よろしいでしょうか。さきほど平井構成員のほうからかかりつけ医の話がありましたけれども、内容についての質問とか、あるいはもちろん御意見でも構いませんが何かありますでしょうか。それとタイトルの話が出ましたが、次に大きなものは、この3部構成でよいかどうかということも問題になりえます。十分ワーキンググループで議論された結果だと思いますけれども、これは3部構成ではないほうがいいとか、何か御意見があれば頂ければと思いますが。3部構成自体はよろしいでしょうか。それでは、皆さんうなずかれていますので、そこはいいということで。
ほかに何か言葉の使い方に対する疑問点とか、あるいは内容的にこういうものを追加したほうがいいとか、あるいは表現、こういうものは誤解を招くのではないかとか、そういった修正案のようなものがありましたら、ここでご指摘をお願いしたいと思いますが。よろしいですか。分かりました。それでは、追補の骨子(案)に関する議論を終了したいと思います。本日の議論を踏まえて、事務局に修正ないしは候補案の追記をお願いして、また後日確認させていただくという形を取りたいと思います。この骨子(案)に基づき、指針(追補)の作成をそのまま進めるということでよろしいでしょうか。それでは、議題(1)を終了したいと思います。
続いて議題(2)に移りたいと思います。先ほど骨子(案)を議論いただいた指針は、患者の療養環境別の指針を作成するというコンセプトになっております。そのため、本日はお二方の参考人の先生方にお越しいただき、患者の療養環境におけるポリファーマシー対策の具体的な取組について、御発表をお願いしております。まず、舛友参考人より、「ここまでできる薬剤情報の利活用~“うすき石仏ねっと”の挑戦~」について御説明いただきます。それでは舛友先生、よろしくお願いします。
○舛友参考人 皆さん、こんばんは。臼杵市医師会立コスモス病院の舛友です。今日は、このような場にお呼びいただき、どうもありがとうございます。時間も限られていますので、早速始めさせていただきます。
臼杵市は、九州は大分県にあります。大分市の隣にあり、人口は4万人を切った、本当に小さな町です。高齢化率も、もうすぐ40%に届くという、少子高齢化の日本の田舎の典型的な町です。
石仏ねっとは、臼杵市内の医療、介護機関を結ぶ情報ネットワークです。「石仏カード」というフェリカカード、SUICAのようなカードを患者に持っていただき、そのカードを患者が様々な機関で提示することで、データが見られるようになる。カードリーダーの上にカードを置くとデータが見えるようになるというような仕組みをとっています。最初は診療所と病院とを結んでいましたが、訪問看護が入り、次に調剤薬局の先生方に入っていただきました。調剤薬局の先生方をお誘いするときは、病院のデータや病名が見えますよということでしたが、歯科の先生に入っていただくときには、薬や検査データ、病名が見られるという形でお誘いをしました。ケアマネたちにも入っていただきましたし、データが集まってくると、消防署でも活用することができるようになっています。最近では、行政も入ってきて、どのように活用していこうかという形で、ネットワークが広がっていっているところです。
医療機関は、約4分の3の医療機関が入っており、調剤薬局、歯科医院は、ほぼ入っていただいています。ケアマネの事業所である介護事業所も、ほぼ入っていただいている状況です。公的機関も、このように入っていただいています。県の出先である保健所も入っていただいて、これから活用を考えていくところになっております。
カードを持っておられる同意者の数は、約1万9,500人で、ほぼ市民の半分を超えたのではないかと思っております。高齢者に限っては、恐らく7、80%を超えている段階ではないかと考えています。
カードの全体の仕組みですが、例えばケアマネの事業所や調剤薬局のデータが入ったサーバーが、それぞれあるとイメージしていただいたほうがいいかと思います。それぞれのサーバーとデータベースを、IDで紐付けているという形が、ある患者のデータになります。こういったデータを持つ患者がカードを持って初めて行った歯科医院にやってくると、カードを出したことで、これらのデータを見ることができると。初めての歯医者でも、検査の値や処方を見ることができる形になっています。
カードの中には共通IDしか入っていませんので、落としたとしても情報がそこから漏れることはないということになっています。歯科医院で自施設のIDを入力したならば、その歯科の情報もアップロードできるようになり、患者がカードを使えば使うほど蓄えられていく情報は増えるという仕組みをとっています。
ですので双方向性ですし、同意はカードを示すことで患者が示している形を取っております。当初はカードを乗せたときだけデータを見られるようにしていたのですが、さすがに使い勝手が悪いということで、カードを乗せた後60日間はIDを打つことで情報を見られるようにしました。ただし60日たつと、もう見られなくなるので、かかりつけ医を変えた場合や、過去のかかりつけ医にずっと見られるということはないという形の仕組みをとっています。
検査データは、異なる医療機関でも時系列で見られますので、健診データもこの中に載ってきますので、若い方でもデータの共有はできていく形になっています。昨日、あの病院で採血したという場合、我々は状態によってはもう採血しないというようなことも増えてきています。
お薬手帳は、こういった形になっています。開業医の先生の所のデータや当院でのデータなどをこのように時系列でクリックしていけば、見られるような形になっています。薬の名前をクリックすると、こういったDIの情報を出すようにしていまして、当初はケアマネさんたちが薬が分からないだろうということで写真を出していたのですが、実は私自身が一番使って、患者さんからあの黄色いお薬と言われたときに、これを見せながら、これ、これ、これという形で利用することで、患者さんとのコミュニケーションも取れる形になっています。
上に矢印で示していますが、赤くなっている所は腎機能を示しています。患者さんの情報の一番上に、腎機能がG4で赤になっていますが、4以上は赤にして、そうなってくると薬の調節を考えましょうというメッセージになります。G3では黄色という形で示しています。またその上は、出血傾向、低血糖という所に赤丸が付いていますが、バイアスピリンを飲んでいるとか、シロスタゾールやグルベスといった低血糖になる薬や出血傾向がある薬は赤で帯をするようにしていますし、一番上に薬はなくなっても、この情報は見られるという形で、一番上の情報として載せています。もちろん禁忌・アレルギーに関しても、欄は作っております。うちの病院のカルテからは、自動的に吐き出されていく形をとっています。既往歴・病名も電子カルテから自動的に吐き出されていく形で、病名共有をしています。
使用薬剤一覧です。過去に使った薬をざっと見ることができるのですが、検索で「ドネペジル」と打つと、いつから飲んだか、どうやって量を増やしていったかが分かるような仕組みをとっています。薬の登録方法ですが、繰り返しになりますが、石仏ねっとはインターネットの中ではやっていません。臼杵市の全面的バックアップの下で、臼杵のケーブルネットの中で閉ざされたネットワークで活用、運用しています。患者さんがカードを持ってくると、紐付けることで、うちの病院の中にある臼杵ネットのサーバーに情報が入ったり見たりすることができるようになります。調剤薬局から情報を取り出す際、調剤薬局のレセコンはインターネットにつながっているか、若しくはスタンドアローンであるということで、どうやってもネットワークに持ってくることが難しかったので、少し知恵を絞り、ここから一旦インターネットを介す。USBにNsipsという情報の形で取り出して、石仏ねっとに入っていればサーバーに取り込む、入っていなければはじくという形で、その間をPrime Driveというソフトバンクがやっているサービスになるのですが、安全に情報を分けてくれるという形で、ここの間は専用回線で結んでいます。一応インターネットに載せる時点で、ID以外のものは載せていないので、もしここで情報が漏れたとしても、誰のものかは分からないという形で活用しています。
メールもあり、疑義照会ではない場合は電話などはしにくいわけですが、調剤薬局の先生が処方提案などをする場合も、こういった形で使われています。職業用のネットワークになりますので、メールを使う場合もある調剤薬局からは「○○医院」という形でメールを出すことができます。そうすると、事務の方が見て先生にメールが来ていることをお知らせすることができ、先生はわざわざ開かなくてもメールが来たことが分かるような形をとっています。いろいろな施設が入っていますし、メールにはできるだけ顔写真を載せるようにとしていますので、自然と顔と名前が一致していくというようなことを考えています。
これは、消防署の通信司令室で見える画面です。真ん中の方が119の電話を受ける方ですが、隣で住所や名前、電話番号などから個人を特定して情報を見るという形をとっています。救急車の中では揺れ動いたりして、とても情報を取るのが難しいので、通信司令室で見ます。この画面が、通信司令室用の画面になります。消防署では、この画面しか見られません。
こちらは、先ほど言いました低血糖と出血傾向の情報ですが、調剤情報から自動的に判定して、赤がチカチカするような形になっています。認知症やアレルギーのボタンもありますし、病名なども出ています。またケアマネが打った情報がここに出てきて、介護度や認知症度といったものを把握した上で行けます。認知症の方に幾ら聞いても訳が分からなくなるよりは、もう認知症と分かって行こうという形です。この画面だけでも、薬剤師の情報、病院の情報、ケアマネの情報といったように、いろいろな職種が入れてくれたものを利活用しています。
これは歯科の先生が打ってくださる「歯式」という画面なのですが、これを見ると何のことやら分からないわけですが、こういった形にすると分かりやすいかなと思うのです。その方の歯の情報になります。初診の患者が来たら、歯科の先生方は打ってくださいます。何のために準備しているかというと、東日本大震災の際に使われたDENTAL FINDERというものに対応していて、取り出せばすぐに探せるという形にしています。南海トラフの地震が起きた場合、臼杵市には10m弱の津波が想定されていますので、こういった形で歯科の先生方は協力してくださっているという形になります。
災害対策として、災害時にはカードがなくても使えるということと、お薬の情報、災害時要援護者の情報、遺体検案のための情報、東日本大震災の際になくて困ったという情報を、常日頃から蓄えておこうという形で考えております。ちなみに、これは同意書の一部を示していますが、臼杵市内に、かかりつけ医とかかりつけ調剤薬局を持つことをお勧めするということで、隣町で処方されても、臼杵に帰ってきて調剤してくれると情報が載るという形でお願いしているところです。これは先日行った防災訓練、避難所訓練なのですが、石仏ねっとに入っているということでカードを持ってきていなくても、名前と住所等からその方の処方を把握して情報を出す訓練というのをMobile Pharmacyでやってきた薬剤師会の方と行いました。
臼杵石仏ねっとの機能ですが、たくさんあります。お手元の資料を参考にしてください。機能別の参照件数ですが、検査は一番最初にやった機能なので、古すぎてクリック回数が確認できないのですが、検査を除くと、やはり薬剤の情報が一番参照されていることが分かります。また、職種別の参照ですと、薬剤師が一番活用していることが分かりました。薬剤師はこういった情報に飢えているというか、必要としているのだなと感じています。また、入力のほうは医師が一番頑張って入力しています。歯科の先生方もかなり頑張って入力しているのが分かります。
これは総務省が昨年に行ったクラウド型EHR高度化事業の参加の図で、石仏ねっともそれに参加しました。総務省としては各医療圏にあるネットワーク同士がつながらないことがネックであると考えて、それぞれの医療圏のデータをクラウドに上げたならば日本中のどこでも見られるような仕組みを作ったらいいのではないかというように考えておられたようで、異なる医療圏の情報を見るネットワークを作れということでしたので、石仏ねっととしても市外の医療機関の情報を見ることができるようにしました。大分大学病院や臼杵から近い病院、またとんでもなく離れた国東半島の高田という地域でネットワークを新たに作って、その情報を共有するということを行いました。共有するデータは検査データと処方データで、石仏ねっとが一番最初に持ったデータをまずは集めようという形でやっています。大学のほうでは、電子カルテの中に「臼杵石仏ねっと」というアイコンを立てていただいて、カルテから石仏ねっとが見られるような仕組みを大学で取っていただきました。大分県の医療情報ネットワークとしては、柱1として、お互いのカルテを見られるような状態を作っていく。柱2は、処方・検査のデータを集める。それを3番目としては利活用していこうと。このような形で、そういったネットワークの構築を目指そうということになってきています。
また、同じく総務省の事業でやったものは、子育て支援アプリとの連携です。市が持っているワクチンの情報をうすき石仏ねっとに蓄えることで、こうした形で石仏ねっとで見られるわけですが、それをスマホのアプリを使ってお母さんたちは見ることができます。当然、次回の接種のスケジュールはアプリで分かりますし、予定日が近付いたらお知らせしてくれるという機能はありますし、ワクチンの説明はクリックをすれば当然見ることができるというアプリになっています。更にこのアプリは、市からの子育て情報、市が持っている成長曲線、身長や体重の情報から、こういった曲線になっているという、母子手帳の一部の機能も載せているということです。石仏ねっととしては、健診情報も入っていますので、お薬手帳、疾病管理手帳、介護予後、かかりつけ連携手帳、これらの内容はほぼ入ってきています。母子手帳のほうも入ってきましたので、あとは学童健診だということで、行政のほうは来年度からやろうという形で、赤ちゃんから墓場までという形で、ネットワークで情報を共有していこうということを考えているところです。
厚生労働省が考えている次世代型保健センターシステムを全体をPeOPLeと仮称で名付けて、データを集めることを厚生労働省は考えているわけですが、我々もデータを生み出しながら集めていく、匿名で使って、オプトアウトという形で、匿名にしたならデータは使えるという掲示をインターネット上にしていますので、我々は情報を取り出してデータ解析することはできるという形になっています。
お薬に関しての地域との協働です。臼杵市では医者と薬剤師を対象とした「患者と薬を考える会」、ここにおいでの秋下先生にもおいでいただき、御講演いただきましたが、そういった会と臼杵市Z会議ということで、在宅医療や介護や福祉のスタッフを対象とした連携、2つの方面からお薬のことを考えていっています。介護・福祉スタッフ向けには、「こらほっちょかれん」というのは大分弁なのですが、低栄養や口腔ケアやお薬のことを書いた手引書を作っています。その中で一番メインが、余った薬を見付けたらどう対処しましょうかというようなことを書いております。また、市民の皆さんには、ちらしを作って市報で配布したり、この中でも余った薬を見つけたらどうしましょうかということで、かかりつけの薬局やケアマネージャーに相談してくださいという形で、お知らせしております。患者と薬を考える会は、ここで話されているようなことを、薬剤師と医師が一緒に勉強していこうという形で、年4回やっております。その会の中で研修会として、多職種が集まってお薬について考えるということで、高知県の川添先生に来ていただいて、ファシリテータをやっていただき、皆で考えたということになります。
こういった中でやっていて、石仏ねっととしては新しい画面を作ろうということになりました。この情報がこれになるのですが、服薬管理者は誰か、本人が管理しているのか服薬介助されているのかとか、一包化であるか、薬の形態、備考に関しては、その調剤薬局の方々が考えているその方の状態などを書いていただいて、情報を共有しようという形で、こういう画面を作ってみました。うちの薬剤師たちが頑張って考えたのですが、こういったものも介護の現場では非常に重要な、必要な情報になりますので、こういったことを出したらいいというところを教えていただけると、我々もよりいいかなと考えています。
また、この会が始まってから、この情報を入院カルテから出そうという形で、入院時のお薬の情報、退院時のお薬の情報、どうしてそのように変えたかというのを一番先に書いて、それを石仏ねっと上で共有しようという仕組みで、今年度中にこれは作成する予定ですので、画面として1、2、3、4と入っていますが、改善していく予定です。ちなみに、入院時処方内容以外は、全部カルテから自動的に吐き出されていきます。今、電子カルテ上に「任意の処方内容」という欄がないので取り出せないということで、ここはコピー・アンド・ペーストすることになっています。こういった形で、電話で話していた連携の時代と、進んでいって調整、協調という形で、我々は進んできていて、こういった医療、介護、ケアマネも含めてやっていくことで、いろいろな仕組みが統合されていくのかなと思っています。もちろん大事なのはICTを利用することだけではなくて、それが何でかということの情報共有していく、常に介護現場の方々と医療側も情報を共有していくということが大事で、一緒に話す機会を設けていくということが大事だと考えています。
以上です。どうもありがとうございました。
○印南座長 ありがとうございました。ただいまの舛友参考人の御説明に御質問等がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
○池端構成員 大変すばらしい取組を御紹介いただきまして、ありがとうございました。何点かお聞きしたいのですが、まずコストの面です。イニシャルコストとランニングコストがあると思うのですが、市が全てお持ちなのか、それとも持ち寄って基金を作られたとか、その辺は分かりましたら教えていただけますか。
○舛友参考人 大きな変革に関しては補助金を頂いたときに、ここまで15年ぐらい掛かって持ってきているのですが、4回ぐらい大きな補助金を頂いたことがあります。
あと、3、4年前に協議会という形で、行政と一緒になって、多職種の医師会、歯科医師会、薬剤師会と一緒になって協議会を立ち上げたのですが、その後は行政が半分、医師会が半分という形で、運営費を出しています。残りの3分の1は会費という形で集めて運営を続けています。ですので、主に運営のほうは人件費と、ソフトの改善に使っていて、運営費には大体年に2,000万円ぐらい掛かります。掛けたお金の10分の1が運営費ということになっていますので、大体今までにどれぐらい掛けたかは推測していただければと思います。ただ、15年間でそれぐらいですので、決して我々はもらいすぎているとは思っていませんし、既に効果はそれを上回るものをお返しできているのではないかと考えています。
○池端構成員 もう一点よろしいでしょうか。これは本当にすばらしい取組ですが、やはり15年掛かったということで、他の地域でこれをやりたいという場合に、かなりノウハウができていますから、また15年掛かるわけではないと思うのですが、一番御苦労された点とか、例えばこういうことを次の地域、あるいは大分県でも全てできているかと、まだできていないところの問題点とか、その辺の先生がお考えの課題、あるいは解決策がありましたら教えていただきたいのですが。
○舛友参考人 豊後高田市に新しいネットワークを作ったわけですが、比較的簡単にできました。処方と調剤で、調剤薬局の方々も石仏ねっとの話をしたら、全面的に入ってくださって運用が始まっているという形になります。
また、その集まってきたデータをどう活用するか、石仏ねっとのどの部分を入れるかというのは、その地域ごとに考えていただかないと、消防署などでの活用もそうなのですが、歯医者とケアマネの患者というのは、大抵は市民で、市を出ていかない方々の情報となってくるので、それぞれの市で考えていただかないと難しいのかなと思っていますので、我々は検査と処方のデータを集めるというところまでで役目はやめて、それぞれの町で考えてくれという形でやっていこうと思っています。
○城守構成員 とてもすてきな取組の御紹介をありがとうございました。私も何点かお聞きしたいのですが、運営の主体というのは医師会でよろしいのでしょうか。
○舛友参考人 医師会で始めました。10年以上は医師会でやって、その後に協議会ができたという状態です。
○城守構成員 あと、このカードリーダーを各施設や医療機関等に設置するということになると思うのですが、そのイニシャルコストというのは補助金からということでしょうか。
○舛友参考人 おっしゃるとおりです。
○城守構成員 そのカードリーダーというのは、大体幾らぐらいなのでしょうか。
○舛友参考人 カードリーダーそのものは数千円で、そんなに高くはないです。税金を納めるときのe-Taxを乗せるカードと同じですので、知っている方は知っていると思います。
○城守構成員 あと、識別子はどうされているのでしょうか、名前じゃなくて。
○舛友参考人 カードの中にIDが入っていまして、それが地域共通IDとして働いて、そのIDに自院の施設のIDと紐付けていくことで、皆の情報が共有できるような仕組みを取っています。
○城守構成員 それは、地域において個人個人にIDを振り分けているということですか。
○舛友参考人 はい。今後、医療等IDがきたなら、その地域の医療IDを紐付ければ、我々としては活用していけるのではないかと考えています。
○城守構成員 基本的にはクローズなネットワークとお聞きしましたが、調剤と接続するために、やはりネットを通さなければいけないということなのですが、そこでPrime Driveなどを使って、セキュリティのレベル的には、かなり多くの個人情報が入っているようですが、その辺りに関してのセキュリティの担保というのは、どの程度なのでしょうか。
○舛友参考人 国のガイドラインが示されていると思うのですが、一番ガチガチに固い線でやっています。行政が入ってきているので、行政の方々は本当に厳しくて、検診データを出していただくときでもそこが一番の山だったぐらい、行政の方は固いです。
○印南座長 ほかにいかがでしょうか。
○樋口構成員 興味深い御発表をありがとうございました。御発表の中に災害対策が出ていまして、大変我が意を得た思いでした。この検討会の主たるテーマではないかもしれませんが、特に高齢者は多剤を持って逃げられるとは限りません。しかし、多剤すぎるか適切であるかは別として、服薬によって命をつないでいる方もいると思うのですが、そういう災害対策としての服薬指導とか、様々な対策がありましたら、こんなに事故の多いときですから教えていただければと思います。
○舛友参考人 正直言って、データは集めているというだけで、災害にどう活用していこうか、災害時にどうやってデータを出すのかという仕組みはまだ確立していません。ただ、夏に避難所の訓練をやった後から、行政の方も災害時に出していくことが重要だと、避難所でどのように活用するのかは大事だということになりましたので、ワーキンググループを作って1年ぐらい掛けて、災害時にどのように活用していくのかというのは検討していくというところに今、至っています。
○印南座長 北澤構成員どうぞ。
○北澤構成員 大変興味深く拝聴しました。教えていただきたいのは、このようにして情報を共有することで、この検討会でも議論をしてきたポリファーマシーの問題に関して、例えば薬の重複が見つかってそれを減らせたとか、そもそも多すぎる薬を減らすことができたとか、薬の種類を変えたとか、そういった具体的な情報共有に伴う変化について教えていただければと思います。お願いいたします。
○舛友参考人 正直言って、調剤薬局の先生方は弱いです。開業医の先生が出したものに対して、もの申すことはなかなかできないというところがあります。それを打破するために、「患者と薬を考える会」ということで、医師と薬剤師で一緒になって話をする会を作りましたし、うちの病院に入院したら薬剤師を病棟に2人にして、必ず処方提案をしてもらうというような体制を取って、今後うちの病院からそういった入院時の薬がこうで、退院時の薬がこうなった、その考え方はこうですという情報を出していくことで、少しそういった効果が地域に広がっていかないかなというのは、今願っているところです。
○印南座長 斎藤構成員お願いします。
○斎藤構成員 大変すばらしい取組に本当に感銘を受けました。1点お伺いしたいのですが、市外の医療機関との連携をされているということなのですが、例えば大分大学の附属病院や比較的大きな病院に入院されていて、退院されてこちらの臼杵市に帰ってこられて利用されるということで、患者のID番号などはもう共通化されていると考えてよろしいのでしょうか。
○舛友参考人 いえ、大分大学さんにも患者はカードを持っていって、大学が大学のIDを打つと、そこで紐付くという形で、基本的には石仏ねっとに紐付けしていただいています。
○斎藤構成員 共通のID番号ではないが、紐付けられているということですね。
○舛友参考人 はい。大学のカルテは別の仕組みで我々は見ることができるので、カルテを見るということは、また別の仕組みかなと考えています。
○斎藤構成員 もう一点お願いします。電子版のお薬手帳を石仏ねっとで作っておられるということなのですが、患者自身も紙のお薬手帳を持っていて、更にプラスアルファと考えてよろしいでしょうか。
○舛友参考人 そうです。紙のお薬手帳はなくなることはなく、在り続けるのだろうと認識しています。プラスアルファで活用と考えています。ただ、母子手帳の電子化の技術を使って、来年度はお薬手帳もスマホで見られるようにしよう、検査データもスマホで見られるようにしようという構想は始まっているという段階で、臼杵市外に出ても、自分の情報をスマホで見ていただくことができるような体制が望ましいのではないかと、考えているところです。
○水上構成員 たくさんの職種の方がアクセスできるとのことですが、職種によって見られる画面というのは制限があるのですか。先ほど消防署はある一画面だけという話だったですが。
○舛友参考人 あります。基本的にはケアマネはここまでとか内容は決めさせていただいていて、それで異論がなければ、そのままにさせていただいている形です。例えば事務の方はどうするかと言うと、その事業所の先生に考えてくださいと。事務の方はメールだけにするか、紹介状も打てるようにするか、検査データも見られるようにするかというのは、その事業所の先生が考えてくれれば、セキュリティは担保してくださいと。情報が漏れるとしたら、そういった形だと思うので、その辺は我々ではできないところですので、そういった形で事業所の方に責任を持っていただいているという形になります。
○水上構成員 もう1つあるのですが、認知症のデータとして、要介護認定の所に認知症の重症度が入っていると思うのですが、要介護認定を受けていない方で、例えば薬の管理に問題がありそうだとか、認定を受けていない方で認知症が疑われるみたいな、そのような気付いたことというのは、患者情報のメモの所に入ってくるのでしょうか。
○舛友参考人 ケアマネやヘルパーがそれに気付いたときに、どうやってそれを調剤薬局の先生やかかりつけの先生と共有していくかというのは、石仏ねっとを使わなくてもできる方法はないかということで、まずZ会議という在宅医療連携の会議の中で議論しているところです。全てをネットの中でやろうとすると、なかなか難しいと思っていますので、まずはほかの方法を考えた上で、結局石仏ねっとのメールを使おうとなるのか、電話でもいいではないかとなるのか、そこは議論をしているところです。
○印南座長 他によろしいですか。
○平井構成員 すばらしいお仕事で感激いたしました。今はドクターが一生懸命入力しておられるということで、薬剤師はレセコンの情報がネットを通じて入っていくわけですよね。
○舛友参考人 そうです。
○平井構成員 ドクターは電カルに入れたものが、そのままパッと入るのですか。
○舛友参考人 うちの電カルは吐き出された必要な情報はそのまま入っていきます。ただ、開業医の先生の中には、田舎の町なので、ほとんどの方が電子化していない御高齢の方が多いです。逆に、そこが広がっていったところで、電子カルテを開業医の先生が使っていると2つ見るのが大変ということで、なかなか実は若い先生のほうが抵抗勢力です。
○平井構成員 よく分かりました。電子カルテは施設によって違いますよね。こういう試みは絶対に広げていくべきだと思うのですが、電カルがすごくネックになるのかなと。
○舛友参考人 おっしゃるとおりで、電カルがインターネットにつながっている開業医の先生の所の情報をどうやって共有するかは、今後日本全国で課題になっていくのではないかなと、我々は今solutionを見つけきれていません。ただ、日本医師会がやろうとしている医療の専用回線というものができたのであるなら、そういった形でできていくのかなと。ですので、我々はあれができるのを楽しみに待っているというところです。
○平井構成員 楽しみです。ありがとうございます。
○印南座長 続いて、木村参考人より、「外来診療・在宅医療」について御説明いただきます。木村先生、よろしくお願いいたします。
○木村参考人 木村です、よろしくお願いいたします。本日は、貴重な機会を大変ありがとうございます。私は東邦大学を卒業し、学生のときから総合診療とか家庭医療という立場でやってまいりました。厚生労働省関係では現在、介護キャリア段位制度の委員、介護福祉士国家試験委員としてお世話になっておりまして、この場をお借りして御礼申し上げます。
現在、私は、北里大学に所属していますが、診療所での診療、特養など地域での活動が中心ですので、そんな立場で申し上げたいと思います。ただ、舛友先生の御発表をお聞しますと、このシステムを使えば、本日お話をさせて頂きます私の悩みのような内容は解決されるように感じております。そのような内容ではございますが、どうかよろしくお願いいたします。
まず、現在、私が働いております神奈川県相模原市についてご説明させて頂きます。北里大学があります相模原市ですが、新宿から小田急線で一本の、相模原市内でも比較的便利な地域にあります。私は緑区という、以前は相模湖町、藤野町などの神奈川県津久井郡であった地域の中山間部で主に活動しております。東京都八王子市と山梨県上野原市に隣接している地域です。主に3箇所あります診療所で活動しておりまして、元々は県立で現在は市立になっており、自治医科大学からバトンタッチを受ける形で診療と教育を頑張ってやっております。総合診療医が非常に必要な地域で、私はそういう人材を育てることを、相模原市、医師会、病院協会などの御指導・協力の下、5年前からやっております。診療所は、そもそも紙カルテですし、院外薬局も少なく、やっと1つの診療所が最近院外処方を進めていますが、多くの場合には院内で薬を作っているという状況です。ですので、少し特殊なお話になるかもしれません。
本日、私は外来、在宅についてという御指示を頂きましたので、それぞれについて2つずつ述べさせていただきまして、最後に、決してオリジナリティのある話ではないのですが、医師が外来をやりながら、他の職種の方が在宅へ入られるという連携形態について、薬を主眼に述べたいと思います。
まず、外来診療の1つ目ですが、最近ことに言われているMultimorbidityに関することを、私の現在の臨床を含めて申し上げます。私は週4回程度津久井地域で診療しておりますが、日々感じますのは、御高齢の方は本当にたくさんの病気を持っているということです。内科疾患と整形外科疾患が特に多いかと考えます。あとは認知症の方が多いですし、うつの方も、誤解を招くかもしれませんが意外と多いという印象を持っています。前立腺肥大、それから女性に多いですが骨粗鬆症も多いと思います。Multimorbidityかどうかは定義によるかと思うのですが、前提として高齢者にはたくさんの御病気を持つ方がとても多いということをまず申し上げます。
これは、私が活動させていただいているプライマリ・ケア連合学会のセミナーで、昨秋、老年医学会の先生に御指導を頂いてワークショップをやった際のデータです。非常に少ないデータ数ですが、そのときに参加した25名の医師にMultimorbidityの高齢者で、どんな基礎疾患で困るかということをかなり大雑把ではありますがお聞きしました。私は、認知症の方で困っておられるのではないかと予測していました。ところが、心不全や糖尿病で困っている先生も多い結果でした。あまり多くのことは言えないデータですが、これは何故なのか考えてみました。私が考えますに、とくに心臓の薬を切ってもいいのか主治医として迷いがあるが、患者さんは病院へ通えない状況であったり、ここで診てほしいという方も少なからずおられると思います。そんなことが結果に表れていると感じておりまして御紹介させていただきました。
私どもが活動しております地域では、例えば眼科、泌尿器科などがかなり不足しています。そのため、八王子や山梨県の病院にお世話になっている方も結構おられます。皆さんそれぞれ、いろいろな医療機関へ掛かっておられ、いろいろな薬とか、指導を受けています。診療ガイドラインを遵守することがなされていると考えられますが、最近言われているとおり、患者さんそれぞれで個人差がありますけれども、治療に関してある種の負担が生じている方がいるという印象を持っております。
日頃、高齢者を診ることが多いですが、生命予後や一次予防も重要ですけれども、やはり症状とか、薬で言うと飲みやすいかということも考えなければいけないということを、常々考えさせられています。ただ認知機能障害など、あるいは独り暮らしの方も全国と同様に増えていますし、薬の管理に限界がある方が増えています。何よりも、患者さんを前に、何を治療目標にしたらいいか、どのようにして、たくさんある疾患の治療目標を明確化、設定すればいいかということに悩んでおります。しかし現実には、このような方々をどういう風に診るかという指針は不足しています。例えば糖尿病の診療ガイドラインは、糖尿病学会と老年医学会を中心に認知機能障害がかなり加味された内容となっていますが、先ほど御紹介した昨年秋のプライマリ・ケア連合学会で、あまり知られていないことが分かりました。そういうガイドラインを、啓発ということも含めて普及させる必要性があると考えます。
それから日常診療では、そもそもMultimorbidityであることに気付けないということがあるのではないかと考えています。現在、私は診療所で診療をすることが多いのですが、前立腺がん、心筋梗塞後などで、病院の泌尿器科とか循環器に掛かっている人が少なからずいます。毎月、通院され処方されていれば、お薬手帳などで把握できますが、どうしても年に何回か、患者さんが自分で違う医療機関へ掛かっていることもあります。お薬手帳が2冊になってしまい、把握できないこともあります。
お薬手帳を見て、私も月に何回か、この人はここの病院に掛かっていたのか、ということでびっくりさせられることがあります。お薬手帳へのシールが抜けていたり、飛び飛びで受診したりということがあると、患者さんを継続的に診ていても、実は他の医療機関に継続受診をしていて、薬も出ているということが、見逃されてしまうことがあります。
複数の医療機関へ通院されていると、それぞれの先生が主治医だと思いますし、かかりつけ医だとは思うのですが、誰が全体の舵取り機能を担うかということが非常に難しいのではないかと考えています。その患者さんの治療で、全体的に何を目指すかということが極めて重要ではないかという前提に立った考えではありますが、複数いると思われる主治医の誰が全体の舵取りを行うかということを明確にすることが、高齢者医療や薬剤の適正化に必要ではないかと私は考えています。
昨秋のプライマリ・ケア連合学会のセミナーでは、他の医療機関の医師が診療の一部を担っている場合には、コミュニケーションが取りづらかったり、治療目標についての意見が異なったりし、中には病院の先生に怒られた、ということを言う医師もおられました。私としては、臨床現場では少なからずこういう側面があると考えています。
これは理想論かもしれませんけれども、複数の主治医がいる状況から、可能なら1人の主治医にまとめる。あるいは2人主治医的に、まず疾患に対して専門的・重点的に関わる主治医、例えば前立腺がんがあるとか、心筋梗塞後の泌尿器科医、循環器医の存在は当然、必要で、役割を明確にする。そして、主に全体の舵取りとか、在宅医療にも対応する医師の存在が、やはり薬剤の適正化を含めて非常に重要ではないかと考えています。
これは、筑波大学の前野教授の下で私どもがやったものです。ICPCというプライマリ・ケア療域の疾病分類を用いて、全国の総合診療医が、どのくらい包括性、つまり幅広い疾患や健康問題を診ているか調べまして、かなりをカバーしていたというデータです。患者の年齢別では、高齢者もかなり診ていることが分かります。
私は、総合診療医を推進したいという立場ですので、どうやって増やすか。総合診療医というよりは、総合診療医としての機能を有する医師を増やすということが個人的には重要だと思うのです。もちろん患者さんの希望が重要ですが、患者さんにある程度そのような全体の舵取りや調整をすることの重要性を認識してもらうことが必要ではないかと考えています。これは非常に理想論的ではありますけれども、これらが、その患者さんの薬剤を含めた治療目標であるとかゴール設定につながるのではないかと考えています。
ここまで申し上げたことは、Multimorbidityが増えている医療現場で、薬剤の適正化を含めて、全体の舵取りや在宅医療にも対応するような総合診療医的な医師が主治医になることや、2人主治医制の形態が、もう少し明文化されないと、ばらばらな診療になるのではないかと私が感じているということです。
次に外来診療の2つ目として、外来以外も含めてになりますが、ケア移行のお話をさせていただきます。これまでの検討会や、既にこの検討会が作成された指針にも含まれていると思います。これは、松村真司先生の研究班でさせていただいたものです。私どもの地域でもそうですが、急性期病院をはじめ、いろいろな医療機関へ患者さんのケアが移行するということがあります。ケア移行の際には、特に、薬剤に関するエラーが非常に多いということが、英国や米国では明らかになっています。我々も、常々、そのようなことを感じております。
これは、どちらの地域でもあると思いますが、急性期病院を退院してから診療所に来る。あるいは救急というルートで、患者さんが自宅から直接入院することもあります。あるいは療養の場自体が施設に変わったり、リハビリとか緩和ケア病棟とか、地域包括ケア病棟へケアが移行することがあります。そうしますと、私の狭いローカルの認識ではありますけれども、お薬手帳中心の薬剤に関する医療情報の継続が、損なわれてしまうことを実感しています。かかりつけ薬局というのは当然重要で、薬剤師の先生方にお世話になっていますが、こういう場合は、かかりつけ薬局も把握が難しい構造になっているのではないかと考えています。ですから、厳格な連携をどのようにすればいいかということが非常に課題であるということを強く感じています。
これは、私どもが北里大学東病院で出した少ないデータです。ポイントを述べますと、北里大学病院から北里大学東病院へ患者さんを受け入れる、つまりケア移行の際に、薬剤師の厳格なチエックで、ある期間に276名中10件(3.6%)に医師のみではエラーがありました。用量や用法を間違えていたり、最近は連日投与でない薬も増えていますが連日にしてしまったということがありました。これらが薬剤師との連携で防ぐことができたという内容です。北里大学東病院の薬剤師さんは本当に熱心な方で、紹介元である大学病院の診療録を、退院直前の処方内容も含めて確認してくれました。それを、北里大学東病院へ転院後の処方内容と比較し、同じ処方内容であるかを確認してくれたのです。通常このようなことはあまりできないと思います。北里大学病院と北里大学東病院は電子カルテがダイレクトに見られる体制になっているので、できたことであると思います。
ケア移行時の薬剤エラーに関して、我が国ではあまり大きなデータはないと思われますが、我が国でも、薬剤に関するエラーがケア移行のときにあるのではないかと考えています。今回、ご提示した方法は、北里大学病院と北里大学東病院との間でしか行えませんので、薬剤に関する厳格な連携をどうするべきかは、難しいところです。したらいいか、私もまだまだ悩んでいます。
ここまでは、主に外来を主眼に、ケア移行に伴う薬剤エラーの話をさせていただきました。
その前には、Multimorbidityについてのことを述べさせていただきました。
ここからは、在宅医療について述べさせていただきます。
まず第一に、残薬の問題を申し上げます。訪問診療で患者さんの家へお邪魔すると残薬を発見するということが非常にあります。居間や机の上に薬がテレビのリモコンなどに紛れてたくさん置いてあるということが日常的にあります。訪問すると、残薬以外にも外来で分からないこと、例えばアドヒアランスのこと、これでは薬の管理はできないだろうなとか、認知機能が低下していそうだなど、外来では分からないことに気付いたりということがあります。
しかし、私も今は医師不足の地域でやっているということもありますが、もちろん医師不足でなくても、診療所は外来が非常に忙しいですので、医師が患者を訪問することには限界があると思っておりまして、どうしたらいいか、ということを常々考えています。他職種との連携が鍵であると考えておりまして、後ほど述べさせて頂きます。
つぎに、在宅医療の二つ目として、生活指導について述べます。例えば、便秘時の下剤や浣腸の処方、自分が外来にいて、訪問看護だけが入っていて、「浣腸が必要なのではないか」というお話があれば、相談はするにしても、良くも悪くもまずは浣腸を処方することになると思います。ただし、実際に自分で家に足を運ぶと、これは下剤ではないなと。便秘と言っているけれども、このトイレでは出ないだろうとか、そもそも違う問題に気付かされることがあります。ただ、そこは訪問しないと分からないということがあります。
それから転倒です。秋下先生をはじめ薬剤と転倒リスクについては勉強させていただいており、薬を出すときは転倒リスクを踏まえることを心がけておりますが、実際の評価を外来で行うことはなかなか難しいです。家に行ってみれば、この人は危ないなということが一目で分かることがあります。転倒リスクがないわけがないなと。薬を出す際などの、転倒リスクの評価や、転倒予防の指導は、家へ行くと非常に分かります。
便秘にせよ、転倒にせよ、家で生活指導をするということ自体に意味があると思います。
本日私は、在宅医療では、様々なことが分かるというお話をしたいわけではなく、医師が全部訪問することは不可能であると思っております立場から、どのようにすればいいかということを常々考えておりまして、医師の外来診療と、他の職種の在宅医療の連携について最後に述べさせていただきます。
これは当たり前のことですけれども、医師としては外来で月に1回など診て行きながら、居宅系のみならず、通所系のサービスの他の職種の方々と連携して、情報を薬剤に生かすということが必要な時代になっていると思うのですが、私が思うにはなかなか難しいと思います。訪問に行けば、ヘルパーさんとのやり取りもなるべくやっていますが、薬剤以外の情報もやり取りしなければなりませんし、外来で、ヘルパーさんと「この人は薬の飲み忘れが多くなっている」というようなやり取りを行うのはなかなか難しいと思います。
どうしたらいいのかと思うのですが、私が本日申したいのは、医師が外来のみで診療している患者さんに、他の職種の方が訪問する意義というのは極めて大きいのではないかと考えているということです。比較的元気な患者さんであれば、例えば調剤薬局を利用している人だったら、薬剤師からよく情報が入ることがあります。「先生、実はあの患者さん血圧の薬をすごく嫌がっていた」とか、「何の薬なのと言っていましたよ」とか、そういう衝撃的な内容もあります。ただ、だんだん通院が大変になると、患者さんが取りに行くのではなくて家族が薬局に薬を取りに行く様になり、なかなか具体的なことが分からない。家に行っているヘルパーさんとか、デイサービスの人からでないと具体的な情報が分からないということになると思うからです。
ヘルパーさんなどからは、例えば「経済的な側面で、薬代が結構大変だから薬を飲みたがらないのではないか」とか、そんな貴重な情報を伺うこともあります。残薬のこと以外にも、細かいことでは薬が取り出せているかとか、全然見えていないのではないかなど、視力低下、あまり見えていないという人を見逃さない様に、そういう具体的な情報をヘルパーさんなどから、もう少しシステマティックに聞くことができないのかと考えます。
例えば、服薬カレンダーですが、あまり早く薬を入れると馬鹿にしているのかと思う患者さんもいると思います。どういうタイミングで勧めればいいかというのは、外来レベルだとなかなか難しいところです。ヘルパーさんなどの意見を聞きたいところです。何よりも自宅で生活している様子の情報が、薬剤や処方適正化の第一歩ということがあります。家に入っている職種が1職種でもいれば、その方から薬は飲めているかとか、飲みにくさのこととか、転びやすくないかということぐらいは、もう少しシステマティックにできないかと思います。もちろん、ケアマネージャーさんを介することは有用な方法の一つだと思います。
医師は外来にいると、「何曜日にデイサービスへ行っているのか」ということは聞いても、本当の過ごし方とか、具体的に薬を飲むときにどんな感じかなどということはなかなか理解が難しいと思います。医師という単一の職種のみでは、食事とか排泄、さらに医療に対する考え方とか、療養のパターンの中から、いろいろな病気があってもどこを重視するか、薬剤をどのように提供していくかということを把握することはできないと思っています。
本日の会議の主眼である薬剤に関することでは、とくに認知機能とか、転倒リスクや転倒歴、嚥下機能が重要であると個人的には考えております。これらが生じた際に、ヘルパーさんなどに後々聞くと、「あの人、数年前からちょっと変だったよね」みたいなことがあって、「早く言ってよ」みたいなことがしばしばあるわけです。私の経験では、ヘルパーさんが非常によく見ているけれども、「そんなのは当たり前だと思って気付いていたけれども言っていなかった」とか、そういう方も結構います。
独り暮らしの方とか、本人以外からの情報を取れない方が最近は増えていますので、この辺の情報をシステマティックに医師が把握することが非常に重要ではないかと考えております。薬に関する正しい情報が、処方内容はもちろん、時には診療方針を変えることにつながると思います。申し上げたいのは、医師よりも早い時点で他職種の方々が様々な変化を把握していることが非常に多いのではないかと考えているということです。
最後に、大した類型ではないのですが、医師は外来で診療するという前提で、他職種との連携パターンについて述べさせていただきます。
細かいことでは、1度だけ訪問診療を行うということも、非常に意味があることだと思います。もちろん通院困難という訪問診療の原則はあると思うのですが、どうしても気になった時に、1回訪問することもありかと思います。原則、訪問する前に、現在入っている他の職種の方に聞いてみるということが重要かと思います。
ここからは、基本的には医師は外来にいて、調剤薬局を使っている。ヘルパーさん位から利用を始めた、そんなイメージです。当然ですが、看護師さんが入っていれば比較的楽というか連携も取りやすいと思います。
ここはかなり多く議論されていると思うのですが、薬剤師の訪問というのはもちろん極めて重要です。ただ、薬剤師の先生も忙しい地域が多いと思います。どの様な患者さんで薬剤師の先生に行ってもらうかということが、いろいろな職種とか、ケアマネージャーさんと同じような景色が見えればいいのではないかと考えています。例えば、外来で想定外の残薬を認めたり、頻回に薬をなくす方には、私も外来ですと、自分で訪問に行きたいという気持ちは相当ありますが、いろいろな意味で行けないので、取りあえずケアマネージャーさんに連絡して、既に入っている職種の人に連絡をしてもらうようにしています。
例えば、独り暮らしの心不全の方を、外来で採血をしたり、体重を測ったりして診ていて、非常にひどくなったとします。入院するとせん妄になるため入院の敷居も高く、まずは利尿剤を増やしたりどうしてもしてしまうことがあります。医師が、家には行ったことがない前提で、薬剤師さんに訪問をしてもらったら、ベットの周りはスナック菓子であふれていた、などということを経験することがあります。別にスナック菓子を食べてもいいとは思うのですが、闇雲に利尿剤ではなく、そういう状況を把握した上での対応をする。そのために、薬剤師の先生からの情報が役立つ例です。
医師が外来で診療する際は、とにかく連携に尽きる。薬が飲めていないということに気付くのは、まずヘルパーさんだと思います。薬剤の管理法とか、生活背景を含めての情報は、訪問看護はもちろん、薬剤師の先生のお力が大きいと思います。栄養士さんや、リハビリの先生方も、当然、栄養や転倒予防などの意味で大きな役割があると思います。とにかく、医師が訪問診療を行う前段階での、他職種との連携が薬剤に関してを含んだ高齢者診療の鍵ではないかと考えています。
以上、私のお話は現在までの経験の中での、いろいろな問題意識を述べさせていただいただけでして大変恐縮でした。
はじめに外来ということでは、地域性もあると思うのですが、様々な疾患があり、様々な医療機関へかかられている方が増えていることに関連したお話をさせていただきました。また、患者さんがいろいろな医療機関を移行することで、とくに薬剤に関するエラーがありうるということを、我々の経験を踏まえてお話をさせていただきました。
在宅医療は非常に重要だと思っていますが、医師がどんどんやるということは難しいという前提で、医師が訪問診療を行う前段階に、ケアマネージャーや訪問看護はもちろん、ヘルパーさん、薬剤師の先生など他職種と連携して、患者さんの服薬や認知機能、転倒歴、嚥下機能などについて外来の医師が把握して診療に生かすということについて述べさせていただきました。
御清聴ありがとうございました。
○印南座長 ありがとうございました。ただいまの御説明に関し、御質問等がありましたらお願いいたします。
○美原構成員 質問というよりコメントです。前半で木村先生がおっしゃっていた、複数の主治医がいるというのはすごく大きな問題だと思います。我々の病院で入院した患者さん、減薬した患者さんがその後どうなっているだろうかというのをフォローしたデータがあります。私どもの病院に入院し、退院して、当院に通っている患者さんはそれになりに減ったままです。増える患者さんはいます。増えるのは、切った降圧剤がまた開始されたというのはしかたがないと思います。
他の病院に行った方を調べると結構増えているのです。そのときにそちらの先生に聞くと、先ほど先生がおっしゃったとおりです。「エビデンスに基づいて、この骨粗鬆症の薬は絶対に必要だ」と。あるいは、「なんで先生はこの薬を切っちゃったの。今まで患者さんとすごく良い人間関係ができていたのに、先生が切っちゃったから困るよね」というお話もありました。そうすると、今こちらの入院中にこれこれの理由で減らしましたよという情報提供をやっても、別の主治医に行ったら考え方が違ってしまうので、そこのところがうまくいかない。
何が言いたいのかと言うと、先生がおっしゃったように、確かに医療機関が変わったときに、情報共有というのはとても大きな要因ではあろうとは思うのですが、それだけではなかなか解決しきれないのではないか。そのときに問題になるのは、ポリファーマシーというようなものに対する共通認識がどうやって広がっていくかというようなことだろうと思いました。
あとは先生のお話で、様々な他職種というものが非常に大きな意味があるというのもとても重要な指摘だろうと思います。我々の病院は脳卒中の患者さんが多いものですから、この間ありました服薬支援というのか、実際に飲めないような方が在宅に戻ってきちんと飲めるようにするにはどうしたらいいか、というのも入院中の服薬に関する対応としてとても重要なポイントだと改めて思いました。
○木村参考人 ありがとうございます。
○印南座長 他に御意見、コメント等がありましたらお願いいたします。
○島田構成員 とても素晴らしい発表ありがとうございました。美原構成員のお話の中にありました、薬剤師の薬局の関わりというところですが、現在、地域ケア会議という所にも薬剤師が参画をして、情報を共有するという場面が徐々に増えてまいりました。そういうところについても、今は各地域で取り組んでいるというところをコメントとして付け加えます。
○城守構成員 非常にいろいろなことを考えさせていただけるような御発表をありがとうございました。先生のお話をお聞きしながら、先ほど先生もおっしゃっていましたけれども、特に最近はかかりつけ医が、服薬の管理をしっかりするということがよく言われます。診療報酬の算定要件でもそれが付いています。服薬の情報を正確に把握することの難しさというものを、改めて先生の御発表で感じさせていただきました。
各論の追補の中に、その部分というのはしっかりと書き込んでいただきたいと。それは、恐らく型があるわけではなくて、その人の周りの環境であるとか、医療環境も含めて、それぞれ場所によって違う、人によって違うということも含めて、その情報の収集がいかに大事かということ。これは入院においても、基本的には本日の昼に別の会議にも出たのですけれども、入院をしていたからといって、病院で全ての薬剤を管理できるかというとそうではなくて、持参薬の管理が極めて困難であるということ、それによる薬害も出ているという話をお聞きしました。
それぞれどういう形で情報を収集するかということ、そしてその施設において、どなたが基本的な管理をするのかということが極めて重要である。先生がおっしゃったように、その人が薬剤の服薬というものに対して、ポリファーマシーに関しての基本的な概念を共有するということはもちろんそうだろうと思うのです。主治医がたくさんいるというのは、個別の疾患的にはそうだと思うのですけれども、かかりつけというのは何も診療所の先生ということではなくて、病院に入院していても、昔は主治医、でも今はかかりつけ医という言葉に変わっています。そういう形での記載をお願いできたらという要望です。
○印南座長 他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、これで議題(2)を終了します。本日は、これで全ての議題を終了しますが、何か御発言等がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは事務局から連絡をお願いします。
○課長補佐 今後の予定としては、本日頂いた様々な御意見を踏まえて、資料1で配布しております骨子(案)について、題名については幾つか先生方から御提案頂いたものを現段階では併記する形で暫定的に記載させていただいたもので、ワーキングの主査の秋下先生の下で指針本体の作成作業を開始していただこうと思います。次回検討会の日時等については、後日日程調整の上改めて御連絡させていただきます。また、本日の議事録については後日送付させていただきますので、内容の御確認をお願いいたします。修正、御確認いただいた後は、厚生労働省のホームページに掲載いたしますのでよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○印南座長 それでは、これで閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
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