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第116回労働政策審議会安全衛生分科会(議事録)

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成30年8月23日(木)10:00~
 

○場所

厚生労働省省議室(中央合同庁舎第5号館9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
 

○出席者

委員(五十音順、敬称略)

       青木 健、明石 祐二、漆原 肇、勝野 圭司、熊崎 美枝子、栗林 正巳、袈裟丸 暢子、高田 礼子、土橋 律、
       中澤 善美、増田 将史、三柴 丈典、水田 勇司、水島 郁子、矢内 美雪、山口 直人 
 

事務局:
   椎葉 茂樹(安全衛生部長)
   久知良 俊二(計画課長)
   奥村 伸人(安全課長)
   神ノ田 昌博(労働衛生課長)
   小沼 宏治(産業保健支援室長)
   塚本 勝利(化学物質対策課長)
   西田 和史(環境改善室長)
   黒澤 朗(労働条件政策課長)
 

○議題

(1)働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律について
(2)労働者の心身の状況に関する情報の取扱いのあり方に関する検討会について(報告)
(3)健康増進法の一部を改正する法律について(報告)
(4)その他

○議事

 

○土橋分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第116回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。本日の出欠状況ですが、公益代表委員は城内委員、労働者代表委員は佐保委員、縄野委員、使用者代表委員は中村委員、最川委員が欠席されております。まず、事務局に異動があったということですので、御挨拶いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○久知良計画課長 7月31日付けで厚生労働省の異動がございました。その関係で、この分科会に関係するセクションの者も大勢異動しております。今回は出席している者についてのみ御紹介いたします。7月31日付けで、田中の後任の安全衛生部長として着任しました椎葉です。続いて、同日付けで井上の後任の安全課長で着任した奥村です。同日付けで、その奥村の後任の化学物質対策課長として着任した塚本です。同日付けで毛利の後任の産業保健支援室長で着任した小沼です。同日付けで藤枝の後任の労働条件政策課長として着任した黒澤です。以上です。
○土橋分科会長 それでは傍聴の方へのお願いですが、カメラ撮影等はここまでとさせていただきますので、御協力お願いいたします。
議題に入ります。議題(1)「働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律について」です。まずは事務局から資料の説明をお願いいたします。
○久知良計画課長 議題1について御説明いたします。働き方改革の法案については、前回の分科会で御説明しましたように、先の通常国会で成立し、安全衛生法の部分については、来年の4月1日から施行とされたところです。それを受けて、施行のための省令の作成をこれからやっていかなければいけないということです。本日は、その省令において定める内容について、御議論いただければと思っております。
省令で定める事項については、前回のときには昨年の要綱段階でお示しした省令として想定されている内容については簡単に御説明いたしました。その後、国会の審議等を受け、更に省令の内容を定めることで、付随的に定めなければならなくなる部分といったものもございますので、今回はそれも含めて御説明させていただきます。
資料No.1の2ページを御覧ください。左の「項目」の次に「条文、建議における記載など」ということで真ん中に欄がありますが、ここが建議での記載、それから先に成立した働き方改革の関連法の法律の条文を記載する欄ということになっています。一番右が、それを踏まえて今般省令において定める内容として考えられるものを整理しているということです。
1.の「産業医・産業保健機能の強化に関する事項」の1つ目の項目として、産業医の離任時の衛生委員会等への報告ということがあります。これについては建議の段階で、産業医の身分の安定性を担保するということ、職務の遂行の独立性・中立性を高めるという観点から、離任した場合に、事業者はその旨及びその理由を衛生委員会に報告することが適当だとされたところです。それを踏まえて、今般省令として、右に書いているように、「事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なくその旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならないものとする」ということを規定しようとするものです。
次の項目です。3ページの「産業医の知識・能力の維持向上について」です。この点については、建議の段階で産業医は、産業医学に関する知識・能力の維持向上に努めなければならないこととすることが適当だとされたところです。これを受けて、今般省令においては、「産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければならないものとする」という旨を規定するものです。この「健康管理等を行うために必要な医学に関する知識」といったような表現は、法律又は省令の別の所でも出ている表現ですので、同様の表現を使っているということです。
次の項目です。4ページの「産業医に対して提供する健康管理等に必要な情報等」ということです。産業医がしっかりと仕事ができるように、事業者が一定の情報について産業医に提供しなければならないという旨を建議において記載されたところです。建議の中では、それを2つの項目に分けて記載がされており、真ん中から少し下の部分で、1つ目としては、「産業医の選任が義務付けられている事業場については、事業者が異常等の所見のあった労働者に対して産業医等からの意見を勘案して就業上の措置を行った場合はその内容を、行わなかった場合は行わなかった旨とその理由を産業医に情報提供しなければならない」ということが適当だという部分です。それと、もう1つの部分は、下にあるように、「産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供することが適当である。この情報には「休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報」や「労働者の健康管理のために必要となる労働者の業務に関する情報」等が含まれるということとされたところです。
これを受けて、法律のレベルでの対応としては、そのページの上にあるように、今回の働き方改革の関連法案の中で、労働安全衛生法第13条の4項で、産業医を選任した事業者が、ここにある厚生労働省で定めるこの情報を産業医に提供しなければならないとされたところです。この規定については、その次の第13条の2の2項にあるように、産業医の選任義務がない事業場で労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせる医師等を選任した場合についても準用するところとされたところです。
具体的な内容を省令で定めるということにされていますので、建議を踏まえて、この右に書かれているように、マル1の部分が建議1.のアの(ア)という部分に対応する部分ですが、健康診断実施後の措置、長時間労働者に対する面接指導実施後の措置、ストレスチェックの結果に基づく面接指導実施後の措置又は講じようとするこれらの措置の内容に関する情報、これらの措置を講じない場合にあってはその旨及びその理由。これが情報の1つ目です。
2つ目です。これは休憩時間を除いて、1週間当たり40時間を超えて労働させた場合における超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報ということです。現状でもマル2の部分は省令の中に類似する規定として、1月当たり100時間を超えた労働者の氏名、労働者に係る当該超えた時間に関する情報というものが規定されているところですが、今回、面接指導の義務付けになる時間は資料の後半のほうで出てきますが、これを建議を踏まえて100時間超えから80時間超えに変更しようとしていますので、それを踏まえて、80時間を超えた段階での情報を提供するということとした上で、この情報提供の法律の規定の下での情報提供として整理したということです。それ以外で労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものを提供しなければならないとするものです。
その下にある部分については、建議段階では記載がなかった部分です。その後、働き方改革の法律の審議の過程において、国会での議論として出てきたことに対応するものです。もともと面接指導に関連して、現在100時間超えの場合に労働者の申出、今回は80時間超えの場合に労働者の申出というように改正を行おうとするものですが、この中で労働者の申出を前提にしたスキームですので、そもそも労働者が自分が80時間を超えたという事実を認識できないと、なかなかこのスキームというのは実効性が上がらないのではないかという指摘があったということです。そういうことを踏まえて、今回下にあるように、事業者は上記マル2の該当労働者ということで、超過勤務の部分が1月当たり80時間を超えた労働者に対して、速やかに当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報を通知しなければならないものとするという規定を盛り込もうとするものです。
続いて5ページです。これは産業医に対して提供する情報の提供方法ということで、建議について言えば記載はなかった部分ではありますが、情報の提供をするという規定を置くことに付随して、どのタイミングで情報を提供するかという部分について、「厚生労働省令で定めるところにより」というように法律で規定されているところで、タイミングについて規定するものです。マル1に書かれる情報ということで、健康診断実施後の措置、面接指導実施後の措置等については、医師からの意見聴取を行った後遅滞なく提供することを規定しようとするものです。マル2の労働時間等については、当該超えた時間の算定を行った後、速やかに、マル3については産業医から当該情報の提供を求められた後、速やかに提供するということを規定しようとするものです。
6ページを御覧ください。項目としては、「勧告時の事業者に対する意見の求め」ということです。昨年の建議において、産業医の勧告の関係で、産業医が勧告を行う場合にあっては、事前にその内容を示し、事業者から意見を求めることとするということと、あと産業医から勧告を受けた事業者は、その内容を衛生委員会に報告することとするということで、産業医の勧告が実質的に尊重されるようにしていくことが適当だと記載がなされたところです。このうち、事業者が、内容を衛生委員会に報告するという部分については、法律事項として、先ほど成立した法案の中に盛り込まれたところですが、この事前に事業者から意見を求めるという部分については省令事項として整理されているところです。したがって、右のように、「産業医は、労働者の健康管理等について必要な勧告をしようとするときは、あらかじめ当該勧告の内容について事業者の意見を求めるものとする」という規定を置こうとするものです。
7ページです。勧告を受けたときの勧告の内容の保存についてです。この点について建議の中では、産業医の勧告及び衛生委員会から事業者に対する意見並びにこれらを踏まえた事業者の措置の内容について、事業者が記録し、保存することとすることが適当だとされたところです。これを受けて、右のほうの欄に2つに分けて書いておりますが、上のほうが勧告についてです。「事業者は、労働者の健康管理等について必要な勧告を受けたときは、以下の事項を記録し、これを3年間保存しなければならない」ものとするもので、マル1は当該勧告の内容、マル2に当該勧告を踏まえて講じた措置の内容です。(措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)ということです。
下のほうが衛生委員会の部分です。この点については、現状でもマル2の委員会における議事で重要なものについては、従前から3年間保存しなければならないという義務の規定があったところですが、そこにこの建議の内容を踏まえて、マル1の委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容についても保存義務があるものとして加えるということをやろうとするものです。
続いて8ページです。これは、「勧告を受けたときの衛生委員会等への報告」の規定です。建議の中で先ほどと同じ部分を引用しておりますが、勧告を受けた事業者は、衛生委員会に内容を報告するということが記載され、それに基づいて、その下に先般の働き方改革法案の条文を引用しておりますが、この6項の部分において、事業者は、前項の勧告を受けたときは厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容、その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならないという規定が置かれたところです。前の部分の「厚生労働省令で定めるところにより」の部分は、タイミングを規定するもので、この上にあるように、この報告については当該勧告を受けた後、遅滞なく行うと規定しようとするものです。2つ目の省令で定める部分というのは内容の部分です。この部分の報告事項として、当該勧告の内容、それから当該勧告を踏まえて講じた措置の内容及び講じようとする措置の内容(措置を講じない場合にあってはその旨及びその理由)ということを規定しようとするものです。
9ページです。「産業医の権限の具体化」についてということです。現状の規定を少し説明しますと、産業医の職務の内容ということでは、安全衛生の規則の第14条において、この1から9の事項についてということで規定されているところです。この後に、こういう事項を産業医がしっかりとやっていくために、事業者は、産業医に必要な権限を与えなければいけないという規定があります。ただ、必要な権限を与えなければいけないということまでしか現状では書かれていないということで、建議においては、事業者が産業医に与える権限についてのより具体化・明確化ということが適当であるとされたところです。具体的に建議において例示されているのが、1つは情報収集、意見を言うこと、危機的緊急事態での指示をするといったようなことが例示されているところです。
右のほうですが、あくまでも建議の趣旨としても、これは例示でして、産業医の権限をここに限定するという意図ではないと考えておりますので、規定の仕方としても「産業医の権限には、次の事項に関する権限が含まれるものとする」ということで、このような権限は少なくとも含まれるということで、これ以外の権限を与えてはいけないという趣旨ではないということを明確にしているものです。マル1は、事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること、マル2が労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集すること、マル3に労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること。こういったことを規定しようとするものです。
続いて10ページです。これは「産業医による衛生委員会等に対する調査審議の求め」についてです。建議においては、衛生委員会において、その委員である産業医が労働者の健康管理の観点から必要な調査審議を求めることができることとすることが適当であるとされたところです。これを踏まえて、右にあるように、「産業医は、衛生委員会又は安全衛生委員会に対して労働者の健康管理の観点から必要な調査審議を求めることができるものとする」旨を規定しようとするものです。
11ページです。こちらは「産業医の業務内容等の周知事項」についてです。建議において、事業者は、産業医等への健康相談の利用方法、産業医の役割、事業場における健康情報の取扱方法について、各作業場の見やすい場所に掲示し、備え付ける。書面を労働者に交付する。または、磁気テープ、磁気ディスク等の方法でもって労働者に周知することが適当である。このようにされたところです。これを受けて法律上の対応としては、新しい101条の2という所で、産業医を選任した事業者はその事業場における産業医の業務の内容、その他の産業医の業務に関する事項で、厚生労働省令で定めるものを周知させなければならないとされたところです。実際には、この後の規定で、50人未満の産業医設置義務のない事業場における対応についても周知する努力義務を法律上置いているところです。
これを受けて、具体的に厚生労働省令で定める内容ということで周知する内容ですが、マル1に建議を踏まえた形で、事業場における産業医等の業務の具体的な内容、マル2が産業医等に対する健康相談の申出の方法、マル3で産業医等による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法ということです。「産業医等」と書いているのは、先ほど申し上げた50人未満の場合においても、この規定を準用することとされていることから、このような表現をしているということです。
続いて12ページです。先ほどと同じ規定ですが、この中で「厚生労働省令で定める方法により、周知させなければならない」という規定になっていて、その方法を省令で定めることとされているところです。これについては、建議に沿った形で常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。書面を労働者に交付すること。磁気テープ、磁気ディスク、その他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。イントラネット等を使って確認することも可能としているものです。この方法に関する規定については、労働安全衛生法の法令の周知の規定とか、衛生委員会の議事概要を周知するときの規定についても、同様の方法で規定されていますので、それに倣った形で規定しているものです。
13ページです。「指針の公表の方法」ということで、今般、法律で新しく心身の状態に関する情報の取扱いについての基本的な規定が置かれたものです。その3項で、「厚生労働大臣は、前2項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を公表するものとする」とされたところです。これを受けて、指針を公表するという規定を置いたときには、労働安全衛生法の体系の中では、省令でどのように公表するかをこれまでも規定してきたところですので、今般もそれに倣って、右のように「当該指針の名称及び趣旨を官報に掲載するとともに、当該指針を厚生労働省労働基準局及び都道府県労働局において閲覧に供する」ことにより行うことを規定しようとするものです。また、この情報取扱いの規定については、じん肺法についても並びで改正の規定を置いていますので、じん肺法の公表についても同様の規定を置くということとするものです。
14ページです。こちらは面接指導の部分です。こちらについては、1つ目が、医師による面接指導の対象となる労働者の要件ということで、昨年の労働条件分科会の建議の中で、現在長時間労働に対する健康確保措置としての面接指導について、現行では40時間超えの部分が100時間を超えた者から申出があった場合に義務とすることとしておりますが、この時間数を定めている省例を改正して、1か月当たり80時間超とすることが適当であるとされたところです。したがって、この100時間の部分を80時間というように改正する、建議のとおりに改正しようとするものです。2つ目に、研究開発業務従事者に対する医師による面接指導ということで、これは先の法律の改正で新たに設けられた規制です。労働時間の上限規制の適用除外となる研究開発業務従事者に対する面接指導については、この労働条件分科会の建議にあるように、健康確保措置として、より強力な措置ということで、1か月当たり100時間を超えた者に対して、これは申出を前提とせずに、医師による面接指導の実施を義務付けることが適当であるとされたところです。規定のほうは紹介しておりませんが、この違反に対しては罰則も適用されるというような規定になっているところです。こちらについても厚生労働省令において、時間を定める必要があるということで、66条の2の8の「厚生労働省令で定める時間」という部分に対応するものとして、100時間を超えた者という時間を規定しようとするものです。この点についても建議のとおりに規定しようとするものです。
15ページです。「労働時間の状況の把握方法等」です。これも労働条件分科会の建議の中で、労働時間の客観的な把握ということで、管理監督者を含む全ての労働者を対象として、労働時間の把握について客観的な方法、その他適切な方法によらなければならないという旨を、省令に規定することが適当であるということ。それから、その客観的な方法その他適切な方法の具体的内容については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を参考に通達において明確化することが適当であるとなったところです。
この後、国会提出前の与党の審査の過程において、この66条の8の3という規定を置くこととなり、法律の中で、労働時間の状況を把握しなければならないという根拠規定が置かれたということです。その上で、「その方法については厚生労働省令で定める方法により」ということで規定されたということです。この方法を定める厚生労働省令について、この建議の「客観的な方法その他適切な方法によらなければならない旨を省令に規定する」という部分に対応して、右にあるように、労働時間の状況の把握方法はタイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算器の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とすることを規定しようとするものです。ここに付随して、マル1の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならないということを規定しようとするものです。私からの説明は以上です。
○土橋分科会長 ただ今、事務局より説明頂きました内容につきまして質問等、発言のある方は挙手をお願いします。
○増田委員 全体を通じまして、遅滞なくという用語と速やかにという用語が出てきますが、どの程度の期間と認識したらよろしいでしょうか。過去の指針等に準じて、遅滞なくというのは概ね1か月以内とか、そういう理解でよろしいでしょうか。
○久知良計画課長 お答え申し上げます。過去、労働安全衛生法の体系の中で使われているものに倣っておりますので、遅滞なくといった場合は概ね1か月ということです、速やかにという場合は概ね2週間ということで想定されるということです。
○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。
○青木委員 一点確認です。資料4ページ、条文の第13条4項のところに、「労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報」とあります。この前半部分、「労働者の労働時間に関する情報」というのは恐らく、右側の省令において定める内容のマル2に該当するのだろうと思います。
また、後半部分の「その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報」というのが恐らく右側で言うとマル3にリンクをしているのではないかと思います。このマル3の中にある「産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの」というのは具体的にどういうものを想定されているのかを教えていただければと思います。
○久知良計画課長 今の点、まず、法律の条文上の説明から申し上げますと、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うためにするような情報という書き方の場合には、一応、労働者の労働時間に関する情報というものも産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報に含まれるという位置付けになりますので、基本的にマル1マル2マル3ともに産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報という位置付けになっているということです。
その上で、マル1マル2については建議に基づいて具体的なところを指定させていただいたところです。マル3の部分には、もちろんマル1マル2だけで十分な仕事ができるわけではないだろうということで、建議の段階でもその他、いわゆるバスケットクローズ的な考え方で記載されていると思っております。私どもとしても、ここに何が含まれるかということについて、まだ詰めた形で整理をしているわけではございません。これは施行までにしっかりと整理をしていきたいと思っております。
○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。
○明石委員 4ページの一番下、通知の件です。一つは何をもって通知とするのか、それからこれは時間外労働80時間を超えた方のみでいいのか。管理監督者は含めるのか、その場合、管理監督者も80時間で切るのか、御説明をお願いします。
○久知良計画課長 お答え申し上げます。何をもって通知するかという具体的なやり方といったことの御質問だと思います。本件についてまだ、具体的にやり方を念頭に置いて、このやり方でなければ駄目であるというものが今、頭の中にあるわけではございません。施行に向け、できるだけ現場に混乱を生じないようなやり方でやっていきたいと思っております。80時間超えの者について通知するということかという点については、御指摘のとおりでございます。
管理監督者についても含むのかということについて申し上げますと、面接指導の対象自体が管理監督者も含んだ形になっておりますので、その前提としての労働時間の通知ということですので管理監督者についても含まれるというように整理をしているところです。
○土橋分科会長 よろしいでしょうか、ほかにいかがでしょうか。
○袈裟丸委員 5ページになります、2点質問させてください。健康診断の結果についての医師「等」、それから面接指導の結果についての医師「等」とあります。恐らく、50人未満の事業場への対応を想定されているのかなと思うのですが、具体的に「等」とはどのような方々を指しているのかということが1つです。
2つ目が今回、参議院の附帯決議の中で産業医・産業保健機能の強化に関して検討を行い、必要な措置や支援を行うこととすることが盛り込まれたと認識しております。今後、どのような対応をされていくかということをお伺いしたいと思います。
○久知良計画課長 前半の部分、何ページでしょうか。
○袈裟丸委員 5ページです。
○久知良計画課長 はい、医師等と右の欄でなっているところにつきましては、健康診断の結果についての医師等からの意見聴取や面接指導の結果についての医師等からの意見聴取につきましては、もちろん産業医ですとか外部の医師、そこまでは医師なわけですが、一定の特殊健康診断等の場合、歯科医師からの意見聴取をするという場合があるということですので、一応医師以外の者として歯科医師からの意見聴取の場合があり得るということで、このようなことを記載させていただいているということです。
○神ノ田労働衛生課長 後段、産業保健機能の強化を図るための検討について回答申し上げます。これにつきまして、現在、産業保健総合支援センター等で様々な研修をやったり訪問指導をしたり、あるいは助成金を出したりというような形でその事業場での取組について支援を行ってきております。今年度につきまして、全国47都道府県に1人ずつ保健師を配置して、その機能を強化しております。また、まだ概算要求の発表前ではありますが、来年度、この予算については拡充を図っていきたいと考えております。そういった中で、今回の法改正を受けた産業保健機能の強化についてもしっかりと対応できるよう、様々な支援・対策を検討していきたいと思っております。
○土橋分科会長 ほかはいかがでしょうか。
○中澤委員 14ページ、医師による面接指導の対象となる研究開発業務従事者に対する医師による面接指導に関してですが、労働者側のほうが従わなかった場合、使用者側のほうの責任はどうなのか。もう1つ、面接指導を勧奨した事業者の行為はどのような形で担保されるべきだとお考えでしょうか。
○神ノ田労働衛生課長 この研究開発業務従事者に対する面接指導については、従事者側にも面接指導を受ける義務が係っております。事業者側の対応としては、例えば面接指導を受けやすいような配慮をする。なるべく従業員が受けやすいような時間にそれをセットするとか、そういった形での配慮がしっかりとなされていれば、仮に従事者が義務が係っているのにもかかわらず面接指導を受けなかった、というようなことがあったとしても、事業者の責任が問われることは、ないと言い切れるかどうかはあれですが、そこはプロセスのところでしっかりとした対応をしていただければ、それほど大きな問題にはならないのではないかということが考えられます。ただ、そのプロセスについては、しっかりと、こういうようなことで指導しましたということを記録として残して頂くという対応が必要になってくるかと思います。
○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。
○漆原委員 先ほどの労働側の委員の質問にも関連するのですが、今回の省令改正については、参議院の附帯決議の安全衛生部分で一部入っていないものがあると思っております。具体的には、労働者の休養ですとか清潔保持等の職場の改善があったと思いますが、それは政省令等ということになったかと思うのですがどのような扱いになっているのか。
また、参議院の附帯決議の中に、例えば働き方改革推進支援センターとの連携による小規模事業場への支援など、各種支援策があったと思っております。そうした支援策は、政省令に反映するところではないのかもしれませんが、今後どのように実現されていくのかということについて現段階で分かることがありましたらお教え頂ければと思います。
○神ノ田労働衛生課長 まず1点目の件、事務所の休養や清潔保持のための措置の関係についてお答えします。これについては、前回のこの分科会でもこういった附帯決議が付いたことを御報告し、またこの場で御意見があればということをお諮りしたところです。もし、この場で、こういった形で対応すべきだというお話があればお伺いしたいと思っておりますし、それをしっかりと受け止めた上で検討を進めていきたいと思っています。
また別途、今後、これに関する事務所の清潔保持等に関する調査も検討しているところです。その調査結果がまとまった段階で、もし事務所則等を改正する必要があるということであれば、また、この場にお諮りをして検討したいと思います。また、そこまで行かないという場合もあると思います。その場合は指針で対応するということも可能かと思いますので、そういったことも含めて今後検討していきたいと思っております。
○小沼産業保健支援室長 後段の部分、働き方改革支援センターとの連携につきましては、まず私どもの産業保健総合支援センターの周知などを、支援センターを通じてしっかりやるということと、先ほど説明がありましたように保健師を常勤で配置しておりますので、そういった方で、従来にも比べていろいろ御相談にも応じられるということを、中小企業の方にもよく周知をしていき、しっかりと支援に取り組んでいきたいと思っております。
○土橋分科会長 よろしいでしょうか、ほかにいかがでしょうか。
○中澤委員 今回の省令の内容そのものではないのですが、省令というのは法律を補完するものという理解をしております。この場合、法律に委任の規定が当然あると理解いたします。今般のケースでは、法律を根拠としているところ、法律と建議を根拠としているところ、建議だけを省令制定の根拠としているところがあります。建議だけを根拠に省令を定めるというのは、ルール的には成り立つものなのかどうかをお伺いしたいと思います。
○久知良計画課長 お答え申し上げます。法律と省令の関係として、もちろん省令で個別に法律の委任規定があって省令を置く、という省令で規定するケースするというものがあります。安全衛生法の体系の中でも幾つもございます。
もう1つはもともと大臣の権限として、国家行政組織法の中で、法律を施行するために必要な細則を省令で定めるという権限がございます。したがいまして、その権限に基づいて省令を定める際に建議等、審議会での議論を尊重して、その内容に基づいて国家行政組織法の権限に基づいて大臣が省令で定めるという、法律的な構成としてはそういうことで許されたことだと理解しております。
○土橋分科会長 ほかはいかがでしょうか。
○三柴委員 一点だけお尋ねさせてください。3ページ目の、産業医が身に付けるべき知識・能力についての部分で、労働者の健康管理等を行うために必要な医学というものの意味内容なのですが、これについては割と広く考えていいのか、それとも医学ということで限定的に捉えるべきなのかということについて、もし御存念があれば、今お答え頂かなくてもいいのですが教えていただきたいなと。というのは、産業医の場合は実践的な経営学や法律学とか、そういったものも知識・能力として必要になってくると考えられますので、その点について御存念があれば教えていただけますか。
○久知良計画課長 もともと、この表現というのは産業医が受ける研修、産業医の資格を取得するために受講するための研修等の規定と同じものを使っておるところです。範囲については、その範囲のことを念頭に置いて規定しているというように基本的には考えているわけです。要するに、どのような能力が必要であるかという部分については時代の変化等によって変わってくる部分もあろうかと思いますし、その点について研修等の内容等を適宜見直すことによって対応する部分も、当然必要になってくるだろうと行政側の対応としては思っているところです。法律の規定の意味合いとしては、従来の規定をそのまま引っ張ってきているということで、従来と同じものを意味しているということです。
○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。
○明石委員 今回の改正のところで、ずっと懸念が抜けないのが産業医の健康相談というところです。安衛則の産業医の職務に書かれているのは理解するのですが、実際、月に1回来られる嘱託産業医に、この健康相談を余り大きくクローズアップされると従来業務に支障を来すのではないかと思っています。現状の事業場の中で、健康相談と名前も広いですし、相談事なので、実際なかなか外に漏れてこないということもあります。少し健康相談を整理していただいて、事業場にいかにうまく取り入れられるのか、特に嘱託産業医にどうやって取り入れればよいのか、また検討していただければと思っています。
もう1つ、勧告の件ですが、今もあるのは十分存じているのですが、今回、9ページで産業医は事業者等に意見ができるということが、産業医の権限に含まれているということが書かれてあります。これは、まず意見在りきなのですか、意見と勧告のレベル感みたいなものはあるのでしょうか。
○神ノ田労働衛生課長 意見よりも勧告のほうが重たいということで理解しております。勧告の前提として、やはり日ごろから産業医と事業者が密にコミュニケーションを取って、そういった中で処理をしていくということがベースにあって、それでもなかなか労働者の健康を確保できないという事態があった時に初めて勧告を打つ。ただ、勧告を打つ場合には、その勧告の内容について予め事業者の意見を聞いた上で、またそこもしっかりコミュニケーションを取ってください。そういう形で今回手続が整理されましたので、そういった段階を踏んで勧告をしてくださいということです。
相談のところがちょっとよく分からなかったのですが、あれですか、嘱託産業医だとなかなか相談をする時間を取れないのではないかとか、そういうようなことでしょうか。
○明石委員 今回、健康相談がかなりクローズアップされています。事業場に来て、それだけしかやらないと、事業者が嘱託産業医にやっていただきたいことができずに終わってしまう可能性があるのではないか。その辺りを懸念をしています。
○神ノ田労働衛生課長 今回の法改正で産業医の機能強化が正に図られたわけでして、仕事が増えたということは御指摘のとおりだと思います。ですから、これまでどおり月に1回顔を出すだけでいいのかどうか。もっと産業医にお願いしなければいけないことがあるのであれば、月に1回に限らず、別途相談の日を設けていただくとか、これは努力義務ということになりますので、そういった形で従業員が産業医にいろいろ相談できるような機会を確保するように努めていただきたい。そのようなことで取組を進めていただければと思っております。
○明石委員 意図は分かるのです。そうであれば13次防にも書いていただいたように、産業医の量と質と偏在というところを解消していただかないと、なかなかスムーズに行くものでもないと思います。健康相談なので、自分に問題があると感じた方は別に産業医ではなくて専門医とか、町のお医者さんに行っていただいてもいいのではないか。どこで切り分けるのかというのはいろいろ難しいところがあると思いますが、そのあたりも考慮していただきたい。
○神ノ田労働衛生課長 産業医を急に増やすことはできませんので、今検討しているのは産業保健チームとして取り組むようなことを別途、検討会を設けて検討を進めているところです。全て産業医がやるということではなく、例えば産業保健師さんなど、いろいろな職種がいますので、そういった職種の力も借りながらチームとして産業保健を回していく。そういうようなことも今後検討していきたいと思っております。ただ、人が足りないからやるべきことがやれないというようなことではいけないと思いますので、やらなければいけないことはやれるような体制整備を、今後行政としてもしっかりとできるような形の体制に持っていけるように取り組んでいきたいと思っております。
○山口委員 今の議論にも関係すると思います。先ほど、長時間労働で医師の面接指導を受けたがらない労働者がいるということでした。恐らく、現場から聞こえてくる声の中にはいろいろなところの事業所に出かけていて忙しい、その中で片道1時間も掛けて面接指導に行ったら血圧を測るだけでおしまいみたいな、そういう実効性のある面接指導を受けられないというような労働者の方の不満というか意見というか、そういうようなこともあるように聞いています。実効性のある面接指導というものは何なのか、そういうようなあたりのガイドラインとか、そういうようなことをより充実させていただいて、産業医はこういうようなことをやるべきなのだということを、なお一層周知というか、教育・指導も含めてやっていただく必要があるのではないかと考えます。
○神ノ田労働衛生課長 ありがとうございます。一応、面接指導のマニュアルは作ってはいるのですが、国会の場でも「それでは足りない」という御指摘を受けています。もうちょっとエビデンス・ベーストのものを作ることができないかということで、今、研究班に検討をお願いしているところです。御指摘を踏まえてしっかりと対応していきたいと思います。
○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、次の議題に移ります。議題(2)ですが、労働者の心身の状況に関する情報の取扱いの在り方に関する検討会について、まずは事務局から説明をお願いいたします。
○神ノ田労働衛生課長 それでは、御説明いたします。資料No.2を御用意ください。1ページに書いておりますように、6回にわたって検討会を開催し、指針(案)を取りまとめていただいています。おめくりいただいて別添1がこの検討会の開催要綱、別添2が検討会の参集者名簿ということで、山口委員に座長を務めていただいております。別添3が指針(案)で、これに沿って説明をいたします。説明時間は10分程度ということですので、ポイントのみの説明となることを御了承いただければと思います。
まず、1ページの趣旨・総論についてです。今回の指針が定められた背景等についてまとめてあります。労働者の心身の状態に関する情報については、個人情報の保護に関する法律に規定する要配慮個人情報に該当する機微な情報であるということであり、基本的に関係法令に則った上で、心身の状態の情報が適切に取り扱われることが必要であるということです。したがって事業者については、中ほどに書いていますけれども、取扱規程を策定して当該取扱いの明確化をしていただく必要があります。そのための指針ということで今回、労働安全衛生法あるいはじん肺法に基づいて指針が公表されるということです。指針においては、心身の状態の情報の取扱いに関する原則を明らかにしつつ、事業者が策定すべき取扱規程の内容、策定の方法、運用等について定めるとしております。
2番の取扱いに関する原則についてですが、(1)が情報を取り扱う目的です。この目的は、労働者の健康確保のための措置の実施、2ページに民事上の安全配慮義務の履行ということで、そのために必要な心身の状態の情報を適正に収集し、活用する必要があるということです。個人情報ということで、配慮する余りこういった安全配慮義務ができないということがあってはなりませんので、まずはこの情報をしっかり活用して、安全配慮義務についてはしっかりと履行していただくことが前提ということになります。
次の段落ですが、一方、労働者の個人情報を保護する観点から、扱える場合については一定の制限が掛かってくるということで、ここに記載しているとおり法令に基づく場合とか、本人が同意している場合のほか、労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって本人の同意を得ることが困難であるとき等というような制限がありますので、上記の目的に則して、適正に取り扱われる必要があるという説明を加えております。
(2)の取扱規程を定める目的ですが、心身の状態の情報が今申し上げたような目的の範囲内で適正に使用されて、労働者の健康確保措置が十全に行われるようにするために、取扱規程を定めて労使で共有することが必要であるということです。
(3)の取扱規程に定めるべき事項は、細かいので説明は省きますけれども、マル1からマル9に書いている事項について盛り込んでいただくということです。
(4)の取扱規程の策定の方法です。策定に当たっては衛生委員会等を活用して労使関与の下で検討をし、策定したものを労働者と共有することが必要としております。取扱規程の共有のやり方についてですが、就業規則その他の社内規程等によって定めて、当該文書を常時作業場の見やすい場所に掲示する、備え付ける、イントラネットに掲載するといった方法で労働者に周知するということが考えられるとしています。
衛生委員会と申し上げましたけれども、設置義務のない小規模のところをどうするかということですが、3ページ、小規模事業場については労働安全規則第23条の2に、関係労働者の意見を聞く機会を設けるという規定があります。そういった機会を活用する等によって、労働者の意見を聞いた上で策定をしてほしいということを記載しています。
その下の段落の「また」以下ですが、検討又は策定する単位について記載しております。基本は事業場単位ということですけれども、企業単位とすることも考えられるという記載です。
(5)の適正な取扱いのための体制の整備についてですが、1行目の所に書いてあるのは、情報を適切に管理するための組織面、技術面等での措置を講ずることが必要ということです。
次の段落で(9)という所がありますので、まずそこを説明いたします。4ページの(9)は、関係法令の整理を踏まえて情報を3つに分類し、その3つについてそれぞれの情報の取扱いの原則を表の形で整理をしたものです。マル1は、労働安全衛生法令に基づき事業者が直接取り扱うこととされている情報です。例としては右の欄にありますように、健康診断の受診・未受診の情報、長時間労働者による面接指導の申出の有無等々とありまして、これは事業者が直接取り扱うことが法令上求められているものです。
その取扱いの原則が右の欄にありますが、事業者等が全ての情報をその取扱いの目的の達成に必要な範囲を踏まえて、取り扱う必要があるとしています。ただし、それらに付随する健康診断の結果等の心身の状態の情報については、これから説明するマル2の取扱いの原則に従って取り扱う必要があるということです。
マル2ですが、こちらは労働安全衛生法令に基づき事業者が労働者本人の同意を得ずに収集することが可能という情報です。例としては、健康診断の結果、これは法定項目に限られますけれども、法定項目については同意を得ずに収集することは可能ということです。同様に、健康診断の再検査の結果、長時間労働者に対する面接指導の結果、こういったものは同意なしに収集できるわけです。
隣の欄の取扱いの原則ですが、事業者等は、当該情報の取扱いの目的の達成に必要な範囲を踏まえて取り扱うことが必要であって、そのため、事業場の状況に応じて情報を取り扱う者を制限するとか、情報を加工するといった方法で、適切な取扱いを取扱規程に定めるということを求めております。下のほうに記載しているとおり、労働者の納得性を高める措置を講じた上で、取扱規程を運用する必要があるというものです。
マル3は、労働安全衛生法令において事業者が直接取り扱うことについて規定されていないものです。例としては、法定外項目の健康診断の結果とか、保健指導の結果、健康診断の再検査の結果等が挙げられます。こういったものについて取扱いの原則としては、個人情報の保護に関する法律に基づく適切な取扱いを確保するため、事業場ごとの取扱規程に則った対応を講じる必要があるということで、3段階に分けた整理を(9)の所でしています。
3ページの(5)に戻ります。先ほど説明した(9)の所で、情報の加工というのが出てまいりました。全ての事業場で加工するというのは難しいのではないかという議論がありまして、加工については主に医療職種を配置している事業場での実施を想定しているとしております。また、健康診断の結果等の記録については、健康診断を実施した医療機関等と連携して加工や保存をしてもらうことも考えられるということですが、その場合にあっても必要な情報については事業者が把握し得る状態に置く必要があるとしています。
(6)の本人の同意の取得ですが、これもマル1からマル3に分けて整理しております。マル3については、労働者本人の同意を得なければならないというものです。マル1マル2は、同意を得なくても収集することができる情報ということですが、その場合にあっても取り扱う目的及び取扱方法等について、労働者に周知した上で収集することが必要だということです。さらに、マル2については取り扱う目的、取扱方法等について労働者の十分な理解を得ることが望ましい。例えば、健康診断の事業者等からの受診案内等にあらかじめ記載する等の方法により、労働者に通知することが考えられるとしております。
(7)の取扱規程の運用についてですが、取扱規程については関係者にしっかり教育をして、その運用が適切に行われるようにするということと、適宜、運用状況を確認し、取扱規程の見直し等の措置を行うことが必要であるとしています。また、運用が適切に行われていないことが明らかになった場合の対応ですが、その場合には労働者にその旨を説明するとともに、再発防止に取り組むことが必要としております。
(8)は不利益な取扱いの防止です。4ページに不利益な取扱いの例示としてマル1からマル3ということで挙げております。マル1は、就業上の措置の実施に当たって健康診断後に医師の意見を聴取する等の法令上求められる適切な手順に従わないなどの不利益な取扱いを行うということ。マル2については、就業上の措置の実施に当たって医師の意見は聞いたのだけれども、それと著しく異なるようなことをする等、法令上求められる要件を満たさない内容の不利益な取扱いです。マル3は、情報の取扱いに労働者が同意しないということとか、あるいは心身の状態の情報の内容を理由として、(a)から(e)に挙げるような、例えば解雇や契約の更新をしないとか、退職勧奨を行う等といったような不利益な取扱いをすることを禁ずるということです。
(9)は、先ほど御説明したとおりです。6ページの(10)の小規模事業場における取扱いですが、検討会の場でも小規模事業場では産業保健業務従事者の配置が十分でないといったことで、対応がなかなか難しいというようなことが議論されました。ただ、体制を整備することが困難な場合にも、事業場の体制に応じて合理的な措置を講ずる必要があるということです。
下に具体的なところを書いていますけれども、マル2に該当する心身の状態の情報の取扱いについては、衛生推進者を選任している場合は衛生推進者に取り扱わせる方法ということが考えられますし、そういった衛生推進者もいないという場合には、取扱規程に基づいて適切に取り扱うことを条件として、事業者自らが直接取り扱う方法も考えられるとしております。
7ページの3番の心身の状態の情報の適正管理についてです。適正管理のための規程についてですが、事業者が講ずべき措置として、マル1からマル3のようなものをお示ししております。マル1がこの情報を必要な範囲において正確・最新に保つための措置、マル2が情報の漏えい、減失、改ざん等の防止のための措置、マル3が保管の必要がなくなった情報の適切な消去等ということです。こういった適正管理をしなければいけないということで、これについても事業場ごとに取扱規程に定める必要があるとしています。この適正管理については、その運用の一部又は全部を本社事業場において一括して行うということも考えられるとしております。
(2)の情報の開示等についてです。情報の開示や必要な訂正、使用停止等が事業者に請求される場合があり、こういった場合には適切に対応する必要があるということです。(3)の小規模事業場における留意事項ですが、これもやはり小規模事業場においては適正管理がなかなか難しいということですけれども、個人情報保護委員会でガイドラインを示していて、その中で中小規模事業者用の管理手法が例示されております。そういったものも参照しつつ、円滑にその義務を履行し得るような手法を採ってもらうということが適当としています。
4番の所は定義で、難しい用語についてマル1からマル7まで解説を加えています。以上です。
○土橋分科会長 報告ということですが、質問等発言のある方は挙手をお願いします。増田委員。
○増田委員 先ほど健康相談についての話が出ていたかと思いますが、健康相談については、この指針案では、6ページの(9)のマル3の(e)の所に示されています。マル3、いわゆる法定外項目となりますので、ここの記載に基づきますと、「収集する段階で事前に本人の同意を得ることが必要」となっています。これでいきますと、健康相談の対応をするときに、まず同意を取らないといけないという、おかしな対応になるのではないかと思いますが、妥当かどうか御意見をお聞かせいただければと思います。
○神ノ田労働衛生課長 産業医等が健康相談に応じる場合については、向こうはいろいろと相談してきているわけですので、それについての同意は必要ないと思います。ただ、同意が必要というのは、事業者に相談内容を渡すとか、そういうことを行うのであれば、これは同意が必要ですということです。ですから、この相談の場でいろいろと体調について話したことが事業者に筒抜けになる、あるいは人事担当者に筒抜けになるということがないような配慮が必要だと。報告する必要がある場合にはしっかりと本人の同意を取ってほしいということです。
○増田委員 もちろん、そういう趣旨だとは思うのですが、ただ、健康相談というのは、往々にして、その内容に応じて、例えば、上司には伝えてよいけれど人事には伝えてほしくないとか、あるいは、産業医には伝えてよいけれども会社人事には言ってほしくないとか、相談内容に応じて提供、共有していい範囲は個々の事案毎に変わるはずです。それを、ここにありますように、事前に同意を得て決めるというのは、運用上無理があるのではないかと思いました。なぜそういったことが懸念されるかと言いますと、2の(6)の本人同意の取得の所に、マル3の同意の取得については、個人情報保護法の規定に基づいて「労働者本人の同意を得なければならない」としか書かれていないのです。これは、指針がそこまで具体的なものを示さないという前提で議論をしてきましたのでそれでいいとは思うのですが、にもかかわらず、このマル3の一番左側の欄で少し具体的に書きすぎてしまっているからこのようなことが起きるのではないかと感じます。したがいまして、ここの「収集する段階で事前に」ではなくて、「収集する段階で、適宜本人の同意を得ることが必要」というような書きぶりにしないと、この種の混乱は後々残ってくるかと思いますし、この後作る予定の手引やマニュアルにも影響を及ぼしてくるのではないかということを懸念しますので、少し修正していただいたらいいのではないかと思います。
○神ノ田労働衛生課長 これは、事業者が収集する段階ということですので、事業者が収集する際に、本人の同意が得られていないというのはやはり問題だと思うのです。ですから、どの範囲を共有していいかどうか、相談の内容について対応するためには、場合によっては、事業者とちゃんと相談しながらやらなければいけないということも確かにあると思うのです。そういうことだとすれば、これは事業者に報告するよということについて同意を取り、その同意に基づいて、ここでは事業者が収集すると書いておりますが、事業者に報告をするという段取りになるかと思います。
○増田委員 課長は、先ほどから産業医が収集した情報という前提でお話しされているのですが、健康相談というのは、実は産業医だけではなくて、直接、会社の人事にも持ち掛けてくることがあるものだと思いますし、ここは、産業医が収集した情報に限定して書かれていないと思いますので、そういった形の場合については、やはり齟齬が出てくるのではないかと思います。
それと、会社に言ってきた時点で同意が得られていないのは問題だというのもそのとおりなのですが、実はその点について、第6回の検討会で申し上げて、そこまでは書かなくていいという意見で、結局来てしまったのですが、見返してみますと、運用に落とし込んだときに現場の混乱を来しかねないのではないかとやはり懸念されます。それで少し見直しが必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○土橋分科会長 三柴委員どうぞ。
○神ノ田労働衛生課長 よろしいですか、ではちょっと一言。健康相談、そうですね、人事担当者が健康相談に応じる場合については、労働者本人が人事労務担当者に相談を持ち掛けているという前提だと思いますので、相談を持ち掛けているということをもって同意が得られていると。ここで同意が必要というのは第三者です。相談に対応した人以外の人にその相談内容を報告するとか、伝えるという場合には、それはしっかりと本人に、どういった人に伝えていいかということを同意を取ってください、そういう整理。ちょっと分かりにくいと思いますので、そこは整理したいと思います。
○増田委員 もう1点です。おっしゃるとおり、検討会で議論をしてきた人間だとそのように読めるのですが、これを初めて見た人にとっては絶対分からないと思いますので、追記が必要かと思っております。
○神ノ田労働衛生課長 施行までに、もう少し詳細な手引きを作りたいと思っています。すみません、三柴先生、遮ってしまいました。
○三柴委員 私は、このままの表現でも読み込みはできると思うのですが、今、議論がまとまったように、少し書き換えるなり、ここでの議論を反映するルールなどで分かりやすく詳細を示してもいいかと思います。結論はそうなのですが、要するに、同意という表現の意味内容は幾つかあって、一番丁寧な同意の取り方は個別の同意ですが、そこまでしなくても、包括同意とか一般同意と言いますが、就業規則などで一般的に同意を書いておくとか、それから、一定の言動を捉えて、こういう場合にはもう同意を取ったものとみていいだろうと、みなしていいだろうという場合のみなし、擬制と言いますが、そういう方法と、大きく3種類あって、ここで言う同意について、どういう読み方をするかは適宜適切に解釈するということであれば、別にこれは変えなくてもいいのだと思うのです。要は、本人が自発的に産業保健スタッフなり人事部員なりに相談を持ち掛けたということであれば、これは擬制で、みなしでいける、それも同意があったと考えられる、解釈できるわけですからいいのでしょうし、そういう意味で、同意の読み方によって今のお話は包括できると思うのです。
ただ1点、産業医なり保健師、看護師なり、法律上、その身分に応じて守秘義務がかかった方にお話をした内容については、これは事業者に話をしたのと同じに取っていいのか。先ほど、神ノ田課長から、これは事業者の情報の取扱いについて表にしたものだという御説明がありましたが、要するに、事業者が選任する法令上守秘義務のかかった方々に対して情報を提供するということも事業者への情報提供と見ていいのか、それとも別の者への提供なのかという点については、どこかの段階でちょっと整理をしていただいてもいいのかなとは思います。以上です。
○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。
○明石委員 今の件で1つ聞きたいのは、人事に相談するイコール同意ではないのですか。
○神ノ田労働衛生課長 そうです、そういう理解でいます。人事担当者に相談がありますということで相談をしたということであれば、もうそれは同意が取られている。
○明石委員 分かりました。それと、ここの(h)治療と仕事の両立支援等のための医師の意見書と(i)通院状況等疾病管理のための情報に、少し疑問があります。両立支援を求めるためには当然、医師の意見書を持ってくると思うのですが、もうその段階で同意をしたということと同じではないですか、申出をするということは。事前に、これは事業者としては同意を取ることはなかなか難しい。それから、(i)は、これは(h)を受けた(i)なのか、独立の(i)なのかちょっとよく分かりません。(h)を受けた(i)であれば、(i)はもう必要がないと思うのですが、独立の(i)であれば、これは通院等の管理まで事業者がやることになるのですか。
○神ノ田労働衛生課長 両立支援をする際に、あれですね、労働者側の申出が起点になるということですので、労働者が医師の意見書を持って両立支援についての支援をお願いしたいということで会社に申し出た時点で、それは、その意見書の内容について事業者が持つことについては同意が得られているということかと思います。ただその後、まだちょっと意見書に書かれていないことで確認しなければいけないようなことを、会社とまた医療機関の間でやり取りが発生するかと思うのですが、直接病院に問い合わせる場合には、同意は必要になってくるかと思います。全て、本人経由でやり取りするのはなかなか難しいかと思いますので。
○明石委員 それであれば、ちょっと時間のずれがあると思うのです。それは要は、申し出た後の話ですよね。
○神ノ田労働衛生課長 はい。
○明石委員 であれば、そのときに同意を取ることがあるかもしれないですが、これは出す段階の前で取れと書いてあります。それは難しいのではないですか。意見書を持って来る前にちょっと待ってという話はできないと思うのですが。
○神ノ田労働衛生課長 ですから、1回目、本人が両立支援の支援をお願いしますということで持って来たところで、もうそれは同意は取られているという前提になるかと思います。その後のプロセスとして、また主治医から直接情報を得る必要があるかもしれませんよと、それについて了解してもらえますねということは確認しておく必要があるかと。
○明石委員 (h)の時点では多分要らないのだと思うのです、要は、その後の話なので。これだと、意見書を持って来るときに同意を取っておけということになってしまうのではないか。後の同意の話は分かりますが、意見書を持って申出を行ったことによって、もう当然本人は同意をしている。これ書き方を変えていただかないと、持って来た段階で同意を取るわけにもいきません。
○神ノ田労働衛生課長 本人が渡しているという行為をもって、もう同意が得られているという、そう理解で。
○明石委員 渡したことで足りないことを聞くときに同意を取るというのは分かります。
○神ノ田労働衛生課長 はい。
○明石委員 ですので、書いていることと時制が違う。
○神ノ田労働衛生課長 あれですかね、同意の捉え方ですか。文書で同意ということではなくて、持って来たという、本人が提出したということをもって同意が得られているという、そういう整理でいいのかと思っております。
○明石委員 はい。書き方として。
○神ノ田労働衛生課長 書き方は。
○明石委員 この書き方ではないのではないですか。
○土橋分科会長 よろしいでしょうか。
○明石委員 (i)の所はいかがでしょうか。
○小沼産業保健支援室長 両立支援と絡む場合もありますが、通常、例えば2か月に1回程度の通院をするというようなものもありますので、それについては、特に会社側に負担を掛けないけれども、一応、念のためにお話をしておくと、そういった事例もあるのではないかと思いますので、そういうものについて、直接人事に伝わって過度に心配を与えてもいけないとかという部分がありますから、そういう意味で書いているという理解です。
○土橋分科会長 ほかはいかがでしょうか。
○漆原委員 議論されていることと若干関係はすると思うのでお聞きしたいのですが、最後のページの所に、定義として「事業者等」という記載がありますが、この文章の中を見ますと、事業者等と書かれているのは1ページの一番下の所のみでして、今、正に議論されている4ページ以降の、この表の中にある「事業者」というのは、その後に出てくる文言を「事業者等」と書き分けた上で、安衛法上の事業者として考えているのかというところを、教えていただければと思います。
○神ノ田労働衛生課長 確認したいと思いますが、一応、作成過程では、「事業者等」と「事業者」は書き分けて記載をしているということです。もう一度チェックはしたいと思います。
○土橋分科会長 ほかはいかがでしょうか。
○高田委員 3ページの取扱規程の運用について質問をします。具体的に、この取扱規程の運用状況の確認はどのようなことを想定されているのでしょうか。
○神ノ田労働衛生課長 例えば、この情報については自動的に事業者に上がるとか、この情報は本人の同意がないと事業者には上がらないとか、そういうことが取扱規程の中に定められるわけです。定められているのにもかかわらず、同意なしに事業者に上がってしまった事例があったとか、しっかりと取扱規程どおりに運用されているかどうかを不断に確認して、それから外れるような事案があれば、それはしっかりと労働者にもそれを説明しなければいけないし、再発防止の措置も講じなければいけないと、そういうことです。
○高田委員 そういったことを議論する際に、この取扱規程自身は、衛生委員会とかを通して協議をしていくと思うのですが、運用状況の確認に関して、衛生委員会等は何か関与することになるのでしょうか。
○神ノ田労働衛生課長 そこは法律でこうしなさいということになっているわけではないと思うのですが、衛生委員会の場で策定した取扱規程ですので、それが適切に運用されていないということであれば、それについてもしっかりと報告することが望ましいとは思います。場合によっては、取扱規程について、例えば厳しすぎるとか、現場に合っていないとか、そういうことがあれば見直しをすることも必要になりますので。ただ、衛生委員会に報告するかどうかは、そこは事業場の判断だと思います。
○三柴委員 筋からいけば、やはり衛生委員会に報告する選択肢も用意されるべき事柄だろうとは思います。その上で、ちょっと難しいのは、この問題は各事業場にある個人情報保護に関する協議の場と、それから衛生委員会と、どちらの管轄なのかという調整の問題が出てくるので、今後、何かガイドライン等を出されるときに、窓口はどちらになるのだという意味で、両方に申告していいのか、どちらかに窓口を統一するのかという点については、示唆があってもいいのかと思います。
○土橋分科会長 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、次の議題に移ります。議題の(3)、健康増進法の一部を改正する法律について、事務局から報告をお願いします。
○西田環境改善室長 今回の通常国会で改正健康増進法が成立いたしましたので、職場の受動喫煙防止対策に関連するところから改めて当分科会におきましても御報告させていただきます。
改正健増法が7月18日に成立し25日に公布しています。お手元の資料No.3-1を御覧いただきたいと思います。改正の趣旨ですが、望まない受動喫煙の防止を図るため、施設等の区分に応じ、一定の場所を除き喫煙を禁止するとともに、施設管理の権原を有する者が講ずべき措置を定めたものです。この対象施設の中に一般の事業所も含まれるということです。
基本的な考え方として、大きく3つあります。1つ目は、受動喫煙が他人に与える健康影響と喫煙者が一定程度いるという現状を踏まえまして、望まない受動喫煙をなくすということ。2つ目としましては、子どもをはじめとする健康影響が大きい20歳未満の者、患者等に特に配慮していくということです。3つ目としては、そういったところも踏まえて施設の類型・場所ごとに対策を実施していくことで、喫煙場所の特定を行い、喫煙可能な場所については掲示を義務付けていくこととなります。この考え方の3行目、「その際」とありますが、既存の経営規模の小さい飲食店については事業継続に配慮し、必要な措置を講じていくということにしております。
続きまして、改正の概要ですが、大きく3つほど責務、義務等を定めております。国及び地方自治体の責務等ということで、総合的、効果的な措置を相互連携しながら進める、また、必要な調査研究を進めるとしています。
2ページ、2番目として、(1)多数の者が利用する施設等における喫煙の禁止ということで、一定の場所以外の場所における喫煙を禁止する。(2)違反した者に対して都道府県知事等は喫煙の中止等を命ずることができる。
その類型ですが、大きく3つほど類型化されています。1つ目はこの表内のAの所です。健康影響の大きい20歳未満や患者が主たる利用者となる、学校、大学等も含みますが、病院、児童福祉施設等こちらは敷地内も含め全面禁煙。ただし、必要な措置を取られた場合は屋外に喫煙場所を設置することを可としています。表中のBですが、こちらが一般の事業所も含めてかなり大きな部分になります。原則、屋内禁煙。ただし、要件を満たした喫煙専用室を設けた場合には、屋内においても、そこでの喫煙は可ということです。標識の掲示は必要です。経過措置の中で、右側にある一定規模以下の飲食店については、標識の掲示によりその中での喫煙は可ということです。
(3)はいわゆるプライベート空間として、ホテルの客室や人の住まいは適用除外。(4)で喫煙可能の場所には、20歳未満の立ち入りは禁止とし、(5)で屋外、家庭等においても、望まない受動喫煙が生じないよう配慮をすることとしています。
3番目として、管理権原者への責務として喫煙が禁止された場所に喫煙器具(灰皿等)を設置してはいけない。都道府県知事等は管理権原者等が違反しているときには勧告命令を行うことができることを定めています。
4番目のその他として、違反した者に対しては所要の罰則規定を設けています。(2)ですが、先ほどの既存飲食店はじめ、業務に従事する者を使用する者は、従事者の望まない受動喫煙を防止するために適切な措置を取るよう努めるということも、健康増進法の中で定められています。こちらは既に、労働安全衛生法においても事業所の実情に応じて受動喫煙を防止するよう努めると規定され、それと相まって明記されたということです。施行期日ですが、2020年4月1日に全面施行ということで、内容に応じて段階的に施行ということです。
3ページ、先ほどの類型、現状から法施行後どう変わるかということをイラスト化したものがあります。1つは喫煙可能な場所として、加熱式たばこ専用の喫煙室。こちらについては、受動喫煙による健康影響がまだ明らかではないところもあり、表示は義務ですが、飲食もできるという形を取っています。喫煙専用室は、喫煙だけということです。そこは区分されています。既存の経営規模の小さい飲食店については、表示等をした上で喫煙可能とすることができます。
4ページ、国、自治体としては周知啓発や中小企業をはじめとする喫煙専用室等の設置に係る予算税制上の措置、既に事業者向けの中小企業の受動喫煙対策助成金を講じているところですが、そういったものも含めてここでやっていきます。2番目として、各種関係者と連携協力していく。3番目として、必要な調査研究を推進するということにしています。
5ページ、既存特定飲食提供施設の考え方として、資本金5,000万円以下、更に客席面積が100㎡以下を要件としています。ここで示す既存の飲食店については、事業の継続性や経営主体の同一性、店舗の同一性等を踏まえて、総合的に判断することとしており、法施行後、新規に出店する店舗については、先ほどのBの分類の屋内禁煙、喫煙専用室内では喫煙可という措置を講ずることとなります。
6ページ、改正法における義務内容、違反時の対応として、実際、健増法というのは公衆衛生法規ということで、事業者、労働者も含む形で適用となっています。全てのものに対して、喫煙禁止場所における禁煙に対しての違反が起きた場合、指導。それでも守られない場合、命令等、あるいは罰則適用となります。管理権原者と標識の掲示、更に罰則規定はありませんが20歳未満の喫煙室への立入り、守られない場合は都道府県知事等からの指導によって改善を受けるという形で、義務内容及び違反時の対応を定めています。
7ページ、安衛法とも関連してくるところです。従業員に対する受動喫煙対策について示しています。まずは、20歳未満の立入禁止を、しっかりと周知していくということで、管理権原者等は、喫煙可能な場所に立ち入らせてはいけないのが1つ。2つ目として、関係者による受動喫煙防止のための措置として、先ほど申し上げた努力義務規定を設けた上で、安衛法の努力義務規定と相まって、これに基づく対応の具体例を国のガイドラインに示して助言指導を行っていく。また、助成金等により取組を支援していくこととしています。具体的には、ガイドラインに盛り込む例として、参考に書いてあるとおり、喫煙室の設置のハード面の対策を取っていくようなこと。中小企業については、助成金が利用可能であることなど。ソフト面で勤務シフトやサービス提供方法の工夫など、従業員の受動喫煙防止対策の周知をしていくといった、相談窓口等の利用可能な支援策の概要です。更に、職業安定法施行規則の中においても募集や求人申込の際に、明示する義務を課すこととしていますので、そういったことも従業員になろうとする者の保護のための措置ということで、ガイドラインに盛り込む予定としています。
8ページ、施行スケジュールとして、先ほど申し上げました、オリンピック・パラリンピックが実施される前の2020年4月には全面施行。国、自治体の責務は公布後6ヶ月以内、学校、病院、児童福祉施設等については、公布後1年6か月以内で施行していくことで考えています。
資No.3-2を御覧ください。国会におきまして、附帯決議が幾つか出され、この中で従業員対策についても示されています。2ページ、衆議院におきましては「喫煙可能な場所・空間において従業員の受動喫煙をできるだけ避けるよう必要な措置を講じること」とされています。参議院におきましては、2ページ目と3ページ目、5番目の後段「また」の所です。「受動喫煙防止対策に積極的に取り組む中小事業者に対し、費用の助成や税制上の措置等の適切な措置支援策を講ずること」。更に、10番目として、「従業員が望まない受動喫煙に遭わないようにするため、労使でしっかり話し合い、必要な措置が講じられるよう取り組むとともに、管理権限者等が20歳未満の者を喫煙可能な場所・空間に立ち入らせることのないよう、実効性ある措置を講ずること」としています。
こうした附帯決議を踏まえまして、中小企業に対する助成金等による支援に加えて、健康局と連携してガイドラインを作成し、既に安衛法の下でも部長通達で示してきていますが、こうした点に最近のいろいろな問題となる事案も含め、ガイドラインを示し、事業主に周知徹底を図り従業員の受動喫煙防止が図られるようしっかりと取り組んでいくということを考えています。以上です。
○土橋分科会長 報告ということですが、質問等、発言のある方は挙手をお願いします。
○増田委員 資料No.3-1の7ページ目の所でお伺いします。1の20歳未満の者の立入禁止の所で書かれている内容です。ここに「権原者等は」とあるのですが、ここの「等」にはどういった人たちが含まれるのでしょうか。
○西田環境改善室長 いろいろな事案も考えられる所です。そこはいろいろなケースの中で、どのように考えるかについては、法律所管の健康局で現在検討中ということです。
○増田委員 ありがとうございます。あと、もう1点すみません。ここの管理権原者と事業主・事業者が異なる場合が往々にして出てくるかと思いますが、建物を持っている会社が管理権原者で、テナントとして他の事業者が入居しているパターンの場合、ほかの会社の20歳未満の従業員を、喫煙可能な場所に立入らせないようにすることを、やらなければいけない場面が出てくることになるのでしょうか。
○西田環境改善室長 どのような者が管理権原者や管理者となるかは、健康局で詳細をお示しします。また、まずは20歳未満の方については、健康影響の観点から喫煙可能場所に入らせないようにするルールを幅広く周知徹底していくことが必要であると考えています。
その上で、先ほど申し上げました事業主に対してガイドラインを示すこととしております。ガイドラインに20歳未満の立入禁止の内容について明記し、その内容について都道府県や労働局を通じて事業主に周知していき、更に、相談窓口を設置し20歳未満の従業員の立入禁止の問題事例を把握した場合は、個別に事業者に改善を促すという新しいルールの定着を図っていくということで、喫煙可能場所に20歳未満の従業者が入ることができなくなることを含め、今回の法案の趣旨や内容について事業者や従業員も含め、広く国民に御理解いただくことが重要ではないかと考えております。
当然、事業主が20歳未満の従業員と把握しているわけです。そこに入らないように、しっかりやってもらうことになろうかと思います。
○増田委員 自分の会社の従業員だったら当然、対応は容易ですし、もちろん対応しないといけないのは分かりますが、ほかの会社の従業員の対応となりますと、自ずと限界があるかと思います。その辺りを踏まえた内容をガイドラインに盛り込んでいただくように期待いたします。
○西田環境改善室長 その辺りは、担当の健康局で整理・検討をした上で対応を考えたいと思います。
○土橋分科会長 中澤委員。
○中澤委員 参議院の附帯決議の2ページの5番目の所で、受動喫煙防止対策に積極的に取り組む中小事業者に対し、費用の助成などと書かれており、現実的に今ハード的な面での助成をいただいており、本当に有難いことだと思っております。その下の税制の措置については何かお考えがあるのか、ある場合は、この健康増進法の関係でいくと、厚生労働省の御対応になるのか、あるいは、それ以外の省になるのかを教えていただければと思います。
○西田環境改善室長 当省の健康局で税制面の措置を対応すべく今、考えているところです。
○中澤委員 何らかの税制措置を取られるというお考えが今あるわけですね。
○西田環境改善室長 そのとおりです。
○中澤委員 ありがとうございます。
○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、最後の議題(4)のその他です。全体を通して何かありますでしょうか。勝野委員。
○勝野委員 その他ということで発言いたします。先月の7月26日に東京多摩市の建設現場で火災が発生し、死者5人、負傷者40人を超える大変大きな事故がありました。原因等については、現在、調査なり捜査が行われているということですが、マスコミ報道等によれば、断熱材に引火したということです。
実は、昨年の6月にも同様の原因と見られる火災事故が、同じ元請事業者の現場で発生していたということです。そういった点からすると、昨年の時点で再発防止のルール等も講じられていたと思いますが、今回の事故を見る限り、そうした教訓がいかされていなかったと考えております。今回の事故に関しては、私どもの組合員も3人亡くなっており、負傷者の中にも多数の組合員がいるということで、全建総連としても非常に大きな労災事故だという認識をしているところです。
それを踏まえて2点お願いしたいのですが、1つは、こうした重大災害事故を起こさないように、建設工事従事者の安全を第一とした安全対策を更に徹底していただきたいということ。もう1つは、被災した従事者に対する補償なり救済について、当然、万全を期し、早急に対応していただくことになるわけですが、その際、いわゆる一人親方で従事していた方が、例えば、労災の特別加入に加入していたことをもって元請労災の適用外とならないよう、しっかり就労の実態を把握した上で判断するようにお願いしたいと思っております。以上、よろしくお願いいたします。
○土橋分科会長 ということで御要望です。ほかに何かありますか。御発言ありますか。よろしいですか。
○奥村安全課長 今の件について安全課からお答えしたいと思います。大きな事故が起こり、亡くなられた被災者の方には、心から御冥福をお祈りしたいと思います。また、御遺族の方や負傷者の方に対してもお見舞い申し上げたいと思います。
先ほど勝野委員からも御紹介いただきましたように、新築ビルの建築工事において、鋼材を溶断中に落下した火花が下の階の断熱材に引火して多くの方が亡くなったという痛ましい事故でした。上階で溶接をしたにもかかわらず、下階には発泡プラスチック系の可燃性の物があったものです。と本来、そこはきちんと養生しておくか、あるいは、そもそも下の発泡スチロールを取り除くことが本当は必要だったのですが、それが取られていなかったということでした。
厚生労働省では、災害のあった翌日の7月27日に、関係の建設業団体に対し、可燃性の断熱材の使用の有無を調査し、しかるべき対策をきちんと講ずるように、すなわち、遮蔽や除去と避難方法の周知や訓練の実施を徹底して行うよう要請文を発出したところです。また、災害当日から所轄の労働基準監督署において、発生原因の調査を進めているところです。この原因の究明がある程度明らかになったところで、改めて再発防止に向けた指導を徹底していくことを考えております。
御指摘のありました2点目ですが、安全対策の徹底については災害原因の究明を改めて踏まえ、きちんとさせていただきたいと思います。また、労働者性についても特別加入であったがゆえに労働者ではないということはないようにしてほしいという御要望でしたので、労災担当の部署に伝えて対応していきたいと考えております。
○勝野委員 よろしくお願いします。
○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、これで全ての議題は終了いたしました。本日も長時間にわたり、熱心な御議論をありがとうございました。最後に事務局から連絡事項をお願いします。
○久知良計画課長 本日も熱心に御議論いただき、ありがとうございました。本日の1点目の議題の働き方改革の法案の施行に向けた省令については、早急に省令(案)の要綱を作成の上、またこの場にお諮りしたいと思います。なお、次回の分科会については改めて御連絡させていただきます。以上です。
○土橋分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表委員は青木委員、使用者代表委員は矢内委員にお願いしたいと思いますのでよろしく御対応ください。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 

(了)

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